2009年12月26日土曜日

逆風の中で:第7部・地域プロ/5 スポンサー撤退

(毎日 12月19日)

高松市香川総合体育館。
男子バスケットボール、bjリーグの高松-福岡戦
終わったコートに、軍手をはめた観客約40人が集まった。
組み立て式の床面や観客席などの撤収作業を1時間余りで終え、
「お疲れ様」と声を掛け合って家路に。

高松は、リーグ創設2季目の06~07年シーズンから参戦、
今季が4季目。
地元の穴吹工務店がオーナーとメーンスポンサーを兼ね、
財政的に恵まれた。
会場でのにぎやかな演出や選手の待遇等も、リーグ屈指。

建設不況で経営が悪化、昨季限りでスポンサーから撤退。
球団は、地元の幅広い企業に支援を求めて営業活動を
進めたが、難航。
今年8月、収入が約8000万円不足し、
今季の参戦を見送る可能性を公表。

元二俊朗球団代表は、「チーム創設時から自立採算への移行は
予定していたが、景気低迷と重なりタイミングが悪かった」
その後、支出削減やスポンサー獲得などで、
不足見込みを約5500万円まで圧縮。
開幕が半月後に迫った9月25日に、ようやく参戦を発表。

選手の年俸は、昨季よりもカット。
主催試合は、主に約3000人収容の高松市総合体育館を使い、
1試合あたり約500万円を費やしていたが、
今季は音響や照明などの演出を最小限に抑制。
26試合中10試合は、市中心部から約10キロ離れ、
収容人数もほぼ半分の香川総合体育館に移し、
経費を半額以下に抑えた。
1口1万円の個人スポンサー制度も導入し、現在約560口を集めた。
試合のコートの周囲には、賛同者の名前を記した
ステッカーがずらりと張られる。

ブースター(bjのファンの呼称)も協力に乗り出し、
募金や署名などを進めた。
試合運営のボランティアもその一つ。
前日の設営、当日のチケットのもぎり、終了後の撤収など。
球団が、アルバイトを雇う人件費が減る上、短時間で撤収が
終わるため、会場使用料を抑える効果も生んでいる。

同様のボランティアは、bjの他球団では以前から行われている。
ブースターのグループ「ちーむ・アロぶる。ブースターズ。」
宮西育代さんは、「これまでは試合を応援するだけ。
今は、試合に至る過程にも関心がある。
球団の危機で、チームとブースターの距離が縮まり、
かえって良かったかも

球団は、スポンサーやチケットの営業も含め、努力を重ねる。
赤字見込みを解消するには、まだ遠い。
元二代表は、「決定打はない。少しずつ地域に浸透し、
さらに支援を得られるチームになるしかない」。
形になり始めた地域の動きを支えに、模索が続く。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/archive/news/2009/12/19/20091219ddm035050086000c.html

特別支援教育(8)障害話し合える社会へ

(読売 12月12日)

読者から、連載への感想が相次いだ。

「普通高校と特別支援学校とのはざまで、発達障害の子は
ちゅうぶらりんになっている」
広汎性発達障害のある中学2年の娘を持つ埼玉県の母親(40)。
娘は、知的な遅れがなく、療育手帳を持っていない。
特別支援学校からは「管轄外」、普通高校からは
「集団生活が苦手だと、単位取得は難しい」と言われている。
「高校の特別支援教育は名ばかりで、
中学までの支援が途絶えてしまう」と嘆く。

ディスレクシアの中学3年の娘を持つ千葉県の母親(47)は、
「普通高校へいきたい」という娘の希望をかなえるため、
娘とマンツーマンで受験勉強に励んでいる。
今の悩みは、娘の発達障害を志望校に伝えるかどうか。
担任は、「不利になるから、ふせた方がよい」と言うが、
面接や作文で配慮をしてもらえる特例があることを
教育委員会から聞いた。
「アメリカなどでは、試験時間の延長や誤字・脱字への配慮は
当たり前と聞く。その度に、日本の特別支援教育の遅れを
痛感して、ため息が出る」

苦手なことを、力ずくでやらせようとした上、
「できないのは、親が甘やかしたからだ」と非難する、
無理解な教師の対応に傷ついたという声。

社会への橋渡しとなる、義務教育後の特別支援教育に
課された役割は大きい。

「発達障害がある子の存在を認め、クラスに居場所を作ってほしい」
ディスレクシアを告白し、中学、高校で講演活動を行う
南雲明彦さん(25)は、そう訴える。

文字がにじみ、かすみ、揺らいで見える――。
読み書きが苦手だと意識したのは、小学生のころ。
「みんなと同じようにできないのは、怠けているからだ」と自分を責めた。

教師から朗読するよう指されると、笑いを取ってごまかす。
読めない自分を悟られぬよう、必死に「おちゃらけキャラ」を演じたが、
高校2年になって受験モードに入ると、仲間の視線が厳しくなった。

学校に行くのも、人に会うのもこわくなり、自宅に引きこもった。
「自分は汚れている」という強迫性障害が表れ、
一日に何度も、何度も、手を洗わずにはいられない。
3度の転校を経て、たどり着いたのが、
インターネットを活用した通信制高校。

21歳のとき、ボランティアをしようと、
ディスレクシアを支援するNPOを訪れた。
自分も当事者だと、初めて気がついた。
「怠けていたわけじゃないんだと分かり、目の前が明るくなった」

同じように苦しむ子のためにも、発達障害を啓発することが
必要だと考え、講演をするようになった。
講演先で教室に入ると、つらかった学校時代の思い出が
今もよみがえる。
生徒から、「学習障害のことがよく分かった」と言われると、
当事者が声をあげる大切さを実感。

「勇気ある告白」と言われることには、違和感を覚える。
だれもが気軽に自分の障害について話し合える社会が、
いつか来ると信じている。

◆ディスレクシア

学習障害の一種、知的な遅れはないのに、読み書きに
困難を示しやすい発達の障害。
日本での発現率は約5%、英語圏の発現率は10%以上。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20091212-OYT8T00314.htm?from=nwlb

東京ベイスタジオの川辺社長「ネット放送、ライブ感を大切に」

(日経 12月15日)

携帯電話向けコンテンツ制作や貸スタジオ事業を手掛ける
東京ベイスタジオが、インターネット放送局
「ODAIBA(お台場)TV」を開設。
アイドルグループが出演する若者向け番組などの合間に、
企業と共同で制作する宣伝番組も配信。
川辺保弘社長に、戦略を聞いた。

——ネット放送局を始めた理由は?

「これまで携帯端末を中心に、飲食店の紹介やイベントの
中継をする動画配信事業を手掛けてきた。
携帯電話で情報を集めたり、コンテンツを楽しんだりする動きが広がり、
当社も成功を収めた。
携帯端末は、短い動画を見るのには適しているが、
長く見続けるのは難しいというマイナス面。
長いコンテンツを提供するには、パソコン向けの配信が必要

「地上波テレビ放送の広告は、料金が高く、手を出しにくいと
思っている企業の受け皿になれる。
電波ではなく、ネットで配信するため、放送時点で可能な
アクセス数は、500〜600に限られ、放送済みのコンテンツを
アーカイブとして半永久的に視聴できる

——放送局の特徴は?

「ネット放送局を名乗る企業は多いが、地上波と同じように
毎日番組表を作ってコンテンツを流すのは、当社と
『あっ!とおどろく放送局』の2局しかない。
当社は、日本を代表する観光スポットとなったお台場のイメージを
生かし、お台場の風景や商業施設をふんだんに盛り込む」

——番組編成は?

