2008年11月1日土曜日

岩手なるか「五輪選手」育成 競技底上げへスーパーキッズ発掘

(産経 2007.12.8)

岩手県では近年、オリンピック出場選手を輩出していない。
子供たちにとって、あこがれの存在が身近にいるかいないかは、
スポーツをする気持ちに大きく影響。
事態を深刻にとらえた県は今年度、世界大会のメダリストを育てようと、
「スーパーキッズ発掘・育成事業」に乗り出した。

最近の岩手県のスポーツ事情をみると、2000年から2年置きに
シドニー(豪州)、ソルトレークシティー(米国)、アテネ(ギリシャ)、
トリノ(イタリア)で開かれたオリンピックに、出場した県出身選手が1人もいない。
国民体育大会でも、30位後半から40位代を推移し、
ここ9年間は東北でも最下位。

このままでは、県内スポーツの地盤沈下は避けられない。
危機感を強めていた県教委は、福岡県がタレント発掘事業を始めたと聞きつけ、
「本県でもやってみよう」とスーパーキッズ事業を発案。
似たような事業は岡山県、和歌山県、北海道美深町でも始まり、
東北でも宮城、山形、福島各県で動きがある。

岩手県では、平成28年に国体が開かれる。
これまで、自治体の選手育成は国体をにらんでのものが多く、
国体が終わると、競技力が低下するのが常だった。
スーパーキッズ事業には、タレント発掘のシステムを確立することで、
国体終了後の選手育成も継続できるとの狙いも。

事業は、県体育協会が県の委託を受け実施。
プログラムは、作山正美岩手医科大学共通教育センター体育学科教授を
委員長とするプロジェクトチームが作成。

作山教授は、「夢のある企画だ。ジュニアの育成はスポーツ少年団中心で、
小さいうちから1つの競技に偏る傾向がある。
事業では、ほかの種目の可能性も探りながら、知的能力を開発するとともに、
けがをしない体の作り方、動き方を教えていきたい」

6月下旬から8月末までの募集に、1180人が応募。
平藤淳県体協業務課長は、「告知に手間取った割には多かった」
応募者のうち、1114人がチャレンジ2に挑戦。
チャレンジ3には 218人が臨んだ。

(1)優れた運動能力
(2)育成事業参加の確約
を基準に、80人程度に絞り込まれ、認定証が渡される。
スーパーキッズに選ばれた5年生は今後16カ月間、6年生は4カ月間、
原則毎月1回開かれるスペシャルスクールに参加。

この事業は、選考に漏れた子供たちにも公開。
プログラムは、指導者も見ることができる。
県体協では、地域に戻って指導に役立ててもらえば、
競技力の全体的な底上げにもなると考えている。

事業には、1992年のアルベールビル冬季五輪(フランス)の
ノルディック複合団体金メダリストで、今年4月から県体協の
スポーツ特別指導員を務めている三ケ田礼一氏(40)もかかわっている。
「第1の目的は、トップ選手をつくることだが、
そこまでいけない子供でも、挑戦する気持ちが培われれば、
スポーツ以外でも、自分に合った何かに出合えるチャンスが生まれる」と
事業の意義を強調する。

地域では、指導者の高齢化などで、望ましいスポーツ環境を与えることが
できない状況も起きている。
種目によっては、何校かが一緒になってチームを作り、
中学校大会に出るという事態も生じてきている。

だれでも、どこでも、均質な指導を受けさせることはできないか。
スーパーキッズ事業は、その環境をつくっていく事業。
県教委では、事業を少なくとも10年間は継続したい。

◆いわてスーパーキッズ発掘・育成事業

チャレンジ1
県内小学校で行われている「新体力テスト」で、
総合評価A・B段階の5~6年生が申し込み、

チャンレンジ2
▽20メートル走・反復横跳び・立ち幅跳び・垂直跳び・両手大型ボール投げ
(前・後)の5種目、

チャレンジ3
▽立ち三段跳び・ジグザグ走・4方向ステップの3種目、保護者を加えての面談、
をへて発掘したスーパーキッズと保護者に対し、
プロジェクトチームが作成した能力開発プログラムを実施。

http://sankei.jp.msn.com/region/tohoku/iwate/071208/iwt0712080242000-n1.htm

考える力(4)科学館授業 興味を刺激

(毎日 10月24日)

科学館を利用した理科授業が、考える力を高める一助になる。

約150人の中学1年生を前に、講師がけたたましく鳴るブザーを箱に入れ、
中の空気を抜いていく。
音は徐々に小さくなり、真空に近くなると最前列でも聞こえなくなった。
音が空気の振動で伝わることを、実体験する実験。

島根県出雲市の出雲科学館で行われた授業のテーマは、「音と光」。
旭丘、佐田、湖陵の市立中3校の生徒が、サイエンスホールで実験に見入った。

音の次は光。
音を光に変換する装置を使い、光を操作して離れたスピーカーから音を出す。
「この技術が、現在の光ファイバー通信に応用されています」。
科学の不思議さや理屈とともに、実生活で応用されていることも伝える。

中学生たちは実験室に移ると、ホールでの授業を基礎知識として、
レンズの仕組みを学んだ。
「凸レンズが像を結ぶ焦点の距離や像の向きはどうなるだろう?」
予想を立てた上で、実験で検証する。
仕上げは紙筒とレンズ、感光紙を使った簡易カメラ作り。
「カメラのレンズの下半分を紙で隠すと、どう見えると思う?」
実際にやってみると、少し暗いがすべての像が見える。
「その理由は、考えてみてください」

2時間の授業は、頭を使って考えたり、データを取ったり、
ハサミやテープを使って工作したりと課題が盛りだくさん。
生徒は楽しそうにこなした。

科学館の授業は、実験器材がそろっているのが魅力だが、
生徒の興味を引く教え方の工夫も参考になる」と引率した教員の一人、
旭丘中の久保田秀行教諭(46)。

科学館は、理科離れを防ぐ地域の学習センターを作ろうと、
島根大教育学部教授だった曽我部国久館長(65)が構想を立て、
出雲市が2002年に完成。
市内52小中学校の小3以上の全学級が年1~3回、
この場で理科の授業を受ける。
小中学校の教員免許を持ち、理科授業や教員研修を受け持つ講師が7人いて、
午前と午後で4学級ずつ、授業ができる体制。

