2010年10月16日土曜日

部活新時代(8)文武両道支えるカード

(読売 10月6日)

「今日は、部活に遅刻したから『時間』の欄は×。
でも、大声を出せたから『気合』は○……」
埼玉県白岡町立南中学校の剣道部2年、田中真由佳さん(14)が、
稽古中の自分を振り返りながら、カードに○×をつけていく。
練習してうまくできた技や、重点的に取り組んだ課題も書き込んでいく。

田中さんがつけていたのは、「剣道生活カード」。
A4判で、部活だけでなく、起床時刻、朝食、授業から夕食、消灯まで
22項目の生活全般のふり返りと評価が、1か月分記入。
裏面には、自主練習の内容などが書き込める。

カードは約20年前、顧問の野口敏彦教諭(54)が、
当時赴任していた町内の別の中学校の剣道部で、初めて導入。
9年間に団体、個人合わせて7回、全国大会出場へ導いた。
1日1回、反省し、自分の成長を確かめる機会を得ることで、
自己管理能力が高まり、練習の目的意識も向上する。
それは、勉強する上でも役立つはず」と野口教諭。

野口教諭は昨年春、南中に着任し、カードもこの9月に始まった。
9月末に開かれた地区予選の団体戦では、
田中さんら女子チームが優勝。
個人戦も、男女6人が10位以内に入った。

田中さんは、「最初は面倒くさかったけど、前日の記録を見ながら、
『今日はどういうふうに工夫しようか』と考えるようになった」

カードから判明した苦手な技を克服したり、得意技を磨く
「課題練習」では、生徒がペアを組み、互いに助言しながら打ち込み合う。
野口教諭は、「上達するには、自分で考えて練習しなくては。
一種の問題解決型学習」、決して部員をどならない。

県大会は11月。
部員たちは、カードをペースメーカーに、いっそう稽古に励んでいる。

2008~09年の学習指導要領改定では、部活と授業など
教育課程の関連を図ることが明記。
野口教諭のような実践は、まだ少ない。

西島央・首都大学東京准教授は、
「新しい制度や特別な予算が必要な場合も考えられるが、
自治体の動きも鈍い」。

西島准教授らのグループが、東北から九州まで
8都県内の全教育委員会を調査したところ、
教育課程との関連付けを検討しているのは、
回答があった教委の2割にすぎなかった。
西島准教授は、「教委は現場に丸投げせず、積極的に取り組んでほしい」

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20101006-OYT8T00228.htm

日本の研究者、内向きに…海外派遣10年で半減

(読売 10月9日)

共同研究などのため、海外に長期(31日以上)にわたって
派遣される国内の研究者が、ピーク時の半分以下に減少。

今年のノーベル化学賞受賞が決まった日本人2博士は、
海外での切磋琢磨が業績の原動力になった。
現在の日本人研究者の内向き志向が、改めて浮き彫りに。

調査結果によると、国公私立大などの研究機関から昨年度、
教員など所属機関との雇用関係を維持したまま、
海外に派遣された研究者は3739人。
ピーク時の2000年度は7674人。

文科省は、派遣研究者の増加を目指して支援策を拡充、
減少傾向が続いている。
担当者は、「日本の研究環境が整い、あえて海外に挑戦する
研究者が少なくなっている面もあるのではないか」

http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20101009-OYT1T00578.htm

農業観光の魅力向上へ 滝沢村でモニター調査

(岩手日報 10月10日)

滝沢村とNPO法人学生ビジニティいわて(佐々木正人理事長)は、
近年注目を集める参加・体験型の観光メニュー導入へ、
村内農家2軒を訪問するモニター調査を行った。

リンゴや野菜収穫の農業体験を提供しながら、
観光客のニーズを把握。
今月末に予定する、農村体験ツアーの魅力アップを探った。

農業観光活性化事業の一環。
県立大生ら9人に、モニターを依頼。
午前は、リンゴ栽培やもち菓子製造に取り組む同村大釜の
農業日向清一さん(60)宅を訪問。
昼食は、地産地消メニューを味わい、午後も野菜収穫に汗を流した。

日向さん宅では、色づき具合を判断してわせ「ふじ」を収穫したり、
サツマイモとリンゴの重ね煮を試食。
妻の陽子さん(58)は、「主催者が提案した、もみ殻で調理する
焼きリンゴなど、参考になった部分も多かった」

農業を軸にした観光メニューの導入は、農業体験を受け入れる
24軒を紹介している「たきざわNOSON(のーそん)マップ」の
発行がきっかけ。
農家の意識改革や新たな観光客開拓が狙い。

同村は、盛岡市のベッドタウンとして人口増加が続いてきた一方、
果樹栽培や酪農も盛ん。
村商工観光課の鳴海志帆主任は、
「滝沢は、観光地としては未開拓の部分が多い。
新しい住民に愛着を持ってもらい、さらには他県からの
誘客にもつなげたい」と、展望を描く。

今回の調査結果を基にした農村体験ツアーは30、31の両日に実施。
問い合わせは、学生ビジニティいわて(019・643・0235)へ。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20101010_9

2010年10月15日金曜日

部活新時代(7)顧問教員の「献身」頼り

(読売 10月2日)

「音つかんでないよ!」、「ハイッ」。
板橋区立赤塚第三中学校の音楽室。
指揮棒を振りながら容赦ない声を飛ばすのは、
吹奏楽部顧問の斉藤厚子教諭(51)。

公立中の音楽教師になって以来、29年間、吹奏楽部の指導一筋。
以前教えた4校では、いずれも都大会入賞や全国大会出場へ。
同中には昨春着任、9月に行われた都吹奏楽コンクールでは、
見事金賞を射止めた。

平日放課後に加え、土曜日は朝から夕方まで練習。
夏休みも練習した。
生徒は、お盆のころに2週間休んだが、都中学校吹奏楽連盟で
副理事長を務める斉藤教諭が休めたのは1週間。

「『疲れた』と愚痴ることもあるが、部活は生徒が精神的に成長できる
またとない機会」と、長年顧問を続けてきた理由を明かす。

部活の教育的意義が、高く評価されている。
授業や学校行事からなる教育課程以外の活動として扱われ、
教員が顧問に就くことが、職務なのか、ボランティアなのか、
あいまいなままにされてきた。

1998~99年、改訂された学習指導要領では、
部活に関する言及が消えたため、「職務ではない」として、
顧問を引き受けない教師が増加。
生徒減とともに、廃部が相次ぐ一因。

