2009年12月22日火曜日

意外に役立つ農商工連携

(日経 2009-12-15)

「農商工連携」。
製造業の技術や流通業のノウハウを農業に活用するため、
昨年施行された国の施策。

独自技術や新商品など、有望な事業シーズを持ちながら
経営体力が弱く、自力で新規分野に挑戦することに
臆病になっている中小モノ作り企業も、農林業者と連携して
新事業や販路開拓に成功するケースも増え、
地域の中小企業の活性化策として成果をあげている。

東京ビッグサイトで開催された「チャンスを活かせ!!中小企業総合展」は
4万6000人が来場、熱気であふれた。
出展した514社は、事業や新製品のPRだけでなく、
連携相手探しにも力を入れていた。

展示会を主催した中小企業基盤整備機構(中小機構)は、
農商工連携を浸透させる場とも位置付け、
参加者同士の“見合い”があちこちで繰り広げられた。
パネルディスカッションのテーマも、ズバリ
「売れる商品作りと販路開拓のポイント・農商工連携活用の現場から」

パプリカ生産農家、Tedy(水戸市)の林俊秀代表は、
「異業種の知恵を借りて、アイスクリームのヒット商品を
誕生させることができた」と成果を披露。

国産パプリカ農家の先駆者であるTedyは、
年間約300トンを生産、国内産の1割以上をまかなう。
首都圏の高級スーパー、外食店向けに出荷。
形はピーマンに似て、赤、黄、ダイダイと色鮮やかなうえ、
肉厚で糖度が高く、煮ても焼いてもおいしいパプリカだが、
農家にとって扱いにくい作物。

温度変化に弱く、日照時間や温度変化に応じて
きめ細かな管理が必要。
見た目が重視され、少しでも傷があると流通業者は買ってくれず、
スーパーなどの店頭に並ぶのは色合いや形の整ったもの。
出荷できない規格外のパプリカは、全生産量の1割、約25トン。
焼却にかかるコストは、年数百万円。

「傷ものを廃棄せず、有効活用できないか」
林氏は、パプリカの売り物である色合いや味・栄養を
そのままにしたペーストを作りたいと考えた。

レストランでは、スープやドレッシングの材料として使われ、
ペーストを作るにはパプリカの表面をバーナーで焼き、
薄皮を取り除くなど手間がかかり、輸入品が市場をほぼ独占。
食の安心・安全に消費者の関心が高まり、
国産品にも需要があると判断した林氏は、水戸市にある
食品加工メーカーのオーピーシートレーディングと組み、
薄皮を除去し、鮮やかな色合いのペーストに加工する設備を
共同開発。

開発は、試行錯誤の連続で、昨年施行された
「農商工等連携促進法」の認定を受け、新商品開発のための補助金
(上限3000万円)などの支援がなければ、あきらめていた。

Tedyは、今春、水戸京成ホテルのレストランと協力、
パプリカペーストを練り込んだアイスクリームを商品化。
「農工」連携による成果に、「商」が加わった。

林氏は、「市場拡大に向け、パプリカの新しい食べ方を提案、
今後も連携の輪を広げていきたい」と意欲。

現在の農商工連携認定は272件。
業種内訳は、食品が218件と最も多い。
認定件数の約6割が売り上げを計上、新規事業として独り立ち。

成功事例を紹介した「農商工連携88選」をみると、
浜松市の自動車部品メーカーが地元の農園、花芽販売業者と組み、
LED(発光ダイオード)を使い、小型で安価な発芽誘導装置を開発、
チンゲンサイの周年栽培が可能になったケースなど。

政府の行政刷新会議の事業仕分けでは、
「農商工等連携促進施設整備支援」は、
来年度概算事業要求額(11億6700万円)の縮減判定。

中小同士の連携は、利害関係の調整など難しい側面があり、
信頼関係が築けず、破談になるケースも多い。
何を作り、どうやって売るか?
連携相手探しなど、入り口の段階から経営指導に携わる
良きメンター(指南役)と出会えるかが成否のカギ。

中小機構は、ビジネス経験豊富な大企業OBが
プロジェクトマネジャーとしてメンターの役割を担い、
中小企業診断士、弁理士など地域の実情に通じた
アシスタントマネジャーの合計120人を全国に配し、
新事業創出の阻害要因を指摘、事業のテークオフ(離陸)を助ける。
補助金の出し放しに終わらせず、認定後の支援にも力を入れ、
新規事業の継続的な発展に当たることにも主眼。

「日本最大級の中小企業マッチングイベント」と銘打った
中小企業総合展の活況をみると、大手の下請けでは生きていけない
中小企業が、中小同士の連携に活路を見いだそうとしている。
生き残りに苦闘するモノ作り中小企業は、
これまであまり関心を示さなかった農林水産市場に目を向け、
技術力を生かして新規事業にチャレンジしてみたらどうか。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/mono/mon091208.html

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