2011年2月26日土曜日

耐久性優れた色素増感太陽電池開発

(サイエンスポータル 2011年2月22日)

次世代太陽電池として期待が大きい、色素増感太陽電池の
課題である耐久性を向上させることに、
九州工業大学と新日鉄化学の研究開発チームが成功。

新日鉄化学が試作した直径3cm、長さ20cmの円筒形太陽電池セルは、
東京ビッグサイトで開かれる「PV EXPO 2011」で、新日鉄化学ブースに展示。

早瀬修二・九州工業大学大学院生命体工学研究科教授と
新日鉄化学が開発した色素増感太陽電池は、
円筒形であるのが特徴。

円筒形ガラス面の端を閉じれば、電解液を封じ込むことができ、
封止部分の面積が平板型に比べ少なくてすみ、
その分耐久性が向上した。

これまで研究開発が進んでいた平板型は、
ガラス板の間に接着剤で壁をつくり、電解液を封入していた。
円筒形になったことで、太陽の光が受光面で屈折して、
円筒形内部に集まるという利点もあり、
平板型に比べ、発電量が低下することもない。

色素増感太陽電池は、1991年にスイス・ローザンヌ工科大学の
グレッツェル教授によって開発。

普及しているシリコン太陽電池に比べ、発電効率は劣るものの、
塗布というコストがかからない方法で作製できることから、
安価な次世代有機系太陽電池として、研究開発が進められている。

http://scienceportal.jp/news/daily/1102/1102221.html

ILC誘致見据え予算盛る 一関市が学術都市構想

(岩手日報 2月17日)

一関市は、2011年度一般会計当初予算案に、
「学術研究都市構想の推進」事業費400万円を盛り込んだ。

北上山地(北上高地)は、超大型加速器・国際リニアコライダー(ILC)の
建設候補地として有力視勝部修市長は、
「一関をフィールドに展開されるのであれば、
後れを取らないように今、手を打つ必要がある」

同事業は、学術研究都市としての将来的なまちづくりを見据え、
土地利用、交通環境の整備などについて基礎調査を実施。
研究者の住環境やその家族の教育、仙台市や盛岡市の
都市機能活用などを幅広く調べ、同年度末までに報告書を作成。

勝部市長は、「今からグランドデザインを描く必要がある」と意欲。

中学生最先端科学体験研修事業として、168万円を計上。
今夏にも、60人が国の科学技術機関が集まる
筑波研究学園都市で、宿泊研修を行う。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20110217_11

評価される先生(5)参観カードで相互理解

(読売 2月16日)

「質問に対し、子どもが単語で答えを返していた。
先生が、きちんと文にして話すよう指導し、非常に良かった」

横浜市青葉区の市立さつきが丘小学校で、
学校関係者評価の委員を務める松岡咲世さん(40)は、
授業の感想を「参観者カード」に書き込んだ。

「ほめるばかりでなく、注文をつける時もある。
直接は言いにくくても、カードなら書きやすい」

同小の学校関係者評価委員会は、保護者や地域住民らで構成。
学校側が、毎年まとめる自己評価結果について意見を述べ、
評価するのが主な役割。
校内視察や授業参観なども行い、気づいたことを学校側に提言。

参観直後に開かれた評価委でも、教員の指導ぶりに関して
様々な意見が出た。
渡辺正彦校長(63)は、「我々とは視点が違い、参考になる。
もらった意見を改善にどう生かすかで、学校側の力量が問われる」

参観者カードは、昨年度から、裏に教員がコメントをつけ、
委員に返す仕組みに変わった。
委員と教員の相互理解を深めるためで、背景には、2006年度、
評価委を設立した際の苦い経験がある。

当時、渡辺校長は、「学校をありのままさらけ出そう」と決意、
委員による校内視察や授業参観を採り入れた。
学校の依頼で就任したものの、教育の専門的なことまでは
分からない委員も少なくなかった。

授業中、落ち着かない発達障害児の姿を見て、
教員の指導力不足と即断したり、「雑巾が落ちていた」など
校内美化の問題に終始したりした。
このため、教員の士気は下がる一方だった。

渡辺校長は、評価委で実情を繰り返し説明すると同時に、
07年度には、委員と教員が直接話し合う場を設けた。
将来、委員になる可能性がある保護者や地域住民に、
学校支援ボランティアへの参加を呼びかけ、
校内の様子を知ってもらうようにした。