こうした事態に気づいた国は、08~09年の改訂で、
部活について具体的に言及。
今後、「部活は職務」として扱う動きが広がっていく。

「頑張っている教師を支援することも必要」、
国は08年秋から、自治体に交付する義務教育費国庫負担金の算定で、
教員の休日の部活指導に支払う手当を、
1日あたり1200円から2400円に引き上げた。
部活の振興に力を入れる都は今春から、国の基準を上回る
3200円の手当を支給。

斉藤教諭の家計も、おかげでちょっぴり潤うように。
「助かっている。
楽譜やCDの購入などで、年間20万円ほど自腹を切る。
大変だが、部活を通じて人を育てていきたい」、
亡き夫の洋潮さんが野球部顧問を務めた同中で、
全国大会出場を目指し、指揮棒を振り続けるつもり。

部活は、教員の勤務が多忙になる中、
その献身的な活動によって成り立っている。

西島央・首都大学東京准教授は、「指導要領の改訂を機に、
顧問となる教員を支える制度や組織を、それぞれの地域の特徴に
合わせて構築してほしい」と訴えている。

◆学習指導要領

国が学校教育の内容や水準を定め、ほぼ10年ごとに改訂。
08~09年の改訂で、部活は「スポーツや文化及び科学等に親しませ、
学習意欲の向上や責任感、連帯感の涵養等に資するものであり、
学校教育の一環として、教育課程との関連が図られるよう留意する」

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20101002-OYT8T00157.htm

筋肉分子の“2足歩行”直接撮影に成功

(サイエンスポータル 2010年10月12日)

筋肉の動きを分子レベルで直接、撮影することに、
金沢大学の研究グループが初めて成功。

筋肉の動きが、アクチンとミオシンというタンパク分子によって
行われていることは、早くから知られている。
二つの“脚”を持つミオシンが、アクチンの上を人が歩くように
交互に前進するという動きの基本も分かっていた。

蛍光顕微鏡によるこれまでの観察では、ミオシンが実際に“歩いている”
状態を直接、観察することは顕微鏡の性格上できなかった。

金沢大学理工研究域数物科学系の安藤 敏夫・教授と
古寺 哲幸・助教らは、原子間力顕微鏡の可視化速度を、
約1,000倍高める改良を行い、ミオシンの“歩く”様子を
はっきりととらえること成功。

ミオシンの動きをとらえた映像は、金沢大学生物物理学研究室の
ホームページで公開、これまで考えられていたのとは異なり、
ミオシンの歩き方は、前足が軸足になり、その回転する動きで
後ろ足が前足の前方に出る、という繰り返しによって
行われていることが初めて分かった。

原子間力顕微鏡は、針を試料の1点1点に接触させて、
分子全体の形を直接見ることができる。
これまでの装置では、1点1点の接触を分子全体で行うには
相当の時間がかかるため、分子の動きは見えなかった。

生体分子の動きを直接観察できることは、ミオシンに限らず、
さまざまな生体分子の機能解明にも大きな武器となることから、
改良された原子間力顕微鏡は、ナノテクノロジーの発展にも
大きな貢献が期待できる。

http://www.scienceportal.jp/news/daily/1010/1010121.html

厩猿信仰の謎に迫る 奥州・前沢で企画展

(岩手日報 10月8日)

奥州市の牛の博物館(内田宏館長)は、
企画展「厩の記憶―なぜ猿はそこに居たのか」を開催。

猿の骨を、牛馬の小屋に祭る民間信仰「厩猿(うまやざる)」について、
収集と調査の先導的役割を果たしてきた同館の研究の集大成。
奥州市内で発見された16点の厩猿を展示し、
歴史的背景や猿の来歴など、謎の多い信仰に多角的に迫る。

厩猿は、牛馬の守り神として全国で確認されている信仰だが、
詳しい意味や由来は分かっていない。
全国で82例が確認、うち奥州市内の発見が18例と突出。

同館では、2004年に企画展を開催後、
地域から情報が寄せられるようになり、本格的に研究を開始。
京都大霊長類研究所の故中村民彦さんらと連携、
東北の厩猿情報収集、研究を担ってきた。

企画展に合わせた調査でも、江刺区米里地区から厩猿を
相次いで発見。
実際に牛のいる牛舎に祭られた、貴重な「現役の厩猿」も確認。

企画展では、奥州市内で発見された厩猿について、
祭り方や口承、猿の性別、年齢などの説明を加えて展示。
同館の所蔵する全国の牛馬安全札60点も展示、
厩猿につながる牛馬信仰の多様性を紹介。

生きた猿を厩につなぐ古来の風習や、厩猿が明治以降廃れた原因など、
信仰の系譜や歴史にも迫る。
厩猿のDNA分析では、北上山地(北上高地)や奥羽山脈など、
猿の生息域も明らかにする。

小野寺義文館長補佐は、「地域住民の協力で、
貴重な厩猿を一堂に展示できた。
牛馬の産地である本県と厩猿のかかわりは深い。
謎の多い信仰について、現在までの研究成果を紹介している」

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20101008_16

2010年10月14日木曜日

脊髄損傷マウスの治療に成功した奈良先端科学技術大学院大教授の中島欽一さん

(2010年10月6日 共同通信社)

神経幹細胞と、てんかん薬を使って神経を再生させ、
脊髄を損傷したマウスを歩けるまでに回復させることに成功。
米医学誌に発表。

研究成果が報道されると、脊髄損傷患者やその家族から、
いつ実用化されるのかと問い合わせが相次いだ。
中には、「私を実験台にして、治療を試してほしい」との悲痛な訴えも。

マウスでは成功したものの、人間で応用するには、課題が山積み。
「患者さんのつらい気持ちは分かるが、私にできるのは基礎研究まで。
臨床応用は、医師らにお願いするしかない」と、歯がゆい心境を明かす。

下半身がまひしたマウスが歩いた、と報告を受けたとき、
「しっかり証明しなければ」と思った。
欧米の一流科学誌には、「データがきれいすぎる」と信じてもらえず、
突き返されたことも。
論文が掲載されたのは、実験成功から約4年後。

九州大入学時の専攻は、化学。
身近に感じた生物学に興味を抱き、ハブ毒の研究で博士号を取った。
大阪大や熊本大で、免疫学や神経発生学を研究し、
米国留学から帰国した2004年、36歳で奈良先端大の教授に。