実験や体験をショーに終わらせないよう、関連した実験を
すぐに生徒自身の手でさせる。
科学への興味や確かな知識につなげる工夫。

引率する教師にも手本となる授業をめざす。
曽我部さんは、実演授業後に「実験装置で何をやろうとするのか、
もっとわかりやすく説明しないと」と若い講師を指導。
「子供の興味や考える機会を引き出す方法を学んでもらえれば、
毎日の授業の改善につながる」

理科は、子供の学習意欲を引き出す様々な仕掛けが可能な教科。
「理科を材料に、子供が興味を持って調べる体験をすること。
あとは理科に限らず、興味を持つ子の背中を教師が上手に押せば、
子供の考える力は伸びる」

年に数回の科学館授業も、子供と教師の双方の力を育てることができれば、
大きな実りとなるはずだ。

◆理科授業と科学館

出雲科学館のほか、福島県須賀川市ふくしま森の科学体験センター、
栃木県真岡市科学教育センター、京都市青少年科学センターなど。
新学習指導要領でも科学館の活用がうたわれ、
国立科学博物館を中心に全国の科学館や博物館、動物園などが連携し、
学校の授業に生かす仕組み作りが進んでいる。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20081024-OYT8T00232.htm

どうする「未病」:カロリーを抑え、寿命を延ばす「カロリスジャパン」が発足

(毎日 10月20日)

最近、よく耳にする健康用語に「CR」という言葉。
アンチエイジング(抗加齢)の研究分野で、
「カロリーリストリクション」という考えが注目され、
「CR」とはこの「カロリーリストリクション」のこと。
「ビタミンやミネラル、タンパク質などの栄養分を確保しながら、
総摂取カロリーは通常の7割程度に制限しよう」という考え。
CRの実践者は老化防止につながり、健康で長生きできる体がつくれる--

東大、慶大、順天堂大らの医師らが中心となり、
CRソサエティ・ジャパン(アンチエイジングを実践する会、通称・カロリスジャパン)」
が発足。世界有数の長寿国である日本から、
さらに寿命を延ばしていく研究を世界に向けて発信していこうと気勢。

同会メディカルアドバイザーの一人で、10年前から寿命の研究を続けている
順天堂大学の白澤卓二教授(加齢制御医学)は、
「100歳を超えても元気な長寿者には、メタボ(内臓脂肪症候群)の人が
ほとんどいない。長寿者は70、80代で急にいきいきと若々しくなるわけではなく、
40、50代からの積み重ねで若々しい健康を保っている。
長寿については、カロリーを制限することで2~3割寿命が延びるだろう」

コーラ、ビール、缶コーヒー、ソーセージにカレールー。
デザートではチョコレートやアイスクリームなど、
様々な食品の分野で「糖質ゼロ」、「カロリーオフ」を歌った食品が販売され、
すべて「CR」の考えの延長上にあるもの。

コンビニエンスストアのサークルKサンクスが、通常よりカロリーを約3割減らした
おにぎり「カロリーコントロールおにぎり」を発売。
乳酸菌飲料のヤクルトでは、通常の「ヤクルト400」に比べ、
甘さを約25%、カロリーも30%カットした「ヤクルト400 LT」を発売。

食品業界でも、「CR」は徐々に浸透しつつある。
日本が世界有数の長寿国になり得たのは、昔から「腹八分」という言葉があり、
食べたい物を食べたいだけ食べることをよしとする欧米人に比べ、
カロリーを抑えた食生活をしてきたが、それはもう過去の話。

欧米型の食生活が定着した現在、中高年男性に
肥満や生活習慣病が急増していることを考えれば、
10年先、20年先の日本人が、現在の高齢者のように元気で若々しく、
長生きできるという保証はない。

大切なのは、現在の食事のあり方。
それが、健康で長生きの秘けつとなる。

http://mainichi.jp/life/health/news/20081020org00m100001000c.html

長期体罰の子、脳が萎縮 熊本大准教授が共同研究

(朝日 2008年10月24日)

子どものころ長期にわたり強い体罰を受けた人は、
受けていない人より脳の前頭葉の一部が最大で約19%縮んでいる、
という研究結果を、熊本大大学院医学薬学研究部の友田明美准教授
米ハーバード大医学部との共同研究でまとめた。

体罰と脳の萎縮の因果関係を実証した研究として、
体罰のあり方に一石を投じることになりそう。
友田准教授は、「都市化社会と脳の健全育成」を主題としたシンポジウムで発表。

研究は、米国で、4~15歳のころに平手打ちされたり、
むちで尻をたたかれたりするなどの体罰を年12回以上、3年以上にわたって
受けた米国人の男女23人を対象に実施。

磁気共鳴断層撮影装置(MRI)で脳の断面図を解析したところ、
体罰を受けず育った同年代の22人に比べ、
感情や意欲の動きにかかわる前頭前野内側部が平均19.1%、
集中力や注意力にかかわる前帯状回が16.9%、
認知機能にかかわる前頭前野背外側部が14.5%小さかった。

小児期に過度の体罰を受けると、行為障害や抑うつなどの精神症状を
引き起こすことは知られているが、脳への影響は解明されていなかった。
今回の研究で、脳の萎縮がみられた人については、
体罰でストレス下に置かれた脳が、前頭葉の発達を止めたと考えられる。

友田准教授は、「研究結果は、虐待の早期発見に生かせるのではないか」

◆子どもの虐待に詳しい才村純・関西学院大学人間福祉学部教授の話

虐待が子どもに与える影響を、客観的な証拠で示した画期的な研究。
子どもが虐待の事実を言い出せず、親も隠したり認識がなかったりして
見落とされる事例は多い。

脳との因果関係を裏付けることができるなら、隠れた虐待の発見に役立つ
研究成果が今後、教育や福祉の分野で普遍化されていくことを期待。

http://www.asahi.com/science/update/1024/SEB200810230015.html

2008年10月31日金曜日

岩手・来年度から全県へ電子カルテ 産科医師不足へ対応

(毎日新聞社 2008年10月29日)

県は、来年度から産科医師不足への対策として、
妊婦の遠隔健診や電子カルテによる周産期医療機関の情報共有を図る
システムを導入する。

昨年、遠野市が経済産業省のモデル事業として実施、
妊婦の通院負担の解消などに効果を上げており、全県に波及させたい考え。
県地域医療対策協議会(大堀勉・岩手医大理事長)で報告。

