2009年12月23日水曜日

特別支援教育(6)発達障害の学生 後押し

(読売 12月9日)

大学でも、発達障害のある学生が支援を必要。

9学部と大学院に約9200人が通う富山大学
大勢の学生が教室に吸い込まれ、キャンパスが静かになった午前、
理系学部に入学して4年目の佐野耕平さん(仮名)(21)が、
「アクセシビリティ・コミュニケーション支援室」のドアをノック。
全国の大学でも珍しい、発達障害の学生支援を目的とする機関。

佐野さんは、アスペルガー症候群と注意欠陥・多動性障害(ADHD)。
「講義が急に変更になったり、遅刻しそうになったりすると動揺してしまう」。
その場に座り込み、動けなくなることも。

昨年度の約1年間は休学。
昨年4月に支援室が開設、今年度から復学した。
支援室では、佐野さんの障害を考え、履修科目の選択を一緒に検討。
各教員にも状況を伝え、体調不良による欠席を
リポート提出で代替するなどの配慮。

支援室の吉永崇史・特命准教授(33)は、
「佐野さんは、授業に出たいとの意欲が強い。
どういう形なら単位が取得できるのか、教員も含めて一緒に考えている」

膨大な学生たちの中で、誰が支援を必要としているのか――。
大学の特別支援教育はそこが難しい。

入学時の書類に、障害があることを記載する学生はほとんどいない。
同大では、支援室の開設を機に、新入生や保護者、全教員に
パンフレットを配布。
「発達障害」に限定せず、学業や人間関係で困りごとをもつ
学生の相談機関としてPR。

「発達障害を前面に出すと、障害を自覚していない学生は来ないし、
教員も『行ってみなさい』とは言いづらい」と
支援室長の斎藤清二教授(心療内科医)。
同大は現在、発達障害がある、疑われる学生23人を支援。
そのほとんどは、教職員や保護者の勧めで訪れた学生。

支援につながるもう一つの窓口は、インターネット。
ゼミやサークルの連絡に使ったりするSNSでも、
支援室は困りごとの相談を受け付け、
学生本人や教職員から「要支援」の情報が寄せられている。

「大学での特別支援は、前例が少なく、すべて手探りの状況」
支援室では、特別支援学校の元教諭らコーディネーター4人が
相談に対応し、相談件数は昨年度から3倍強の月平均80件に。

アスペルガー症候群で一時大学を休んでいた男子2年生の
母親(49)は、「支援室の方々はよく連絡をくれるし、熱意を感じる。
支援がなかったら復学できていなかったはずで、感謝している」

青年期の発達障害は、子ども以上に周囲から理解されにくい。
大学での支援が当たり前になれば、
社会全体の理解も広まっていくはずだ。

◆SNS

趣味や仕事などの共通項を持つ人々が、
インターネット上に作った交流の場。多くは匿名で参加。
友達の輪のように、交流のネットワークがどんどん発展するのが特徴。
最近は、企業の社員用コミュニティーや広報・宣伝など、
ビジネスでの活用も増えている。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20091209-OYT8T00282.htm

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