2009年8月22日土曜日

がんの薬物療法に力 本県の専門薬剤師、岡田さん

(岩手日報 8月14日)

県立中央病院(盛岡市)薬剤部の岡田浩司主任薬剤師(37)は、
本県唯一のがん専門薬剤師。
がんの薬物療法に精通し、治療計画や薬剤の調整に
専門的な知識を持つ。

県内で、がんは1984年以降、死亡原因の1位。
県医療局は、がん専門薬剤師の育成に力を入れ、
岡田さんは後輩を指導する役割を担う。

がん専門薬剤師は、日本病院薬剤師会が2006年から
認定制度を開始。

岡田さんは3カ月の実技研修などを経て、今年4月に認定。
6月現在、全国に164人の同薬剤師がいる。

同薬剤師の役割は、
▽抗がん剤調整の安全管理、
▽不適切な薬剤投与の防止確認、
▽患者が適切な薬物治療を選択するための情報提供、
▽患者の生活の質(QOL)の維持、向上―など。
認定期間は5年間、更新するには学会発表や論文の提出が必要。

岡田さんが勤務する中央病院は、
月に約800件の抗がん剤治療を行っている。
がんの種類や進行状況によって治療法は異なり、
約180種類の治療計画がある。

岡田さんは、薬剤師の立場から治療計画の妥当性を判断。
医師、看護師らと相談しながら、治療の有効性の確保や
抗がん剤副作用の軽減を目指している。

近年、がん治療で求められる知識や技術は複雑、高度化。
中央病院は、外来を含めて抗がん剤治療を行う患者が増え、
薬剤師の役割が重要視。

同病院は9月から、がん専門薬剤師を育成するための研修を始める。
岡田さんは、研修責任者として指導に当たる。

岡田さんは、「患者さんが、岩手のどこにいても、
最新で最良の治療が安全に受けられるよう、
拠点病院に専門性を持った薬剤師を早く配置できるようにしたい」

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20090814_5

よく遊び、寝る子に自尊感 福岡県が小中生1万人調査

(2009年8月19日 共同通信社)

外でよく遊び、早く就寝する子どもは、
自分に価値があると感じる「自尊感情」が高い傾向にあることが、
福岡県が小中学生約1万3千人に行った調査で分かった。

自尊感情と生活実態の関係についての大規模な調査はめずらしく、
専門家は、「夢をもって、前向きに生きるために必要な自尊感情が、
生活習慣や遊びの中で育つことが裏付けられた」

福岡県は、県内の小学4年と6年、中学2年と3年を対象に
「何をやっても失敗するのではないかと思う」、
「友達と同じくらいいろいろなことができる」など、
10項目の設問で自尊感情を評価、併せて普段の生活を調べた。

その結果、小学生では外で1時間以上遊ぶ児童の42%が
自尊感情が高いとされたのに対し、
1時間未満しか遊ばない子では29%。
同様に、午後10時までに就寝する児童では45%、
夜更かしをする児童では34%。中学生も同じ傾向。

福岡教育大の横山正幸名誉教授(発達心理学)は、
「自分の体や生活を大事にしないと、自尊感情は育たない。
外で遊び、規則正しい生活を送ることが大切だ」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/8/19/105970/

学びの情報基地(7)展示物作る触る遊ぶ

(読売 8月8日)

子どもを主体にした博物館が工夫を凝らす。

ボールがころころ転がって、カエル池にポッチャーン。
そばにある水の入ったコップを棒で順にたたくと、
童謡「かえるのうた」のメロディーが響く。
沖縄県沖縄市、「沖縄こどもの国」内にある
「ワンダーミュージアム」

常設展示もあるが、大きな特徴は、
館内の作業場・インハウス工房で作られた作品が、
触って遊べる展示物となり、ほぼ1年周期で変わっていくこと。
工房で作業するクリエイターや学生が、
制作過程を時々子どもたちに見せ、「こんなの好き」、「面白い」
という声を参考に取り入れる、全国的にも珍しい試み。

「子ども心を反映させれば、振り返ってくれるんです」、沖縄こどもの国を
運営する、沖縄こども未来ゾーン運営財団の鉢嶺渚さん(31)。

インハウス工房の扉が開き、小学生らが土遊びをする
ワークショップが行われた。
小学2年の長男厚公君(7)の母親の高良ともえさん(34)(浦添市)は、
「子どもの時、遠足と言えばここでした。今でもわくわくします。
元気のない時期もあったのに、復活が見事です」

子どもたちが集う場所として、ここは、
沖縄の人たちが特別な思いを抱く場所でも。

沖縄こどもの国は、1972年の沖縄県の本土復帰時、
「青少年に夢を与える施設を」との願いを込め、
県内初の動物園として開園。
数少ない子ども向け施設として、長らく親しまれた。
遊園地も併設された90年、年間有料入場者数が50万人近くに達したが、
施設の老朽化や他の娯楽施設登場の影響で、
入場者数が20万人を割り込み、2001年3月から約1年間休園。

ワンダーミュージアムは、営業再開後の04年、
ボランティア拠点施設と共に新たに開設。
常設展示でも、動くものがゆがんで見える装置があったり、
自分の動きが何重にも重ね合わせられてスクリーン上に映し出されたり、
と好奇心をくすぐる工夫が各所になされている。

尾比久功・沖縄こどもの国副施設長(50)は、
「科学技術や、沖縄ならではの環境、平和、共生をテーマに掲げ、
体験学習でき、人材育成もできる場所に刷新した」

昨年度の有料入場者数は、こどもの国全体で前年度より
8万人増えて、約37万人。
うちワンダーミュージアムが約15万人と、まずまずの人気。

同ミュージアムに建設段階からかかわった
九州大学の目黒実特任教授(63)は、
「子どもの創造力や感性を高める工夫を凝らしている」

「霊山こどもの村 遊びと学びのミュージアム」(福島県伊達市)、
中学校の廃校跡を利用した「篠山チルドレンズミュージアム」
(兵庫県篠山市)なども手がけた目黒教授。
「いずれは、子どもたち自身が運営するようにできないか」と考えている。

◆沖縄こどもの国
 サイエンスプログラム「マグネット展」など。

◆篠山チルドレンズミュージアム
 ワークショップ「myバッグを持ってかえっこバザールへ行こう!」など。

◆霊山こどもの村
 夏の企画展「へんしん」など。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090808-OYT8T00293.htm

2009年8月21日金曜日

「エコ優遇」で生産回復の兆し 本県ものづくり産業

(岩手日報 8月16日)

世界不況で、大幅減産を強いられていた
本県のものづくり産業に、回復の兆しが見え始めた。

環境に配慮した「エコカー」や家電などへの優遇措置を受け、
需要が徐々に回復。
本県の主軸である自動車関連産業は、生産ラインを戻したり、
従業員の増員に転じている。
最悪期は脱したものの、雇用環境や消費、投資動向は依然、
厳しく自律回復には時間がかかりそう。

金ケ崎町に東北唯一の完成車組立工場の岩手工場を構える
トヨタ車開発・製造の関東自動車工業(横須賀市)。

4~6月の生産台数は、岩手工場と東富士工場(裾野市)
合わせ、前年同月比61・4%減の5万2200台。
四半期決算が始まった2002年度以降、最少。

今春の「エコカー減税」など、環境対応車に対する優遇措置効果で、
岩手工場で生産しているベルタなど、エコカーの需要が回復。
同工場は、2月から全2本の生産ラインを昼夜勤務の2直から
昼勤務の1直に縮小、
17日から1本のラインを約半年ぶりに2直に戻す。

自動車は、1台当たりの部品が数万点ともいわれ、
生産回復の波及効果も大きい。

自動車部品メーカー大手のアイシン精機(愛知県)の
子会社・アイシン東北(金ケ崎町)は6~7月、
約220人の社員に加え、約30人の期間社員など
非正規社員を増員。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20090816_3

支える:バンクーバー冬季五輪、あと半年/3 氷とらえるブレード

(毎日 8月20日)

長野五輪前年の1997年に登場した「スラップスケート」は、
スピードスケート界を劇的に変えた。
氷をけった時に、スケート靴のかかととブレード(刃)をつなぐ
部分が離れ、バネ仕掛けで再び戻る仕掛けのスラップは、
より長く氷に力を伝えることが可能になり、直線のスピードが向上。

