2008年4月19日土曜日

ロボットスーツを量産化 ベンチャー企業が起工式

(共同通信社 2008年4月16日)

体に装着して手足の動きをモーターで補助し、
高齢者の歩行などを可能にするロボットスーツ「HAL」の量産化に向け、
開発者である筑波大の山海嘉之教授らが設立した

ベンチャー企業サイバーダインの研究開発センター起工式が、
茨城県つくば市内で開かれた。
センターは、同社の研究・生産の拠点として9月末に完成、
10月に稼働予定。

当面は年間400-500着を生産し、数年で数万着規模まで広げる計画で、
大手住宅メーカーの大和ハウス工業と提携し、
病院などの施設を中心にレンタル用に販売する方針。

維持費を含むレンタル料は、両足タイプの場合で施設向け月20万円以内、
個人向け月10万円以内に抑える予定。
事前の受付では、筋肉が萎縮する筋ジストロフィーの患者ら
数百人から問い合わせがあったという。

HALは、脳から伝わる電気信号を皮膚表面に付けたセンサーで
読みとり、モーターで体を動かす補助をする。
高齢者や障害がある人の歩行補助、重労働者の負担削減などが期待。
山海教授は、「世界への展開も進めていきたい」。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=71256

脳内分泌たんぱく質アクチビン、うつや不安障害に関与

(毎日新聞社 2008年4月3日)

不安障害やうつ病などの病気に、脳内で分泌される「アクチビン」
というたんぱく質が関与している可能性があることを、
三菱化学生命科学研究所の研究チームがマウスの実験で突き止めた。
「従来の薬が効きにくい不安障害に対する治療法開発に役立つかも」。

遺伝子操作でアクチビンを働きにくくしたマウスと、
アクチビンの分泌量を増やしたマウスを作り、行動を調べた。
アクチビンが働きにくいマウスは、明るい場所や高い場所を怖がる
不安行動が強まったが、アクチビンが増えたマウスは
そうした場所を怖がらず、大胆に行動するようになった。

うつ病などになると、脳内の新たな神経生成が抑制されることが
分かっているが、アクチビンを働きにくくしたマウスの脳では、
神経生成が正常マウスの2割程度になることも確認。

世界保健機関(WHO)によると、不安障害やうつ病の人は
世界の成人の約1割に達するとされ、
うち数割は従来の薬が効かない難治性だという。

井ノ口馨・同研究所主任研究員は、
「アクチビンの調節が、不安治療の新たなターゲットになる可能性がある」。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=70281

がんタンパク質作るピロリ菌 日本人に多い東アジア型 メカニズム 北大教授が講演

(東京新聞 2008年4月8日)

北海道大の畠山昌則教授が、人の胃のなかにいる
ヘリコバクター・ピロリ菌が胃がんを引き起こすメカニズムについて講演。
畠山教授らは、ピロリ菌がつくるタンパク質
CagAがマウスの体にがんを発生させることを実証
細菌によるがんタンパク質の存在を世界で初めて証明。

胃の粘膜に接着したピロリ菌は、極細の管を延ばして胃の細胞に刺し、
CagAを細胞内に注射。
CagAは、細胞内のタンパク質PAR1と結合
粘膜細胞の結合状態を破壊するなどして、
固く結合していた粘膜の細胞をばらばらにし、胃炎や胃潰瘍を引き起こす。

CagAは、細胞の増殖に関係する別のタンパク質SHP-2とも結合
異常な増殖信号を送る。
この2つの異常が、相互に作用して細胞のがん化が進む。

遺伝子操作技術を使って、CagAを導入したマウスをつくったところ、
マウスに胃がんや小腸がん、白血病などが発生。
CagAが、がんタンパク質であることが分かった。

日本人の約半数が、ピロリ菌に感染。
ピロリ菌にはさまざまな種類があり、大きく、CagA遺伝子を持たないもの、
欧米型のCagA、東アジア型のCagA遺伝子をもつタイプの三つ。
日本人は、欧米に比べて東アジア型が多く、
このことが欧米に比べて日本人に胃がんが多い理由。

この研究成果は、ピロリ菌の除菌が胃がん予防に有効であることを
あらためて証明するとともに、CagAを標的とした新薬の可能性を示す。
CagAが、マウスに各種のがんを引き起こすことから、
「小腸がんや大腸がんも、同じようなメカニズムで起こっている可能性」、
腸内にも発がんに関係する同じような細菌が存在する可能性を指摘。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/technology/science/CK2008040802002011.html

万能細胞 iPSの奇跡 (番外編)iPS細胞のこれから 山中伸弥教授に聞く

(読売新聞 2008年2月10日)

様々な臓器・組織になる能力を秘めた新型の万能細胞
「人工多能性幹細胞(iPS細胞)」。
人の皮膚からiPS細胞を初めて作製し、注目を集めている
山中伸弥・京都大教授に、研究の見通しなどを聞いた。

――研究生活に変化は。

山中 今までと変わりはないが、世界中から再生医療をはじめ
様々な共同研究の申し入れがきている。
米国からは、特定の病気のiPS細胞を作り、薬の候補となる
化合物探しや副作用の実験に使いたいというのが大半。
できるだけ要望に応じられるよう、若手研究者にiPS細胞の培養を
指導しているが、提供には限りがある。

――iPS細胞研究センターが発足、オールジャパン体制も整いつつある。

山中 まだレースは、マラソンで言えば、折り返し手前の10キロ地点を
過ぎたばかりで、先は長い。
臨床や創薬への応用には、やらなければならないことが多い。
安全性の向上、狙った細胞への分化(変化)誘導、
動物を使った移植の実験。
国内の協力体制を強化し、いかに効率よく早くやるかだが、
欧米諸国の目標も同じ。見通しは非常に厳しいと思っている。

――それはなぜか。

山中 日米の幹細胞研究は、マラソンでいえば、
米国は研究者を支援する体制が整い、個人に合わせた
ウルトラスペシャルドリンクを1キロごとに置いてある。
一方、日本は1人で、「水があればいい。根性でいけ」という。
同じコースで走ったら、勝てるわけがない。

今回、国内から予想を上回る支援をいただいた。
それでも、共通のドリンクの粉を水に溶かして飲めるようになった程度。
米国に勝ってくれという期待はあるだろうが、そう甘くはない。
日米の差は、冷静に判断する必要がある。

――どうすればいいか。

山中 できることは二つある。一つは棄権すること。
もう一つは、負けるとわかりつつも頑張る。
棄権すると、ここから先の知的財産はすべて外国のものになる。
日本発の技術が応用された時、莫大な特許料を払わなければならなくなる。
だから棄権はできない。
米国の10分の1でもいいから、知財を出し続ける努力をすることだ。
それには、対等に勝負できる体制が必要。

――若い研究者の育成が重要だ。

山中 欧米と比べ貧弱な環境のなか、日本の若手研究者は頑張っている。
研究環境をよくすると同時に、基礎研究の地位を上げることも重要。
資源もない日本で、科学技術は世界で優位に立てる原動力。
基礎研究に、若い人が集まるようにしないといけない。

――研究の展望と課題を。

山中 iPS細胞を作製するのに導入した3遺伝子が、すべてではない。
数千個の皮膚細胞からできたiPS細胞は、たった1個。
なぜその1個ができたかがわかれば、効率を高めることができる。
遺伝子の代わりに、万能性を引き出す化合物の探索も、
米国相手に苦しい戦いになるだろうが、
先を越されても、もっと優れた化合物を見つければいい。

