2008年5月3日土曜日

遺伝子と遺伝子を区切る「壁」の実態がみえてきた!

(nature Asia-Pacific)

東京工業大学大学院生命理工学研究科 白髭克彦教授

ヒトの遺伝子は、約2万個あると推定。
正常な発生と成長は、これらの遺伝子が、独立性を保ちつつ、
必要に応じて協調することで可能。

状況に応じて、さまざまな遺伝子のオンとオフのスイッチが切り替わるが、
その際に遺伝子どうしが干渉しあうのを防ぐしくみが必要。

しくみの一つとして、「インシュレーター(区切り壁)」とよばれる
構造の存在が想定されていたが、その実態は謎。

東京工業大学の白髭克彦教授は、インシュレーターの構築に
コヒーシンとよばれるタンパク質が重要であることを突き止めた。

インシュレーターは、遺伝子の情報をmRNAに転写する際に
「どこからどこまでの配列を写しとるか」を決める役割。
インシュレーターの機能によって、遺伝子の発現領域が明確に定められ、
不要な領域が発現しないように制御。

コヒーシンは、細胞分裂の際に娘細胞にゲノムを正しく分配するために
はたらくタンパク質として知られる。
酵母からヒトにまで広く保存されたタンパク質で、
コヒーシンをまったくもたない個体は生存することができない。

「私たちは、インシュレーターの解明を目指していたわけではなく、
コヒーシンの機能の解析を進めていたところ、
偶然にもインシュレーターにたどり着いた」。

リング状の構造をもつコヒーシンは、リングの穴のなかに
DNAが通るようなかたちで染色体を束ねていると考えられ、
白髭教授は、ヒトでのコヒーシンタンパクの構造と機能を調べる過程で、
インシュレーターとしての機能を果たすことを突き止めた。

白髭教授は、出芽酵母で、ある遺伝子の転写がはじまると、
コヒーシンはその転写領域を避けるように移動すること、
細胞が分化したり熱処理を受けたりすると、コヒーシンがDNAの結合部位を
変えることなどを突き止めていた。

今回は、ヒーラ細胞やリンパ球、繊維芽細胞などを用いて、
コヒーシンがどのようなふるまいをみせるかを調べた。
解析には、自らが開発したヒトゲノム用の「チップ-チップ法」を用いた。

チップ-チップ法は、マイクロアレイ上で出芽酵母などのタンパク質が
ゲノムのどこに結合するかを調べる手法だが、
これまで、ゲノムサイズが大きく構造が複雑なヒトゲノムには使えなかった。

白髭教授は、東京大学の油谷教授とともに、
微量のDNAを偏りなく増幅可能な方法論を開発し、
ヒトゲノム上でもタンパク質の結合部位を90ナノメートルという
高解像度でとらえる手法を実現。

その結果、ヒトでは、コヒーシンがインシュレーターの構成要素とされる
CTCFというタンパク質と同じ場所に存在していることがわかった。
「コヒーシンの結合する場所はCTCFに依存しており、
コヒーシンを欠損すると、CTCFを欠損した場合と同じ影響がみられた」。

CTCFは、「遺伝子発現の刷り込み」にも関わり、
コヒーシンにも同様の機能がみられることを明らかにした。
コヒーシンが、細胞の状況に応じてDNAの結合部位を変え、
遺伝子の発現を調節していると断定できた。
コヒーシンは、インシュレーターの構成要素としてもはたらいており、
その機能はCTCFよりも重要らしい」。

白髭教授は、ヒトゲノム上の計1万3000箇所にコヒーシンによる
インシュレーターが作られることを確認、
それぞれがどのような塩基配列からなっているのかを調べている。

今回の成果の応用として、「遺伝子治療の際に、目的の遺伝子だけを
安定して発現させるため、インシュレーター配列を付加することが不可欠」、
「ヒトで実用に堪えうるインシュレーター配列はまだないので、
今回発見した候補配列を一つずつ精査して行く必要がある」。

インシュレーターのなかには、コヒーシンを含まないものがあるかもしれず、
実態の解明にはまだ時間が必要。
「インシュレーターにかかわらず、染色体の上でおきるあらゆる現象を
詳細に調べ上げたい」。

http://www.natureasia.com/japan/tokushu/detail.php?id=91

国際生物学オリンピック参加を呼び掛ける東大名誉教授の毛利秀雄さん

(共同通信社 2008年4月22日)

来年は、生物学にとって節目の年。
進化論の提唱者チャールズ・ダーウィンの生誕から200年、
主著「種の起源」の出版から150年、
遺伝子という言葉ができてから100年を迎える。

記念すべき年の7月、世界の高校生が生物学の実力を競う
国際生物学オリンピックが茨城県つくば市で開かれる。
日本代表を選ぶ試験への参加募集が始まり、
オリンピック日本委員会委員長として忙しい日々が続く。

「ぜひ参加して、初の金メダルを目指してほしい。
これをきっかけに、1人でも多くの若者が生物学に興味を持ち、
バイオや環境問題という日本の将来がかかる大きな問題に
貢献してくれるようになれば、非常にうれしい」

開催予定国のギリシャが辞退。
2005年に参加し始めたばかりの日本にお鉢が回ってきた。
「10年に国際化学オリンピックが日本であり、
後援をお願いできる企業が重複する。
無理だと思い、いったんは断ったが、筑波大学長や文部科学省から
『理科離れを防ぐためぜひやろう』と励まされ、決断」

精子の運動メカニズムの研究で知られる世界的学者。
日本の生物学研究は、総合力が弱いとみる。
生物学のいろいろな分野で、特別な能力を持つ人を伸ばすことが大事。
それが、全体のレベルを引き上げることになる」

生物学の面白さは、答えを生物自体が持っていること。
「分からないことはたくさんある。
書物からではなく、自然からもっと学ばなければならない」。
東京都出身。77歳。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=71666

特集:あすを植える「My Mai Tree」(その1) 緑が命の源だ

(毎日新聞 2006年1月3日)

世界中で森が急速に失われている。
開発に伴う温暖化が、地球の環境に大きな影響を及ぼしている。
毎日新聞は、創刊135年記念事業として植樹支援活動
「あすを植える『My Mai Tree』キャンペーン」を全国でスタート。

人間の自然へのかかわりの問題はどこにあるのか、
後世に自然を残すために私たちは何をすべきか。
比叡山飯室不動堂住職で大阿闍梨・酒井雄さん、
女優で極地冒険家の和泉雅子さん、
横浜国立大名誉教授の宮脇昭さんの3人に森づくりの意義を語ってもらった。

-地球環境の危機的な状況をどのように見ていますか。

和泉さん 最初に北極に行った84年は、最低気温がマイナス45度で
寒かったのですが、89年に北極点に初めて到達した時は、
極点付近に温室効果のある雲が発生、マイナス2、3度まで気温が上昇。
石のように硬い雪が水浸しになり、解け始めました。
目に見えて、環境の変化が分かるのは怖い

酒井さん 三十数年前、行で冬に滝つぼに入ろうとすると、
長さ5、6メートルのつららがあり、滝つぼは氷が詰まっていた。
しかし今は1年で1、2回申し訳程度につららが下がる程度。
私たちは、行で比叡山の標高650~700メートルを歩くが、
シイとかシラカシが生えていて、歩くにはちょうどいい具合。
そういう木が残っているから、回峰行が今でも途絶えず続いている。

私が比叡山に来て間もない1965年ごろ、
飯室の裏山の木が嵐で全部倒れたことがあった。
谷川から水を引いて生活していたが、水がなくなってしまった。
木を植えて数年たち、木が自分の背丈より高く成長したころ、
再び川の水量が多くなってきた。
人が歩き、行をできる森は破壊しないよう守っていかなければ。

宮脇さん 「自然に任せるのではなく、植えていこう」という考えで、
植樹を行っています。
大切なのは、その土地本来の主役の木を調査して、しっかり把握すること。
本州、四国、九州なら、シイ、タブノキ、カシ類など。
同じ種だけを集めず、いろいろな種を交ぜることが大切。

生物社会では、最高条件と最適条件が違う。
すべての敵に勝ち、すべての欲望が満足できる最高条件は、
むしろ危険な状態。
生態学的な最適条件とは、生理的な欲望をすべては満たせない、
少し厳しい我慢を強いられる環境が持続的に生きられる状態。
本物とは、厳しい条件に打ち勝つもの。

-酒井さんは千日回峰行という苦行を2回も成し遂げられています。

酒井さん 千日回峰行の700日を超えた時、9日間、飲まず食わず、
不眠不休でひたすらお経を唱える「お堂入り」をやります。
5日目に、のどにたんが詰まって窒息しないよう、うがいが許されます。
その時、水を飲んではいけないが、たんを切るために口に水を含むと、
水ってこんなおいしいのか、水の味はこういう味だなと気付く。
落ちる線香の灰がスローモーションで見えたり、
遠くの話し声が聞こえたりと、神経が研ぎ澄まされてくる。
そんな特殊な状況に置かれたからこそ、水の本物の味を知ることができた。