「アイドルグループAKB48や人気モデル武田真理子さんの
トーク番組、料理教室など、番組を1週間に35時間ほど流す。
トーク番組では、視聴者が放送を見ながら送ってきたメールを、
番組の中ですぐ取り上げるなど、ライブ感を大切にしていく

——企業と共同制作する宣伝番組も配信する。

「自社のサービスや店舗をじっくり詳しく紹介したい企業とともに、
最長1時間の番組を制作・配信。
多彩な企業と交渉し、近く放送ができるだろう。
配信1時間につき、7万~16万円という手が届きやすい料金設定。
まずは効果を試したい企業にも合っている。
1週間に100時間の放送が目標」

「放送したコンテンツは、半永久的に残すので、
各企業が自社のウェブサイトから接続して、
閲覧できるようにすることも可能」

——どのような業種の利用を想定?

「指導法などアピールしたい学習塾やテナントを紹介したい
商業施設、アイドルを売り込みたい芸能事務所などの
利用があるとみており、実際に相談を受けている。
経済や金融、投資を学べる専門学校からも問い合わせ。
意外な需要があるかもしれず、どのようなアイデアが
生まれるか楽しみにしている

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/interview/int091214.html

2009年12月25日金曜日

逆風の中で:第7部・地域プロ/4 観客数1位で破綻

(毎日 12月18日)

「ディーフェンス!」
神奈川県大和市の体育館に、市民約1100人の歓声。
バスケットボールのbjリーグ・東京アパッチの約2カ月ぶりとなる
ホーム試合は、東京から電車で約1時間離れた
人口約22万人の地方都市開催。
観客の一人、桜井雅樹さん(25)は、
「近くでプロのバスケが見られるなんて」と歓迎したが、
東京初の都外開催となったこの試合は、運営を巡るドタバタの表れ。

観客数トップなのに破綻--。
bjリーグ1位の観客動員数を誇っていた東京の運営会社が、
今季開幕直前の8月、経営の見通しが立たなくなった。
リーグ主導で新たな引き受け先に決まったのは、
スポーツ界では無名の医療器具販売「エクスター」。
2~3年後の参入を視野に入れていたため。

社内では、「時期尚早」との声もあったが、
リーグ側の熱意にほだされ、受諾。
運営会社「エクスターエンターテイメント」を設立し、
走りながらの運営を始めたが、問題はすぐに噴出。
前運営会社は、今年11月の試合会場を押さえておらず、
開催規模に合う体育館は既に埋まっていた。
リーグに、11月のホーム試合を12月にずらしてもらい、
何とか大和市で会場を確保。
会場のDJが、「アパッチが大和市初上陸!」と叫んだ
舞台裏には、こんな引き継ぎ不足があった。

破綻の謎解きも始まった。
昨季のメーン会場・有明コロシアムは、1万人収容。
昨季の観客数はリーグ最多とはいえ、1試合平均3244人
(リーグ平均2246人)で、会場にはかなりの無駄。
そのうち1000~1500人は、「無料券」を受け取った客で、
収入に結びつかない。
実態に合わせた会場に変更し、
代々木第2体育館(約3000人収容)での
開幕4試合の平均観客数は、1500人程度。

「まだ大きい」と、さらに小さな会場への変更を検討。
公的施設で試合を行う場合、営利目的と見なされ、
割高な料金を徴収されるが、来年4月に試合を行う
墨田区総合体育館(2000人収容)とは交渉の結果、
練習開始から試合終了までの約4時間半以外の会場設営などに
かかる時間は、割安な一般料金としてもらうことに成功。

今季の予算は、約2億円。
チケットが完売できたとしても、収入は1億5000万円、
スポンサー獲得は急務。
運営会社の鴨志田聡さん(34)は、「企業の予算年度が
替わった後の来季が正念場。
それまで、身の丈に合った経営を続けたい」
「観客動員リーグトップ」の美名を捨て、チーム存続を第一に模索。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/archive/news/2009/12/18/20091218ddm035050170000c.html

結核菌認識するタンパク質 九大、阪大グループが特定

(2009年12月15日 共同通信社)

世界で年間160万人以上が死亡、とされる結核について、
人体の免疫細胞にあるミンクルというタンパク質の一種が、
体内に侵入した結核菌を認識する"アンテナ"として働いていることを、
九州大と大阪大の共同研究グループが特定。

研究グループの中心となった九州大生体防御医学研究所の
山崎晶教授(免疫学)は、「ミンクルの働きを強めることができれば、
結核に対する有効な治療につながる可能性がある」

山崎教授によると、ミンクルはマクロファージと呼ばれる免疫細胞に存在、
糖と結合する性質などを持っている。

研究グループが結核菌成分を分析した結果、ミンクルが結核菌に
特徴的な糖脂質「トレハロースジミコール酸(TDM)」を認識。
免疫細胞に働き掛け、一酸化窒素を放出させるなど、
結核菌を排除する働きをしていることが判明。

実験では、ミンクルを持たないマウスの免疫細胞は、
結核菌に対する反応が弱いことも確認。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/12/15/113090/

「クライメートゲート」が迫る覚悟

(日経 2009-12-21)

今年最もメディアを騒がせたニュースは何だったか?
国内なら、間違いなく政権交代後の日米関係やデフレ、
松井秀喜のエンゼルス移籍かもしれない。
世界に目を転じれば、「クライメート(気候)ゲート」ではないか。
え、聞いたことない?

「気温の低下を隠すトリック(データ操作)を終えた」。
地球の温暖化研究で知られるフィル・ジョーンズという英大学教授が、
米研究者にあてたメールがネット上に流出。
同教授が務めるイーストアングリア大学のコンピューターから、
そのほか10年分以上ものデータが流出。
一連の「事件」を、ウォーターゲートならぬクライメートゲートと呼ぶ。

メールの中身に反応したのは、温暖化現象が人為的だという
事実そのものに懐疑的な科学者たち。
以降、欧米では大騒ぎになり、
連日、メディアが競って成り行きを取り上げた。

温暖化人為説の支持者たちは、流出事件が計ったように、
第15回気候変動枠組み条約締約国会議(COP15)の
直前だった点にざわめいた。
「ロシア情報機関の仕業じゃないか」、
「石油が温暖化の元凶のように言われ、劣勢に立たされていた
中東某国が関与した」
そんな憶測が、まことしやかにネット上などに広がっていった。

開幕当初は、COP15も揺れた。
政府間パネル(IPCC)のパチャウリ議長は初日、
同パネルの信頼性が揺らぐことを懸念し、
「透明性と客観性は保証されている」と機先を制している。
ジョーンズ教授は、IPCCに深く関係していた。

日本では、あまり話題にならなかった。
流出したメールの信ぴょう性や背後にある政治的意図が
見え隠れしたためかもしれない。
「温暖化は、どんなことがあってもよくないこと」との考えが
日本人には強い背景も。
調査機関によれば、人為的温暖化説を信じる人は
米国が6割弱、日本は9割にものぼる。

米欧と日本の温度差が大きければ大きいほど、
CO2削減を巡る目標水準の差と重なって見えてくる。
日本の鳩山政権は、25%削減を打ち出すことで、
国際交渉でイニシアティブをとる考え。
米国や、中国ほか新興・途上国は、高い目標にあくまで消極的。
日本だけが突出してしまう結果に。

日本では、産業界が自国の「突出」に反発。
恐らくクライメートゲートについても、政府に対し各国での報道ぶりを
詳しく紹介し、25%への慎重姿勢を促していたに違いない。

クライメートゲートは、米欧の中の利害対立の構図を浮き彫りに。
排出権取引など、地球温暖化を巡る金融取引や環境関連企業など
への出資を通じて、利益を上げそうな国や人々。
石油産出国のように、時代に逆行しかねない国や人たちの2つ。

