2010年7月31日土曜日

W杯の舞台でもう1つの熱き戦い

(CNN 6月29日)

南アフリカワールドカップ(W杯)は、世界最高の選手たちが
プレーでしのぎを削る舞台となっているだけではない。

スポーツ用品メーカーにとっても、消費者の関心をいかに
自らの商品に引き付け、収益を増やすかという戦いの場。

今大会は特に、ドイツのアディダスと米国のナイキによる
競り合いが目立つ。

両社とも、世界規模で数十億人とされる今大会の観戦者の
関心や興味と、推定で約110億米ドルともされる
サッカー関連市場での主導権を奪うことをねらっている。

アディダスは過去40年間、サッカーの本場である欧州で、
主要スポンサーとしての地位をほぼ不動にしてきた。

ナイキは、常にスポーツ界の有名選手のスポンサーとなり、
製品のPR役にする宣伝戦略をとってきた。

W杯の場だけは異なる。
アディダスが、既に公式スポンサーとなっていたからだ。
ナイキは、サッカー界で存在感を示すために、
どのような戦術を取ったのだろうか?

あるスポーツ産業アナリストは、ゲリラ戦や不意打ちの要素を
にじませた宣伝手法と表現。
ナイキによるサッカー市場への食い込みが、驚くべき速度で
成功したことで、この戦術の効果は立証されたとも指摘。

ゲリラ戦法は、1984年の米ロサンゼルス夏季五輪で
初めて取り入れられた。
社の名前を売り出すため、あらゆる種類のビルに
自社の垂れ幕広告を飾った。
同社は依然、この手法への自信を失っていない。

ナイキのハンナ・ジョーンズ副社長は、
米オレゴン州にある本社で最近取材に応じ、
「我が社は、アスリートとチームを愛し、大会の開催を祝っている。
サッカーが、若者たちを魅了していることも喜んでいる」

しかし、アディダス側の主張も似たようなものであり、
ナイキの食い込みに、ただ手をこまねいている考えはない。
南アフリカ大会の開幕前、同社のハーバート・ヘイナー
最高経営責任者(CEO)は、サッカービジネスに絡んで、
新たな売上目標数値を設けたことを明らかにし、実現への自信を示した。

アディダスは、08年達成した13億ユーロを上回る売上高を目指す。

米国でのサッカーの認知度は、このスポーツをフットボールと呼ぶ
欧州ほど広がりがない。
これが、ナイキの克服すべき課題。

同社は今大会で米国、イングランド、ポルトガル、オランダを含む
計9チームのスポンサーとなった。
同社としてはW杯で過去最多。

これら9チームの選手は、アジアで回収されたプラスチック製の
ボトルを再生して作ったユニホームを着用。
環境保護への関心が高まるサッカーファンを意識した商品戦略の1つ。

このユニホームなどの開発、宣伝に当たったナイキの幹部は、
「サッカーは、世界で最高のスポーツだと思う。
我が社は、最高の選手たちに、環境に優しいユニホームを提供。
これは創造的な発想だし、究極的にはあらゆるものの
リユース、リサイクルを目指すナイキにとっても、
持続可能な事業展開は上位の目標に位置づけられる」

W杯南アフリカ大会では、ピッチの中と試合と同様、
場外でも、目を離せない戦いが繰り広げられている。

http://www.cnn.co.jp/business/AIC201006290012.html

最先端研究開発プログラムに96億円余てこ入れ

(サイエンスポータル 2010年7月20日)

総合科学技術会議は、最先端研究開発支援プログラムに
採択された研究開発を加速、強化するため、
26人の中心研究者に、合計96億8,600万円を追加配分。

中心研究者は合計30人、残りの4人については、
追加配分しなくても、当初目的が達成できる。

追加配分額が最も大きいのは、分子追跡放射線治療装置の開発を
行っている北海道大学の白土博樹教授と、
原子分解能・ホログラフィー電子顕微鏡の開発を進めている
日立製作所の外村彰フェロー、それぞれ11億9,500万円。

iPS細胞による再生医療研究の山中伸弥京都大学教授
11億8,100万円、次世代質量分析システムの開発を行っている
島津製作所の田中耕一所長に6億5,500億円。

昨年度スタートした最先端研究開発支援プログラムは30課題に対し、
山中、外村両氏に最も高額の50億円など、
合計1,000億円の研究開発費が配分。

今年度予算でプログラムを加速、強化するため、
100億円を追加支給することが決まり、3億円は、研究開発成果を
知らせるシンポジウムの開催費用にあてられる。

http://scienceportal.jp/news/daily/1007/1007201.html

いじめ対策(4)子ども同士「声かけ活動」

(読売 7月22日)

口数が少ない中学生のA君は、2か月に1回、
年齢の違う子と交流するため、近くの小学校を訪れる。
最初は緊張し、小学生に話しかけるきっかけさえつかめなかったが、
何回か訪れるうちに話せるようになり、表情も明るくなってきた――。

静岡県藤枝市で、市立小・中学校の教員約30人を対象に開かれた
ピア・サポートの研修会。
講師の臨床心理士、藁科正弘(72)さんは、映像を使い、
広島市で、実際に子どもたちのコミュニケーション力が上がった
冒頭の「声かけ活動」の事例などを紹介。

「子ども同士で声をかけあい、助け合いをすることで、
他人への思いやりや『自分もできる』という自信が生まれる」と藁科さん。
「教師主導ではなく、生徒が自主的に動くことが大切」と強調。

藤枝市内では昨年8月、ビル屋上から同市立中学2年の
女子生徒2人が転落死する事件が起きている。
市教委は9月、市内の全小中学生を対象に、
「学校生活アンケート」を実施、小学生の約13%、中学生の約3%が
「いじめを受けている」と回答するなど、憂慮すべき実態が分かった。

市教委は同11月、学校が実施した聞き取り調査などを基に、
「いじめや友人関係で悩んでいたが、死亡との因果関係は不明」と
発表、事件調査に一応の区切りを付けた。
背景に、いじめや友人関係の悩みがあったこと、
子どもたち全体にいじめが広がっている事態を重視し、
いじめ対策に乗り出した。

今年1月、市民や教員の代表らで構成する
「子どもが安心して学べる学校づくり推進協議会」を設置。
いじめの発見チェックリストや初期対応の仕方などを
盛り込んだ指針を作り、市内の全小中学校に配布。
思いやりあふれる学校作りを目指し、
ピア・サポート活動を積極的に導入することにした。

広島大学の栗原慎二教授(50)によると、
ピア・サポートは、大阪市、岡山県総社市など各地で導入が進み、
07年に取り入れた広島市内の小中学校10校では、
子どもたちの「いじめられている意識」が全校で減った。

中村禎・藤枝市教委学校教育課長(56)は、
「ピア・サポートは、仲間を大切にする気持ちと共に、
自分も誰かの役に立つ、という思いを持つことができる。
効果に期待したい」

◆ピア・サポート

悩み相談に乗るなど、仲間同士で支え合う活動のこと。
「ピア」とは仲間の意味。
1970年代にカナダで始まったと言われ、
子どものコミュニケーションや思いやりを育む効果。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100722-OYT8T00227.htm

フロンティア:世界を変える研究者/7 愛媛大・遠藤弥重太さん

(毎日 7月21日)

「私たちが泣いたり笑ったり、恋をしたりするのも、
すべてたんぱく質の仕業」
遠藤さんは、講義で学生にそう説明する。

生物の体を構成するたんぱく質。
たんぱく質を作っているのは、細胞内の小器官リボソームだ。
日米欧の国際チームによるヒトゲノム(全遺伝情報)解読に、
世界の耳目が集まっていた90年代後半。

進ちょく状況を耳にするたび、「解読しても、スペル(つづり)が分かるだけ。
その意味を理解するためには、遺伝子からたんぱく質を
人工的に合成する装置がいる」と自らを鼓舞。

遠藤さんによる世界初の「無細胞たんぱく質合成装置」は、
03年完成。
同年のヒトゲノム解読完了後間もなくだった。
一晩で384種類ものたんぱく質を、細胞なしで合成できるこの装置は、
ポストゲノムの中核であるたんぱく質研究を大きく進めた。

「研究者になりたい」と、地元の大学の栄養学科に進み、
たんぱく質合成というテーマに出合った。
「たんぱく質合成の仕組みは複雑で、試験管内で再現することは不可能」
が当時の常識。

「やるなら難題に挑戦しよう」と考えた。
大腸菌などの生きた細胞に遺伝子を導入し、
たんぱく質を作らせる方法(組み換え法)が開発、
限られた種類のたんぱく質しか合成できず、その量も少なかった。

細胞をすりつぶした液に遺伝子を入れる方法(無細胞法)は、
合成を担うリボソームが壊れて、反応が1時間ほどで止まってしまう。
「どうすれば反応が続くのか」

研究するうち、すべての生物はリボソームを破壊する
「自殺酵素」を持っていることを突き止めた。

反応が続かないのは、酵素が自らのリボソームを破壊してしまうから。
この酵素を除けば、持続するはずだ。

愛媛大に移った92年、小麦を材料に実験を始めた。
小麦の自殺酵素は、全体の99%を占める胚乳だけに存在。
1%の胚芽を分ければうまくいくと考えたが、薬品ではうまくいかない。

試行錯誤の末、胚芽についた小麦粉(胚乳)を
水で洗い流す方法にたどり着いた。

98年、取り出した胚芽の抽出液で、
反応を2週間持続させることに成功。
「『遠藤は思いつきで偶然うまくいった』という人もいるが、
誰もやらない研究を20年以上続けてきた。
無細胞法しか成功する方法はない、と確信していた」

実験は副産物も生んだ。
胚乳を使った焼酎。
前学長が名付けた銘柄は、「自由人」。
独自の発想で道を開いてきた遠藤さんらしい味がする。
==============
◇えんどう・やえた

46年徳島県生まれ。75年徳島大大学院博士課程修了。
山梨医大助教授などを経て、92年愛媛大工学部教授。
03年より現職。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2010/07/20/20100720ddm016040119000c.html

2010年7月30日金曜日

ニワトリが先かタマゴか、やはり難問 英の研究で論争

(朝日 2010年7月20日)  

人類が長年悩み続けた謎、「鶏が先か、卵が先か」がついに解決?