今、炭酸飲料やジュースが飲み物の主流になっていて、
水が脇へ追いやられている。
加工されたものが天下を取って、本物志向がどこかへ行ってしまっている。
本物はどこにあるのか、を自ら突き詰めなかったら、
本物が見えてこないんじゃないか。

宮脇さん 本物とは、厳しい条件でも長持ちするもの。
酒井さんが千日回峰行をなされたのも、厳しさに打ち勝ち、
それが人間を本物にするからだと思います。
北極点に行かれた和泉さんも、人間として本物になったんだと思います。
人間も生まれた時から、ある意味の厳しさを味わうことが必要では
生まれた時から有り余るところで暮らし、厳しさを知らないのは不幸。

和泉さん 酒井さんが断食・断水なさっているのも、
根を張っている最中なのかもしれませんね。

-今後の地球環境を考えた時、水が一つのテーマに。

酒井さん お坊さんになったばかりのころに山を歩いている時、
下草についた朝露で着物のすそがぬれ、草木染のようになる。
何とかぬれない方法はないかと、ビニールで巻いたり、
いろいろな工夫をしてみたんですが、やはりぬれる。
そうしているうちに、ぬれないで道を通ろうと思うほうが
間違っているのではないかと気付きました。
一滴の水滴が、せせらぎになり、琵琶湖の伏流水になって流れ、
自分の着物がぬれることで、琵琶湖の水がたたえられている。
ぬれるということは、今日も一日水をいただいて感謝しようと考え
それから堂々と歩くようになりました。
行からいろいろなことを教わっています。
森があるから、生きていけるんだと思います。

和泉さん 私は、皆さんとは正反対の体験をしてる。
北極は木が生えていない、氷と雪の世界。
北極での約5カ月間の遠征を終えて、カナダのエドモントンや
バンクーバーに戻って、空港に着いた時、
飛行機の窓から緑が見えると涙が出る。
5カ月ぶりに緑を見るんですから。
自分は、緑に囲まれて育った日本人だと悟る。
私だけかと思ったら、遠征隊の仲間もみんな泣く。
緑って、人間にはなくてはならないもの。

宮脇さん やはり生物的な本能でしょうね。
人間が地球に生かされている限り、私たちはどれほど富を築いても
緑の植物に頼ってしか、持続的に生きていけない。

-全国で森づくり活動が行われていますが、
森づくりに取り組んでいる個人、団体の方へのメッセージを。

酒井さん 森づくりは、子供たちに一生懸命やってもらうのが一番良い。
植えてから1年、2年と時間がたつと、自分が植えた木には
「今年もちゃんと生きているな」とか、楽しみや思い入れが生まれてくる。
20年たち、木が成長した時、「自分もこのくらいに育ったかな」と顧み、
自然と森に興味を持てるのでは。
そういうことを進めていけば、日本も良い精神状態の国になる。

和泉さん そうなるとうれしいですね。自分の分身のようで。

宮脇さん 植樹は、緑の命のドラマの幕開けと位置付け。
その日からエンドレスに、木はいつまでも生き続けていく。
木を植えることは、単に小手先の技術でなく、
自分の心に木を植え、豊かにするということ。
==============
◇和泉雅子(いずみ・まさこ)

1947年、東京都出身。精華学園卒業。
63年、15歳の不良少女を演じた「非行少女」でモスクワ映画祭金賞。
映画出演は100本超。
83年、ドキュメンタリーで南極を訪れ、極地に魅了。
85年、北極点到達を目指したが、148キロ手前で断念、
89年に再挑戦して日本人女性初の北極点到達に成功。
毎年、北極への旅を続ける。著書「笑ってよ、北極点」など。
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◇酒井雄さい(さかい・ゆうさい)

1926年、大阪府出身。現在、比叡山飯室不動堂輪番長寿院住職。
慶応商業学校夜間部卒業、叡山学院研究科卒業。
32歳の時、結婚2カ月で妻が自殺したのを機に比叡山を訪れ、39歳で仏門。
7年間で約4万キロを踏破する「千日回峰行」を2回成し遂げ、
「大阿闍梨」称号を得た。
過去400年で2回達成は、酒井さんを含め3人。
中国、カンボジアでも巡礼を続ける。
==============
◇宮脇昭(みやわき・あきら)

1928年、岡山県出身。広島文理科大卒。専門は植物生態学。
横浜国立大教授などを経て、現在、同大名誉教授。
土地本来の樹木を中心に多くの樹種を交ぜて植える
「混植・密植型」の植樹に取り組む。
約40年間で植えた樹木は約3000万本。
国際生態学会長を1期。
国際生態学センター研究所長、横浜市緑の協会特別顧問。
著書「植物と人間」、「日本植生誌」(全10巻)など多数。

http://mainichi.jp/life/ecology/archive/news/2006/01/20060103ddm010040008000c.html

2008年5月2日金曜日

船会社、減便を検討 大船渡の定期外貿コンテナ

(岩手日報 4月26日)

大船渡港と韓国・釜山港を結ぶ外貿コンテナ船の定期航路で、
韓国の船会社が現在週1便の定期運航の減便を検討。
原油高による燃料高騰の一方、大船渡港の貨物量が思うように伸びず、
当初見込みの3分の1程度にとどまっていることが要因。
市は、週1便の継続を要請。

釜山航路は、大船渡のほか日本国内の4港を経由し、
興亜海運(ソウル)が運航。

大船渡市と船会社の日本代理店三栄海運(東京)によると、
興亜海運は貨物量の少ない週の寄港は難しい、との方針を市に伝えている。
現時点で、来週初めに予定していた寄港は取りやめになる見通し。

大船渡港の昨年4月の航路開設から1年間の貨物量
(空コンテナを除いた実数)は、45回の寄港で1605TEU
(1TEU=約20トン積載コンテナ1個)。
年度後半の伸び悩みが顕著で、市が「当初目標」としていた
年間4700TEUを大きく下回った。

貨物の内訳は、輸出が62%、輸入が38%。
同港などで水揚げされた水産物を中心にした輸出は堅調だが、
当初見込んでいた県南部の製造業からの貨物確保が苦戦。

市は、これまで船会社に対して約2億円の補助金を投入。
市が掲げた目標は、企業への事前の需要調査を基にした数字だが、
見通しの甘さも指摘されそう。

紀室輝雄副市長は、「船会社の事情はあるだろうが、
利用者の利便を考えると週1便を何とか継続したい。
現在交渉中で、市としても貨物確保に全力を挙げたい」。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20080426_7

がん細胞:増殖加速遺伝子を解明 日医大チーム

(毎日新聞 2008年4月20日)

がん細胞が、エネルギー源であるブドウ糖を取り込む一連の仕組みを、
日本医科大の川内敬子助教と田中信之教授(分子生物学)らが発見。
この仕組みを遮断する薬剤を開発すれば、
「兵糧攻め」でがん細胞の増殖を抑えられる。

細胞が、がん化するのを抑制する遺伝子「p53」に注目。
マウスの細胞でp53を除去すると、がん化するだけでなく、
別の遺伝子「NFκB」の働きが活発になっていることに気付いた。

詳細に調べると、NFκBが、がん細胞のエネルギー源である
ブドウ糖を取り込む別のたんぱく質を増やし、
がん細胞の増殖を加速させることを突き止めた。

p53が働かなくなると、NFκBが活性化し、
がん細胞へのエネルギー供給が進み、増殖するという流れを解明。
正常な細胞では、がん細胞の増殖に不可欠なブドウ糖分解を起こす
NFκBの働きを、p53が「ブレーキ役」となって抑制している仕組み。

田中教授は、「p53の機能を回復したり、NFκBの機能を抑えれば、
新しいがん治療薬の開発につながるだろう」。
英科学誌ネイチャー・セル・バイオロジー(電子版)で発表。

http://mainichi.jp/select/science/news/20080421k0000m040077000c.html

クローズアップ2008:穀物急騰、途上国を直撃

(毎日新聞 2008年4月19日)

コメや小麦など、穀物価格の急騰が途上国に深刻な打撃。
主食を輸入に頼る国々では暴動が相次ぎ、中米の最貧国ハイチでは
政府崩壊の危機を招いている。
輸出国側では、自国消費分確保のため輸出禁止の動きも広がり、
「食糧ナショナリズム」の様相も呈する。

背景には、新興国の需要拡大のほか、低所得者向け高金利住宅ローン
(サブプライムローン)問題で投機資金が穀物市場へ流れたこと。
7月の北海道洞爺湖サミットでも主要議題に。

「空腹が耐えられない」「大統領、辞めろ」--。
今月8日、ハイチの首都ポルトープランス
食糧価格高騰に抗議し、大統領府へ突入しようとする市民を、
駐留する国連平和維持軍が催涙弾で阻止する。

