2010年12月18日土曜日

タイム・カプセルトーク2010~宇宙から見つめる私たちの地球~(その1)

(毎日 12月14日)

◇EXPO’70のロマン 5000年後への贈り物

1970年、日本万国博覧会(大阪万博)に合わせ、
毎日新聞社とパナソニック(旧松下電器産業)が、
「タイム・カプセルEXPO’70」を企画・製作し、
大阪城公園に埋設してから40年。

その記念事業「タイム・カプセルトーク2010~宇宙から見つめる
私たちの地球~」が、松下IMPホールで開かれた。
トークでは、事業に携わった主役たちが尽きない夢とロマンを語り合った。

特別講演講師の川口淳一郎・宇宙航空研究開発機構(JAXA)教授は、
偉業となった小惑星探査機「はやぶさ」プロジェクトの
苦難の足跡をユーモアたっぷりに語り、会場を沸かせた。
カプセルの次回開封は2100年で、最終開封は6970年。

◇2098点を収納、大阪城公園に埋設

大阪万博当時の記録ビデオ
「5000年に挑むタイム・カプセルEXPO’70」が上映。
71年、大阪城公園に埋設されたカプセルは、
同じものを収納した1、2号機からなる。
内径1m、50万立方センチ容量の特殊ステンレス製。

1号機は5000年保管、2号機は2000年と以後100年ごとに開封。
「技術委員会」に日本を代表する23人の学者、
「選定委員会」には自然科学、社会、芸術分野の学者、
専門家27人が選ばれた。
36カ国632人の有識者アンケート、国内から12万件の提案を受け、
収納品は2098点に絞り込まれた。

ビデオは、いずみたくさんの力強い音楽で進み、
小林清志さんのナレーションでこう結ばれた。
「世界平和の永遠なることを願い、未来に旅立って行きました」
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◇太陽の塔、月の石、最初の人工衛星……

元村 1970年の大阪万博の開催当時、何をしていたか?

川口 中学3年生だった。万博には行ってないが、
印象に一番強く残ったのは、岡本太郎さんの太陽の塔と月の石。
69年、アポロの月着陸の実況中継を見た翌年で、
「これがアメリカだ」という時代。
70年が印象深いのは、日本の最初の人工衛星がやっと飛んだこと。

元村 当時から宇宙に関心を?

川口 関心はずっと持っていたが、78年に大学院に進むとき、
初めて宇宙をさわってみようと思った。
81年、最初のスペースシャトルが飛ぶと予告され、
ロケットが消えると言われていた。
日本の宇宙開発は、とんでもなく遅れていたが、
研究するなら最後のチャンスだと思った。

吉田 私も中学3年生。ボーイスカウトに入り、
(万博会場内の)お祭り広場で、手旗信号ショーに出演。
会場の跡地にできた国立民族学博物館(民博)で働いているのは、
不思議な縁。
私の研究のベースは、文化人類学。
アフリカで30年来フィールドワークをしてきて、
アフリカの古い資料を見ておきたいと、
90年にロンドンの大英博物館に客員研究員で行った。
圧倒的な収蔵物を見て、「人間はどうして物を集めるんだろう」という
素朴な疑問がわき、博物館学を研究するようになった。

元村 吉田さんは、国際タイムカプセル学会のメンバー。

吉田 大英博物館で、ブライアン・ダランズという、
当時、民族誌部門の副部長が、タイムカプセルの研究をしていると。
「けったいなやっちゃなー」と思ったが、タイムカプセルは未来の観客を
想定した博物館。
学会は、私が5人目の会員。
その学会を基盤に、タイム・カプセルEXPO’70の2号機を開封した
2000年に国際シンポジウムを民博で開いた。
タイムカプセルをテーマにした唯一の国際シンポ。

大村 大学を卒業して会社に入った年。
35年間、ずっと(部品や装置の)分析をやった。
当時、半導体が脚光を浴び、カラーテレビがIC化された頃。
エアコン(クーラー)が世の中に出始め、それから自動車。
「3C」と言われた時代。
分析も、いろんな面で役に立った。

八木 万博の取材班キャップで、1年半ほど前に担当に。
タイムカプセルも(デスクに)、「早く取材して書け」と言われたけど、
「(開封は)5000年後って、ふざけたことを言うな」と(笑い)。
ぶつぶつ言いながら通ううちに、のめりこんで愛着が。
カプセルはお釜みたいな形で、仲間内では「釜」と呼んでいた。
「きょうは、あんたどこへ行くんや」と聞かれ、
「釜の委員会や」(笑い)。
実行委員の最末端に名前を連ね、36歳で一番若い委員。

元村 各国の著名人へのアンケートと、公募で集まった12万点もの
候補の中から、どうやって2098点の収納品を選んだのか?

八木 選定委員会を作って、自然科学、社会、芸術の三つの委員会に
分かれて、そりゃ大変だった。
一番印象に残っているのは、「人間の精子を入れろ」と。
それを検討する委員会で、茅(誠司・当時の日本学術振興会会長)先生は
「俺は自信ない」と(笑い)。
ふと顔を上げたら、みんながぼくの顔を見てる。
「あれが一番若い」言うて。
でも、膨大な装置が必要だということになって、ぱあになった。

元村 埋設場所が決まるまでに、議論があったのか?

八木 最初は、宇宙空間に飛び出せとか。
当時は開発ブームで、変なところに埋めたら掘り返されてしまうと。
(歴史家の)奈良本辰也先生がおっしゃったのが、
「史跡が一番いい」と。
それで大阪城公園がええじゃないかとなった。
大阪市経済局が管理していて、交渉は難儀した。

元村 この事業にいくらかかったのか?
ずっと秘密だったらしいが、八木さんだったら教えてくれるかなと。

八木 松下電器さんははっきり言わない。
半分冗談で換算してみると、今の貨幣価値で50億円くらい。
今作るとしたら、とても蓮舫さんは承知してくれませんわな(笑い)。

元村 究極のメセナ(企業の芸術文化支援活動)。
EXPO’70の後、タイムカプセルのブームが起きたと聞くが。

吉田 小学校の卒業式で埋めたものまで含めると、
日本は世界最大のタイムカプセル大国(笑い)。

元村 外国では、タイムカプセルはメジャーではないのか?

吉田 タイムカプセルという言葉は、1938年から39年にかけて
開かれたニューヨーク万博で初めて登場。
総合電機会社のウェスティングハウス社が、タイムカプセルと名づけ、
開封時期は6938年を想定、地下に埋めたのが始まり。

これには先行モデルがあった。
1936年、実質的に世界で最初のタイムカプセルと言われるのが、
米国アトランタのオグルトープ大学に設けられた「文明の地下室」。
当時、大学の理事だったソンウェル・ジェイコブズの発案、
25mプールぐらいの大きさ。
マイクロフィルム化された資料やニュース映画、ドナルドダックの人形
などが納められ、8113年まで開封されないことに。
エジプト暦ができたとされるBC4241年から、
地下室を設けるまでの6177年と、同じ年数が経過した時点として算出。

ジェイコブズが発想したのは、関東大震災が契機。
直後、ウェスティングハウス社がカプセルを作った。
背景には、関東大震災と、第一次世界大戦を経験し、
世界全体の破滅への予感というものが具体的に感じられた。

70年万博のタイムカプセルのすごいところは、
保存技術と開封のシステム。
カプセルが二つあり、一つは100年ごとに開ける。
100年なら何とか、埋まっていることも記憶されているだろうと。
今もって、最も遠い未来まで実際に保存できる可能性を持った
唯一のタイムカプセル、タイムカプセル史に残る金字塔だ。
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◇背伸びしてつかんだ夢
--JAXAはやぶさプロジェクト・マネジャー、川口淳一郎さん特別講演