前者には多分、元米副大統領のアル・ゴア氏や著名投資家の
ウォーレン・バフェット氏、米欧金融機関が入る。
「環境ビジネス」と一口に言っても、政治や経済の複雑な人脈、
世界とのかかわりを抜きには語れない。
100年に一度のエネルギーと製造業革命が起きようとしているだけに、
日本企業にもそれなりの情報武装と覚悟が必要。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/tanso/tan091218.html

2009年12月24日木曜日

特別支援教育(7)自立・就労へ重点指導

(読売 12月10日)

発達障害がある若者が社会で自立できるよう、学習を支援。

冬の穏やかな日差しが入る小さな教室。
2人の生徒が国語、英語、数学の問題を解いている。
「はい、終わり。じゃあ、答え合わせしようか」という女性教師に、
生徒の大和田聡美さん(仮名)(20)は、「えー。難しいよ、これ」と苦笑い。

名古屋市の見晴台学園は、学習障害(LD)がある子どもの
保護者らが設立した無認可の学校で、中等部と高等部がある。
高等部は、3年間で学力の底上げをはかる「本科」と、
その後2年間で自立・就労を目指す「専攻科」がある。
専攻科には、職場体験や調理実習などの授業もある。
いずれも6人ほどの少人数で授業を行い、
5年かけて「理解する喜び」をじっくり育む。

同学園には、子どもに知的障害がないため、
特別支援学校などに入学できないが、
「一般の学校で学ぶのは難しい」と判断した保護者が通わせている。
現在、本科11人、専攻科10人が在籍し、
東京から親と転居してきた生徒も。

「開校20年目を迎え、義務教育を終えた発達障害の生徒が
しっかり支援を受けられる学校は今も少ない」と、
藪一之学園長(44)は嘆く。

大和田さんは、専攻科の2年。
相手が話す言葉が抽象的だと、十分理解できない。
この日は、来春の定時制高校入学を目指し、過去の試験問題に挑戦。

小学生時代、わからないことがあっても教師に聞けず、
友達ともうまく意思疎通できないことで悩んでいた。
今は、「友達もできたし、先生に何でも聞けるようになった。
自分に自信が付き、前向きになった」と、社会に出ることを楽しみに。

春日部市の自然学園は、通信制高校の技能連携校という形で
高校卒業資格を得られる高等部(3年)と、
その後の自立に向けた学習を行う大学部(原則2年)をもつ。

現在4人が通う大学部では、パソコンの操作法や文書作成、
電子メールの使い方などを中心に、ビジネスマナー、
コミュニケーションなどを指導、職場体験も行っている。

大学部1年の小谷俊明さん(仮名)(20)は、
読み書きが困難な「ディスレクシア」などの障害。
同県内の定時制高校を、3月に卒業。
在学中に経験したスーパーなど複数のアルバイトで
度々上司に怒られ、自信を喪失、同学園大学部に入った。
入園後、読み書きの指導を重点的に受け、
「先生方が、自分の障害を理解してくれているので、うれしい。
頑張って早く就職したい」

働きたくても、働けない人は多い。
小林浩・学園長(47)は、「企業は、障害者を雇うよう促されているが、
発達障害がある人で、障害者手帳を持っている人は少ないのが現状」

社会で自立するための勉強が報われるよう、受け皿作りを急ぐ必要。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20091210-OYT8T00192.htm?from=nwlb

早稲田大学の黒澤教授「トップ主導でISOを生かせ」

(日経 12月12日)

鳩山由紀夫首相が、温暖化ガス削減目標について、
2020年までに1990年比25%減を掲げ、産業界に波紋。
厳しい数値だが、技術革新が促されて日本経済に
活力を与えるという見方も。
企業は、どのような姿勢で挑むべきか?
早稲田大学大学院環境・エネルギー研究科の黒澤正一教授。

——25%削減目標をどうみているのか?

25%削減の宣言は、企業の環境経営のあり方に一石を投じた。
この数値は、先進国全体で2050年までに80%以上の削減という
目標を踏襲し、妥当性を認めなければならない。
高いハードルを前に、早くも真水による25%削減をあきらめ、
途上国・新興国の削減に対する貢献の代償や排出権取引で
賄おうとする向きが大勢。
環境経営の技術を駆使し、国内のみでの25%削減の具現化を提言したい」

目標は、必要だからこそ設定される。
現在の力量、慣習、インフラ、技術水準では、
簡単には達成できなくても、不必要になるわけではない。
多くの企業は、『必要な目標』ではなく、『できる目標』として
低水準の数値を勝手に設定し、知らずに現状を追認してしまいがち。
まず現状否認からスタートし、温室効果ガス削減に向けて
業務変革を繰り返すことによってのみ、到達できる。
現状否認を継続させるけん引役として、
環境マネジメントシステム(EMS)の役割が、一段と重要

——具体的にはまず何をすべきなのか?

我が国では、EMSが瀕死の状態にある。
今年4~6月、日本適合性認定協会(JAB)による
ISO14001適合組織数が前期に比べ減少に転じ、
7~9月期は2期連続減。
ISO14001やEMSは、『負担の重い看板代』くらいの印象では。
ISO卒業を宣言する例まである。
それは、規格の要求事項についての誤解や曲解によるもの。
システムを正しく構築し、厳格に運用する必要がある」

——どのあたりが間違った理解なのか?

「経営トップの姿勢を例に。
トップは、担当者まかせにしていないか。
ISOでは、トップが継続的改善にかかわるという明文の規定。
消費電力が2%減ったとか、廃棄物処理費用が5%減ったとか、
パフォーマンスに偏重せず、将来への信頼確保が必要。
トップが方針を示して、高い目標を設定する仕組みが必要。
ISOの精神を正しく踏襲した効果的なPDCA(計画・実行・評価・改善)
サイクルを実現させる必要。
EMSの健全化、“第2世代”EMSにバージョンアップしなければならない。
ISO14001が発行され、これまでは練習期間とも言ってよい。
それなりに市民権を得たものの、今のままではいけない」

——企業が参考にできる事例はあるか?

大阪の歯ブラシメーカーが、第2世代EMSに向けて果敢に挑戦。
紙や電気の無駄を省くといった第1世代EMSからの卒業を宣言。
目標として、『温室効果ガスの90%削減』を掲げた。
歯ブラシという製品で、90%削減を実現するにはどうすべきか。
試行錯誤して得られた答えの1つが、ブラシの付いた頭の部分だけを
切り離し、交換できる製品を開発。
柄の部分を捨てず、いつまでも使ってもらうため、
指で押さえる部分に、ネコの肉球のような手触りのアクセントを付けた。
これで、70%までの削減につなげた。
トップマネジメントで動いており、社内に良い意味での緊張関係が
できている好例ではないか」

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/interview/int091211.html

電子書籍ブーム もう一つの文脈

(日経 2009-12-17)

今年の米クリスマス商戦最大の注目アイテムは、
電子書籍リーダー。

アマゾン・ドット・コムの「キンドル」、ソニーの「リーダー」、
米書店大手バーンズ・アンド・ノーブルの「ヌック」の、
三つどもえの競争が激しい。
ゴールドマン・サックスの調査では、米国消費者の6%が
今年のクリスマス・プレゼントに電子書籍リーダーを贈る計画。
この冬を境に、電子書籍が大きな市場として離陸するのは確実。

コンテンツを供給する側のメディア企業の動きも激しい。
タイムワーナー、ニューズ・コーポレーション、コンデナスト、
ハースト、メレディスの出版・新聞5社は、新聞・雑誌・書籍の
電子配信に関する共通プラットフォームや標準技術仕様を開発する
共同出資会社の設立を発表。
電子書籍リーダー、多機能携帯端末、携帯型パソコンなど、
端末の形態やメーカーにかかわらずに対応できるプラットフォーム。
アマゾンやアップルなど、特定企業の配信プラットフォームに
支配されず、コンテンツ供給元が自ら課金配信の
“胴元”を運営しようという試み。