英国の大学が最近発表した研究で、卵の殻ができるには
雌鶏が作るたんぱく質が不可欠であることがわかって、
「鶏が先」といったんは「決着」したかにみえた。

だが、「まだ完全な回答ではない」として、
本格的な「解明」はまだ先の話になりそう。
この研究は、英シェフィールド大とウォリック大が9日に発表。

研究チームは、雌鶏が殻を一晩で作ってしまう秘密を探るため、
雌鶏の卵巣にあるOC―17と呼ばれるたんぱく質の働きを
コンピューターで調べた。

その結果、このたんぱく質に殻を硬くする炭酸カルシウムの結晶を
急速に成長させる働きがあることを突きとめた。

研究チームのシェフィールド大の研究者が、
「鶏が先という科学的証拠が得られた」と勇み足気味のコメントを
出すなどしたため、「難問がついに解決」と騒ぎに。

同じチームのウォリック大の研究者は15日、
「謎そのものが無意味。今回の成果は、人工骨の開発などに
役立つだろうが」とのコメントを追加で発表、沈静化に走っている。

シェフィールド大の広報担当者は、「今回の研究の範囲では、
『鶏が先』だが、完全な回答にはならない。
解明は、哲学者や進化生物学者に任せたほうがいい

http://www.asahi.com/science/update/0720/TKY201007200106.html

いじめ対策(3)悲劇の背景 徹底検証

(読売 7月21日)

いじめは原因だったのか?
長野県のある高校は、自殺した生徒の置かれていた状況を
1年間徹底的に調査した。

08年3月、長野県立高校の校内で、
2年男子生徒のT君(当時17歳)が自殺した。

「1年の時、携帯電話の学校裏サイトに書き込みがあり、
悩んでいたようだ。いじめがあったのではないか」との
遺族の訴えを受け、1か月後、校長が調査委員会の設置。

調査委員は校長、教頭、PTA関係者、外部から医師、
臨床心理士、弁護士ら8人。
T君の苦悩を探るため、残されたメモやノート、T君自身の
携帯電話ブログへの書き込みなどを手がかりに、
10回にわたって話し合った。

遺族や同学年の生徒、教員らへの聞き取りなども随時実施。
内なる意思か外部要因か、議論を重ね、翌年3月に委員会が
出した結論は、「複数の要因が作用した結果」だった。

委員会は、考えられる要因を、因果関係や時間が近い「近因」、
直接的な因果関係はなく時間的にも近くない「中因」、
因果関係も時間も遠い「遠因」に分類。

いじめとの関連が疑われた携帯サイトへの書き込みは「中因」、
中傷による衝撃がクラスメートからの孤立感を強めていた。
友人関係の悩み、学業成績の不振による進級への不安、
性格の繊細さなどを挙げた。

学校の教育環境も検証、「学校側の認識や対応が、
必ずしも十分ではなかった」という見解。

調査委員を務めた同県教委教学指導課心の支援室長の
町田暁世さん(59)によると、同県では、
1992年に別の県立高校で起きた生徒刺殺事件を
外部委員を交えて検証し、03年に事後対応や
未然防止の対策を、提言にまとめている。

悲劇の再発防止には、徹底した調査と真実の公表が必要、
という姿勢が県内にあった。

町田さんは、「T君の思いが100%分かったわけではないが、
真実に近づきたい、というご遺族の強い思いに、
少しは応えることができたのではないか」

A4用紙で、18ページにわたる報告書の終章には、
「この一年近く、君とずっと対話してきた気がする」、
「君が命を張って伝えようとしてくれた大切な想いを、
私たちは、みんなに、いや、この日本国中に、発信したいと思う」、

1000字以上にわたり、今は亡きT君への呼びかけがつづられている。
誠心誠意、背景に迫ろうとする動きが、再発防止の大きな力になる。

◆メモ

文部科学省「児童生徒の自殺予防に関する調査研究協力者会議」は
今年度、自殺が起きた際の背景調査の指針作りについて協議中。
「学校に不都合な事実でも明らかにする」、
「早期に事実を調査し、詳細に記録する」、
「事実を知りたい遺族の希望に応え、再発防止に努める」という
方向性が確認。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100721-OYT8T00225.htm

九州大学が世界トップレベル研究拠点に

(サイエンスポータル 2010年7月16日)

文部科学省は、世界トップレベル研究拠点(WPI)に
九州大学の「カーボンニユートラル・エネルギー研究拠点」を選んだ。

世界トップレベル研究拠点プログラムは、
真のセンター・オブ・エクセランス(COE)を国内につくるという
狙いから、2007年に始まった。

日本が世界に誇る強い分野で、傑出した研究を行っている機関として、
東北大学の原子分子材料科学高等研究機構、
東京大学の数物連携宇宙研究機構、
京都大学の物質-細胞統合システム拠点、
大阪大学の免疫学フロンティア研究センター、
物質・材料研究機構・国際ナノアーキテクトニクス研究拠点、
が選ばれている。

各拠点には10年間、毎年5~20億円の研究費が支給。
6番目の拠点となった九州大学の
カーボンニユートラル・エネルギー研究拠点は、
高効率で低コストの水素製造、水素吸蔵材料、耐水素脆化材料、
次世代燃料電池、物質変換、CO2の分離・回収と地中・海洋貯留、
CO2の有用物質への変換など、カーボンニユートラル・エネルギー
(低炭素)社会の実現を目指す研究を推進する。

既存の5拠点が、いずれも日本人研究者を拠点長としているのに対し、
米国イリノイ大学のペトロス・ソフロニス教授を拠点長に迎える。

世界トップレベル研究拠点(WPI)プログラムについて、
発足1年後の文部科学省フォローアップ委員会による活動評価で、
「すべての拠点は、海外の主任研究者を招聘しているが、
世界的な拠点の研究者集団形成という意味では、質と数で不十分。

プログラムの10年という長い時間を考えれば、将来性のある
優れた研究者を招聘することも、積極的に考えるべき」といった注文も。

昨年11月の行政刷新委員会による事業仕分けでも、
「予算要求の縮減」(廃止2人、予算計上見送り1人、予算要求の縮減では
半額2人、3分の1縮減4人、その他1人、予算要求通り1人)という
厳しい評価。

http://scienceportal.jp/news/daily/1007/1007161.html

スポーツ政策を考える:小笠原博毅・神戸大准教授(社会学)

(毎日 7月24日)

文部科学省によるスポーツ立国戦略などの動きに、
違和感を覚えている。

二つの全く異なるものが、「スポーツの底上げ」という
文言のもとに、混同されている。

一つは、世界に通用するアスリートの養成で、
タレントを発掘してナショナルトレーニングセンターなどで、
エリート教育をしようというもの。

もう一つは、ジェンダー、年齢、障害のあるなしを問わず、
すべての人がスポーツをする権利を得て、
スポーツのバリアフリー化を進めていこうというもの。

前者と後者は連動していると言われているが、
前者の目的は勝利、後者は民主的な社会参加で、
異なる次元の問題である。

特定の政策立案のためには、特定の利益団体が
ロビー活動を通して圧力をかけていく。
比重は当然のごとく、成果が分かりやすいサッカー、野球、
陸上といったメジャースポーツや、オリンピックでメダルが
有望な競技に置かれ、あらゆるスポーツ活動に
あらゆる人たちが参加できるようにという後者は後回しに。

スポーツをする権利には、スポーツをする場所を使用する
権利も含まれる。
事前申し込みや抽選などの煩雑な手続きや、
不必要な管理の強化や企業による私有化によって、
公園すら好きな時に自由に使えない。