県児童家庭課によると、岩手医大の総合周産期母子医療センターに
「Web型周産期電子カルテシステム」を導入する。

同センターは、緊急を要する妊婦などの搬送先選定で、
これまでファクスなどを利用して各医療機関と連携してきたが、
インターネットを介して電子カルテシステムを活用することで、
1)妊婦や新生児の搬送情報、
2)分娩から産後までのサポート、
3)妊婦の遠隔健診、
などのネットワークが構築され、妊婦の負担や不安が解消できる。

今後、セキュリティーや閲覧のルールなどの課題を解決した後、稼働する予定。
協議会では、岩手医大の推薦入試枠にある県内出身者限定の
「地域特別枠」を前年より5人増の15人にするための県の補助など、
医師確保に向けた今後の方向性が示された。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=82201

考える力(3)他学年参観 自主性生む

(毎日 10月23日)

小学生が他の学年の授業を参観する学校がある。

子供たちが教室の後ろにずらりと並び、他の子供の様子を観察、
気づいた点をメモする。あまり見たことのない光景。
神奈川県厚木市立三田小学校では、全学年が年1回以上、
他学年の授業を参観する。

3時限目は、5年の5学級が班に分かれ、6年と3年の計10学級を訪ねた。
4時限目、5年生は学級に戻って発表し合った。
「発言する人を、みんなが見ていたのが良かった。他の意見はありますか」、
「相談タイムに参加しない子がいました。僕の意見をどう思いますか」。

子供たちは、「コの字」に囲んだ机で自主的に話し合いを進め、
教師は意見を整理しながら黒板に書く。
3年生の授業を見た子供が、「発表者が『聞いてください』と言うと、
みんな『はい』と答えます。僕たちもした方がいい」と発言。
教師が、「この学級でもやっているのでは?」と聞くと、
「先生に言われなくても、徹底できる方がいいと思います」と提案。

同小は2年前から、考える力を育てる
「聴いて考えてつなぐ学習」を打ち出している。
山本金五校長(57)が提唱し、静岡県藤枝市の小学校をモデルに、
子供主体の授業作りの旗を振ってきた。

教師が教えすぎず、子供の発言を上手に引き出しながら授業を作る。
イメージをつかめない教師には、モデル授業のビデオを見せ、
藤枝市の小学校の授業を視察させ、教師同士の交流も進めた。

研究主任の山田博子教諭(49)は、最初に子供の机をコの字形に並べたり、
グループを組ませたり、授業の狙いによって変えた。
「互いに相手の目を見ながら、発言や話し合いをすることが大事。
黒板が見えるか不安もあったが、子供たちは工夫して集中する」

同小は、1人で考えたり書いたりする「ひとり学習」の時間と、
1分程度で仲間と話し合って考えをまとめる「相談タイム」を全校で実施。
授業中、教師の話や同級生の発表に「どうしてそうなるの?」と盛んに発言。

昨年から導入した子供の授業参観も、子供の自主性を育てるのが狙い。
集中している子供の姿を見ると、子供は自分の授業で自然にまねようとする。
「自分の学習態度を振り返り、反省する機会になる。
下級生の授業でも、参考になることを見つけたり、自分の成長を確認して
励みにしたりする。教師にとっても勉強になる」と山本校長。

山田教諭は、「以前に比べ、子供が授業中、よく考えて発言するようになった。
学級活動で自分の考えの理由をはっきり言う子、
全校集会で話を聞ける子も増えた」と変化を実感。

山本校長は、「授業はまだ試行錯誤。成果はこれから」と慎重。
「小学校は、子供に社会で生きるために必要な基礎学力を保証することが大事。
教員の温度差を埋め、学校としての指導方針を一貫させることも必要」と強調。

◆聴いて考えてつなぐ学習

「相手の話に耳を傾け集中して理解する力、相手と意見を比べたり
修正したりしながら自分で考える力、自分の考えと理由をはっきりさせて発表し、
話し合いをつなげて発展させる力を養う学習」。
小学校の新学習指導要領がめざす思考力、判断力、表現力の育成を含んでいる。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20081023-OYT8T00249.htm

どうする「未病」:アルツハイマー病治療薬の開発につながる重要なメカニズムを発見

(毎日 10月28日)

現在、日本は高齢者(65歳以上)人口が、総人口に占める割合は22.1%。
70歳以上の人口も2000万人を超え、本格的な高齢化社会に。

国内では、認知症老人が100万人を超え、認知症に対する対策が
社会的な課題となっている。
認知症の約半分が、アルツハイマー病患者とされ、
早期の治療薬の開発が待たれているのが現状。

独立行政法人理化学研究所から、「アルツハイマー病の原因となる
『アミロイドベータ』の産生調節機構を解明--
新しいアルツハイマー病治療薬の開発に有望戦略」
というニュースが発表。

神経細胞の細胞膜内の特殊領域「膜マイクロドメイン」で起こる
「マイクロドメインスイッチング」が、アルツハイマー病発症の原因となる
「アミロイドベータ」の産生を調節する重要なメカニズムであることを発見。

「マイクロドメインスイッチング」をさらに解析することにより、
新たな治療薬の開発につながると期待。

完全な治療法が見つかっていない現状において、
何よりもアルツハイマーにならないにこしたことはない。
そのためには、まず普段の生活習慣から見直す。

例えば、高血圧、糖尿病などの生活習慣病が
アルツハイマーの危険因子であることは広く知られている。
バランスの良い食事や適度な運動が予防効果につながる。
日頃から脳を使うことも大切。

その日の行動を思い出しながら日記をつける、簡単な計算をするなど
脳に刺激を与え、活性化するように心がける。
小さなことからコツコツと、きちんとした生活習慣を身につければ、
発症率の低下にもつながるのではないか。

http://mainichi.jp/life/health/news/20081028org00m100037000c.html

増えるバリアフリーツアー 高齢者、障害者も安心 細かな配慮、リピーターも

(共同通信社 2008年10月22日)

高齢者や障害者が安心して楽しめる専用のツアーが増えている。
時間にゆとりを持たせるなどきめ細かい配慮があり、
旅行先も国内外を問わないため、リピーターも多い。

町田市に住む山口松吉さん(66)と佳子さん(62)夫妻が、
知人の紹介で初めてバリアフリーツアーに参加したのは2年前。
「団体旅行には少し抵抗があったけど、試しに参加したんです。
妻が車いすが必要になってから、外出先が限られていたもので」
ほかの参加者と楽しく過ごせるか心配だったが、
実際に参加してみると不安は吹き飛んだ。