これらの動きが示唆しているのは、
単なる印刷媒体の電子シフトだけではない。
ネットの利用端末として、携帯端末がパソコンに代わって
成長の中心になりつつあることを象徴している。

パソコン用にウォールストリート・ジャーナル(WSJ)電子版の
日本語版を開設したダウ・ジョーンズのトッド・ラーセン消費者
メディアグループ最高執行責任者(COO)は、
「多端末対応と世界的なローカライゼーションが、
WSJの成長戦略の両輪」

米国では、アップル製iPhone版で、
パソコン用電子版とは別途課金を開始。
今後も、利用端末ごとに課金の道を探っていく模様。
日本語版でも、来年早期に記事ごとに課金するシステムを導入。

載せるコンテンツ自体は1つで、閲覧可能端末を増やしていくと、
端末ごとに読者や広告を巡って共食いになる恐れも。
ラーセン氏は、「これまでの米国の経験でいうと、
紙と電子版の併存は相乗効果を出している。
電子版によるプロモーション効果で、紙の有料発行部数も伸び、
広告も多メディアでの提供に人気が集まる。
携帯端末を増やしても、より相乗効果が広がるはず」

日本でも、同じような現象はすでに起きている。
パソコン版と携帯電話版が併存するコンテンツサービスで、
有料にもかかわらず携帯版が売れたり、割高にもかかわらず
携帯電話向けの音楽配信「着うたフル」が売れたりといった現象。
日本のメディア・コンテンツ企業にとっても今後、
課金を織り交ぜた新たな成長分野として、
携帯型端末向けの配信サービスは注目が高まる。

モルガン・スタンレーの著名インターネット業界アナリスト、
メアリー・ミーカー氏は、最初の一般向けパソコン用ブラウザー
(閲覧ソフト)であるネットスケープの利用者が、
配布2年後に1100万人だったのに対し、
NTTドコモの「iモード」が2500万人、アイフォーンとiPodタッチを
合わせた利用者が5700万人に達したと指摘。
「携帯ネットは、大方の予想をはるかに上回る規模に成長、
今後も想像を超える規模に成長していく」と予想。

モルガン・スタンレーは、第3世代以上の携帯通信網の
全世界契約者は2010年に年間53%増加、
10億5500万人に達すると予想。
分母が増えても、09年の60%増(見込み)に匹敵する急成長が続く。
中国とインドという2大インターネット市場で、
3Gが普及するのはこれから。
インターネット利用端末は、これから携帯型が主流になっていく。

携帯型ネット端末は、電子書籍リーダーだけでなく、
パソコンでも電話でもない、新たなタイプが増えていく。
メディア・コンテンツ企業だけでなく、ネット上で事業展開する企業は
今後、多様な端末戦略が欠かせなくなりそう。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/ittrend/itt091216.html

2009年12月23日水曜日

特別支援教育(6)発達障害の学生 後押し

(読売 12月9日)

大学でも、発達障害のある学生が支援を必要。

9学部と大学院に約9200人が通う富山大学
大勢の学生が教室に吸い込まれ、キャンパスが静かになった午前、
理系学部に入学して4年目の佐野耕平さん(仮名)(21)が、
「アクセシビリティ・コミュニケーション支援室」のドアをノック。
全国の大学でも珍しい、発達障害の学生支援を目的とする機関。

佐野さんは、アスペルガー症候群と注意欠陥・多動性障害(ADHD)。
「講義が急に変更になったり、遅刻しそうになったりすると動揺してしまう」。
その場に座り込み、動けなくなることも。

昨年度の約1年間は休学。
昨年4月に支援室が開設、今年度から復学した。
支援室では、佐野さんの障害を考え、履修科目の選択を一緒に検討。
各教員にも状況を伝え、体調不良による欠席を
リポート提出で代替するなどの配慮。

支援室の吉永崇史・特命准教授(33)は、
「佐野さんは、授業に出たいとの意欲が強い。
どういう形なら単位が取得できるのか、教員も含めて一緒に考えている」

膨大な学生たちの中で、誰が支援を必要としているのか――。
大学の特別支援教育はそこが難しい。

入学時の書類に、障害があることを記載する学生はほとんどいない。
同大では、支援室の開設を機に、新入生や保護者、全教員に
パンフレットを配布。
「発達障害」に限定せず、学業や人間関係で困りごとをもつ
学生の相談機関としてPR。

「発達障害を前面に出すと、障害を自覚していない学生は来ないし、
教員も『行ってみなさい』とは言いづらい」と
支援室長の斎藤清二教授(心療内科医)。
同大は現在、発達障害がある、疑われる学生23人を支援。
そのほとんどは、教職員や保護者の勧めで訪れた学生。

支援につながるもう一つの窓口は、インターネット。
ゼミやサークルの連絡に使ったりするSNSでも、
支援室は困りごとの相談を受け付け、
学生本人や教職員から「要支援」の情報が寄せられている。

「大学での特別支援は、前例が少なく、すべて手探りの状況」
支援室では、特別支援学校の元教諭らコーディネーター4人が
相談に対応し、相談件数は昨年度から3倍強の月平均80件に。

アスペルガー症候群で一時大学を休んでいた男子2年生の
母親(49)は、「支援室の方々はよく連絡をくれるし、熱意を感じる。
支援がなかったら復学できていなかったはずで、感謝している」

青年期の発達障害は、子ども以上に周囲から理解されにくい。
大学での支援が当たり前になれば、
社会全体の理解も広まっていくはずだ。

◆SNS

趣味や仕事などの共通項を持つ人々が、
インターネット上に作った交流の場。多くは匿名で参加。
友達の輪のように、交流のネットワークがどんどん発展するのが特徴。
最近は、企業の社員用コミュニティーや広報・宣伝など、
ビジネスでの活用も増えている。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20091209-OYT8T00282.htm

くま 血行良くして改善 カシス飲料に即効性 入浴、睡眠も重要

(2009年12月18日 毎日新聞社)

疲れがたまると、目元にできる「くま」。
「病気ではない」と軽視され、関心を持つ研究者は少なかった。
女性の社会進出が増え、目を長時間酷使する
コンピューター作業が定着、90年代後半から相談が急増。
化粧品メーカーによる研究も進んでいる。

市橋正光・神戸大名誉教授(皮膚科学)は、
「一口にくまといっても、原因によって『青くま』と『茶くま』の
二つに大別される」

疲れ、ストレスによって、血行が悪くなるとできるのが青くま。
酸素が少なく青黒い静脈血が、目の下に大量に滞ることで起こる。
まぶたや目の周りの皮膚の厚さは0・6ミリ。
顔のほかの部分の皮膚の約3分の1の厚さしかないが、
皮下には多くの血管が走り、血液の色が他の部位より透けやすい。

紫外線や摩擦による刺激で傷んだ細胞でメラニン色素が増え、
皮膚に沈着したのが茶くま。
目の周りは、皮脂腺や汗腺が少なく角質が薄いため、
乾いて傷つきやすいことで起こる。

それぞれの予防や対処法はどうすればいいのか?