自治体は、住民へのサービスの提供者であるにもかかわらず、
使わせてやるという、お役所的感覚が抜けていない。

住民側も、その意図に見合った準備過程を踏んだうえで、
自ら始めたスポーツ行為の結果責任は自分で取る、
という意識を持つことが必要。

プールには準備体操をしてから入るなどといった、
最も基本的なことすらできない人が増えている。
今の日本では、スポーツという文化が持つ価値が、
社会全体に承認されているとは言えない。

サッカー・ワールドカップでの日本代表の健闘をたたえながら、
しょせんアスリートはスポーツしかできない
見せ物の一部だろう、という認識がどこかにある。

誰もが日常的にスポーツを楽しみ、何かを学び、
意味を見いだせるような環境を整えていく。
現役のアスリートがもっと声を上げるべきだ。

自らがプレーする環境が、どうやって整えられたのかを
知ったうえで、その社会的背景や政治的帰結について、
積極的に発言してほしい。
その影響力は、メディアや学者よりはるかに大きい。

多文化化の時代、日本国民のためだけの
スポーツ基本法はもう意味がない。

スポーツにかかわる政策や法律には、
グローバルな視点が必要。
国籍や人種、経済力に縛られない社会参加の最前線へ。
その可能性を、スポーツは最も強力に追求できる。
==============
◇おがさわら・ひろき

1968年生まれ。ロンドン大学ゴールドスミス校博士課程修了。
「サッカーの詩学と政治学」(共編著)。
専門はメディアやスポーツ文化。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/general/archive/news/2010/07/24/20100724dde035070022000c.html

2010年7月29日木曜日

「五輪でゴルフは変わる」 中国にも着目 ニクラス氏

(CNN 7月16日)

PGAメジャー・トーナメントの最多勝記録を持ち、
ゴルフ界の「帝王」とも称されたジャック・ニクラス氏(米)は、
トッププレーヤーたちが多額の賞金を手にする現在の状況を、
極めて肯定的にみている。

「われわれ(の時代)は、ゴルフでは生計を立てられなかった。
今は、数百人のプレーヤーがゴルフだけで生計を立てている。
これは素晴らしいことだ。
彼らは、ゴルフ以外の仕事をしなくても家族を養えるのだから」

40年以上に及ぶ現役生活を退いたニクラス氏は、
今も月に1、2度ほどゴルフを楽しんでいる。

同氏の今の本業は、ゴルフコースの設計。
同氏の経営する会社ニクラスデザインが手掛けるコースの大半は
中国のコースだ。

ニクラス氏は、将来中国から複数のチャンピオンが誕生し、
同国の数百万人の人々が、余暇にゴルフを
楽しむようになるだろう。

「以前、旅行で中国を訪れた際、ある質問をされた。
彼らは、『ジャック、世界の上位10人に中国人プレーヤーが
入る日が来るかね』と尋ねてきた。
私は、『10年か15年先に、世界のプレーヤーの半数が
中国人になっても驚かない』と答えた。
実際、私はそう信じている。
ここ中国から大勢のプレーヤーが誕生するだろう」(ニクラス氏)

ニクラス氏は、2016年ブラジルのリオデジャネイロで開催される
夏季五輪で、ゴルフが正式種目になったことで、
中国やブラジルなど、まだゴルフがあまり浸透していない国で、
ゴルフ熱が高まると考えている。

「五輪がゴルフを上流階級のスポーツから、誰もが気楽に楽しめる
スポーツに変えるだろう」と同氏は述べる。

http://www.cnn.co.jp/sports/AIC201007160019.html

熱中症、60歳以上は特に注意 スポーツしなくても発症

(朝日 2010年7月21日)

60歳以上で熱中症になった人の6割が、日常生活の中で
発症していることが、日本救急医学会の調査でわかった。

高齢者は重症化しやすいため、専門家はエアコンなどによる
室温の管理や十分な水分補給を呼びかけている。

調査は、学会が2008年6~9月に実施。
全国の救命救急センターや救急科のある82施設で、
調査期間中に熱中症で受診した913人を調べた。

60歳以上の228人のうち、63%にあたる144人が、
特にスポーツや仕事をしているわけではない日常生活で発症。

症状を3段階に分けると、軽症では、めまいやこむら返りが起こる。
中等度は頭痛、嘔吐、倦怠感。
重症の場合、意識障害や肝、腎機能障害など。

重症の198人のうち、4割の81人が60歳以上。
調査責任者の三宅康史・昭和大准教授によると、
初期症状は頭痛やめまい、吐き気などで
特有の症状ではないので、気づきにくい。

高齢者は暑さに対する感覚が鈍く、若い人より体内の水分量が
少ないので、体温が上昇しがち。
このため熱中症になりやすい。

熱中症は、屋内でも発症する。
湿度計付き温度計を置き、室温28度、湿度60%になったら
エアコンを使うなど、目で確認できる温度の管理が重要。

三宅さんは、「高齢者は、のどの渇きを感じなくても、
こまめな水分補給をして、エアコンや扇風機を使って
定期的に室温を下げることが予防への一歩」

http://www.asahi.com/science/update/0721/TKY201007210342.html

いじめ対策(2)親の「知る権利」確立訴え

(読売 7月17日)

「学校や教育委員会が持つ子どもの情報を、
親の私たちが知ることはできないのか」

2月15日、東京都清瀬市で同市立中学2年女子生徒
(当時14歳)が自殺した。
5か月後、父親(53)は、納得いかない表情で話した。
これまでに教委が公開した情報では、
自殺直前の学校での状況がほとんどわからない。

自殺の10日後、いじめをうかがわせる手書きのメモが
自室で見つかり、学校は生徒らの聞き取り調査を実施。
市教委は、結果の概要を発表、
「生徒に関する悪口やうわさは一部であったが、
学校に生徒は訴えていなかった」と説明。

両親は3月下旬、「学校側が選んでまとめた内容だけでは
事実はわからない」として、学校が自殺の数日前に実施した
学校生活に関するアンケートなどについて、
文書開示を市に請求。

生徒自身が書いた文書は開示されたが、
ほかの生徒の手書き文書は非開示。
両親は開示結果に不満を抱き、2、3月に開かれた職員会議の
議事録やメモなどの公開を、引き続き請求中。

市教委は、「プライバシーにかかわる問題であり、
教育的配慮が必要」と説明。
父親は、「匿名でいい。いつどこで何があったのか。
子どもの心境を知る生の判断材料が欲しいだけ」

「裁判なんか起こしたくなかったけれど、
肝心の情報を出さない学校の姿勢が決断させた」、
いじめのない社会を目指して設立された
NPO法人「ジェントルハートプロジェクト」(川崎市)理事の
小森美登里さん(53)。

1998年、娘の香澄さん(当時15歳)(神奈川県立高校1年)を
自殺で失った小森さんは、2001年、香澄さんへの
精神的いじめがあったとして、県と元生徒らに慰謝料を求めて提訴。
事実を知りたいと、周囲の生徒が書いた作文の内容公開などを
学校側に求めたが、十分なものが得られず、
裁判なら、隠された情報が引き出せるかもしれないと考えた。

07年、和解で決着し、県はずっと非公開だった
生徒らの作文を部分開示した。

同NPOは今、「学校にかかわる事件・事故について、
親の『知る権利』の確立を」と国会議員らに訴えている。

小森さんは、「真実を隠せば、周囲の子どもたちの心にも傷が生まれ、
再発防止を妨げる。
我が子に何があったか、親が知ることができる仕組みづくりが必要」

◇メモ

2008年度、自殺した国公私立小・中・高校の児童生徒は136人。
いじめの状況に置かれていたとされるのが、3人。
同省は、1999~2005年度のいじめ自殺を当初ゼロと発表、
いじめ問題深刻化を受けて再調査した結果、
計2件に訂正した経緯。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100717-OYT8T00213.htm

長期的観点に基づく大学予算配分要望

(サイエンスポータル 2010年7月15日)

国立大学協会と日本私立大学団体連合会は、
来年度予算概算要求枠、いわゆるシーリングで削減対象となる
政策的経費の枠から、国立大学運営費交付金や
私立大学等経常費補助を外すべきだとする要望書を発表。

6月22日に閣議決定された財政運営戦略は、
2010年度からの3年間は、基礎的財政収支対象経費について
前年度を上回らないこととしている。

要望書は、社会保障関係経費が年間1兆円程度ずつ増えると
仮定すると、政策的経費は毎年8%程度削減となり、
大学運営の基盤的経費である国立大学運営費交付金や
私立大学等経常費補助に一律に適用されると、
単年度だけでも1,185億円の削減になる、との危機感。

日本の高等教育に対する公財政支出が、
既に経済協力開発機構(OECD)中、最下位であることを挙げ、
2011年度の概算要求では、国立大学法人運営費交付金と
私立大学等経常費補助を削減の対象外とし、
「新成長戦略」に基づき、長期的な観点から予算配分を行うよう
政府に求めた。

国立大学協会と日本私立大学団体連合会によると、
仮に今後3年間、削減が続くと、2011年度に27の地方大学や
中小規模大学が、翌12年度には41大学、13年度には50大学が
なくなる可能性がある。

http://scienceportal.jp/news/daily/1007/1007152.html

2010年7月28日水曜日

進学:「理系」望む父親、「文系」の4倍 クラレ調査

(毎日 7月20日)

