(2009年2月26日 読売新聞)
◆経済の再建
我々の経済は弱体化し、自信も揺らいでいるかもしれない。
困難で不確実な時代を生きている。
すべての米国人にこのことを知ってほしい。我々は再建し、回復する。
米国は、以前よりも強くなって現れる--ということを。
危機の重大さが、国の運命を決定づけるわけではない。
問題への解答は、手の届かないところにあるのではない。
解答は、我が国の研究室や大学、田畑や工場、起業家の想像力、
地球上で最も勤勉な労働者たちの誇りのなかに存在する。
米国を人類史上、進歩と繁栄の最大の力とならしめた特質を十分に持っている。
今求められているのは、一致団結し、直面する課題に大胆に立ち向かい、
我々の未来に対する責任を担うこと。
長期的な繁栄よりも、短期的な利益が称賛される時代を生き、
次の支払いや、次の四半期、次の選挙の先を見ることを怠った。
黒字は、将来に投資する機会ではなく、富を富める者に配分する口実に。
規制は、健全な市場を犠牲にし、短期間に利益をあげるため骨抜きに。
人々は、たちの悪いローンを押しつける銀行や金融業者から、
支払いの無理な住宅を購入した。
重要な論議と困難な決断は、先延ばしされてきた。
その清算の日が来た。我々の未来に責任を負う時も。
経済を再生するだけでなく、永続的な繁栄につながる新しい基礎を築くため、
今こそ大胆かつ賢く行動する時。
財政赤字の削減という難しい選択をしながら、雇用を創出し、融資を再開し、
エネルギーや医療、教育といった経済を成長させる分野に投資する時。
(金融安定化の)計画には、政府からのかなりの資金が必要。
費用は巨額になるが、何もしなかった場合の損失は、はるかに大きい。
景気対策法と金融安定化策は、短期的に経済を再生するための当面の方策。
経済力を完全に回復させる唯一の方法は、新たな雇用や産業を生み、
他国との競争力を刷新するための長期的な投資を行うこと。
今世紀が米国の世紀となる唯一の道は、石油資源への依存や
高コストの医療保険、子供たちを育成しない学校、子供たちが
受け継ぐことになる債務の山に向き合うこと。
それが我々の責務だ。
議会に提出する予算案を、米国の展望、未来への青写真とみている。
予算案は、すべての課題を解決しようとするものでも、
すべての問題に対処しようとするものでもない。
1兆ドル規模の赤字や金融危機、手痛い景気後退といった、
ありのままの現実を反映したもの。
価値ある優先事項のいくつかを犠牲にしなければならない。
だからといって、長期的な課題を無視していいわけではない。
問題は自然に解決するという見方や、政府が繁栄の基礎を築くために
できることはない、といった見方を拒絶する。
◆エネルギー
不要な事業は削減するが、経済の将来に不可欠な三つの分野、
エネルギー、医療、教育に投資する。
クリーンで再生可能なエネルギーを利用する国が、21世紀を主導。
エネルギー効率の良い経済のため、最大の取り組みを打ち出したのは中国。
我々は太陽光発電の技術を開発したが、
生産はドイツや日本に後れをとっている。
新しいプラグインハイブリッド車は、米国から生み出されているが、
韓国製のバッテリーで走る。
明日の雇用と産業が、海外に根付くような未来は受け入れない。
米国が再び主導する時。
経済を真に変革させ、安全を保ち、気候変動による破壊から地球を救うため、
クリーンで再生可能なエネルギーを、利益を生むエネルギーにする必要。
市場原理に基づく温室効果ガスの規制と、再生可能なエネルギーの
生産向上につながる法案を提出するよう求める。
自動車産業について、誤った経営判断と世界的な景気後退が
自動車メーカーをがけっぷちに追い込んだと認識。
彼らを悪い習慣から守るべきではないし、守らない。
新たな手段と発想を持ち、競争して勝てる自動車産業を作る目標を追求。
何百万人もの雇用が(自動車産業に)かかっている。
自動車を発明した国は、見捨てることはできない。
◆医療制度改革
高コストな医療保険の問題にも対処。
米国で、30秒ごとに破産が起きている。
今年末までに、150万の米国人が住む家を失いかねない。
