(生理学研究所 10月15日)
自然科学研究機構生理学研究所の伊佐正教授と吉田正俊助教は、
脳の一部が損傷を受けて目が見えなくなっても、見えているという
「盲視」現象が起こるのは、普段とは違う脳の仕組みが働くため。
これは、サルに数ヵ月間のトレーニングやリハビリテーションを行わせる
研究から、眼球運動などを回復させられることを明らかにしたもので、
脳の損傷で目が見えなくなった患者のリハビリテーションと、
その機能回復の効果判定に役立つ成果。
本研究グループは、脳の「視覚野」と呼ばれる部分に注目。
視覚野が損傷を受けたサルは一時的に目が見えなくなりますが、
トレーニングやリハビリテーションによって、見えないながらも
目の動きなど視覚機能は数ヵ月かけて回復することが判明。
その間、不十分な視覚情報をもとに何とか目を動くようにするために、
普段とは違う脳の仕組みを使い、目の運動をコントロールする仕方を変えている。
それによって、目を動かしはじめるタイミングは早くなり、
目の動きの微調整はできなくなっていた。
障害を受けた視覚野を、“バイバス”して中脳からの情報を頼りに
目を動かすことができるようになっている。
脳は、傷ついてもその機能をなんとか補おうと、普段は使われていない
別の仕組みを動員して問題を解決していることが明らかに。
ヒトの脳の大脳皮質の障害による視覚欠損でも、
トレーニングやリハビリテーションによって、機能は回復させる。
本研究は、視覚障害患者のリハビリテーションやQOL向上において、
(1)視野計では見逃されるような、「見える」とは意識できないながらも
視覚機能が回復するということが起こりうること、
(2)一部機能回復が数ヵ月のトレーニングによって起こりうること――を示す。
これまで「視覚欠損」と診断され諦めていた患者も、
トレーニングによっては視覚機能を回復させることができるかもしれない。
意識にはのぼらない視覚機能を評価し役立てることが、
新しいリハビリテーションの方策と効果判定に役立つ。
米国科学雑誌「The Journal of Neuroscience」に掲載
http://www.nips.ac.jp/news/2008/20081015/
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