「やりたいことをやっていたら、結果が出た」と謙遜するが、
努力はしてきた、との自負がある。
研究員時代、早朝から深夜まで実験に没頭。

研究テーマは、脊髄損傷にとどまらない。
生物は、分からないことがいっぱいあるから、おもしろい」。
学生のころから続けるサーフィンが趣味の43歳。
熊本市出身。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/10/6/126554/

部活新時代(6)夢追い クラブも選択肢

(読売 10月1日)

「パスミスに気をつけろ」。
照明のともった横浜市中区の大鳥中学のグラウンドに、
サッカーボールを追いかける子どもたちの元気な声が響きわたる。

同市を中心に活動するスポーツクラブ
「横浜スポーツ&カルチャークラブ(YSCC)」の中学生ら約40人。

YSCCは、地域に根ざした多世代型のスポーツクラブ。
創立は1986年、もともとはサッカークラブだったが、
2006年、地域総合型クラブへ移行。
幼稚園児から高齢者まで約800人が、テニス、バドミントンなど
様々なスポーツを楽しんでいる。

サッカーをする中学生は約75人。
1年生は、リフティングなど基礎をメーンに、3年生になると、
戦術など応用主体のメニューを組む。
指導にあたるのは、サッカー経験の豊富な3人のコーチ。
「きめの細かい指導は、クラブならではのもの」、
理事長の吉野次郎さん(45)。

学校の部活だと、指導者は教員異動があると代わってしまう。
指導の目も届きにくく、1年は球拾いというケースも少なくないが、
クラブならそういうことはない。

「夢はJリーガー。だから技術をしっかり磨きたい」、
1年の杉山義君(13)の自宅は、東京都町田市。
週5回の練習に、電車とバスを乗り継いで1時間半以上かけて通ってくる。

父の雅晴さん(37)も、夢を応援する。
義君の通う中学のサッカー部について、以前、選手が足りずに
他部から人集めしたこともあるなど、
あまり盛んでない実情を知ったことも後押しに。

日本クラブユースサッカー連盟によると、クラブチームに加入する
中学生は2010年度、5万373人、00年度の2万1661人から倍増。

同連盟の真田幸明理事長(50)は、
「Jリーグができ、プロへの道が開けたため」と背景を説明。

日本中学校体育連盟の菊山直幸事務局長(61)は、部活について、
「学校教育の一環として、友だち作りの方法や集団生活のルールを
習得できる」と意義を強調。
「プロを目指したクラブで、夢破れて部活に戻る子もいる」

YSCCの吉野理事長は、グラウンドを借りている同中で、
今年から週1回、部活のサッカー部をボランティアで指導。
技術指導のできる顧問が、教員異動でいなくなったため。
新しい顧問の藤田恵輔教諭(23)は、
クラブと部活が補い合い、共存するのが大切。
選択肢があることが、子どもたちにとって良いことなのだから

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20101001-OYT8T00171.htm

世界初の単構造結晶 岩泉・氷渡洞の鍾乳石

(岩手日報 10月7日)

岩泉町安家の氷渡洞(総延長約6000m以上)で、
昨年確認された立方体の鍾乳石ケイブ・キューブ(1辺は5~8mm)が、
世界初の単結晶構造のケイブ・キューブであることが分かった。

NPO法人日本洞穴探検協会と独立行政法人産業技術総合研究所が、
共同で詳細な解明を進めている。
今回の発見は、鍾乳石の形成過程を解き明かす貴重な資料として注目。

新発見のケイブ・キューブと確認したのは、
同研究所の丸井敦尚地下水研究グループ長(52)。
研究は、約1年前からスタート。
キューブの一部を切り取り、顕微鏡で内部構造を調べたところ、
炭酸カルシウムからなる方解石の単結晶構造であることが分かった。

これまで報告されていたケイブ・キューブは、
炭酸カルシウム素材だが、砂粒など結晶化の種を核に持つ層状構造。
個々のキューブは球形で、成長により隣接したキューブと
摩擦を起こすことで、立方体になるとされている。

今回のケイブ・キューブは、そのような核を内包しておらず、
はじめから立方体だったとみられ、構造は大きく異なる。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20101007_3

2010年10月13日水曜日

途上国の子供の命の保護に取り組むユニセフ東京事務所長の平林国彦さん

(2010年10月1日 共同通信社)

筑波大での博士課程の修了間近、心臓外科医として
一歩を踏み出そうとしていた1994年、
ふとしたきっかけで見た1枚の写真が、人生を変えた。
その写真が、今もオフィスの壁に掛かる。

「ハゲワシと少女」。
飢餓が深刻化するスーダンで、飢えのために歩けなくなり、
うずくまる少女を見詰めるハゲワシ。
後にピュリツァー賞を受賞し、世界的な注目を集める
この写真に、大きな衝撃を受けた。

「神の手を持つといわれる心臓外科医でも、1年間に救える人の数は
せいぜい300人。
発展途上国の貧困問題に取り組めば、何万の子供の命が救える

以来、ボリビア、コロンビアなど、多くの国で病院の技術指導に従事、
紛争中のレバノンや米軍進攻直後のアフガニスタンでの
勤務経験も持つ。
4月、国連児童基金(ユニセフ)東京事務所代表に就任。

「ボリビアの病院に運ばれてくる子供は、栄養失調や病気で
手遅れの子ばかり。何をしていいかすら分からなかった」

途上国の乳幼児の死亡率は依然として高く、先進国との格差は大きい。
「この巨大な不公平を見過ごすことは、正義をないがしろにすること」

日本の政府開発援助(ODA)は、減少が続き、途上国の貧困問題への
社会の関心も高くはない。
「財産を失うことは恐ろしい。
今の日本にとって一番恐ろしいのは、長く大切にしてきた正義を失うこと」、
あくまでも「正義」にこだわる。
長野県出身、52歳。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/10/1/126354/

部活新時代(5)複数種目で「得意」発見

(読売 9月30日)

運動場の片隅で、腰にタグを付けた子どもたちが走り回っている。
「やったー」と、無邪気な歓声が上がる。
熊本市中心部にある市立一新小学校。
「総合運動部」の活動を見守る2人の大人は、同小の教員。