臨床に近づく分化誘導は、ES細胞(胚性幹細胞)の成果が利用できる。
国の規制があるES細胞とは違い、iPS細胞は自由に使えるので、
研究のスピードは格段に上がるのではないか。

◆冷静に現状認識

大胆で斬新なアイデアを基にパイオニアとなった山中氏の
現状に対する認識は努めて冷静だ。
国際間の競争が激化する中、焦って結果を求めることには慎重で、
日本チームのリーダーとして新たな切り口で展望を探ろうとする決意。
10年、20年先に花開く研究や人材育成を見据えているのでは。
その戦略性と研究への真摯な取り組みを、見届けたい。

やまなか しんや
1962年、大阪府生まれ。神戸大医学部卒。
大阪市内の病院で整形外科医として勤めた後、
大阪市大大学院、米グラッドストン研究所などを経て、
99年に奈良先端科学技術大学院大助教授。
2004年、京都大再生医科学研究所教授、
今年1月、iPS細胞研究センター長。

http://www.yomiuri.co.jp/science/ips/news/ips20080210.htm

2008年4月18日金曜日

「いわて蔵ビール」が世界ブランドへ第一歩

(岩手日日新聞 04/16)

一関市田村町の世嬉の一酒造(佐藤晄僖社長)は、
同社が製造した地ビールを米国で販売。
「地域の人が誇れるビールに」、という思いから5年がかりで輸出。
15日には横浜港に向けて初出荷し、
「いわて蔵ビール」が世界のブランドとなる第一歩を踏み出した。

同社は、国内外の品評会に地ビールを出品し、入賞経験もあるが、
本場の欧州や米国の人たちにも評価されるようなビール造りを目指す。
「世界で売っているビールと、地元の人が自慢できるものにしたい」と
輸出について5年ほど前から構想を練り、厳しいラベル審査などを経て
晴れて輸出が正式に決まった。

地ビールメーカーでは、新潟県の「エチゴビール」や、
茨城県の「常陸野ネストビール」が輸出。
輸出先は、「ビールの本場にしたい」とドイツ、英国、米国を視野に入れ、
特に地ビール造りが盛んな米国をターゲット。

第1回の輸出ビールに選んだのは、
「岩手の食材を使ったものにしたかった」という思いから、
広田湾産のカキを使い醸造した黒ビール「オイスタースタウト」。

輸出に向けては、数カ月間冷蔵させなければならないため、
品質を安定させることに気を配った。
第1弾は、1ケース24本入りで12ケースを出荷。
日本酒を輸出している商社を介し、横浜の税関を経て海路で
米国カリフォルニア州に運ばれる。

同州の酒販店などで5月ごろから販売される予定。
今後も定期的に輸出するといい、醸造責任者の佐藤航さん(36)は
「できるだけ日本らしいものを提供したい」と
オイスタースタウトに続くビールも検討。

「次は英国輸出を目指したい」と夢を膨らませる佐藤さんは、
「自慢できるビールにするための第一歩。
いつか米国に行って輸出したビールを買って飲みたい」。

http://www.iwanichi.co.jp/ichinoseki/item_5267.html

神経幹細胞をリズムで制御 タンパク質の働き発見

(共同通信社 2008年4月10日)

神経幹細胞からニューロンなどの神経細胞がつくられる際に、
幹細胞内でHes1というタンパク質が、
リズミカルに増減しながらタイミングを制御しているのを
京都大の影山龍一郎教授らがマウス実験で発見、
米科学誌ニューロンに発表。

影山教授は、「このリズムを操作できれば、
実験室内で幹細胞を維持する手法につながる。
再生医療に役立ちそうだ」。

影山教授らは、マウス胎児の脳に含まれる幹細胞を分析し、
Hes1が2~3時間周期で増減を続けていると、
幹細胞が自分のコピーをつくり続けるのを発見。

一方、Hes1が減ってほとんど働かなくなるとニューロンなどに分化。
神経幹細胞は、移植による神経変性疾患などの再生医療に役立つと
期待されるが、体外でほとんど増殖しないのが課題。
影山教授は、「治療用細胞の維持や増殖、分化制御などに応用できる」。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=70705

針葉・広葉混交林化が重点課題に

(サイエンスポータル 2008年4月11日)

破綻しつつある日本の林業立て直しの期待がかけられている
針葉樹・広葉樹の混合林育成と、木材としての価値が高い
針葉樹の長期伐採化を目指す技術開発を今年度の重点課題。

重点課題に選ばれたのは、人工の針葉樹林に侵入した
広葉樹の生育状況を調べ、針葉・広葉樹の混交林化を
むしろ積極的に進めるための技術開発を目指す取り組みで、
近畿中国森林管理局森林技術センターが中心機関。

低コストで木材を安定的に供給できる持続可能で多様な
森林造成技術の開発という重点課題については、
九州森林管理局森林技術センターが中心機関。

日本では、太平洋戦争後の増大する木材需要に対応するため、
1955年ごろから広葉樹林をスギやヒノキといった針葉樹の
人工林に転換することが推進。

ところが、輸入材の増加により、1998年を境に
国産スギ材が米国からのツガ材より価格が下回る。
1955年~1960年代に、一斉に植林された木が伐採期にかかり、
国産材の価格はさらに低下傾向。
林業経営の難しさから、植林をあきらめ伐採した後、
放棄林になったところも増えている。

林業を再生するため、水源かん養機能あるいは生物多様性の保全、
地球温暖化対策といった地球規模の課題に貢献する
新たな森林の価値に重きを置き、
針葉樹と広葉樹が混在する複層林の育成を進める動き。

スギやヒノキといった価値の高い針葉樹は、より長く育成した後、
伐採した方が、コストと森林保全の両面から有利だとする考え方に基づく
長伐期化」が、これからの林業にとって重要な課題。

http://www.scienceportal.jp/news/daily/0804/0804111.html

万能細胞 iPSの奇跡 (2)相次ぐ成果 情報共有へ

(読売新聞 2008年2月3日)

「網膜細胞を作るだけなら、1年もあればできます」
理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(発生・再生研)の
高橋政代・チームリーダーは、自信たっぷりに言い切った。

山中伸弥・京都大教授が、世界に先駆けて作製したiPS細胞は、
体の様々な組織・細胞に変化(分化)する能力がある。
万能細胞と呼ばれるゆえんで、国内外で研究が活発化。

高橋さんらのターゲットは、網膜の奥にある光を感じる視細胞と、
それを助ける色素上皮細胞。
網膜色素変性症などの患者に移植できれば、
失われた視力を取り戻せるかも知れない。

2005年に、マウスのES細胞から視細胞を作ることに成功。
人のES細胞でも成果をあげている。
昨年からマウスのiPS細胞を使った実験を始め、
すでに網膜細胞の一部を作り出すことに成功。
「iPS細胞は、ES細胞に驚くほど似ている。
ES細胞でできることは、同じようにできるはず」。

中内啓光・東京大医科学研究所教授らは、
マウスのiPS細胞から血小板の分化に成功。
血小板がうまく作れない再生不良性貧血の治療への応用が期待。
近く人のiPS細胞の研究にも着手する。
中内教授は、「臨床応用には、今より100倍の効率で作らないといけない。
ここ1、2年で達成したい」。