市橋さんは、「青くま解消には、血行を良くするのが一番
入浴やマッサージでも改善、
市橋さんが「即効性がある」と勧めるのがカシス。
カシスに含まれるポリフェノールの一種アントシアニンが
細い血管を拡張し、血液を流れやすくする働き。

市橋さんらが、カシスアントシアニン50ミリグラムを含有した
ドリンクを、女性33人に飲ませて目元の血流を測ったところ、
15-90分で血流量が3-8%増加。
肌の色も、黒みが減って赤みが差し、実験後の聞き取り調査でも
7割が「くまが改善された」と答えた。

資生堂スキンケア研究開発センターの舛田勇二・主任研究員は、
「ビタミンEにも血行促進作用があるので、
普段使っている化粧品に含まれているか確認してほしい」

茶くまでは、色素生成を抑えることと、できてしまった色素を
早く皮膚から排出するのが対処の柱。

舛田さんが、20代と50代の女性を対象、
くまの有無と目元のメラニン量の関係を調べると、
どちらの世代でも、くまのある人の方がメラニン量が多かった。
50代の方が、20代よりメラニン量が多かった。

別の調査でも、年齢が上がるほど茶くまに悩む女性が増え、
舛田さんは「年齢とともにメラニン量が増え、
茶くまができやすくなるようだ」と推測。

舛田さんらによると、ビタミンCに色素生成を抑える働きがあり、
アセロラやレモンなど果物や野菜で摂取。
美白成分入りや保湿効果のある目元用化粧品も市販。

市橋さんは、「沈着が浅ければ、メラニンも古い角質と一緒に
そのうち排出。新陳代謝の改善も心がけてほしい。
入浴や十分な睡眠は、代謝にも良い」

英語でくまを表す言葉すらないほど、
欧米では関心を払っていなかった。
舛田さんによると、「dark eye circles(目元の暗い円)」という
言葉が定着してきた程度。
日本人は、以前からくまを意識していた。
くまの語源は、歌舞伎役者が施す赤や黒の化粧「隈取(くまどり)」に
由来するという説がある。

研究の歴史が浅いこともあり、わからないことも多い。
徹夜明けなど、疲労が蓄積した場合にくまが出るように思われている。
舛田さんが、18歳-50代の女性200人を対象に行った調査でも、
半数以上が「くまが目立つのは朝」
社員に徹夜で過ごしてもらい、目元を観察すると、
宵の口と朝方で変化はなく、徹夜後に仮眠をとって
午後に起きたらくまができた社員が多かった。
舛田さんは、「寝ている時には血管が拡張し、
起きると血管が収縮することと関係があるのかもしれない」と推測。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/12/18/113354/

梅に糖尿病の治療効果成分?

(2009年12月18日 読売新聞)

和歌山県みなべ町は、特産品の梅に糖尿病治療などに
利用されている「α-グルコシダーゼ阻害剤」の効果がある成分が
含まれていることを、県立医科大の研究グループなどとともに
解明、特許を取得。

古くから「梅干しは体によい」などと言われてきたが、
具体的な効果を検証しようと、県立医科大や近畿大などの
8機関が2001年から、研究を重ねてきた。
昨年、胃潰瘍などの原因となるヘリコバクター・ピロリ菌を
抑制する物質があることを解明、特許を取得。

今回の特許では、食後高血糖を改善するために服用されている
α-グルコシダーゼ阻害剤の効果がある成分が、
梅にも含まれていることを突き止めた。
動物実験などでは、糖尿病の予防効果も。

宇都宮洋才・県立医科大講師は、
「研究が続いており、具体的な成分などは公表を控えたいが、
言い伝えられてきたことが、科学的に裏付けられたと思う」
特許の取得を受け、町は梅のこうした効果を積極的にPR。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/12/18/113332/

2009年12月22日火曜日

逆風の中で:第7部・地域プロ/3 2人からの再出発

(毎日 12月17日)

福岡県二丈町にある製パン会社所有の球場から
ユニホーム姿が消えて、1カ月半が過ぎた。
独立リーグの四国・九州アイランドリーグに所属する
福岡レッドワーブラーズのメーン練習場。
球団は9000万円の負債を抱え、10月末、チームは解散。
3年目の来季は、試合に参戦しない「準加盟球団」となり、
23人の選手はリーグの救済ドラフトで、
他の4チームなどに散っていった。

球団に残ったのは、江口信太郎球団代表(40)とスタッフ1人。
1年かけて、負債だけでなく、復帰後最低限必要な運営費
約7000万円も合わせた1億6000万円程度を
かき集めなければならない。

経費節減のため、福岡市内の事務所を引き払った。
スポンサー約10社には増資を依頼し、
新規の企業スポンサーを探している。
ホームページで、1口3000円や1万円の個人、法人会員を募る。
復帰への道は、緒についたばかり。

次の失敗は許されないため、復帰後「人を呼べる球団」
にするための策は練っている。
試合を集中的に開催する地域を選んで本拠地とし、
存在感を出すもくろみ。

「県民球団」を目指すレッドワーブラーズは、
県内各地で試合を行ってきた。
福岡には、プロ野球ソフトバンクを筆頭に、
サッカーやバスケットボールといった人気チームが多く、
互角に戦うのは難しい。
年間80試合の観客動員の1試合平均は、500人未満。
試合を、これまで開催した球場の中から絞って
存在感を出そうというもの。

四国・九州アイランドリーグ、徳島インディゴソックスの
ボランティアスタッフを務めたこともある、
徳島大総合科学部の長積仁・准教授(スポーツ経営学)は、
「うまくいっているチームでも、興行を行わずに
1億6000万円集めるのは相当厳しいと思う」
その上で、「地域特化にシフトする試みに、一定の評価はできる。
試合のプロデュースを、学生に任せるなどして地域に開放し、
派生させるような顧客開拓に結びつくシステムを作り出せばいい」

福岡のスポンサー集めの売り文句は、「地域での実績」。
地域イベントに参加したり、小学校の登下校を見守る
スクールガードなど、地域に溶け込んできたことをアピール。

不況続きの中、企業スポンサーは10万円単位の小口が中心。
「正直、1年での復帰は厳しい。
だが、できると信じて動くしかない」。
江口代表は、オフィス代わりにしている自家用車で、金策に奔走。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/news/20091217ddm035050052000c.html

意外に役立つ農商工連携

(日経 2009-12-15)

「農商工連携」。
製造業の技術や流通業のノウハウを農業に活用するため、
昨年施行された国の施策。

独自技術や新商品など、有望な事業シーズを持ちながら
経営体力が弱く、自力で新規分野に挑戦することに
臆病になっている中小モノ作り企業も、農林業者と連携して
新事業や販路開拓に成功するケースも増え、
地域の中小企業の活性化策として成果をあげている。

東京ビッグサイトで開催された「チャンスを活かせ!!中小企業総合展」は
4万6000人が来場、熱気であふれた。
出展した514社は、事業や新製品のPRだけでなく、
連携相手探しにも力を入れていた。

展示会を主催した中小企業基盤整備機構(中小機構)は、
農商工連携を浸透させる場とも位置付け、
参加者同士の“見合い”があちこちで繰り広げられた。
パネルディスカッションのテーマも、ズバリ
「売れる商品作りと販路開拓のポイント・農商工連携活用の現場から」

パプリカ生産農家、Tedy(水戸市)の林俊秀代表は、
「異業種の知恵を借りて、アイスクリームのヒット商品を
誕生させることができた」と成果を披露。

国産パプリカ農家の先駆者であるTedyは、
年間約300トンを生産、国内産の1割以上をまかなう。
首都圏の高級スーパー、外食店向けに出荷。
形はピーマンに似て、赤、黄、ダイダイと色鮮やかなうえ、
肉厚で糖度が高く、煮ても焼いてもおいしいパプリカだが、
農家にとって扱いにくい作物。

温度変化に弱く、日照時間や温度変化に応じて
きめ細かな管理が必要。
見た目が重視され、少しでも傷があると流通業者は買ってくれず、
スーパーなどの店頭に並ぶのは色合いや形の整ったもの。
出荷できない規格外のパプリカは、全生産量の1割、約25トン。
焼却にかかるコストは、年数百万円。

