(読売 12月9日)
大学でも、発達障害のある学生が支援を必要。
9学部と大学院に約9200人が通う富山大学。
大勢の学生が教室に吸い込まれ、キャンパスが静かになった午前、
理系学部に入学して4年目の佐野耕平さん(仮名)(21)が、
「アクセシビリティ・コミュニケーション支援室」のドアをノック。
全国の大学でも珍しい、発達障害の学生支援を目的とする機関。
佐野さんは、アスペルガー症候群と注意欠陥・多動性障害(ADHD)。
「講義が急に変更になったり、遅刻しそうになったりすると動揺してしまう」。
その場に座り込み、動けなくなることも。
昨年度の約1年間は休学。
昨年4月に支援室が開設、今年度から復学した。
支援室では、佐野さんの障害を考え、履修科目の選択を一緒に検討。
各教員にも状況を伝え、体調不良による欠席を
リポート提出で代替するなどの配慮。
支援室の吉永崇史・特命准教授(33)は、
「佐野さんは、授業に出たいとの意欲が強い。
どういう形なら単位が取得できるのか、教員も含めて一緒に考えている」
膨大な学生たちの中で、誰が支援を必要としているのか――。
大学の特別支援教育はそこが難しい。
入学時の書類に、障害があることを記載する学生はほとんどいない。
同大では、支援室の開設を機に、新入生や保護者、全教員に
パンフレットを配布。
「発達障害」に限定せず、学業や人間関係で困りごとをもつ
学生の相談機関としてPR。
「発達障害を前面に出すと、障害を自覚していない学生は来ないし、
教員も『行ってみなさい』とは言いづらい」と
支援室長の斎藤清二教授(心療内科医)。
同大は現在、発達障害がある、疑われる学生23人を支援。
そのほとんどは、教職員や保護者の勧めで訪れた学生。
支援につながるもう一つの窓口は、インターネット。
ゼミやサークルの連絡に使ったりするSNSでも、
支援室は困りごとの相談を受け付け、
学生本人や教職員から「要支援」の情報が寄せられている。
「大学での特別支援は、前例が少なく、すべて手探りの状況」
支援室では、特別支援学校の元教諭らコーディネーター4人が
相談に対応し、相談件数は昨年度から3倍強の月平均80件に。
アスペルガー症候群で一時大学を休んでいた男子2年生の
母親(49)は、「支援室の方々はよく連絡をくれるし、熱意を感じる。
支援がなかったら復学できていなかったはずで、感謝している」
青年期の発達障害は、子ども以上に周囲から理解されにくい。
大学での支援が当たり前になれば、
社会全体の理解も広まっていくはずだ。
◆SNS
趣味や仕事などの共通項を持つ人々が、
インターネット上に作った交流の場。多くは匿名で参加。
友達の輪のように、交流のネットワークがどんどん発展するのが特徴。
最近は、企業の社員用コミュニティーや広報・宣伝など、
ビジネスでの活用も増えている。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20091209-OYT8T00282.htm
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