岡野栄之・慶応大教授らのグループは、脊髄損傷の再生医療を目指す。
マウスiPS細胞を、神経の元となる細胞に分化させて
脊髄損傷のマウスに移植、効果を確認した。
今は、人のiPS細胞を使ってマウスに移植する実験を進めている。

西田幸二・東北大教授らは、iPS細胞から角膜の細胞に分化させる
研究に取り組んでいる。
できた細胞からシートを作製、角膜移植に使いたい考え。
足の筋肉から作った細胞シートで心臓病の治療に成功した

大阪大の澤芳樹教授も研究を開始。
iPS細胞からの心筋再生に挑む。

一方で、がん化のおそれなど課題も多い。
花園豊・自治医大教授は、
「安全性の評価には大型動物の実験が欠かせない」。

国際競争はさらに激化する。
政府は万能細胞研究に08年度30億円以上を投じ、全面的に支援。
山中教授らは、京都大iPS細胞研究センターを中心に、
国内の研究者を結集したコンソーシアム(共同体)を作り、世界に対抗。
岡野教授は、「チームジャパンが動き出せば、
情報が早く普及するので、研究が加速する」。

コンソーシアム長となる西川伸一・発生・再生研副センター長は、
「幹細胞の研究者だけでなく、医療現場や企業など幅広い分野から
人材を集め、ここの研究成果をみんなで使えるようにしたい」。

http://www.yomiuri.co.jp/science/ips/news/ips20080203.htm

2008年4月17日木曜日

国立天文台と友好協定 奥州市

(岩手日報 4月16日)

奥州市は、国立天文台(観山正見台長)と
「相互友好協力協定」を締結。
奥州市の国立天文台水沢VERA観測所を中心に、
研究者の定期的な講演会などを通じて、
市民が「地域財産」に対する意識を共有する。

国立天文台が、地方自治体と協定を結ぶのは初めて。
同観測所は、月探査プロジェクトの中心的役割を担う。
市は、宇宙教育に親しむ拠点づくりを目指すことで、
将来の人材育成にもつなげたい考え。
調印式は20日、奥州市の国立天文台水沢VERA観測所に
開館する奥州宇宙遊学館の式典で行われる。

協定は、宇宙や自然、科学、文化面などで相互に協力することを主眼。
遊学館で天文台関係者と市民が交流する「サイエンスカフェ」や、
研究者による講演会開催などが見込まれる。

国立天文台は、三鷹市の特定非営利活動法人(NPO法人)が
運営する三鷹ネットワーク大学に参加。
天文学に親しむ講座を開くなど、市民らと交流。

地方自治体と協定を結び、講座などを開催したケースはなく、
国立天文台水沢VERA観測所の及川信一総括補佐は、
「遊学館を窓口にして、どんどん地域貢献していきたい」。

相原市長は、「遊学館の開館を契機に、国立天文台と連携を深めたい」、
市総合政策企画課の佐々木禅課長は、
「将来の人材育成にもつなげたい」と期待。

同市では、文部科学省の理数教育強化校
スーパーサイエンスハイスクール(SSH)の指定を受けている水沢高で、
授業のカリキュラムに同観測所を利用した内容が組み込まれるなど、
既に一部で連携は進んでいる。

小中学生らで構成する「日本宇宙少年団水沢Z分団」(約50人)もあり、
同観測所でロケットの仕組みや科学実験を学んでいる。

水沢南小の羽田野光夫校長は、
「子どもたちを受け入れてくれる態勢が整うことはありがたい。
教授らの出前授業などにも期待したい」。

国立天文台 国内の天文学の最高研究機関。
観測局は奥州市のほか、鹿児島県薩摩川内市、東京都小笠原村、
沖縄県石垣市にあり、銀河系の精密な立体地図をつくる
プロジェクトなどを進めている。

奥州市の水沢VERA観測所には、月周回衛星「かぐや」に携わる
RISE月探査プロジェクトの拠点がある。研究員は計約150人。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20080416_3

そろそろ?環境変化で心身に変調 五月病、時期早くなる傾向

(毎日新聞社 2008年4月11日)

就職や大学入学直後に心配される、いわゆる「五月病」。
転職者も含め、急激な環境の変化などから
心身に不調を来すことも少なくない。
重症化して退職せざるを得ないケースもあり、
周囲の配慮や、必要に応じて適切な治療も必要。

働く人のメンタルヘルスに詳しい神田東クリニックの島悟院長は、
「新入社員が心身の不調を来す時期が早くなり、
入社直後に出社できなくなる人もいる」。

ある新卒の会社員は、入社式当日の午後から体調を崩して早退、
2日目に同クリニックを受診。
結局、体調が回復せず、仕事をする前に休職。
入社式前日に、「辞めたい」と会社に電話をしてきたケースも。

五月病は、うつ状態など、新しい環境に適応するときの
心身のトラブルを指すことが多い。

適応の過程で、(1)身体(微熱、頭痛、じんましん、食欲不振)、
(2)心(いらいら、不安、落ち込み)、
(3)行動(口数が少なくなる、過食、酒やたばこが増える)。

身体の変化は、風邪や花粉症に似ているものが多く、
身体症状が出ても無理をしてしまいがち。
医学的には、症状の程度、期間によって、「適応障害」「うつ病」と診断。

島院長は、「就職できた安心感や、少し職場や仕事に慣れて
緊張が解けたことなどを背景に無気力になるという、
かつての『五月病』のイメージとは違う。
環境の変化自体に耐えられない人が多くなっている」。

自分の気持ちや不調を周囲に伝えられず、
ある日突然出社できなくなる人も多く、
上司や先輩、家族が前兆を見つけるのが難しい。
転職した人の場合、社会人経験はあっても、新しい職場の文化や
仕事のやり方になじめず、悩みを抱えるケースも増えてきた。

大学生の場合はどうか?
下山晴彦・東京大教授(臨床心理学)によると、
最近は入学したことだけで安心し、五月病になるというタイプの人は少ない。
入学直後よりも、自分で研究テーマを決める時期などに、
心の健康に問題が生じやすい。

講義や研究室を選ぶ時などに自分で選択、行動できずに自信をなくし、
うつ状態になる場合も。
失敗した自分を認められずにできないことを避けるようになり、
卒業、就職できない深刻なケースも。

五月病がきっかけで倦怠感、不眠などが続くと、集中力が低下。
決められた仕事や勉強を終えるため、睡眠時間を削らざるを得ず、
さらに体調が悪化することが懸念。

端詰勝敬・東邦大講師(心療内科)は、
「五月病になりやすいのはまじめで、頑張りすぎてしまう人が多い。
新入社員は疲れて当然と思い込まず、周囲の人が
『十分睡眠が取れているか』と声をかけ、悪循環を断ち切ることが大切」。
本人も、「いいところを見せよう」と力まず、
自分の状態を上司や同僚、家族に伝えることも必要。

気になる症状がなかなか改善しない場合は、
まず内科やかかりつけ医を受診。
他に疑われる病気がないかどうかを調べ、必要があれば
心療内科や精神科を紹介してもらう。
うつ状態の自己チェック表などを活用し、
受診すべきかどうかの参考にする。