こうした工夫の積み重ねで、委員の意識が高まってきた。
ボランティア登録者は、今年度、300人を超えた。
発足当初から委員を務める地元自治会長の木元都恵子さん(75)は、
「最初は、あまり意見が出なかったが、
だんだん学校について詳しくなり、
活発に議論できるようになってきた」

委員と教員がなれ合いになっても、逆に反目し合っても、
的確な評価につながらない。
微妙なバランスを取りながら、外部の目を改善に
結びつけていこうとしている。

◆学校関係者評価

学校の運営や教育を点検する学校評価のうち、
保護者や地域住民らによる評価。
教職員による自己評価、外部の専門家による第三者評価がある。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20110216-OYT8T00239.htm

2011年2月25日金曜日

粘膜ワクチン開発につながる研究成果

(サイエンスポータル 2011年2月21日)

粘膜を介して感染するウイルスのワクチン開発に、
一歩近づく研究成果が、東京医科歯科大学 難治疾患研究所の
樗木俊聡教授らによって得られた。

樗木教授らが着目したのは、ウイルス感染に対して
免疫系を調整する働きを持つインターフェロン
「Ⅰ型インターフェロン(IFN)」

Ⅰ型IFN受容体を持たないマウスで調べたところ、
腸管の粘膜リンパ組織から採取した形質細胞様樹状細胞(pDC)で、
APRILとBAFFと呼ばれる物質の量が減っていた。

粘膜では、病原体の侵入に対し、IgAと呼ばれる抗体が
病原体に取り付いて防御活動をすることが知られている。
APRILとBAFFの量が減ることで、IgAをつくり出す能力も
著しく低下していることも分かった。

これらの結果から、腸管粘膜ではI型IFNが、
形質細胞様樹状細胞(pDC)を刺激し、APRILとBAFFの産生を促し、
その結果、IgA抗体が恒常的につくり出される。

APRILとBAFFが過剰に産生すると、
全身性エリテマトーデスなどの自己免疫疾患や、
がんの一因になるとの報告も。

今回、IgA抗体をつくる新たな仕組みが解明できたことで、
まだ実用化していない粘膜ワクチンの開発に加え、
自己免疫疾患の治療法開発への貢献が期待できる。

科学技術振興機構(JST)
http://www.jst.go.jp/pr/announce/20110218/

http://scienceportal.jp/news/daily/1102/1102211.html

スポーツ基本法案:来月中にも提案へ 自民調査会が方針

(毎日 2月16日)

自民党のスポーツ立国調査会で、
スポーツ基本法案を3月中にも、今国会に提案する方針などが報告。

法案は、超党派による議員提案になる見通し。
調査会の遠藤利明会長によると、自民と公明は、
昨年の国会に提案され、継続審議になっている案をほぼ踏襲。

現在、与党の民主も法案作成の最終段階に入っており、
3月にお互いの法案をすりあわせた上で、今国会に提案。

遠藤会長は、「自民・公明案と民主案に、大きな違いはない。
体育協会創立100周年という機運が盛り上がっている時に
法案を成立させたい」

スポーツ立国調査会には、JOCや日本体育協会など、
スポーツ団体の幹部や文部科学省の担当者らも出席し、
JOCの福田富昭副会長は、「基本法の中に、
スポーツ庁の設置を明記してもらいたい」などと意見。

冬季アジア大会の選手団長を務めた橋本聖子参院議員
(日本スケート連盟会長)は、用具などの輸送費で約4000万円の
超過料金がかかったことなどを報告、
「十分な道具を持っていけなかった選手もいる。
(マルチ・サポート事業だけでなく)選手の声が届くサポートを
心掛けてほしい」と、文科省に注文を出した。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/general/archive/news/2011/02/16/20110216ddm035050109000c.html

咀嚼、脳にもいい「よくかむ」 刺激伝わり覚醒/認知機能に影響も/食事は繊維を多く

(2011年2月18日 毎日新聞社)

食べ物をよくかむことは、消化促進や肥満予防につながる。
脳の働きとの関係の研究も進み、心身の健康へのプラスの効果など、
咀嚼の重要性がさらに注目。

「よくかんで食べるということは、人間の健康にとっては、
いいことずくめの行為だ」
小野塚實・神奈川歯科大教授。
料理や器の見た目(視覚)、味、香りなどの五感への刺激に加え、
かむという行為で、脳に刺激を与えられる。

