2009年3月7日土曜日

逆風の中で:第3部・サッカー界は今/8止 鬼武チェアマンに聞く

(毎日 2月24日)

金融危機は、リーグに大きな影響をもたらしている。
Jリーグはいかに、危機を克服していくのか?
鬼武健二チェアマン(69)にインタビュー。

--不況がJに与える影響は?

「Jリーグも、いろんな意味で影響を受けるので対抗策を考えないと。
Jリーグの特徴は、地域に根ざした活動。
ファンにスタジアムへ足を運んでもらうため、何をすべきか考えるのが最大の施策」

--不況は優勝経験がある名門にも影を落としている。

「バックに大きな責任企業があるのはありがたい。
そこがおかしくなったら、クラブまでおかしくなるのではいけない。
自立して生きていける仕組みを作る必要。
10年までに、公式戦の年間総入場者数を1100万人とする
『イレブンミリオン』を達成しなければ」

--イレブンミリオン計画は07年にスタート。J2チーム数増も重なり、
06年は836万人だった入場者が、07年888万人、08年は913万人に。

「イレブンミリオンは、J1が70%、J2が50%の入りを達成すれば到達。
各クラブに協力してもらい、(見せかけの)数字を高くすることが目標ではない。
重要なのは、結果として経営体力がつくこと

--経営体力のある会社と乏しい会社の二極化も進んでいる。

「マネジメント、監督のやり方によっては、小さなクラブが大きなクラブを
食うこともあるのがサッカーのおもしろさ。
長期間、安定した力を出すためには安定した財力が必要。
Jリーグは昨年、各クラブの担当者を欧州に派遣し、
スタジアムの勉強をしてもらった。学んだことを生かしてほしい

--1月には、J2水戸の総括本部長兼営業部長に、
リーグで経営指導業務を担当した藤村昇司氏を送り出した。

「クラブとリーグの人事交流は、積極的に進めてきた。
クラブの人にはJリーグの仕事を覚えてもらい、Jリーグの人は地域で
ドロドロになって営業活動をしてこいと。人事交流すると、両方が強くなる。
水戸は、収入が3億円の状態がずっと続いている。
1億円はJリーグの配分金。
彼には、3年間で最高9億円の収入がある会社にしてくれと言っている」

--3年間で3倍?

「30億を90億に、と言ったらしんどいが、3億を9億にはできんこともない。
無理かもしれないが、高い志でやれば、新しいクラブの参考になる」

--将来の目標は。

07年度、Jリーグ全31クラブ(当時)の総営業収入は約740億円。
広告料収入が約330億円、入場料収入は約150億円。
長い時間は必要だが、将来的に広告料と同等か、超える入場料収入がないと」

--地域密着はJリーグの強みでもある。

「最初の理念だし、これが一番重要。
地域のみなさんとの絆を強く、太くしていく。
サッカーから元気をもらった、と思ってもらえるリーグにしていきたい
==============
◇おにたけ・けんじ

1939年9月、広島市生まれ。早大から62年にヤンマーに入社。
67年に監督に就任し、日本リーグ、天皇杯で各3回の優勝。
セ大阪社長、会長などを経て、06年にJリーグ3代目チェアマンに就任。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/archive/news/2009/02/24/20090224ddm035050006000c.html

車代わり 富山市民の足

(読売 1月26日)

富山駅前から富山湾近くの岩瀬浜駅までの7・6キロを結ぶ
富山ライトレール」。
旧JR富山港線を活用し、一部は路面電車化して2006年4月に開業。
環境に優しい市民の身近な足として、親しまれている。

ライトレール(Light Rail Transit=軽量軌道交通)は、
欧米の都市で発達した小型の交通システム。
富山市では、第3セクターが経営。
2両で1編成、全長18・4メートルで、定員80人。
レール下にはゴム状の樹脂が敷かれ、走行中の騒音が小さい。

導入は、車を使わなくてもスムーズに日常生活を送れる
「コンパクトな町づくり」を目指す市の計画の一環。
JR時代より運行回数と駅を増やして利便性を高めたところ、
1日平均乗客数は約4500人、平日は約2倍、休日は約4倍に増えた。
市路面電車推進室の谷口博司室長(52)は、
「車を運転しない高齢者にも重宝されている」と分析。

マイカー代わりに、ライトレールを利用する市民も多い。
富山県の1世帯当たりのマイカー保有台数は1・72台(08年3月)、
全国2位の多さ。
自動車への依存度は高いが、ライトレールの登場により
年間436トンのCO2削減効果があった」(富山市交通政策課)と推計。

市は、ライトレールや路線バスなど19路線を公共交通の軸にして、
主要駅周辺の徒歩圏内に行政・福祉施設などを集める
「市公共交通活性化計画」を策定。
これら沿線には現在、市人口の3割が生活、
これを20年後には4割に増やし、CO2排出量の30%削減を目指す。

ライトレールを核にした活性化の成功例として、
国内外から視察が相次ぐ富山市。
谷口室長は、「車がなくても安心して暮らせる町にすることが
都市環境の改善につながる」と、改革の意義を強調。

http://www.yomiuri.co.jp/eco/wagamachi/20090126-OYT8T00663.htm

(上)黒い北極海 温暖化加速

(読売 2月9日)

北極海で、海氷の急激な減少が続いている。
観測史上最小の水準にある海氷域。
地球の気候システム全体に影響を及ぼしかねない変化が起きている。

中国の砕氷船「雪龍」は、薄氷を裂いて進んだ。
昨年8月、北緯85度付近の北極海。
中国人やフランス人の研究者たちに交じって、船上で氷の状態を
調べていた北見工業大学助教の舘山一孝さんは、
「ある程度は予想していたが、ここまでとは……」
氷があまりに少なく、状態も様変わりしていた。

この海域は、北極点まで約500キロ。
例年は、夏でも分厚い氷に覆われている海域なのに、
その表面には黒っぽいまだら模様が浮かびあがっていた。
氷のない海面に顔を出すアザラシをエサにするホッキョクグマも、多数目撃。

黒い模様の正体は「メルトポンド」。海氷の表面が解けてできた池。
海面まで突き抜けた領域も目立った。
2005年に北極点の縦断観測に参加した経験もある舘山さんの目には、
これほど高緯度の海氷域に多数のメルトポンドがある光景は、異様。

一昨年、北極海の海氷面積は観測史上最小を記録し、
昨年も過去2番目に小さい規模に縮小。
極点周辺にまで及ぶ多数のメルトポンドは、海氷面積の減少とともに、
北極海の変貌を映し出していた。

海氷の減少が懸念されるのは、それが北極海だけでなく、
地球全体の気候に大きな影響を及ぼす可能性がある。

地表の気温は、太陽から受け取る熱と反射して宇宙に放出する
熱のバランスで決まる。
白い氷は太陽光をよく反射するが、青黒い海面は太陽光を多く吸収。
虫めがねで太陽光を集めると、白より黒い紙の方に火が付きやすいのと同じ。

海洋研究開発機構研究員の猪上淳さんによると、
氷のない海面が太陽から受ける熱の94%を吸収、氷はわずか9%。
表面が解けただけとはいえ、メルトポンドの熱吸収率も55%に。
白い北極海が黒く変わることで、温暖化が加速される可能性がある。

舘山さんは、メルトポンドが海氷面積の20%を超えた海域を
「メルトポンドがある海域」と定義、宇宙航空研究開発機構が地球観測衛星に
搭載したセンサー「AMSR―E」のデータを使って、その変化を調べた。

メルトポンドの面積は例年、海氷の融解期の終わりに当たる8月中旬に最大。
海氷全体の面積に占める割合は昨年8月、AMSR―Eがデータを取り始めた
2003年以降で過去最高の54%。

注目されるのは、「メルトポンドがある海域」が昨年初めて、
北極点に達した可能性があること。
メルトポンドがある海域を地図上で赤く表示、北極点周辺も真っ赤に染まった。

米コロラド大のジェームズ・マスラニク教授らの研究チームが
一昨年発表した調査報告によると、北極海で5年以上解けずにいる
「多年氷」に覆われた海域の面積は、2007年まで25年間で56%も減少。
北極点を取り囲む中央部での減少率は88%、
9年以上の多年氷はほとんど消滅。

海氷は、融解期に解けずに生き延びた「多年氷」の方が、
新しい「1年氷」よりも厚い。
研究チームは、「多年氷」が「若い氷」に置き換わった結果、
海氷の平均的な厚さは、25年間で2・6メートルから2メートルに薄くなった。

黒く、そして薄くなる北極海の海氷域。
その下の海水にも、じつは変化の予兆が表れ始めている。

◆砕氷船「雪龍」

中国極地研究所所属の調査船(2万8000トン)、南極観測にも使われる。
全長195メートル、幅26メートル、高さ40メートル。
研究者と乗員合わせて120人が乗り込む。母港は上海。

3回目の北極航海となる昨年は、7月11日に上海を出港。
中国、日本、韓国、フランスなどの研究者も乗り込んだ。
中国は、北極基地をノルウェー北部スバールバル諸島に設置、
観測に力を入れている。

http://www.yomiuri.co.jp/eco/kaihyou/ka090209_01.htm

畜産排水の窒素・リン濃度減らす技術開発

(サイエンスポータル 2009年2月23日)

養豚農家などの畜舎から出る排水を、簡単な設備を付加するだけで
さらに浄化できる技術を、農業・食品産業技術総合研究機構の
畜産草地研究所が開発。

新しく開発された排水処理法は、現在、養豚農家で通常使われている
浄化施設に2つの槽を付加するだけでよい。
硝酸性窒素とリン酸を除去するための材料は、
市販品を利用しているのが特徴。

第1槽は、園芸店などでも売られている土壌改良資材である
パーライトの表面に、硫黄と炭酸カルシウムをコーティングした
粒状資材を詰めている。
この資材表面に、自然繁殖する硫黄酸化細菌によって
硝酸性窒素が除去され、茶褐色の排水もわずかながら色が薄くなる。

第2槽では、軽量発泡コンクリートを製造する際の副産物として
市販されているケイ酸カルシウム含有資材が、リン酸を吸着して除去し、
酸性化した排水を中和する効果がある。

これら2つの槽を付加することで、通常の排水処理を行った後に、
なお残っている窒素とリンが最大95%程度除去される。
畜産草地研究所は、東京農業大学、群立機器、クリオンと協力し、
実用化を検討。