わが子に、「理系進学」を希望する父親は、
文系進学を望む父親より4倍多いことが、
化学メーカー「クラレ」の調査で分かった。

日本の政治や経済に閉塞感が漂う中、「子どもには論理力や専門性を
武器に、生きていってほしいという親心の表れではないか」

調査は、小学生の子を持つ20~50代の父親400人
(理系、文系各200人)を対象、インターネットで実施。

子どもに、「理系に進んでほしい」と答えた父親は31%、
「文系に進んでほしい」の7%を圧倒。
残りは、「どちらでもよい」(62%)。

理系進学を望む理由を複数回答で尋ねたところ、
「論理的思考が養える」(53%)、
「専門知識が身に着く」(41%)、
「進学や就職に有利」(32%)--の順。

回答の傾向が分かれたのは、「楽しい人生が送れる」(10%)、
これを選んだ文系の父親が19%だったのに対し、
理系の父親はわずか5%。

理系に進学した自分の人生を重ねたかのような回答は、
「隣の芝生は青く見えるのでしょう」と同社。

自身が子どものころ、研究者や科学者になりたいと
思ったことがある父親は48%。
あこがれた科学者は、日本人では湯川秀樹や野口英世、
外国人ではアインシュタイン、エジソンなど。

56%が、わが子の理科の教科書を「分量が足りない」と感じていた。
同社は、「理科をたっぷり学んで楽しさも知っている世代だけに、
教える内容を減らしたゆとり教育を物足りなく思っているようだ」

http://mainichi.jp/select/science/news/20100720k0000e040027000c.html

いじめ対策(1)「いい雰囲気作り」へ努力

(読売 7月16日)

穏やかな表情の遺影の横に、スナップ写真が何枚も飾られている。
「学校は、何もしてくれていなかったのか」。
自宅の居間で、両親は悔しさに満ちた心中を静かに語った。

いじめられていた友人を救えなかったことを悔やむ
内容の遺書を残し、川崎市立中学3年の男子生徒(当時14歳)が
自宅で自殺した。
加害者として、4人が名指しされていた。

生徒の母親(44)は、友人がいじめにあっていると生徒から聞き、
4月の家庭訪問で学級担任に伝えていた。
友人をかばった生徒自身も、いじめられていたらしいと
両親が聞いたのは、自殺の後。

「これ以上被害者を出してはいけない。
真実を明らかにして、いじめをなくして」と、生徒の父親(45)は訴える。

いじめにかかわる悲劇が続く。
今年3月、鹿児島県で男子中学生が自殺、
いじめとの関連が疑われている。
6月、岐阜県で、女子中学生が服を脱がされ、
携帯電話で動画撮影されるという悪質ないじめが発覚。

全国の学校でのいじめ認知件数(文部科学省調べ)は、
2008年度で8万4648件、2年連続で減少。
一方で、いじめの潜在化を心配する声も根強い。

国立教育政策研究所は6月、07年から3年間実施した
いじめ追跡調査で、小学4年~中学3年で
いじめと無関係でいられる児童生徒はわずか1割。
どの学校、学級でも、どの子も、被害者にも加害者にもなりうる、
という衝撃の結論。

同研究所生徒指導研究センター・総括研究官の滝充さん(56)は、
「いじめにピークはない。
いつでも起きると考え、学校全体で
いい雰囲気作りを続けるしかない」

川崎市は04年以降、いじめの社会問題化を背景に、
いじめ対応マニュアルを全市立学校教員に配布。
いじめ防止などのため、ゲームや共同作業で人間関係を学ぶ
プログラムを導入し、自殺した生徒の学校も昨年度から行っていた。

事件後、校長は「校内にいじめはあった」と認めたが、
自殺との関係については、本紙の取材に「調査中」。
事実関係の把握と原因究明は、学校や保護者代表、
有識者らで構成する調査委員会にゆだねられている。

何があったのか?
担任や学校は対応していたのか?
だとすれば、何が問題だったのか?

誰の身にもおこりうるいじめ。
各地の取り組みを探った。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100716-OYT8T00266.htm

産学官連携のための人材育成

(Nature 2010年6月24日号)

科学はかつて、未知の現象への好奇心だけで成り立っていた。
放射線の発見以来、科学と社会は密接な関係をもつ。
21世紀、研究開発の国際競争は激化し、知的財産権や技術移転が
重要になっている現在、産・学・官を橋渡しし、研究から実用化まで
迅速に進めることが不可欠。

すべての大学や研究機関で、産学官の連携が
滞りなくいっているわけではない。

煩雑な申請書類の作成、事業プランの作成、研究者と企業の
コーディネートなど、抱える問題は山積。
産学官連携にマッチした人材の不足は大きな課題で、
早急な人材育成が必要。

今回、いくつかの取り組みを紹介しながら、
今後の産学官連携の人材育成を展望する。

文部科学省の2008年度「大学等における産学連携等実施状況調査」
によれば、産学の共同研究件数(1万7638件)・
研究費総額(約440億円)は、ともに前年比9%増、
受託研究件数(1万9201件)・研究費総額(約1700億円)も過去最高。

特許出願は、9435件(国内・海外)と4%減、
特許権の実施件数(5306件)は21%、
実施料収入額(約10億円)は27%増加。
日本の産学官連携は、順調に進行しているように思われる。

一方、日本学術会議科学者委員会・知的財産検討分科会が
2009 年に行った知的財産制度の影響についての調査では、
学術コミュニティーは、研究成果の社会への還元や産学連携に
役立つといった利点を認めつつ、特許出願のために
論文のために研究発表が遅れる、権利意識が高まり研究活動が
制限されるなどのマイナス面もあり、
知財化や産学官連携はまだスムーズとはいえない。

◆産学官連携は次のステップへ

日刊工業新聞社で、産学官連携を10 年間担当してきた
山本佳世子編集委員は、産学官連携は国立大学法人化前からの
盛り上がりが収束し、転換期に差しかかっている。

「当初は特許が重視され、技術の目利きができる人材が必要と
考えられていた。その結果、特許件数は増えたが、
それがライセンス化や商品化につながっていない。
今では運用がより重視され、技術の目利きより、
コミュニケーション能力をもち、マーケティングができ、
問題に対処できる人が求められている

産学官連携にかかわる人材は、弁護士や弁理士のような
国家資格を除いて、OJT(on the job training)で経験を
積み重ねれば仕事ができるようになるが、
大学や研究機関などにはポストが少なく、
非正規雇用者が多い。

大規模でトップクラスの国立大学や私立大学と、
小規模な地方大学との格差も広がっている。
地域の拠点となっていない地方大学では、産学官連携にかかわる
組織も小さく、連携できるような企業も少ない。
国際連携はもちろん、大学内での発明の開拓や企業への
プレゼンテーションも難しいため、企業との共同研究の成果に
しぼって特許出願するなどの工夫」と、山本編集委員。

2009年秋の行政刷新会議の事業仕分けにより、
文科省『都市エリア産学官連携促進事業』は廃止、
『知的クラスター創成事業』、『産学官民連携による
地域イノベーションクラスター創成事業』、『産学官連携戦略展開事業』
3つの事業は、『イノベーションシステム整備事業
(地域イノベーションクラスタープログラムと大学等産学官連携
自立化促進プログラム)』に一本化。

大学等産学官連携自立化促進プログラムは、
国際的な産学官連携活動や特色ある産学官連携活動の強化、
産学官連携コーディネーター配置等の支援を通じて、
大学等の産学官連携活動の自立をめざしている(約26億円)。

産学官連携は、文科省の大学知的財産本部整備事業
(03~07年度)やそれを引き継ぐ上記の事業、
経済産業省の創造的産学連携体制整備事業などで、
組織の構築や人材育成は一段落し、今、新たなステージ。

◆寄り合い所帯をコーディネート

産学官連携には、文科省系の産学官連携コーディネーター、
経産省系の特許流通アドバイザー、クラスターマネジャーなど
さまざまな肩書きをもつ人材がかかわり、それぞれの強みを生かし、
知財活用や事業化などを推進。

09年4月、文科省と経産省支援により設立された
全国イノベーション推進機関ネットワークが、
TLO(技術移転機関)や産学官連携本部、企業・自治体等を
対象に行ったアンケート調査では、所属組織によって
仕事への意識が異なっていた(約800名から回答)。

前田裕子事業総括は、「大学や研究機関に所属する人は研究者寄り、
企業が出資する組織に所属する人は企業寄りに考えている。
産学をつなぐ人材の意識がどちらかに偏っていては、
連携はうまくいかない」

同ネットワークでは、本年度から、前田事業統括が
文科省委託業務の事業実施者となり、
『全国的なコーディネート活動ネットワークの構築、強化事業』を開始。

このプロジェクトでは、東京農工大学TLO 副社長や
東京医科歯科大学技術移転センター長を務めた前田事業総括の
経験を生かし、全国会議で国の施策や成功事例などを学び、
地域会議でグループワークなどを行う。