総合運動部とは、楽しみながら運動の機会と量が確保できるよう、
複数の種目を行う部活のこと。
少子化による部員減やニーズの多様化を背景に、
2000年、中央教育審議会が提案。
同市では、03年から市教委が導入を推進、
現在は小学校92校中25校で、活動が行われている。

一新小の総合運動部は、4~6年生の男女約30人が所属。
活動は週2回、種目は学期ごとに変え、1学期は各種ボール運動、
2学期は腰のタグを取り合う「タグラグビー」、3学期はマット運動。
この日は、タグラグビーの前段として、ジャンケンなどを
取り入れた運動を1時間行った。

同小の運動系の部活は、学校主催では同部だけ。
このほか、学外者が指導・運営に当たる野球やサッカーなどの
クラブチームがあるが、総合運動部担当の後藤敬光教諭(47)は、
「総合運動部は、『勝利至上主義』ではなく、授業でもないから、
怒ったり難しい説明をしたりもしない」
クラブチームとは活動目的が違うため、選手の取り合いもない。

「主将」は置かず、6年生が下級生を指導するのは準備運動ぐらい。
緩やかな上下関係の中で、団体行動の基本を身に着けさせるため。
6年生のNさん(11)は、「学年に関係なく遊べるのが一番楽しい」

親の評判も上々。
5年生の娘を通わせる藤本美佐子さん(41)は、
「野球でバットなど使えば、ケガが心配。
学校の先生が指導し、適度な運動で暗くなる前に
帰宅させられるから安心」

文部科学省の09年度「全国体力・運動能力、運動習慣調査
(全国体力テスト)」では、体育の授業を含めた1日の運動時間が
60分未満の児童は、男子で10・5%、女子は22・6%、
体力と密接な相関関係があることが確認。
東京都教委も今年度、「1日60分運動」に向けた総合運動部の
モデル校3校を、初めて指定。

活動場所や指導教員の確保という課題も、浮き彫りに。
桐蔭横浜大学の園山和夫教授(保健体育科教育学)は、
「多種目に取り組ませるのは、得意な運動を見つける意味で有意義。
地域の人材や施設を活用した運営を検討していくべき」

◆全国体力テスト

子どもの体力低下の深刻化を受け、小5、中2の全児童・生徒を
対象に、2008年度から毎年実施。
握力、ボール投げ、反復横とび、50m走など、
8種目の総合で点数を出す。
都道府県別データも公表。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100930-OYT8T00239.htm

三陸海岸、範囲拡張へ 環境省が見直し方針

(岩手日報 10月5日)

環境省は、国立・国定公園の指定状況を、
39年ぶりに全国規模で見直した結果、
アマミノクロウサギといった固有種が生息する奄美群島(鹿児島)を
含む6カ所の新規指定など、自然保護のために
全国18カ所の新規指定・拡張が必要と発表。

生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)に向け、
政府の積極姿勢をアピールする狙い。
指定されると、開発が規制されるため、今後10年かけ
地元自治体や土地所有者らと調整し、区域を指定。

環境省は、重要な生態系などを保全する観点から、
全国の335地域をピックアップ。
①国立・国定公園に含まれず、保護体制ができていない、
②貴重な固有種が集中している―
などを基準として絞り込んだ。
候補地の具体的な範囲や面積は、地元と協議して確定させるため、
明示しなかった。

東北では、青森県から本県、宮城県に連なる三陸海岸
(陸中海岸国立公園、南三陸金華山国定公園)が、
国立公園拡張の候補地として公表。

現在、気仙沼市から久慈市までの陸中海岸国立公園の
久慈市以北の拡張に向け、洋野町や青森県八戸市の種差海岸などを
中心に今後、調査を進める。
調査の時期や拡張の規模などについて、まだ決まっていない。

県自然保護課は、「国立公園に指定されれば、
自然保護の取り組みがこれまでよりもやりやすくなる。
開発が制限されるため、地元の理解を得ながら進めていくことが必要」

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20101005_11

2010年10月12日火曜日

南ア、最悪のサイ密猟被害 アジアの漢方薬需要で急増

(2010年10月1日 共同通信社)

夜間にヘリコプターから、サイを射殺。
チェーンソーを使い、数分で角を切断し逃亡-。

南アフリカでサイの密猟が急増、今年は既に過去最悪の被害を記録。
角を漢方薬の原料として珍重する中国や東南アジアでの需要増が
背景にあるとされ、保護活動家らは、
「国際的な組織犯罪」として、関係国に対策を求めている。

「密猟者を見つけたら、撃ち殺してやりたい」
ヨハネスブルク郊外で、約1200haの動物保護区を運営する
エド・ヘーンさん(69)が、怒りをあらわにした。

5月29日朝、スタッフが保護区で、大人と子供のシロサイが
殺されているのを発見。
大人の方は、角を2本とも切り取られていた。
約20年前、個人で保護区を開いてから初の密猟被害。
サイを殺すための薬物が、銃で撃ち込まれた痕跡があった。
目撃情報はないが、過去の摘発例から、
ヘリを使って犯行を重ねる密猟組織の仕業であるのは明白。

南ア国立公園当局によると、2007年に13頭だったサイの密猟被害は、
08年は83頭、09年は122頭と急増、
今年は9月23日までに既に210頭が犠牲。

密猟組織の標的は、警備を強化した国立公園から
小規模な個人の保護区に移行。
別の保護区で殺されたサイの子供3頭を引き取り、
育てているヘーンさんは、自費で警備員を増やした。

サイの角は、アジアでは1kg、数百万円で取引。
世界自然保護基金(WWF)などによると、中国のほか、
経済成長で中間所得層が増えたタイなどで、需要が増加。
「角ががんに効く」という風説が広まったベトナムも、巨大市場化。

08年、在南アのベトナム大使館前で、ベトナム人外交官が、
角を違法取引している様子をテレビ局に撮影、本国に召還された。

WWFで、アフリカのサイ問題を担当するジョセフ・オコリ氏や
専門家の多くは、「角に医療効果がないことは、科学的に証明済みだ

食肉目的の狩りなど、いったん大幅に減った南アのサイは、
地道な保護活動の結果、増加傾向に転じ、
現在はシロサイとクロサイを合わせて推定2万4700頭が生息。
世界の生息数の8割。
密猟が続けば、再び減少に転じる恐れがある。

捜査当局は9月下旬、南ア北東部で密猟を重ねていたとして、
男女11人を逮捕。
逮捕者には、野生動物の保護活動に携わっていた獣医師2人や、
サファリ観光会社経営者も含まれ、南ア社会に衝撃を与えた。