小野塚さんらは、65歳以上の高齢者1000人以上を対象に、
かむことと記憶の関係について調べてきた。
64枚一組の写真を覚えてもらい、一部を差し替えたもう一組の写真を見て、
「同じものを見たかどうか」を答えてもらうテストで、
約2割の人は、ガムを2分間かんだ後に記憶してもらった時の方が、
かまずに記憶した時より、正答率が15%以上アップ。

東北大などが、仙台市内の70歳以上の高齢者約1200人を対象に
実施した調査では、健康な人は平均14・9本の歯が残り、
認知症の疑いのある人は9・4本。

脳をMRIで調べると、歯が少ない人ほど、
記憶に関係する海馬付近の容積が減少。
小野塚さんは、「歯を使って、かむという行為自体に、
認知機能にプラスの効果があるのではないか」

泰羅雅登・東京医科歯科大教授(神経生理学)によると、
よくかむからといって、アルツハイマー病や脳血管疾患など、
認知症の原因を予防できるという根拠はないものの、
脳に刺激を与え続ける一つの方法にはなりうる。

脳からあごを動かす筋肉に信号を伝える「三叉神経」は、
歯ごたえなど、歯や口の粘膜の感覚を脳に伝えるルート。
三叉神経は、覚醒(頭がさえた状態)をコントロールする
「脳幹」と呼ばれる部分につながっているため、
何かをかんで、脳幹に刺激が伝わると脳の覚醒につながる。

泰羅さんは、「ガムをかむと、頭がすっきりするといわれるのは、
三叉神経を介したこうした働きも関係している」

かんで食べるという行為は、非常に複雑で、
脳との関係についてはまだ分からないことも多い。
あごと舌では、それぞれ動かしたときに働いている
脳の領域が少し異なる。

泰羅さんは、「咀嚼は、大脳の内側の大脳辺縁系がつかさどる
本能的なシステム(生きるために食べること)と、
大脳新皮質がコントロールする人間の意思や理性に関係する
システム(楽しんで食べること)の両方が、
うまくバランスをとっていると考えられ、非常に興味深いメカニズムだ」

「よくかむこと」の目安として、厚生労働省などは、
「一口30回」を例に挙げている。
「数えるのが面倒くさい」という人も少なくない。
猪子芳美・日本歯科大新潟生命歯学部講師は、
「食物繊維を多く含む食品をメニューに加えると、
意識しなくても、30回の咀嚼と同程度、食べ物をかむことができる」

猪子さんらは、健康な成人男女12人にピーナツ(2粒)と
生のニンジンの角切り、それぞれ約2gずつを食べてもらい、
咀嚼回数や咀嚼に関係する筋肉の動きなどを調べた。

咀嚼回数を指定しなかった時、のみ込むまでの咀嚼回数は、
ピーナツが平均24・5回、ニンジンは27・1回。
ちょうど30回咀嚼した場合と比べると、
ピーナツの場合だけ咀嚼時間が短く、筋肉の活動量も少なかった。

猪子さんは、「どちらも歯ごたえのある食品だが、
ピーナツはすぐに砕けて、のみ込めてしまう。
食物繊維の多いものは、かんでもなかなか小さくならないので、
時間をかけてかむことになる。
咀嚼回数を増やすことに一生懸命になるのではなく、
繊維を多く含むものをメニューに取り入れて、
食事を楽しむ中でしっかり食べ物をかんでほしい

http://www.m3.com/news/GENERAL/2011/2/18/132566/

2011年2月24日木曜日

国立を8万人規模に、ラグビーW杯で議連決議

(読売 2月15日)

2019年に日本で開かれるラグビーW杯の成功に向け、
超党派の国会議員で作る「日本大会成功議員連盟」は、
国立競技場をメーン会場とするため、
8万人規模の競技場に再整備するよう求めていくことを決議。

ラグビーW杯日本大会は、10会場で開催する計画、
国際ラグビーボード(IRB)の基準を満たす8万~10万人を収容できる、
メーン競技場を用意する必要。

現在の国立競技場は、収容人員が約5万人と少なく、
1958年建設と老朽化も進んで、
周辺施設の整備と合わせた大規模な改修が欠かせない。

同議連総会には、文部科学省の鈴木寛副大臣も出席、
「国立競技場は、耐震化の必要もあり、8万人規模の競技場とするための
研究に着手したい」と前向きな姿勢。

http://www.yomiuri.co.jp/sports/news/20110215-OYT1T00912.htm

漢方最前線(2)近代薬に変身、必須科目に

(2011年2月17日 読売新聞)

漢方医学はどこで、誰が作り出したのだろうか?