同ネットワークには、400名以上が会員登録、
「産学官連携を担う人材には、どんな資質や知識、体験が
求められるのかを追求しながら、意識改革にも役立つ研修を行いたい」

◆組織間の連携と仕事の効率化

大学で産学官連携を担う組織は、産学官連携本部、知的財産本部、
共同研究センター、TLO、ベンチャーキャピタルなど、
これらの組織が縦割りになっていて、業務が滞る事例も。

「特許出願までを知財本部が扱い、ライセンス化からを
TLOに任せるという形では、技術移転にふさわしい形での
特許出願が難しく、企業のニーズとマッチしにくい。
1つの発明案件は、生まれる前から
1つの組織が継続してみていくべき

外部からみると、各組織の担当業務がわかりにくいのもデメリット。
産学官連携本部が中心となり、各組織をまとめたり、一部の組織を
廃止したりする動きが盛ん。
それぞれの組織には、教授や事務職員のポスト、予算などがあり、
教授会と産学官連携組織の力関係も影響するため、なかなか難しい。

前田事業総括は、「大学には、教授職と事務職員という
2つのカテゴリーしかなく、教授になるには弁理士のような国家資格や
博士号が求められ、授業をもたなければならないなどの縛りが。
産学官連携に携わる、専門的な知識をもつ人材には、
中間職的なポストを設けるといいのでは」と提案。

京都大学産官学連携本部は、4月に産学連携センターを統合し、
センターにあった教授職ポストを減らしつつある。
今年度中に、中間職的なポストを新設、専門性の強い職種を
産学連携本部の中間職ポストに移譲するなどの計画を検討中。

現在、大学の特許出願は、学内外の25~30名からなる
発明評価委員会が月2回審議、
「より効果的な態勢に変える必要がある」と牧野圭祐本部長(特任教授)。

◆専門性は絶対に必要ではない

東京大学TLOは、承認TLOの中でも、ライセンス化による
成功報酬を主な収入源とし、黒字化している数少ないTLO。

これまで毎年数名を中途採用し、今年から新卒採用も行っている。
東大TLOでは、研究者へのヒアリング、発明の市場性や
特許性の評価、弁理士への特許明細書作成依頼、
橋渡しする企業の検索、企業へのプレゼンテーション、
契約書の作成までの一連の作業を、1 人の担当者が行う。

山本貴史社長は、「理系のバックグランウンドや専門知識は
助けになるが、絶対必要というわけではない」と断言。
実際、同社でライセンス業務にかかわる社員のほぼ半数が文系出身者。

「会社の設立当初は、自分にないものをもっている人、
企業の知財担当者、理系の専門性の高い人などを採用したが、
必ずしもうまくいかない。
経歴より、面接で感じる人柄やコミュニケーション能力を重視

同社では採用後、社内研修を受けさせ、OJTで訓練する。
英語が堪能でなくても、入社わずかで海外に2週間の研修に
行かせることも。

山本社長は、一般社団法人大学技術移転協議会(UNITT)の
研修も担当。
基礎編と応用編があり、基礎編では、山本社長が“ゲルで
人工軟骨を作る方法を開発した研究者”に扮ふんし、
参加者が全員の前でインタビュー、発明の抽出、
弁理士への依頼などを行う。

応用編では、契約やベンチャー企業の新株予約権の発行、
利益相反マネジメントなどを扱う。
「当社で実際に使用している契約書などを教材とした、
実践的な内容になっている。
みんなが知識やノウハウを共有し、レベルアップすることができれば」

◆国際連携や知財戦略での人材不足

今後、日本の技術力や経済力のアップにますます重要になるのが、
国際的な産学官連携。
文科省は、大学等産学官連携自立化促進プログラムを創設し、
国際的な産学連携活動の推進を掲げ、採択された機関では既に、
人材研修や調査研究などが始まっている。

京都大学産官学連携本部では、4月、ハーバード大学の
Office of Technology Development(OTD)と覚書を締結。
牧野本部長は、「研究と教育を大切にし、技術移転などの
サービスはその次、というハーバード大学の姿勢は、京大と共通。
OTDでは、職員全員が法学や生物学などの博士号と
企業経験をもち、リストラなどでよく入れ替わることには驚いた」

「日本では、このような経歴をもつ人材はほとんどいないし、
いたとしても大学に就職するなんて考えられない。
当面、企業退職者や経験豊富な弁理士などに来てもらい、
国際連携を進めていく」

国際的な知財戦略に関して、特に中国の動きから目が離せない。
東京大学先端科学技術研究センターの渡部俊也教授は、
「先進的な知財法が整備された一方、コピー商品が出回っている。
世界は、この二面性につき合わざるを得ない」

先端的な発明を生む大学の特許出願を比べれば、
現在、中国の大学からは4万件前後、日本の6倍近く。
「将来、中国マーケットに進出した日本企業が、
これらの特許侵害で敗訴する例もでてくる」

これは、ビジネスチャンスともいえるが、
「弁護士や弁理士でも中国にネットワークをもち、
交渉に長けている人はそれほど多くない。
企業も備えが手薄。
中国をはじめ、アジアでの知財戦略は、専門家の育成に
しっかり取り組むことが重要

◆大学での実践教育

大学で、イノベーションの創出や企業の組織・経営などについて
教育することも、産学官連携の裾野を広げることに役立つ。

00年代前半から大学では、技術版のビジネススクールともいえる、
技術経営に関する専門職大学院が設置。
各大学院は、特性に応じて、技術マネジメントや知財などに関する
専攻や教育プログラムを用意。

東京工業大学は、02年、『産業化を目指したナノ材料開拓と人材育成』
が文科省の21世紀COEプログラムに採択、大学院総合理工学研究科の
材料系4専攻の博士後期課程の中に、ビジネススキルを備えた
研究者を育成するプロジェクトマネージング(PM)コースを設立。

博士論文が必要なコースの定員は10名。
プロジェクトは5年で終了、PMコースは、07年から
グローバルCOEプログラム『材料イノベーションのための
教育研究拠点』が引き継いでいる。

PMコースでは、実践的な経営論や製品開発、投資ファンドなどの
仕組みを学んだ後、学生たちがベンチャー企業を立ち上げる設定で
事業計画書を作成し、プレゼンテーションを行って、評価を受ける。

事業計画書では、経営理念や業務内容、将来性に始まり、
市場動向や事業リスクの分析、株式会社化の見通しや株式公開、
増資まで詳細に分析。

「当初、PMコースに学生が集まるかどうか心配した」、
PMコースのプログラムの立案や実施を担当、担当リーダーを務める、
総合理工学研究科材料物理科学専攻の三島良直教授。

その心配は杞憂に終わった。
毎年6~7名の応募があり、知識と視野を広げることができると
口コミで評判が広がって、研究生や聴講生も増えている。

三島教授は、「将来的には、ここで学んだ学生が、産業界をはじめ
社会のさまざまな分野で活躍するようになり、
博士号取得者のキャリアパスを広げる教育改革の1 つとして、
広く認められるようになるのでは

◆大学から企業へ

主に大学や研究機関での産学官連携のための人材育成や
組織について述べてきたが、「産」を担う企業側の人材はどうか?

東大先端研の渡部俊也教授は、「日本企業では、
自社での技術開発が重視されてきたために、
外部から技術を獲得して活用する歴史がなく、外部技術を評価し、
社内の競合しそうな技術との関係を調整する人材がいない」

東大TLOの山本社長は、「日本の企業は、全体的に判断が遅く、
欧米の企業にライセンス化を働きかける例が多くなってしまう」

各大学や研究機関が個性的・独創的な戦略をもち、
産学官連携の意識をもつ学生を送り出す一方、
企業側でも、博士課程の学生や若手のポスドクを対象とした
インターンシップを活用したり社員として採用したりして、
外部の技術を活用する態勢を作ることが必要。

文科省イノベーション創出若手人材養成プログラムにも選ばれた
東京工業大学は、08年度プロダクティブリーダー養成機構(PLIP)
設立し、博士課程の学生と若手ポスドクの企業での
長期インターンシップを実施。
09年度、派遣されたポスドク9名全員が就職し、
そのうち6名は派遣先へ就職。

これまでの、これから始まるプログラムによって育った人材が、
各大学や研究機関・企業・行政の場に職を得て、あるいは起業して、
人材のネットワークを構築し、知識や経験を交換・共有できるように
なるかどうかが、日本の産学官連携の未来のカギに。

http://www.natureasia.com/japan/nature/ad-focus/100624.php

2010年7月27日火曜日

スポーツ振興は「国の責務」…戦略原案発表

(読売 7月20日)

