(朝日 2008年10月24日)
子どものころ長期にわたり強い体罰を受けた人は、
受けていない人より脳の前頭葉の一部が最大で約19%縮んでいる、
という研究結果を、熊本大大学院医学薬学研究部の友田明美准教授が
米ハーバード大医学部との共同研究でまとめた。
体罰と脳の萎縮の因果関係を実証した研究として、
体罰のあり方に一石を投じることになりそう。
友田准教授は、「都市化社会と脳の健全育成」を主題としたシンポジウムで発表。
研究は、米国で、4~15歳のころに平手打ちされたり、
むちで尻をたたかれたりするなどの体罰を年12回以上、3年以上にわたって
受けた米国人の男女23人を対象に実施。
磁気共鳴断層撮影装置(MRI)で脳の断面図を解析したところ、
体罰を受けず育った同年代の22人に比べ、
感情や意欲の動きにかかわる前頭前野内側部が平均19.1%、
集中力や注意力にかかわる前帯状回が16.9%、
認知機能にかかわる前頭前野背外側部が14.5%小さかった。
小児期に過度の体罰を受けると、行為障害や抑うつなどの精神症状を
引き起こすことは知られているが、脳への影響は解明されていなかった。
今回の研究で、脳の萎縮がみられた人については、
体罰でストレス下に置かれた脳が、前頭葉の発達を止めたと考えられる。
友田准教授は、「研究結果は、虐待の早期発見に生かせるのではないか」
◆子どもの虐待に詳しい才村純・関西学院大学人間福祉学部教授の話
虐待が子どもに与える影響を、客観的な証拠で示した画期的な研究。
子どもが虐待の事実を言い出せず、親も隠したり認識がなかったりして
見落とされる事例は多い。
脳との因果関係を裏付けることができるなら、隠れた虐待の発見に役立つ。
研究成果が今後、教育や福祉の分野で普遍化されていくことを期待。
http://www.asahi.com/science/update/1024/SEB200810230015.html
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