2011年3月4日金曜日

インサイド:トヨタとスポーツ/2 重点強化部 「結果第一」現場に重圧

(毎日 2月23日)

国内スポーツの支援に力を注ぎ出した、
トヨタ自動車の豊田章男社長。
「不況の時こそ、スポーツが元気を与えてくれる」、

試合会場や練習場にも足を運ぶ。
トップの視線は、選手らを刺激、昨年から団体競技などで
顕著な成果が出ている。

今年元日のニューイヤー駅伝。

ゴール目前での3チームの競り合いから、トヨタが1秒差で振り切る
劇的な展開で、32回目出場にして初優勝。
直後、現地で選手やスタッフは、豊田社長にねぎらわれた。

陸上長距離部は、重点強化部の一つ。
佐藤敏信監督は、コニカミノルタのコーチとして、
実業団最高峰のこの大会で6回優勝。
佐藤監督には、忘れられない出会いがある。

就任直後の08年秋、渡辺捷昭社長(当時)と対面、
約20分の質問を受けた。

選手獲得などの方針は任せるが、いつまでに結果を出せるかが主。

「一クラブが、ここまで見られているかと思い、
感激もあったが、プレッシャーも感じた」

◆株主意識し順位付け

70年代までの高度経済成長期、職場の一体感醸成など
人事労務施策などの一環で、次々と創部され、
現在30を超えるトヨタ本体の運動部は、厳しくランク付け。

陸上長距離と硬式野球、ラグビー、男女バスケットの5部が、
重点強化部に指定。

専用グラウンドや体育館があり、野球部には元プロ、
男子バスケット部は外国人選手も所属。

それ以外の部は、移動やユニホームなどの活動費は
支援されているが、5部には及ばない。

人事部の藤原睦行主査は、
「これまでの経緯と従業員への影響力を考慮。
運動部をすべて強化できればいいが、
日本一を目指すため、絞っている」

昨年上半期の自動車国内販売は1位、シェア50%を占めた。
企業が、より株主を意識した経営をするようになった現在、
運動部にも、社会が認めるトップ成績が求められる。

藤原主査は、「株主への説明責任は、従来より重要。
企業のトップが、『費用はかかるが、経営に必要』と説明できればいい」

硬式野球部も変わった。
日本選手権で、89年の初陣から7回出場でベスト8が最高だったが、
ここ4年で3回優勝。

強化には、川島勝司総監督の力が大きい。
ヤマハで都市対抗優勝3回、96年アトランタ五輪銀メダルの名将は、
99年秋からチーム運営に携わり、試合結果を
人事考査に反映するよう、社に求めた。

「社業と野球の両立」から、「野球の勝利が社業」になった。
「各社員は、旋盤担当なら、見事な仕上がりを目指してプロになろうと努める。
野球も同じ」と川島総監督。
選手が、練習後に職場に戻る姿もなくなった。

◆ちらつく休廃部

昨年26年ぶりに、日本リーグで優勝した女子ソフトボール部。
重点強化部には、指定されていない。

07年から指揮した福田五志監督は、
「会社に見極められる立場。
現場の希望は受け入れられたが、3年以内の日本一を求められた」と
危機感を感じていた。

現チームで、福田監督になってから入社した選手は、21人中16人。
08年北京五輪で銀メダルを獲得した米国代表の主力投手、
モニカ・アボットもいる。
福田監督は、「現場で社長に応援され、かけられる言葉は重みが違う」

勝利を重要課題にする企業側と、存立を意識する現場。
休廃部がちらつく緊張感の中、トヨタの各部は結果を出した。

豊田社長は、「プロの下に実業団があってこそ、レベルを保てる。
そのためにも、実業団が必要なんだ」と、
次世代の育成のために、チームを持つ大切さを訴える。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/general/archive/news/2011/02/23/20110223ddm035050007000c.html

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