そのスラップも、登場から10年以上。
技術は完成されつつある。
「直線の次はコーナー」と、02年のソルトレークシティー五輪前後から
世界に広がり始めたのが、ブレードを湾曲させる技術。

ブレードをリンクのカーブに合わせ、肉眼ではわからない程度に
緩やかに曲げる。
真っすぐなブレードよりも、コーナーで体を傾けた際、
氷に接触する部分が増え、安定性が高まる。
湾曲の度合いが大き過ぎると、直線での氷の抵抗が増えてしまう。

直線スピードを犠牲にせず、どれだけコーナーでの
安定性を高められるか?
バランスを取るには、ごく微小なレベルでの調整が不可欠。
日本やカナダなど、1000分の1ミリまで測定できる機器を導入、
適切な湾曲度合いを探っている。

日本の男子短距離の2本柱、長島圭一郎、加藤条治らが
所属する日本電産サンキョーでも、06年トリノ五輪後から
本格的に湾曲の精度向上に取り組んできた。
電子部品など精密機器を製造している同社のノウハウを用い、
ブレードを湾曲させる器具も作った。

同社スケート部で用具調整を担当する小沢竜一コーチ(28)は、
湾曲によって、「これまでカーブは、『どれだけスピードを落とさずに
曲がり切れるか』が勝負だったが、いまや加速する場所に変わった」
湾曲の技術は本来、より小さいカーブを曲がる
ショートトラック(ST)で開発。
小沢コーチも、ST中長距離の元学生王者の肩書を持つ。

「用具に不安なく、選手をリンクに送り出したい」と話す
小沢コーチの家業は大工。
「幼いころから仕事を手伝っていたので、カンナの刃の出し入れなど
ミリ以下の道具の調整は慣れてます」と苦笑、
家業で培った「目」も日本短距離陣の武器。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/general/archive/news/2009/08/20/20090820ddm035050189000c.html

学びの情報基地(6)化石や昆虫 野外で講座

(読売 8月6日)

市民向け講座を多彩に展開する博物館も少なくない。

「ブオー、ブオー」
ウシガエルの太い鳴き声と鳥のさえずりが響く田んぼ道を、
大きな虫取り網を肩にかついだ中学生たちが歩く。
「あ、おるおる、ヤンマ!」と誰かが叫ぶ。
小高い丘の上では、初めてオオムラサキのオスを
捕まえた子がうれしそう。
わなを仕掛けるため、手がハチミツでべたべたになった子も
いれば、草の上に座り込んで採集ポイントを相談する一団も。

兵庫県立人と自然の博物館(同県三田市)が、
六甲山の近くにある神戸市北区の里山で開いたセミナー
「ユース昆虫研究室」
中学生男女18人が、通年計13回の日程で、
野外での昆虫採集・観察、標本製作、調査結果のまとめ方などを
学び、オリジナル昆虫図鑑を作成して展示、発表。

ガが好きという中学2年、川崎安寿さん(13)は、
「周りには、昆虫好きがいないけれど、ここに来れば昆虫について
突っ込んだ話ができるし、もっと力を高めることができる」

講師を務める同館主任研究員の八木剛さん(40)は、
「昆虫好きは、今では学校に1人いるかいないかの
圧倒的少数派で、学校教育ではカバーできない。
博物館のセミナーだからこそ、仲間と興味を深めることができる」

同館は1992年、同県内の新興住宅地に、
環境や自然に関する博物館を、という県民の要望を受けてオープン。
恐竜の化石や昆虫の標本など、100万点以上を収蔵。
大都市からの交通の便が悪いこともあり、
入館者数が年間十数万人と、この規模の博物館としては低迷。
2002年度から、「生涯学習の支援」などをテーマに、
改革に踏み切ることに。

同館は、兵庫県立大学の自然・環境科学研究所の一部も兼ね、
研究員が37人と比較的多い。
研究員らが講師となり、一般市民向けセミナー数を増やしていった。

同館生涯学習課長の平松紳一さん(50)は、
「展示作品は、年数がたつと古くなるが、更新は容易にはできない。
そこで、博物館の人を動かして外に出て、
お客さんに来てもらおうということになった

セミナーは、今年度だけで「丹波の恐竜化石」、
「芦屋でまなぶ森・川・海の自然」、「六甲山のホタル」など
延べ400回以上を予定。
同館の利用者数は、直接足を運ぶ入館者数こそ
昨年度12万人と相変わらずだが、
セミナー参加者などを含めると同55万人に及ぶ。

ユース昆虫研究室も、今年で9年目。
卒業した高校生、大学生はサークルを作り、
セミナーにも顔を出して子どもたちの相談に乗る。
子どもたちは時間を忘れ、知らないことを自分で調べたり、
みんなで話し合ったりする。

博物館の外で行う活動が、新たな展開につながっている。

◆講座やセミナーなどが充実している主な自然系博物館

千葉県立中央博物館(千葉市)
ミュージアムパーク茨城県自然博物館(坂東市)
群馬県立自然史博物館(富岡市)
神奈川県立生命の星・地球博物館(小田原市)
大阪市立自然史博物館(大阪市)
兵庫県立考古博物館(兵庫県播磨町)

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090806-OYT8T00309.htm

細胞のがん化抑える遺伝子、善玉→悪玉に突然変異 仕組み制御できれば新薬も

(2009年8月18日 毎日新聞社)

細胞のがん化を抑えている遺伝子が突然変異し、
がんを引き起こす珍しい現象を、
小川誠司・東京大病院特任准教授(血液腫瘍学)らが発見。

現在の治療法は骨髄移植しかないが、
「善玉」から「悪玉」に変身する仕組みを制御すれば、
新薬の開発につながる可能性がある。

現象が見つかったのは、正常な血液が作られなくなる
骨髄異型性症候群
国内に7000~1万人の患者がいると推定、
進行すると白血病になる例も多い。

研究チームは、同症候群の患者222人の遺伝子を調べた結果、
11番染色体に異常がある患者群(17人)では、
遺伝子「C1CBL」が変異していることを突き止めた。

C1CBLは通常、がん細胞を含め細胞の増殖を抑制する働き。
変異したC1CBLを、マウスの細胞に組み込むと、
細胞の異常増殖を促すたんぱく質の働きが活発になって、
がんを引き起こした。

異常増殖の割合は、正常なC1CBLのない細胞ほど高く、
積極的に細胞増殖を促進する機能を獲得していることも判明。

小川さんは、「細胞増殖を促進するたんぱく質の働きを妨げる薬剤を
開発できれば、有効な治療薬になる可能性がある」
7月20日付の科学誌ネイチャー電子版に発表。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/8/18/105885/

2009年8月20日木曜日

コスメシューティカル市場(後編)

(日経ヘルス 8月6日)

科学的裏づけに基づくアンチエイジングのアプローチに、
もっとも高い関心を示しているのが、40代以降の女性消費者。

この世代の女性は、加齢に伴う女性ホルモンの減少などによる
皮膚の衰えや、体調の変化を顕著に自覚。
化粧品を使用してきた長年の経験から、
機能性や安全性に対する要求水準が高く、
科学的エビデンスを重視する傾向が強い。

「エイジング(老化)に対するケア」は、これまでの人生において
実践・経験したことがなく、避けることができない「老い」に対し、
漫然とした不安を抱えている。
アンチエイジングを標榜する製品・サービスを求める傾向が強く、
コスメシューティカル市場成長の原動力。

40歳前後の独身女性や子供のいない共働き夫婦といった
可処分所得の高い消費者、ファッション感度の高いシニア層は、
美容関連の消費意欲が旺盛で、彼らの購買意欲を刺激する
マーケティング活動や製品開発・上市に力を入れる
企業が増えてきている。

国内の化粧品の95%に原料を供給しているという
一丸ファルコスは、「5年位前から、アンチエイジングを
キーワードにした製品開発が、化粧品メーカーの間で盛んに。
成分開発においても、これまで以上に機能性に関する
エビデンスが求められるようになった」