国民の8割が1日2ドル以下で暮らす最貧国では、
コメなどの値段が昨年の1・5~2倍。
責任を問われたアレクシス首相の解任が上院で決議された12日、
プレバル大統領はコメ50ポンド(約23キロ)を51ドルから43ドルに引き下げ。
だが、豆や牛乳も値上がりし、市民の不満は強い。
略奪への発砲などで、死者は今月に入り5人。

南米ベネズエラのチャベス大統領は、
ハイチへ肉や穀物計364トンの緊急支援を決めた。
「ブッシュ(米大統領)が、バイオエタノール増産を表明後、
貧しい人々の餓死が深刻になった」と、
食糧価格高騰の責任は米国にあると非難。

国民の2割が貧困層のエジプト。
公営のパン屋が、1枚5ピアストル(約90銭)の安価なパンを販売。
だが、パンの大きさは3年前の約半分。
民間のパン屋の値段は、公営店の5倍以上。
パンの売買が原因のけんかなど、先月以降、十数人が死亡。

穀物に加え、燃料高騰が重なるアフリカでも暴動が相次ぐ。
カメルーンでは2月、物価高騰を一因とする暴動で約40人が死亡。
3月のコメ価格が、1年前の2倍に上がったコートジボワールや
モーリタニアでも暴徒と警察の衝突で死者が出た。
世界第4位のコメ生産国バングラデシュも、
1万5000人以上の工場労働者が賃上げを求めてストに突入。

◇広がる「自国分確保」

国連食糧農業機関(FAO)は、最貧国の07~08年の穀物輸入代金が
前期比56%増加すると予測。
国際通貨基金(IMF)のストロスカーン専務理事は
「このまま高騰が続けば、戦争の危険を含めたひどい結果に直面」。

潘基文(バンギムン)国連事務総長は、「食糧サミット」を6月に開く方向。
事態を重くみた先進国も動き出した。
サルコジ仏大統領は、「直ちに食糧安全保障を強化しなくてはならない」、
今年度の緊急食糧援助に、昨年度比2倍の6000万ユーロ(約98億円)を計上。
米政府も、すでに最貧国に2億ドルの拠出。

食糧価格高騰が途上国を直撃するのは、
「先進国では、食費が家庭の支出に占める割合は1~2割、
途上国では6~8割にも達する」(FAO)。
途上国で教育費など「未来への投資」のカットに直結し、
長期的な悪影響を与える。

世界有数の小麦生産国カザフスタンは、自国での物価上昇に対応、
9月まで小麦の輸出禁止を決定。
ベトナムは、コメの輸出禁止措置を6月まで延長。

世界食糧計画(WFP)によると、援助用の食糧価格が約1年で5割上昇。
確保が困難に。
欧州委員会のマンデルソン委員は、
「世界が食糧安全保障の幻を追うなら、
保護貿易主義の連鎖を引き起こしかねない」と生産国を批判。

◇新興国での需要増/バイオ燃料ブーム/サブプライム危機

「食糧インフレの時代が来た」--。
シカゴ商品取引所(CBOT)の動きに詳しい米エコノミスト、ビル・ラップ氏は、
穀物価格の急騰を表現。
中国やインドなど、経済成長著しい新興国の食糧需要増が主な背景。

昨年1月、ブッシュ米大統領が一般教書演説の中で
バイオエタノール増産計画を打ち出すと、
直後からシカゴ市場のトウモロコシ価格が急騰、1年前の2倍の値。
昨夏、サブプライムローンの焦げ付きが世界的な金融危機に発展。
欧米金融市場で、住宅ローン関連の証券化商品に投資してきた
世界中の投機資金が、一斉に金融市場を離れた。

行き場を失った資金は、投資先を求めてさまよい、
値下がりしにくい市場、確実に需要を見込める市場に流れ込んだ。
一つがエネルギー市場で、もう一つが穀物市場。

原油は、新興国の需要増が価格を支えた。
穀物は、バイオ燃料ブームで、既に上昇基調に入っていた。
目をつけた投機資金が、穀物市場に流れ込んだ形で、
シカゴ市場では今年に入ってからも連日のように小麦やトウモロコシの
取引価格が史上最高値を更新。

◇サブプライムよりアジアへの影響大

アジア開発銀行(ADB、本部・マニラ首都圏)の黒田東彦総裁は、
「コメなど食糧価格の世界的高騰がアジア経済に与える影響は、
サブプライムローン問題より大きい」。

黒田総裁は価格高騰の要因について、
▽発展途上国での、穀類を多く消費する肉の需要の増加
▽オーストラリアの干ばつによる生産の減少--など。

総裁は、「かんがい設備や農道など生産増加につながる
インフラ整備の支援を強化したい」、
来月スペインで開かれるADBの年次総会でも主要テーマに。

http://mainichi.jp/select/world/archive/news/2008/04/19/20080419ddm003030091000c.html

2008年5月1日木曜日

ジャガイモが世界を救う?「国際イモ年」で注目

(CNN 4月17日)

世界の食糧危機は、ジャガイモのおかげで回避できるかもしれない。
ペルーの首都リマに本拠を置く国際ポテトセンターは今月、
「ジャガイモは未来の食糧」をテーマに会議を開いた。

国連食糧農業機関(FAO)は、世界の飢えや貧困、環境問題の
解決を担うジャガイモの重要性について認識を高めてもらう目的で、
今年を「国際イモ年」と定めている。

FAOによると、ジャガイモは栄養が豊富で、途上国の典型である
土地が限られ人手の多い場所での栽培にも適している。
このため、食糧安全保障と貧困対策に大きな役割を果たし得る。

ペルーでは、8000年前からジャガイモが栽培され、
国際ポテトセンターは農家などを対象に、ジャガイモ栽培量を増やし
品質を向上させるための支援を行っている。
品種改良により、少ない水で栽培でき、病気や気候変動にも
耐えられる種類の開発も目指す。

http://www.cnn.co.jp/science/CNN200804170036.html

日本・タイ王国友好親善さくらの記念植樹式 有住小で

(東海新報 4月30日)

バリアフリー社会実現を目指す住民有志で結成する
アクセシブル気仙(木川田典彌代表)主催の
「日本・タイ王国友好親善さくらの記念植樹式」は、
住田町の有住小学校で開かれた。

日本さくらの女王、タイ王国さくらインターナショナルプリンセスらが
記念植樹を行い、同校の開校を祝いながら両国の親善交流の深まりを願った。
植樹式は、(財)日本さくらの会(会長・河野洋平衆議院議長)の
国際交流親善事業の一環。
気仙では、平成16年から毎年行われているが、同町では初めて。

両国のさらなる親善と発展を願うとともに、上有住、下有住の両小学校が
統合した同校の開校を記念。

来町したのは、第22代日本さくらの女王の数井えりささん、
タイ王国さくらインターナショナルプリンセスの
ドュアンボーン・タナティップクンさん、
駐日タイ王国大使館公使参事官のサシワット・ウォンシンサワットさんら。

式典には、同校児童や地域住民ら300人余りが出席。
木川田代表らのあいさつに続き、児童が歓迎の意を込めて
校歌「鈴懸の詩」を合唱。
児童会長の紺野彩希さんは、「江戸時代から日本と付き合いのある
タイとサクラの木でつながることができ、うれしい。木と一緒に成長したい」。

数井さんとタナティップクンさんが来賓らとともに校舎前に苗木三本を植え、
美しい花が咲くことを期待しながら成長を祈願。
桜御影石製の記念碑(高さ約二メートル)の除幕。

町役場を表敬訪問して多田町長に記念品を贈るなど、
タイと日本、そして住田町との親善交流の進展を祈念。

アクセシブル気仙が、県更生保護協会(永野勝美会長)に対し
百万円を寄付。
木川田代表が細野松男常務理事に目録を手渡し、
犯罪や非行のない明るい社会づくりの推進を誓い合った。

http://www.tohkaishimpo.com/

「動きを考えながら」楽天野球塾で熱心指導

(東海新報 4月28日)

陸前高田市横田町の横田中学校グラウンドで、
プロ野球・楽天イーグルスの東北プロジェクト「野球塾」が開かれた。

元プロ野球選手の指導者は、参加した児童生徒に
「体の動きを考えながら」などのコツを伝授し、
練習と意識づけの大切さを呼びかけた。
プロ野球での経験をもとにした、技術と心理の両面のアドバイスや
ステップアップ指導が目的。同市で開かれるのは一年ぶり。

横田、広田両中学校、長部、TS両野球スポ少メンバー約80人が参加。
指導に訪れたのは、大船渡第一中学校OBで現役時代に
西武ライオンズなどで活躍した安部理ジュニアヘッドコーチと、
元日本ハムファイターズでオールスター戦にも出場した
今関勝ジュニアヘッドコーチ補佐
球団関係者らもスタッフとして訪れた。

開会式のあと、さっそくウオーミングアップトレーニング。
体の各部分の筋肉の動きを意識する大切さを指導しながら、
一時間以上にわたる入念なトレーニングが繰り広げられた。
今関さんは、軽快なトークで明るく説明。
児童生徒も元気な声を上げ、楽しそうにトレーニングに励んでいた。