少人数で、時間にゆとりがある旅だった。
「行動が遅れて迷惑を掛けるのでは、という心理的な負担がなかったし、
リフト付きバスでの移動やトイレ休憩が頻繁にあり、
配慮が行き届いていて安心できた」

ツアーが気に入った山口さん夫妻は、JTB首都圏バリアフリープラザが
主催する「ソレイユ」で年に数回、国内旅行に出掛けている。
「来月の京都ツアーにも行きます。体調が許す範囲で旅行を楽しみたい」

▽「5」が「3」に

高齢者や障害者を対象にしたバリアフリーツアーは、JTB首都圏のほかに、
クラブツーリズムやエイチ・アイ・エスも主催。
事前に障害の状況や、どのような介助が必要かを個々に確認し、
「出発前の不安を少しでも解消するよう、何度も話をする」と
JTB首都圏の今西正義さん。

どうすれば旅行に行けるかを前提にして、丁寧な手配や対応を心掛けている。
介護の資格や経験のある添乗員のほか、介護ヘルパーの資格を持つ
ボランティアが同行するツアーもあり、快適な旅になるよう手助け。

クラブツーリズムの淵山知弘さんは、「要介護5」の男性が参加する
ドイツ旅行に添乗した経験がある。
「旅行はトラブルもなく、当初無表情だった男性の顔がどんどん明るくなった。
帰国後には、要介護3に改善したんですよ」

▽マンパワー

2006年施行の高齢者障害者移動円滑化促進法によって、
宿泊先や観光地でのバリアフリー対応は徐々に進んではきたが、
車いすが使えなかったり、視覚障害者誘導用ブロックがない場所などは依然多い。

旅行各社は、ハード面で対応できないところは、マンパワーでカバーし、
行きたい場所を訪ねられるようツアーを企画。

だが、バリアフリーツアーの知名度はまだ低い。
「旅行をあきらめている人でも、ちょっとした配慮があれば参加できる人は少なくない。
あきらめる前に、ぜひ相談してほしい」

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=81751

2008年10月30日木曜日

インタビュー・環境戦略を語る:伊藤忠テクノソリューションズ・奥田陽一社長

(毎日 10月27日)

IT(情報技術)事業の省エネルギー化やIT機器の消費電力低減を目指す
「グリーンIT」と呼ばれる取り組みが、日本でも盛んに。
企業から大量のサーバーを預かり、運用を代行する「データセンター」の
消費電力低減は急務。
東京都文京区に大型データセンターを開設した伊藤忠テクノソリューションズの
奥田陽一社長に、環境対策を聞いた。

--新しいデータセンターの特徴を教えてください。

◆まだグリーンITという概念がなかった2年前に、
「業界トップレベルの環境配慮型データセンターを作ろう」と計画。
データセンターのエネルギー効率を図る指標「PUE」
(設備全体の消費電力に占めるIT機器の消費電力。小さいほど高効率)が
1・46と、一般的なデータセンターのPUE(2・3~2・5)を大きく上回る
最先端の省エネ技術を導入したことが売りの一つ。

--最先端の省エネ技術とは?

◆データセンターの消費電力は、サーバーは3割に過ぎず、
機器が発する熱を冷却する空調設備が半分以上を占める。
高効率の空調機器を導入したほか、機器が発する温かい空気と
空調の冷たい空気が混ざらないよう設計し、冷却効率を高めた。
サーバーへの電力供給を、交流方式ではなく直流方式にし、
変換過程で生じる電力損失も最大3割減らすことが可能。

--IT関連の省エネ化は世界的な課題に。

◆機器台数や情報処理量が爆発的に増えて、IT機器の国内電力消費量は
06年に国内全体の5%に達し、経済産業省の予測だと25年に15%以上に。
データセンターの電力消費量も、00年から06年にかけて倍増、
現在は世界全体の0・5%近くまで膨らみ、
業界全体で早急に対策に取り組む必要。

--ITが環境対策に果たす役割は。

経済成長と環境保全を同時に実現するには、ITの活用が欠かせない。
例えば、IT技術を使えば、生産や流通業務を効率化でき、
企業がテレビ会議化や自宅で働くテレワークの導入を進めれば、
移動時に生じる二酸化炭素(CO2)も削減。

--電機メーカーや経産省がIT機器の省エネ化を進める
「グリーンIT推進協議会」を発足。

◆当社は、国際的なデータセンターの省エネ対策団体「グリーン・グリッド」に、
07年に国内企業として初めて加盟、環境対策にいち早く力を入れてきたと自負。
グリーンIT推進協議会とも歩調を合わせて、対策を強化する。
==============
◇おくだ・よういち
米ニューヨーク大経営大学院修了。70年伊藤忠商事入社。
05年6月に伊藤忠テクノサイエンス社長。
06年10月、伊藤忠テクノソリューションズ社長。大阪府出身。61歳。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2008/10/27/20081027ddm008020033000c.html

第2部 かけ橋として/4 遊びから入る「なぜ」

(毎日 10月26日)

グラスに水を注ぎ、金属製のふるいでふたをする。
素早く逆さにひっくり返すと、ふるいは穴だらけなのに、
不思議なことに水はこぼれない。
驚いていると、実験してくれた元ソニーのエンジニア、竹内幸一さん
「水の表面張力で落ちてこないんですよ」と、いたずらっぽく笑った。

斜めから見ると、底に置いたコインが消えたように見える水槽、
回っているうちに逆立ちするコマ、姿見3枚で作った人間万華鏡……。
竹内さんは、科学の原理を利用した手作りのおもちゃや実験装置など
約80点をワゴン車に積み、各地を回って子どもに遊んでもらう活動を
02年から続ける。

おもちゃや装置を並べるだけで、基本的に説明はしない。
「なぜ?」と尋ねられても、「どうしてだろうね」と答える。

「それでも、幼稚園児だって自分で次から次へと触っていくし、
子ども同士で遊び方を教え合ったりする。
好奇心を持ってもらうには、遊びから入るのが一番。
原理などは、後で学校で習ったときに
『ああ、あのときのはこれか』と思ってくれればいい」

竹内さんは少年時代、ソニーが東京のデパートで開いた
少年電子科学展を見て、同社のエンジニアを目指した。
在職中は、家庭用ビデオカメラやビデオプロジェクターを開発。