日本の畜産業は、飼料を輸入に頼っており、畜糞の堆肥化という
資源循環も行われない結果、水質や土壌への
過剰な窒素の蓄積という悪影響が心配。

畜舎からの排水については、全国一律の水質基準が定められているが、
自治体によってはさらに厳しい水質基準を課している地域もあり、
これらの地域の畜産農家は排水中の窒素・リン濃度を、
通常の処理を行った場合よりもさらに低下させることが求められている。

http://www.scienceportal.jp/news/daily/0902/0902231.html

2009年3月6日金曜日

長谷川香料の長谷川徳二郎社長 「高齢社会で香料の役割が増す」

(日経 2月17日)

飲料、食品からシャンプー、リンスまで、香料は幅広い商品に使われている。
国内市場は、市場自体の成熟により伸び悩むが、
大手メーカーの長谷川香料、長谷川徳二郎社長は、
社会の高齢化に需要開拓のチャンスがあると説く。
今後の展開や狙いを聞いた。

——香料の国内市場は伸び悩んでいる。

「シャンプーやリンスなどに含まれる香料は、
人口の増加に比例して市場も伸びる。
人口の減少は、香料市場にとって痛手に。
市場の先行きについては、悲観的には見ていない。
団塊世代の大量退職で、日本は本格的な高齢社会に。
高齢者が増えれば、香料の役割もますます重要になり、
当社にもチャンスが訪れる

——その訳は。

「高齢者は、長く元気に生きたいと思っている。
健康を長く保つためには、糖分や塩分の摂取を抑えつつ、
いかにおいしい食事をとれるかが重要なテーマ。
香料をうまくつかえば、塩分を控えつつ、
塩味を摂取したような味を感じさせることができる」

——具体的にはどんな取り組みを考えているのか。

「病院の流動食向けの香料を、まず強化したい。
おいしく食べられる病院食をテーマに、味と栄養のバランスが取れた
食品向けの香料を積極的に供給していく」

——研究拠点も強化する。

「本社内にある食品向けのフレーバー研究所とシャンプーなどの
フレグランス研究所を移転。
川崎にある研究所に集約して、基礎研究から一貫した研究施設を整える。
高齢者のみならず、消費者の嗜好性が多様化する時代に対応し、
香料は多品種少量生産にシフトする方向にある。
研究所をまとめることで、製品開発面でも相乗効果を発揮したい」

——食に対する安心や安全を求める消費者の声が高まっている。

食品会社や飲料会社が、香料の品質に対する要求水準を厳しくしている。
海外でも、日本国内と同様の品質を保つため、
全社で約120人の専門組織を立ち上げた。
社是に掲げる『技術立社』を支えるために基盤を固め、万全を期したい」

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/interview/int090216.html

栄養士による電話カウンセリングも体重減量に有効

(2009年2月27日 Medscape)

減量を試みる肥満患者の生活習慣改善支援の方法として、
栄養士の電話による頻繁な接触が面談カウンセリングと同等の効果。
『Annals of Internal Medicine』2月17日号に発表。

Pfizer社(コネチカット州)のAndres G. Digenioらは、
「医師は、減量のための薬剤を頻繁に処方するが、
生活習慣のカウンセリングはほとんど行わない。
両者を組み合わせると、介入の効果が高まる」

「生活習慣カウンセリングを省略する理由は、
行動カウンセリングの訓練をほとんど受けていない、
カウンセリングの時間がとれない、集学的スタッフが揃っていない、
インフラ整備が不十分、外来回数を増やしても医療保険の対象に
ならないことによる費用、といったことが考えられる」

目的は、肥満臨床試験の実施経験を有する独立研究臨床施設12カ所で
シブトラミン治療を受けている肥満患者の生活習慣改善プログラムで
提供される5つの手法を比較。
ランダム置換ブロック(ブロック長は5)のスケジュールを用いて、
肥満被験者376例(肥満指数が30~40 kg/m2)を各介入群。

試験期間中は、被験者全員をシブトラミン10 mg/日、生活習慣の手引き、
体重減量ウェブサイトへのアクセスで治療。
5種類の介入手法は、回数の多い面談による
生活習慣改善カウンセリング(n = 74)、回数の少ない面談による
生活習慣改善カウンセリング(n = 76)、回数の多い電話による
カウンセリング(n = 76)、回数の多い電子メールによるカウンセリング(n = 74)、
栄養士からの接触なし(自助努力、n = 76)。

試験の主要エンドポイントは、6カ月間での体重の変化率であり、
二次転帰は6カ月間での胴囲、脂質・糖・インスリンのレベル、血圧、
体重関連症状、生活の質の変化。

回数の多い面談の群と回数の多い電話の群は、
試験開始から6カ月後の平均減量率に差がなく、
その他の群よりも有意に大きかった。
胴囲、高比重リポ蛋白コレステロール値、トリグリセリド値、生活の質と
体重関連症状の測定値は、全介入群において有意に改善。
深刻な有害事象は報告されず、軽度の有害事象も群間に有意差がなかった。

「減量を試みる肥満患者の生活習慣改善支援の面で、
回数の多い電話による栄養士の接触はHF-F2F(回数の多い面談)
による接触に差が無かった」
「今回の知見は、健康的な生活習慣改善を促進する医療提供者や
医療システムで活用できる」

限界として、被験者のほとんどが白人女性で、知見の一般化が難しいこと、
離脱率が30%と高かったこと。

「体重減量に、生活習慣カウンセリング支援の様式と回数が大きな影響を持つ。
被験者の減量の幅は、栄養士の頻繁な面談による接触を受けた場合に最大、
栄養士の支援がない場合には最小。
薬物治療と併用した場合、電話を介した栄養士によるカウンセリングも
面談カウンセリングと同程度に有効」

Ann Intern Med. 2009;150:255-262.

http://www.m3.com/news/SPECIALTY/2009/2/27/92753/

逆風の中で:第3部・サッカー界は今/7 苦戦覚悟のJ参入

(毎日 2月23日)

昨年、ファジアーノ岡山の木村正明社長のもとに電話。
「契約の話を白紙に戻す」
新シーズン、メーンスポンサーとなる予定だった企業から。
「覚悟はしていたが、ついに来たか」。不況の到来を実感した瞬間。

米系証券会社のゴールドマン・サックス証券で、
執行役員を務めた経歴を持つ木村社長は、
かつてのバブル経済崩壊と比べ、今回の景気落ち込みの速さを感じている。
「(9月の)『リーマン・ショック』から、一気に最悪の雰囲気になった」
チームはJリーグ入りを目指し、JFLで上位争いを繰り広げた時期。
J参入が決まれば、予算規模を拡大せざるをえないが、
スポンサー探しに暗雲が垂れこめた。

結局12月のJリーグ入会審査直前になって、メーンスポンサーに
岡山ガスを迎えることができた。
同社の岡崎彬社長は、地元商工会議所の会頭。
木村社長は、「窮状を救ってもらった」と感謝。
メーン以外のスポンサーにも支えられた。
親企業を持たない市民クラブとして、地域に根ざした営業を進めた効果もあり、
「こういうときこそ互いに頑張ろう」と、大半が出資を継続。

岡山は、性急な拡大路線に乗らない、小ぶりな「J2型経営」を掲げる。
JFLの08年度は、2億2000万円で収支が均衡したが、
09年度は倍以上の予算規模を設定。
これでも、J2最低レベル。
「JFL時代と同じ選手層で勝てないと分かっているが、
若いチームが試合を通じて伸びていく、というやり方しかできない」

目を引く補強は行わず、主力メンバーは、
地域リーグを戦った当時から変わっていない。
J2では苦戦が予想される。
「負けても、愛されるチーム作りが大事。成績に関係なく、スタジアムに
常時1万人入るようになることが、地方クラブの生きる道だと思う」

JFL時代にも好評だった、小学生を対象とした無料パス制度「夢パス」は、
今季も継続する。
夢パス利用の入場料相当額を、スポンサーが負担するシステムで
支援企業、地域との一体感を、より高めていく。

木村社長の経済認識は前向き。
「皆さん、悲観的すぎる。ダメージはしばらく残るだろうが、
『ここ数年は暗黒時代』という状況にはならない」
それでも、景気に左右される経営は行わない。
「日本が右肩あがりで急成長したり、バブルを謳歌できる時代は終わった」
壮大な夢は見ず、「100年後まで残るクラブ」を目指して、地道に汗をかく。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/archive/news/2009/02/23/20090223ddm035050089000c.html

歴史に学ぶ

(サイエンスポータル 2009年2月23日)

日韓両国ともに限られた研究しかない日韓併合時代の
韓国医学教育に関する珍しいシンポジウム
「20世紀前半の韓国近代医学教育史」が、政策研究大学院大学で行われた。

2004年、韓国学術院の招きでソウルを訪れた黒川清・日本学術会議会長が、
朱軫淳・韓国学術院副会長から、38年もの間、韓国の医学教育に尽力した
恩師、佐藤剛蔵(1880-1960年)の業績を聞いたことが、
このシンポジウムにつながった。

佐藤剛蔵について調べるため、黒川氏が週刊新潮の掲示板欄で
家族の消息を問い合わせたところ、
熊本市在住の佐々木定氏が「孫」と名乗り出た。

佐々木氏は、黒川氏らとともにソウルを訪問、朱氏と感激の対面。
この日のシンポジウムは、黒川氏、朱氏、佐々木氏とともに、
佐藤剛蔵の業績をはじめとする韓国の近代医学教育史の研究を続ける
石田純郎氏(日本医史学会前理事、医学博士)、
李忠浩氏(駐福岡大韓民国総領事館領事)、
出口俊一氏(大学発起業支援サイト「デジタル・ニュー・ディール」事務局長)、
角南篤氏(政策研究大学院大学准教授)ら。

シンポジウムでは、日韓併合時代の韓国の医学教育は、
過去の歴史に日本もならった、という指摘が、李忠浩氏から出された。
「医療は、異文化社会に侵入するとき、拒否反応がなく受容されやすい」

李氏によると、韓国における医学教育は、キリスト教の普及と併せて
米国人宣教師によって進められ、
「日本の植民地統治が西洋の医療宣教師の活動を阻害し、
日本だけが韓国の医師教育を主導」

石田純郎氏によると、医師教育の役割を担った組織が
1902年につくられた財団法人同仁会(本部・東京)で、
「日本人医師を、朝鮮や中国・満州に送ることが目的」

佐々木定氏によると、祖父・佐藤剛蔵は、京都帝国大学医科大学を
卒業直後の1907年、同仁会直轄の平壌公立同仁会医院長として渡韓。
1910年まで医院付属の医学校で韓国人相手に医学教育を行ったが、
「韓国人生徒がよく、勉強し、よく覚えるので、本気で教育を行った」