はやぶさについて11月16日、イトカワ起源の1500個の微粒子を
発見したと発表。
アルミニウム粒子と一緒に見つかったかんらん石や輝石が、
イトカワ起源の地球外物質と確認された。
太陽系や地球の起源を解く手がかりになる、画期的な成果。

はやぶさは03年に打ち上げられ、05年9月イトカワに着いた。
滞在の間に5回、表面に向け高度を下げ、最後の2回は着陸し、
試料採取を試みた。
07年6月、帰還予定だが、燃料漏れが起き、3年間延期した。

目指したのは、目的地から試料を持ち帰る
「サンプルリターン」技術の実証。
サンプルリターンには、(1)イオンエンジン、(2)ロボット機能、
(3)試料の採取方法、(4)カプセルの技術、(5)スイングバイ
(地球の重力で軌道の方向を変える技術)の5大技術要素。

はやぶさ本体の下には、試料を採取するための筒が付いて、
弾丸を撃ち、跳ね返ってきた破片を受け止める仕組み。
採取できれば、兵庫県の「スプリング8(大型放射光施設)」など、
大掛かりな装置で分析でき、保管しておけば、
50年後に最新技術で再分析できる。
そのために必要なのが5大要素。

小惑星サンプルリターン計画は、25年前から目指していた。
わが国初の人工衛星が上がった70年に開かれた大阪万博の目玉は、
前年にアポロが採取した月の石、すごいギャップ。
NASAは、われわれの数十倍の予算規模で、
何万人というスタッフがいる。
オリジナリティーを発揮するには、NASAもためらうような計画でないと。
はやぶさ計画も当初は、はったりだった。

イトカワ着陸のため、最終的に必要とした精度は、1cm毎秒。
アリの歩くような速さを、3億kmかなたで制御する必要。
表面は凸凹が激しく、着陸できる場所はわずか。
少しの誤差も許されない。
最初の3回は、誘導制御に失敗、タイムリミットまで1週間に迫ったとき、
思いもよらぬ方法を取った。

それまで、完全自動化した計算機処理で、高精度な計算を目指していた。
その処理に、あえて人間を入れたことが劇的な成果を生んだ。
人間のある種特別な能力が、爆発的な高速化につながった。
経験や所属を問わず、良い意見を直ちに評価にかけたことが功を奏した。
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◇はやぶさ

軽自動車の半分程度の大きさで、画像などを使った自律航行と
小惑星への接近・着陸、ほとんど重力のない環境での試料採取、
カプセルを大気圏に突入させての回収など、人類初の技術を多数実証。

◇イトカワ

地球と火星の間の軌道を回る、最大直径約540mの小惑星。
米国の研究所が1998年に発見、はやぶさ打ち上げ後、
日本のロケットの父、故糸川英夫博士にちなみ名付けられた。
重力は地球の10万分の1程度、12時間周期で自転。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2010/12/14/20101214ddm010040187000c.html

教員の時間外勤務、実態把握へ 県教委が来年度から

(岩手日報 12月7日)

県教委は来年度から、市町村教委の協力を得て、
公立小、中、高校の教員の時間外勤務の実態把握に乗り出す。
全教員を対象に、時間外勤務記録簿の記入を求めて集計し、
県教委が分析する。
教員の多忙化が問題視される中、時間外勤務は年々増加。
実態を明らかにし、多忙化解消や各職場での仕事の効率化、
精神疾患の原因解明などを目指す。

県教委が、県議会商工文教委員会で示した。
時間外勤務記録簿の記入は、職場のパソコンを使用する予定。
各教員が授業準備や学校行事、保護者対応などの業務分類と
超過時間を記入し、一人一人の結果を1カ月ごとに集計する仕組み。

県教委は、結果をまとめて教員の勤務実態を把握。
時間外勤務の内容や地区ごとの傾向などを詳しく分析する。
多忙化の解消に加え、増加傾向にある精神疾患の
原因解明にもつなげる考え。

岩教組(豊巻浩也委員長)が、2010年9月上旬に行った
勤務実態調査(小中58校を抽出)によると、1週間当たりの
時間外労働(時間外勤務と持ち帰り仕事)は、
小学校が14時間32分、中学校は20時間3分。
いずれも昨年度より増加、多忙化の実態が明らかになった。

時間外労働で行った業務で多いのは、
▽授業の準備
▽校務の担当
▽部活動指導―など。

現場からは、「多忙化に拍車が掛かっている」、
「退勤時間は名ばかりで、その時間に帰れることはない」などの声。

県教委は毎年度、小、中学校抽出による時間外勤務を調査、
高校を含めて取り組むのは初の試み。
県教委教職員課の及川伸一総括課長は、
「多忙化の解消、業務の改善につながるように、
現場の先生たちと一緒に努力していきたい」

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20101207_4

2010年12月17日金曜日

スポーツ政策を考える:広畑成志・日本共産党スポーツ委員会責任者

(毎日 12月11日)

日本共産党は、「国民が主人公」となる社会の実現を目指す中、
スポーツを国民の権利と位置づけている。

スポーツは、国民が保障されるべき活動であり、
国づくりにスポーツは欠かせない。
今後、スポーツ団体と関係者および政府、他党との討論や
意見交流を通して、人間の諸能力の開花を促すスポーツの
多面的な発展につながるような政策の形成にかかわっていきたい。

文部科学省のスポーツ立国戦略は、
「スポーツを通じて、幸福で豊かな生活を実現することは、
全ての人々に保障されるべき権利の一つ」としている。

スポーツすることを、初めて権利として認めた文言で、
国際的な水準の方向に一歩踏み出したものと言える。

しかし、スポーツの権利は、国民の自由な活動を確保するため、
基本的人権を構成する思想信条の自由と結社・表現・集会などの
自由を包み込んだものであるにもかかわらず、
今回の立国戦略では、自己展開を含めて不十分で、
まだ据わりきっていない。

自由で自主的な活動であるスポーツを擁護し、どう発展させていくか?
そのために政治は何をなすべきか?
モスクワ五輪ボイコット時のような政治的介入ではなく、
スポーツ施設の拡充、充実、指導者の配置、競技者の活動保障などの
環境整備を財政的に支援するのが政治の役割であり、責任でもある。

長引く経済不況の中、雇用が不安定になって余暇時間が削られている。
経済格差も進んで、スポーツをしたいけどできないという問題が生じている。
スポーツを楽しめる自由な時間を国民が確保でき、
社会的サービスとして国民が無理なく適切な費用で楽しめるような条件を
整備していくことが非常に大事だ。

文科省の来年度のスポーツ関連予算の概算要求は、約238億円。

今年度より10億円ほど多いが、それでも先進国の中では極めて少なく、
スポーツ立国戦略を公表した直後の予算としても、さみしい金額だ。
これでは、スポーツに対する低い位置づけや貧しい枠組みを
変えることは難しい。
そこから脱し、社会のニーズに見合った予算を獲得することが
求められている。

広州アジア大会を視察した。
卓球の福原愛選手は、インタビューに中国語で答え、
地元ファンに笑顔で手を振っていた。
他の国の人たちと自然体で交流している姿を見て、ステキだと感じた。
彼女が、国際的な大会で力を発揮できるのは、
インターナショナルなセンスがあるから。

そういうセンスを育んでいけば、対戦相手をメダル争いの敵ではなく、
ライバルとして尊重する発想が生まれてくるのではないか。
そんな点も、21世紀のスポーツマン像を論じ合ううえで必要になる。
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◇ひろはた・せいじ

1944年生まれ。東京教育大卒。日体大大学院修了。
大学講師などを経て、スポーツ研究者として活動。
著書に「終戦のラストゲーム」。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/general/archive/news/2010/12/11/20101211dde035070033000c.html

水ビジネスの海外展開目指す『ウォータープラザ』完成

(サイエンスポータル 2010年12月15日)