この8年間、保険料は給与の4倍の速さで上昇し、
毎年新たに100万人が健康保険を失った。
小規模な事業が廃業し、企業が海外に雇用を移す主要な原因の一つ。
我が国の予算で最も大きく、増加が速い部門。
もはや医療制度改革は待ったなし。
我々は、過去10年間よりも、医療制度改革を前進させるための成果を上げた。
本議会は、両親がフルタイムで働く子供1100万人に医療保険を与え、
守る法案を可決した。
景気対策法案では、医療の電子記録に投資する。
誤りを減らし、コストを低減し、プライバシーを尊重し、
生命を救う新しい技術に投資。
がんを克服する治療法を研究する。
予防医療に過去最大の投資も行う。
改革をどう実現するか、異なる意見が多数あるだろう。
企業や従業員、医師や保険会社、民主党と共和党を集め、
この問題への取り組みを始める。
これは難しいプロセスになる。
セオドア・ルーズベルト(大統領)が改革を呼びかけてから1世紀近く、
医療保険があまりにも長く経済と我々の良心を圧迫してきた。
疑いを持ってはいけない。改革は待ったなしだ。
◆教 育
グローバル化した経済では、知識こそが最も価値ある技能で、
良い教育はもはや機会への糸口ではなく、必須条件。
良質の教育を実施する国は、明日我々を負かす。
すべての子供に、生まれた日から職に就くまで、
完全かつ競争力のある教育を与えること。
今回の景気対策法に、教育への歴史的な投資を盛り込んだ。
すべての米国人に、最低でも1年以上を
高等教育や職業訓練に費やすように求める。
全員が高卒以上を目指すべき。
中退は、もはや選択肢ではない。
自らを放棄するだけでなく、我が国を放棄することになる。
我が国は、すべての米国人の価値や才能を必要としている。
教育政策は機会の扉を開くが、子供たちにこの扉をくぐらせるのは親の仕事。
子供たちの教育への責任は、家庭で始まらなければいけないと言う時、
私は大統領としてだけでなく、父親として語っている。
◆予算案
予算に関する(超党派の)幹部会議を開き、
財政赤字を1期目の任期終了までに半減させることを約束。
無駄で効率の悪い事業を削るため、連邦予算を項目ごとに精査する。
時間のかかるプロセスであることは、想像できる。
今後10年間で2兆ドル節約できる事業を特定。
予算では、機能していない教育プログラムと、大型の農業企業に対する
不必要な直接支出をやめる。
イラクで何十億ドルもの無駄を生んだ、入札を経ない契約を廃止し、
冷戦時代の兵器システムへの支出を削除するよう国防予算も修正。
高齢者の健康に役立たない高齢者医療保険の無駄、不正、悪用を根絶。
雇用を海外に移転させている企業に対する税減免措置を最終的にやめ、
税制の公正さと均衡を取り戻す。
予算の健全化と説明責任の明確化に努める。
イラクとアフガニスタンでの戦争に関する全コストも含まれる。
我が国は7年間、戦争状態にある。その対価を隠すことはもうしない。
◆安全保障政策
二つの戦争に関する政策を見直し、イラクをイラク人に委ね、
責任ある形で戦争を終わらせる方策を近く発表する。
友邦や同盟国とともに、アフガンとパキスタンでアル・カーイダを
打ち負かし、過激主義と戦う新たな包括的戦略をつくる。
テロリストが、地球の反対側の安全な避難場所から米国人に対する攻撃を
計画することを許さない。
軍の負担を減らすため、予算案では、陸軍と海兵隊を増員する。
軍務に就いている者に対する我々の神聖な信頼を維持するため、
彼らの給与を引き上げ、退役軍人の医療保険や給付金を拡充する。
(キューバの)グアンタナモ湾のテロ容疑者収容施設の閉鎖を指示。
収容者に、迅速かつ確実な司法手続きが行われるよう努める。
米国は拷問しないと言明する。
言葉と行動によって、新しい関与の時代が始まったことを世界に示している。
米国だけで、今世紀の脅威に立ち向かうことはできないし、
世界も米国抜きで脅威に立ち向かうことはできない。
交渉の席を避けることはできないし、我々に害を与える恐れのある敵や勢力を
無視することもできない。
我々に求められているのは、自信と率直さを持って前進すること。
21世紀の挑戦に立ち向かうため、
