2011年3月5日土曜日

インサイド:トヨタとスポーツ/3 アスリートの特別待遇 「複線型」雇用で支援

(毎日 2月24日)

団体競技で重点強化部を設けて、トップを目指すトヨタ自動車。
個人競技では、世界の頂点を目指すアスリートを特別待遇で支える。

昨年末、フィギュアスケート全日本選手権を制し、
世界選手権で頂点を狙う、小塚崇彦と安藤美姫。
14年ソチ五輪では、メダル獲得への期待が大きい。

2人は、全日本選手権の練習で、
「TOYOTA」のロゴ入りジャージーを着ていた。
観客席では、トヨタ社員が横断幕を掲げ、声援を送った。
小塚は、「支援してくださるトヨタ自動車さんに恩返しできた」

◆出社は月に1回

ともに名古屋市出身で、人事部所属の嘱託社員。
海外での練習や国際大会出場が多いため、
出社は月1回程度で、競技結果などを報告。

オフには、小塚が昨夏の都市対抗野球で、
東京ドームで応援席のロープ張りを手伝うなど、
社内イベントの設営準備も行い、
安藤も、07年都市対抗の応援に駆けつけ、ステージで拡声機を握った。

けがの際の医療費などは、一般社員と同じ保険が適用。
社内留学制度を使って中京大に通い、
ナショナルトレーニングセンターに認定された学内のリンクで練習。
マネジメント会社と広報などの委託契約を結ぶ。

支援目的を、人事部の藤原睦行主査は、
「広告宣伝効果などはあるが、世界で活躍する地元選手のために
環境を整えようという考え」
小塚は、「社員として、支援に対し、『結果を残さなければ』と引き締まる」

こうした雇用のさきがけは、女子柔道の谷亮子。
谷は、バルセロナ五輪に出場した92年から、
トヨタのCMに出演した縁もあり、98年に嘱託社員として入社。
参議院議員選挙出馬表明前の昨年3月末まで在籍。

主に首都圏で練習し、00年シドニー五輪では
トヨタ所属選手初の金メダルを獲得。
トヨタ本社がある愛知県豊田市内をパレード。
04年アテネ五輪で2連覇した直後、都市対抗野球の舞台、
東京ドームで応援、シンボル的存在だった。

「単なるスポンサー契約ではなく、同じ社員の選手が
世界の舞台で頑張って活躍すれば、社内の一体感も高まる」と藤原主査。
重点強化部の活躍は、国内トヨタの士気高揚に結びつき、
五輪選手の活躍は、「TOYOTA」のブランド力アップにつながる。
小塚や安藤の活躍は、地元貢献も強調できる。

◆社員としても育成

同じ五輪選手でも、スケート部ショートトラックの選手は、
他の運動部と同じ正社員で雇用。

今月、名古屋市内での硬式野球部の日本選手権優勝祝賀会。
背広姿で来賓誘導する寺尾悟監督の姿があった。

豊田市生まれで、94年リレハンメル五輪から4大会連続出場。
この間、98年長野五輪後に入社、社業に従事しつつ、
競技を09年まで続けた。
後輩社員には、昨年のバンクーバー五輪出場組の
高御堂雄三(愛知県一宮市出身)、伊藤亜由子(浜松市出身)両選手。
寺尾監督は、東海地区出身選手を大舞台へ飛躍させる役も担う。

メディア露出の大きい選手は、プロに等しい契約をする一方、
取り上げられる機会の少ない競技でも、現役中から社員教育し、
競技引退後も社業に戻れるようサポートする。

対外的には地元密着のアピールになり、
選手側には愛社精神が育つ。
体力のある大企業だからこそできる、複線型の雇用で選手を支える。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/general/archive/news/2011/02/24/20110224ddm035050033000c.html

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