世界の水・エネルギー問題の解決と水ビジネスの海外展開を目指す
国内初の「ウォータープラザ」が北九州市に完成。

ウォータープラザを建設したのは、
新エネルギー・産業技術総合開発機構の委託を受けた
「海外水循環ソリューション技術研究組合」
(日立プラントテクノロジーと東レが3月に設立)。

施設は、国内最大規模の海水淡水化と下水再利用の機能を持ち、
省エネ・低環境負荷・低コスト型造水システムの運営実証を行う
「デモプラント」と、多様な水処理機器を試験できる「テストベッド」から成る。

日本は、東京都水道局が3.3%という世界一低い漏水率を
達成しているように、優れた水システムを持つ。
排水処理に必要な膜技術でも世界をリードし、
都市の水再利用が盛んだ。

「ウォータープラザ」は、自治体、国、企業が連携し、
総合的な水処理技術に関する運営ノウハウを蓄積、研究開発する
モデルケースになる、と新エネルギー・産業技術総合開発機構は期待。

http://www.scienceportal.jp/news/daily/1012/1012151.html

新生児対応で学会最高賞 県立大船渡病院

(岩手日報 12月7日)

大船渡市の県立大船渡病院(八島良幸院長)の小児科チームは、
作成困難とされる新生児のクリニカルパス(診療計画表)を
導入して、成果を挙げている。

同パスは、治療や検査、看護などの内容やスケジュールの一覧表で、
患者の理解を助ける。
新生児の状況に応じた細かい組み合わせパターンを構築し、
全国学会で最優秀賞を受けた。
赤ちゃんの命を守るシステムとして、全国への波及が期待。

「クリニカルパス」は、患者用と医療スタッフ用があり、
入院指導や検査、退院指導などをスケジュール表のようにまとめたもの。
▽医師によって対応が異ならない「医療の標準化」、
▽過剰診療や医療過誤を防ぐ「業務効率化」、
▽患者への説明の充実―などの
効果があるとして、全国的に導入が進む。

小児科、特に新生児の同パス作成は困難とされてきた。
パスは、入院から退院までを一覧表にした形が一般的。
新生児は、出生時の体重や状況が異なり、さまざまな病状があるため、
一括作成が難しく、諦める場合が多かった。

「行き当たりばったり」な診療は、現場や患者が負担を強いられる。
同病院小児科は、2008年3月から一括ではなく、
状況に応じて、細かく短期間のパスを組み合わせる方法を導入。

まず、出生後4時間で、「保育器に入る場合」、「新生児室に入る場合」
などに分類。
過程をチャート表にし、状況や段階ごとに必要なケア、
投薬方法を設定したパスを作成。

2年間で1297例を対象に実践。
適切な治療方針の構築や過剰診療防止、業務効率向上が図られ、
「マニュアル」的な機能を十分に果たした。

成果は、第11回日本クリニカルパス学会で発表。
全国524件から、最高賞の最優秀賞に輝いた。
同様の取り組みは、これまで発表されていない。

大津修小児科長は、「新生児にも、ある程度の共通項があり、
作成できない訳はないと取り組んだ。
全国で参考にしてもらい、より良いものに発展できればいい」

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20101207_13

アクチン繊維 生成の仕組み解明 世界初、千葉大・遠藤教授の研究班

(2010年12月10日 毎日新聞社)

筋肉の収縮運動に必要な「アクチン繊維」が、
細胞内で作られる仕組みを、千葉大大学院理学研究科の
遠藤剛教授(55)の研究グループが、世界で初めて解明。
10日、米科学誌「サイエンス」に掲載。

研究結果は、遺伝子異常による筋疾患や、心肥大、心筋症の
画期的な治療法の糸口になる可能性があるとして注目。

アクチンは、「ネブリン」という1umの直線状のたんぱく質に沿って作られる。
遠藤教授らは、このネブリンの端に特定のたんぱく質が結合するのを
きっかけに、長さの同じアクチンが作られ始めることを実験で突き止めた。

筋肉の収縮は、手足を動かすとともに、呼吸や心臓の動きを担っており、
生命維持に直接かかわる。
アクチンができる仕組みは、筋肉の再生や筋肉が大きくなることにも
必要であることが研究で分かった。

5万人に1人の割合で起こる筋疾患「ネマリンミオパチー」は、
重症だと呼吸障害や嚥下障害で、1歳未満で死亡してしまう。
遠藤教授によると、ネブリンを作る遺伝子の異常で起こる場合が多く、
ネブリンが不完全なためアクチン繊維も不ぞろいになり、
筋肉の収縮がうまく起こらない可能性がある。

遠藤教授は、「今後、同じような仕組みが心筋でも働くか実験し、
心肥大につながるかを調べたい」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/12/10/129633/

2010年12月16日木曜日

鳥類の新たな遺伝資源保存・復元法開発

(サイエンスポータル 2010年12月14日)

地鶏や絶滅の恐れがある貴重な鳥類の効率的な保存・復元を
可能にするユニークな方法を、農業・食品産業技術総合研究機構
畜産草地研究所と信州大学農学部の研究チームが開発。

貴重な胚を使い捨てにすることなく、始原生殖細胞だけを取り出し、
凍結保存できるのが、最大の特長。
岐阜地鶏の胚から取り出した始原生殖細胞を、
実際に代理親である白色レグホンの胚に移植し、
岐阜地鶏を復元することに成功。

この方法は、鶏以外の家禽や、絶滅危惧種などの希少鳥類へ
応用することが可能で、新たな遺伝資源の保存法として
生物多様性の維持に貢献することが期待できる。

始原生殖細胞は、精子あるいは卵子の元になる細胞。
胚発生の極めて初期にのみ存在する。
研究チームは、始原生殖細胞が発生の一時期に血流中を循環する、
という鳥類に特徴的な性質に着目し、
ふ卵中の受精卵を割って、発生中の胚を取り出す従来の方法に
よらない貴重な遺伝資源の保存・復元法を実現。

http://www.scienceportal.jp/news/daily/1012/1012141.html

中1虫歯、最少の1・29本 26年前の3割以下に

(2010年12月10日 共同通信社)

中学1年生(12歳)1人当たりの永久歯の虫歯本数は、
処置済みを含め、前年度より0・11本減の平均1・29本で、
過去最少を更新したことが、
文部科学省の2010年度学校保健統計調査(速報値)で分かった。

中1のみを対象とする本数調査を始めた1984年度(4・75本)の
3割以下の値。
本数は、90年度を除き減り続け、文科省は
「学校歯科医による歯磨き指導などの効果ではないか」

虫歯がある子どもの割合の推移を、80年度と今回で比較すると、
幼稚園は87%から46%、小学生が94%から60%、
中学生が94%から51%、高校生が96%から60%にそれぞれ減少。

年齢別では、8歳と9歳が最多で66%、17歳64%、7歳61%、
10歳と16歳60%、15歳56%などの順。

今年4~6月、幼稚園児と小中高校生の計約340万人を対象に調査。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/12/10/129612/

リハビリ機能集約求める 県立療育センター移転計画

(岩手日報 12月5日)

盛岡市の県立療育センターの移転・新築をめぐって、
障害者団体などから、いわてリハビリテーションセンター(雫石町)の
機能を集約した総合リハビリセンターとしての整備を
求める声が上がっている。

県は財政難から、現時点でリハビリセンターの移転までは
難しいとの考えだが、本年度内に有識者懇談会を立ち上げ、
本県の総合リハビリ体制の在り方を検討。
財政面と折り合いをつけながら、利用者ニーズに合った支援体制を
どう構築できるのか?