実際、各メーカーが力を入れている機能性化粧品を見ると、
独自の有効成分を開発・配合し、美白や抗シワなど、
アンチエイジング効果を標榜した商品が増えている。

http://nh.nikkeibp.co.jp/article/nhpro/20090806/103669/

拡大するコスメシューティカル市場(前編)

(日経ヘルス 8月5日)

機能性食品や飲料、健康志向食品、サプリメント、医薬品など
幅広い産業へと、アンチエイジング市場が広がりを見せる中、
盛り上がりを見せているのが、医療と美容が融合した
「コスメシューティカル」市場。

コスメシューティカルとは、化粧品を意味するコスメティクスと
製薬・調剤を意味するファーマシューティカルをあわせた造語。
医学的アプローチで、効果・効能を検証した化粧品や有効成分などの
ことを示し、現在の美容研究や化粧品開発の世界的な趨勢。

コスメシューティカル市場の中軸の1つが、
アンチエイジング機能を中心とした機能性化粧品:
アンチエイジング化粧品。

広義の意味では、美容・アンチエイジング効果を謳った
機能性食品や飲料、エステティックサロンや美容皮膚科で施される
外科的処置やスキンケアなども含む。
これら商品・サービスの開発や流通を支える機能性素材の
開発メーカー、百貨店やドラッグストアなどの流通・小売業者などの
広範な企業がプレイヤーとなって市場を形成。

調査会社の富士経済は、スキンケアにおける機能性化粧品は
アンチエイジングブランドが牽引、2008年には1兆円超。
「本来、アンチエイジング機能が求められるリカバリー
(表れた老化現象の改善)だけでなく、若年層をターゲットとした
初期老化対策のプロテクト(初期段階の老化症状の予防)でも
商品投入が活発化、アンチエイジング機能とホワイトニング機能を
合わせた商品投入が行われるなど、
カウンセリング・セルフを問わず、各メーカーが注力」

http://nh.nikkeibp.co.jp/article/nhpro/20090805/103662/

支える:バンクーバー冬季五輪、あと半年/2 空気抵抗少ないウエア

(毎日 8月19日)

バンクーバー五輪で、新たに正式種目となったスキークロス(SX)。
日本の第一人者、滝沢宏臣(トーヨータイヤ)が、
「フランスチームが、とんでもないウエアを着ている」
耳にしたのは、昨年末。

SXは、フリースタイルスキー競技の一種目。
トリノ五輪で新種目となったスノーボードクロス同様、
「見せるスポーツ」の側面も強く、ゆったりした形のウエアが
主流を占めてきた。
フランスなどが採用したのは、空気抵抗が格段に少ない、
アルペン競技のウエアに酷似したタイプ。
「上腕と太ももの周りに、6センチ以上のゆとりがあること」
などとする国際スキー連盟の規定を、ぎりぎりクリア、
「やられた、という感じ。
『フリースタイルのレースを自分たちで作り上げよう』という
紳士協定が、崩れた瞬間だった」と滝沢は振り返る。

プレ五輪シーズンは、3月の世界選手権猪苗代大会に合わせて、
急きょ新型ウエアを用意、後手に回る形に。
その経験を踏まえ、滝沢はバンクーバーに向けて動き出した。

09~10年シーズンの規定が明らかになった直後の7月末、
ウエアの供給を受けるゴールドウインと綿密な打ち合わせ。
ゴールドウインは、「新規定で、ダウンヒル用素材の使用が禁止。
素材が変われば、デザインも変わる。ゼロからのスタート」
12月のW杯で、新型ウエアを披露できる見通し。

冬の競技は、道具を有効活用できるかにかかっている。
自分の体ができていればいい、というものではない」と滝沢。
アルペンからの選手流入が顕著な状況と合わせ、
SXは急速に競技性を強めている。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/general/archive/news/2009/08/19/20090819ddm035050035000c.html

学びの情報基地(5)事前授業 美術品に興味

(読売 8月5日)

美術館が小学校で事前授業を実施している。

「お父さんとお母さんがけんかして、
子どもが仲直りの方法を考えている」、
「箱の中に何が入っているのか、早く見たい」、
「人生を悩んでいる」、
「あなたが大好きです。せっかく会えたのにさようなら」

世田谷区立東玉川小学校の図工室。
黒板に張られた抽象画のコピーを前に、4年生児童らが
「絵の中の人間が何をしていると思うか」について様々な考えを発表。

それを受けて、講師を務めた東京学芸大学3年の
九十九由紀さん(20)が、「正解はありません。でも、作者がこれを
描いた時は戦争の後で、大変な時代。
みんなが感じたり、悩んでいたり、というのは間違いないのでは。
その気持ちを大切に、明日は本物を見て下さい。
いろんな絵があるので、一つ一つ、考えてみて」

九十九さんは、同区砧公園にある世田谷美術館のインターン生、
コピーの絵は抽象画家、朝妻治郎作「人間」。
子どもたちが翌日、同館の収蔵品展「人のかたち、人の想い」を
鑑賞するのを前に行われた事前授業。

世田谷美術館は、1986年の開館当初から、
区教育委員会の要請で、区内の小学校4年生全員を対象にした
鑑賞教室を館内で開いてきた。
全国でも先駆的な試み。

学芸員の高橋直裕さん(53)によると、子どもたちは、
せっかくやって来ても、何となくダラダラ見て帰ってしまうばかり。
「目的を持たせたい」と、図工担当教諭の団体と相談、
96年から希望校を対象に始めたのが事前授業。

学芸大からのインターン生約15人が順番に担当、
学芸員も、事前の打ち合わせから美術館での鑑賞教室の
当日まで毎回加わる。
準備の都合などの制約はあるが、年間で区内64校のうち、
約40校を訪れている。

事前授業を受けた東玉川小の児童が、美術館に。
走らない、騒がない、触らないなどのマナーについて、
学芸員の注意を受けた後、市民の美術館ボランティアに連れられ、
グループに分かれて館内を見学。
「人間」の前まで来ると、何人かが足を止め、
「あ、『人間』あったよ」、「色が違うね」、「昨日より大きく見えるよ」
と感想を漏らすが、別の作品に興味をひかれると、
どんどん移動していった。

一見、効果は明確ではないようだったが、高橋さんは、
事前授業をしていると、来館した時の子どもたちの感度が違う。
これをきっかけに何度も足を運んでくれれば」
事前授業とほぼ同時期に始まったボランティアが、
会話しながら行う引率も、分かりやすいと好評。

手間暇かかることもあり、ほかの美術館にはなかなか広がらない。
それだけに、貴重な試み。

収蔵品展「人のかたち、人の想い」は、7月で終了。
現在は、企画展「メキシコ20世紀絵画展」が30日まで開催中。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090805-OYT8T00290.htm

「七観音」まばゆく鈴木さん方で一般公開

(東海新報 8月19日)

大船渡市の商業・鈴木巖さん(79)宅で、
『観音様の日』となる18日、「稲子澤七観音」の一般公開。

「七観音」は、文化12(1815)年、東北を代表する大長者、
猪川村の稲子澤・鈴木家から、田茂山村の中亀屋敷が
分家する際に持たせられたもの。

「七観音」とは、状況に応じて姿を変えて救いに現れる
観音菩薩の種々相のうち、代表的な七種の観音菩薩。

中央に聖観音、周囲に千手、馬頭、十一面、不空羂索、
准胝、如意輪の六観音を安置。

仏像などに詳しい大矢邦宣盛岡大教授が、平成15年に調査し、
制作年代は概ね江戸中後期の作で、作者は京都の仏師、
稲子澤観音堂の諸像が整えられた時期と同じころ。

鈴木さんが、平成16年一関市大東町在住の
京仏師・石川昇明さんに依頼、約4カ月かけて修復。
翌年から一般公開が始まり、今年で5回目の開催。

市内外から多くの参拝者が訪れ、観音像の由来や受け継がれた
歴史に理解を深めながら、ゆっくりと手を合わせていた。

鈴木さんは、「参拝される方々は、信仰心の強い人たち。
その気持ちを大事にして安心の日々を送ってほしい」

2009年8月19日水曜日

環境対応車生産に弾み 関東自工岩手工場

(岩手日報 8月19日)