古くからの同盟を強化し、新たな同盟を形成する。
◆普通の国民の夢
私は人生で、希望は予想外のところから見つかるということも学んだ。
着想はしばしば、力か名声を最も持っている者からではなく、
ごく普通の米国人の夢や野心から生まれる。
私はマイアミの銀行頭取、レナード・アベスのことを思う。
彼は、自分の銀行を売却して6000万ドルを得たが、
それを自分のために働いた399人全員と、かつて彼のために働いていた
72人に分け与えた。
彼は誰にも言わなかったが、地元紙がその情報をつかむと、
彼は、「何人かは私が7歳のころから知っている。
カネを独り占めするのは、正しいことと思えなかった」とだけ語った。
竜巻で完全に破壊されたものの、住民の手で再建が進む
カンザス州グリーンズバーグのことを思う。
クリーンなエネルギーが、いかに地域社会全体を活性化できるか、
レンガやがれきの山だった場所にいかに職やビジネスを
もたらしうるかを示す世界的な例。
「悲劇はむごいものだった」。再建に力を貸した男性は言った。
「しかし、ここの連中は、それ(悲劇)がまた素晴らしい機会を与えてくれた
ということも知っている」
サウスカロライナ州ディロンで訪ねた学校に通うティシェマ・ベセアという
女の子のことも思う。
学校は、天井から水が漏れ、壁のペンキがはがれ、教室のそばを
列車が疾走するため、1日に6回も授業を中断しなくてはならない。
彼女は、学校には希望がないと言われたが、
公立図書館に行って、この議場に座っている人々に向けた手紙を書いた。
手紙には、「私たちはサウスカロライナ州だけでなく、世界も変革できるように、
弁護士や医者、あなた方のような議員、いつか大統領になりたいと
頑張っているただの生徒です。意気地なしじゃないんです」
すべての問題で、合意しているわけではない。
将来、間違いなくたもとを分かつ時があるだろう。
すべての米国人がこの国を愛し、この国の成功を望んでいることも知っている。
これこそが、今後数か月の議論においての出発点となり、
議論が終了した時に立ち返るべき所である。
米国人は、この基礎の上に共通の足場を築くよう求めている。
もし我々が一つとなり、この国を危機の底からすくい上げたなら、
もし我々が人々を仕事に戻し、繁栄のエンジンを再起動させたなら、
もし我々が恐れずに今日の挑戦に立ち向かい、あきらめを知らない
米国の不屈の精神をよみがえらせたなら--。
何年後か、子孫は彼らの子供に対し、
この議場に刻まれた言葉を実行した時だ、と伝えることができる。
「記憶に値すること」を実行した、と。
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◆米景気対策法
公共投資と減税を柱とし、2年間で350万人の雇用創出を目指す。
規模は、米国で過去最大の7870億ドル(約75兆円)。
高速道路などのインフラ整備に約1200億ドル、
低所得者向け医療保険への財政支援、教員雇用など
「州財政安定基金」への支援、エネルギー効率化投資なども盛り込んだ。
◆イラク撤退問題
2003年開戦から一貫してイラク戦争に反対するオバマ大統領は、
選挙戦で、駐留米軍の主要戦闘部隊の「就任から16か月以内の撤退」を公約。
性急な撤退による治安の悪化への懸念から、「19か月」や「23か月」など
撤退期限の先延ばしも検討中。イラクに展開中の米軍は、約14万人。
◆グアンタナモ湾のテロ容疑者収容施設
米国が1903年、独立直後のキューバから租借したグアンタナモの
米海軍基地内に設置。
国際テロ組織アル・カーイダ幹部やアフガニスタンの旧支配勢力タリバンの
兵士ら約250人のテロ容疑者が収容。
尋問で水責めなど、人権侵害が行われているとし、
国際社会から閉鎖を求める声が上がった。
オバマ大統領は今年1月、「1年以内の閉鎖」を命じる大統領令に署名。
http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/2/26/92606/
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