「傷ものを廃棄せず、有効活用できないか」
林氏は、パプリカの売り物である色合いや味・栄養を
そのままにしたペーストを作りたいと考えた。

レストランでは、スープやドレッシングの材料として使われ、
ペーストを作るにはパプリカの表面をバーナーで焼き、
薄皮を取り除くなど手間がかかり、輸入品が市場をほぼ独占。
食の安心・安全に消費者の関心が高まり、
国産品にも需要があると判断した林氏は、水戸市にある
食品加工メーカーのオーピーシートレーディングと組み、
薄皮を除去し、鮮やかな色合いのペーストに加工する設備を
共同開発。

開発は、試行錯誤の連続で、昨年施行された
「農商工等連携促進法」の認定を受け、新商品開発のための補助金
(上限3000万円)などの支援がなければ、あきらめていた。

Tedyは、今春、水戸京成ホテルのレストランと協力、
パプリカペーストを練り込んだアイスクリームを商品化。
「農工」連携による成果に、「商」が加わった。

林氏は、「市場拡大に向け、パプリカの新しい食べ方を提案、
今後も連携の輪を広げていきたい」と意欲。

現在の農商工連携認定は272件。
業種内訳は、食品が218件と最も多い。
認定件数の約6割が売り上げを計上、新規事業として独り立ち。

成功事例を紹介した「農商工連携88選」をみると、
浜松市の自動車部品メーカーが地元の農園、花芽販売業者と組み、
LED(発光ダイオード)を使い、小型で安価な発芽誘導装置を開発、
チンゲンサイの周年栽培が可能になったケースなど。

政府の行政刷新会議の事業仕分けでは、
「農商工等連携促進施設整備支援」は、
来年度概算事業要求額(11億6700万円)の縮減判定。

中小同士の連携は、利害関係の調整など難しい側面があり、
信頼関係が築けず、破談になるケースも多い。
何を作り、どうやって売るか?
連携相手探しなど、入り口の段階から経営指導に携わる
良きメンター(指南役)と出会えるかが成否のカギ。

中小機構は、ビジネス経験豊富な大企業OBが
プロジェクトマネジャーとしてメンターの役割を担い、
中小企業診断士、弁理士など地域の実情に通じた
アシスタントマネジャーの合計120人を全国に配し、
新事業創出の阻害要因を指摘、事業のテークオフ(離陸)を助ける。
補助金の出し放しに終わらせず、認定後の支援にも力を入れ、
新規事業の継続的な発展に当たることにも主眼。

「日本最大級の中小企業マッチングイベント」と銘打った
中小企業総合展の活況をみると、大手の下請けでは生きていけない
中小企業が、中小同士の連携に活路を見いだそうとしている。
生き残りに苦闘するモノ作り中小企業は、
これまであまり関心を示さなかった農林水産市場に目を向け、
技術力を生かして新規事業にチャレンジしてみたらどうか。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/mono/mon091208.html

小学生の視力低下止まらず 0・3未満が過去最多

(2009年12月18日 共同通信社)

視力が0・3に満たない小学生の割合が、
2008年度より0・2ポイント増えて7・3%に上り、過去最多。

文部科学省が公表した、09年度学校保健統計調査速報。
調査項目に加わった1979年度の2・7倍に増加。
視力低下が止まらない現状。

背景には、幼児期からのテレビゲーム、パソコンの影響があるとみられ、
文科省は、「以前より目を酷使する機会が増えたのではないか」と分析。
「0・3未満」の児童の割合は、6年が14・9%(昨年度比0・9ポイント増)、
4年が8・4%(同0・5ポイント増)。
1年は1・0%、2年は2・7%で、いずれも昨年度と同じ割合。

中学生は0・4ポイント減り、22・0%。
高校生も0・7ポイント減の27・7%、「1・0未満」の割合は、
1・4ポイント増加し、59・4%を占めた。

中1の虫歯の本数は、過去最少の1・4本。
低下を続けており、10年前の2・9本の半数以下になった。

ぜんそくの子どもの割合は、小学校4・0%、高校1・9%、
最高を更新。
粉症などを含む鼻・副鼻腔疾患の児童生徒の割合も
高校9・6%、中学校10・8%、小学校12・6%、幼稚園4・0%。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/12/18/113308/

2009年12月21日月曜日

逆風の中で:第7部・地域プロ/2 BCリーグ6球団

(毎日 12月16日)

苦難の経営を強いられた原因を問うと、関西独立リーグ、
紀州の竹中則行社長は苦渋の表情。
関西には、地元有力紙と呼べるものがない。
当初から危ぶんではいたが、メディア露出の少なさは
想像以上に痛かった」
創設1年目の今季、世間を騒がせたのは、リーグの金銭問題と、
男子に交じってプレーする吉田えり投手の話題ばかり。
リーグとして、発信力を欠いたのは明らか。

地域密着を掲げる独立リーグにとって、
地元メディアの協力は必要不可欠。
北信越を中心とするBCリーグは、6球団すべてがスポンサーや
パートナーといった形で、地元有力紙の協力を得ている。
08年度決算で、赤字ゼロを達成した石川の端保聡社長は、
「地元のメディア、通信、金融機関の3者の協力なくして、
この事業は成し得ない」と力を込める。

BCリーグの福井は今年7月、福井新聞社が球団経営を引き継いだ。
球団は初年度、約3500万円の赤字を計上、
今季も5月末で1800万円の赤字。
福井新聞社専務の吉田真士球団社長は、
「資本金をほぼ食いつぶした状況で、不安は大きかった」
福井は石川、富山など近隣県から1年遅れる形で、
リーグ創設2年目の08年から参戦。
ようやく誕生した県民球団が、わずか1年余りでつぶれてしまっては、
「プロスポーツ文化で、福井が取り残されてしまう」と吉田社長。
「地域が活性化することが、新聞社の繁栄にもつながる」
という観点から、球団に手を差し伸べた。

7月以降、専従の球団代表と営業スタッフの2人を派遣、
経営の効率化を図り、積極的な紙面展開でサポートを続けている。
吉田社長は、「有力コンテンツというよりは、
郷土愛の象徴ととらえている」
試合の翌日、スポーツ面のトップ記事として扱うだけでなく、
地元開催の前には展望記事や特集面が組まれる。

取材を担当する運動部は、08年のリーグ参入を前に
部員を1人増やした。
「県内のトップチームとして扱う姿勢は、
経営に乗り出す前から変わらない」と近藤修運動部長。
すべての遠征に同行できているわけではないが、
他の5球団を支える地元新聞社と記事や写真の交換で、
協力体制をとり、地元開催時と変わらない紙面展開を実現。

日々の報道や事業を通して築き上げたネットワークを、
スポンサー営業などに生かせるのも強み。
吉田社長は、新聞社が球団経営に関与し続けることには
疑問を持っている。
「球団を、一企業のものにしてはいけない。
地域に密着し、福井を元気にできる球団の土台作りのお手伝い」
今は、すべての県民に支えられる球団として、
独り立ちさせるための過程だととらえている。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/news/20091216ddm035050160000c.html

老いを支える制度活用を 包括センターが相談窓口

(2009年12月11日 共同通信社)

一人暮らしの高齢者の大きな支えとなるのが社会保障。
制度をよく知って賢く使いたい。
仕組みのポイントや生活の心構えをまとめた。

▽身なりに乱れ

82歳の男性、2年前に妻が特別養護老人ホームに入って
一人暮らしになってから、身なりが乱れ始めた。
掃除をしないため、部屋はごみが散乱し、
台所には虫が大量発生する状態。

妻を担当する職員が気づき、町の地域包括支援センターに連絡。
担当者が、害虫の駆除の手配などを手助けした。
判断能力も衰え、要介護認定を受け、
ヘルパーが週に数回、家事援助に入ることに。
お金の引き出しにも不安があるため、行政サービスの利用や
手続きなどを助けてくれる社会福祉協議会の
日常生活自立支援事業(地域福祉権利擁護事業)を利用。

