2011年3月2日水曜日

漢方最前線(3)日本が伝える「Kampo」

(2011年2月18日 読売新聞)

慶応大学医学部・漢方医学センターは、
お灸や煎じ薬のにおいという、漢方イメージとはかけ離れた雰囲気。

共通語は英語。
2001年以来、オーストリア、米国、ブラジル、中国--
世界各国の医学生が研修に集まり、数か月から1年間、
英語で討論し、漢方を学ぶ。
漢字の羅列だった漢方は、Kampoとして紹介、国際的な関心を集める。

日本の漢方は、西洋医学に理解されやすかったと、
同センター診療部長の渡辺賢治准教授(51)。
「実は日本の医師だけが、漢方、西洋両医学を
自在に使いこなすことができる」

中国伝統医学は、東アジア各国に伝わったが、
日本以外では漢方医(伝統医)と西洋医、二つの医師資格があり、
お互い別世界だ。

日本では、明治初期に医師を西洋医学に統一したため、
日本には「漢方医」はいない。
医学部を卒業し、さらに漢方も学んだ日本の医師は、
欧米研修や英語文献を読む機会も多く、
1980年代から漢方医療の成果を英語で発表してきた。

煎じ薬を粉末化したエキス製剤は品質が均一で、
漢方を学ばない医師にも、薬効がわかりやすい。
英語で説明しやすい。
だから、Kampoを学びに各国から留学生が集まるようになった。

国際的な関心を集める代表的な薬がある。
朝鮮人参、山椒、ショウガなどの生薬から作られる「大建中湯」。


外科出身の北島政樹・国際医療福祉大学長(69)は、
「大腸がんの手術後など、腸閉塞症状を起こす人が多いが、
大建中湯は腸閉塞を早期に回復させ、予防にも効果がある」
伝統的な胃腸薬に、手術後の主治療薬として、
新しい活用法が見いだされた形。

北島学長らは09年から、国内64医療施設で、数千人規模の
大規模臨床試験を続けている。
メイヨー・クリニックなど米国の医療機関でも効果を確認、
「欧米の研究者の目を、Kampoに向けさせる論文になる」(北島学長)。

中国も、国家戦略として伝統医学の国際化に着手。
世界各国で活用される針灸治療を、ユネスコに申請し、
昨年、世界無形文化遺産リストに採択。

「新たに、漢方のインフルエンザ治療薬も開発。
成果をアピールし、日本漢方も外に目を見開かなければならない時代」。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2011/2/22/132705/

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