総督府医務教官、同医務課長となり、
1916年、京城医学専門学校となったのを機に教授に就任。
欧州留学を挟み、1926年、京城帝大医学部教授兼京城医専教授となり、
1945年まで京城医専校長として日本、朝鮮両国の医学生の教育に。

朱軫淳氏が佐藤校長の教えを受けたのは、
1943年から終戦時までの2年5カ月。
日本人と朝鮮人の比率は3対1に決められ、学生同士の対立があった。

京城医専で受けた医学教育の内容は、
「戦時下の人、物不足で制限はあったが、大変充実した教育、訓練を受けた」、
佐藤校長を尊敬する気持ちも非常に大きい。
京城医専の朝鮮人学生の優秀さは、佐藤剛蔵も認め、
京城帝大医学部でも、「朝鮮人学生の成績の方が、日本人よりも優秀で、
成績不良で落第するのは、大部分が日本人」

李興基・ソウル大学病院・病院歴史文化センター研究教授は、
「韓国人医学生の成績は、大体上位圏に入る。
しかし、大多数が開業するのは学校、官公庁の奉職に差別があった」

日韓併合時代の韓国医学教育については、
これまで一部の限られた人だけの関心事になっていた。
今後、研究が進むと思われるが、その意義は何か?
「われわれが、佐藤剛蔵の精神を表現する使節になり、
こうした機会を、重要でよりよい未来の日韓関係のための種と土台としたい」

日本の科学技術力を、環境問題など世界的課題の解決に活用する
「科学技術外交」の重要性が叫ばれ、
途上国との具体的な共同研究プロジェクトが動き始めている。
日韓併合時代と現代とでは、状況が大きく異なるのは当然。

鍵を握るのは、資金以上に人である。
組織や体制だけでなく、佐藤剛蔵という人に焦点を当てて
歴史に学ぼうとする日韓両国の研究者たちの活動に注目。

http://www.scienceportal.jp/news/review/0902/0902231.html

2009年3月5日木曜日

カナダRIMのドン・モリソンCOO 「スマートフォン、足元の販売は好調」

(日経 2月24日)

NTTドコモは、オバマ米大統領が愛用していることで有名なカナダの
リサーチ・イン・モーション(RIM)社製のスマートフォン(多機能携帯電話)
「ブラックベリー」シリーズの新機種「ブラックベリー・ボールド」を発売。
RIM社のドン・モリソン最高執行責任者(COO)に、
日本市場での戦略などを聞いた。

——新製品の特徴は。

ボールドは、当社の製品群の最上位機種で、
ブラックベリーシリーズ初の第3世代(3G)携帯電話機。
(通信速度やエンターテインメント機能など)法人と個人の両方のユーザーに
満足してもらえる機能を強化し、従来機種とは別格」

——日本では、ドコモが2006年から主に法人向けに販売、
日本での売れ行きの評価と新機種の販売見通しは。

ブラックベリーは現在、世界全体で約2300万人のユーザーがいる。
国別の数字は開示していないが、日本は新しい市場で普及率もまだ低い。
成長余地は非常に大きい。
ボールドの投入で、日本市場でさらなる販売増加を見込んでいる」

——世界不況が深刻化しているが、通常の携帯電話に比べて
価格が高いスマートフォンの売れ行きに影響は。

「不況の影響は、まだよく見えない。
楽観的に、悲観的になりすぎてもいけないが、足元の販売は好調。
法人顧客の間では、ブラックベリーはノートパソコンなどに比べて
経済的で投資効果の高いビジネスツールだと受け止められている。
これから影響が出てくる可能性はある」

——スマートフォン市場で競合するライバルをどう見るのか。

「ライバルのコメントは控えるが、多くの企業がスマートフォン市場に
関心を持ち、投資をしていることは非常によい。
成熟市場では、ライバルからいかにシェアを奪うかに注力するが、
成長市場においては、自分たち自身の成長機会を逃さず、
きちんと伸ばしていくことの方が重要だ」

——今後の課題は。

「ドコモの販売代理店のスタッフが、ボールドに関する十分な知識を持ち、
自信を持って顧客に薦めることができるように、
ドコモと協力しながら、必要な支援を提供することに最大限努力する」

——オバマ大統領は愛用しているブラックベリー端末が
「バラックベリー」と言われるほどの大ファン。
広告効果は5000万ドルに達するとの見方もあるが、販売面への影響は。

「オバマ大統領についてコメントは控えるが、米政府はブラックベリーを
初期から使ってくれている顧客の1つ。
政府系機関や警察が採用する理由は、セキュリティーの高さを評価、
セキュリティーを重視する民間企業の顧客開拓にも追い風に」

——日本政府にもボールドを使ってもらいたいと思うか。

「もしまだ使っていないなら、ぜひ使ってもらいたい」

——支持率の低下に悩む日本の首相に薦める気はあるか。

「(笑いながら)ノーコメントだ」

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/interview/int090223.html

疲労:疲れたらビタミンB1、疲労度計できる可能性 大阪市大など解明

(2009年2月27日 毎日新聞社)

疲労回復に、カフェインは一時的効果しかないが、ビタミンB1はよく効く。
大阪市立大を中心とする医学チームが、5年間の研究で
疲労の仕組みをほぼ解明した。

研究は、文部科学省の研究拠点づくり事業「21世紀COEプログラム」に
同大が選定されて実施。

リーダーの同大大学院医学研究科の渡辺恭良教授によると、
疲労の原因は、筋肉や脳が活動した際に発生して細胞やたんぱく質を
傷つける活性酸素。

細胞が傷ついたことを知らせる免疫系物質のサイトカインが発生し過ぎると、
神経伝達に異常が起きて集中力などが低下する。

疲れると、副交感神経の働きが鈍ることも分かり、
その度合いは血液や唾液を基に分析することができる。
研究成果から、「疲労度計」を作ることも可能。
回復には、傷ついた細胞やたんぱく質をいち早く修復し、
サイトカインの過剰な発生を抑える必要がある。
修復には、大きなエネルギーが必要で、ビタミンなどの補充が有効。

渡辺教授は、「疲労回復には、ビタミンB1やコエンザイムQ10などの補給や、
免疫系の異常を抑える抗ウイルス剤の注入などが有効

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/2/27/92760/

ヒト免疫逃れるHIVウイルス増加 「変異が原因」解明

(2009年2月26日 毎日新聞社)

人間の免疫を逃れるエイズウイルス(HIV)が広がっている原因を、
熊本大などの国際研究チームが突き止め、
英科学誌ネイチャー電子版に発表。

ワクチン開発の戦略見直しが迫られる。
HIVに感染すると、人間の免疫細胞が白血球の型である
「ヒト白血球抗原(HLA)」と結合したウイルスを攻撃する。
その働きで、感染した細胞は減少するが、完全に排除できない。

研究チームは、ウイルスが変異して人の免疫から逃れているのではないかと、
8カ国約2800人の感染者を調べた。

その結果、HLAと結合するウイルスのたんぱく質が14カ所で
変異していることが分かった。
日本では、約70%の感染者でこの変異ウイルスが検出。

エイズのために2500万人が死亡し、現在も3300万人が感染していると推定。
ワクチンは実用化されておらず、HIVが近年悪質になった。

滝口雅文・熊本大エイズ学研究センター長(ウイルス免疫学)は、
「ワクチン開発に必要なウイルスは、約20年前に見つかったタイプを使っている。
戦略を変えてワクチン開発に臨みたい」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/2/26/92664/

逆風の中で:第3部・サッカー界は今/6 支援企業、県外に拡大

(毎日 2月22日)

昨年はナビスコ杯を初制覇し、J1リーグ戦も4位に入った大分トリニータ
03年からJ1で活動する大分にとって、
過去最高の成績はクラブの全国的な知名度アップにつながり、
今季に向けた営業活動にも「追い風」になるはず。

そこに襲った世界的な不況。
サッカークラブ経営にも影を落とし始めている中で、大分の溝畑宏社長は
「もっと『クラブの価値』を高めなければ」と強調。
今は営業活動の視野を、大分県内だけでなく首都圏の企業にも広げ、
08年度でも広告料収入約9億円のうち、6割が県外企業。
「我々は夢を売るのが商売」と、社長自ら積極的にセールスに動く。

自治省(現総務省)から大分県に2度にわたって出向し、
「無類のサッカー好き」が高じて、94年にクラブの運営会社
「大分フットボールクラブ」発足当初から運営に携わってきた溝畑氏。
04年に社長に就任した2年後、総務省を退職して自ら「退路」を断った。
「1日50社」を訪れて個人事業者から大手企業まで、
約700社のスポンサーを獲得。
その手法は、地方のサッカークラブなどで「参考にしたい」と、
オフシーズンには数多くの視察や問い合わせを受けている。

それだけ動いても、07年度の大分の営業収入は22億6100万円、
J1平均の7割程度。
大企業の親会社を持たないクラブ運営だけに、
「地元だけ(のスポンサー募集)では限界がある」
08年度のホームゲームの平均入場者数は、J1リーグ5位の2万322人を
集め、クラブと地域住民との交流活動も盛んな大分。
クラブが目標とする「平均入場者数3万人」の達成と、
対象を首都圏など県外の企業にも広げたスポンサー確保が、
さらなる安定運営への両輪に。

同じ九州のクラブで、昨季からJ2で戦うロアッソ熊本も、
大分の営業活動を参考に、「広く薄く」スポンサーを募ってきた。

昨季のスポンサー数は、JFL時代の3倍となる約220社。
熊本の宮本博之営業部長は、「『熊本を元気にするため協力してほしい』
と訴えてきた」
08年度の広告料収入は、目標の3億円に満たない約2億5000万円。
J2に昇格しても、それがクラブの経営改善の「特効薬」にならないのが現状。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/archive/news/2009/02/22/20090222ddm035050135000c.html

2009年3月4日水曜日

リソー教育の岩佐実次会長「幼児から社会人までカバーする」

(日経 2月23日)

ベネッセコーポレーションや学習研究社といった大手を軸に、
教育業界で合従連衡の動きが相次いでいる。
業界再編の「台風の目」が、リソー教育だ。
個別指導塾に強みを持ち、2009年2月期の業績も
前期比で増収増益を見込む。
業務提携やM&A(合併・買収)の方向性などを岩佐実次会長に聞いた。

——業界再編の動きが加速。

「塾業界には、創業者が経営する会社が多くある。
全国展開できるのは、市場の大きい大学受験向けの塾くらいで、
小学生—中学生向けは、『地方の雄』が散らばっている状態。
高齢になった創業者が引退を考えて、自分の育てた会社の引き取り手を
探す例が増えているようだ」