ヘーンさんは、「関係国が協調し、国境管理を強化することが重要」
「密猟される前に、角に毒を注入しておき、薬として使えなくすればいい。
サイの健康には影響しない」と、持論をまくしたてた。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/10/1/126353/

部活新時代(4)神楽“競演”継承へ一歩

(読売 9月29日)

広島県北西部の山あいにある、北広島町。
町役場近くの集会所の舞台に、
きらびやかな神楽の装束に身を包んだ高校生たちが集った。

参加した県内4校の中で、ひときわ異彩を放ったのが、
県立加計高校芸北分校の神楽部。

長さ13mの巨大な大蛇を、ダイナミックに操る「八岐大蛇」を
30分かけて演じると、400人の地元ファンから大きな歓声。

分校のある芸北地方は、全国有数の神楽どころ。
舞手の派手な衣装と速いテンポが特徴で、100超の神楽団が活動。
生徒数80人の同分校の神楽部は、最も長い62年の伝統を誇り、
現在は男女24人が所属。
伝統芸能の継承だけでなく、祭礼などで年間約20回の公演をこなす。

少子化の影響で、全国の伝統芸能の担い手は減少の一途。
全国高校文化連盟の調査によると、全国の高校で伝統芸能を扱う部活は、
2009年度の144校から、今年度は131校と1割も減った。

同分校では、部活の「2部制」を導入し、部員を確保。
バレーボールやスキー、卓球など七つの「第1部活」への参加が
全生徒への“義務”。
神楽部は「第2部活」で、第1の練習が終わった午後6時から
1時間半、毎日けいこに励む。

部員のうち、半数超の13人が3年生。
「八岐大蛇」には、8体の大蛇を演じる8人のほか、笛や太鼓など
総勢16人が必要なため、3年生は卒業間際まで公演に参加。

部長の田枝浩太さん(17)は、幼い頃から日常的に神楽に触れてきた。
「自分にとって、神楽は子守歌。
今、神楽を楽しめるのも、地域で支えてくれているおかげ。
将来は地域の神楽団に入り、後輩を指導したい」

分校統廃合も取りざたされる中、小田均分校長(55)は、
「分校が存続できるのは、神楽部のおかげでも。
都市部で地域の結びつきが希薄になる中、
その象徴として残していかなければ」と、決意を新たに。

公演を主催したNPO法人・広島神楽芸術研究所の
増田恵二事務局長(52)は、「若い人同士が刺激し合う機会に
なるようにと、県内の高校生を集めて初めて開催。
担い手が地域に根付くように、就職先の確保や常設公演場の
設置も検討すべきだ」

競演後、同NPOには参加校の部員から、1通の手紙が届いた。
〈他の高校と一緒に舞う機会があれば、と思っていたが、
願いがかないました。
精進して、他の高校に負けない部になりたい〉。
伝統を競う試みが、継承の一歩となり始めている。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100929-OYT8T00232.htm

岩手凝縮、雑穀パン 盛岡農高と一戸の業者が開発

(岩手日報 10月1日)

滝沢村の盛岡農高(千葉祐悦校長)の食品科学科パン研究班と、
一戸町の一野辺製パン(一野辺克彦社長)が、
共同開発した雑穀パンの新商品発表会が開かれた。
四つの新商品は、1日から県内150店舗で、110~120円で販売。

関係者や生徒約50人が出席。
生徒らが、軽米町産雑穀や県産米粉、同校の飼育牛の牛乳など、
県産食材を原料にしたパンの開発過程を紹介。

新商品は、「雑穀アンのあんパン」、「ミルミルミルクパン」、
「盛農牛乳ぱん」、「豆と芋のごろごろサンド」の4種類。
試食会も行われ、参加者は「もちもちしている」、「ほどよい甘さ」、
「腹持ちがよさそう」などと感想。

同校3年の沢口遥佳さんは、「雑穀生産者の力になりたい、
という意見を尊重してもらい、幸せ。
雑穀パンで笑顔の輪を広げたい

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20101001_5

2010年10月11日月曜日

部活新時代(3)応援の輪 ネットで拡大

(読売 9月25日)

〈空想の世界の中で描いていた「筑紫高校の校歌斉唱」。
これを現実の世界で見ることができ、すばらしい幸福感を味わいました。〉

福岡県立筑紫高校の野球部を応援するサイトの掲示板に、
試合を見た46歳のOBから書き込み。
入学した31年前に野球部はなく、机にユニホームの落書きをしては
野球部創設を夢見た、とつづられていた。

創部9年目の今夏、県大会で初のベスト16進出を果たした同高野球部。
大会の季節になると、卒業生のほかにも、
近所の人やファンから応援の書き込みが多数。

塩崎健司監督(52)は、掲示板の文章を部員たちに読み上げた。
「『これだけの人に注目されているのだから、勝たなくては』という、
いい意味での緊張感が選手たちを奮い立たせた」

応援する人と野球部の橋渡しをするこのサイトは、
「部活ガンバドットコム」。
福岡県内の中学校・高校にある運動部の試合結果や日程を掲載。
高校102校の野球部と48校のサッカー部は、
個別の掲示板も開設し、それを見た人が感想を書き込める。
運営費は、地元企業からの協賛金でまかなっている。

06年、サイトを立ち上げ、管理人を務める元中学校教諭の
森省三さん(49)は、「部活の主役である子どもたちが、
『頑張ろう』と思えるような応援ネットワークを築きたかった

部活動は生徒、保護者、教師の間で完結しない。
その周囲では、卒業生や住民ら多くの人たちが見守っており、
試合の観戦に来たり、結果の知らせを待ち望んだりしている。
部活を紹介する各校のサイトには、手間がかかるため、
長い間更新されていないものもあり、
情報が十分に発信されていないのが現状。

部活ガンバに掲載する情報は、森さんが自ら取材に駆け回るほか、
教員時代に築いた学校の人脈を生かし、様々な方法で入手。
試合の時、会場から森さんのもとに、途中経過の連絡が次々に入り、
すぐにサイトに反映。
福岡県高等学校体育連盟など、加盟競技団体の試合結果を載せている。

「ネットにつきものの匿名による中傷の書き込みはゼロではないが、
ほとんどは協力的な書き込み。
昔のように、子どもの面倒を見たがる大人たちを、
部活ガンバを通して増やしていきたい」と、森さんは意気込む。