▽よろず相談窓口へ

一人暮らしの高齢者が頼りにしたいのが、
高齢者の"よろず相談"を受け付ける地域包括支援センター。
社会福祉士や保健師、ケアマネジャーらが常駐。
全国に3976カ所(2008年度)ある。

介護保険の利用方法や閉じこもり予防、体操教室の案内、
生活に関するさまざまな情報なども得られる。
介護保険制度を利用したい場合、まず地域包括支援センターや
市町村に相談。

制度を使えるのは、原則65歳以上の要介護認定者。
居宅サービスの限度額は、要介護の程度により
月額4万9700~35万8300円。自己負担はこの1割。
介護を受けながら最後まで一人暮らしをしたい場合、
費用を介護保険だけで賄うのは難しいが、
24時間対応のヘルパーや在宅医を確保できれば可能。

近所の訪問看護事業所に聞けば、医師の情報などが分かる。
介護を受けられる施設には、特別養護老人ホームや
老人保健施設、療養型病床、介護型有料老人ホーム、
認知症グループホームなど。

地域にもよるが、費用の目安は月額20万円前後
有料老人ホームは、一時金が数百万~数千万円程度かかる。
体験入居で確認して、決めた方がいい。

70歳からの医療費の窓口負担は、現役並み所得者を除き1割。
入院などで医療費がかかる場合、所得に応じ上限額がある。
介護費と合算した上限額も設けられた。
市町村によって、独自の低所得者減免もあるため、確認して。

▽遺族年金に違いも

年金は25年の加入が必要で、国民年金の場合、
満額は月約6万6千円。
遺族年金は、夫が厚生年金なら、報酬比例部分の4分の3を妻が受給。
国民年金なら、子どもが18歳になる年度の末日までが支給対象。

生活資金に困った時、自宅を担保にお金を借りられる
「リバースモーゲージ」や、社会福祉協議会の
「生活福祉資金貸付制度」も利用できる。

生活保護を受ける場合、地域で最低生活費の基準額が決まっており、
支給額は年金など収入との差額。
保護対象になると、医療費や介護費が無料。

▽見守りサービス

一人住まいで心配なのが、万が一の対応。
時々様子を見てもらいたい場合、市町村や社会福祉協議会、
特定非営利活動法人(NPO法人)などが行っている
見守りサービスや緊急通報サービス、民生委員に頼む方法も。
配食サービスも、安否確認を兼ねて活用できそう。

東京都千代田区の地域包括支援センター菰田俊樹相談員は、
「日ごろから周りに困っている、助けてほしい、と言えるようにしておく。
自分がどんな暮らしがしたいか、あらかじめイメージしておく
老い支度も必要」とアドバイス。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/12/11/112946/

学力上位県、体力も好成績 第2回テスト、前年横ばい 揺らぐ継続の意義

(2009年12月18日 共同通信社)

文部科学省は、小学5年と中学2年を対象に、
4~7月に実施した第2回全国体力テストの結果を公表。

8種目の数値を得点化した体力合計点の平均は、
前年からほぼ横ばい。
全国学力テストで好成績が続く福井、秋田県などが、
体力でも前年同様に高得点を収め、固定化傾向が見られた。

体力テストは、行政刷新会議の事業仕分けで、
文科省が1964年度以降、毎年実施する抽出調査との重複が指摘、
来年度予算の大幅縮減を求められた。

前年とほぼ同じ結果となったことで、
「毎年、全員」の調査の意義があらためて問われそう。

国公私立全児童生徒の体力合計点(80点満点)の平均値は、
小5男子で54・2(前年度比増減なし)、
同女子54・6(同0・3ポイント減)、
中2男子41・3(同0・1ポイント減)、
同女子47・9(同0・4ポイント減)。

都道府県別(公立)では、男女とも全国学力テストで上位だった
福井が、小5で最も高く、秋田が続いた。
中2は、男子が茨城が最高点で、秋田、福井と続き、
女子は福井、千葉、茨城の順。
前回の上位県が、今回も高い値を示した。

種目別の全国平均は、抽出調査だった85年度と比べ、
下回る種目が多く、中2男子50メートル走は
24年前の7・90秒に対し、8・05秒。
小5女子ソフトボール投げは、17・60メートルから
14・61メートルに落ちた。

1週間の総運動時間でみると、60分未満は
小5男子が11%、女子23%。
中2男子は10%で、中2女子は32%に上り、
文科省は「運動する子としない子の二極化が見られる」

体力テストは国が現状を把握し、学校の指導につなげるのが目的。
全国学力テストと同様、文科省は都道府県教育委員会による
市町村別や学校別の結果公表を禁じている。
秋に体力テストをする学校も多く、
参加率は公立小中が約9割、私立小中は約3割。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/12/18/113306/

2009年12月20日日曜日

逆風の中で:第7部・地域プロ/1 ベースボール北海道、船出へ

(毎日 12月15日)

「プレミアム会員券」の試作品を手に、
「ベースボール北海道」(BB北海道)の統括プロデューサーを
務める中田元茂(46)は、笑みを浮かべた。
「これを、どうプロモーションして売り上げにつなげられるか。
それが成功のカギになる」

野球の独立リーグ、BB北海道の設立が発表。
設立準備委員会は、企業を経営しながらNPO法人で
環境問題に取り組んできたメンバーが中心。
広告代理店を経営する中田は、「野球を通じて道内を活性化したい」
選手給与は月額10万円程度で、初年度は札幌、小樽両市に
計2チームを置き、順次拡大していく予定。

四国・九州、関西などの先行リーグは、観客動員の伸び悩みに加え、
不況がスポンサー収入に影を落とし、経営難が浮き彫り。
道内経済も、昨年度の完全失業率が平均5・1%と
全国平均を大きく上回るなど冷え込みが続く。
その荒波の中で、BB北海道はあえて船出を決断。

光も見える。
少年から大学まで、チーム数が4000を超え、
野球熱は高いにもかかわらず、選手の受け皿は少ない。
「各都市の間に距離があり、四国のようにそれぞれ特色も違う」
札幌市には、04年から日本ハムが本拠地を置くが、
広大な北の大地でそれを生で目にすることができるのは一部。
地域性、プロとの共存の可能性では、勝算は十分と見る。

収入の柱に掲げるのが、「プレミアム会員券」。
観戦チケット5枚に、協賛者の店舗・施設の利用時に
割引を受けられる特典を付け、1口2000円で販売。
初年度は、広告料は無料とする方針、協賛者は元手なしで
集客促進できる上、特典を厚くすることで野球に関心の無い人にも
購入してもらえる可能性が広がる。
すでに30以上の法人・個人が手を挙げ、購入申し込みも
100件近くに上っている。
先行リーグも後援会などを設けているが、個人会員(一般)は
1口1万円前後が主流。
BB北海道の低価格戦略は際立っている。

公益性を高めるため、リーグの財団法人化を目指し、
2球団を一括運営する方針。
運営費は、年間2億~3億円が見込まれるが、
会員券を目標の20万人に売りさばければ、
売り上げは4億円で収益が出る計算。
中田は、「札幌だけでも200万人近い人口がある。
不可能ではない」と自信を見せる。

関西リーグ、紀州の竹中則行社長は、
BB北海道の取り組みについて、
「最初は、スポンサーの助けがなければ苦しいかもしれないが、
方向性は決して間違っていない」と評価。
不況で、広告収入頼みの経営モデルが崩壊しつつある中、
新たな手法はどんな成果を上げるのか?
11年春の開幕に向け、BB北海道は動き始めている。