後半は、ピッチングや打撃の基本指導。
ピッチングでは、基本となるボールの握り方から腕の振り方を丁寧に教え、
「捕手に向かって直線に」、「後ろ(背中)の目も意識して」などと呼びかけ。
広田中野球部の村上雄哉くん(2年)は、
「楽しかった。ダッシュ練習など、とても役に立つ練習が良かった」。

http://www.tohkaishimpo.com/

特集:シンポジウム「小坂流『逆ビジョン』への挑戦」 小さな地方から世界に発信

(毎日新聞 2008年3月23日)

自然や産業など地域特有の資産を生かした地域再生モデルを
世界に向けて発信するシンポジウム「小坂流『逆ビジョン』への挑戦」が、
秋田県小坂町にある「康楽館」で開かれた。
経済産業省の地域活性化事業の一環で、
同省文化情報関連産業課の前田泰宏課長が
「これまでの情報発信は、主に都市から地方に向かっていたが、
小さな地方から日本、世界に発信するのが『逆ビジョン』。
人、国、地球のことを考え発信しよう」。

パネルディスカッション「いぐ頑張ってるすなぁ・小坂」は、
参加者全員にピンクと水色の手袋が配られ、クイズ形式。
「小坂町の木は、(1)アカシア、(2)ベニヤマザクラ?」、
「携帯電話1万台から回収される金の量は100グラムより(1)多い(2)少ない?」
などが出題され、会場は笑いに包まれた。
   ◇  ◇
前田 97年に小坂町で世界鉱山サミットが開かれ、
川口博町長が「小坂宣言」を発表
その中に、「私たちも自然界の生命体として」とある。

川口 資源がなくなると、地域がゴーストタウンになる事例が
世界中にあったが、鉱石がなくなっても再生した街はある。
サミットでまとめたものが「小坂宣言」。
命あるものを大切にしたいという願いを込めた。

前田 鉱山の町として栄えた小坂町は、製錬で排出される
亜硫酸ガスの影響で環境を破壊した。
だが、製錬技術を活用したリサイクル事業を推進する「エコタウン事業」や、
はげ山になってしまった土地に木を植えて環境を再生させる事業など、
先進的な取り組みで地域を再生。

安田 堆積物でできる「年縞」が、イースター島(チリ)で
1200年に突然なくなったのは、ヤシの森を破壊したため。
秋田県は、自然と共生してきたから年縞が残っている。

宮脇 小坂町の木・ベニヤマザクラは、土地本来の植物。
本物の苗を植えれば、何百年も生きる。
木を植えることは、命と明日を植えること。そして、心に木を植えること。

◇30年前の環境、実現へ-国際日本文化研究センター・安田喜憲教授

地球環境問題を考えるとき、自然と人の共存があった30年前に帰ればいい。
100年以上前の江戸時代は共存のパラダイスだったが、30年で十分。
そのころの環境を実現する路線を作ることが、「逆ビジョン」。

環境改善の具体例として、兵庫県豊岡市が成功させたコウノトリの野生復活
30年前、コウノトリが「ばーっ」と舞う風景がどこにもあった。
同市は、ドジョウなどを生育させるため、農作物を無農薬で生産。
復活には、経済効果もあった。
コウノトリ見学のバスツアーで観光客が増え、無農薬米は通常の4倍の価格、
1丁1000円の豆腐も大ヒット。
コウノトリ野生復活に象徴されるように、
生き物の命を大切にするのが日本人の生き方。

秋田県に伝わる民俗行事「なまはげ」も、日本人の伝統的な心を伝えている。
子供は「なまはげ」が怖くて逃げ回り、人に迷惑をかけず、
まじめに正しく生きることをたたき込まれている。
だから、秋田県の人は優しくて品格が高い。

天皇陛下が、田植えと収穫をされるのはなぜか。
自らのエネルギーを投入して不毛の大地を美しく変えることが、
最高の喜びであることを示されている。
稲作での水の循環は、日本人の「慈悲の心」につながる。
自分の田んぼに入ってきた水は、きれいなまま隣につなぐ必要。
他人の幸せも考えなければ成り立たない。

秋田県には、「美と慈悲の文明」がある。
この世界観を、自信を持って広めてほしい。

◇命守る「森」広げたい-横浜国立大・宮脇昭名誉教授

30数億年前に地球で生命が誕生し、絶えることなく続いてきた。
私たちは、かけがえのない命を明日に残さなければいけない。
地球上では、鉄や石油化学製品など“(生物が)死んだ材料”による
街づくりや産業が発展。
だが、命を支える環境に対して現在の科学技術や医学は、まだ不十分。

命を支えるのは「ほんものの森」で、
人に残されたのは偽者を見分ける能力だけ。
日本人が作った鎮守の森は英知の結集で、
命を守る文化の基盤のシンボル

生きていくためには資源を使う。
食べるものはもちろん、身に着ける服も石油も植物が原料のため、
地球に生きる限り森が必要。

森は、芝生の30倍も緑が濃縮されているため、環境改善にも効果的。
温室効果ガス排出量の売り買いなど、小手先の対策だけではだめ。
古代文明のローマやメソポタミアは、常緑硬葉樹林をつぶして
都市や文明を作ったが、現代の文明先進国のエリアは
より北にある落葉広葉樹林帯に移った。
鉄と石油とセメントの中で、人間がいつまで生きていけるか考えてほしい。

ただ、共生は仲良しクラブではない。
少々苦手な相手がいても我慢し、競争しながら生きるのがいい。
厳しい環境で生きる植物が本物で、工場や都市とも共生できる。
阪神大震災では、最高の技術で作った鉄、コンクリートの建造物が壊れた。
だが、広葉樹を主とした森の木は倒れることなく、
さらに炎が広がることも食い止めた。
命を守る「ほんものの木」を植えよう。

◇循環型社会の構築を-川口博町長「第2次小坂宣言」

川口博町長はシンポジウムの中で、
循環型社会の構築などが柱の「第2次小坂宣言」を発表。
97年の鉱業技術の向上や地域振興を柱とした「小坂宣言」に続くもの。
川口町長は、「小坂宣言から10年がたった今、あらためて意義を再考して
広く世界に発信する」、

(1)「地球に優しい循環型社会」構築のための技術発展を推進、
(2)「生命力強化」を求めてワークライフバランス(仕事と生活の調和)の
健全化を推進する、
(3)地域が輝くことにより、日本そして世界が輝く、
3つの目標を実現するため、産学官が一体となって取り組むことを宣言。

◇パネリスト
国際日本文化研究センター教授・安田喜憲氏
横浜国立大名誉教授・宮脇昭氏
秋田県小坂町長・川口博氏
◇モデレーター
経産省文化情報関連産業課長・前田泰宏氏
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◇都市鉱山、「製錬」で再生-DOWAホールディングス・吉川広和代表取締役会長

鉱石から金属を分離する技術を利用したリサイクル事業は、
カナダ、ベルギーと並び世界で3カ所にしかない高度な技術。
明治から昭和にかけ、鉱業全盛の時代だったが、
小坂町にある「小坂製錬」の歴史は順風満帆ではなかった。
85年のプラザ合意で、円高が進んで鉱山の価値が下落し、
鉱石を残したまま閉山を余儀なくされた。

「地下資源から地上資源へ」。
その後の新事業の柱となった環境リサイクルは、
貴重な金属が多く使われているテレビなどの家電、自動車、パソコン、
携帯電話などが原材料。
これらを鉱石代わりにして製錬設備を使うと、地下資源より価値が高く、
まとめて「都市鉱山」と呼んだ。

資源は特定の国に偏在しているが、都市鉱山は日本にたくさんある。
海外も含め、集め方を工夫すれば宝の山。
06年ケニアのナイロビで開かれた有害廃棄物の越境移動を禁じる
バーゼル条約会議で、「使用済みの家電機器を買い取る」と発表、
タイ、シンガポール、マレーシアの3カ国から
使用済み携帯電話の回収試験を行った。
今後は、中国なども視野にいれた回収計画を進めていく。

今後の取り組みのポイントは、新型炉を成功させること。
電子基板などから銅を中心に、19種類の金属を回収できる
世界でもまれな製錬所。
リサイクル技術で世界をリードする小坂町になりたい。

◇北京の清華大で来月26日に講演

吉川広和氏は4月26日、中国・北京市にある清華大で講演。
住友商事と中国住友商事会社が同大で行っている共同研究講座の一つ、
「企業改革とリーダーシップについて」をテーマに講演。
住商と中国住商は、日中双方から学識経験者や財界人などを講師として
定期的に派遣しており、講座は今回で4回目。
吉川氏は、DOWAホールディングスのトップとして同社の経常利益を
7年で10倍にするなど、経営手腕を評価。
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◇「アカシア太鼓」、15人が豪快演奏