89年にソニーが開いた科学展に携わった。
家族連れに人気の米サンフランシスコにある科学館の名をとった
「エクスプロラトリアム展」。
子どもが手で触って、さまざまな体験ができる体験型展示が売り物。

その後、大学の講義を受け持つようになり、工学系の大学でさえ
新入生の半数近くが、乾電池の電圧も知らない現状を知った。
「子ども時代の体験が足りない」と痛感。

この二つの経験が、今につながった。
100円ショップなどで部品を購入し、7万円で60種類ほどの
おもちゃや装置を自作し、活動を始めた。
評判を呼び、今ではひっぱりだこ。
昨年は、夏休みに40日間続けた東京都板橋区立教育科学館をはじめ
全国20カ所を回り、約4万5000人が足を運んだ。

出し物も増え、置き場所が悩ましい。
「本当は、そのときだけの出前イベントではなく、小学校の空き教室にでも
いつも置いておき、子どもが好きなときに来て遊んでいくのがいい。
どこか手を挙げてくれないかな」

http://mainichi.jp/select/science/rikei/news/20081026ddm016040006000c.html

心不全は骨折リスクを高める

(WebMD 10月20日)

心不全患者は、他の心疾患患者よりも大幅に骨折しやすく、
運動不足がその一因であることを示す新規研究結果が報告。
アルバータ大学心機能クリニック(カナダ)所長のJustin Ezekowitzは、
「心不全患者は、心機能のリハビリを行い、運動能力を高めることで、
骨の脆弱化と骨折のリスクを下げることができる」
この研究は、米国心臓協会(AHA)発行『Circulation』に掲載。

心不全患者は、ほぼ同年齢の比較的健康な心疾患患者に比べ、
入院および体を衰弱させる股関節骨折のリスクが高い。
うっ血性心不全とも呼ばれる心不全は、
心臓が他の臓器に十分な血液を送り出せない状態。

骨折(特に股関節骨折)は、重篤な肺感染症と重大な血栓形成のリスクを高め、
患者は死に至ることも。股関節骨折患者の30%は、1年以内に死亡。

1998-2001年、アルバータ州の緊急治療室(ER)を受診した
心疾患患者16,294名を対象。患者の年齢は、68-84歳。
ERを受診した1年後、心不全患者の4.6%が骨折を経験、
同年齢の心疾患患者では1%。
1年間の股関節骨折率は、心不全患者で1.3%、他の心疾患患者では0.1%。
他の健康上の問題などの補正後も、「心不全患者の骨折リスクは4倍」、
股関節骨折のリスクは6倍高かった。

「カルシウムまたはビタミンD摂取が十分でないか、
日光を浴びる時間が足りないのかもしれない」
エモリー大学(アトランタ)心不全・移植プログラムの医学部門責任者
Andrew Smith氏は、心不全と骨折の関連は重要かつ興味深い。
この研究により、「心不全患者は骨折しやすく」、
より多くの心疾患患者が骨密度検査を受けるべきと、「医師の認識を高める」必要。

心不全は、入院および死亡の主要原因であり、
一般集団の2.2%、75歳を超える人の8.4%に発生。
骨粗鬆症は、米国人1000万人が罹患。
50歳超における骨粗鬆症の有病率は、女性で約25%、男性で約12%。

Ezekowitz博士による骨粗鬆症の発症リスク低減策は次の通り:
1)どんな人も、生涯を通じて運動すること
2)小児期からすべての食事でビタミンDを十分にとること
3)どんな人もビタミンDの主要生成源である日光をたくさん浴びること
4)禁煙


Ezekowitz博士は、「第一に、医師は心不全患者の治療にあたり
骨粗鬆症を検査する必要がある、
第二に、日光を浴びながら屋外で運動するのが最も良いということ。
ナーシングホーム(nursing home)の入居者は、屋外に出る必要がある」

心臓に問題がある人すべてが最終的に心不全になるわけではなく、
「心不全は、将来心臓が突然止まることを意味していない。
心不全であっても、何年も生きることができる」

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=SPECIALTY&categoryId=580&articleLang=ja&articleId=82076

2008年10月29日水曜日

スポーツ21世紀:新しい波/281 ビデオ判定/4

(毎日 10月26日)

ビデオ判定は今、審判の補助的な役割を超えつつある。
選手側が再判定を要求できる競技では、
ゲームの流れを引き寄せる重要な手段にもなる。

今年9月20日、国内では初の導入となった女子テニス協会(WTA)ツアーの
東レ・パンパシフィックオープンで、象徴的な場面があった。
タイブレークとなったシングルス準決勝の第1セット。
4-2とリードしたカタリナ・スレボトニク(スロベニア)の鋭いサーブが
サイドライン付近で弾んだ。
審判の判定は「イン」。
一気に勝負がつくかと思いきや、相手のスベトラーナ・クズネツォワ(ロシア)は
ビデオでの再判定を求める「チャレンジ」を宣言。
判定は覆り、セカンドサーブでやり直し。
クズネツォワはタイブレークをものにし、第2セットを6-2で奪い、快勝。

テニスでは、チャレンジは1セットに3回と規定。
タイブレークに入ると1回追加。
審判の判定が正しいと、権利を1回ずつ失っていく仕組み。

米ナショナル・フットボール・リーグ(NFL)にも、
回数を制限したチャレンジ制度がある。
1試合に2回が基本で、2回連続で成功すると、3回目の権利も与えられる。
失敗すれば、タイムアウトの権利を1回失うだけに、
行使する場面の見極めは難しい。

選手の心理面への影響も大きい。
東レ・パンパシの覇者で、今季の全仏や北京五輪で準優勝した
ディナラ・サフィナ(ロシア)は、「審判のミスだとはっきり見えると、
不満やイライラが残る。チャレンジすることで精神的に楽になる」

テニスでは06年の導入当初、相手のリズムを乱すために
行使する可能性を懸念する声もあった。
従来ラケット交換や、抗議を繰り返したりと巧みに心理戦を仕掛ける選手はいた。
制度導入で抗議の時間が減り、選手がプレーに集中できるという効果も指摘。
WTAツアー関係者によると、全体のチャレンジ成功率は30~40%。
選手にとっては、権利をどう有効に行使するかという
戦術的な位置づけも高まっている。

http://mainichi.jp/enta/sports/21century/

手を温めるとやさしく親切に行動 米大学実験

(朝日 2008年10月27日)