——ベネッセなどは塾の買収に積極的。

「教育業界には、資金力のある会社が少ないので、売り手からすれば
断トツの規模を持つベネッセに声をかけたい気持ちに。
少子化などで先行きに不安を感じ、ベネッセに身売りした経営者も」

——リソー教育も買収合戦の主役とみなされている。

「難関大学向けで有数の実績を持つ、個性のある塾でないと買う意味は薄い。
マスをターゲットにした塾は、伸びが見込めない。
関東地盤の中堅塾を買わないかと持ちかけられたが、
もっと大きい塾を狙いたいので断った」

——塾以外にも狙っている会社はあるか。

当社の強みは、子どもを囲い込んでいること。
高校生までを対象に塾を運営しているが、大学に入ってしまうと、
縁が切れるのはもったいない。
就職情報サイトの運営会社を買収するなどして、大学生向けに
アルバイトや就職のあっせんを始めるのも面白そう」

資格取得講座などにも手を広げ、幼児向けから社会人向けまで
カバーするのが理想。
ノウハウがないので、実現にあたっては買収や提携といった手段を取るのが
手っ取り早いと考えている」

——リクルートなどと組みたいということか。

「金融機関から、『組んでみたらどうですか』という話をされることも。
子どもは、どんな業界にとっても将来有望な顧客なので、
さまざまな企業から提携先として評価してもらえる可能性はある」

——Jリーグ、東京ヴェルディの経営権を取得するという観測も。

「1月、一部メディアで報道があったが、寝耳に水だった。
これまでスポンサー契約は結んでいたが、経営権を取得する考えはない。
年間10億円の赤字を出していると言われるチームを引き取るには、
当社の規模では足りない。
そんなに資金が余っているなら、塾の規模拡大に回す」

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/interview/int090220.html

オバマ大統領 施政方針演説

(2009年2月26日 読売新聞)

◆経済の再建

我々の経済は弱体化し、自信も揺らいでいるかもしれない。
困難で不確実な時代を生きている。
すべての米国人にこのことを知ってほしい。我々は再建し、回復する。
米国は、以前よりも強くなって現れる--ということを。

危機の重大さが、国の運命を決定づけるわけではない。
問題への解答は、手の届かないところにあるのではない。
解答は、我が国の研究室や大学、田畑や工場、起業家の想像力、
地球上で最も勤勉な労働者たちの誇りのなかに存在する。
米国を人類史上、進歩と繁栄の最大の力とならしめた特質を十分に持っている。
今求められているのは、一致団結し、直面する課題に大胆に立ち向かい、
我々の未来に対する責任を担うこと。

長期的な繁栄よりも、短期的な利益が称賛される時代を生き、
次の支払いや、次の四半期、次の選挙の先を見ることを怠った。
黒字は、将来に投資する機会ではなく、富を富める者に配分する口実に。
規制は、健全な市場を犠牲にし、短期間に利益をあげるため骨抜きに。
人々は、たちの悪いローンを押しつける銀行や金融業者から、
支払いの無理な住宅を購入した。
重要な論議と困難な決断は、先延ばしされてきた。

その清算の日が来た。我々の未来に責任を負う時も。
経済を再生するだけでなく、永続的な繁栄につながる新しい基礎を築くため、
今こそ大胆かつ賢く行動する時。
財政赤字の削減という難しい選択をしながら、雇用を創出し、融資を再開し、
エネルギーや医療、教育といった経済を成長させる分野に投資する時。

(金融安定化の)計画には、政府からのかなりの資金が必要。
費用は巨額になるが、何もしなかった場合の損失は、はるかに大きい。
景気対策法と金融安定化策は、短期的に経済を再生するための当面の方策。

経済力を完全に回復させる唯一の方法は、新たな雇用や産業を生み、
他国との競争力を刷新するための長期的な投資を行うこと。
今世紀が米国の世紀となる唯一の道は、石油資源への依存や
高コストの医療保険、子供たちを育成しない学校、子供たちが
受け継ぐことになる債務の山に向き合うこと。
それが我々の責務だ。

議会に提出する予算案を、米国の展望、未来への青写真とみている。
予算案は、すべての課題を解決しようとするものでも、
すべての問題に対処しようとするものでもない。
1兆ドル規模の赤字や金融危機、手痛い景気後退といった、
ありのままの現実を反映したもの。

価値ある優先事項のいくつかを犠牲にしなければならない。
だからといって、長期的な課題を無視していいわけではない。
問題は自然に解決するという見方や、政府が繁栄の基礎を築くために
できることはない、といった見方を拒絶する。

◆エネルギー

不要な事業は削減するが、経済の将来に不可欠な三つの分野、
エネルギー、医療、教育に投資する。
クリーンで再生可能なエネルギーを利用する国が、21世紀を主導。
エネルギー効率の良い経済のため、最大の取り組みを打ち出したのは中国。
我々は太陽光発電の技術を開発したが、
生産はドイツや日本に後れをとっている。
新しいプラグインハイブリッド車は、米国から生み出されているが、
韓国製のバッテリーで走る。

明日の雇用と産業が、海外に根付くような未来は受け入れない。
米国が再び主導する時。
経済を真に変革させ、安全を保ち、気候変動による破壊から地球を救うため、
クリーンで再生可能なエネルギーを、利益を生むエネルギーにする必要。
市場原理に基づく温室効果ガスの規制と、再生可能なエネルギーの
生産向上につながる法案を提出するよう求める。

自動車産業について、誤った経営判断と世界的な景気後退が
自動車メーカーをがけっぷちに追い込んだと認識。
彼らを悪い習慣から守るべきではないし、守らない。
新たな手段と発想を持ち、競争して勝てる自動車産業を作る目標を追求。
何百万人もの雇用が(自動車産業に)かかっている。
自動車を発明した国は、見捨てることはできない。

◆医療制度改革

高コストな医療保険の問題にも対処。
米国で、30秒ごとに破産が起きている。
今年末までに、150万の米国人が住む家を失いかねない。
この8年間、保険料は給与の4倍の速さで上昇し、
毎年新たに100万人が健康保険を失った。
小規模な事業が廃業し、企業が海外に雇用を移す主要な原因の一つ。
我が国の予算で最も大きく、増加が速い部門。
もはや医療制度改革は待ったなし。

我々は、過去10年間よりも、医療制度改革を前進させるための成果を上げた。
本議会は、両親がフルタイムで働く子供1100万人に医療保険を与え、
守る法案を可決した。
景気対策法案では、医療の電子記録に投資する。
誤りを減らし、コストを低減し、プライバシーを尊重し、
生命を救う新しい技術に投資。
がんを克服する治療法を研究する。
予防医療に過去最大の投資も行う。

改革をどう実現するか、異なる意見が多数あるだろう。
企業や従業員、医師や保険会社、民主党と共和党を集め、
この問題への取り組みを始める。
これは難しいプロセスになる。
セオドア・ルーズベルト(大統領)が改革を呼びかけてから1世紀近く、
医療保険があまりにも長く経済と我々の良心を圧迫してきた。
疑いを持ってはいけない。改革は待ったなしだ。

◆教 育

グローバル化した経済では、知識こそが最も価値ある技能で、
良い教育はもはや機会への糸口ではなく、必須条件。

良質の教育を実施する国は、明日我々を負かす。
すべての子供に、生まれた日から職に就くまで、
完全かつ競争力のある教育を与えること。
今回の景気対策法に、教育への歴史的な投資を盛り込んだ。

すべての米国人に、最低でも1年以上を
高等教育や職業訓練に費やすように求める。

全員が高卒以上を目指すべき。
中退は、もはや選択肢ではない。
自らを放棄するだけでなく、我が国を放棄することになる。
我が国は、すべての米国人の価値や才能を必要としている。
教育政策は機会の扉を開くが、子供たちにこの扉をくぐらせるのは親の仕事。
子供たちの教育への責任は、家庭で始まらなければいけないと言う時、
私は大統領としてだけでなく、父親として語っている。

◆予算案

予算に関する(超党派の)幹部会議を開き、
財政赤字を1期目の任期終了までに半減させることを約束。
無駄で効率の悪い事業を削るため、連邦予算を項目ごとに精査する。
時間のかかるプロセスであることは、想像できる。
今後10年間で2兆ドル節約できる事業を特定。

予算では、機能していない教育プログラムと、大型の農業企業に対する
不必要な直接支出をやめる。
イラクで何十億ドルもの無駄を生んだ、入札を経ない契約を廃止し、
冷戦時代の兵器システムへの支出を削除するよう国防予算も修正。
高齢者の健康に役立たない高齢者医療保険の無駄、不正、悪用を根絶。
雇用を海外に移転させている企業に対する税減免措置を最終的にやめ、
税制の公正さと均衡を取り戻す。

予算の健全化と説明責任の明確化に努める。
イラクとアフガニスタンでの戦争に関する全コストも含まれる。
我が国は7年間、戦争状態にある。その対価を隠すことはもうしない。

◆安全保障政策

二つの戦争に関する政策を見直し、イラクをイラク人に委ね、
責任ある形で戦争を終わらせる方策を近く発表する。
友邦や同盟国とともに、アフガンとパキスタンでアル・カーイダを
打ち負かし、過激主義と戦う新たな包括的戦略をつくる。
テロリストが、地球の反対側の安全な避難場所から米国人に対する攻撃を
計画することを許さない。

軍の負担を減らすため、予算案では、陸軍と海兵隊を増員する。
軍務に就いている者に対する我々の神聖な信頼を維持するため、
彼らの給与を引き上げ、退役軍人の医療保険や給付金を拡充する。

(キューバの)グアンタナモ湾のテロ容疑者収容施設の閉鎖を指示。
収容者に、迅速かつ確実な司法手続きが行われるよう努める。
米国は拷問しないと言明する。

言葉と行動によって、新しい関与の時代が始まったことを世界に示している。
米国だけで、今世紀の脅威に立ち向かうことはできないし、
世界も米国抜きで脅威に立ち向かうことはできない。
交渉の席を避けることはできないし、我々に害を与える恐れのある敵や勢力を
無視することもできない。

我々に求められているのは、自信と率直さを持って前進すること。
21世紀の挑戦に立ち向かうため、
古くからの同盟を強化し、新たな同盟を形成する。

◆普通の国民の夢

私は人生で、希望は予想外のところから見つかるということも学んだ。
着想はしばしば、力か名声を最も持っている者からではなく、
ごく普通の米国人の夢や野心から生まれる。