シンポジウムには、女性だけの太鼓グループ「アカシア太鼓」が出演。
地元の小中学生と高校生、町民ら計15人が
「楽しく打とう『夢』」、「清流」などを演奏。
日ごろ鍛えた豪快な動きでイベントに花を添えた。

http://mainichi.jp/select/wadai/news/20080323ddm010040147000c.html

2008年4月30日水曜日

守られたガンの楽園 伊豆沼の温泉掘削計画白紙に

(サイエンスポータル 2008年4月21日)

温泉掘削計画による生態系への悪影響が心配されていた
宮城県伊豆沼で、県が地主に与えていた掘削許可の期限が切れ、
日本最大級のガン類越冬地の自然が守られることに。

栗原市、登米市に広がる伊豆沼と隣接する内沼は、
毎年10万羽ものガン類が訪れる水鳥の越冬地で、
1967年に文化財保護法による天然記念物、
73年に宮城県自然環境保全地域、82年に国設鳥獣保護区に指定、
85年「水鳥の生息地として重要な湿地に関する条約(ラムサール条約)」
登録地に日本では2番目に指定。

温泉掘削計画に反対運動を続けてきたWWF(世界自然保護基金)ジャパン
によると、伊豆沼の北岸で温泉の掘削計画が持ち上がったのは2005年。
地元在住者から宿泊施設付の温泉建設計画の許可が申請されたのに対し、
県は伊豆沼の自然環境に配慮する必要性を認めながらも、
違法性がないことなどを理由に、2006年、掘削許可の判断。

掘削許可が出る前から、塩分を含んだ大量の温水が伊豆沼に流れ込み、
生態系に深刻な打撃を与えるとして、
地元に「ラムサール条約湿地・伊豆沼・内沼を温泉排水から守る会」がつくられ、
全国的な反対運動に広がっていた。

2年という掘削許可期間内に計画実施の動きがないまま、
3月24日の期限切れを迎え、「ガンの楽園は守られた」。

http://scienceportal.jp/news/daily/0804/0804212.html

大船渡高、甲子園外壁にツタを植樹する事業に参加へ

(東海新報 4月27日)

改修された甲子園外壁に、全国の高校で育ったツタを植樹する
「ツタの里帰り事業」の参加校に、大船渡高校(川村正道校長)が選ばれた。
同校のツタから採取した挿し木が球場側に送られ、
久々となる同校球児の甲子園出場を待っている。

事業は、改修で伐採された甲子園外壁のツタを再生させるもの。
平成12年の第82回大会前に、高野連などが加盟校4170校に
苗木を配布して準備し、全国で順調に生育した233校が選ばれた。

同校では、配布された苗木を野球部室内練習場の南側外壁に植え、
現在は高さ五メートルほどまでに成長。
吉田亨監督は、「自分が前に赴任した学校では育たなかった。
這うための場所があり、雨が吹き付けやすいなど条件がよかったのでは」。

校門を入ってすぐの坂道右手にも、壁一面を覆い尽くすツタがある。
昭和59年の甲子園春夏連続出場を記念したツタ。
違う時期、違う場所に植えられた二種類ともぐんぐん育ち、
同校と甲子園のゆかりを感じさせる。

佐藤章貴主将は、「坂道のツタは、ダッシュなどの練習を見守ってくれる
気がして思い入れが強い。ツタだけ甲子園に行かせるわけにはいかないので、
今年こそは自分たちもぜひ出場したい」。

59年当時、主将だった吉田監督は
「甲子園のツタと聞いても、ピンと来ない生徒もいる。
ツタの里帰りが、生徒に刺激を与えるきっかけになってくれれば」。

同校のツタは現在冬枯れしているが、毎年夏から秋にかけて葉が再生し、
夏の甲子園が開催されるころには瑞々しい姿を見せてくれる。

http://www.tohkaishimpo.com/

クローズアップ2008:インドネシア人受け入れ 介護現場と政府ズレ

(毎日新聞 2008年4月20日)

急激な高齢化で人手不足が懸念される看護や介護の分野に、
インドネシア人が入ってくる見通し。
同国との経済連携協定(EPA)が、国会で承認されるのが確実。
専門的・技術的分野以外で、日本が外国人労働者に
本格的に門戸を開放するのは初めて。
7月にも第1陣が来日するが、看護師、介護福祉士の団体は、
国内の労働環境の整備が先決だと反対。

「人手不足だから受け入れるのではない」。
厚生労働省は受け入れについて、「あくまでも特例的」と説明。
労働市場の開放を求めるインドネシア側の要求に基づき、
EPAで受け入れを盛り込んだことに対応した措置との姿勢。

資格がありながら働いていない潜在看護師が約55万人、
潜在介護福祉士が約20万人。
こうした人材の活用などで人手不足に対応することを考え、
外国人労働者に頼ることは想定していない。
国内の労働市場への悪影響を懸念し、受け入れは2年間で1000人
(看護師400人、介護福祉士600人)。

だが、現場の実感とは大きなズレがある。
介護現場は、夜勤や入浴介助など厳しい労働条件の下で、
うつや腰痛などで職場を去る人が後を絶たない。

06年の離職率は20・2%に達し、他産業に比べて高さが目立つ。
現場で働く介護職員は現在、約110万人。
今後10年間で新たに40万~60万人必要になるとみるが、
確保の見通しは立っていない。

03、06年の2度の介護報酬引き下げで、介護職員の賃金水準は
男性で一般労働者の約6割の月額22万7000円程度。
都市部を中心に人材難が慢性化し、外国人労働者に頼らざるを得ないと
考える施設経営者も少なくない。

そのツケは既に表面化。
東京都世田谷の特別養護老人ホーム「博水の郷」は今月から、
ショートステイ用18床を一時閉鎖。
3月末に職員の2割近い8人が退職したため。
都内の別の特養でも、介護職員が確保できず、
定員を一時減らして運営を続ける事態。
特養の入所待機者は、06年3月時点で38万6000人に上り、
04年11月の調査に比べて約5万人増。

日本看護協会や日本介護福祉士会は、
現段階での外国人労働者への門戸開放には反対。
資格を持ちながら就業していない日本人の復職で十分と考えるため。
夜勤など家庭との両立が難しいことが背景にあるとみられ、
日本看護協会の楠本万里子常任理事は
「勤務形態を多様化して人材を確保すべきだ」。
日本介護福祉士会の石橋真二会長は
「賃金を底上げし、将来に希望の持てる職場作りが必要」。

インドネシアでは、昨年11月にEPAに関する計画が発表後、
希望者を受け付ける保健省に、看護師らからの申し込みが相次ぐ。
ジャカルタ近郊の病院で働く看護師のムタジールさん(25)もその一人。
「日本の進んだ医療・看護技術を学べるのも魅力。妻も賛成してくれた。
月に2000ドル(約20万円)は稼げるんじゃないか」と期待。
現在の給料は、残業代を含み約200万ルピア(約2万2000円)。

日本で働くには、インドネシアの看護師資格を保有し、
2年以上の実務経験があることなどの要件。
給料については、EPAで「日本人と同等以上」と定めるが、
海外労働者派遣・保護庁(NBPPIW)の担当者は
「給料がどの程度確保されるかなど、日本側からの十分な説明はまだない」、
さらに待遇面などでの協議が必要。

介護福祉士として働くには、大卒もしくは高等教育機関(3年)の修了者で、
半年程度の介護研修修了などの要件。
インドネシアには現在、介護福祉士の研修システムがなく、
第1陣は看護師資格を持った人に限られる見通し。

だが、来年度以降に介護士の資格認定などを行う労働・移住省は
「与えられる仕事内容に比べて、学歴などの要求される条件が高すぎる」、
人材確保の見通しについて楽観していない。

日本はフィリピンとも、看護師、介護福祉士を受け入れるEPAを締結、
同国議会での承認手続きが遅れている。
日本側の受け入れ施設募集は、厚労省の外郭団体の国際厚生事業団が行う。
施設の概要、データをインドネシア側の海外労働者派遣・保護庁
(NBPPIW)に送る。
NBPPIWも、看護師、介護福祉士希望者のリストを同事業団に送付。

日本側施設は、インドネシア人希望者を20人程度選び、
インドネシア人希望者も、希望施設を20位まで選択。
双方の希望をコンピューターで組み合わせ、最適な受け入れを決める仕組み。
施設が決まると、希望者は来日し、研修施設で6カ月間、
日本語などの研修を受講。
その後、希望の施設で働きながら国家資格取得を目指す。
看護師は3年、介護福祉士は4年の在留期間内に国家試験に合格しないと、
帰国しなければならない。

◇文化の違いに配慮を-大野俊・九州大アジア総合政策センター教授

宗教や文化の違いへの配慮が必要。
インドネシアの大多数がイスラム教徒で、1日5回の礼拝がある。
豚肉食が禁止され、調理器具の使い分けを希望する人も。
日本の文化や習慣を押しつければ、摩擦に。
インドネシアは、20年間で百数十万人の家事職を含む
看護・介護職の労働者を海外に送り出し、
今回の派遣が日本進出の突破口との期待。

