(日経 2009-12-14)
民主党政権下で、CO2を排出しない太陽光発電の普及が
加速するのが確実となり、パネルメーカーの間で期待は大きい。
日米欧だけでなく、中国など新興国も含めて
パネルメーカーは乱立状態。
先進国で成功した製品やビジネスモデルを、
新興国に移転する従来手法ではいずれ行き詰まる。
太陽光発電の潜在需要は、地球規模。
「60億人市場」を見据えた構想力が問われる。
太陽光発電を切実に必要としているのは、
CO2排出量削減の手段に使おうとする日本などより、
インドやアフリカなどの新興国。
発電所や送電線網の整備が追いつかず、不便な暮らしを
強いられてきた人々にとって、自宅や集落に設置すれば、
電力の恩恵を受けられる太陽光発電は魅力的。
家庭の電源、集落の灌漑用水を引くポンプの電源などとして
急速に普及。
変換効率など、技術力に自信のある日本メーカーは、
主に先進国をターゲットにするなか、
新興国市場の開拓を宣言しているのが昭和シェル石油。
同社は、サウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコと組んで、
2012年から中東やアフリカなどで、1000~2000キロワット級の
太陽光の小規模分散型電源を設置、大規模電源のない地方都市や
集落で電力を販売する事業に乗り出す。
このビジネスモデルは、サウジの意向が強く反映。
「サウジは、特にアフリカでの太陽光発電事業に意欲的で、
新産業を国内に育成したい思いが強い」(関係者)。
サウジは、雇用吸収力のある産業を興そうと再三、日本に協力を要請。
過去に日本の自動車メーカーに対し、
工場建設を要請したのも1度ではない。
現業労働者の大半を移民で賄うという同国の労働事情を前に、
各社は大型工場建設を尻込み。
そこで浮上してきたのが、太陽光による分散型発電事業。
サウジは、石油輸出国機構(OPEC)のリーダーで、
アフリカ事情に精通。
昭シェルが、アフリカ市場開拓に乗り出すうえで、
アラムコは頼もしい水先案内人になる。
昭シェル+アラムコによる太陽光発電事業のもうひとつの
大きな可能性は、BOP(ボトム・オブ・ピラミッド)ビジネスへの発展。
アフリカの低所得国でも事業が軌道にのれば、
インドや東南アジアなど世界全域で通用する道が開ける。
60億人強の世界人口のうち、1日2ドル以下で生活するBOPは、
40億人以上。
市場経済から取り残されていた「世界の3分の2」が、
実は市場として十分成立するという認識が強まっている。
インドで、1日分のシャンプーや食品を低価格で販売する
ビジネスで急成長する英ユニリーバ系のヒンダスタン・リーバ、
バングラデシュで低価格栄養食品販売に乗り出した仏ダノン、
農村向けに煙のでない低価格キッチンストーブの
生産・販売を始めたオランダ・フィリップス——。
成功を収めつつあるBOPビジネスは、貧困層の暮らしを
確実に改善し、製品や企業へのロイヤルティーは高い。
経済成長とともに市場のパイが大きくなれば、
企業はもっと大きな果実が得られる。
昭シェルの太陽光発電事業も、BOPビジネスの成功例として
続く可能性はある。
もっともハードルは高い。
先進国での手法を導入しても、まず成功しない。
成功したBOPビジネスは、低所得者が購入できる価格から
逆算して、製品原価を決定していることが大きい。
昭シェルのパネルが、シリコンを使わない金属化合物型で
コストが比較的安いとはいえ、相当のコストダウンが不可欠。
販売・サービス機能を充実させるため、
最適なパートナーを各市場で探す必要。
過剰消費ぎみだった北米市場が尻すぼみとなり、中国では
現地メーカーの猛烈な追い上げを受ける
日本企業のグローバル戦略は視界不良。
ハードルは高くても、60億人市場に挑戦する意義は大きい。
http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/tanso/tan091209.html
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