医療機関でうつ状態やうつ病と診断された場合、
まず必要なのは十分な休養。
残業を避けるだけでなく、仕事や学校を休むことが望ましい。
医療機関の治療は抗うつ剤などを処方し、カウンセリングなどを実施。

家族や友人の配慮も、早期改善のポイント。
島院長は、「変化に気づいたとき、言葉によるコミュニケーションだけでなく、
『あなたのことを考えているよ』というような周囲の雰囲気作りが大切」。
家庭の場合、家族が最初から言葉で「何かあったの」と問い詰めるより、
「食事に本人の好きな食べ物を加えるなど、さりげない心遣いが望ましい」。
………………………………………………………………………………
◆うつ状態自己チェック表(東邦大式抑うつ尺度)

各質問に対し、「いいえ」「ときどき」「しばしば」「常に」の
4つの選択肢の中から最も近いものを一つ選んでください。
(1)体がだるく疲れやすいですか
(2)騒音が気になりますか
(3)最近気が沈んだり気が重くなることがありますか
(4)音楽を聴いて楽しいですか
(5)朝のうち特に無気力ですか
(6)議論に熱中できますか
(7)首すじや肩がこって仕方がないですか
(8)頭痛持ちですか
(9)眠れないで朝早く目覚めることがありますか
(10)事故やけがをしやすいですか
(11)食事が進まず味がないですか
(12)テレビを見て楽しいですか
(13)息が詰まって胸が苦しくなることがありますか
(14)のどの奥に物がつかえている感じがしますか
(15)自分の人生がつまらなく感じますか
(16)仕事の能率が上がらず、何をするのもおっくうですか
(17)以前にも、現在と似た症状がありましたか
(18)本来は仕事熱心で、きちょうめんですか

●集計
「いいえ」0点、「ときどき」1点、「しばしば」2点、「常に」3点として採点。
(2)(4)(6)(8)(10)(12)を除く12問分の点数を合計。

●判定
10点以下:基本的に問題なし
11-15点:うつと健康の境界線上にいる可能性
16点以上:軽症うつの可能性

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=70854

万能細胞 iPSの奇跡(1)分化さかのぼる遺伝子発見

(2008年1月27日 読売新聞)

京都大の研究者が作り出した新しいタイプの万能細胞
「人工多能性幹細胞(iPS細胞)」への熱い期待が止まらない。
昨年11月の発表以来、「再生医療を一気に加速させる成果だ」と、
国の強力な支援もトントン拍子に決まった。
一方で、臓器などへ変化させる技術の開発や安全性の確保など
課題も少なくない。研究の最前線と今後を展望する。

◆拠点始動

「研究のゴールは明確。人の役に立つこと」

京都大学iPS細胞研究センター長に就任した山中伸弥教授は、
早期の臨床応用にかける意気込みを語った。
iPS細胞の登場で、再生医療実用化に向けた競争は一層激化。
同センターは、世界と渡り合うためオールジャパンの研究者が結集する
コンソーシアム(共同体)の拠点として大きな期待を担う。

◆初期化

世界の研究者がiPS細胞に注目するのは、万能性だけではない。
従来の生物学の“常識”を打ち破る存在だったから。
動物の皮膚や骨、心臓などをつくる体細胞は、
1個の受精卵が細胞分裂を繰り返し、分化(変化)したもので、
かつてはその流れは時の流れと同じ一方向のみで、
さかのぼることはできないと考えられてきた。

しかし、山中教授、高橋和利助教が2006年、マウスの皮膚から
作製したiPS細胞は、体細胞を受精卵に近い状態まで戻し、
様々な細胞に変化できる。

北沢宏一・科学技術振興機構理事長は、その衝撃を
「タイムマシンを発明したようなものだ」。

長年、多くの研究者が挑んできたタイムマシンの正体は、
たった四つの遺伝子を、ウイルスを使って皮膚細胞の
核に組み込むという非常に単純な手法だった。

山中教授のライバルの一人、米ハーバード大の
コンラッド・ホッケドリンガー助教は
「最初聞いた時はウソだろうと思った」と振り返る。

生物学では、こうした分化の流れをさかのぼることを
初期化(リプログラミング)」。

実は、初期化に成功したのは、山中教授らが初めてではない。
1996年に英国で誕生したクローン羊ドリーも、初期化のたまもの。
体細胞の核を、卵子に移植することで初期化し、
哺乳類初のクローンを誕生させることに成功。

京大の多田高・准教授らも01年、受精卵から作製した
万能細胞の胚性幹細胞(ES細胞)に体細胞を融合させる方法で、
体細胞の核を初期化した。

◆魔法の物質

山中教授らが優れているのは、タイムマシンを作る
“魔法の物質”を探り当てたこと。

山中教授らは、ES細胞の中に“魔法の物質”が含まれていることに着目。
まず初期化に不可欠と思われる遺伝子を24個に絞り、
様々に組み合わせて、体細胞に入れる膨大な実験を繰り返した。
その結果、見つけたのは、「Oct3/4」「Sox2」「c-Myc」「Klf4」の
4つの遺伝子だった。
この4つを使って07年11月、人間の皮膚からiPS細胞を作ったと発表。

しかし、同時発表となった米ウィスコンシン大のチームのiPS細胞も
4つの遺伝子を使ったが、二つが山中教授とは異なっていた。
山中教授はすぐに、がん関連遺伝子「c-Myc」を除外し、
残り三つの遺伝子だけでiPS細胞を作るのに成功したと発表。
初期化を起こす遺伝子の組み合わせは複数あり、
効率の良い組み合わせは何か、新たな研究テーマを示すことに。

山中教授は、「研究は走り出したばかりだ」。
iPS細胞の成功は、医学への応用だけでなく、
生命の神秘を解明する手がかりとしても注目。

◇染色体の構造 「緩める」働き

山中教授が見つけた魔法の物質にはどんな働きがあるのか?
「Oct3/4」、「Sox2」は、ES細胞の未分化な状態の維持にかかわり、
iPS細胞作製にも必須の遺伝子。
「c-Myc」、「Klf4」は、がんの促進や抑制にかかわる遺伝子で、
Oct3/4などを助けて初期化を促す。

皮膚細胞が万能細胞に変化する仕組みは、まだ不明だが、
カギとなりそうなのは、「クロマチン」と呼ばれる染色体構造の変化。

クロマチンは、二重らせん状のDNAが、体細胞の核の中で、
小さく折りたたまれている基本構造。
多田准教授は、「未分化の細胞では、このクロマチン構造が
緩んだ状態になっている」と指摘し、
4つの遺伝子が緩める働きをしているとみている。

<万能細胞に関する主な出来事>
1981年 英国のエバンス博士らがマウスのES細胞を作製
1996年 英国のウィルムット博士らがクローン羊・ドリーを誕生させる
1998年 米ウィスコンシン大のトムソン教授らがヒトES細胞を作製
2001年 京都大の多田高助手(当時)らがマウスES細胞と
       細胞融合すると体細胞の核が初期化されることを示す
03年 京都大の中辻憲夫教授らが、国内初のヒトES細胞を作製
04年 韓国ソウル大の黄禹錫(ファン・ウソク)教授(当時)らが
     ヒトクローン胚からES細胞を作製したと発表
06年1月 ソウル大が、黄教授の論文は捏造と調査報告
   8月 京都大の山中伸弥教授らが、
       マウスの皮膚細胞からiPS細胞を作製したと発表
07年11月 山中教授らと、トムソン教授らがヒトiPS細胞作製の成功を
        同時発表
   12月 米マサチューセッツ工科大などがiPS細胞を使って、
        貧血症のマウスの症状を改善することに成功したと発表

http://www.yomiuri.co.jp/science/ips/news/ips20080127.htm?from=goo

2008年4月16日水曜日

遺伝子実験全学で停止 実験菌廃棄で神戸大

(共同通信社 2008年4月14日)