サイトの月間閲覧数は約510万件、開設当初のおよそ50倍。
部活ファンの輪を、ネットが着実に広げている。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100925-OYT8T00228.htm

ノーベル平和賞:中国の劉暁波氏に…服役中の民主活動家

(毎日 10月8日)

ノルウェーのノーベル賞委員会は、
「長年にわたり、非暴力の手法を使い、中国で人権問題で
闘い続けてきた」、中国の民主活動家で作家の劉暁波氏(54)に、
10年ノーベル平和賞を授与。

同委は、事実上の世界第2の経済大国となった中国が、
人権問題でも国際社会で責任ある役割を果たすよう、強く求めた。
中国政府は、劉氏への授与決定を伝える衛星放送を一時遮断、
外務省が「(劉氏は)犯罪者で、授賞は平和賞を冒とくしている」との
談話を発表するなど、強く反発。

◇中国反発「賞を冒とく」

劉氏は08年12月、中国共産党の一党独裁を批判する
「08憲章」を起草した中心人物。
08年拘束、今年2月、国家政権転覆扇動罪で懲役11年の刑が確定、
服役している。
89年6月、天安門事件でも学生を支持して投獄。

同委は授賞理由について、中国では「言論、出版、集会、結社、
抗議活動の権利が極めて限定されている」
20年以上にわたり活動を続けた劉氏を、
「人権運動の第一人者」と高く評価。

劉氏が、自身の懲役刑について、「中国の憲法、基本的人権の
双方に違反している」と主張。

ヤーグラン委員長は、「反体制派への授賞は反発を招くと、
中国から警告を受けていた」と明らかにし、
「中国がより民主的な国になるために、他の人が言えないことを、
我々は言わなければならない」、
人権と平和を最重視する考えを強調。

同委員会は昨年、就任直後で実績のないオバマ米大統領に
授与したことが議論に。

◇米大統領「歓迎」

オバマ大統領は、授賞決定を「歓迎する」との声明を発表、
中国政府に同氏の即時釈放を求めた。
声明では劉氏を、人権と民主主義など「普遍的な価値観を広める
雄弁で勇気ある人物」と称賛。
中国の「政治改革が(経済成長に)追い付いていないことを想起させる」

◇劉暁波◇

1955年、中国吉林省生まれ。
北京師範大講師だった88年に渡米、民主派の在米中国人組織
「中国民主団結連盟」のアピール、「中国大学生に告げる公開書簡」の
起草に加わった。

89年、中国の民主化運動を知って帰国。
同年6月、天安門広場でハンストを行うなど一連の運動に加わり、
天安門事件後に拘束。
事件後、学生指導者らの多くが出国したのに対し、国内にとどまり、
民主化を求め続け、90年以降、断続的に身柄を拘束。
現在、遼寧省の刑務所で服役。

◇08憲章◇

08年12月10日付(発表は9日)、中国の作家ら303人が
連名で出した中国の民主化を求める宣言文。
中国共産党の一党独裁体制の廃止や三権分立、集会の自由など、
人権状況の改善などを求めている。
劉暁波氏ら作家や弁護士、学者らの著名人が実名で発表。
多くの著名人が、中国共産党の統治を公然と批判したのは異例。
国内外で大きな反響を呼び、インターネット上では約1万人が署名。
劉氏は、発表の前日に拘束。

http://mainichi.jp/select/world/news/20101009k0000m040010000c.html

インタビュー・環境戦略を語る:住友信託銀行・大久保哲夫常務執行役員

(毎日 10月4日)

環境問題を、信託の機能を使って解決する
「エコ・トラステューション」を掲げる住友信託銀行。

名古屋市で開かれる、生物多様性条約第10回締約国会議
(COP10)に向けても、独自の活動に取り組み、国内の議論をけん引。
大久保哲夫常務執行役員に聞いた。

--エコ・トラステューションの柱として、「環境不動産」を掲げる。

◆オフィスビルなどは、エネルギー消費が多い半面、
省エネが進んでいない分野。
不動産が中核業務の信託銀行として、4月、
「環境不動産推進課」を新設。

ビルの省エネや周辺の生態系配慮などについて、
費用対効果の面からビルオーナーに提案するコンサルティング業務や、
化学物質などで汚染された土地を買収して再生する
ファンドの運営支援に取り組んでいる。

東京都が4月に導入した大規模事業所間の排出量取引制度でも、
規制対象の事業所への提案に力を入れている。

--国内では、環境不動産の普及がなかなか進まない。

環境に配慮した不動産が、市場で高く評価される状況を作る必要。
当社は、07年から「サステナブル不動産研究会」を主催、
国や自治体、建築・不動産業界、投資家やNPOなどと
環境不動産市場の形成に向けて議論を進めている。

--COP10にも深くかかわっている。

◆ドイツで08年に開かれたCOP9で、世界の33社と
「ビジネスと生物多様性イニシアチブ」のリーダーシップ宣言に署名。
生物多様性に配慮した経営を行う企業へ投資する、
世界初のファンドの開発のほか、支店でも植林や絶滅危惧種の飼育に
取り組んでいる。

日本が議長国であるCOP10の成功に向けて、COP9の直後、
生物多様性問題の国際的な研究リポート
「生態系と生物多様性の経済学」を翻訳、
日本で幅広く読んでもらえるようにした。

生物多様性を経済の問題としてとらえ、
政策的に議論する土壌づくりに貢献。

--社会的責任投資(SRI)の拡大にどう取り組みくむか?