トヨタ自動車は、関東自動車工業岩手工場(金ケ崎町)で
生産しているコンパクト車「ベルタ」を一部改良し、
全国のトヨペット店、トヨタカローラ店を通じて発売を始めた。

一部改良で燃費が向上し、環境対応車普及促進税制(エコカー減税)
の減税幅は、50%から75%に拡大。
同工場は、17日からベルタの生産ラインを約半年ぶりに
「昼勤務」から「昼夜勤務」に戻し、生産回復に弾みがつきそう。

ベルタの2WD車のエンジンなどの制御を改良。
1リットル当たりの燃費は、1リットルエンジン搭載車で
従来比0・5キロ向上し22・5キロ、1・3リットルエンジン搭載車で
0・4キロ向上し20キロ。

4月から施行のエコカー減税で、自動車取得税と自動車重量税の
減税幅は、従来の50%減税から75%減税に。

トヨタの全58車種(商用車含む)のうち、75%減税対象は8車種、
100%減税対象はハイブリッド車(HV)のプリウスなど4車種。
同社は、「今後も順次、燃費を向上し、環境対応車普及促進税制
による減税対象車ならびに減税幅を拡大していく」

トヨタ車開発・製造の関東自動車工業の岩手工場は、
従業員約2200人。
大きく分けてオーリス、カローラルミオンなど4車種を生産。

http://www.iwate-np.co.jp/economy/e200908/e0908191.html

支える:バンクーバー冬季五輪、あと半年/1 「よく滑る」スキー板

(毎日 8月18日)

今年2月、チェコで開かれたノルディックスキー世界選手権。
複合団体で、日本は14年ぶりに金メダルを獲得。
「ジャンプで稼ぎ、逃げ切る」という往年のパターンとは異なり、
後半の距離で逆転する新しい勝ち方。
選手たちが一様に挙げた勝因が、「スキーがすごく滑った」。
スキー板の滑走面に塗るワックス選びが的中。

ワックスは滑りを良くし、操作性を高める効果がある。
選手の足でスキーを「滑らせる」距離は、アルペンやジャンプ以上に
ワックスの重要度が高い。
カギは、雪との相性を良くすること。
専門スタッフが雪の温度、質、気象条件などを分析し、
雪温が高ければ軟らかいもの、低ければ硬いものといった具合に
最適なワックスを選ぶ。
板は、試合中に替えられないため、この選択が勝敗を左右。

ほとんどの欧州のスキー場は、雪の水分量が少ない。
今回の世界選手権の会場は、日本のスキー場に近い、湿った雪質。

日本チームが使ったワックスの中には、
日本国内で開発された国産のものがあり、
当然“日本タイプ”の雪との相性はいい。
これも、日本勢の快走を後押しした。

大会後、日本チームが使ったワックスの一つを製造した
スキーワックス製造販売会社「ガリウム」(仙台市)に、
海外から照会が相次いだ。
欧州ブランドが幅を利かせる業界で、
日本製品が脚光を浴びたのは初めて。
同社の営業担当、佐藤純一さん(45)は、
「日本の開発力を見せられた」と胸を張る。

同社は94年に設立。
元日本代表コーチだった佐藤さんの人脈を生かし、
日本代表チームと密接に協力して、国内外の大会でデータを収集。
日本の会社で初めて、本格的に高性能ワックスの開発に
取り組んできた。

ワックスには、基本のパラフィン系のほか、
油や水をよりよくはじくフッ素系もある。
製品化には、何万種類もの原料を混ぜてテストを繰り返す。
この配合こそ、メーカーの腕の見せどころ。

バンクーバー五輪に向けたワックス作りは進んでいる。
佐藤さんは、「見えないところから、選手たちを支えていきたい」
と熱っぽく語る。
国産ワックスが、94年リレハンメル大会以来となる
五輪金メダル獲得の力となれるか。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/general/archive/news/2009/08/18/20090818ddm035050016000c.html

学びの情報基地(4)「楽屋裏」で驚き体験

(読売 8月4日)

博物館の「裏側」がのぞける体験イベントが人気。

「汚いところを掃除しているんだから、ウンチがくっついてるよ、
よく見てブラシでこすってね」
江戸川区自然動物園。
動物のふんやおしっこのにおいが漂う飼育棟で、
飼育係の指導を受けながら、区内の小学生十数人が
ヤギや羊、ウサギなどの小屋の掃除に。
今年19回目を迎えた、同園主催の「サマースクール」。

入場無料の同園は、年間約50万人も訪れる隠れた人気スポット、
区民対象のサマースクールも、応募倍率は3倍強。
内容は、掃除やエサやり、モルモットやウサギの抱っこ、
大きなヘビに触っての記念写真撮影、獣医師の仕事見学など
盛りだくさんで、2005年施行の外来生物法についての講義も。

飼育係の長坂拓也さん(44)は、
「学校では教えず、大人もあまり知らない、
動物園だから伝えられることをこの機会に」と意義を強調。
宇井智哉君(9)は、「ここにはよく来るけど、
知らない世界があるんだとわかった」

入沢昇園長(62)は、「飼育を体験することで、ペットなどを
大事にする気持ちが少しでも生まれてくれれば」

通常の展示ではわからない、裏側を見せるプログラムが増えてきた。
夏は、飼育体験やバックヤードツアー、夜の観察ツアーなど、
各地の動物園や水族館で数多く開かれている。

「あ~、キイロハギの色が昼間と変わってる」
横浜・八景島シーパラダイスのアクアリゾーツ。
「お泊まり親子学級」に参加した子どもが驚きの声。

水中に漂いながら眠るイルカ、立ったまま眠るペンギンなど、
夜ならではの生態を観察。
5万匹のイワシの群れが泳ぐ水槽「群れと輝きの魚たち」の前で就寝。
今年から、水槽の裏側からプールの底をのぞいたり、
エサの入った冷凍庫を見学したりするバックヤードツアーが加わった。

飼育係の小俣勇気さん(29)は、
「表から見えない水槽の裏側、飼育係の仕事ぶり、
昼と夜の生物の様子の違いを伝えたい」

25年にわたって水族館教育に取り組んできた
マリンワールド海の中道(福岡市)の高田浩二館長(55)は、
裏側を見る効用について、
「いかに生き物たちの命が守られているかを見ることにより、
命の大切さを学び、裏方として働く人たちの苦労を感じることができる」

マリンワールド海の中道は、「夜の水族館」を開催。
海遊館(大阪市)は、ジンベエザメへの餌やりを上から見学、
沖縄美ら海水族館(沖縄県本部町)は大水槽の水上観覧、
新江ノ島水族館(藤沢市)は「お泊まりナイトツアー」、
よこはま動物園ズーラシア(横浜市)は「ナイトズーラシア」を実施。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090804-OYT8T00288.htm

iPS効率、20%に改善 がん抑制遺伝子を"封印" 作製方法改良、山中教授ら

(2009年8月10日 共同通信社)

新型万能細胞「iPS細胞」の作製効率を、
従来の1%以下から最大で約20%に高めることに成功、
京都大の山中伸弥教授らが
10日付の英科学誌ネイチャー(電子版)に発表。

作製効率は、実用化に向けた課題。
山中教授は、「大幅な改善で意義は大きい。
ただがんになりやすく、今後は安全性を高める必要がある」

山中教授らは、がん増殖を抑えるp53という遺伝子に着目。
この遺伝子を、人工的になくしたマウスの皮膚細胞に、
iPS作製に必要な4遺伝子を"運び屋"となるウイルスを
使って入れると、iPS細胞になる効率が約20%に向上。

p53は、4遺伝子を入れる工程を不自然な刺激ととらえ、
細胞を自殺や増殖停止に導くため、
これまでは作製効率が悪かったと考えられる。

安全性向上を狙ってウイルスを使わなかったり、
導入する遺伝子を三つに減らしたりする方法でも、効率は向上。
ヒトの皮膚細胞でも、p53を人工的に働かなくすると、同様の結果。

iPS細胞とがん細胞は、無限に増殖できるなど共通点が多く、
関連が指摘。
今回、がんの増殖抑制という重要な機能を止めており、
このままでは患者の治療や新薬研究には使えない。
山中教授は、「一時的にp53を働かなくするなど工夫が必要」