県立療育センターは、病院や学校を併設した肢体不自由児の
入所・通所施設と、障害者の生活や身体機能の訓練、
就労支援を行う自立支援施設などがある。

施設は、築50年以上経過し、老朽化している部分もあり、
県は、▽盛岡市の旧盛岡短大跡地、
▽矢巾町の岩手医大付属病院移転予定地付近―
などを候補地として移転・新築する計画。

新たな療育センターは、超重症心身障害児の入所施設を整備するなど、
障害児療育の拠点として機能を強化。
整備費は、数十億円と見込まれる。

障害者団体などからは、移転を機に、療育センターとリハビリセンターの
機能を集約させ、医療と訓練相談、自立支援までを1カ所で行う
「総合リハビリテーションセンター」としての整備を求める声。

事故や病気で障害を負った人の中には、社会復帰を望む人も多い。
現在、専門施設が盛岡と雫石に分散しているため、
社会復帰まで継続してサポートする体制が課題。

もりおか障害者自立支援プラザの大信田康統所長は、
「訓練後から社会復帰に至るまでの支援が途切れ、
在宅にならざるを得ない人もいる。
治療から社会復帰まで、一貫した流れをつくるための施設が必要

県は、厳しい財政状況も踏まえて、療育センターの移転に合わせた
リハビリセンターの移転・集約は難しいとの姿勢。
医師や障害者団体の関係者らで構成する有識者懇談会を設立し、
療育センターとリハビリセンター、県福祉総合相談センター(盛岡市)の
連携などを検討。

県保健福祉部の千葉茂樹部長は、
「本県の総合リハビリ体制については今後、議論を進める。
まずは、ソフト面の連携を強化し、機能を充実させたい」

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20101205_7

減塩メニュー広めよう 新潟県やニューヨーク市、英国で先進的な活動

(2010年12月9日 毎日新聞社)

日本人の塩分摂取量は、依然として多い。
過剰摂取は高血圧を招き脳卒中、心筋梗塞、胃がんなどの
原因となるため、減塩メニューの普及に乗り出す自治体も現れた。
海外では、食品メーカーや外食産業の取り組みも始まっている。

荒川規矩男・日本高血圧協会理事長(福岡大名誉教授)によると、
高血圧になる人は、食塩の摂取が少ない民族ほど少なく、
塩を使った加工食品をたくさん食べる文明国に多い。
日本では、群馬県や秋田県に多い。

日本人の成人の1日あたりの塩分平均摂取量は約11g(08年)。
厚生労働省は、「男性9g未満、女性7・5g未満」を推奨、
日本高血圧学会は、さらに少ない「6g未満」を提唱。
荒川さんは、「減塩食を広めれば、高血圧は確実に少なくなる」

新潟県は、昨年度から「にいがた減塩ルネサンス」を始めた。
県民の塩分摂取量は、全国平均よりやや高い11・5g。
塩分摂取と関係する胃がんの死亡率は、全国でワースト4位、
脳卒中死亡率もワースト7位。

汚名返上を狙って、「食塩1日1g減」を目標に、
モデル企業と保健所が連携した社員食堂の減塩メニュー開発や、
家庭・レストランでの減塩料理の普及に取り組んでいる。
プロ、アマを問わず参加できる減塩料理コンクールを開いており、
その入賞作品をまとめた「受賞作品レシピブック」は好評。

昨年のコンクールで優秀賞を受賞した「かづや食堂」(十日町市)の
「焼き野菜と白身魚の甘酢ジュレ」は、
同店の定食メニュー(750円)として人気。
考案した経営者の根津勝治さん(70)は、
「濃いめのだし汁と甘酢を使い、食塩の使用を0・9gに抑えた」

モデル企業の一つ、東京電力柏崎刈羽原子力発電所では、
社員食堂のみそ汁の食塩を、1杯1・5gから1gに減らしている。
カロリーの少ない野菜たっぷりの減塩ヘルシーメニューも開発し、
メタボリック症候群になりそうな肥満気味の男性20人に、
半年間毎昼食べてもらったところ、7人が体重を減らすことに成功。

同社の取り組みに協力する柏崎保健所管理栄養士の
鈴木一恵さんは、「ダイエットに成功した人たちは、減塩をきっかけに
1日1万歩以上歩くなど、健康への意識が高まったようだ」

社員食堂や家庭で、塩分を減らすだけでは十分とはいえない。
血圧に詳しい木村玄次郎・名古屋市立大大学院教授によると、
日本人が1日に取る塩分の約8割は、加工食品や外食が占める。
「加工食品の塩分を1割減らしても、味覚に影響することはほとんどない。
食品企業や外食産業が、足並みをそろえて減塩に取り組めば、
大きな成果が期待できる」

海外では、先進的な減塩活動が進んできた。

ニューヨーク市は今年1月、市民の塩分摂取量を、
今後5年間で2割減らす活動を始めた。
レストランに協力を呼びかけ、メニューに含まれる塩分を、
5年間で25%減らすよう求めているほか、スーパーには減塩ハムや
薄味ポテトチップス、塩分の少ないトマトケチャップが登場。

英国政府も6月、今後15年間で1日3g以下にするとの目標。
既に減塩のピザやフライドポテトも出ている。
海外の減塩事情にも詳しい荒川さんは、
「日本政府や自治体は、こうした国々や新潟県を見習ってはどうか」

新潟県は、減塩料理コンクールの「受賞作品レシピブック」(09年)を
希望者に配布(送料別)。先着100人。
問い合わせは、県健康対策課(電話025・280・5198、ファクス025・285・8757)。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/12/9/129567/

2010年12月15日水曜日

総合学習を生かす(14)教師も鍛える真剣勝負

(読売 12月11日)

「アンキョ(暗渠)ってどんな意味か、記者さん知ってるかな」と、
先生が突然聞いてきた。
僕たち知ってるよ、と39人の視線がこちらに刺さってくる。

東京学芸大学付属世田谷小学校の2年2組。
総合学習の授業「呑川たんけん」で、子どもたちは、航空地図で
学校を見て、川に関心を持ち、「呑川緑道」の地下に
水が流れていることを発見してきた。

「キョってなあに?」との記者の質問に、ある子が
「漢字のほうが意味わかるかも」とつぶやくと、
先生が辞書を引いて、黒板に書いた。
「さんずいに意味がある!」、「水専用の道!」、「すいろ!」、
次々に声があがる。

「知りたい」というエンジンに火がついた子どもたちは、実に積極的。
このクラスは、共通の問いが生まれると、「学習問題」と呼び、
ノートに赤い印をつけるルールがある。
ネットや本で調べたり、両親と探検したりした情報が持ち寄られ、
次の時間には、別の「はてな?」に発展していく。

「子どもたちが今後、世の中で出会うことが、
みんな面白く見えてくれば大成功」、担任の鈴木聡教諭(43)は、
同小14年目のベテラン。
同小の総合研究部長でもある。

駆け出し時代は、指導案通りに授業ができると達成感を感じた
時期もあったが、経験を積んだ今、
「指導案からずれる瞬間こそ、教師の勝負どころ」との思いが強まり、
総合学習の面白さが増した。

同小は20年前、低学年で教科の垣根を外し、
総合的に学ぶ自由度の高いカリキュラムを導入。
担任と子どもの話し合いで学習を計画し、時間割を変える。

低学年こそ、生活に根ざした総合的な学習が必要と考えた
挑戦的な取り組みだったが、実践を経て徐々に変化。
総合学習のよさは認めつつ、低学年でも、
「計算や漢字の基礎など、最低限の知識の確認は必要」との
方向性は定まりつつある。

鈴木教諭は、「総合の授業力は、すべての教科に通じる」と考えている。
子どものつぶやき、ノートの変化を見逃さない注意深さ、
臨機応変さが鍛えられるからだ。

同小は、教員養成大学から年間約130人の実習生を受け入れる
「養成所」の役割も持つ。
若い先生には、総合は重荷になりがちだが、藤田留三丸副校長(55)は、
「子どもと一緒に、山を乗り越える喜びが味わえるからこそ、
教師も挑戦しがいがある」