私はマイアミの銀行頭取、レナード・アベスのことを思う。
彼は、自分の銀行を売却して6000万ドルを得たが、
それを自分のために働いた399人全員と、かつて彼のために働いていた
72人に分け与えた。
彼は誰にも言わなかったが、地元紙がその情報をつかむと、
彼は、「何人かは私が7歳のころから知っている。
カネを独り占めするのは、正しいことと思えなかった」とだけ語った。

竜巻で完全に破壊されたものの、住民の手で再建が進む
カンザス州グリーンズバーグのことを思う。
クリーンなエネルギーが、いかに地域社会全体を活性化できるか、
レンガやがれきの山だった場所にいかに職やビジネスを
もたらしうるかを示す世界的な例。
「悲劇はむごいものだった」。再建に力を貸した男性は言った。
「しかし、ここの連中は、それ(悲劇)がまた素晴らしい機会を与えてくれた
ということも知っている」

サウスカロライナ州ディロンで訪ねた学校に通うティシェマ・ベセアという
女の子のことも思う。
学校は、天井から水が漏れ、壁のペンキがはがれ、教室のそばを
列車が疾走するため、1日に6回も授業を中断しなくてはならない。
彼女は、学校には希望がないと言われたが、
公立図書館に行って、この議場に座っている人々に向けた手紙を書いた。
手紙には、「私たちはサウスカロライナ州だけでなく、世界も変革できるように、
弁護士や医者、あなた方のような議員、いつか大統領になりたいと
頑張っているただの生徒です。意気地なしじゃないんです」

すべての問題で、合意しているわけではない。
将来、間違いなくたもとを分かつ時があるだろう。
すべての米国人がこの国を愛し、この国の成功を望んでいることも知っている。
これこそが、今後数か月の議論においての出発点となり、
議論が終了した時に立ち返るべき所である。
米国人は、この基礎の上に共通の足場を築くよう求めている。

もし我々が一つとなり、この国を危機の底からすくい上げたなら、
もし我々が人々を仕事に戻し、繁栄のエンジンを再起動させたなら、
もし我々が恐れずに今日の挑戦に立ち向かい、あきらめを知らない
米国の不屈の精神をよみがえらせたなら--。
何年後か、子孫は彼らの子供に対し、
この議場に刻まれた言葉を実行した時だ、と伝えることができる。
「記憶に値すること」を実行した、と。
----------------------------------------------
◆米景気対策法

公共投資と減税を柱とし、2年間で350万人の雇用創出を目指す。
規模は、米国で過去最大の7870億ドル(約75兆円)。
高速道路などのインフラ整備に約1200億ドル、
低所得者向け医療保険への財政支援、教員雇用など
「州財政安定基金」への支援、エネルギー効率化投資なども盛り込んだ。

◆イラク撤退問題

2003年開戦から一貫してイラク戦争に反対するオバマ大統領は、
選挙戦で、駐留米軍の主要戦闘部隊の「就任から16か月以内の撤退」を公約。
性急な撤退による治安の悪化への懸念から、「19か月」や「23か月」など
撤退期限の先延ばしも検討中。イラクに展開中の米軍は、約14万人。

◆グアンタナモ湾のテロ容疑者収容施設

米国が1903年、独立直後のキューバから租借したグアンタナモの
米海軍基地内に設置。
国際テロ組織アル・カーイダ幹部やアフガニスタンの旧支配勢力タリバンの
兵士ら約250人のテロ容疑者が収容。
尋問で水責めなど、人権侵害が行われているとし、
国際社会から閉鎖を求める声が上がった。
オバマ大統領は今年1月、「1年以内の閉鎖」を命じる大統領令に署名。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/2/26/92606/

逆風の中で:第3部・サッカー界は今/5 戦力向上、安定経営

(毎日 2月21日)

競技力向上が先か、安定経営が先か。
「ニワトリと卵」のような難題が、Jリーグ入りした各クラブを悩ませている。
00年以後に参入した7クラブのうち、J1昇格を果たした
経験を持つのは横浜FCのみ。
多くのクラブで競技力、営業力強化が進まず、経営に影響を与えている。
昨年12月、半数近い選手を解雇したFC岐阜徳島ヴォルティスが象徴的。

07年、J入会が承認され、昨季はJ2で戦った岐阜は、
JFL時代等を含めた累積負債が約3億円。
元日本代表選手で広島総監督、日本サッカー協会技術副委員長などを務め、
07年に就任した今西和男社長は、「強化を急ぎすぎた。
『イケイケドンドン』の、つけがまわった」
選手獲得に予算を割いても成績が上がらず、観客動員も伸び悩んだ。
昨年12月、Jリーグから5000万円の融資を受ける事態。

今季、開幕に向けて経営方針を一変。
「給料の高い選手はお引き取り願い、『安い選手』をそろえた」
新たに15選手を獲得、約450万円だった平均年俸を約300万円まで抑えた。

不況の影響もあり、ユニホームの「胸スポンサー」獲得のメドは立たない。
「最低、昨季のスポンサーは確保したかったが、減額や辞退も出ている」
今西社長は、地域貢献活動を重視する考え。
個人の寄付を、1口1000円で受け付ける「You&Me(夢)募金」を開始。
地元の理解を得て観客を増やし、入場料収入を確保する。
「その先に、チーム力がついてくるはず」。そう信じている。

大塚製薬をメーンスポンサーに持つ徳島は、身の丈経営を貫き、
08年度の収支も黒字になる見込み。
戦績は、J2昇格初年度(05年)の9位が最高、以後は3年連続最下位。
「屈辱的な現状」、「『金がない』という言い訳は通らない」など、厳しい声も。

今季開幕に向け、実績のあるGK高桑(横浜マ)、FW徳重(京都)らを獲得。
サポーターとクラブ幹部の意見交換会では、新田広一郎社長が
「目標は(J2の)6位以内」とぶち上げ、中田仁司強化育成部長は
「選手の質を高めるため、大きな補強をした」

サポーター側も、「これだけ期待できるのは初めて」と歓迎。
大補強が成績向上と観客増に結び付く保証はない。
新田社長もこう訴えた。「大不況の中で、(収入を)スポンサーだけで
賄うわけにいかない。入場者収入で選手を獲得するのが、健全経営の姿。
多くの皆さんに支えてもらいたい」
==============
◇昨季のJ2ホームゲーム1試合平均観客数◇
(1) 仙台   14080人
(2) 広島   10840人
(3) セ大阪  10554人
(4) 甲府   10354人
(5) 福岡   10079人
(6) 鳥栖    7261人
(7)★横浜FC  6793人
(8) 山形    6273人
(9) 湘南    5994人
(10)★熊本    5279人
(11)★草津    4215人
(12)★徳島    3862人
(13)★岐阜    3745人
(14)★愛媛    3704人
(15)★水戸    3044人
※★は00年以後にJリーグに参入したチーム

http://mainichi.jp/enta/sports/general/archive/news/2009/02/21/20090221ddm035050007000c.html

2009年3月3日火曜日

英ピアソン日本法人のデラハンティ社長 「デジタルが日本の教育を変える」

(日経 2月19日)

世界最大の教育出版社、ピアソン・エデュケーション(本社英国)は、
デジタル教材の開発など、紙の教科書にとどまらない教育事業を展開。
教育への関心が高いアジアを有力な市場とみて、積極的な投資。
「我々は変革の最先端をいく」と、ブレンダン・デラハンティ社長
日本市場の開拓戦略などを聞いた。

——日本市場の位置づけと特徴は。

「日本は、ピアソンにとって7番目の市場。
最大は米国で、英国、カナダ、オーストラリア、スペインと続く。
アジアでは、香港と日本が売上高でほぼ同規模。
日本と、それ以外の国で違う点が1つある。
日本以外では、学校教育向け教科書を発行。
日本では、英語や日本語など語学学習者向けに特化している

「教育市場という観点でみれば、日本は世界で米国に次ぐ第2位。
日本は、塾など学校以外の教育出費が多い。
中国は、人口が多いものの1人当たりの教育費はまだ少ない」

——少子化により市場が縮小しているが。

「日本の市場は興味深い。
人口減少で、学校教育などの市場は確かに縮小。
欧米に比べ、伝統的な教育制度が生き残っている点も日本の特徴。
教室で先生が教壇に立ち、40—45人の生徒が一斉に学ぶ」

「生徒は本来、1人ひとりが目をかけられるべき。
個人教授に近い教育法が、生徒の力を引き出し向上させる。
教室でも、技術革新が起こるべきだ。
先進技術に秀でた日本人がなぜ、教育分野ではITを積極活用しないのか、
パラドックス(矛盾)だ」

——欧米での教育出版のデジタル化の現状は。

ピアソンの『ブレンディッド・ラーニング(組み合わせ学習)』という
指導法が学校現場などに導入。
先生が教える伝統的なやり方と、最先端のオンライン学習をミックス。
米国では、数学の授業で、紙の教科書とオンラインの問題集を組み合わせ。
教科書に付与された固有の数字で、オンラインの問題集にログインする仕組み。
生徒は、自宅のパソコンで問題集を解き、
得意な分野ではどんどんより難しい問題を自動的に出題。
進ちょく状況や成績は、教師もオンラインで把握できる。
生徒が苦手な分野があれば、教室での教え方を変えられる」

「ピアソンは、オンラインデータを収集。
ネットとの組み合わせ学習は好成績を生み出し、
紙だけの学習よりもはるかに効果がある。
組み合わせ学習の手法は、心理学や経済学などを含め、
全部で43科目が確立」

「生徒が電話で試験を受け、コンピューターが判定する我が社のテストも活用。
試験官の資質に左右されず、客観的な判定が可能。
エッセーを、コンピューターが採点する事業も米国で行っており、
毎年3000万件のエッセーを採点。
英国では、高校生の学習レベルを測る全国テストに活用」

——日本への導入の予定は。

「アジアでは、中国語や日本語などへの対応が難しく、導入が遅れている。
日本でも、大学や高等専門学校など英語学習で取り入れている。
新たな技術が市場に受け入れられるかどうかは、先生の受け止め方による。
デジタル教材を日本に積極投入したいと考えており、
ここ1年で実地調査を行う。
高校の生徒などにメリットが大きいだろう」

「日本市場でも、『TOEFL』と競合する新たな英語テストを秋から導入。
グループの様々な技術を集めて、サービスを開発できるのが我々の強み」

——出版だけでなく、ピアソン傘下の経済紙「フィナンシャル・タイムズ(FT)」
も電子事業に注力。

「ピアソンは、ピアソン・エデュケーションのほか、
FTや書籍の「ペンギン」事業を擁している。
FTは10年前、収益の80%が広告収入。
不況になると、リスクが高くなる事業モデル。
最近は、有料のウェブサイト購読者が増えている」

「書物を生活からなくすことは、当面は不可能。
個人的にも読書が好きで、デジタル機器も使うが、本も読む。
10—20代の人は、携帯電話などの電子機器で文字情報を得るのが当たり前に。
音楽のiTunesのように、新たなダウンロード法の変革が起これば、
ある時点で電子書籍が一挙に普及する可能性はある。
アマゾンの『キンドル』などがあるが、ドイツの企業が開発した、
薄い紙のようなディスプレーの電子書籍機器が1番感触がいい。
使い勝手のいいものが開発されれば、紙の売り上げは減少が避けられない」

電子書籍の成功は、出版社に恩恵をもたらす。
第1に、直販ができることで取次店への手数料がなく、利益率が高まる。
第2に、紙や製本のコストが省ける」

——主力の「ロングマン現代英英辞典」にはどのようなIT技術が活用?