これまで、完全に分化を終えたリンパ球などから
iPS細胞を作るのは難しかったが、
山中教授らは今回の手法でマウスのTリンパ球からの作製に成功。
将来、採血するだけでiPS細胞を作製できる可能性を示すもの。

▽p53

代表的ながん抑制遺伝子の一つ。
細胞のがん化には、複数のがん遺伝子と、
がん抑制遺伝子の変化が必要とされ、
がん細胞ではp53の変異や欠失などの異常が多く認められる。

さまざまな変化に対し、細胞を一定の状態に保ったり、
修復不可能な損傷を受けた場合は、細胞を自死に誘導。
その働きの重要性から、「ゲノム(全遺伝情報)の守護者
とも呼ばれ、各国で研究が進められている。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/8/10/105574/

監督たちに学ぶマネジメント(最終回) 実績より実力で選手起用

(日経 8月9日)

サッカー日本代表が、2010年ワールドカップ・南アフリカ大会の
アジア最終予選を突破。
順調にハードルを越えてきた岡田武史監督だが、
前任のイビチャ・オシム氏の病気休養による緊急登板。

オシム氏は、1990年ワールドカップ・イタリア大会で、
ユーゴスラビア代表をベスト8に導くなど、名将として知られる。
オシム氏は、日本代表の改革に向け、「走ること」、「考えること」、
「日本人の強みを生かすこと」を強調。

岡田監督は、その基盤を活用し、俊敏性や持久力といった
日本人の特性を生かした「走り勝つサッカー」という
勝ちパターンを築きつつある。
チームのビジョンとして、「ワールドカップでベスト4」を打ち出している。
予期せぬ形ではあったが、スムーズに継承が行われた。

岡田監督で着目すべき点は、選手の起用方法。
チームスポーツでは、選手の起用方法によって
勝敗が左右されることは珍しくない。
企業においても、人材活用はマネジメントの重要要素の一つ。

選手(人材)起用の原則は、実力主義。
これが当たり前のようでいて、なかなか難しい。
チームの柱として活躍してきた選手を外すような意思決定は、
名監督でもためらう場合が少なくない。

選手起用のポイントは、チームの勝ちパターンに従って、
各ポジションに求めるべき人材像を描き、
その時の実力を評価して選定すること。
それまでの実績は関係ない。
岡田監督が提唱する「走り勝つサッカー」という考え方に基づいて
登用された選手は、いずれも予選で大活躍。

チーム内競争の維持も、重要な要素。
企業でも、スポーツチームでも、メンバーを固定した瞬間から
退化が始まる。
岡田監督は、18歳の山田直選手を招集、
チーム内の競争が常に活発になるようにしている点も秀逸。

産業界で同様の例を探すと、ユニクロを運営している
ファーストリテイリングが思い浮かぶ。
同社の柳井正会長兼社長は、経験や実績にとらわれず、
能力があると認めた人材を店長に登用。
全店長の成績を毎月評価して競争を促すなど、
社内競争を活発にする仕組みも整えている。

2010年ワールドカップ・南アフリカ大会の出場を決めた
サッカー日本代表の課題は何か?
グローバル化に成功したと言われる日本の自動車メーカーの事例。

日本代表の現在の実力は、FIFAランキングで世界40位前後。
「ワールドカップでベスト4」から、かなり遠い位置。
日本のベスト4入りの可能性は、かなり低いと言わざるを得ない。

トヨタ自動車やホンダは、なぜグローバルプレーヤーの
仲間入りができたのか?
世界最大の自動車市場だった米国で、
名もないときから経験を積んできたことが大きい。
自動車メーカーにとって、最重要市場は以前から
日本ではなく米国だった。

ゼネラル・モーターズやフォード・モーターなど、
米国メーカーを模倣するのではなく、日本人らしい
細部へのこだわりや品質の高さを勝ちパターン。
供給者優先(プロダクトアウト)の考え方が強い米国勢に対し、
日本勢は消費者と徹底的に対話しながら、製品改良を重ねてきた。

膨大な投資や努力を続けられた背景には、
世界的なプレーヤーになるというビジョンがあった。

「明確かつ確固たるビジョン」、「差別性のある勝ちパターン」、
「最激戦市場でのPDCA(計画・実行・検証・修正)サイクルの継続」
がキーワード。

サッカーの日本代表は、グローバルプレーヤーになり得るか?
ワールドカップベスト4という明確かつ確固たるビジョンはある。
差別性のある勝ちパターンとして、
「俊敏性と持久力を生かした走り勝つサッカー」がある。
これから求められるのは、最激戦市場でのPDCAサイクルの継続。

日本代表の選手の大半が、Jリーグでプレー。
このような状況では、PDCAサイクルを回すのは難しい。
日本代表として、欧米でできるだけ多くの試合をこなし、
厳しい局面を数多く経験することが必要。
Jリーグの各チームが岡田監督のビジョンを共有し、
代表に選ばれた選手をチームから解き放つ勇気が求められる。
周到な準備で臨めば、日本代表の躍進は十分期待。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/bizskill/biz090806.html

2009年8月18日火曜日

寿命延伸へ期待高まる「カロリーリストリクション仮説」

(日経ヘルス 8月7日)

テクノアソシエーツが、日経ヘルスラボレポート
「アンチエイジング・機能性化粧品の市場・技術動向2009」
(監修:日経ヘルス,日経ヘルスプルミエ)の発行。

今後のアンチエイジング研究のトレンドとして、
(1)カロリーリストリクション(カロリー制限)、
(2)肥満対策、
(3)医農連携、
(4)腸からのアンチエイジング、
の4つの注目が高いことが明らか。
4回に分けて、各トレンドに対する専門家の見方を紹介。

順天堂大学大学院医学研究科加齢制御医学講座の
白澤卓二教授は、カロリーリストリクションによる
寿命延伸効果に期待。

「人間の寿命を延ばすような生活改善は、アルツハイマー病などの
加齢性疾患の発症年齢を遅くし、将来的にはその人生の中で、
発症を防げるのではないか。
アルツハイマー病の最大の予防法は、年をとらないことだという
逆転の発想にたどり着いた」と、白澤教授は指摘。

具体的なアプローチとして、炭水化物、たんぱく質、脂質といった
三大栄養素の機能を補う成分をバランスよく摂取する
「機能ユニット」という考えを提唱。

「糖類や炭水化物など、エネルギーだけを重視した食事にかたよると、
このバランスが崩れ、血管年齢や認知機能に大きく影響。
動物実験で、カロリー制限により加齢現象が抑制されるのは、
食品の機能バランスが改善されている可能性を示唆」

http://nh.nikkeibp.co.jp/article/nhpro/20090807/103671/

画面に向かう時間が小児の血圧を引き上げる

(2009年8月11日 WebMD)

テレビを観たり、コンピュータを使用したり、ビデオゲームをしたり、
「画面に向かう時間」が多すぎると、幼い小児の血圧が上昇する
可能性があることを示している。

肥満、体重超過の小児でなくても、これは本当であると、
『Archives of Pediatrics & Adolescent Medicine』8月号で報告。

研究者らは、3~8歳の小児に、座ったままの行動と血圧上昇が
関連することを見出した。

この知見は、小児のメディア視聴時間の増加が、
以前に考えられていたよりもはるかに小児の健康に悪い
可能性があることを示唆。

Joe Eisenmann博士は、ミシガン州立大学の運動学科の教授、
アイオワ州立大学David Martinez-Gomezのかつての同僚である。

「座ったままの行動が肥満と関連すること、
肥満が高血圧と関連することは、以前の研究でわかっていたが、
それらの行動を血圧上昇と直接関連づけたのは最初」

座ったままの活動を、どのくらい時間行っているかを調べるため、
動きを測定する加速度計を、小児に装着させた。
小児の親は、小児がビデオゲームをしたり、テレビを観たり、
絵を描いたり、座っていたり、ほとんど身体を動かす必要のない
活動をして過ごした平均時間を報告。

小児が座ったままの活動をした時間は、1日に平均5時間、
画面に向かっていた時間は平均1.5時間。
米国小児科学会では、小児が画面に向かう時間を、
1日に最大2時間までに制限するよう、親に勧告。