子どもたちと作る一期一会の真剣勝負が、先生の力も育んでいる。

◎学芸大付属世田谷小の総合学習のテーマ例

▽「あみものにちょうせん」(1年)、
▽「ミュージカルをつくろう」(1、2年)、
▽「木の家をつくろう」、「クラスの映画づくり」(4年)、
▽「お米作りに挑戦」、「土器を作ろう」(5年)、
▽「アライグマを育てる」(5、6年)

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20101211-OYT8T00177.htm

「50年来の夢かなった」、「自由に使ってください」 根岸、鈴木氏が記念講演

(2010年12月9日 共同通信社)

有機化合物の画期的な合成方法に関する研究で、
ノーベル化学賞を受賞する根岸英一・米パデュー大特別教授(75)と
鈴木章・北海道大名誉教授(80)が、
ストックホルム大の講堂で記念講演を行った。

「50年来の夢がかなった」と切り出した根岸さんは、
自らの研究が効率よい物づくりを通じて、
「グリーンな(環境に調和した)化学につながる」と強調。

鈴木さんも、「私は特許を取っていない。
興味を持ったらご自由に使ってください」と、
研究を社会に役立てたい希望を語った。

記念講演は、授賞式を前に、受賞者自らが成果を紹介する
ノーベル賞の恒例行事。

根岸さんは、「遷移金属の不思議な力-過去、現在、そして未来」
題した講演で、授賞理由にもなった、パラジウムが触媒の
クロスカップリング反応について解説。

天井や飾りの花、客席を指さしながら、
「木も花も人間も、ほとんど有機化合物でできている」と
研究の重要性を指摘。

留学時代に実験が苦手で悩んだことが、その後の成功につながったと
振り返る一方、反応を促す金属の触媒や元素を検討し、
さまざまな組み合わせの化学合成を実現した実績を強調。
壇上を動き回り、身ぶり手ぶりで聴衆に訴えた。

鈴木さんも、「有機ホウ素化合物のクロスカップリング反応-炭素と
炭素を結び付ける簡単な方法」との題で、
自ら開発した「鈴木カップリング」を解説。
狙った構造の物質をつくりやすいなどの特徴を示した。

米ハーバード大の日本人研究者が、
最も複雑な有機化合物として知られる天然毒の人工合成に成功した際、
最終段階で鈴木カップリングが使われたことや、
世界で2200万人が利用する血圧降下剤、農薬、液晶の製造にも
広く利用されていると紹介。

この日は2人に先立ち、
共同受賞のリチャード・ヘック米デラウェア大名誉教授(79)が講演。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/12/9/129543/

虫歯と歯周病菌99・99%死滅…東北大新手法

(2010年12月9日 読売新聞)

虫歯や歯周病などの原因菌を、ほぼ死滅させられる新たな殺菌法を、
東北大大学院歯学研究科の菅野太郎助教らのチームが開発。

治療機器の開発も進められ、画期的な治療法が数年以内に
実用化できるとの期待が高まっている。
米国の代表的な薬学雑誌12月号に掲載。

菅野助教らは、虫歯菌や歯周病菌など4種類の口腔内細菌と
過酸化水素の水溶液に、目に見える波長のレーザー光を照射。
強い殺菌作用のある物質「活性酸素」の一種を発生させ、
3分以内に99・99%以上の菌を死滅させた。

人体への影響はないとみられ、治療が難しい歯周病の奥深い病巣を
殺菌することなどへの応用が期待。

研究チームは、精密機械製造「リコー光学」(岩手県)などと、
過酸化水素水とレーザー光を同時に出す歯周病用の治療機器の
開発を進めている。
今年度中には動物実験を終え、2011年度以降に臨床研究に入る予定。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/12/9/129580/

岩手医大に最新鋭MRI 認知症やうつ病解明へ

(2010年12月9日 共同通信社)

岩手医大は、国内最高級の性能となる最新鋭の
磁気共鳴画像装置(MRI)を、矢巾キャンパスに導入すると発表。
来年2月から運用を開始、脳卒中や認知症、うつ病などを対象に、
予防や治療に直結する研究に活用。

装置に用いる磁場の強さは7テスラで、病院で医療用に使われる
MRIより、2~5倍精細な画像が得られる。
同性能の装置は、国内では新潟大に続き2例目。

研究は、人だけでなくサルやマウスなどでも実施。
細かな脳の血流などの観察が容易になるほか、
脳神経細胞の機能を調べることも可能で、疾患を早期発見する
新たな検査手法の開発が期待できる。

装置は、米GEヘルスケア製で約10億円。
北海道大や大阪大なども、研究チームに参加する。

小川彰岩手医大学長は、「脳卒中やうつ病の治療例が多い
岩手医大の特徴を生かし、研究成果を世界に発信したい」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/12/9/129545/

2010年12月14日火曜日

総合学習を生かす(13)指導案を例示「質」保つ

(読売 12月10日)

総合学習には教科書がなく、テーマややり方を自由に決められる反面、
授業の進め方に戸惑うことも少なくないが、
愛知県岡崎市には教師向けの“あんちょこ”がある。

市立城北中学校3年4組で行われた総合学習の授業。
テーマは、地球温暖化だ。
広瀬浩司教諭(36)が、計11kgのペットボトルが入ったバッグを
見せながら、「これは、日本国民1人が1日に使うあるものの重さですが、
何でしょう」と質問。

答えは、「日本国民1人当たりの1日のエネルギー消費量を換算した
石油の重さ」。
環境団体が試算したもの。
「エネルギーとは石油やガス、電気などのこと。
生活の中で、エネルギーを消費すれば、二酸化炭素が排出される」

広瀬教諭はこの日、市教育委員会が作成した指導案を活用。
生徒に配ったプリントにある主要8か国の1人当たり
二酸化炭素排出量を表した棒グラフも、
市教委が集めた参考資料から転載した。

市教委は今年度から、環境保全への参加や環境問題に取り組む力を
着けさせようと、市内の公立小中学校に、
年15時間の環境学習を総合学習などで行うよう要請。

小中の9年間で系統立てて学べるよう、学年ごとの学習項目などを
「環境学習プログラム」としてまとめ、指導案や資料、確認テストも
盛り込んで冊子にした。
プログラム作成に携わった一人でもある広瀬教諭は、
「指導案通りに授業をする必要はなく、独自の教材を使ってもいい。
困った時は助けになる」

背景には、総合学習が苦手な教師の存在があった。
市教育研究所の中村公治・所長補佐は、
「総合学習は教科書がなく、どのように授業をすればいいか
困る教師もいる。
教育の質を確保するために、指導案の例示も必要という結論」

兵庫教育大学大学院の佐藤真教授(教育方法学)は、
「学校や教師によって、授業の質に差がある現実を直視し、
市が授業モデルを示したのは評価できる」と語る一方、
「教師が提示された指導案で満足してしまい、
形だけの授業になるのが心配」と懸念。
授業を子どもの実態に合わせないと、
探究力や思考力は決して身に着かないからだ。

市教委は今後も、各学校の実践報告をもとに、
プログラムの検証や良い授業の事例集の作成を行う考え。
授業作りの模索が、自治体ぐるみで続いている。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20101210-OYT8T00334.htm

消化管伸縮の謎解明 便通改善薬開発に期待

(2010年12月8日 共同通信社)

排便を促すため、小腸などの消化管が伸び縮みするメカニズムを
マウス実験で解明したと、自然科学研究機構生理学研究所の
富永真琴教授らが、8日付米科学誌
ジャーナル・オブ・ニューロサイエンス電子版に発表。

便通を良くする医薬品の開発や、消化不良感をもたらす機能性胃腸症の
原因解明などに役立つ可能性がある。

食べた物は、消化管が伸縮を繰り返すことで、
肛門へ押しやられ排便される。
消化管はもともと縮む性質があり、一酸化窒素(NO)が増えると、
筋肉が緩んで伸びることが分かっていたが、詳しいメカニズムは謎。