スポーツ政策の長期的な指針として、文部科学省が初めて策定する
「スポーツ立国戦略」の原案が発表。

若者のスポーツ実施率アップのため、独身男女を対象にした
「スポーツ婚活」の推進などの施策が盛り込まれた。

原案は、スポーツを「世界共通の人類の文化」と定義。
少子高齢化社会を迎えるなか、
スポーツの振興は、「国の責務」と位置付けた。

引退したトップ選手を、地域の総合型クラブに配置するなど、
「トップ」と「地域」の人材を交流させる仕組みを打ち出した。

トップスポーツ強化策としては、五輪メダル数の目標を掲げたほか、
五輪など国際競技大会招致に関して、国が積極的に支援すると明記。

大相撲の不祥事でも問題となった競技団体の
ガバナンス(統治能力)の必要性も、重点戦略に盛り込まれた。

文科省では、22日から8月12日まで、
特設サイト(http://jukugi.mext.go.jp/)で広く議論を募集。

中央教育審議会(文科相の諮問機関)のスポーツ・青少年分科会で
検討し、8月下旬に正式決定。

http://www.yomiuri.co.jp/sports/news/20100720-OYT1T00839.htm

理科の達人先生(下)授業はライブショー

(読売 7月15日)

2個のフラスコを、ゴム管でつないだ簡単な実験装置。
片方のフラスコ内で水を沸騰させ、水蒸気を他方のフラスコに導き、
ゴム管の開閉を調節すると、水がくみ上げられる。

液体が気化すると、体積が大きくなる原理を利用したもので、
見えない力に押されるような水の動きに、生徒も興味津々。

大阪教育大付属天王寺中学校3年の理科「エネルギー」の授業。
この実験装置、実は17世紀、英国で登場した
「セイバリー・ポンプ」の模型。

「理科の達人先生」表彰(NPO法人ネットジャーナリスト協会主催)で
科学技術振興機構理事長賞に輝いた広瀬明浩・同中教諭(48)が、
文献を基に作った。
「300年前のハイテク」と種明かしすると、
「へぇー」と感心したようなざわめきが起こった。

「生徒は敏感、教師のやる気を肌で感じる」との思いが、
教材開発の原動力で、授業にもコンテスト形式を取り入れてきた。
「授業は、スリリングなライブショー。
シナリオ通りの時もあれば、生徒の反応が予想外の時も。
正しい理解に導くのが楽しい」

◆感動重視 予習させない

新学習指導要領に盛り込まれた原子力発電や放射線。
「達人先生」で、読売新聞社賞に選ばれた
品川区立小中一貫校伊藤学園の坂内温実教諭(48)は、
2008年、科学教育番組「進む放射線利用と原子力ルネッサンス」
の制作に協力し、番組の進行役を務めた。

内容は、放射線は身近な自然界に存在し、
医療や農業にも役立っていることや、
原子力発電の仕組みから過去の事故の解説まで。
新分野をどう教えればよいか、悩む教師の手助けとなる。

自身は、校外から専門家を招いて授業を行った。
「環境やエネルギー問題とも絡むので、教えるのは難しい。
正しい情報や科学的事実を、理解させることが大切だ」

ふだんから、授業は理科室で、実験はなるべく生徒自身の手で、
と考えている。
生徒には、「授業前に教科書を見るなどの、予習はしないで」と。
感動が薄れるからだ。
「教科書を覚えるのではなく、印象に残る、
五感で感じる授業にしたい」

最近の子どもは、日常の様々な体験が少ないとも嘆く。
「子どもの体験の場として、学校が担う役割は大きくなりつつある」、
理科の授業に力が入る。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100715-OYT8T00220.htm

がん患者が働きやすい社会づくりに取り組む 桜井なおみさん

(2010年7月16日 共同通信社)

2004年、37歳のとき乳がんが見つかった。
設計事務所のチーフデザイナーとして、やりがいのある仕事を
幾つも抱えていた。

「きっちり引き継がなければ」と、後任を連れて慌ただしく
クライアントを回り、手術日を1週間延ばした。
退院後も続く検査、抗がん剤治療のため休職は8カ月に及び、
復帰した後も通院は続いた。
結局いづらくなって、2年後に辞めた。

がんになっても、働き続けたい-。
がん経験者の7割がこう願うのに、その3割が解雇・退職などで
転職していることを知った。

入院期間の短縮で、術後の抗がん剤治療などは通院で行うのが
一般的だが、働き続けるには足かせだ。

「全がん患者の4人に1人は働き世代、抱える問題は高齢患者と違う。
がんになった上、仕事も失うのは精神的にも経済的にもつらい」

自分らしく生きることを最期まで貫き、治療費や税金を払い、
亡くなる患者をたくさん見てきた。
経験者だからこそ、働き続けたいという希望も、
職場での悩みもよく分かる。

治療は一時期、がん経験者だからと働き盛りを切り捨てるのは
企業側の損失ではないかという思いも強かった。

昨年、事業を開始。
趣旨に賛同した会社が運営する総合求人求職サイトを通じて、
がん経験者の就労を支援する一方、このほど働き続けるこつを
がん経験者32人がまとめた本を出版。

働き続けるための課題を話し合うシンポジウム
「がんと一緒に働こう!」も各地で開催、社会の意識改革と、
行政の後押しの必要性を訴えている。
43歳、東京都出身。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/7/16/122918/

正倉院:眠る薬物、科学的分析で解明 「厚朴」の不明の原料、クルミ科植物の皮

(毎日 7月20日)

平城京遷都1300年を迎えた奈良を代表する遺産の一つが、
正倉院の宝物。

その中に、光明皇后が貧しい病人を救うため創設した
「施薬院」などで使われたとみられる薬物が収蔵。
戦後、2度の科学的分析が実施され、長く謎として残っていた
薬物の正体も最近判明。

西域や南方など世界中から渡来した、いにしえの薬は
どんなものだったのだろう。

◆60種類を収蔵

正倉院の収蔵品には、美術品とともに60種類の薬物が含まれていた。
それらは、「種々薬帳(しゅじゅやくちょう)」と呼ばれる書面に、
数量とともに記されていた。
巻末には、当時の政治の中枢にいた藤原仲麻呂の署名もある。

最初の科学調査は、戦後まもない1948~49年に実施。
当時は、分析技術が十分でなかったため、
94~95年に2回目の調査を実施。

その結果、種々薬帳に記載された薬物のうち、38種類が今も残り、
記載外の薬物も約20種類見つかった。

38種類の内訳は、
動物生薬5、植物生薬20、鉱物生薬8、動物の骨など化石薬5。

建立から100年間は、薬物の出入りを厳重に管理していたが、
それ以外にも記載されない出入りがあったとみられる。

◆原料すべて分析

調査班は、2回目の調査ですべての原材料を分析、
「厚朴(こうぼく)」と書かれた薬物の原料が分からないままだった。
厚朴は、現在も漢方薬として使われ、モクレン科のホオノキから作る。

調査班代表の柴田承二・東京大名誉教授(94)らは、
正倉院の「厚朴」がホオノキとは特徴が異なることに注目、
中国の文献を調べた。

その結果、クルミ科の植物の樹皮を使う例があることが分かった。
中国や台湾から、クルミ科の「黄杞(こうき)」を取り寄せ、
顕微鏡で観察したところ、特徴が正倉院の厚朴と一致。

柴田さんは、「現在の厚朴と同様、胸腹部の膨満感や精神不安などに
効果があるようだ。(長年の謎を解き)やれることをやったとの思いだ」

◆世界でもまれ

正倉院の薬物は、遣唐使や鑑真和尚によって、
唐からもたらされたと考えられている。
産地は、中国(唐)だけでなく、シルクロードを越えた西域やアラビア、
マレー半島など南方まで幅広い。

中国の墓から薬物が発掘された例はあるが、正倉院のような建物に、
詳細な記録とともに長期間保存された例は世界でもまれ。

校倉造の構造が、内部の環境を一定に保ったため、
保存状態もよく、鎮痛などに効果がある「甘草(かんぞう)」は、
今でも使用可能なほど薬効成分が残っていた。

建立後100年間の記録を調べたところ、自律神経を整える
「人参」、下剤の「大黄(だいおう)」などが大量に使われていた。
これらは、「施薬院」で使われた可能性がある。

◆消えた毒薬

毒性があるアルカロイドを含む「冶葛(やかつ)」が、
大幅に減っていたことも分かった。

柴田さんは、「他にも、毒薬として使える『狼毒(ろうどく)』が
なくなっていた。聖武天皇の死後、都では権力抗争が起きた。
疫病が流行し、世情も不安定だったと考えられる。
これらの毒薬がどのように使われたのかは、想像に難くない」

正倉院の薬物の科学的分析は、現代のさまざまな漢方薬の
研究にも寄与した。
人参に含まれる有効成分サポニンを、25種類突き止めた。

大黄の主成分がセンナ葉と同一であることが分かり、
生薬を使った下剤の研究開発に結びついた。

最初の調査から参加している柴田さんは、
正倉院の薬物は、日本の財産。
完全な形で残っているものもあり、それぞれの有効成分が
ほとんど分かった。世界でも非常にめずらしい薬物の研究に
携わることができたことは光栄だ」