「地域密着」を掲げて、各地で誕生したプロリーグが苦境に直面。
景気の先行きが見えない中、存続に向けた模索が続く。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/news/20091215ddm035050002000c.html

太陽光発電「60億人市場」を照らせ

(日経 2009-12-14)

民主党政権下で、CO2を排出しない太陽光発電の普及が
加速するのが確実となり、パネルメーカーの間で期待は大きい。
日米欧だけでなく、中国など新興国も含めて
パネルメーカーは乱立状態。
先進国で成功した製品やビジネスモデルを、
新興国に移転する従来手法ではいずれ行き詰まる。

太陽光発電の潜在需要は、地球規模。
「60億人市場」を見据えた構想力が問われる。
太陽光発電を切実に必要としているのは、
CO2排出量削減の手段に使おうとする日本などより、
インドやアフリカなどの新興国。

発電所や送電線網の整備が追いつかず、不便な暮らしを
強いられてきた人々にとって、自宅や集落に設置すれば、
電力の恩恵を受けられる太陽光発電は魅力的。
家庭の電源、集落の灌漑用水を引くポンプの電源などとして
急速に普及。

変換効率など、技術力に自信のある日本メーカーは、
主に先進国をターゲットにするなか、
新興国市場の開拓を宣言しているのが昭和シェル石油。
同社は、サウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコと組んで、
2012年から中東やアフリカなどで、1000~2000キロワット級の
太陽光の小規模分散型電源を設置、大規模電源のない地方都市や
集落で電力を販売する事業に乗り出す。

このビジネスモデルは、サウジの意向が強く反映。
「サウジは、特にアフリカでの太陽光発電事業に意欲的で、
新産業を国内に育成したい思いが強い」(関係者)。
サウジは、雇用吸収力のある産業を興そうと再三、日本に協力を要請。

過去に日本の自動車メーカーに対し、
工場建設を要請したのも1度ではない。
現業労働者の大半を移民で賄うという同国の労働事情を前に、
各社は大型工場建設を尻込み。

そこで浮上してきたのが、太陽光による分散型発電事業。
サウジは、石油輸出国機構(OPEC)のリーダーで、
アフリカ事情に精通。
昭シェルが、アフリカ市場開拓に乗り出すうえで、
アラムコは頼もしい水先案内人になる。

昭シェル+アラムコによる太陽光発電事業のもうひとつの
大きな可能性は、BOP(ボトム・オブ・ピラミッド)ビジネスへの発展。
アフリカの低所得国でも事業が軌道にのれば、
インドや東南アジアなど世界全域で通用する道が開ける。

60億人強の世界人口のうち、1日2ドル以下で生活するBOPは、
40億人以上。
市場経済から取り残されていた「世界の3分の2」が、
実は市場として十分成立するという認識が強まっている。

インドで、1日分のシャンプーや食品を低価格で販売する
ビジネスで急成長する英ユニリーバ系のヒンダスタン・リーバ
バングラデシュで低価格栄養食品販売に乗り出した仏ダノン
農村向けに煙のでない低価格キッチンストーブの
生産・販売を始めたオランダ・フィリップス——。

成功を収めつつあるBOPビジネスは、貧困層の暮らしを
確実に改善し、製品や企業へのロイヤルティーは高い。
経済成長とともに市場のパイが大きくなれば、
企業はもっと大きな果実が得られる。
昭シェルの太陽光発電事業も、BOPビジネスの成功例として
続く可能性はある。

もっともハードルは高い。
先進国での手法を導入しても、まず成功しない。
成功したBOPビジネスは、低所得者が購入できる価格から
逆算して、製品原価を決定していることが大きい。

昭シェルのパネルが、シリコンを使わない金属化合物型で
コストが比較的安いとはいえ、相当のコストダウンが不可欠。
販売・サービス機能を充実させるため、
最適なパートナーを各市場で探す必要。
過剰消費ぎみだった北米市場が尻すぼみとなり、中国では
現地メーカーの猛烈な追い上げを受ける

日本企業のグローバル戦略は視界不良。
ハードルは高くても、60億人市場に挑戦する意義は大きい。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/tanso/tan091209.html

寿命1・3倍、体はスリム 雄なしで誕生のマウス 免疫も強く、東京農大など

(2009年12月14日 共同通信社)

雄が全く関与せず、2匹の雌の卵子から誕生させたマウスは、
通常の精子と卵子の受精を経て生まれたマウスより、

1・3倍長生きだとの研究を、河野友宏・東京農業大教授と
川原学・佐賀大准教授がまとめた。

体重は通常マウスの3分の2しかなく、免疫機能が強い傾向。
河野教授らは、「哺乳類で雌の方が長生きなのは、
精子の遺伝情報が寿命にマイナスの影響を与えているため」、
「寿命には多様な側面があり、人間にも当てはまるかは分からない」

哺乳類には、父母のどちらから受け継いだかによって
働いたり働かなかったりする「インプリント遺伝子」がある。

河野教授らは、精子から伝わった場合にだけ働く遺伝子のうち、
胎児の発育に必要な遺伝子を働くようにした「雄型」の卵子を作製、
その核を別の卵子に入れてマウスを誕生させる方法を開発。

これを「二母性マウス」と名付け、
最初のマウス「かぐや」の誕生を2004年に発表。

今回は、二母性と通常の雌各13匹の成長を観察。
二母性の寿命は平均841・5日、通常の同655・5日より長く、
生後1年8カ月時点の体重は、二母性が平均29・4g、
通常マウスの同44・9gより軽かった。

遺伝子を調べると、通常マウスでは、成長ホルモン分泌に関係する
Rasgrf1という遺伝子が父方から受け継がれて働いていたが、
二母性では働いていなかった。
これが、体重差などに影響しているらしい。

河野教授は、「雄は繁殖競争に勝つため、体を大きくすることに
エネルギーを使う結果、寿命は短くなるのではないか」

※インプリント遺伝子

哺乳類が、受精後に発育していく過程で、
両親から伝わったうちの一方だけが働く遺伝子。
河野友宏東京農業大教授らは、インプリント遺伝子の一部が
精子のように働く卵子を作り、別の卵子と合わせた
2個の卵子によって、マウスを誕生。
1個の卵子からコピーの子ができる「単為生殖」とは、厳密には異なる。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/12/14/113036/

岩手県内肥満児、男女ともに全国最高 学校保健統計調査

(2009年12月18日 毎日新聞社)

岩手県は、今年度学校保健統計調査の結果(速報値)を発表。
肥満度20%以上になる肥満傾向児の割合は、
6歳男児が9・16%、10歳女児が15・49%で全国で最も高かった。

他の年代も昨年度と同様に順位が高く、
県教委スポーツ健康課は、「小学校の統廃合が進み、
バスや自家用車での通学が増えたほか、
少子化で外で遊ぶ機会も減っている」と分析。

調査は、5~17歳の県内1万2933人を対象に行い、
全体から7・8%を抽出して結果をまとめた。

男児の肥満傾向は、5歳で全国2位の6・08%(前年度4位、5・53%)、
12歳が全国4位の15・94%(同1位、18・93%)。
女児は、5歳で全国2位の5・05%(同5位、4・66%)、
12歳で3位の13・27%(同4位、14・02%)。

同課が小学生を対象にまとめた地域別では、
二戸が14・52%で最も高く、久慈14・43%、宮古13・85%、
県北・沿岸部で肥満傾向が強かった。
盛岡が、10・26%で最も低かった。

同課の平野晃施設・学校健康担当課長は、
「肥満は、体力や運動能力が低下しがちになり、
生活習慣病につながりかねない」。

昨年度、導入した体育の授業を手伝うアシスタントを活用し、
児童や生徒の運動を習慣づけていく。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/12/18/113364/