◇「さらに労働市場開いて」-インドネシア・労働者派遣庁長官

日本とインドネシアのEPAが批准に向けて動き出した。
柱となる看護師や介護福祉士の派遣実務を行う
インドネシア海外労働者派遣・保護庁のジュムフル・ヒダヤット長官に、
派遣の意義などを聞いた。

-インドネシア人の海外就労の実態は。

◆海外就労者は登録されているだけで430万人、
受け入れ先は40カ国以上。
05年に48万人だった年間派遣数は、07年に70万人を超えた。
自由化で先進国に労働力が移動するのは必然で、今後も増える。

-労働者派遣の意義は何か。

◆経済のグローバル化で、途上国の村にも先進国からあらゆるモノが入る。
途上国で、エレクトロニクスや自動車産業を興すのは難しく、
放置すれば格差は広がる。
途上国からの人材受け入れは、社会的公正のための新たな国際的仕組み。
日本では初めてのケースで、失敗はできない。

-今後について。

◆日本の産業界と意見交換すると、外国人労働者のニーズを実感。
これを機に、インドネシア人に対する理解が進み、
看護師や介護福祉士以外の労働市場を開くきっかけに。
==============
◇経済連携協定(EPA)

2国間あるいは複数国間で自由化のルールを定め、
経済の活性化を目指す。
自由貿易協定(FTA)が関税撤廃による貿易の自由化が中心なのに対し、
EPAは投資、知的財産、人的交流なども加わる。

http://mainichi.jp/select/science/news/20080420ddm003040042000c.html

2008年4月29日火曜日

スポーツと環境~[第4回・最終回] 荻原健司さん 『スポーツもエコも、続けるといいことがある』

(SSF 08.04.08)

―競技をする中で、環境問題を意識したのはどんな時?

スキー競技をする者にとって、スポーツ環境、つまり「雪」はとても重要。
冬に雪が降らなければ、競技ができない。
降ったとしても、良質の雪でなければ記録につながらないので、
気温や雪質の問題にはとても敏感。
90年代後半には、温暖化による雪不足で国際大会が中止や延期に。
ヨーロッパ、北欧の温暖化は深刻で、氷河が後退するという現象も。
トレーニング環境を求めて、年々標高の高い場所を目指す必要。
スキー競技の選手にとってはもちろん死活問題だが、
地球に住む人類全体にとっても大変なことが起こっている。

―雪不足で中止になったスキー(アルペン競技)のW杯大会が06-07年に3回。

W杯を中止にするのは、異例の事態。
テレビ放映権料やスポンサー企業による協賛金によって運営され、
相当な事情がなければ取り止めることはない。
人工降雪機も使えないほど、冬の気温が高かったということ。

―海外でのトレーニングや競技を通じて、影響を受けた環境への取り組みは?

フィンランドなど北欧の国々でトレーニングを積んでいましたが、
国全体を見ても人々の暮らしぶりは、とても「エコ」でした。
よく歩くし、電気などのエネルギーは無駄使いせず、自然に合わせて暮らす。
北欧スタイルと呼ばれるインテリアやデザインに象徴されるように、
自然と調和したスタイルが暮らしに溶け込んでいる。
国民の環境に対する意識が高い。

―普段の活動の中で、環境のために気をつけていることは?

環境先進国といわれている北欧などに比べ、
日本は過剰にエネルギーを使っていると感じる。
夜、街に出ると灯りやネオンの光がまぶしいくらい。
衛星写真で見た夜の日本は、国土の輪郭がわかるほど電気を使用。
フィンランドの生活を経験し、環境を意識した暮らし方が当たり前と思うように。
昼間でも、使わない蛍光灯は消して自然光を取り入れ、暑い時は窓を開ける。

―環境を守るために呼びかけたいことは?

環境問題への危機感をもち、自分にできる「エコ」を探してほしい。
例えば、「カーボンオフセット年賀」という年賀ハガキは、定価は55円で、
5円分が寄付として温室効果ガス削減事業に。
温暖化対策のやり方を考えた時、エアコンを止めてひたすら
暑いのや寒いのを我慢するのも一つの方法だが、
現代の快適な暮らしから何十年も前の暮らしに戻すのは難しい。
自分らしい環境保護への参加方法をぜひ工夫してもらいたい。

募金もいいことだが、方法としては少し創意工夫に欠ける。
生活の中で取り組めること、政治的な仕組み作りにアイデアを出した方がいい。
意識改革も大切。
海外のトップアスリートやセレブリティと呼ばれる人々が、
排気量の多い高級車じゃなく、ハイブリットカーに乗ったりする。
環境を意識した行動が、「かっこいい」と思われるような世の中にしたい。

―議員としての信念「国・政治・社会システムへの“スポーツマンシップ”導入」を、
環境問題にはどう活かすのか?

僕は、ノルディック複合競技というスポーツから多くのことを学んだ。
これからも雪の降る地球であってほしい。
自分でできる省エネ対策やエコをもっと積極的に発信し、
色々な場で発言することを心がけていきたい。

建設や食品など様々な偽装事件が起きて、
社会にスポーツマンシップが欠けている。
世の中全体が消費社会化してきた。
「お金を払っているんだから」と、教育や公共サービスの現場に
消費者意識をむき出しにしたクレーム。
教師が親のクレームに悩まされているという話も。
誰かが見ていなければ、アンフェアなことをしてもいい、
お金さえ出していればいい、という考えではなく、
誰も見ていないところでも、社会の一員として正しくふるまうことが大切。

環境問題に置き換えれば、それは一人ひとりが意識を持つこと。
例えば、誰も見ていなくてもごみは分別する。
もっと積極的に環境によいことをしてみる。
地球の一員として今何ができるかを考え、行動に移すことが大切。

―「R9プロジェクト」では、どんな活動?

R9プロジェクト」は、弟・次晴と二人で何か始めたいと思って発足。
歩くことを通じて、健康やコミュニケーション、身近な環境を見つめ直してほしい。
元スピードスケート選手の勅使川原郁恵さんも加わり、
ウォーキングイベントなども開催。
参加者から、「ゆっくり歩くことで、季節の変化や身近な自然を
意識するようになった」との声も。

身近な自然の変化に気づくことも、環境を考える第一歩。
「歩く」ことに着目したきっかけの一つとして、子どもたちのスポーツ離れ。
地方の学校で統廃合が進み、より遠方の学校へと通わなくてはならない
子どもたちが増え、多くはスクールバスで通っている。
長野県のある小学校では、校舎の700m手前でバスを停め、歩いて通学させる。
バスを使わないことは、CO2削減、体力づくりにもなって一石二鳥。
通学時間を共有することで、バスより長い時間のコミュニケーションが生まれる。
通学を、ウォーキングというスポーツと考えると、さまざまな可能性が広がる。

―スポーツ愛好者へ向けてのエコメッセージ。

「スポーツもエコも、続けるといいことがある」。
スイスのあるサッカー競技場は、屋根がすべて太陽光発電のソーラーパネル。
スポーツをする者が、必要なエネルギーは自分で賄うという考え方。
スタジアムで開催するスポーツイベントには、莫大な電力がかかる。
資源を消費するだけがスポーツではない。
人々が夢中になるだけの魅力があり、意志と仕組みがあれば
環境問題の改善に大きく貢献することができる。
ソーラーパネルの競技場は、その一つの道筋を示している。

スポーツを通じて、エネルギー問題や環境問題に一石を投じることができる、
ということを、スポーツを愛する人には忘れないでほしい。
スポーツにできるエコを、もっと世の中に広めるために、
僕は声をあげ続けていきたい。

http://www.sfen.jp/opinion/athlete/04.html

Tリンパ球の兄弟はBリンパ球ではなく食細胞

(理化学研究研究所 4月10日)

免疫・アレルギー科学総合研究センターの免疫発生研究チームは、
血液細胞のつくられる過程について、従来の学説を覆す発見。

リンパ球は、Tリンパ球とBリンパ球に分けられますが、
両者は長らく特別に近縁な細胞であろうと想定。

血液細胞の分化経路図としては、リンパ球共通前駆細胞と
それ以外の系列の共通前駆細胞に分岐するモデルが信じられてきた。
今回の発見は、従来のモデルが間違っていることの決定的な証拠を示す。

研究チームは、T細胞のもとになる前駆細胞は、
B細胞をつくる能力を失った後も、
マクロファージ(大食細胞)をつくる能力を保持していることを明らか。

従来のモデルに変わる新しいモデルとして、
Tリンパ球、Bリンパ球、赤血球系への分化は
いずれもミエロイド系(食細胞系)細胞をつくる能力を保持したまま
進行するというモデル(ミエロイド基本型モデル)を提唱。

この発見により、教科書に使われている血液細胞の分化経路図は、
書き替えを迫られることになります。

http://www.riken.jp/r-world/info/release/press/2008/080410/index.html

農学系ポスドクへの期待と現実

(サイエンスポータル 2008年4月10日)