飲み物や温湿布で手が温まった人は、
他人への評価や行動がやさしく親切になる。
米コロラド大とエール大のグループが、米科学誌サイエンスに発表。

消費行動に関する調査という偽の目的で、エール大生41人を集めた。
実験会場までのエレベーターに乗っている間、偶然を装い、
コーヒー入りのカップを持たせた。

その後、面識のないある人物に関する印象を評価させると、
ホットコーヒーを持っていた人の方がアイスコーヒーを持っていた人より、
「寛大」、「社交的」、「思いやり」などの得点が高かった。

同様に一般の人53人に、商品テストと称して、温湿布と冷湿布を使わせた。
その後、実験参加のお礼として、友人への商品券か自分用に
プレゼントをもらうかを選ばせたところ、
温湿布を使った人は54%が友人用を選んだが、冷湿布組は25%。

グループは、本人が無意識のうちに、
物理的な温かさが人間関係の温かさに結びつくとしている。

http://www.asahi.com/science/update/1027/TKY200810270066.html

ローマ法王庁科学アカデミー会員に選ばれた国立遺伝学研究所教授の五條堀孝)さん

(共同通信社 2008年10月27日)

約400年の歴史があるローマ法王庁科学アカデミー会員に選ばれた。
選出の手紙を受け取り、「クリスチャンでもないし、
最初は何かの間違いじゃないかと思ったほどびっくりした」。

バチカンで31日から開かれるシンポジウム
「宇宙と生命の進化」で会員就任のあいさつをする。

ガリレオ・ガリレイが最初の会員という、世界最古の学術団体。
会員は現在94人で、うち約30人がノーベル賞受賞者。
日本人は、野依良治理化学研究所理事長だけ。

専門は、進化生物学。
生物のゲノム(全遺伝情報)解読が急速に進み、
「解読が終わった生物は、ヒトから細菌まで約600種。
2年後には30倍になる見通しで、研究の"宝の山"がきた」。
膨大なデータを基に、生物進化の速度や系統樹などをいち早く示してきた。

「エイズウイルスの遺伝子変化が、ヒトより100万倍速いことを
1985年に初めて見つけた。ゲノムの視点で、進化を研究してきたことがよかった。
最近突き止めたのは、ヒトの脳の遺伝子は約半分が7、8億年前から続く
原始的動物の脳にもあることです」

ガリレオは、地動説を唱えて宗教裁判に付されアカデミーを追われた。
進化論も、キリスト教右派が異を唱えるなどしているが、
今回の選出は、進化論も科学として認めようとする
最近のローマ法王庁の柔軟な姿勢がうかがえる。
「進化学者の会員は、多分私が初めてではないか。大変な栄誉です」

海外出張で多忙だが、第一線の研究にこだわる。福岡県出身。57歳。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=82053

2008年10月28日火曜日

失われた視覚機能を補う脳の回復メカニズムを解明

(生理学研究所 10月15日)

自然科学研究機構生理学研究所の伊佐正教授と吉田正俊助教は、
脳の一部が損傷を受けて目が見えなくなっても、見えているという
「盲視」現象が起こるのは、普段とは違う脳の仕組みが働くため。
これは、サルに数ヵ月間のトレーニングやリハビリテーションを行わせる
研究から、眼球運動などを回復させられることを明らかにしたもので、
脳の損傷で目が見えなくなった患者のリハビリテーションと、
その機能回復の効果判定に役立つ成果。

本研究グループは、脳の「視覚野」と呼ばれる部分に注目。
視覚野が損傷を受けたサルは一時的に目が見えなくなりますが、
トレーニングやリハビリテーションによって、見えないながらも
目の動きなど視覚機能は数ヵ月かけて回復することが判明。
その間、不十分な視覚情報をもとに何とか目を動くようにするために、
普段とは違う脳の仕組みを使い、目の運動をコントロールする仕方を変えている。

それによって、目を動かしはじめるタイミングは早くなり、
目の動きの微調整はできなくなっていた。
障害を受けた視覚野を、“バイバス”して中脳からの情報を頼りに
目を動かすことができるようになっている。

脳は、傷ついてもその機能をなんとか補おうと、普段は使われていない
別の仕組みを動員して問題を解決していることが明らかに。
ヒトの脳の大脳皮質の障害による視覚欠損でも、
トレーニングやリハビリテーションによって、機能は回復させる。

本研究は、視覚障害患者のリハビリテーションやQOL向上において、
(1)視野計では見逃されるような、「見える」とは意識できないながらも
視覚機能が回復するということが起こりうること、
(2)一部機能回復が数ヵ月のトレーニングによって起こりうること――を示す。

これまで「視覚欠損」と診断され諦めていた患者も、
トレーニングによっては視覚機能を回復させることができるかもしれない。
意識にはのぼらない視覚機能を評価し役立てることが、
新しいリハビリテーションの方策と効果判定に役立つ。

米国科学雑誌「The Journal of Neuroscience」に掲載

http://www.nips.ac.jp/news/2008/20081015/

心臓マッサージに最適の曲は? ビージーズのディスコ懐メロ

(CNN 10月17日)

英人気グループ、ビージーズのヒット曲「ステイン・アライブ」が、
心臓蘇生法(CPR)における心臓マッサージを行う際に
最適なリズムだとする研究結果を、米イリノイ大学医学部の研究者が発表。
米心臓協会(AHA)は約2年前から、CPRの訓練にこの曲を使っている。

1977年のヒット映画「サタデー・ナイト・フィーバー」で使われた
「ステイン・アライブ」のリズムは、1分間に103拍。
AHAは心臓マッサージのリズムを、1分間に約100拍が最適。
実際にマッサージする人は、自分のリズムが適切かどうか不安になり、
1分間の回数が少なくなりがち。

イリノイ大学のデイビッド・マットロック博士は、学生や医師15人を対象に、
実験を実施。携帯音楽プレーヤーで「ステイン・アライブ」を聴きながら、
そのリズムに合わせてマネキンにCPRを実施する。
5週間後、音楽は聴かないが「ステイン・アライブ」のリズムを思い出しながら、
心臓マッサージを実施してもらった。