富永教授らは、小腸などの神経細胞内にあり、温度感知センサーとして
働くタンパク質「TRPV2(トリップブイツー)」の働きを解明。
食べた物が腸に入ってくると働きが活性化し、
細胞の外にあるカルシウムを取り込んで、
NOを合成する酵素の活動を強めることが分かった。

TRPV2の働きを薬で抑えると、消化管は伸びることができなくなった。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/12/8/129495/

インサイド:大河流れて 総集編 アジア大会で見えたもの/5止

(毎日 12月4日)

「高気圧酸素カプセルなどでリラックスできた。
時間があればもっと行きたかった」

広州アジア大会のフェンシング女子エペ団体で、
史上初の金メダルを獲得した中野希望(大垣共立銀行)の感想。

今回のアジア大会から、文部科学省のマルチサポート事業による
強化が本格的に始まった。
目玉の一つが、選手村近くに設置されたマルチサポート・ハウス。
国立スポーツ科学センター(JISS)が高級ホテルを借り切り、
約30人の職員が常駐、選手たちの心身のリフレッシュなどに当たった。

サポートハウスは、日本とほぼ同じ環境を作り出すことが目的。
おにぎりやみそ汁などの和食を提供する食堂や、
マシンを使ったトレーニング施設、1人で思考することのできる
「個室」などが用意。

柔道やレスリングなどは減量に活用し、柔道女子の園田隆二監督は、
「これまでアパートを借りて減量メニューを作っていたが、
カロリー計算までしてくれるので助かる」

JISSによると、期間中、42競技のうち選手村に入った
39競技すべてがサポートハウスを利用し、延べ人数は2552人。
最も多かったのは、肉じゃがやレトルト食品など、
選手村では食べられない日本食を提供する「リカバリーミール」で
2066人が利用。
炭酸浴などのプール、高気圧酸素カプセルも1386人が利用するなど、
「疲労回復」が人気だった。

JISSの河村弘之・研究協力課長は、
「昼から夜まで過ごす選手もおり、ロンドン五輪に向けて
いいトライアルができた」

◆戦略基地の効果低く

ただ、課題も残った。
設置費用は2億~3億円と見込まれ、どこまでが本当に必要な
サポートだったのか、費用に見合った成果があったのかは、
明確に結びつけられない。
リラックスすることが主な利用目的であり、ある選手は
「選手村が街から離れていたため、気分転換ができなかった。
サポートハウスに行けば、時間がつぶせると口コミみたいに広がった」

一方で、勝つために重要な映像分析の利用は216件、
情報関連サービスの活用も59件と低く、
戦略基地としての機能は低かった。

マルチサポート事業で、五輪でのメダル獲得が有望視される
「ターゲット競技」に指定されているのは、夏季は13競技・種目。
今大会では、トライアスロンが男女とも金銀を占め、
セーリングとカヌーでもそれぞれ3個の金を獲得。
陸上や競泳などは、ターゲット競技とされながらも多くの選手が苦戦。

◆五輪へ向けて検証

マルチサポート事業の来年度予算は、
概算段階で今年度の約19億円から大幅に増加、27億円。
一方で、日本オリンピック委員会(JOC)の強化の補助金は
今年度並みにとどまる見込み。

日本選手団長を務めた市原則之・JOC専務理事は、
「どれだけ活用できたのか、競技団体と協議していかなければならない」と
検証するつもり。

日本は、ロンドン五輪の金メダル獲得数で世界5位という目標。
今大会の金メダル争いでは、中国、韓国に前回以上の差をつけられた。
マルチサポートによる強化は本筋ではない、という見方もあるが、
事業は始まっている。
五輪本番まで1年7カ月余りしか残っていない。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/news/20101204ddm035050011000c.html

2010年12月13日月曜日

ワクワク感に伝達物質関与 PETで脳内の受容体研究

(2010年12月8日 共同通信社)

宝くじに当せんするような、低い確率を主観的に高く見積もってしまう
「ワクワク感」や、逆に高い確率を低く見積もる「ハラハラ感」の強さに、
脳内の神経伝達物質ドーパミンが関与していることが、
放射線医学総合研究所などのチームの研究で分かった。
8日付の米科学誌THE JOURNAL OF NEUROSCIENCE電子版に掲載。

確率を、ゆがんだ形で見積もる度合いが強すぎると、
ギャンブルへの依存症などにつながる恐れがある。
チームは、「研究を進め、依存症の客観的な診断や原因の解明、
治療につなげたい」

20~30代の男性を対象、宝くじの当せん確率をどのように
見積もるか検証。
多くの人は、経済理論などで提唱されている通り、
低い当せん確率は高く、高い確率は低く見積もる傾向。

この際、陽電子放射断層撮影装置(PET)を使って、
脳内のドーパミン受容体を調べたところ、
大脳の線条体という部位にある特定の受容体の密度が低い人ほど、
低い確率を高く見積もったり、高い確率を低く見積もったりする

傾向の強さが見られた。

受容体の密度が低い理由は解明されていないが、
遺伝的な原因のほか、生活習慣が影響している可能性も。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/12/8/129494/

伝統医学に"共通言語" WHOが作成へ

(2010年12月7日 共同通信社)

世界保健機関(WHO)は、漢方やはりなどの伝統医学で使われる
病名や施術名などの用語をまとめた「伝統医学国際分類」作成に着手。
伝統医学に関する統計や研究、政策の基礎となる
世界の"共通言語"を作る初の試み。

都内で記者会見した計画の中心メンバーの1人、
慶応大の渡辺賢治漢方医学センター長によると、
伝統医学は世界で多くの人に利用されているが、
どんな治療にどの程度の効果があるかといったデータ収集や評価、
国際的な情報交換が進んでいない。

日中韓を中心とした東アジア起源の伝統医学について、
各国で使われている用語の共通点や相違点を整理。
2014年までに作業を終える見通し。

WHOは、西洋医学について「国際疾病分類(ICD)」という体系を
まとめており、現在は第10版。
15年までに改訂する見込み、伝統医学は第11版に組み入れることを目標。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/12/7/129406/

総合学習を生かす(12)児童の成長 信じて32年

(読売 12月9日)

11月下旬。
ぬかるんだ広場で、子どもたちが長靴を泥だらけにしながら、
子豚の「さな」の体重を量っている。

教室に戻ると、壁に時間割はなく、あるのは
「さなちゃんのたいじゅう」の棒グラフや、カタカナの勉強用に
張り出された「ブタ」、「エサ」、「ワラ」の文字。
長野県伊那市立伊那小学校の1年夏組では、
子豚との生活がすべて教材に。

32年前から、全校で取り組む総合学習の先駆者。

3年間クラス替えをせず、子どもたちが選んだテーマを
時間をかけて発展。
テーマは、低学年は動物の飼育が多く、高学年になると
熱気球作りや五平餅作りなど様々になる。

1年夏組では、いろいろな家畜に親しんだ後、子豚を選んだ。
2学期から飼い始めたが、たびたび脱走し、校舎内で大暴れ。
そこで、子どもたちは、慣れないノコギリやトンカチを握り、
丈夫な柵を作りあげた。

同小では、子どもたちの中から意見や解決策が出てくるのを、
教師がねばり強く待つ。
動物の名前をつけるのに、話し合いが1か月かかったクラスも。
チャボを育てるクラスでは、チャボを怖がった子が
抱けるようになるのを、2か月間見守った。

「先生たちは、祈るような気持ちで子どもを見ている」と武田育夫校長(52)。
根底には、「子どもたちが、自ら成長する力を信じる」という
揺るぎない理念がある。

既成のノウハウが通用しない授業だけに、先生も悩みの連続。
学習指導要領の順番を飛び越えたり、欠けたりするのを補う必要も。
短期的な視点で成果を判断しないのは、
子どもたちが夢中になった活動の達成感の大きさを実感しているから。