神戸大大学院医学研究科の久野高義教授(分子薬理・薬理ゲノム学)
の研究室で、遺伝子を組み換えた大腸菌などを
ずさんに廃棄していた問題で、神戸大は学内の全研究室で
遺伝子組み換え実験の停止を命じた。

全学で科学実験を差し止めるのは異例。
停止命令は学長名で、医学、理学、農学研究科など
自然科学系の12部局に通知。
大学は、「全学的な調査が必要と判断」。

学生を含む遺伝子実験の研究関係者全員に、
実験に関する調査票を配布。
実験内容や廃棄の際の処理方法などについて回答を求める。
安全が確認された時点で、停止措置を解除する方針。

神戸大では遺伝子組み換え実験の際、
大腸菌などを使った培養液を殺菌せずに実験室の流しに捨てたほか、
廊下で実験していた疑いも。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=71074

気仙地域振興協議会「WeLove気仙」開催

(東海新報 4月13日)

陸前高田市と住田町の青年らでつくる気仙地域振興協議会
WeLove気仙」は、住田町農林会館で勉強会を開催。
グリーンツーリズム(GT)先進地、遠野市のNPO法人
遠野山・里・暮らしネットワーク」副会長の菊池新一さんを講師に、
気仙型GTのあり方を探った。

同協議会は、官民一体となって自然豊かな気仙の魅力を発信しようと
今年3月、陸前高田青年会議所(戸羽幸輝理事長)の呼びかけで設立。
両市町の青年団体や行政、農家などから21人が出席、
戸羽理事長は、「講演を気仙らしいまちづくりのヒントとしてほしい」。

講師の菊池さんは、元遠野市職員で道の駅「遠野風の丘」の
立ち上げに携わるなどした。
退職後は地域づくり活動に努めており、GT受け入れも推進。
民泊と農作業体験を合わせた遠野型GTについて紹介。
取り組みは、平成7年から始まり、いまでは400人規模の修学旅行を
受け入れることもあるといい、モデルケースとして全国から注目。

菊池さんは、「最大の目的は、住民が自分の地域に誇りを持ち、
後世に伝えること」。
105件が登録している民泊受け入れの体制づくり、
陸前高田自動車学校(田村満社長)と連携したGT型合宿教習など説明。
一番大切なのは、もてなす心。
受け入れ側に無理せず楽しむ気持ちがあれば、
来る側も気兼ねなく楽しめる」と持論を展開。

結びに、「風呂はずっと入っていると、ぬるく感じる。
そこに新しい人が入ってきて『気持ちいい』と言うことで、
すでに入っていた人たちも気持ちいい温度であることに改めて気付く」、
都市部の人たちとの連携の必要性を訴えた。

出席者たちは、時折メモをとりながら熱心に聴講。
活発な質疑も交わし、気仙型GT確立に向けたヒントに。
協議会では今後、GTツアーの商品化などにも取り組み、
地域振興の起爆剤としたい考え。

http://www.tohkaishimpo.com/

キャンパスに裏千家茶室  京都造形芸術大に移設

(岩手日報 4月7日)

茶道裏千家の第14代家元、淡々斎氏が考案した茶室「颯々庵」が
京都市左京区の京都造形芸術大キャンパスに移設。

颯々庵は、約80平方メートルの近代茶室。
半世紀前の1960年に京都市内の銀行支店ビル4階に建てられ、
接待などに使われていたが、ビル建て替えに伴い、大学へ寄贈。

現家元の千宗室氏が、大学側に茶室や茶具の目録を手渡した後、
大学の徳山詳直理事長が茶を振る舞った。
京都造形芸術大の教授職も務める千宗室氏は、
学生らにも茶を振る舞い「おいしいかな」と声を掛けていた。

大学は、「日本の伝統を実体験して、創作活動に生かしてくれれば」と、
この茶室で茶道の実習を行う。

http://www.iwate-np.co.jp/newspack/cgi-bin/newspack_s.cgi?s_culture_l+CN2008040701000613_1

2008年4月15日火曜日

治療への応用、二つの壁 新万能細胞iPSの真価/5止

(毎日新聞社 2008年4月12日)

「人工多能性幹細胞(iPS細胞)」を作った山中伸弥・京都大教授が
記者に背を向けた。インタビュー中の出来事。
言葉に詰まり涙をこらえていた。
「患者の期待を、どう受け止めているか」と質問したとき。

「患者さんからの問い合わせが増えた。切実なものばかりだ。
臨床応用はまだ遠い。患者さんの1日は、僕らの1日とは違う。
気安く待ってくださいとは言えない」。
整形外科医として、難病に苦しむ患者と出会った経験が脳裏から離れない。

ヒトiPS細胞作成の成功で、多くの人が「再生医療が発展する」と考えた。
胚性幹細胞(ES細胞)には、受精卵を壊すという倫理問題、
患者と同じ遺伝情報を持つ細胞は作れないという限界。
患者の細胞から作るiPS細胞はこれらの課題を解決する、との期待。

日本再生医療学会が名古屋市で開かれ、
網膜の細胞や視細胞(理化学研究所)、毛細血管や心筋細胞(京都大)、
血小板(東京大)などをマウスのiPS細胞から作る最新の研究成果が発表。

大阪大の澤芳樹教授(心臓血管外科)は、山中教授と共同で、
iPS細胞を使う心臓病治療の研究を始めた。
ゴールに向けて、澤教授は二つの「壁」を挙げる。
iPS細胞から特定の細胞だけを作る技術と安全性の確認。
「実用化に10年はかかると思う」。

iPS細胞から目的の細胞だけを作り出す技術は、
98年に始まったヒトES細胞での蓄積がある。
しかし、ヒトES細胞を使った臨床研究は、まだ始まっていない。

iPS細胞を作るときに、遺伝子やウイルスを使う。
それが、がんにつながる恐れがある。
いったん皮膚細胞などになった細胞を、
受精卵のような状態に戻すのは、「時計を巻き戻す」行為。
細胞の持つ履歴が、完全に初期化されているのか。
成長した人の体に入れても大丈夫なのか
(勝木元也・基礎生物学研究所名誉教授)という疑いも。

位田隆一・京都大教授(生命倫理)は、
「iPS細胞は倫理問題がすべて解決済み、という前提で
研究が進められているが、本当にそうなのか検討すべき」。

iPS細胞より実用化が早いと見込まれているのは、
患者自身の体内にある幹細胞を使った再生医療。
産業技術総合研究所の大串始・主幹研究員らは、
患者の骨髄液に含まれ骨や神経、心筋などの細胞に成長する
「間葉系幹細胞」から骨の細胞を作り、治療に使う研究に取り組む。
2年後には臨床試験開始の予定。
名古屋大などのチームは、特定の種類の細胞にだけ成長する
体性幹細胞を使った治療の実用化を目指す。
「爆発的な増殖能力がない分、がん化する恐れが少ない」。