「ピアソンには、コーパスという言語データベースがある。
英語や日本語の話し言葉や書き言葉をネットやメディア、日常会話などから
収集し、ロングマンの英英辞典や英和辞典の製作に生かしている。
言葉が使われる頻度も分析し、最重要の1000語や3000語などを指定。
面白いのは、語学学習者の言い間違いの事例も収集していること。
隠しマイクを服につけて、自然な会話を収録するほか、
ネットのブログからも言葉を集めている。
自然な日本語や英語による辞書が可能な秘密がここにある」

「言葉は日々変わるもの。教育も同じだ。
日本の教育にはリスクがある。
革新的な教え方を取り入れていかないと、今はハイレベルな教育でも、
今後は他の国に追い抜かれるかもしれない。
我々のスタッフはベトナムで、現地政府と英語教育法について話し合う。
サウジアラビアやエジプト、中国でも同様に協力。
日本でも、文部科学省との協議を進めたい。
テクノロジーは、教え方を変えると理解してほしい」

「ピアソンは、IT技術に投資してきた出版社。
我々は、変革の最先端を行く。
ピアソンは、1990年代まで総合商社のようだった。
ウエッジウッド社やフランスにワイン畑まで持っていた。
教育とメディアに絞って事業の選択と集中を進め、
出版事業に必要な最先端技術に投資。
競合他社は、投資しようとしても追いつくのが難しい状況。
教育を向上させるために、紙にこだわらずデジタル化を進めていく」

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/interview/int090218.html

地熱発電に国が本腰 本県での事業拡大期待

(岩手日報 2月28日)

国は、クリーンエネルギーである地熱発電の開発支援に。
2030年度の発電能力を、現在の2-3倍に引き上げる目標を打ち出す方針。
国立公園内の開発促進や、「電気事業者による新エネルギーの利用に
関する特別措置法」(RPS法)で、地熱発電の認定拡大なども検討。
国内有数の地熱発電地域の本県にとって、開発支援に期待。

地熱発電は、CO2をほとんど排出しないため、
温暖化防止からも優れたエネルギー。
開発費用がかさむこともあって1999年以降、
国内で新規発電所は建設されていない。

経済産業省は開発を促進しようと、地熱発電に関する研究会を設置。
本県の2カ所を含む18地熱発電所の出力は53万キロワットで、
国内発電能力の0・2%にとどまるため、
30年度の目標を大幅に引き上げる方向性を打ち出す。

支援策として、国立公園内での開発規制緩和、
電力の買い取りを電力会社に義務づけるRPS法で地熱の認定を拡大、
発電所建設費の補助率引き上げ-などを検討。

産業技術総合研究所によると、国内の地熱資源量は2347万キロワット。
81・9%が国立公園で開発規制を受け、規制緩和や、公園外から掘削して
公園内の熱源を活用する手法なども検討。

現在のRPS法では、大規模な地熱発電所は認定の対象になっていない。
来年は、同法の見直し時期に当たるが、
前倒しで地熱発電の認定拡大も視野に入れる。

経産省電力基盤整備課は、「今のままでは、地熱は30年度の
エネルギー需給見通しでも横ばい。
純国産の再生可能エネルギーとして潜在力も高いので、
事業化に結び付けていきたい」

本県では、松川地熱発電所(八幡平市)が国内で初めて運転を開始。
葛根田地熱発電所(雫石町)と合わせた出力は、10万3500キロワット。
安比や八幡平地区などでも地熱発電の調査を行っているが、
事業化に至っていない。

県の新エネルギービジョンでは、10年度の導入目標を12万キロワット。
県資源エネルギー課の吉田博特命課長は、
「地熱開発には、時間もコストもかかる。
制度の緩和も含めた国の支援が欠かせない」と期待。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20090227_6

減量はカロリー次第、炭水化物や脂肪はOK…米研究所

(2009年2月26日 読売新聞)

米国立衛生研究所(NIH)の研究チームが、
「豊富な食物繊維など心臓に良い食事ならば、
体重の減量は摂取カロリー次第で、炭水化物が多くても
脂肪が多くても変わらない」という結果を、
米医学誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に発表。

研究チームは、30-70歳の男女の肥満者811人に、
4種類の減量法のいずれかを試してもらった。
4種類は、脂肪、たんぱく質、炭水化物の3大栄養素の割合を変えたもの。
どれも食物繊維が多く、心臓に悪い飽和脂肪酸とコレステロールが少ない。

摂取カロリーや運動の目標を各自設けて取り組んだ結果、
2年間にわたって平均4キロ・グラムの減量効果を持続できた。
効果は、3要素の割合には関係なく、
カロリーの摂取量と消費量の差に左右された。

別のチームが一昨年、女性に様々な減量法を1年間比較して、
「炭水化物を減らすのが最も効果的」という結果を発表。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/2/26/92607/

逆風の中で:第3部・サッカー界は今/4 クラブ経営、地域にシフト

(毎日 2月20日)

昨年12月、J1リーグ最終節で敗れJ2降格が決まった
東京ヴェルディのサポーターは試合後、7時間半にわたって
味の素スタジアムに残り、クラブ幹部に説明を求めた。
「現場の意向を無視した補強、解雇の責任はどこに」
などと書かれたメッセージとともに。
だが、それは混迷の一端に過ぎなかった。

不況の波が押し寄せていた。
クラブ運営会社の98・8%の株式を所有する日本テレビ放送網が、
昨年9月の中間連結決算で12億円の赤字を計上。
同社として37年ぶりの赤字転落は、東京ヴへの支援縮小に。
東京ヴの萩原敏雄社長は、日テレの全面撤退こそ否定するが、
「業務委託費」名目で多額の支援を受けてきた日テレだけを頼ることはできず、
「今後は潤沢な資金が下りてくることはない」(東京ヴ広報宣伝部)。

萩原社長は、「多くの株主がチームを支えるようになった方が、
親会社に頼らない経営に近づく」と、今オフは新たな株主探しに奔走。
だが、まだ経営パートナーは確定していない。

今季のスポンサー数は昨季の7、8割。
ユニホームの胸スポンサーも確定していない。
高額年俸のベテランを放出し、外国人選手の新規獲得はゼロ。
Jクラブの年間運営費は、J1が平均30億円、J2が10億円程度、
東京ヴはJ2で戦った06、07年でも20数億円規模を保っていたが、
今季の運営デザインが見えてこない。

入場料収入を十分に増やせなかったことも影響。
Jリーグ創成期は人気選手をそろえ、初代リーグ年間王者に輝くなど
名実ともにトップに君臨。
徐々に成績、集客とも落ち込み、01年以降は本拠地を川崎市から
東京都に移したが、流れは変わらなかった。
Jクラブの営業収入に占める入場料収入の割合はJ1、J2とも20%前後、
東京ヴは7~8%(06、07年)。
3季ぶりでJ1に復帰した08年の平均入場者数は約1万5000人、
同じ味の素スタジアムが本拠地のFC東京より、1万人以上も少ない。

Jリーグは、98年横浜フリューゲルスが出資企業の撤退で
経営難に陥って以降、「地域密着」を根幹に身の丈経営を推奨。
事務局内「リーグマネジメントグループ」では、Jクラブや一般企業で
経理、運営担当の経験を持つスタッフがクラブ経営の安定化促進、
運営ノウハウ共有化などを推進。
米国公認会計士の資格も持つ同グループの小沢昭彦マネジャーは、
経営は、入場料収入がベース。そのよりどころは地元。
企業以外に支えるところがなければ、企業が撤退すると危機になる」

東京ヴでは現在、地元教育委員会と連携して
サッカーコーチの学校巡回活動を大幅に増やすなど
地域活動にシフトしつつある。
クラブ創立40周年の今年、転換期となるか。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/archive/news/2009/02/20/20090220ddm035050053000c.html

2009年3月2日月曜日

第1部企業スポーツの危機(3)「身の丈」強化の限界(氷河期を生き抜く)

(2009/02/24 日本経済新聞)

昨年末、年明けと行われたハンドボール日本代表の強化合宿。
招集されたトヨタ紡織九州の2選手の姿がなかった。
派遣従業員を減らし、佐賀県神埼市の本社工場の生産現場が急変。
「製造技術員室」の2人も職場を離れづらくなった。

「こういうご時世。仕事をしっかりやる姿勢を会社に示すことが先決」
業務部長でもある同社ハンドボール部の原田孝幸ゼネラルマネジャー(GM)は
苦しい胸の内を明かす。
昨年12月から日本リーグの遠征帯同メンバーを4人減らし、
試合前日の宿泊もやめた。

企業チームは、会社側と来年度の活動費をめぐる折衝の真っ最中。
日本ハンドボールリーグ機構の家永昌樹GMは、
「前年比で10―20%減という企業が多い」
ラグビーでは、社員選手よりも高年俸のプロ契約を打ち切るケースが相次ぐ。
底の見えない不況がチーム防衛に走らせる。

オンワードが廃部を決めたアメリカンフットボール・Xリーグ。
昨季1部で最下位のROCBULLは、入れ替え戦を辞退、すすんで2部落ち。
前年には2部を連覇したクラブが、2年連続で入れ替え戦を辞退。
目標とすべき最高峰の舞台を半ば押しつけ合う。

縮み志向の背景には、リーグ参加費もある。
Xリーグ1部の場合、年会費やチケット購入の負担など総額800万円。
プレーオフを勝ち上がって決勝まで進めば、さらに最大750万円。
プロリーグでないから、賞金や放映権料の分配はない。
勝てば勝つだけ、チーム側の持ち出しが増える。

会社とリーグ(競技団体)との板挟みとなったチームの現場は、
双方の顔色をうかがいながら生き残りへ知恵を絞る。
ハンドボール男子の大崎電気は、スター選手の宮崎大輔をフル活用。
今季からホーム試合の入場券を、1000円から2000円に値上げ、
宮崎の所属マネジメント会社の協力を得て、
広告看板スポンサーを6社見つけた。