◇正倉院

750年代に創建された、校倉造高床式の倉庫。国宝。
収蔵品は、聖武天皇と妻・光明皇后のゆかりの品や、
東大寺の大仏の開眼法要で使われた品など、計約9000点。

現在、宝物類は別に建設された鉄筋コンクリートの宝庫に
移されている。
天皇の命令によって長期間封印され、厳重に管理されたため、
貴重な宝物が守られた。

現在も扉を開くのは、年1回の「開封の儀」だけ。
98年、「古都奈良の文化財」として世界遺産に登録。

http://mainichi.jp/select/science/news/20100720ddm016040113000c.html

2010年7月26日月曜日

理科の達人先生(上)教材を工夫 驚きの実験

(読売 7月14日)

自分たちで組み立てた燃料電池を使った回路から、
電子メロディーが流れた。
「やったー。鳴った」、「すごい、すごい」と歓声。

新宿区立新宿中学校の理科室で行われた3年生の理科の授業。
この日のテーマは、「エネルギー変換」。
生徒たちは、水に電気を流すと水素と酸素が発生する
電気分解を見た後、その逆の反応である燃料電池の仕組みを学び、
実際に作ってみた。

材料は、注射器2本、100円ショップで買ったプラスチック容器、
それに特殊な電極。
これらを組み合わせ、水酸化ナトリウム溶液と水素と酸素を
注入すると、燃料電池が完成する。
原理は分かっていても、単純な装置から電気が生まれるのには驚かされる。

優れた中学理科教師を表彰する「理科の達人先生」で、
宇宙航空研究開発機構理事長賞に輝いた同中の小林輝明教諭(46)。

1996年、燃料電池の教材を開発し、
今ではすっかりおなじみの燃料電池教材の原型となった。
当時、教科書に「燃料電池」という言葉は載っていたが、
燃料電池自動車の商品化などはまだ先のこと。

環境問題といえば、公害など負の遺産の話がほとんど。
「暗い気持ちになる話だけでなく、科学技術が世界を変えることを
伝えたかった」
この教材開発で翌年、東レ理科教育賞を受けた。

2007年、宇宙機構の招きで米航空宇宙局(NASA)へ行き、
実験を披露したことも。
本業の傍ら、昨年から通う東京農大大学院では、
新たな視点の環境教育研究に取り組んでいる。

◆理科の達人先生

理科教育に優れた業績を上げた中学校教師を表彰するもの。
NPO法人ネットジャーナリスト協会が、今年初めて実施。

◇体系立て効果的学習計画

「産業革命」、「現代社会」、「環境問題」、「エネルギー資源」、
「最新科学技術」といったキーワードが矢印で結ばれた図。
環境エネルギー問題に関係する学習内容のつながりを示したもの。
教科書の内容を、単に知識として教えるのでなく、
社会や科学とどう関係しているのか、教科全体の中では、
どう関連づけると良いのか。

理科の達人先生表彰で、初等中等教育局長賞を受賞した
練馬区立豊玉中学校の高畠勇二校長(57)は、
学習内容を体系的に整理し、効果的な学習計画作りに
役立てることに取り組んできた。

学習計画では、キーワードをさらに細かく具体的に分ける。
エネルギー資源は、種類や特性、発電の仕組みや特徴、
化石燃料と地球温暖化など、10項目以上。

この項目を学習計画にちりばめ、歴史や実情を踏まえた
全体像を理解させたいと願う。

「未知の課題で頑張る原動力となる成功体験は、
綿密な事前準備なしでは得られない」

◇「できる教員」地道に養成

国の科学技術の基盤を作るため、達人と呼ばれる理科教員の養成に
心を砕くのは、理科の達人先生で最高賞の文部科学大臣賞を
受賞した、葛飾区立亀有中学校の瀬田栄司校長(59)。

08年から、科学技術振興機構の理数系教員養成拠点構築事業で
推進委員を務め、教師の質向上に協力してきた。
いわゆる「授業のできる」教師は、各地で若手を教えるなど、
指導的役割を果たすべきだと考える。
「人材育成は、短期的に成果が出にくいので、地道にやっていくしかない」

教員育成の効率化を図るため、各地域での取り組みを
ネットワーク化することも重要。

「科学は面白い、大切だ」という認識を、子どもたちだけでなく、
大人へも広げていく必要があると考え、学校や大学のほか、
博物館や企業とも連携することも模索。

教頭になった1994年以降、授業をすることはなくなったが、
2007、08年には全国中学校理科教育研究会長を務めるなど、
理科教育全体を考える立場で活躍する。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100714-OYT8T00276.htm

動かぬ体、奏でるギター ALS患者ら開発、額やほおで操作 来月ライブ

(2010年7月22日 毎日新聞社)

難病のALS(筋萎縮性側索硬化症)患者で、
湘南工科大学で非常勤助手を務める舩後靖彦さん(52)らが、
全身まひの人でも弾くことができるギターを開発した。


学生時代、プロのギタリストを目指したという舩後さんは、
「再びギターが弾けるなんて夢のよう」
来月、千葉市で製作発表ライブを開く。

ギターを開発したのは、舩後さんと同大電気電子工学科4年の
山田雅彦さん(24)。
電子情報工学専攻の水谷光教授が指導。
体で唯一動かせる額やほおに取り付けた3本のセンサーが、
微細な動きから情報を読み取り、モーターを動かして
エレキギターの弦をはじき、三つの和音を奏でる。

舩後さんは、商社マンだった99年、ALSを発病し、
「余命3年」と宣告。
失意のどん底で、自身の思いを短歌に込めた。

  骸(むくろ)かな
  身・口微塵(みじん)も動かねば
  脈だけが生の証し悲し

主治医の勧めで、同じ患者同士で相談し合う「ピアサポート」に
参加したのを機に、短歌集を出版したり、
講演活動に取り組むようになった。

こうした活動が評価され、08年12月に同大助手として採用。
役割は、福祉器具開発への助言。
数々の開発に携わったが、最後に残った思いが、
「もう一度ギターを弾きたい」
1年半ほど前から、山田さんらと意見交換を重ね、完成に。

ライブは8月7日、千葉市稲毛区のミュージックハウス
「フルハウス」、午後1時半に開場
(問い合わせは、金子みもさん=090・2733・3695)。
全国で約7000人いるとされるALS患者に勇気を与えたいと、
舩後さんもステージに上がる。
この日のために作詞した新曲に、今の気持ちを込めた。

  幸せ掴(つか)むため
  引き返せない運命(さだめ)
  行くしかない

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/7/22/123150/

池田氏「ITで医療の質改善を」 アップルストア銀座で講演

(2010年7月16日 Japan Medicine(じほう))

国際医療福祉大大学院教授の池田俊也氏が、
東京・銀座の「アップルストア銀座」で講演、
米国の医療ではEHR(Electronic Health Recording)や
電子カルテによる地域における患者データ共有(HIE)などで
ITが活用されていることに触れた。

池田氏は、「ITの推進は患者のためになり、
医療の効率化にもつながる」

全米での膝の関節の置換手術の実施率や、急性心筋梗塞にかかった
患者に、β遮断薬を処方した割合に地域差があることを紹介、
「米国人が受けることのできる医療サービスの質と、
実際に受けている医療サービスの質に、大きな亀裂がある」と指摘。

医療の質の改善には、ITの活用と医療供給体制の抜本的改革が
必要であるとの認識を示した。

池田氏は、米国での医療におけるITの活用について、
EHRやHIEのほか「EMR(院内の電子カルテ)」、
「PHR(個人健康記録)」などを例示。

テキサス専門医会で、紙ベースの医療提供システムから
電子化・統合化した診療モデルへの転換が進み、
電子カルテによるHIEが進められた結果、
医療ミスが減り不要な入院の減少をもたらしたと説明。

ペンシルバニア大病院では、診療支援機能を有する
「総合外来電子カルテ」を紹介。

池田氏は、総務省の「情報通信白書」を基に、
「健康状態に合わせた最適健康管理サービス」、
「病状に合わせた最適医療サービス」、
「診療の事前予約サービス」でIT化が進めば、
約1兆円のコストが浮くと推計されることを報告。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/7/16/122936/

健康づくりトップは東北 かんぽ生命の意識調査

(2010年7月16日 共同通信社)

日本郵政グループのかんぽ生命保険が発表した、
健康意識や運動習慣に関する調査結果によると、
全国8地域のうち東北が総合指数でトップとなり、
健康づくりに最も熱心な地域と分かった。

調査は今年6月、インターネットで実施、1600人の回答を集計。
「運動に意識的に取り組んでいるか」、「体重や体脂肪率を
認識しているか」など、25の質問に対する答えを基に、
各地域の指数を算出。
全国平均を100%として、結果を公表。

総合指数トップは東北で、102・8%。
近畿の101・0%、九州・沖縄の100・5%、北海道の100・1%。
最下位は97・4%の中国、四国が98・5%、関東が99・7%、
中部が99・9%。

実際にどれぐらい運動しているかを示す運動習慣指数では、
近畿が105・9%とトップ。
規則正しい食事や十分な睡眠が取れているかを示す
生活習慣指数は、101・8%の九州・沖縄がトップ。

かんぽ生命の前身の逓信省簡易保険局が、ラジオ体操を制定。
ラジオ体操が盛んになる夏休みを前に、調査を実施。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/7/16/122907/