2年前、「総合学習30年」を記念して行った卒業生へのアンケートでは、
約70%が、「総合の経験が生き方や進路に影響を与えた」と答えた。
総合学習を経験した卒業生が親になり、
地域全体がよき理解者なのも強み。

毎年2月に開く公開研究会には、全国から約600人もの先生が集まる。
実践をまねるより、子どもと一緒に奮闘し、成長する教師の姿に、
「教師を志した原点に立ち返る」と何度も訪れる人が多い。

マニュアルでは、人は育たない。
先生同士が、子どもを語り合う大切さを発信しつづけることが、
伊那小の使命」と武田校長。
「総合の火をともし続ける」という覚悟と喜びが、学校全体に漂っていた。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20101209-OYT8T00193.htm

インサイド:大河流れて 総集編 アジア大会で見えたもの/4

(毎日 12月3日)

水色のユニホーム姿の選手たちは、
何度も先頭でフィニッシュラインを駆け抜けた。
陸上競技が行われた広州・奥体スタジアムに吹き荒れたインド旋風。
大会終盤の女子1600mリレーで3連覇を果たし、
陸上だけで五つの金メダルを獲得。

象徴的だったのは、女子長距離の躍進。
日本が、過去全6大会でメダルを獲得してきた女子10000mで、
2連覇を狙った国内第一人者の福士加代子(ワコール)は、
インド勢のラストスパートに屈した。

優勝したプリージャ・スリードハランは、5000mでも銀メダル。
10000m銀のカビタ・ラウトも、5000mで3位と、実力は本物。
日本は、中国やアフリカ出身選手が国籍を取得した中東勢を
警戒していたが、インドの強さは全くの想定外。

日本陸連長距離・ロード特別対策委員会の河野匡副委員長は、
「インドの実力は未知数で、正直驚いた。
アジアの経済が発展する中、どの国のレベルも上がっている」と
現実を受け止めた。

スリードハランらを指導するベラルーシ人コーチは、
「インドには、才能豊かな選手があふれている」と自信。
外国人コーチを招いた強化も実ったようだ。

◆政府が多額報奨金

競技別にみると、陸上で11個、ボクシングで9個、射撃で8個の
メダルを獲得、テニス男子ではソムデブ・デブバルマンが
シングルスで初優勝、ダブルスと合わせて2冠。
ゴルフでも、男子団体で銀メダルを手にするなど、
プロスポーツでも実績を残した。

全体では金14、銀17、銅33と、メダル総数は過去最多の計64個。
金メダル数の順位では、前回ドーハ大会の8位(10個)から6位に上昇。
政府は多額の報奨金も用意し、インドメディアによると、
スリードハランは10000mの金メダル獲得で、
12万5000ドル(約1050万円)を得る。

躍進の背景には、10月に初めて自国開催した英連邦大会の存在。
4年に1度のビッグイベントに向けた強化が実り、
金メダル38個を含む、計101個のメダルを獲得。
金メダル数は、オーストラリアに次ぐ2位で、
イングランドやカナダなどを上回った。

◆躍進大国化「手段」に

インドは、伝統的に肉体より精神を重視、
スポーツよりも勉強を優先する価値観が根強い。

インドの社会事情に詳しい亜細亜大非常勤講師の関口真理さんは、
「経済的な成功に見合うように、スポーツも強化すべきだという
意識が強くなった。
スポーツの強さを、一流国の証しととらえている

昨年10月、インドの国際オリンピック委員会委員が、
ニューデリーで24年夏季五輪を開催したい意向を表明。
インドには、主要新興4カ国(BRICs)の中で、ブラジル、ロシア、中国に
五輪開催実績(予定を含む)で取り残された危機感があり、
英連邦大会は、成功をステップに、将来の五輪招致へつなげる思惑も。

大会をめぐっては、巨額の準備資金が不正に使われたとの
汚職疑惑が浮上。
大会経費は、当初見積もりの20倍の約70億ドル(約5880億円)で、
過去最高に膨れあがったとの批判もあり、混乱が続いている。

約12億の人口を背景に、経済的発展を続けるインド。
政府は先月30日、7~9月期の実質国内総生産(GDP)は
前年同期比8・9%増と発表、経済の好調さに陰りはない。
スポーツを大国化の手段として位置づければ、
ひずみが生じる危険性も否定できない。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/news/20101203ddm035050126000c.html

2010年12月12日日曜日

破壊抑え骨粗しょう症治療 阪大、原因細胞遠ざける

(2010年12月7日 共同通信社)

骨を壊す破骨細胞を、骨に近づけないようにして骨の破壊を抑え、
骨粗しょう症を治療することに、大阪大と米国立衛生研究所(NIH)
チームがマウスで成功。
6日付の米医学誌ジャーナル・オブ・エクスペリメンタル・メディシン
(電子版)に掲載。

国内患者が推計1千万人以上とされる骨粗しょう症のほか、
関節リウマチやがんの骨転移など、骨が壊れていく病気の
治療法開発に役立つとして、ヒトへの臨床応用の準備を進めている。

チームは、破骨細胞のもとになる前駆細胞が、
血管から骨へ移動する過程に着目。
「スフィンゴシン1リン酸(S1P)」という脂質が、
この移動を制御することを発見。

S1Pを感知する前駆細胞表面のタンパク質「S1PR2」の働きを抑える
阻害剤をマウスに投与すると、前駆細胞が骨へ移動しないことを、
生きたまま骨の中を観察できる顕微鏡で確かめた。
阻害剤を投与した骨粗しょう症マウスは、
骨の密度が約1・5倍に改善。

現在の主な治療法では、破骨細胞を殺す薬を投与するが、
正常な骨で繰り返されている、古い骨を壊し新しい骨を作る
サイクルのバランスが崩れ、壊死するなどの副作用が問題。

大阪大の石井優准教授は、
「今回の治療法は、無理やり細胞を殺さないので安全で、効果も大きい」

※骨粗しょう症

骨がもろく、折れやすくなる病気。
背中が曲がる原因となり、寝たきりにもつながる。
更年期に、女性ホルモンの一種「エストロゲン」が急激に減少するのが一因、
高齢女性に多い。
65歳以上の約3割、75歳以上では約半数が患っている。
2050年、高齢化がさらに進んで、患者が5千万人を超える可能性、
対策が求められている。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/12/7/129404/

総合学習を生かす(11)郷土の先人に学ぶ志

(読売 12月8日)

盛岡市は朝から激しい雨。
市立厨川小学校の6年生は、計画していた「先人ウォーク」を
泣く泣く延期し、掲げて歩くはずだった「立志隊」と書かれたのぼりを囲んだ。

「天気のいい日に改めて行きましょう。
立志の丘で何を叫ぶか、を心の中で考えておいてね」、
千葉美保教諭(43)が子どもたちに語りかけた。

2007年に始まった「先人ウォーク」は、郷土の偉人について学ぶ
6年の総合学習の総仕上げで、今ではすっかり同小の名物行事に。
先人の足跡をたどりながら、盛岡市内を約5km歩き、
最後に先人記念館の脇にある「立志の丘」で、自分の夢や目標を叫ぶ。
太平洋戦争の終結に力を注いだ元首相、米内光政が少年のころ、
岩手山に向かって大声で叫び、自らを鼓舞したという逸話にちなむ。

盛岡は、歴史的に偉人を多く輩出した土地柄。
米内のほか、「平民宰相」と呼ばれた原敬、
「武士道」を著した新渡戸稲造、歌人の石川啄木、
アイヌの「ユーカラ」研究に半生を注いだ金田一京助が代表的な「先人」。
市は、小中学校向けの副読本やカレンダーを作って、
「先人教育」に力を入れている。