「興行収支は、トントン以上。会社側の持ち出しを少しでも減らさないと」
と大崎の矢内浩GM。
競技団体への不満も漏れる。
「チームや選手にプロ意識を持てと言うけど、協会がアマチュア。
何でも企業におんぶに抱っこでは困る」

ホンダが撤退するハンド日本リーグは、地域リーグをつくるなど再編。
社会人野球は、大会の統廃合を検討。
競技団体も、生き残り優先の縮み志向を強めている。

来季より、チーム数を10から8に減らすバレーボールのVプレミアリーグ女子。
関係者から「外れたチームが(意欲をなくし)やめてしまうのではないか」と、
コンパクト化のマイナス作用を案じる声も。
本来堅持すべき強化の道筋さえ見失いかねない。

酸味があって、スポーツにもぴったり!ドールからクエン酸約1.5倍のさっぱりバナナが登場

(日経ヘルス 2月25日)

青果物販売大手のドールは、日本で流通するバナナとしては
新品種となるラカタン種のバナナ、「ラカタンバナナ」を3月から本格発売。

ラカタン種は、一般的に日本で食べられているキャベンディッシュ種の
バナナに比べて、ひと回り以上小ぶりで、クエン酸が平均して約1.5倍
含まれているのが大きな特徴。
ほのかな酸味があり、口当たりもさっぱり。
バナナ特有のねっとり感が苦手という人も、食べやすい。
「本場フィリピンでは、『バナナのエリート』と称され、最も愛されている品種」
(ドール営業本部の大滝尋美さん)

バナナはもともと、ブドウ糖や果糖など様々な種類の糖分を含んで
エネルギーになりやすいため、運動前後に好んで食べる人が少なくない。
こうした点に加え、代謝を促すクエン酸も豊富なラカタン種は、
スポーツ後のエネルギー補給に最適として、ドールでは
「スポーツバナナ」として売り出していく考え。

PRの一環で、3月22日に開催される「東京マラソン2009」で、
参加者3万人に計6万本を無償提供する予定。
「通常のバナナが、1本の木から30kg程度とれるのに対し、
ラカタン種は15kg程度と希少性が高い」(大滝さん)ことなどから、
価格も1房298~350円と少し高め。

3月2日にはラカタンバナナの専用サイトを立ち上げ、品種の説明やレシピ、
販売店などの情報を提供していく考え。

http://nh.nikkeibp.co.jp/article/nhpro/20090225/103203/

住田型林業にふれる家造りシンポ参加者生産・加工の現場を見学

(東海新報 2月26日)

仙台市のNPO法人スモリ(須森明理事長)による
「山からの一貫体制による家造りシンポジウム」に参加する
建築関係者らが、同シンポジウムの一環として
住田町で「森林エコツアー」を実施。

地域林業活性化に向けた特色ある取り組みを見学し、
「住田型林業システム」に理解を深めた。
スモリでは、国産材活用による家づくりの支援事業を通じ、
地域経済の活性化や雇用促進、職業訓練に寄与しようと活動。
「山からの一貫体制による家造り」は、林産地で製造したパネルを用いて
住宅を超短工期で建設することにより、
消費者に低コストで提供し、林産地の経済活性化も図ろうとの考え。

今回のシンポジウムは、啓発事業が国土交通省の
地域木造住宅市場活性化推進事業に採択されたのを受けて実施。
初日が仙台市内での超短工期建築現場視察、
2日目が住田町の生産現場を見学する「森林エコツアー」として企画、
建築業関係者ら約60人が参加。

世田米のホテルグリーンベル高勘で、町産業振興課から
「森林林業日本一のまちづくり」の取り組みについて聞いたあと、
下有住字新切地内での現場見学に出発。

案内したのは、地元の農林業・水野哲太郎さん(72)と吉田正平さん(51)。
水野さんは、自ら植林し手入れするスギ林について話し、
「木価はよかったころの三分の一ほど、作業を外に頼めば儲けはない。
住宅建築によい材料を提供したいと、自分で間伐し手入れを続けている」
吉田さんは、カラマツやスギ、ヒノキなどの苗木生産をはじめ、
森林認証を取得したスギ林の管理について説明。
「木価はだいぶ落ち込み、山は荒れがちだが、努力している山も見てもらい、
その木で家を建てようという気持ちが皆さんに生まれればすごくうれしい。
少しでも山もとに還元される流れが出れば、再造林の力になるはず」

超短工期建築を可能とするパネル生産を一体的に手がける木工団地や
陸前高田市のけせんプレカット事業協同組合高田工場を見学。
森林の造成から加工利用にいたるまで、一貫した地域林業活性化への
取り組みについて理解を深めていた。

http://www.tohkaishimpo.com/

理系白書’09:挑戦のとき/5 九州大特任准教授・杉原知道さん

(毎日 3月1日)

人間のように、しなやかに動くヒト型ロボットを作りたい。
そうやって作ることで、ヒトの知能の謎が初めて分かるのではないか。
「介護用とか家事用とか、何の役に立つのかをあれこれ考える前に、まず作る。
うまく動けば用途は、いくらでも思いつくはず」
前のめりな研究姿勢を、自ら「クラフトマンシップ(職人かたぎ)」と呼ぶ。

タップダンスを踊るロボットを作り、05年「愛・地球博」に出品した経験。
母校の常勤ポストをなげうって07年、九州大の新制度
「次世代研究スーパースター養成プログラム」の
学術研究員(特任准教授)に移籍。

成果次第で正規の准教授登用も夢ではないが、
5年間の任期が終わって「お払い箱」となるリスクも。
「本当にいいの?」と仲間に言われたが、
自分一人で一から作る「時間と自由がほしかった。
やりたいことが、今はドンドン出てくる時期だから」
放置されていたヒト型ロボットの自作1号機だけが、九大への「嫁入り道具」

小学2年生のころから、パソコンゲームを改造して周囲を驚かせる
「典型的なパソコン少年」。
次第に「もっとすごいもの」でないと満足できなくなり、
やがて「人間ほど賢いもの」を作るのが夢に。
目標を人工知能からヒト型ロボットに変えたのは、大学2年の時。

ロボットの世界では、企業が強力。
杉原さんが進路を決めた直後の96年、「ASIMO」の前身となる
本田技研工業のヒト型ロボット「P2」の登場に圧倒。
ロボットが職人芸ではなく、工学研究の一分野だと認められる雰囲気に
大学が一変した。

「成功した組織は、次の失敗は許されなくなり、
やがて大胆な冒険は避けるようになるはず。その点、独り身は気楽」

プログラムに従って、なめらかに動かすだけではなく、
跳びはねて着地したり、転びそうになった時のとっさの動きなど
極めて複雑な情報処理と身体制御を、連動する数十個のモーター群と
それを動かす何本かの方程式で形にすることを目指す。

人間は、環境に対して本質的には受け身な存在。
外界に働きかけるだけではなく、外界から押し返される力に
柔軟に応じる動きができて初めて、私たちが身近に感じるはず」
==============
◇すぎはら・ともみち

さいたま市出身。情報理工学博士。04年、東京大大学院を修了、
同大学院知能機械情報学専攻助教を経て07年6月から現職。
電気電子学会(本部・米国)の最優秀論文賞を05年に受賞。

http://mainichi.jp/select/science/news/20090301ddm016040025000c.html

2009年3月1日日曜日

縦割り崩せるか「水の戦略機構」

(日経 2009-02-23)

権威はあるが、権力はもたない——。
そんなうたい文句の組織が発足。「水の安全保障戦略機構
水問題を資源確保、環境保全、防災など様々な角度から統合的に扱う組織、
政策の立案・実行の面で従来とは異なるプロセスを想定している。

どんな組織なのか?
まず権威。設立発起人は、森喜朗・元首相、御手洗冨士夫・日本経団連会長、
丹保憲仁・北海道大学名誉教授の3人。
政界、経済界、学会を代表する「顔」であり、オール・ジャパン体制で
水問題に取り組む姿勢を示す人選。
会社でいえば、取締役会に当たる「執行審議会」の委員には、
産業界・団体の役員、大学教授、有識者など42人が就任。

政界から自民党のほか、公明党、民主党の議員も加わり、超党派の体制。
第1回執行審議会では、森元首相があいさつ、
「ようやく国を挙げて、水に関する取り組みを支援できる構造が生まれます」

「権力」はどうか?
同機構は任意団体であり、法律に基づく権力は与えられていない。
この点では、賢人会議のようなものとも言える。

なぜ、こんな組織にしたのか?
出席したのは、執行審議会の共同議長に就任した遠藤武彦・元農水相と丹保氏。
記者との質疑応答でこんなやり取りがあった。
記者:「国民の関心を集めるには、例えば老朽化した水道管の更新などで
雇用を生み出すプロジェクトを打ち出すべきではないか」
遠藤氏:「私たちが話すのは簡単だが、癒着、談合と言われやすい。
(そうならないよう)わざわざ権威はもつが、権力はもたない組織にした」
国民から、「政治家が水問題で利権を得ようとしているのではないか」と
疑われるのを避けたいようだ。

どうやって政策に影響力を及ぼそうとしているのか?
水問題に取り組む他の組織との関係を示した
「『チーム水・日本』全体像」から見えてくる。

水問題については、経済界や学会などに様々なテーマを掲げた組織がある。
水処理関係の企業が集まり、海外での水ビジネスの拡大を目指している
「海外水循環システム協議会」もその1つ。
水の戦略機構は、これら様々な組織から要望や報告を受けて戦略を策定、
政府などに提言をしていく。

同機構の提言を行政に反映させるのが、「水問題に関する関係省庁連絡会」。
厚生労働省、経済産業省、国土交通省など13の省庁が参加して発足。
「省庁の壁を取り払う」(遠藤氏)狙い。
機構の「権威」が官僚を動かし、連絡会をつくらせたとも言えそう。

同機構の設立を発案したのは自民党だが、あえて超党派の体制にし、
経済界や学会などから多数のメンバーを募った。
“霞が関”を統合的に動かすため、同機構の権威を高めるのが狙い。

「権威はあるが、権力はもたない」という同機構はうまく機能するだろうか?
指導力と透明性の両立が課題に。
権威あるメンバーを大勢集めても、機構としてリーダーシップを
発揮できなければ、縦割り行政の打破はおぼつかない。
多様な水関連団体の要望や報告をしっかり“消化”できるか?
国益を守りながら、海外にも貢献するような提言ができるか?
民間団体などの要望を単に省庁の連絡会につなぐだけでは、
「戦略機構」の名が泣く。