◆アナン国連事務総長(当時)が06年、投資対象を選ぶ際、
「環境、社会、企業統治(ESG)」を重視する
「責任投資原則(PRI)」を提唱。

PRIの署名機関は800を超え、資産運用残高は20兆ドル
(約1680兆円)に上る。
金融危機後、資産運用業界ではESGを顧みない企業を
投資対象から外す動きも出ているが、
日本でPRIに署名しているのは14機関、
資産運用残高も5000億円程度。

当社は、今年発足したPRIの日本ネットワークの共同議長を務め、
SRIの新商品開発など、市場拡大に貢献していく考え。
==============
◇おおくぼ・てつお

80年東大法卒、住友信託銀行入行。
受託資産企画部長、執行役員業務部長などを経て、
08年6月から現職。54歳。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2010/10/04/20101004ddm008020026000c.html

肥満のツケは年間40万円に 米調査

(CNN 2010.09.22)

肥満人口が3分の1以上を占める米国で、
肥満は健康に悪いだけでなく、家計にも重くのしかかる、
という調査結果が発表。

ジョージワシントン大学のアビ・ドール教授(経済・健康政策)らは、
肥満に伴う医療費負担と医療費以外の負担について調べた。

その結果、年間経費は女性の場合、最大で4879ドル(約42万円)、
男性は2646ドル(約22万円)に上る。

内訳は、医療費以外では賃金や生産性の低下、
病欠に伴う収入の目減りや余分なガソリン代が大部分を占めた。
医療費は入院、通院、緊急治療費、往診代、処方薬など。

男女の差が大きいのは、主に賃金が原因。
共同研究者のクリスティーン・ファーガソン教授は、
「男性は、太り過ぎや肥満でも賃金には響かないが、
肥満の女性は、収入が大幅に低くなる確率がはるかに高い」

肥満になると、衣類や食事代もかさみ、大型の自動車や家具が必要。
こうした経費について、信頼できるデータがなかったため、
今回の調査対象から外したが、相当な額に上るはずだとドール教授。

健康のため、家計のため、やはり(肥満の人は)痩せた方が良さそう。
ファーガソン教授は、「少しずつでも痩せれば、健康への影響だけでなく、
ほかの経費負担も減らせるかもしれない」

http://www.cnn.co.jp/fringe/30000293.html

2010年10月10日日曜日

部活新時代(2)低くなった男女の壁

(読売 9月24日)

「ハルちゃん!!」と声をかけ、男子部員がパスをする。
私立同志社香里高校のラグビー部の練習。
ボールを受けるのは、部員57人中、唯一の女子部員である
2年生の堀内春香さん(16)。

身長1m52と小柄な堀内さんは、中学2年生の頃から、
地域の女子クラブチームでラグビーを続けてきた。
練習は日曜日のみで、「毎日できる部活動で力をつけたい」と、
高校でラグビー部を選んだ。
「女子だけの練習とは比べものにならないほど運動量が多く、
自分にプラスになる」と笑顔。

清鶴敏也監督(49)は、「最初は女子を入れるのに不安があった」
体格差があり、一歩間違えれば大けがをする危険性がある。
熱意に負けて入部は許したものの、試合出場は認めず、
練習中も堀内さんへのタックルは禁じている。

男子部員は部室で着替えるが、堀内さんは更衣室。
男子と別行動になり、練習後は1人で帰宅する日も少なくない。
後に続く女子部員はおらず、女子ラグビー部創設への道のりは遠い。

日本ラグビーフットボール協会によると、
中学・高校での女子ラグビーは、部活動の段階には至っていない。
「男子の球技」との印象が浸透し、部をつくるだけの人が集まらない。

2016年リオデジャネイロ五輪で、男女ともに
7人制ラグビーが正式競技になる。
同協会は、これを好機ととらえ、「学校に女子ラグビー部があれば、
女子生徒がラグビーに触れる機会が増える」、
全国の中学校や高校に対し、部の創設を働きかける考え。

女子部員の多い競技で、男子が活躍できる場もある。
私立長崎玉成高校のハンドベル部は、部員21人中、男子が2人。
教会などで奏でるハンドベルには、繊細なイメージがあるが、
部が使用するベルは、重い物で4kg近く。
それを振るのに、男子の腕力が生きてくる。

「いい音は、余力がないと出ない。
オール女子より、男子もいた方が優しい音が出る。
男女で一緒に演奏できるのは、非常にいいこと」、
顧問の上戸綾子教諭(55)。

シンクロナイズド・スイミングやチアダンスでも、男子が表現する時代に。
部活動における男女の壁は、低くなりつつある。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100924-OYT8T00179.htm

クローズアップ2010:ノーベル化学賞に日本人2氏 お家芸、カップリング

(毎日 10月7日)

医薬品や次世代照明と期待される有機EL
(エレクトロルミネッセンス)など、私たちの生活を支える
数々の製品を生み出す原動力となる化学反応を考案した、
鈴木章・北海道大名誉教授(80)と
根岸英一・米パデュー大特別教授(75)を含む3氏に、
ノーベル化学賞。

化学反応を促す仲介役(触媒)に金属を利用し、不可能と思われていた
有機化合物を自在に結びつけ、新たな性質を持つ物質を
次々と生み出した。
社会に大きく貢献した「縁の下の力持ち」ともいえる発見、
日本の有機化学の層の厚さを示した。

◇60年代から発見次々

世の中にある100あまりの元素を組み合わせ、
有用な物質を作り出すためには、
化学反応によって元素や化合物同士を結合させることが必要。
炭素が骨格となっている有機化合物を、結合させることは難しい。

今回の受賞対象となった有機合成反応は、
有機化合物を効率よくつなぎ合わせたり、
分離させることを可能にする技術。

3氏の受賞対象となったパラジウムなどを触媒に使った化学反応
「クロスカップリング」は、二つの有機化合物を自在にくっつける
「のり」といえ、有機合成に新たな時代を築いた。

この分野は、日本が世界を先導してきた「お家芸」。
70年代、多くの日本人研究者が、パラジウムやニッケルなどの
金属を触媒に用いたカップリングの研究に傾注。

きっかけは、玉尾皓平・理化学研究所基幹研究所長(67)らが、
72年発表したニッケルを触媒に使ったクロスカップリング。
その後、望まない副生成物ができるのを抑えるなど、改良が重ねられ、
日本人研究者の名前を冠した化学反応が次々と生まれた。

今回受賞したリチャード・ヘック米デラウェア大名誉教授(79)の
化学反応も、研究者の世界で「溝呂木・ヘック反応」とも呼ばれる。
「溝呂木」は、故・溝呂木勉・東京工大元教官のことで、
溝呂木さんがヘック名誉教授の1年前に発見した反応。

玉尾さんの発見にヒントを与えた山本明夫・東京工大名誉教授
(有機金属化学)は、「当時の日本の研究室は、
資金や機材などが潤沢ではなかったが、
有機化学の研究者の層が大変厚かった。
最初にやったという点で、玉尾さんが入ってもよかったが、
3人の組み合わせは、応用に対する価値をより重視したように思う」