研究者らは、テレビを観たり、コンピュータを使用したり、
ビデオゲームをした時間が最も少なかった小児は、
画面に向かう時間が最も多かった小児よりも、
血圧レベルがはるかに低かった。
他の形の座ったままの活動は、血圧上昇と有意な関連がない。

Eisenmann博士は、「画面に向かう時間が多過ぎるとき、
発生する他の因子も、小児における座ったままの行動と
血圧上昇の発現との関連を検討する際に考慮すべき」

「テレビを観るとき、健康に悪いスナックをつまむことが多く、
睡眠に悪影響を及ぼすストレス反応につながる」

高血圧が、米国の小児において増加している。
画面に向かう時間を1日2時間以内に制限し、
毎日60分以上の身体活動によってバランスをとることを推奨。

http://www.m3.com/news/SPECIALTY/2009/8/11/105644/

メス不要の最先端がん治療が始まる

(日経 2009-08-07)

メスでは切れない体深部のがんを治す
「重粒子線がん治療装置」の普及型第1号機が、
群馬大学医学部に完成、機能検証試験が始まった。

来年3月末までに初の治療が始まる。
重粒子線がん治療装置は、炭素などのイオンビームを
体の外から患部に当て、健康な細胞をほとんど傷つけることなく、
がん細胞のDNAを破壊する最先端のがん治療法。
全国への普及が期待されるが、克服しなければならない
技術的な課題も多い。

基礎研究と治療を同時に進める世界初の
重粒子線がん治療装置は、15年前に千葉県の
放射線医学総合研究所に完成、既に約5000人が治療を受けた。
群馬大の装置は、その実績を踏まえて作ったがん治療専用機。

群馬大に続けと、既に4つの県が同型機の設置を検討。
今後、全国の10カ所ほどに設置。
10~15年後の完成を目標に、主要都市での設置を目指す
小型の次世代型を開発する研究会も発足。
装置の心臓部である重粒子線加速器をより小型化するため、
高温超電導技術が必要。

重粒子線がん治療装置は、加速器で高速にした炭素などの
細いイオンビームを体の外から患部に当てる。
あらかじめ患部の立体的な位置情報を測定、
その深さにあったエネルギーに設定、ビームは健康な細胞を
ほとんど傷つけずに通過して患部で止まり、がん細胞のDNAを破壊。
がんの増殖は止まり、破壊した細胞は新陳代謝で消える。

「装置の普及に併せ、操作する人材の育成を急ぐ必要がある」、
医用原子力技術研究振興財団の平尾泰男常務理事。
平尾常務理事は、東京大学教授だった1979年に
重粒子線でがんを治療する方法を考案。
放医研に移り、94年に第1号機を完成。
それ以来、ずっと装置普及のための活動を進めてきた。

放医研の装置は、世界に前例の無い第1号機で、
基礎的な研究が必要、様々な機器を組み込んだ。
その結果、全体で長さ140メートル、幅60メートルと広い面積を占有。

群馬大の普及型は、放医研の使用実績から
がん治療専用に機能を絞り込み、長さ65メートル、幅45メートルと
設置面積を3分の1にできた。
電気使用料は、放医研が年間約10億円かかるのに対し、
治療専用にして1けた近く下がると見積もっている。

平尾常務理事が、「15年はかかるだろう」とみつつ
実現に期待するのが次世代型。
放医研と群馬大の装置は、心臓部に銅ケーブルの常電導磁石で
構成する加速器「シンクロトロン」を用いる。
次世代型は、液体窒素で冷やすと電気抵抗がゼロになり、
直径3.2メートルの空間に6テラスの高い磁力を作り出せる
高温超電導磁石を使う。
この磁石で構成する加速器「サイクロトロン」で、
シンクロトロンを置き換える。
その結果、設置面積は20メートル四方まで小さくできる。

液体窒素で使う高温超電導材料は、87年に発見、
現在ようやく送電ケーブルなど、実用化が近づいてきた段階。
これから磁石を作り、加速器を組み立て、
イオンビームを正確にとりだして治療に使うまでには技術的課題が多い。
平尾常務理事が15年かかるとみるのはそのため。

◆イオンビームの流れ(放射線医学総合研究所提供)

次世代型の開発に取りかかるのは、
超電導技術の専門家である早稲田大学の石山敦士教授と
中部電力などの研究チーム。
早大と中電は、経済産業省の予算で
高温超電導電力貯蔵装置(SMES)の開発を進めている。
この技術を使えば、イオンビーム用のサイクロトロンを作れる。

今年5月、早大と中電は、放医研、理化学研究所、
日本原子力研究開発機構と組んで、
「次世代重粒子超伝導加速器開発研究会」を旗揚げ、
既に開発計画はスタート。
「15年と言わず、10年後の完成を目指す」(石山教授)

放医研の装置は、15年かけて約5000人の患者で
大きな治療実績を得た。
年間約700人しか治療を受けられず、多くを断っている。
医用原子力財団の平尾常務理事は、普及型は全国に10台、
次世代型は800台設置。
単純計算では、800台有れば年間56万人と、
多くのがん患者が治療を受けられるようになる。

「重粒子線がん治療装置は万能ではない」(平尾常務理事)。
場所はわかっているが、メスでは切れないがんに向く。
場所を特定しにくい転移したがんの治療は難しい。
重粒子線で治療する放射線科と、外科や内科などとの連携は
ますます重要性を増す。
それを議論する前に、次世代型実現のカギを握る
高温超電導技術の開発を急ぐ必要。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/techno/tec090805.html

2009年8月17日月曜日

杜仲葉配糖体を配合したサプリに皮下脂肪減少効果

(日経ヘルス 8月11日)

小林製薬は、杜仲茶に含まれる杜仲葉配糖体を配合した
食品の摂取により、内臓脂肪だけでなく、
皮下脂肪も減少させる効果があることを、
成人男性を対象にした臨床試験で確認。
日本杜仲研究会第4回定期大会で発表。

試験は、内臓脂肪型肥満の成人男性27人を2群に分けて実施。
CTスキャンで測定、内臓脂肪断面積が100cm2以上を対象。
試験の実施期間は2カ月。

片方の群には、杜仲葉配糖体を配合したサプリメントを
毎日とってもらい、もう片方の群には杜仲葉配糖体を含まない
偽サプリをとってもらった。
摂取期間前後で、体脂肪率、CTで皮下脂肪断面積と
内臓脂肪断面積の推移を調べ、それぞれ比較。

その結果、杜仲葉群では、体脂肪率、内臓脂肪断面積が
摂取前に比べ、有意に減少。
皮下脂肪断面積は、偽サプリ群では摂取前に比べ、15.5cm2増、
杜仲葉群は25.7cm2と有意に減少。
同社は、試験に用いた杜仲葉配糖体の量を非公表。

同社では、ラットを対象にした実験で、杜仲葉配糖体の主要成分
「アスペルロシド」による内臓脂肪減少効果を確認。
皮下脂肪の減少も、「アスペルロシド」による効果ではないかと考え、
詳しいメカニズムについては現在研究中。

今後も、杜仲葉による生活習慣やメタボリックシンドロームの
改善効果の解明を図っていく。

http://nh.nikkeibp.co.jp/article/nhpro/20090811/103689/

遺伝子解析で水稲開発 本県2研究センター

(岩手日報 8月12日)

岩手生物工学研究センター(北上市)と県農業研究センター(同)は、
遺伝子解析を活用した新たな育種方法「DNAマーカー育種」により、
低温でも発芽しやすいじかまき用の水稲を開発。
同育種方法の活用は県内初で、全国でも珍しい。
従来の手法より、新品種の開発期間が大幅に短縮され、
さまざまな水稲開発への応用が期待。