指導力の発揮と同時に、透明性の確保も重要。
戦略機構が省庁連絡会にどんな提言をしているのか?
国民から見えにくければ、遠藤氏が懸念したように癒着、談合のたぐいを
疑われかねない。
省庁連絡会に提言する政策は、分かりやすく一般公開する必要がある。
同機構が指導力と透明性を両立できないと、
「チーム水・日本」の求心力も生まれてこない。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/tanso/tan090219.html

東大・岩坪教授にメトライフ医学研究賞/日本人で2人目

(2009年2月20日 Japan Medicine)

東京大大学院医学系研究科神経病理学分野の岩坪威教授が、
アルツハイマー病研究で成果を挙げた人に贈られる
2008年メトライフ医学研究賞を受けた。

共同受賞者は、ハーバード大のマイケル・S・ウォルフ教授。
受賞理由はともに「γセクレターゼ研究」。
ワシントンで表彰式が行われ、研究補助金20万ドルと個人賞が贈呈。

岩坪氏は、死亡したアルツハイマー病患者の脳組織病理学と
タンパク質生化学に関する研究が評価。
その研究成果は、神経変性のステップを説明する細胞・遺伝子モデルの
作成につながり、アルツハイマー病の発症機序として有力視されている
「βアミロイド仮説」を裏付けた。

βアミロイド仮説とは、脳のβアミロイドタンパク(Aβ)が凝集して脳実質に蓄積し、
アルツハイマー病を発症するというもの。
その過程でAβの産生量を低下させれば、
アルツハイマー病の発症や進行を食い止められるのではないか。

γセクレターゼは、Aβを作り出す酵素の1つで、
Aβの体内生産量を調節する「γセクレターゼ阻害剤」の創薬ターゲット。
γセクレターゼ阻害剤は、現在、各国の製薬企業が開発中。
同賞の日本人の受賞者は、井原康夫氏に次いで2人目。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/2/20/92198/

定額給付金などで大幅増補正予算案を可決 3億円の交付金事業も大船渡市議会

(東海新報 2月26日)

大船渡市議会定例会は、20年度各種会計補正予算など、
議案12件と諮問2件を審議し、いずれも原案通り可決。
今補正予算は、定額給付金給付事業や臨時交付金事業を盛り込み、
6億円近い増額。
21年度各種会計予算案13件は、予算審査特別委員会に付託。

議案は、介護報酬改定に伴う介護保険料の急激な上昇抑制を
目的とした市介護従事者処遇改善臨時特例基金条例の制定と、
20年度一般会計、10特別会計の各補正予算。

補正予算は5億9280万円の増額、本年度予算は197億1450万円。
国・県補助事業費の確定による事業費補正をはじめ、
決算見込みによる予算調整、国の第二次補正予算に伴う定額給付金、
地域活性化・生活対策臨時交付金の関連事業費補正が中心。

主な増額分は、定額給付金事業に6億8633万円、
子育て応援特別手当交付事業に2668万円、
地域活性化・生活対策臨時交付金事業に3億円、
国際貿易コンテナ定期航路開設促進事業に1100万円。

経済対策の一つとして行われる定額給付金事業は、
対象者一人あたり1万2000円を支給。
65歳以上の高齢者と、18歳以下の青少年は2万円が給付。

大船渡市では基本的に、各世帯主の銀行口座への振り込みを
中心とする形で支給を計画。
市生活福祉部の山口清人部長は、「各世帯主に送付した申請書を記入、
通帳と身分証明書の写しを同封して郵送してもらうか、
窓口で申し込みを行う形を考えている」

もれなく市内全世帯に申請書を送る方法として、
郵送後に宛先不在などで戻ってきた場合、追跡調査を行う方針。

給付金の事務作業に伴い、臨時職員も若干名採用。
補正予算案通過を受け、今後申請書の送付作業準備を本格化。
子育て応援特別手当交付金は、第二子以降の3~5歳までを対象、
一人3万6000円を給付、700人分を予算化。
定額給付金との同時期給付を予定。

3億円の地域活性化・生活対策臨時交付金事業では、
道路・水路維持補修事業に1億3460万円、学校施設整備に2820万円、
観光施設整備事業に2000万円などを計上。

年度末の交付金となり、多くの事業は21年度に繰り越した形で実施。
諮問2件は、人権擁護委員に関して意見を求め、
柿崎昌源氏(三陸町吉浜)、木下美榮子氏(三陸町越喜来)の両氏を了承。

http://www.tohkaishimpo.com/

スキー:ノルディック世界選手権 複合団体 日本、復活の「金」 「歴史を作った」

(毎日 2月27日)

複合団体で14年ぶりの優勝を果たした日本(湊、加藤、渡部、小林)
4選手は今大会初のメダル獲得の喜びに浸るとともに、
1年後に迫ったバンクーバー五輪に向け、闘志を新たにしていた。

日本の複合は90年代、前半飛躍で稼ぎ、後半の距離で逃げ切るという
勝ちパターンで一時代を築いた。
今回は、飛躍でやや出遅れても、距離で優勝争いを演じるという
今までにない勝ち方だった。

象徴的だったのが、アンカーの小林。
4位以下が離れ、2位でスタートした小林は、
「メダルは確実。あとはどのタイミングで抜け出すか」と
冷静に仕掛けどころをうかがい、力を蓄えて勝負に備えた。

ワックスの選択が当たり、スキーがよく滑ったため、
「下りで前に出ていれば行ける」と判断し、
残り700メートルの上りでスパート。
ゴール目前の競技場内でも、「余裕があった」といい、
猛追するドイツをかわした。
その姿は、前半飛躍の貯金で後半距離は悠々とゴールする
荻原健らとは違っていた。

急成長中の湊が183センチの長身を生かした滑りで1位に躍り出て、
距離に不安のある加藤も粘った。
渡部も集団に食らいついた。
それぞれが距離で力を発揮し、飛躍の得意な高橋大斗(土屋ホーム)が
外れた試合で勝ったという結果が、距離での健闘を物語っている。

複合選手だった父の影響で競技を始めた小林は、
荻原健らの活躍をテレビで見て、「かっこいい。自分もああなりたい」
20歳の渡部にとって、日本の全盛期は既に「歴史」。
その歴史と常に比較されてきただけに、小林は
「ぼくらが新しい歴史を作ったと思う」と胸を張った。
バンクーバーへ向け、新スタイルによる「お家芸」復活ののろしが上がった。

◇最後の直線、競り勝つ

前半飛躍5位の日本は、後半距離をトップと24秒差でスタート。
距離を得意とする第1走者の23歳、湊祐介(東京美装)から
首位争いを展開し、24歳の加藤大平(サッポロノルディックク)、
20歳の渡部暁斗(早大)も力走して先頭集団を形成。
最終走者の26歳、小林範仁(東京美装)がドイツ、ノルウェーとの
競り合いから抜け出し、最後の直線で追いすがるドイツを振り切ってゴール。

日本は、荻原健司らを擁した92~95年に五輪と世界選手権を4連覇し、
世界最強の名をほしいままに。
98年長野五輪はメダルなしに終わり、荻原健の引退もあって低迷。
今回の勝利は、来年のバンクーバー五輪へ弾みをつける復活劇。

金メダルに輝いた日本は、リベレツ市内でのメダルセレモニーに出席。
4人は市民らの歓声を浴びながら、ステージ中央で
メダルとトロフィーを受け取り、喜びを爆発。

湊は「不思議な気持ち」、加藤は「うれしい。夢みたい」と笑い、
渡部は「メダルは取れたらいいなぐらいに思っていた」
小林は「バンクーバー五輪へ、いいステップになった。
勝ったのはたまたまだと思っている。
まだ課題はあるので、しっかりステップアップしたい」と、
冷静に1年後へ気持ちを切り替えていた。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/archive/news/2009/02/27/20090227dde035050020000c.html

逆風の中で:第3部・サッカー界は今/2 英クラブの巨額負債

(毎日 2月18日)

イングランド・サッカー協会のトリーズマン会長は昨年10月、
イングランドのクラブが合わせて約30億ポンド(約3900億円)の
巨額負債を抱えている。

近年、プレミアリーグは外国資本によるクラブ買収が相次いだ。
03年、ロシア人の大富豪アブラモビッチ氏がチェルシーを買収。
05年、米国人実業家のグレーザー氏がマンチェスター・ユナイテッドを、
07年、米国人のジレット、ヒックスの両氏がリバプールを買収。
「4強」のうち、国外の富豪に買収されていないのはアーセナルのみ。

高年俸を用意して世界中からスターをかき集め、
「世界最高のリーグ」と称されるまで成長したプレミアリーグ。
好況時に隠れていた借金依存度の高さが、
金融危機で改めてクローズアップ。

国際的監査法人デロイト社によると、07年プレミアリーグの負債は
前年比19%増の24億6900万ポンド(約3210億円)。
マンチェスター・ユナイテッドの6億500万ポンド(約786億円)、
チェルシーの6億2000万ポンド(約806億円)などが目を引く。
トリーズマン会長の発言は、負債が膨らみ続ける現状を警告、
ビッグクラブが破綻する可能性についても、「あり得る」と語った。

世界的な金融危機は、外国人オーナーの懐をも直撃。
資金繰りがつかなくなり、経営難に陥るクラブが続出。
英国ではリバプールや、アイスランド人のグズムンドソン氏が
オーナーのウェストハムが売却される可能性があるなど、
ロシア系フランス人オーナーが会長を務め、
身の丈を超えた大量補強が裏目に出たポーツマスなども、身売り話が浮上。

プレミアリーグは、10年から3シーズンのリーグ生中継(英国内)の
放送権の3分の2を、オーストラリア生まれの「世界のメディア王」、
ルパート・マードック氏が所有する「ニューズ・コーポレーション」傘下の
英衛星テレビ大手「BスカイB」が獲得。

英紙タイムズは、入札額が前回の3シーズンを上回る
16億ポンド強(約2100億円)に達し、巨額な契約の影で、
クラブレベルでは危機は着実に進行。
状況がより深刻なのは、プレミアリーグより注目度が低い
欧州他国のリーグという声も。

国際サッカー連盟のブラッター会長は、金融危機を「津波」に例えて
警鐘を鳴らした。
まず影響を受けるのは、小さなクラブ。
そこから波が広がって第3波、第4波が襲ってくる可能性。
今、大丈夫だからといって安心はできない」

http://mainichi.jp/enta/sports/general/archive/news/2009/02/18/20090218ddm035050042000c.html