厨川小では、子どもたちが人生について考える機会につなげている。
「先人」にも、若き日の失敗や葛藤が必ずある。
「単に、聖人君子として受け止めたのでは、子どもたちの心に残りにくい」
と考えた千葉教諭は、調べ学習が進んだ段階で、
「何かマイナスポイントなかった?」と問いかけた。

石川啄木のカンニング事件など、失敗談が次々にあがった。
「最初は成績が悪かった」、「甘えん坊だった」。
子どもたちは、遠い存在だった先人をぐっと身近に感じた上で、
「人一倍努力した」、「強い意志を持っていた」などと、
現状に安住しない志の尊さに気付いた。

最後の振り返りでは、自分の調べた先人への思い入れを
グループで語り合った。
振り返り用のワークシートには、あえて「生き方」という言葉は
使わなかったが、子どもたちは先人から学んだ姿勢を自分に引き寄せ、
自然に、「自分はこんな生き方をしたい」という言葉が出てきた。

「人を幸せにできる人間になりたい!」、
「悔いの残らない生き方をするぞ!」。
シートの最後に力強く記されていた子どもたちの誓いは、
先人の背中をしっかりと見据えていた。

◎先人に学んだこと(振り返りシートから)

▼原敬
努力し、最後まであきらめなかった。人に信用される生き方をしたい。

▼石川啄木
他人を思う心、貧しさに負けない強い心があった。
純粋な心を持って、信頼されるようになりたい。

▼新渡戸稲造
勉強は楽しんでやればいいのだと思った。

▼金田一京助
自分もいろいろなことに挑戦して、みんなを勇気づけたい。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20101208-OYT8T00215.htm

インサイド:大河流れて 総集編 アジア大会で見えたもの/3

(毎日 12月2日)

9対24と、あやうくトリプルスコアの大差がつくところだった。
今大会、日本と中国の競泳チームが取った金メダルの数。
前回ドーハ大会は、16対16の「引き分け」。
4年で激変した勢力図の背景には、外国人コーチの存在が透けて見える。

「海外の経験あるコーチに育てられると、正直に言って脅威だ」
日本代表の平井伯昌コーチは、そう言って危機感を募らせる。
今大会に登録された競泳の中国代表コーチ陣に、外国人の名前はないが、
選手たち約20人は定期的に2組に分かれて渡豪し、
オーストラリア人コーチの指導を受けている。

中国だけではない。
男子自由形で、2大会連続3冠を達成した韓国の英雄、
朴泰桓(パク・テファン)のコーチもオーストラリアのマイケル・ポール氏。
他を圧倒する朴の泳ぎは、ポール氏の存在なくしては語れない。
「日本以外のほとんどの国は、欧米などから外国人コーチを招請している」
国境を超えた指導は、今や常識となりつつある。

◆流動化の波アジアに

国同士の争いの様相が濃い国際スポーツ界で、
外国人コーチが増え始めたのは、旧東側諸国が崩壊後の90年代前半。
社会主義国家では、国威発揚につながるスポーツ選手やコーチに、
国家による手厚い支援があったが、体制崩壊とともに彼らは
生活の糧や活躍の場を求めて、西側諸国へ移った。
プロとして雇われた指導者が、欧米各国を渡り歩くようになり、
コーチの流動化が進んだ。
その波は、ついにアジア諸国にも到達。

中国選手団は今大会、全競技で計20人の外国人コーチをエントリー。
その中には、日本のシンクロナイズドスイミング指導の第一人者、
井村雅代さんの名前も。
数年前まで中国のシンクロは発展途上だったが、
井村さんが指揮した北京五輪のチームで、銅メダルを獲得。
今大会は、全3種目で金メダルを手にした。
かつて、日本の「お家芸」ともいえたシンクロで、
日中の立場は完全に逆転した。

その中国ですら、コーチが外国に流出している。
今大会の飛び込みで、銀と銅合わせて9個のメダルを獲得し、
中国に次ぐ2位につけたのはマレーシア。
同国の飛び込みコーチの大半が中国人。
それだけの人材が流出しても、中国の競技レベルには変化がない。
指導者の層の厚さもうかがえる。

◆育成との両立を

一方の日本。
外国人コーチの招請は、競技団体によって温度差があるのが実情。
ある競技団体のコーチが、「外国人コーチに育ててもらうと、
中(自国)のコーチが育たなくなるのではないか」と言う通り、
国内での指導者育成に重きを置く意見は根強い。

コーチ陣4人を外国人で固めたフェンシングは、目覚ましい実績を残した。
オレクサンダー・ゴルバチュク氏(ウクライナ)が専属コーチを務める
女子エペは、団体で大会史上初の優勝を果たした。
北京五輪では、フルーレで同じウクライナ人の
オレグ・マツェイチュク氏がコーチとなり、
太田雄貴(森永製菓)が銀メダルを獲得。
その後、エペとサーブルにも外国人コーチを招請した強化策が結実した形。

自前のコーチ育成と、レベルの高い外国人コーチの活用。
その両立ができなければ、世界の潮流にのまれかねないことを、
今大会の成績は雄弁に物語っている。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/news/20101202ddm035050092000c.html

還元型コエンザイムQ10がインフルエンザウイルスの感染を予防

(日経ヘルス 12月7日)

カネカは、還元型コエンザイムQ10が、インフルエンザウイルスの
感染に対し、予防効果を発揮すると発表。

コエンザイムQ10で、インフルエンザに対する有用性が
示唆されたのは初めて。
コエンザイムQ10は、抗酸化作用やエネルギー産生を促進する
作用で知られる成分。

日本では、もともと医薬品成分だったが、2001年から食品に、
2004年には化粧品への使用が可能、
サプリメントや化粧品など様々な製品に配合されてきた。

従来は、酸化型のコエンザイムQ10が一般的だったが、
体内では大部分が還元された形で存在することから、
同社が、「還元型コエンザイムQ10」を開発、
2006年から原材料供給を開始。

今回は、富山大学大学院医学薬学研究部の林利光教授との共同研究。
還元型コエンザイムQ10を経口投与したマウスに、
A型インフルエンザウイルス(H1N1亜型)を鼻から感染させ、
気道と肺のウイルス量、ウイルスに対する抗体産生量を測定。

マウスは、
(1)普通に飼育した群(対照群)、
(2)還元型コエンザイムQ10低用量を投与した群、
(3)還元型コエンザイムQ10高用量を投与した群、
(4)感染してから抗インフルエンザウイルス薬オセルタミビルを
投与した群で、各10匹ずつ飼育。

還元型コエンザイムQ10を投与した群は、ウイルス感染7日前から
還元型コエンザイムQ10を投与し、感染後も7日間投与を続けた。

その結果、還元型コエンザイムQ10を投与した群は、
対照群に比べ、3日後の気道、肺中のウイルス量がともに
有意に抑えられていた。

抗インフルエンザウイルス薬を投与した群では、
抗体をほとんど作らないのに比べ、還元型コエンザイムQ10を
投与したマウス群で、14日目に抗体産生量を確認し、
抗体は十分に産生され、対照群とほぼ同等。

同社QOL事業部技術統括部開発グループ学術・知財チームの
細江和典氏は、「コエンザイムQ10には、直接的な抗ウイルス作用が
ないことは、もともと知られていた」

乳酸菌のように、体内で免疫機能を動かす働きをしているかというと、
「作用機序はまだ不明、コエンザイムQ10のエネルギー産生を高める
作用が関与している可能性がある。
現在、富山大学で作用機序解明のための研究を進めている」

インフルエンザに関して別途実施した動物試験では、
還元型コエンザイムQ10と乳酸菌を一緒に付加したところ、
さらに高い効果が見られた。

酸化型との比較では、酸化型の低用量では効果が
確認できなかったのに比べ、還元型では低用量でも効果が確認。
これらの内容について、今後、論文や学会などで発表していく。

http://nhpro.nikkeibp.co.jp/article/nhpro/20101207/109503/