全国初、鍼灸外来を開設 術後の痛み緩和補完 三重大病院

(2010年7月15日 毎日新聞社)

三重大学医学部付属病院は、
「統合医療・鍼灸外来」を麻酔科内に開設。
鍼灸の専門外来を設けたのは全国で初めて。

包括連携協定を結んでいる鈴鹿医療科学大の協力で実現し、
同大の佐々木和郎・鍼灸学部長ら鍼灸師5人が診療。

竹田寛病院長は、「術後の痛みの緩和には、西洋医学の投薬治療などが
行われているが、補完する意味で(鍼灸外来を)設置した」

4月から試験的に病院職員と入院患者に鍼灸の診療をしたところ、
「体の調子がよくなった」などと好評。

統合医療は、現代西洋医学に鍼灸や漢方などの東洋医学を
取り入れる医療で、世界保健機関(WHO)は頭痛や関節痛など
49の疾病に鍼灸治療の有効性を認めている。

今年2月、厚生労働省が統合医療の推進を目的に、
プロジェクトチームを設置。
同院は今後、漢方も取り入れたいとしている。

診療は予約制で、平日の午後2~5時。健康保険は適用されない。
初診4500円、再診が3500円。
申し込みは専用電話(059・231・5552)。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/7/15/122876/

2010年7月25日日曜日

松坂、三振奪う度に5百ドル寄付…「子供たちに」

(読売 7月21日)

米大リーグ、レッドソックスの松坂大輔投手は、
三振を一つ奪う度に500ドル(約4万4000円)を、
球団の基金に寄付する慈善活動を始める。

奪三振数は、今季初登板にさかのぼって計算。
松坂は、20日現在で65奪三振を記録、
現時点で寄付金は3万2500ドル。
寄付金は、地域の子供たちのために役立てられる。

日本でも、子供たちを球場に招待するなどの活動をしてきた松坂は、
「米国に来て、メジャーリーガーが慈善活動に積極的なことに
感銘を受けた。
妻と話して、親として子供たちのために
何か役立つことがしたいと思った」とコメント。

寄付金には、松坂のサイン入りグッズなどの売上金からも加算、
倫世夫人も後日、別のチャリティー活動を発表。

http://www.yomiuri.co.jp/sports/mlb/news/20100721-OYT1T00221.htm

インサイド:次代の針路 第2部 中学部活の再建策/4

(毎日 7月16日)

今夏、長野・菅平に全国トップ級の中学生ラガーマンが集う。

単独チームによる初の全国大会「全国中学生大会」(8月13、14日)
新設、第1回はラグビースクールの部、中学校の部に
関東、関西、九州の3地域協会が推薦する計8チームが参加。

規模は小さいが、主催の日本ラグビー協会は、
来年以降はチーム数を増やす意向。
中学の指導者の間では、「チーム数が増え、高校ラグビーの『花園』の
ようになれば選手の励みになる」と期待感は大きい。

19年ラグビー・ワールドカップ(W杯)の国内初開催に向け、
日本協会は底辺の拡大を図っている。
中学年代の充実は長年の懸案だが、ラグビーは
日本中学校体育連盟には準加盟で、全国大会は年末に
大阪・花園で開催する「選抜チーム」の全国ジュニア大会しかなかった。

日本ラグビー協会競技力向上・普及担当の前田嘉昭理事は、
「単独チームの目標となる全国大会を作ることで、
中学校の部活動を活性化させたい」と力を込める。

今年から、中学校とスクールの複数チームに選手登録することも可能にし、
活動しやすいように配慮。

09年度の全国のラグビー人口は、3416チーム、11万4741人。
少子化などの影響で、94年度の16万6978人をピークに
減少の一途をたどっている。

小学生が中心のラグビースクールは約2万6800人、高校は約3万人、
間をつなぐ中学校は7000人余りで、競技離れが懸念。

ラグビースクールが盛んな九州では、約3分の2のスクールで
中学生も指導するが、競技の普及にはやはり部活動が欠かせない。
安全面への懸念、技術指導の専門性などを理由に、指導者が不足。
強化、普及の両面で、中学年代に溝ができる要因だ。

指導者不足に対し、公立の中高一貫校が一定の成果を上げている。
99年度から、全国で本格導入された中高一貫校は、
99年度の4校から09年度には370校に拡大、存在感を増した。

東京・千代田区立九段中等教育学校もその一つで、
既存の九段中と九段高を母体に、06年度から6年制に移行。

九段では07年春、高校ラグビー経験者で後期課程(高校)担当教諭の
松岡孝さん(39)が赴任、中学年代のラグビー部もできた。
松岡さんは中学、高校年代の合同練習を通して、部員を一貫指導。
中学年代の指導者不足を補った形。
今春から加わった前期課程(中学)担当教諭の指導者とも連携しつつ、
松岡さんは、「6年間統一した形で部員を指導できる」とメリット。

現部員は中学年代11、高校年代6の計17人。
安全面を考慮し、スクラムなどは一緒に行わないが、
ほとんどの練習を合同で行う。
中学チーム主将の山本敬介君(3年)は、
「体を当てる時の強さを身に着けられるし1段、2段上のレベルで練習できる」

5月の東京都春季大会2部トーナメントでは、
他の中学との合同チームで3位に入り、結果もついてきた。
他県では、花園常連校の香川・高松北高と連携する高松北中も、
高校指導者のサポートで下地を築き、07年にラグビー部を発足。

中高一貫校の数は、全国約1万の中学校総数からみれば、ごく一部。
高校の指導者や選手と効果的に協力関係を築くことは、
中学生の競技環境を整備するヒントになるかもしれない。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/news/20100716ddm035050056000c.html

ローソンが共同店舗 ドラッグストアと提携進む

(2010年7月15日 共同通信社)

ローソンは、ドラッグストア最大手の
マツモトキヨシホールディングスと共同で運営する新型店舗を、
17日に千葉県浦安市にオープンする。
顧客利便性を高め、集客力につなげるのが狙い。

セブン-イレブン・ジャパンも既に、調剤薬局大手
アインファーマシーズ(札幌市)と共同出店するなど、
コンビニとドラッグストアを融合した新しい店舗の導入が相次いでいる。

ローソンは、「マツモトキヨシ」浦安東野店を改装し、店舗の一部に
弁当や生鮮食品を扱う「ローソンストア 100」を展開。
営業時間は、ローソンが24時間、マツモトキヨシが10時~24時。
2012年2月末までに、共同運営店舗を、東京を中心に
100店展開する方針。

セブンは09年8月、名古屋市でドラッグストアを併設した店舗をオープン。
ミニストップは、ドラッグストアを展開するタキヤ(尼崎市)などと共同で、
3年間で全国に200店舗の出店を計画。

サークルKサンクスも09年12月、「セガミ」、「セイジョー」を運営する
ドラッグストア大手のココカラファインホールディングス
新型店舗の展開で提携を結ぶと発表。

セブンなど、主要コンビニ大手の10年2月期の営業利益は、
消費不振などを背景に、軒並み減益。
ドラッグストア業界も、一般医薬品の販売を始めたスーパーとの競争が
激しくなっている。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/7/15/122860/

iPhoneで脳画像、出先の医師が手術判断

(2010年7月15日 読売新聞)

iPhoneやiPadなどの高機能携帯電話や情報端末を、
医療現場で活用する動きが広がっている。

慈恵医大病院は今月、脳卒中患者の診断に役立てる
取り組みを始めた。

同病院脳神経外科の高尾洋之医師が、脳のCT画像を
医師のiPhoneに転送し、3D画像で自由に角度を変えて見られる
アプリ(ソフト)を開発。

脳血管のこぶ(動脈瘤)の形状から手術が可能かどうかなど、
自宅や出先にいる医師の意見も聞きながら、迅速な判断ができる。

他の病院でも使えるようなシステム開発のため、
富士フイルムとの共同研究も今月開始。
同科の村山雄一教授は、「医師不足のなか、効率的な医療が可能になり、
患者にも医師にとってもメリットがある」

往診に利用しているケースも。
桜新町アーバンクリニックでは、遠矢純一郎院長ら6人の
医師・看護師がiPhoneを携帯。
患者の自宅からインターネットを通じて、クリニックの診療記録に接続したり、
写真を撮って送ったりできる。

その場で紹介状を作成し、救急搬送先の病院に直接データを
送ることも可能。

患者への説明には、画面の大きなiPadも利用。
医師らが、病院のシステムと結んで検査画像を見ることができる
市販の有料アプリを使っている施設も。
患者の心電図や脈拍、体温などを即時に転送して見ることができる
アプリや、救急や薬の手引書などのアプリも販売。

日本で現在どれぐらいの施設で導入されているかは不明だが、
医療へのIT活用に詳しい東京医科歯科大の水島洋教授(医療情報学)は、
「医療現場では思いのほか、情報機器の利用が遅れていた。
患者にタッチパネルで問診に答えてもらったり、
動画で説明をしたりなど、様々な応用が期待できる」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/7/15/122877/