川崎市で一般市民向けのシンポジウムが開かれた。
演壇の山中教授に質問が相次いだ。
パーキンソン病は、白血病は、脊髄損傷は、iPS細胞によって治るのか?
山中教授は表情を引き締めて答えた。
「そうできるよう努力しています」。
iPS細胞研究は、今始まったばかりだ。
……………………………………………………………………………
◇幹細胞

ある細胞をつくり出す元の細胞。
特定の細胞にだけ分化する能力を持つ「体性幹細胞」と、
体を作るあらゆる細胞に分化できる「多能性幹細胞」に大別でき、
ES細胞、iPS細胞は多能性幹細胞の一つ。
骨髄液から採取される間葉系幹細胞は、体性幹細胞だが
いくつかの細胞に分化できることが確認。
皮膚、血液、臓器など特定の機能を果たす細胞は、
体細胞といいほとんど増殖能力を持っていない。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=71027

23年3月、大船渡で「椿サミット」開催決定

(東海新報 4月12日)

平成23年3月に予定されている「第21回椿サミット」が、
大船渡市で開催。
同市内での開催は、12年以来2度目。
三面椿や世界の椿館、市民文化会館など自然や施設を生かした形で、
情報交換や地域活性化を行う予定。
年度内に実行委員会が発足し、準備を進める。

大船渡での開催は、先月奈良県奈良市で開かれた
第18回全国椿サミット協議会の場で承認。
21年は富山県南砺市、22年は福岡県久留米市で予定。
同協議会は、ツバキをテーマにした自治体間交流やまちおこし事例の調査、
サミットを行う機関として、8年3月に設立。
35市町1団体が加入。

椿サミットは、ツバキ、サザンカを市町村の花木に指定している
自治体の首長や日本ツバキ協会会員、ツバキ愛好者が
一堂に集って知識を深め、花を生かしたまちづくりなど相互の情報交換、
交流を通じて地域活性化を図るのが目的。
開催地実行委員会と日本ツバキ協会の共催として、平成3年から開催。

1~2日間の日程で各地の椿園、椿原生林、椿古木めぐりなどの
現地視察会、記念講演、椿フォーラム、椿研究発表、記念植樹、
日本ツバキ協会総会などと合わせて、多彩なイベントを同時開催。

大船渡市で12年に開催した時は、全国から856人が参加、
JA会館大ホールで「全国交流フェスティバル」を盛大に開催。
大船渡農業高校の研究発表も行われたほか、
末崎町の三面椿や世界各国のツバキを集めた世界の椿館・碁石にも
多数の見学者が訪れ、期間中は市内ににぎわいが生まれた。

市では、実行委員会を立ち上げ、開催に向けた準備を始める。
この10年で、ツバキの実活用を模索する動きもあり、
新しい企画を織り交ぜて成功を目指す。

開催が決まり、「開催時期には市民文化会館も完成しており、
承認されて大変良かった。今後も、同会館を利用した形で
全国規模のイベントを積極的に誘致したい」。

大船渡ツバキ協会の鈴木昌子会長も、
「奈良の全国椿サミットに参加しましたが、素晴らしい運営と内容でした。
ツバキには慶福、縁結び、和合円満、魔よけ、旅路平安、病気平癒、
不老長寿など縁起が良い意味がある。
開催に向けて、ツバキを庭木や盆栽として植える運動や、
この地域の特長を生かしたサミットにするため、
積極的に協力して盛り上げていきたい」。

http://www.tohkaishimpo.com/

学者もドーピング? 「集中力高める」2割が服用と英誌

(朝日 2008年04月11日)

「薬漬け」は、大リーガーだけでなく学者もだった。
そんなアンケート結果を、英科学誌ネイチャーが発表。
精神を集中させるため、学者の5人に1人が、
リタリンなど認識力を増強するとされる薬を服用。

アンケートは、ネイチャーの読者を対象にインターネット経由で行われ、
世界60カ国1400人余りの技術者・生物学者・教師らから回答。
ただ、回答の70%は米国から。

その結果、「リタリンなど3種の薬のいずれかを、
集中力や記憶を高める目的で使ったことがあるか」との問いに、
20%が「ある」と回答。

最も多く使われていたのは、リタリン。
79%は、「健康ならこの種の薬を飲むことは許されるべきだ」。
52%は、「医師の処方によって入手した」、
34%は、「インターネット」。

16歳未満の子どもについては、86%の回答者が
「この種の薬を飲ませることは制限すべきだ」。

リタリンは、米国では注意欠陥・多動性障害(ADHD)の治療に使用。
日本では、うつ病の治療などに使われてきたが、
依存性の高さが問題になり、規制が強められている。
現在の適応症は、睡眠障害のナルコレプシーに限定。

http://www.asahi.com/science/update/0411/TKY200804110041.html

2008年4月14日月曜日

知財ビジネス、出遅れ 新万能細胞iPSの真価/4

(毎日新聞社 2008年4月11日)

経済産業省で非公開の会合。
人工多能性幹細胞(iPS細胞)産業応用促進に向けた産学対話」。
製薬会社や機器メーカー計16社と、iPS細胞に詳しい研究者4人が参加。
倉田健児・同省生物化学産業課長は、
「いかにスピード感を持って研究を進め、出口の医療や産業に
結びつけるかが大事だ」。

国内では、タカラバイオがiPS細胞研究部門の新設を発表した以外、
表立った動きは見えない。
米国では産業化に向けた動きが活発化し、大手投資会社などが、
iPS細胞技術を実用化するベンチャーを創設。

米ハーバード大などの研究者は、ヒトiPS細胞作成の論文発表から
わずか1週間で関連ベンチャーを設立。

産業化の源である特許でも、日本発のiPS細胞の技術で
海外が取得する可能性が出てきた。

「マウスiPS細胞作成からヒトの成功まで約1年半あった。
その間にだれかがヒトでの特許を出願していてもおかしくない」と、
京都大iPS細胞研究センター関係者も不安を口に。

国内企業や研究機関はこれまで、バイオ分野の研究開発で欠かせない
DNA解析技術の「PCR法」や、エイズ治療薬などの特許を
海外の大学や企業に押さえられ、莫大な利用料を支払っている。

「幹細胞関連技術」の特許出願状況をみると、
1998-2003年の日米欧中韓当局への出願件数は約6560件。
米国が53%を占め、欧州の20%、日本の14%を大きく上回る。

米国圧勝の背景の一つに、制度の違いがある。
政府資金で取得した特許でも、大学や研究者のものにできる法律があり、
米国の大学が04年に特許で得た収入は約1498億円。
米国より20年遅れの99年に導入した日本は、約5億4000万円。

生駒俊明・科学技術振興機構研究開発戦略センター長は、
「特許に精通した人材が大学にはほとんどいない。
知財管理に回す資金も少ない。ベンチャー設立にも及び腰。
だから米国に負ける」。

iPS細胞の成功を受け、ようやく変化の兆し。
京都大、慶応大に相次いでiPS細胞研究の知財戦略を
積極的に支援するチームができた。
慶応大知的資産センターの羽鳥賢一所長は、
「研究者の発明届け出を待つだけではなく、
特許がとれそうなテーマを研究者に提案していく」。