日本学術会議の生産農学委員会農学教育分科会が、
社会の期待にこたえる農学教育の在り方について報告。

地球規模の問題解決に対する期待が大きくなっているのに対応し、
農学教育も分野横断型の教育体制に再構築する必要がある、と提言。
農学系の博士課程修了者の置かれた厳しい現実などから、
提言を実現することは相当、難しい。

農学系の大学院修士課程から博士課程に進学する人の割合は約20%で、
全大学の博士課程進学率(13.2%)に比べて高い。
専門志向が平均より高い。

博士課程修了者の身の振り方はどうか。
文部科学省「平成18年度学校基本調査報告書」によると、
博士課程修了者1,056人のうち、就職できたのは51.6%(550人)、
修了時に就職先が決まっていない人が37.4%(395人)。

別の調査(科学技術政策研究所)によると、
平成17年度の「ポストドクター等」は15,496人、
このうち農学系は1,618人と10.4%を占める。

「ポストドクター等」とは、「博士の学位を取得後、
(1)大学等の研究機関で研究業務に従事しているが、
教授・助教授・助手等の職にない人、
(2)独立行政法人等の研究機関において研究業務に従事しているが、
任期付きで、所属する研究グループのリーダー・主任研究員等でない人」
研究活動に従事しているものの、身分が不安定な博士課程修了者。
「ポストドクター等」を雇用しているのは、大学と独立行政法人が96.4%、
民間企業はわずか0.2%。

「平成18年度学校基本調査報告書」で就職できた農学系の
博士課程修了者とされている550人のうち8割以上は、
大学教員(19.0%)と科学研究職(62.2%)で占められている。
農学系博士課程修了者は、理学系、工学系などと同様、
それ以上に専門志向が強い。

「大学院はこれまで、博士論文の内容を国際基準に合わせるために、
各分野の国際専門学術誌での発表を半ば義務化してきた。
わが国の社会が問題としている具体的な研究課題は等閑視され、
…大学教員用の人材養成に偏りすぎ、企業、団体や行政機関等が
求める博士の資質や能力になじまず、
社会的な活動の範囲を狭くする結果に」

日本学術会議・生産農学委員会農学教育分科会報告に
盛り込まれた指摘とともに、
「農学系の博士に求められる能力は、専門分野の研究推進能力だけでなく、
地球規模での困難な課題を解決するための新たな学術を
創造的に構築する科学力であり、
新たな職業や産業の開発・展開に参加する実力」。

報告は、「博士のための労働市場を確保、拡大するために、
産業界、官界と大学院が連携して具体的な検討を始めるべき」と、
いくつかの具体的な提言。
大学院側が速やかな意識改革と体制の見直しができるかどうか、問われる。

http://www.scienceportal.jp/news/review/0804/0804101.html

2008年4月28日月曜日

スポーツと環境~[第3回] 岩崎恭子さん 『できることから始めよう!』

(SSF 08.03.25)

―どのような立場で「スポーツと環境」の問題に取り組んでいるのか?

2007年から、JOCの「環境アンバサダー」をつとめている。
各競技団体の推薦を受けて任命された環境アンバサダーが、現在11人。
私は、日本水泳連盟のスポーツ環境委員をつとめている。
普段から環境問題には興味を持っていたので、
改めて積極的に取り組んでみたいと思いました。

―オリンピックや海外の大会で、環境への取り組みを肌で感じるような経験は?

1992年バルセロナ五輪と1996年アトランタ五輪は、
環境を意識した取り組みは感じられなかった。
5年前にアメリカ留学時、学校や地域でも環境問題への配慮があり、
わずか5年の間に、環境問題が深刻になり、様々な呼びかけがあって、
一般市民の生活の中にまで浸透した。
日本の競泳の大会会場では、昔からごみの分別などの取り組みがあった。
最近は大会前のコーチ会議でも、ごみの分別や省エネについて話し合われる。

―普段の活動の中で、環境に気をつけていることは?

スイマーとして、“水”のことが一番気になります。
指導員として、子どもたちのレッスンを行なっていますが、
子どもたちは「水は水道の蛇口をひねれば出てくるもの」、
「プールに水があることが当たり前」と考えがち。
水も大切な資源であること、プールの維持に水だけでなく電気も使っていることを、
水泳を学ぶ中で考えてもらいたい。

泳ぐことを通じて子どもたちが、水の大切さを自ら気がつくように
質問したり、話をしたりしています。

私自身小さい頃から、「物を大切に」と教えられてきた。
一人暮らしを経験したことで、ごみの分別やリサイクルなど
「自分にできる環境への貢献って何だろう?」と考えるように。
環境問題って色々な説や考え方があり、
昨日まで推奨されていたことが今日は意味がないということも。
割り箸を使わないため、「マイ箸」の利用がすすめられている一方で、
割り箸を積極的に使った方がいいという考え方も。
そこが環境問題の難しさであり、報道の難しさ。

できること、身近なことから始めるのが大切。
無理せず自分で取り組みやすいことのほうが、結局は長続きする。

―子どもたちへの指導の他に、アスリートとして、環境問題を訴える活動は?

2007年の競泳日本選手権で、試合後に選手がエコを訴える
メッセージ入りの横断幕を持ってPR。
アスリートから環境メッセージを打ち出すという意味で、
現役選手が出てくるのは、水泳連盟としても初めての試み。
こうした活動が、観る人だけでなく、選手にとってもいいきっかけに。
「自分たちの言葉や行動は、世の中へのメッセージになるんだ」と。
環境アンバサダーとして、新聞や雑誌で発言する機会をいただきました。
これからも、水泳の素晴らしさや環境保全をもっと広めていきたい。

―水の環境という意味では、プールの他に海や河川もある。
SSFでは、「湘南OWS(オープンウォータースイミング)」を開催。
自然環境の中で泳ぐOWSについては、どうお考えですか?

2008年の北京オリンピックでOWSが正式種目になって、
日本だけでなく世界の注目が集まる。
一方で、選手が泳ぐ環境の汚染問題も心配。
私はプール専門で、OWSは泳いだことがない。
2001年に福岡OWS大会を見に行き、湘南OWSもぜひこの目で見たい。

シドニーオリンピック銅メダリストの中尾美樹さん(女子背泳ぎ200m)は、
現在ライフセービングに転向して活躍。
海で泳ぐと、自然環境の変化がより肌で感じられる。
OWS大会の前には、必ずビーチクリーンをして砂浜をきれいにする。
自分たちのスポーツ環境は自分たちで守る、という考え方は選手に必要。

―湘南OWSの開催前にも、ボランティアがスタート及びフィニッシュ会場の
砂浜を広範囲にわたって清掃。
ビーチクリーン活動で、2007年はなんとパソコンが捨てられていた。

すごいですね!海の環境問題も、年々深刻になっていると聞いています。
でも、ボランティアの活躍は素晴らしいなぁと思います。
どんなスポーツイベントも、ボランティアの力なしでは成り立たない。
アメリカに留学していた頃は、スポーツだけでなく、生活の場でも
ボランティアや地域の人どうしが力を合わせるのは当たり前。
そういう考え方が根づいている。

ボランティアやチャリティという考え方は、日本ではなじみがないが、
スポーツを通してなら受け入れやすくなるかも。
エコ活動もそうですが、やはり取り組みやすいことから、
自然とその精神を学ぶことができたらいい。

―最後に、スポーツ愛好者へ向けてのエコメッセージを。

レッスン時に子どもたちに伝えているのは、
「今ある環境への感謝の気持ちを大切にしてほしい」ということ。
プールの水もきれいな海も、当たり前にあるものではなく、
その場を利用してスポーツをする自分たちが守っていかなければいけない。
これは、どんなスポーツでも同じ。
まずは身近なことから、できることから始めましょう!

http://www.sfen.jp/opinion/athlete/03.html

日本のトップ研究機関の学術発信力

(サイエンスポータル 2008年4月15日)

トムソンサイエンティフィックが、重要な論文がどれだけ引用されているか
から算出した日本の研究機関のランキングを公表。

「ここ数年の傾向として、論文数、被引用数ともに漸増傾向で、
日本のトップ研究機関の学術発信はより活発化」と評価。
トップ20に入った研究機関は、昨年と全く同じ顔ぶれとなっており、
順位の入れ替わりも科学技術振興機構(6位から5位)、
理化学研究所(9位から8位)、東京医科歯科大学(20位から19位)が
それぞれすぐ上だった大学を追い越しただけ。

世界でのランクは、「日本順位で上位を占める研究機関の多くは、
昨年の国内順位を守りつつ、世界順位でも上昇の傾向がみられる一方、
国内順位を維持している研究機関であっても、
世界順位が下降している機関も見られる」という結果。

このランキングの特徴は、被引用数が多い順になっており、
研究者を多く抱える大きな大学、研究機関が最初から有利。
トムソンサイエンティフィックも承知の上で、
「下部組織名称や旧組織名により表れたデータをとりまとめて
ランキングに反映することによって、研究機関はその研究成果を
より高くアピールすることができる」。