その結果、音楽を聴きながらの場合は1分間に平均109拍で、
5週間後の音楽を思い出しながらの実施では平均113拍でマッサージできた。

マットロック博士は、心臓蘇生のためには、1分間で100拍を下回るよりも、
より多い回数の方が効果が高いと指摘。
「ステイン・アライブ」が有効だと主張。

AHAの広報担当で、ペンシルベニア大学のビナイ・ナドカルニ博士も、
この曲の効果を実感しているひとり。
授業で心臓マッサージのリズムを取れない学生が、
「ステイン・アライブ」を聴きながら練習したところ、すぐに適切なリズムを修得。

イリノイ大学での実験に参加した医師マシュー・ギルバートさん(28)も、
実際のCPRで「ステイン・アライブ」が役立った。
「リズム感がないと言われて心配していた」うえに、
ディスコ音楽をあまり知らなかったが、
この曲のリズムで止まった心臓を蘇生させた。

ギルバートさんは、「クイーンの『Another One Bites the Dust』も、
心臓マッサージに有効なリズムだという噂を聞いたが、
(歌詞的に)あまり適切じゃないかな」

http://www.cnn.co.jp/science/CNN200810170032.html

脳「化粧した私は他人」 茂木さんとカネボウ研究

(朝日 2008年10月17日)

女性が化粧した自分の顔を見たとき、
脳内では他人の顔を見たときと同様の反応が起きている。
カネボウ化粧品は、脳科学者の茂木健一郎さんらとの共同研究から、
こんな分析結果を発表。

「商品づくりにすぐには結びつかない」(カネボウ化粧品)が、
「化粧が人間の脳の働きに、どんな影響を与えているか、さらに調べる」

同社の基盤技術研究所と茂木さんら脳科学者は、
昨年7月から共同研究を開始。

20~30代の女性17人を対象に、自分と他人の素顔と化粧した顔、
計4種類の写真を見せて、大型診断装置で脳内のどこが反応しているかを観察。

その結果、自分の化粧した顔を見たときと他人の顔を見たときで、
脳内での反応場所が同じだと分かった。

茂木さんは、「女性は化粧した自分の顔を、自分の顔だとわかりながら
他人のように客観化して見ている。
つまり、女性は他人に見られることを前提に自らを構築している

http://www.asahi.com/science/update/1016/TKY200810160302.html

2008年10月27日月曜日

考える力(2)五感使いアサガオ表現

(読売 10月22日)

表現力を高めることで、思考力を養う取り組みがある。

アサガオのプランターが6年2組の教壇に載せられた。
「夏のアサガオと、どこが違うかな。感じたことを自由に書いて」と
担任の水野敦司教諭(45)。
「言葉のスケッチ」のテーマは、「夏の終わり」。

浜松市立中ノ町小学校が、朝8時から毎日全校で行っている「さわやかタイム」。
読解力を高める活動にあてているが、中でも、言葉のイメージを膨らませて
短い文章で表す「スケッチ」を重視する。

子供たちはアサガオを見つめると、まもなく鉛筆を走らせ始めた。
5分後、考えた言葉の発表が始まった。
「黄色い」、「枯れている」と見た目の印象から始まり、
「元気がない」と擬人化したり、「寂しさを感じる」と
自分の感情に置き換えたりした言葉が、自然に出始めた。
種に注目した子は、「新しい世代へのバトンパスのように感じます」。

水野教諭は、「アサガオ一つでも、色々な表現がある。
次回はアサガオに限らず、みんなが夏の終わりを感じたことを書いてみよう」

こうした活動がもう20年近く続く。
小野間正巳校長(55)は、「子供の五感を通じて言葉を引き出し、
言葉同士の連想から、1本の糸を作り上げるように文章を紡ぐ作業。
そのうち、感覚を働かせながら考えることが習慣になる」、
「中ノ町の子供は、低学年から文章で書ける力があり、学力の基礎になる。
高学年は、抽象的なテーマも苦にしない。
自分の考えを論理的に話せる子が多い」と自信を見せる。

中国山地にある広島県安芸高田市立刈田小学校は、全校児童53人。
4年の担任、荒田優子教諭(40)は算数で、
思考力や表現力を磨く授業に取り組む。
子供たちに、L字形の図形の面積を求める問題を出した。

「こんな線を引き、式を書いた子がいます。誰か説明できる?」。
発表させたのは、線を書いた子とは別だ。
「ここの長方形と正方形の面積を足したのだと思います」、
「今の発表はいい?理由は?」。
結果が正しいだけでなく、理由を言えた子を「今の説明は上手だね」とほめる。

荒田教諭は、問題を自分で解く、みんなで解く、
発表を評価する時間を、意識した授業を心がける。
「他の子供の解答を読み取らせ、説明したり評価したりすることが、
理解や判断力につながる」

授業改革から4年。
算数で理由をしっかり考える子、人の発表を集中して聞ける子が増えた。
授業中、わからない子にわかる子が、「どうしてわからないのか」を
考えながら教える姿も定着してきた。

「算数には式、図、表、文章など、多くの表現手段がある。
他の子の表現方法を学び、違うように見える式や図が同じ意味を持つことを
理解することが、算数への理解を深める」と荒田教諭。

表現力は、国語の専売特許ではない。
教科の特性を生かした工夫で、考える力と一緒に伸ばすことができる。

◆変わる学力観

新学習指導要領では、小中学校とも総則の中で、言葉の習得や計算など、
基礎的な知識や技能を確実に習得した上で、
その知識や技能を子供が自力で生活の場面に活用するための
思考力・判断力・表現力の育成を提唱。
主体的に学習する態度を養うことも求めた。
こうした力を育てる言語活動や体験活動を重視。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20081022-OYT8T00154.htm

山積み丸太、住民不安 大船渡港に約13万本

(岩手日報 10月21日)

大船渡市の大船渡港で、埠頭に積まれている約13万本の輸入丸太材。
近い将来、宮城県沖地震の発生が指摘される中、
市民から対策を求める声が上がっている。
津波によって流れ出た丸太が家屋を直撃するなど、
被害が拡大する可能性があるからだ。

港を管理する県は、港湾活用と防災対策の両面で板挟みの状態。
固定した場合の費用負担など課題もある中、
丸太を所有する輸入木材業者も対策の検討に乗り出したが、
「1社だけでは対応できない…」と困惑。

大船渡港の茶屋前埠頭には、ロシアや米国などから貨物船で運ばれた
丸太材がうずたかく積まれている。
通常、埠頭に数カ月保管され通関手続きなどを経た後、
市内の木材加工会社などに運ばれる。