岩手生物工学研究センターと県農業研究センター、文部科学省の
補助金で設置した研究教育拠点、「岩手大21世紀COE」が連携。

DNAマーカーは、品種などの性質を決める
DNAの塩基配列に目印を付け、判別しやすくしたもの。

じかまき水稲は、コスト軽減や効率化が注目され、
4月下旬から5月上旬の低温期に種まきするため、
発芽や苗立ち率のばらつきが課題。

今回、このDNAマーカーを活用し、県オリジナルの水稲品種
「いわてっこ」に、低温発芽性を持つ外国品種を掛け合わせた。

外国品種は、低温発芽性を持つが、食味は劣る。
この低温発芽性に関連する遺伝子以外は、食味の良い
「いわてっこ」とほぼ同じDNAを持つように交配。

従来の育種方法では、二つの品種を掛け合わせ、
生育後に検定を行っていた。
検定は年1回程度しかできず、特定の性質を取り込むまでには、
数回の交配と検定が必要、
新品種の開発まで4~5年はかかっていた。

DNAマーカー育種方法では、最初に外国品種の中で
低温発芽性の遺伝子を持つDNA領域を特定。
このDNA領域を識別しやすくするため、
目印であるDNAマーカーを利用、交配。

同方法は、苗の時期に特定の性質を持つか否かを、
DNAマーカーを使って選抜するため、
新品種の開発までの期間が2年ほどに縮まった。

低温発芽性を取り込んだ新品種は、「いわてっこ」に比べ、
種まきから31日後の苗立ち率がほぼ倍増。
草丈は3センチほど伸びた。
今後は実用化に向け、栽培特性などの研究を進める。

岩手生物工学研究センターの寺内良平生命科学研究部長は、
「DNAマーカー育種を実用化した先駆け的な研究成果。
耐病性や食味などの基本的性質の向上や特産地化につながる
水稲の開発にも応用できる」と可能性を探る。

◆DNAマーカー

品種間や個体間のDNA塩基配列の違いを目印にして
利用できるようにしたもの。
低温発芽や耐病性など、有用な遺伝子の位置を示す
DNAマーカーがあれば、DNA分析により、
圃場栽培しなくても実験室で早期に特性を把握。

http://www.iwate-np.co.jp/economy/e200908/e0908121.html

お盆休みだから、じっくりビジネス書

(日経 8月4日)

まもなく盆休み。
ビジネスパーソンにとって、新刊本をまとめ読みするチャンス。
ビジネス書の売り場には、会計の入門書や自己啓発本といった
定番商品に加え、金融危機の原因を分析したり、
危機後の世界経済を展望したりする書籍が並んでいる。

◆売れ筋 財務関連▽国際会計基準に備え
       ノウハウ▽脳科学で効率上げ

売れ筋のビジネス書は、大きく2つの系統。
1つは、企業財務などの知識を分かりやすく紹介した入門書。
もう1つは、仕事や勉強の効率を高めるための時間管理や
情報整理の技術を紹介したノウハウ(ビジネススキル)本。

第1の系統で目を引くのは、国際会計基準(IFRS)の関連書籍。
「なるほど図解IFRSのしくみ」(中央経済社)、
「国際会計基準IFRS完全ガイド」(日経BP社)。

会計とはなじみが薄かった人を意識し、イラストや図表を多用。
IFRSは、2010年から上場企業の連結決算への任意適用が始まる。
「企業の経理・財務担当者だけでなく、一般のビジネスパーソンの
間でも関心が高まっている」(八重洲ブックセンター)

企業会計全般を扱った本では、
「財務3表一体理解法」(朝日新聞出版)、
「財務3表一体分析法」(同)に人気。

財務諸表の構造を体系的に紹介するのではなく、
貸借対照表や損益計算書などが、どの項目で相互に
関係しているのかを分析することに的を絞っている。
この手法を用いて、個別企業の決算を分析した事例を多数掲載。
実戦的な財務分析の技術を得られる。

第2の系統であるノウハウ本では、
「整理HACKS!」(東洋経済新報社)が好評。
同書は、デジタルデータの整理方法について、
多くの紙幅を割いている点が特徴。
「SugarSync」、「Twitter」など、最新のITサービスを活用した
業務効率の改善法を紹介。

「超『時間脳』で人生を10倍にする」(宝島社)は、
脳機能学者、苫米地英人氏の効率的な時間管理の方法論。
「一瞬で相手をオトす洗脳術」(マキノ出版)、
「脳にいい勉強法」(アスコム)にも、
苫米地氏の脳科学の知見を対人コミュニケーションや勉強などに
応用するノウハウが載っている。

◆お勧め 金融危機▽もろい現代を知る
       社会起業▽新しい価値観発見

時間に余裕のあるときに、専門書をじっくりと読みたいという人も。
この夏は、金融危機について知見を深められるような本が
書店に並んでいる。「かなり高度な内容も含まれているが、
幅広い年齢層の読者が手に取っている」(日本出版販売)

その象徴が、「ブラック・スワン」(ダイヤモンド社)。
正規分布など、統計学の常識の上に積み上げられた
現代の金融理論の体系のもろさを指摘、
「黒い白鳥」など巧みな比喩を用いて不確実性のリスクに言及。

金融危機関連では、
「資本主義はなぜ自壊したのか」(集英社インターナショナル)、
「資本主義崩壊の首謀者たち」(集英社)、
「完全にヤバイ!韓国経済」(彩図社)など、
刺激的なタイトルの本が書棚の広い面積を占めている。

このほかの分野では、社会が抱える問題を、
ビジネスを通じて解決しようとする「社会起業」に関する本。

「『20円』で世界をつなぐ仕事」(日本能率協会マネジメントセンター)
は、途上国で学校給食の普及に取り組んでいる
非営利組織(NPO)法人の活動を紹介。

このNPOは、企業に社員食堂でメニューの一部を
低カロリーの食事にするように促し、浮いたコストを企業から集め、
途上国での給食費に充てている。

「世界を変える人たち」(ダイヤモンド社)は、
公共性と経済性を両立させた海外の様々なビジネスモデルを紹介。

紀伊国屋書店大手町ビル店では、社会起業を扱った書籍の
専門売り場を設けた。
萩原正之店長は、「金融危機後の世界で、新しい価値観を求める
読者の関心に応えるため」と狙い。

経営者本では、スズキの鈴木修会長兼社長が著した
「俺は、中小企業のおやじ」(日本経済新聞出版社)と、
パナソニック創業者の故松下幸之助氏のリーダー論を紹介した
「リーダーになる人に知っておいてほしいこと」(PHP研究所)が人気。
堅実経営で知られる大手製造業トップの言葉に、
関心が集まるところに時代性が表れている。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/bizskill/biz090804.html

2009年8月16日日曜日

細胞分裂の遺伝子、神経伸ばす役割…広常・大阪市立大教授ら

(2009年8月12日 読売新聞)

細胞の分裂を促す遺伝子が、
神経細胞の軸索が伸びる際、重要な役割を果たしていることを、
大阪市立大医学研究科の広常真治教授らが突き止め、
10日の科学誌ネイチャー・セル・バイオロジー電子版に発表。

広常教授は、「この遺伝子はがん細胞も増やし、
抗がん剤の標的の一つだが、神経細胞もダメージを受ける。
副作用防止のヒントになるだろう」

広常教授らは、「オーロラA」という遺伝子が、
マウスの神経細胞の軸索の付け根で活発に働き、
伸ばす役目を担っていることを確かめた。

軸索は、他の神経細胞に信号を伝えるルートで、
脳のネットワークへの影響は大きい。
神経細胞は、胎児の時を除いて原則として増えないため、
細胞分裂の遺伝子は働かないと考えられてきた。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/8/12/105678/

監督たちに学ぶマネジメント(3) データ分析し勝利の方程式

(日経 8月2日)

掲げたビジョンと戦略を確実に実行させ、
チームを新たな方向に導くには、
「プラン→ドゥー→チェック→アクション(PDCA)」のサイクルを、
地道に回していくことが必要。
大声でしかったり、励ましたりするだけでは、マネジャー失格。

米大リーグのオークランド・アスレチックスは、
1998年シーズンからGMを務めるビリー・ビーン氏が中心となり、
徹底したデータ分析を基に、独自の勝利の方程式を確立。

過去の経験や常識を否定し、データ分析を重んじながら、
選手の発掘、チームの編成、試合での戦術などを再構築。
新たに立てた戦略を、PDCAサイクルで検証し、進化させていった。

