(毎日 3月1日)
人間のように、しなやかに動くヒト型ロボットを作りたい。
そうやって作ることで、ヒトの知能の謎が初めて分かるのではないか。
「介護用とか家事用とか、何の役に立つのかをあれこれ考える前に、まず作る。
うまく動けば用途は、いくらでも思いつくはず」
前のめりな研究姿勢を、自ら「クラフトマンシップ(職人かたぎ)」と呼ぶ。
タップダンスを踊るロボットを作り、05年「愛・地球博」に出品した経験。
母校の常勤ポストをなげうって07年、九州大の新制度
「次世代研究スーパースター養成プログラム」の
学術研究員(特任准教授)に移籍。
成果次第で正規の准教授登用も夢ではないが、
5年間の任期が終わって「お払い箱」となるリスクも。
「本当にいいの?」と仲間に言われたが、
自分一人で一から作る「時間と自由がほしかった。
やりたいことが、今はドンドン出てくる時期だから」
放置されていたヒト型ロボットの自作1号機だけが、九大への「嫁入り道具」
小学2年生のころから、パソコンゲームを改造して周囲を驚かせる
「典型的なパソコン少年」。
次第に「もっとすごいもの」でないと満足できなくなり、
やがて「人間ほど賢いもの」を作るのが夢に。
目標を人工知能からヒト型ロボットに変えたのは、大学2年の時。
ロボットの世界では、企業が強力。
杉原さんが進路を決めた直後の96年、「ASIMO」の前身となる
本田技研工業のヒト型ロボット「P2」の登場に圧倒。
ロボットが職人芸ではなく、工学研究の一分野だと認められる雰囲気に
大学が一変した。
「成功した組織は、次の失敗は許されなくなり、
やがて大胆な冒険は避けるようになるはず。その点、独り身は気楽」
プログラムに従って、なめらかに動かすだけではなく、
跳びはねて着地したり、転びそうになった時のとっさの動きなど
極めて複雑な情報処理と身体制御を、連動する数十個のモーター群と
それを動かす何本かの方程式で形にすることを目指す。
「人間は、環境に対して本質的には受け身な存在。
外界に働きかけるだけではなく、外界から押し返される力に
柔軟に応じる動きができて初めて、私たちが身近に感じるはず」
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◇すぎはら・ともみち
さいたま市出身。情報理工学博士。04年、東京大大学院を修了、
同大学院知能機械情報学専攻助教を経て07年6月から現職。
電気電子学会(本部・米国)の最優秀論文賞を05年に受賞。
http://mainichi.jp/select/science/news/20090301ddm016040025000c.html
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