今年10月時点で、丸太は約13万本。
マツなどの針葉樹がほとんどで長さ12メートル、
重さ1トン以上の巨大丸太が多い。
防潮堤を超える4、5メートルもの高さで積まれている。

茶屋前埠頭に隣接する地域の自主防災組織隊長を務める
及川千春さん(62)は、「津波だけだと高台に避難すれば命は助かるが、
丸太による被害拡大が怖い」と心配。

こうした住民の声を受けて、市は県に対して数年前から対策を要望。
しかし、大船渡地方振興局土木部の田村荘弥河川港湾課長は、
「丸太がどう流出するかというシミュレーションも難しい。
業者にワイヤなどによる固定を呼び掛けているが、
現状では有効な手だてがない」

一方、木材を輸入する北日本プライウッド大船渡工場の
川村敬喜・総務担当は、「県内での度重なる地震などを受け、
木材の安全管理について社内で検討を始めた」とするが、
「1社だけで対応できない問題でもあり、関係機関と協議したい」と頭を悩ませる。

昭和南海地震の津波(1946年)では、高知県須崎市の61人の犠牲者の
大半が木材による家屋破壊や下敷き。

大船渡市三陸町綾里の津波災害史研究者山下文男さんは、
「これまで何度も問題視されながら手つかずのままだ。
責任を押し付け合うことなく、関係者できちんとした対策を講じるべきだ」

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20081021_14

CO2削減:水の抵抗減らし、船も 気泡で10%省エネ、戦艦大和型も効果

(毎日 10月19日)

国際航路を航行する船舶から排出される二酸化炭素(CO)が
急増し、その削減が急務に。
海流予報の活用や再生可能エネルギーの導入など、
燃料費の節約も狙う一石二鳥の対策に、海運業界や研究機関が取り組む。
決め手は、空気の800倍という水中の摩擦抵抗をいかに減らすか、という点。

日本郵船は、工場のプラントなどを運ぶ総トン数1万4600トンの
重量物運搬船に、商船では世界初となる船底に、「空気」を送り込む装置を搭載
10年に完成予定。
「空気で船底にバブル(気泡)を発生させ、海水との摩擦抵抗を減らし、燃料を節約」。
同社の田中康夫技術グループ長は、“新兵器”の効果を説明。

送り込まれた空気は、気泡となり浮力を生じ、船底の壁に張り付く。
船底が気泡で覆われると、気泡は水より摩擦抵抗が少なく、
航行中の船への抵抗も減る。
大型船は、船底の面積が大きいため、
船底に多くの気泡が張り付くことになり、効果が大きい。

「気泡効果」は、80年代から研究されている。
国内でも、海上技術安全研究所が01年から練習船で実証試験を続けていた。
直径0・5~1ミリの微小な「マイクロバブル」を用いていたが、
その後、「マイクロ」でなくても、もっと大きい普通の「バブル」でも十分、
摩擦抵抗が減って効果があることが分かってきた。

日本郵船によると、この手法で航行中の摩擦抵抗は約20%減る。
しかし、空気を送り込むためにエネルギーを使うため、
差し引きで10%の省エネ。
効果が出るのは、船底のみ。
水と接する船体の側面では、気泡が海面に浮かんでしまい張り付かない。
海面の下になる部分が深い船では、空気の送り込みに使うエネルギーも大きく、
現在は一部の船でしか省エネ効果は生まれない。
「将来的には、多くの船に搭載してCO2を減らしたい」

◇30年で効率2倍に

池田良穂・大阪府立大大学院教授(船舶工学)によると、
航行中の船体に働く抵抗は、水の摩擦抵抗が大部分を占める。
船を進めるはずのエネルギーが波を造ることに費やされてしまう「造波抵抗」、
船舶の背後に渦ができることで、抵抗が増す「粘性圧力抵抗」がある。

造波抵抗は、高速になると急激に増加し、高速化を妨げるやっかいなもの。
これを減らすには、波を可能な限り立てなければいい。
そのため、早くから取り入れられてきたのが、船首の船底部分に
丸く突き出た形のバルバスバウ(球状船首)。
バルバスバウが作り出す波が、それ以外の船首による波と干渉し合い、
結果的に船全体が造る波を抑える仕組みに。

池田教授によると、バルバスバウの研究は日本がリードしてきており、
古くは1941年に完成した戦艦大和に装備され、約8%の省エネ効果。
省エネ研究の積み重ねにより、過去30年間で日本の
船舶のエネルギー効率は約2倍に向上。
池田教授は、「できるだけ抵抗を減らすように、船の形状を
総合的に見直すなどの努力を続ければ、あと20~30%は効率を改善できる」

◇海流予測も駆使

海洋研究開発機構(JAMSTEC)の研究者らが、研究成果の社会還元を目的に
設立した「海流予測情報利用有限責任事業組合」は、
従来よりも大幅に精度を上げた海流の予測情報を提供。
約18キロ四方ごとの海流の変化を、スーパーコンピューターで予報。

海運会社が提供された情報を活用し、黒潮など流れが強い海流に
うまく乗ることができれば、航行の時間短縮や燃料節約を狙える。
日本郵船が、「波乗り効果」を黒潮海域で検証したところ、
従来より最大で約9%のCO2削減に。

新日本石油は同社と共同で、船舶に搭載する太陽光発電システムを開発、
船内の照明やエンジン制御などに用いる方針。
水素を用いる燃料電池の活用も検討。

日本の海洋技術安全研究所などの国際研究チームは、
07年に船舶から排出された温室効果ガスが、
CO2換算で約8億4300万トンに上ると試算。
世界全体のCO2排出量の約3%に相当、
20年までに10~30%増加すると予想。
京都議定書後の13年以降の国際的な温暖化対策では、
船舶のCO2削減も重要な課題になりそう。

◇10%減速で燃料3割節約

船の燃料は、主に重油。
照明、空調など船内の電力供給用発電機も重油を使うことが多い。
運航に伴う重油の燃焼で、窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)のほか、
温室効果ガスのCO2も排出。

船舶におけるCO2削減は、燃費の改善が一般的。
船体やプロペラに付着する海藻や貝殻などを取り除き、摩擦抵抗を減らす、
▽速度を遅くする(速度10%減で燃料3割減)、
▽風向、風力、波浪のモニタリングデータを活用し、速度を一定にする、
▽プロペラやエンジンの改良、
▽燃料に添加剤を投入して燃焼効率を上げる--などの手法。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2008/10/19/20081019ddm016040026000c.html