こうした典型例として挙げられているのが、傘下の研究機関を
「Max Planck Society」、「Chinese Academy ob Science」という名称で
一まとめにしているドイツのマックス・プランク研究所と中国科学院。
マックス・プランク研究所は、今回併せて公表された「化学」「物理学」の
分野ごとランキングで昨年に続き世界1位、
中国科学院も「材料科学」分野で昨年に続き世界1位。

しかし、これらはこうした理由によるもので、
2004年まで「材料科学」、「物理学」分野で世界1位にランクされていた
東北大学(「材料科学」で世界3位)や東京大学(同「物理学」で2位)の
研究活動が低下したと見る必要はない。

被引用数の総数で国内上位20位にランクされた各研究機関について、
平均被引用数の数値も併記されている。
仮にこれで上位20位をランク付けし直したとすると、
1位、科学技術振興機構(平均被引用数16.55)、
2位、理化学研究所(14.42)、
3位、自然科学研究機構(13.30)、
4位、東京医科歯科大学(12.94)、
5位、東京大学(12.81)、
と順位はだいぶ入れ替わる。

http://www.scienceportal.jp/news/review/0804/0804151.html

気仙スギの家を中国へ 材料加工は住田木工団地で仙台の住宅建設会社

(東海新報 4月24日)

仙台市の住宅建設会社・スモリ工業(株)(須森明社長)は、
経済発展著しい中国市場進出の計画を進めている。
気仙スギを中心に、県産材を用いた住宅建設を東北、関東一円で手掛け、
材料加工の多くを住田町の木工団地三事業体が担っている。

中国市場参入の足がかりとして、22年に中国で開催される
上海国際博覧会(万博)へのモデル住宅出展も視野に入れ、
実現すれば将来的な気仙スギの需要拡大に弾みがつきそう。

スモリ工業の木造住宅にあたっては、気仙スギをはじめ
県産カラマツの集成材を組み合わせたパネルを主に使用。
集成材を生産できる工場が宮城県内にはないといい、
かねて住田町の木工団地に発注。

同団地は、三陸木材高次加工協同組合、協同組合さんりくランバー、
けせんプレカット事業協同組合の三事業体からなる。
三木が集成材、ランバーがこの集成材用のラミナ(薄板)、プレカットが
これらを組み合わせた建築材を主に手掛けるというシステムを構成。

交渉段階にあるという万博出展が実現した場合、
同団地で作られたパネルを船で現地に運び用いる予定。
パネルには、柱や窓枠が付いているため、
組み立て作業を一日程度で終えることができる。

中国では、年500戸ほどを日本のハウスメーカーが手掛けている。
須森社長は、「建築材は地元で消費されるのが大前提だが、
業界はそうも言っていられない状況。
植栽から伐採、パネル化までを一つの町の中で完結させる仕組みと、
各工程での職人たちの姿勢に感銘を受け、取り引きさせてもらっており、
中国市場の開拓によって、東北の山を元気づけられればうれしい」。

3事業体のうち、三木とランバーは経営危機が表面化し、
町から3年間で約7億9千万円という多額の融資を受けたうえで再建途上。

多田欣一町長は、「国内の住宅着工は年間110万戸ほどで、
中国ではこの20倍ほどあると聞いている。
大いに希望の持てる取り組みであり、木工団地はじめ地域にとって朗報」。

両事業体の副支配人も務める、けせんプレカットの泉田十太郎専務は
「中国の富裕層は、国産材住宅建築のターゲットとなりうる。
今回の挑戦は、気仙スギなど県産材が海外に進出する機会」。

http://www.tohkaishimpo.com/

2008年4月27日日曜日

指導的立場にある科学者の役割

(サイエンスポータル 2008年4月17日)

シンポジウム「iPS細胞研究の展望と課題」で、
英国人科学者、ジョン・ガードン・ウエルカム・トラスト
がん研究ガードン研究所教授の興味深い発言があった。

ガードン教授は、1962年アフリカツメガエルの体細胞から
クローンをつくった業績で、生物学の歴史を語る際に
必ず言及される高名な研究者。

「頼まれて聖職者に対し年に1度、レクチャーをしている。
聖職者というのは多くが、生命を扱う研究に敵意を抱いている。
レクチャーでは、胚の発達などについて話をし、
聖職者たちが自分たちだけで話し合って、質問をしてくる。
こちらから聖職者に質問することもある。
レクチャーをするたびに、研究を理解する聖職者たちが増えてくる。
今では、85%の聖職者たちが支持してくれる。

10個に8個の胚は、着床しないというのが自然の割合。
初期段階の胚が研究によって失われるデメリットと、
研究の発展によってもたらされる潜在的なメリット。
注意深く説明すると、ほとんどの人はわかる。
研究は続けるべきだ、と言うようになる」

シンポジウムでは、ガードン教授、
山中伸弥・京都大学iPS細胞研究センター長などの講演に続き、
パネルディスカッションが行われた。
クローン研究や胚性幹細胞(ES細胞)などの研究に伴う
倫理的な問題について、ガードン教授の答えは以下の通り。

日本でも近年、科学技術リテラシー向上の必要が強く叫ばれている。
シンポジウムやサイエンスカフェなどの場で、
自らの研究内容を積極的に伝えようと努力する研究者たちは
ひところに比べ大幅に増えているように見える。

指導的な立場にある研究者も、総合科学技術会議をはじめ
さまざまな公的な場で、政治家や官僚に対し提言や助言をすることにより、
科学技術政策に実際に関与している。
科学技術リテラシー向上のために、アカデミズムに求められることは、
立法、行政への影響力をさらに強めることに加え、
それ以外で大きな社会的影響力を持つ人々、集団に対する
双方向型のリテラシー向上策ではないだろうか。

特に指導的な立場にある研究者に期待される役割を考えると、
ガードン教授のような活動は大いに参考になりそうな気がする。

http://www.scienceportal.jp/news/review/0804/0804171.html

合併必要26人 大船渡市議選候補アンケート

(東海新報 4月24日)

大船渡市議選(定数26)の立候補者30人に、
同市、陸前高田市、住田町との合併問題などに関するアンケートを実施し、
全員から回答を得た。
多くの候補が、気仙合併を前向きにとらえている一方、
国の合併新法の期限(2010年3月末)については
「こだわらず議論を」との声が半数以上。
「合併が必要」との回答は26人。
合併新法の「期限にこだわらない」との回答は16人で、
「期限内に合併すべき」(10人)を上回った。

「合併新法期限内にこだわらない」と回答した人たちの主な理由は、
「住民合意が前提」、「3市町の意識格差が大きすぎる」、
「陸前高田、住田の住民意識を優先すべき」など。
「時間的に無理」との現実的な指摘も。

「合併新法期限内に合併すべき」と回答した人の理由は、
「国の財政支援があるうちにすべき」、
「いつまでも議論に時間を費やすべきでない」など。

「当面合併は必要ない」とした意見では、
「旧三陸町との合併によるメリット、デメリットが検証されていない」との批判。

早期合併には慎重な見方が多く、議会の協力を得ながら議論を盛り上げたい
とする行政の思惑とは、やや温度差がある結果。

定数に関する質問は、「削減すべき」が19人。
大船渡市議会の定数は、地方自治法の上限。
削減の理由は、行財政改革の視点などからで、具体的に2―6減までさまざま。

「現状維持」としたのは11人で、合併で大幅に地元議員が減った
三陸町の候補者や共産党候補などが求めた。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20080424_5

女性長寿は北中城村(沖縄) 市区町村別寿命調査

(岩手日報 4月25日)

平均寿命が最も長い市区町村は、女性が沖縄県北中城村で89・3歳、
男性が横浜市青葉区で81・7歳だったことが、
厚生労働省「2005年市区町村別生命表」で分かった。
市区町村別の公表は、2000年の生命表に続き5年ぶり2回目。

2―5位は、女性が兵庫県猪名川町(88・7歳)、長野県高森町(88・5歳)、
沖縄県豊見城市(88・5歳)、同県南城市(88・3歳)で、
沖縄の長寿が目立った。

男性は、川崎市麻生区(81・7歳)、東京都三鷹市(81・4歳)、
同国分寺市(81・4歳)、同練馬区(81・2歳)と首都圏が上位。

平均寿命が最も短いのは、男性が前回と同じ大阪市西成区の73・1歳。
次いで青森県板柳町(75・2歳)、同県鰺ケ沢町(75・2歳)。

女性は東京都奥多摩町(82・8歳)、青森県大鰐町(83・1歳)、
東京都日の出町(83・3歳)の順。

全国平均寿命は、男性が78・8歳、女性が85・8歳で、差は7・0年。
市区町村別にみると、男女差が最も大きいのは
沖縄県北中城村の10・4年で、最小は東京都日の出町の4・6年。

本県の平均寿命は、男性77・8歳、女性85・5歳。
市町村別では、寿命が長い順に男性は、滝沢村79・1歳、
盛岡市79・0歳、八幡平市78・8歳。
女性は、大船渡市、滝沢村86・1歳、盛岡市86・0歳。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20080425_9