知財管理は、なお日本の弱点。
多くの特許出願に携わる津国肇・津国特許事務所長は、
「知的財産はカネそのもの、という意識が日本では低い。
論文発表が優先され、特許出願が後回しのケースも。
iPS細胞は、新しい発想に基づき、幅広い恩恵が期待できる技術。
最初の特許戦略を誤れば、国民が払うツケは膨大になる」。
……………………………………………………………………………
◇特許と出願

新しい技術などの発明者に、一定期間、独占的な権利を与え、
発明を保護するのが特許制度。
発明内容を規定の書類に記載して特許庁に出願し、
審査で新規性などの要件を満たすと認められれば、特許権が得られる。

外国で特許権を得るには、各国で直接、審査を受ける必要。
ただし、国内出願から1年以内に、
特許協力条約に基づき国際出願をすれば、
この条約に加盟する各国での出願日は、原則として国内出願日と同じ。
各国での出願手続きは、国内出願から2年半以内。
発明技術が製品化にたどりつくまでには、通常10-15年かかる。
同じ内容で複数の出願があった場合、
米国は、先に発明したと認められた人が特許権を得る「先発明主義」。
米以外の国は、先に出願した人が特許権を得る。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=70852

iPS細胞:21世紀の生物学、最も重要な成果 2博士に聞く

(毎日 4月13日)

山中伸弥・京都大教授らが作成した「人工多能性幹細胞(iPS細胞)」は、
成長する前の受精卵のように、さまざまな臓器や組織になる能力を持つ。
受精卵や卵子を用いるクローン技術を使わないことが特徴。
英エディンバラ大のイアン・ウィルムット博士と
ケンブリッジ大のジョン・ガードン博士にインタビュー。

◇病、薬、貧しい国にも光--イアン・ウィルムット博士

--成果の評価は。

生物学分野では、21世紀における最も重要な一つ。
抗生物質の発見に匹敵。
クローン技術を使って、胚性幹細胞(ES細胞)を得る方法とは
全く違う新しい機会を山中氏は提示。

成果を初めて聞いたのは06年6月、トロントの国際学会。
わくわくした。空中に浮かんでいるような気持ちになって、
英国に帰るのに飛行機がいらなかったほど(笑い)。
私の人生で最も大事な転換点。

--ヒトiPS細胞作成の発表直前、「クローン研究をやめる」と報じられたが。

事実だ。私たちは、ヒトクローン胚からES細胞を作るつもりはない。
理由は二つある。
一つは、山中氏の方法への科学的な関心。もう一つは現実的な理由で、
今の手法では研究を続けることが難しいと分かった。
先月初めから、チームの一人が山中氏の方法で実験を始めている。

--体細胞を受精卵のような状態に戻す方法は、どれが最適か。

山中氏の方法は、現時点では最も有望と思う。
もちろんこれは楽観的な見方で、改良する余地もある。
山中氏の方法を進めつつ、核移植を使う方法を改良していくのがいい。

--研究の将来像は。

パーキンソン病やアルツハイマー病、多くの遺伝性の病気の患者にとって、
細胞を採取して3週間後には、自分の治療に使える多能性細胞が
できるなんてすごいこと。
この研究の過程で、患者の細胞と同じ性質を持った細胞を使って
病気の解明も進む。
どの遺伝子、どの分子が影響するかが分かれば、
その働きを阻害する物質が薬になる。
研究成果を、貧しい国々の患者にも届けられる。

--シンポジウムに期待することは。

ガードン博士は、1960年代~70年代、私は90年代、
山中氏は2000年代に大きな仕事をした。
この分野の歴史が東京で一堂に会する。
ドリーの実験で一緒に働いたキャンベル博士は、ガードン博士に影響を受けた。
山中氏も、私たちの研究に何らかの影響を受けただろう。
誰かが新しい部屋へのドアを開けることによって、
他の人に新しい見方を示し、新しい段階へと進歩していく、
これが科学だ。

◇クローン技術と連携有効--ジョン・ガードン博士

--山中氏の成果をどう感じたか。

驚いたし、注目すべき成果だ。
皮膚などの体細胞はいったん成長してしまうと、容易に最初の状態に戻らない。
それだけに彼の成果は重要で、将来性がある。

--あなたは核移植の専門家だが。

そうだ。しかし、山中氏の手法が幹細胞を得る最良の手段。
核移植には、卵子を使わなくてはいけない。
ヒトの卵子を多く入手することは難しい。異常も多く生まれる。

--クローン研究は必要なくなるか。

山中氏の方法は全く新しいやり方だが、
体細胞とは関係ない遺伝子を導入しなくてはならない。
遺伝子を導入せず、卵子も使わずに最初の状態に戻す方法があれば理想的。
クローン研究によって蓄積された成果が貢献する。
両方の組み合わせや連携が効果的だろう。

--山中氏の方法を試してみる予定は。

私のチームは小さいし、日米と競合するのは賢明ではない。
私が取り組んでいるのは、核移植をした卵子の中で、
どうやって最初の状態に戻るのか、その仕組みを解明すること。
逆に、さまざまな細胞になる能力を持つ幹細胞から、
筋肉や脳、皮膚の細胞に成長したら、他の細胞に変化することはない。
なぜその状態を保っていられるのかにも興味がある。
こうした研究からメカニズムが分かれば、
幹細胞研究全体にとっても意義のある発見になる。

◇シンポ「iPS細胞研究の展望と課題」

15日午後5時から、東京都渋谷区の津田ホール。
英国大使館、スコットランド国際開発庁共催で、
「UK-JAPAN2008」公認イベント。
ガードン、ウィルムット両博士と山中教授による特別講演とパネルディスカッション。
==============
◇イアン・ウィルムット博士

1944年生まれ。英ロスリン研究所在籍中の96年、
成長したヒツジの乳腺の細胞を使ってクローン胚を作り、
別のヒツジの子宮に入れて出産させることに成功。
誕生した子羊はドリーと名付けられ、世界初の哺乳類のクローンとして注目。
現在、エディンバラ大学再生医療センター所長。
==============
◇ジョン・ガードン博士

1933年英国生まれ。62年、アフリカツメガエルのオタマジャクシの
小腸細胞の核を、核を除いた未受精卵に移植し、
その卵がオタマジャクシになったことを報告。
その後、成長したカエルの細胞でも成功し、体細胞から一匹の個体が
発生しうることを初めて証明。
現在、ケンブリッジ大ガードン研究所所長。

http://mainichi.jp/select/science/news/20080413ddm016040015000c.html

2008年4月13日日曜日

夢のテーマ、若手が挑む 新万能細胞iPSの真価/3

(毎日新聞社 2008年4月10日)

「先生、はえてます!」。
05年夏、山中伸弥・京都大教授(45)の部屋に、
高橋和利さん(30)=現助教=が駆け込んだ。
顕微鏡をのぞくと、元のマウスの皮膚細胞とは似ても似つかない
丸い細胞の塊が見えた。
世界初の人工多能性幹細胞(iPS細胞)が誕生した瞬間。

高橋さんらは、皮膚や臓器などに成長した体細胞に
「何か」を入れることで受精卵のようにさまざまな組織に育つ
万能細胞を作ることを目指していた。
砂漠から一粒の砂を見つけるような途方もない計画だったが、
候補の遺伝子は24種に絞り込まれ、これらを一つずつ試すことに。