小林修・東京大教授(有機合成化学)は、
「これらの発見は、歴史が古く、世界中でいろいろな分野で使われる。
その点が高く評価されたのだろう」

玉尾さんは、「日本人研究者お二人は、いろいろな金属が
触媒として使えることや、幅広い条件で使える反応を作り出したことが
評価されたのだろう。
日本の若い研究者に、勇気と元気と希望を与えた」

3氏の受賞理由となったパラジウムを触媒に使う有機合成反応は、
現代の産業利用の中心。
その礎を築いたのは、辻二郎・東京工大名誉教授(83)。

辻さんは60年代、世界で最初に炭素同士の結合の触媒に
パラジウムを使った。
パラジウムは希少な金属のため、最近は鉄を触媒に使う
クロスカップリングの研究が進み、日本人研究者も熱心に取り組んでいる。
小西玄一・東京工大准教授は、
「まだ鉄はパラジウムの域には達していないが、
今後の発展に期待したい」

◇医薬品から液晶まで、生活密着の基礎技術

鈴木さんと根岸さんが、新たに開発した化学反応
(クロスカップリング)は、医薬品や農薬などの製造に幅広く活用。

医薬品では、強力な血圧降下剤「バルサルタン」や、
農薬では「ボスカリド」の合成などに大規模に用いられている。
近年、巨大プラントで、この反応を使って大量生産。
鈴木カップリングを使った医薬品だけでも、
年間1兆円近くの売り上げがある。

医薬品では、病気の原因となるたんぱく質の働きを抑えたり、
促進する化合物探しが、新薬開発の鍵を握る。
現在、多くの製薬会社は、研究の最初の段階で、この反応を使い、
化合物の一部を取り換えるなどして、薬として有用かどうか評価する
作業を繰り返している。

今回の手法の開発を受け、90年代以降、機械的に
さまざまなタイプの化合物を一括して作る技術が発達、
飛躍的に大量の化合物を作り出すことが可能になり、
新薬候補となる物質が広がった。

この反応に使う試薬を販売する専門のベンチャー企業が出現、
産業分野にも変革をもたらした。

電子産業に与えた影響も大きい。
電卓の液晶パネルに使われる化合物の
「ペンチルシアノビフェニール」や、有機ELの材料の製造にも大きく寄与。

東京大の佐藤健太郎・特任助教(有機化学)は、
「資源の少ない日本では、こうした新技術の開発が生命線。
鈴木、根岸両氏が編み出した手法は、こうした製品の製造を
下支えする重要な基礎技術になっている」
==============
◆日本人の名前がついた主な有機合成反応◆
(年は最初の論文の発表年、下は発見にかかわった日本人)

▽辻・トロスト反応 1965年
 辻二郎・東京工大名誉教授
▽溝呂木・へック反応 1971年
 溝呂木勉・東京工大元教官
▽熊田・玉尾・コリューカップリング 1972年
 熊田誠・京都大名誉教授
 玉尾皓平・理化学研究所基幹研究所所長
▽薗頭・萩原クロスカップリング 1975年
 薗頭健吉・大阪市立大名誉教授
 萩原信衛・大阪大名誉教授
▽右田・小杉・スティルカップリング 1977年
 右田俊彦・群馬大名誉教授
 小杉正紀・群馬大名誉教授
▽根岸クロスカップリング 1977年
 根岸英一・米パデュー大特別教授
▽野崎・桧山・岸カップリング反応 1977年
 野崎一・京都大名誉教授
 桧山為次郎・中央大教授
 岸義人・ハーバード大名誉教授
▽鈴木カップリング 1979年
 鈴木章・北海道大名誉教授
 宮浦憲夫・北海道大特任教授
▽桧山クロスカップリング 1988年
 桧山為次郎・中央大教授

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2010/10/07/20101007ddm003040061000c.html

細胞のセンサー機構解明 がんやアトピーに関与

(2010年9月30日 共同通信社)

細胞表面にあるセンサータンパク質が、周りにあるタンパク質の
信号を受け取り、細胞内に周囲の情報を伝える仕組みを、
大阪大と横浜市立大のチームが明らかにし、
29日付の英科学誌ネイチャー電子版に掲載。

体内での信号のやりとりは、神経などの形成のほか、
がんや自己免疫疾患、アトピー性皮膚炎などの病気の進行に関与。
信号を遮断すれば、免疫の働きを抑え自己免疫疾患の治療に
つながり、信号を強くすればアトピー性皮膚炎を抑えられる。

チームは、マウスの信号タンパク質「セマフォリン」と
細胞表面のセンサー「プレキシン」の結晶構造を、
大型放射光施設「スプリング8」(兵庫県)などで解析。

通常は、細胞表面でくっついている2個のプレキシンが、
近くに来たセマフォリンを間に挟み込み、細胞内に情報を伝える。

大阪大蛋白質研究所の高木淳一教授は、
「信号授受の様子を、原子レベルで明らかにできた。
信号の働きを調節する薬を、コンピューターで
デザインできるかもしれない」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/9/30/126244/

レアアース不要のハイブリッド自動車用モータ開発

(サイエンスポータル 2010年9月30日)

産出国が限られているレアアース(希土類元素)を使わない
ハイブリッド自動車用モータを、
新エネルギー・産業技術総合開発機構と、
北海道大学大学院情報科学研究科の小笠原悟司教授、
竹本真紹准教授が開発。

ハイブリッド自動車や電気自動車には現在、レアアースを利用した
磁石モータが使われている。
安いフェライト磁石を使ったモータでは、高出力が得られない。

新しく開発されたモータは、フェライト磁石の磁力を弱め、
高い回転力が得られない原因となっているロータディスク
(炭素鋼などの磁性体で構成する円盤状の部材)を
取り外した構造が特徴。

フェライト磁石と圧粉鉄心を、非磁性の支持部材に交互に
組み込むことで、レアアースを使わないフェライト磁石でも、
高出力を出すことを可能。

試作したモータの性能試験の結果、
従来のハイブリッド用希土類磁石モータと同サイズで
同等の高出力(51.5kw)を発生できることが確認。

レアアースは、中国が世界の産出量の90%以上を占めるなど、
産出地域が非常に限られている。
安定調達に不安があるレアアースを使わずにすむモータの開発成果は、
激しさを増す次世代自動車開発における
日本の産業競争力向上につながる。

この研究開発成果は、新エネルギー・産業技術総合開発機構の
次世代自動車用高性能蓄電システム技術開発の一環。

http://www.scienceportal.jp/news/daily/1009/1009301.html