新人選手を選択するドラフト会議では、
多くの球団が狙う有名スター選手を避け、
無名でも自分たちが重視している指標(能力)が高い選手を指名。
無名選手の中には、大リーガーとして成功する例も少なくなく、
アスレチックスは2000年代に、5回もプレーオフに進んでいる。

選手の契約金や年俸を安く抑えられるので、
スター軍団のニューヨーク・ヤンキースと比べると、
人件費は3分の1程度で済む。

作戦でも、データ分析を積極的に活用する。
どんな打者でも、カウントが「2—1」よりも「1—2」の方が
ヒットが出る確率が高い。
ボール球を見極めて、「1—2」というカウントにするかが重要。
アスレチックスでは、各打者がどれだけボール球に
手を出しているのかをすべて記録、選手たちにフィードバック。
ボール球は、必ず見送るように徹底して叩きこまれる。

PDCAサイクルは、概念としては古くからあり、
新鮮味は乏しいが、確実に遂行している会社は意外に少ない。
数少ない例が、セブン—イレブン・ジャパン

同社は、POS(販売時点情報管理)システムによる
売れ筋管理で有名だが、これは提案した商品・サービスが
消費者に受け入れられたかどうかを判断する道具。
大切なのは、消費者のニーズを先読みして商品・サービスを提案し、
PDCAサイクルを迅速に回すこと。

チーム力の向上を考えた場合、力のある監督一人に
頼ってばかりでは、最終的にその器を超えることはできない。
チームが軌道に乗ってきたところ、一段のレベルアップを目指すには、
「モチベーションアップ」がキーワード。
コーチや選手一人ひとりが責任感を持ち、自発的に動くことで、
組織は最大限の力を発揮できる。

昨年のプロ野球日本一となった西武ライオンズの原動力は、
徹底したモチベーションアップ。
単にほめるだけではない。
渡辺久信監督は、多面的に取り組んだ。

「徹底的に選手に話しかけること」。
監督は、選手にとって雲の上の存在と見られがちだが、
渡辺監督は選手に積極的に話しかけた。
選手との心理的な距離感が一気に縮まり、
チームとしての一体感が高まった。

続いて、「目線を下げて丁寧に教える」ことを心がけた。
球界で伝統となっている「不親切な言い放し」の指導を、
渡辺監督は極端に嫌った。
選手が分かるまで手を替え品を替え、コーチングの質を高めた。

「コーチに、目標と責任を与えてじっくり見守る」ようにもした。
権限委譲であり、任されたコーチは責任感を持って、
自発的に動くようになる。
レベルの高い「大人のチーム」に変貌していった。

最後は、「結果論でものを言わない」。
結果だけを求めると、選手は萎縮するばかり。
渡辺監督は、「結果は気にせず、やるべきことに集中して
ベストを尽くせ」という姿勢を貫いた。
フルスイングしていれば、結果が三振であろうと意に介さなかった。
選手が伸び伸びとプレーして、好成績をあげた背景には、
渡辺監督のこうした方針があった。

産業界では、日本マクドナルドの例が特筆に値する。
接客を担当する従業員(クルー)に向けて、
多面的なモチベーションアップ施策を施している。
マクドナルドと言えば、マニュアル主義のイメージが強いが、
実は現場での創意工夫がきめ細かく、品質の高いサービスを
成り立たせている。
現場の改善活動、権限委譲はもちろん、
サービススキルの全国コンテストといった様々な工夫。
中心となっているのが、全国で16万人を超える
モチベーションの高いクルーたち。

◆アリックスパートナーズ ディレクター 古谷公

1986年早大理工卒。
ブリヂストンと外資系コンサルティング会社を経て、
2008年企業再生専門のコンサルティング会社である
アリックスパートナーズに入社してディレクターに。
自動車メーカーや消費財メーカーの営業・マーケティング力強化で
実績をあげている。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/bizskill/biz090730.html

日本発、海洋環境保全の国際ルール

(日経 2009-08-10)

日本の環境保全の取り組みといえば、たいてい受け身。
欧州連合(EU)などが新しい基準を定めた環境規制を打ち出し、
海外発のルールや地球環境保護の世界的な流れに、
日本は従ってきたというのが一般的。
温暖化ガスの排出削減も、化学物資の使用抑制など。

海外主導の流れに、一矢報いようとしている動き。
舞台は、原油タンカー。
原油タンクの底板の腐食防止策をめぐる話。
国際機関が、これ1本でいこうとしたルールに、
日本側が“待った”をかけ、日本側の提案内容と併せ、
国際ルールが2本立てになる方向に。

原油タンカーのタンクは放っておくと、
「孔食」という穴(ピット)のあく腐食が起きる。
原油に強酸性の成分が含まれているため。
航行を安定させるためのバラスト水を排出する際、
原油が一緒に海に流出する恐れ。

1997年、石油メジャーから、この腐食を指摘する声。
99年、腐食した個所のメンテナンス不良によって、
船が実際に強度不足で損傷する事故が起こった。
EU域内で、孔食が問題視。

国連の専門機関、国際海事機関(IMO)が、腐食防止のための
ルール作りに乗り出した。
出てきた対策は、メンテナンス時に塗装し直し、腐食が広がるのを
未然に防ごうというもの。
「塗装強化」が国際的な合意として、ルール化される流れ。

技術力で、まったく新しい対策を打ち出したのが、
日本郵船と新日本製鉄。

提案したのは、腐食に強い「耐食性鋼板」を使う、というもの。
最大の特色は、塗装がまったく不要である点。
タンカーを補修際、塗装がいらないだけでなく、
最初にタンカーを建造する段階でも塗装をする必要がない。
世界の流れになりつつあった「塗装強化」の逆をいく。

新日鉄が、複数のレアメタル(希少金属)を組み合わせるなどして、
耐酸性が強く、腐食のスピードが非常に遅い鋼板を開発。
船舶の構造材として使えるよう、高張力鋼板と同等の強度を備える。

日本郵船は、新しい耐食性鋼板「NSGP—1」を原油タンカーに採用。
「TAKAMINE」という名前の原油タンカーで、
新鋼板を試験的に採用、本採用船として、すでに1隻を建造、
4隻のタンカーを建造中。

「塗装が不要」は、環境保全の面からすると、さまざまな利点。
塗装は、塗料と溶剤を混ぜて吹きつけるので、
塗った後に有機溶剤が大気中に出て環境に影響を与える。
塗料を生産する工程で、CO2が排出される、などの点も考えると、
「塗料不要」の環境保全効果は少なくない。

タンカーは、巨大なだけに塗装をし直すとなると作業が膨大になり、
何度も定期的に繰り返せば、コストは高くつく。
新鋼板の採用により、建造コストは従来のタンカーより上がるが、
日本郵船は、「塗装不要」の方が費用対効果が良い、との判断。

新鋼板を試験採用したタンカー「TAKAMINE」は、
実際にどの程度「孔食」が進むか調査を進めている。
新鋼板の性能は上々。
従来は、4ミリのピットが数百から数千生じる場合があったが、
今年4月の2回目のドック入りのときに調べたところ、
数は10個所程度にぐんとヘリ、問題ないレベルに十分収まった。

IMOは、5月に開いた海上安全委員会で、
新開発の耐食性鋼板の採用を腐食防止策として承認。
塗装をし直さなくとも、耐食性鋼板を使えば、
国際的に認められることが内定。

来年2月、開催予定の設計設備委員会で耐食性鋼板の定義や
性能面の基準を詰め、2011年に腐食防止策が2本立てでルール化。

船舶関係の環境保全規制づくりでは、IMOがリーダーシップを発揮。
バラスト水の排出規制として、2004年に「バラスト水管理条約」を採択、
先日、国際海運の温暖化ガス削減対策の大枠も決めた。

日本としても、国際ルールに沿い、地球環境保全へ
積極的な取り組みが求められるが、
原油タンカーの腐食防止策の例でわかるように、
海外諸国が気づかなかったり、技術力がそこまで及ばなかったりする
アイデアを、日本企業が生みだせることがある。

地球環境保全へ貢献する責任を考えれば、
海外発のルールに漫然と従う「受け身」の姿勢は、
そろそろ改めた方がいい。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/tanso/tan090804.html