このとき実験の容器が余り、「せっかくだから」とすべてを入れたところ、
これだけが塊になった。再実験でも同じ結果。
その中に、「何か」である四つの遺伝子があった。

「うまくいく可能性はほとんどない。その代わり、失敗しても面倒見たるよ」。
実験を始める前、山中教授にこう言われた。
高橋さんは同志社大工学部出身、一から生物学に取り組んだ。
この言葉を励みに夢中でやった結果。

リンパ球などの体細胞と胚性幹細胞(ES細胞)を融合させる方法で、
万能細胞作りを目指す京都大の多田高・准教授は
「山中さんらの方法は遠い道だと思ってやらなかった。
だから、すごいって感動している」。

山中教授は、神戸大医学部を出てすぐ、整形外科医に。
難病患者と向き合い、「この病気を治すには基礎研究が必要」と考え、
大学院で薬理学を専攻。
米国留学では一流科学誌に論文も掲載されたが、
96年に帰国すると、研究だけに没頭できる米国の研究環境との落差に
「臨床医に戻ろう」と思い詰めた。

転機は99年12月、奈良先端科学技術大学院大に
助教授として研究室を持ったこと。
新参の山中研究室は学生を集めるため、受精卵を使わず
ES細胞のような万能細胞を作るという「夢のある大テーマ」を掲げた。
そこに、高橋さんら3人の大学院生が集まり、
人のまねではない、人がやらないことをやる」(山中教授)という挑戦。

山中教授は、03年度の科学技術振興機構の研究資金に応募。
面接した岸本忠三・大阪大元学長は
「うまくいくはずがないと思ったが、この若い研究者の迫力に感心した。
研究には壮大な無駄があっていい。
そこから思いがけないものが出てくるものだ」。

岸本さんの言葉通り、研究は失敗の連続。
あきらめかけたこともあったという。
山中教授は、「米国から戻ったときと違うのは一人じゃなかったこと。
若い学生さんやスタッフがいた。だから続けられた」。

研究室のメンバーを引き連れて京都大へ移ったのは05年4月。
そこから一気に24遺伝子を4遺伝子に絞り、
06年夏、世界を驚かせる論文を発表。

再生医療や創薬などの実用化に注目が集まるiPS細胞研究。
その発見は、日本の科学技術を支える「原石たち」の、
向こう見ずともいえる果敢な挑戦から生まれた。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=70700

宇宙の英知、学ぶ館に 奥州「遊学館」20日オープン

(岩手日報 4月7日)

科学や宇宙に親しむ学びの拠点として期待される奥州宇宙遊学館は、
国立天文台水沢VERA観測所にオープン。21日、一般公開を始める。
遊学館は、取り壊しが決まった旧緯度観測所本館を改修した建物。
市民有志らが保存活動を繰り広げ、新たな施設に生まれ変わった。

隣接する国立天文台の研究員と住民をつなぐ役割も大きい。
歴史を感じさせるレトロな造り、宇宙への思いを膨らませる遊具など
遊学館の魅力を紹介。

奥州宇宙遊学館は、1921(大正10)年に建てられた
旧緯度観測所本館を改修して誕生。
旧緯度観測所は取り壊しが決まったが、
市民有志らの働き掛けが実を結び、生まれ変わった。

旧緯度観測所は臨時緯度観測所として、
世界6カ所の緯度観測所の一つとして設置。
旧緯度観測所の保存・活用を考える会長の佐藤一晶さん(57)は
2005年秋に取り壊すことを知り、
「水沢のランドマーク(象徴)をなくすのは許せない」。

佐藤さんは、地元の町内会、商工会議所などに賛同を求めた。
保存活用を求めた請願は市議会で採択、建物は国立天文台から市に譲与。
賛同者は、現在約300人。
旧緯度観測所は宮沢賢治が訪れていたとされ、
全国の賢治ファンの後押しも。

佐藤さんは遊学館開設に、「最初は、周りから『無理だよ』とも。
これほどうまくいっていいものか」と感慨深げ。

奥州市から、NPO法人イーハトーブ宇宙実践センター(大江昌嗣理事長)が
指定管理者に選ばれた。
旧緯度観測所に勤務経験がある大江理事長(67)は
「これほど早く進むとは思わなかった。
国立天文台が取り組む月周回衛星『かぐや』の成果も紹介したい」。

館内は、旧緯度観測所が開設された大正期の色合いに近づけた。
木の造りの廊下や階段などレトロな雰囲気を感じさせる。
内装は、木としっくいを基調とするシックな様相。
展示室などの飾り付けも素朴な色合いが感じられる。
天井が高く、窓ガラスの開閉は、上下に動かして行う。
廊下の窓ガラスの一部は、旧緯度観測所のものを使った。
佐藤会長は、
「戦前に建てられたことに、緯度観測所の国際的な価値の大きさを感じる」。

奥州宇宙遊学館は、ドイツ風建築で、木造2階建て。
瓦ぶきで、延べ床面積は635平方メートル。
市は、2007年6月に保存改修工事に着手。総事業費は2億3900万円。

開館時間・入場料 午前9時から午後5時まで。火曜日休館。
大人200円。高校生以下100円。
セミナー室(80―100人)なども有料で貸し出す。
四次元デジタルシアターは週4回予定。
問い合わせ、奥州宇宙遊学館(0197・24・2020)。

http://www.iwate-np.co.jp/kanko/f2008/f0804/f200804072.htm

スポーツ21世紀:新しい波/264 日本テニス界の挑戦/上 錦織台頭と盛田基金

(毎日 4月5日)

今年2月、低迷が続く日本男子テニス界に、明るいニュース。
デルレービーチ国際選手権(米国)で、
18歳の錦織圭(ΙMG)がツアー初優勝。
日本人男子選手として16年ぶりの快挙の背後に、これまでにない支援が。

小学生時代に才能を見いだされた錦織は、
13歳で「盛田正明テニス・ファンド」の支援で米国に留学。
海外でも物おじしない態度や、高い技術はここで培われた。

この基金は、日本テニス協会の盛田正明会長(80)が
私財を投じて設立、ジュニア選手の海外留学制度を支える。
協会の会長職とは切り離した個人の活動。

盛田会長は、ソニー創業者の盛田昭夫氏の弟で、
アメリカ・ソニー会長などを歴任。
退職後、趣味だったテニスへの貢献を思い立ち、99年にファンドを設立。
使途について日本のトップ指導者に意見を求めた時、
勧められたのが海外留学制度。
日本人選手が国際舞台で活躍するため、技術の向上のみならず、
外国の生活に慣れることや、語学力などが必要。

盛田会長の人脈を生かし、有力選手を育てることで有名な
米フロリダ州のΙMGアカデミーと連携。日本人選手を送り込むことに。
ファンドの予算規模は年間1億円弱で、00年9月の1期生派遣以来、
これまで計13人を支援。
渡航費や、アカデミーでの授業料、遠征費など、1人に年間数百万円が支給。
錦織のように専任コーチを付ける場合、1000万円を超える。

不慣れな土地での「テニス漬け」の厳しい生活に疲弊し、帰国する選手も。
そんな中で、ようやく育った一人が錦織。
「あしながおじさん」の力で、低迷脱出の糸口をつかんだ日本のテニス界。
錦織の台頭を、今後の選手育成につなげていく努力も求められる。
「海外で選手を育てるだけではなく、いずれは日本で選手を強化したい」
との思いは、盛田会長自身が強く感じている。

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