「神農さん」の名前で親しまれる大阪市の少彦名神社。
三浦於莵東邦大学医学部教授(63)は、
「易経、老荘など古代中国の自然思想と、
生薬の膨大な知識とが結びついて、漢代に集大成された」。
奈良時代、日本に持ち込まれている。

三浦教授は、「漢方は、日本の気候・風土に合わせて
独自の発展をしたが、生薬など周囲のいのちが、
人体という小宇宙の健康を支えるという思想は、
現代の漢方薬にも生きている」

全国には80の医学部があるが、漢方医学は現在、
そのすべてで必修科目。
明治政府が1874年、医師資格を「西洋近代医学」に統一して以来、
漢方は1世紀以上、医師教育から姿を消していた。
それが、表舞台に復権できたのはなぜか?

突破口は、煎じ薬をインスタントコーヒーのように乾燥、
粉末化させた「漢方エキス製剤」。

小太郎漢方製薬(大阪市)が、1957年に開発、
薬局用漢方薬として販売。
ツムラ(東京都)が、医師向けのエキス製剤を発売し、
医療現場にも普及。

煎じ薬から近代的な医薬品への変身。
効果も煎じ薬と大差なく、飲みやすい。
これが、漢方の世界を変えた。

当時の武見太郎・日本医師会長の要請もあり、
厚生省は70年代から、健康保険で漢方薬が投与できるよう、
漢方処方や生薬の認可をしていった。

医学界や厚労省には、「東洋思想など荒唐無稽」、
「漢方薬は科学的な裏づけがない」という批判、不信が根強かった。

「主治医に見つかると、治療を拒絶されるのでと、
こっそり漢方治療を受けに来る患者が多かった」

三浦教授は、診察の様子をこう振り返るが、この30年で、
漢方の受け止め方は大きく変わってきた。

古代中国思想とは無縁な現代人にも、エキス製剤は効いた。
厚労省研究班の臨床試験などで効果を確認するデータが報告、
漢方薬を使う臨床医が増加。
これを受け、文部科学省は2001年、医学部のカリキュラムに
「漢方薬の知識」を加えた。

講義を聴いて、「最初は漢文の時間かと思った」という
東邦大医学部1年、西田藍さん(19)は、
「内科医の父も、患者さんの希望で漢方薬を使っており、
学んでおいて損はないと思う」と、現実的な感想を語る。

130年の空白を超え、医師国家試験に漢方薬の知識が
出題されるのも間近になっている。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2011/2/17/132513/

アレルギー反応、体内時計が制御…山梨大

(2011年2月17日 読売新聞)

じんましんなどアレルギー反応は、体内時計に制御されていることを、
山梨大医学部の中尾篤人教授(免疫学)の研究チームが、
マウスの実験で明らかに。

アレルギー性疾患の新たな予防や治療法の開発につながる
可能性がある。米国の学会誌に近く掲載。

中尾教授は、鼻炎やぜんそくの症状が朝方に悪化することが多いなど、
アレルギー反応が特定の時間帯に起きやすいことに着目、
睡眠や血圧など一日のリズムを制御する体内時計が、
アレルギー反応と関係しているとの仮説。

実験では、体内時計で中心的な役割を果たす遺伝子を変異させて、
マウスの体内時計を乱した。
その結果、特定の時間帯だけでなく、
一日中アレルギー反応を示すようになった。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2011/2/17/132536/

2011年2月23日水曜日

虫歯原因酵素の立体構造解明

(サイエンスポータル 2011年2月18日)

虫歯の原因となる酵素「グルカンスクラーゼ(GSase)」の
立体構造を、静岡県立大学の伊藤 圭祐・助教、
伊藤 創平・助教らが突き止めた。

GSaseは、砂糖を粘着性の多糖であるグルカンに変える働き。
このグルカンが、食べかすや口腔細菌を巻き込んで歯垢をつくり、
歯垢内で口腔細菌が増殖し、口腔細菌がつくる酸が虫歯を進行させる、
という関係が分かっている。

GSaseが、特に変わった酵素ではないことが逆に災いし、
GSaseの働きだけを阻害する薬の開発が難しかった。

伊藤助教らは、まずこれまで難しかった均質なGSaseを、
大量につくり出すことに加え、界面活性剤を利用する方法で
結晶化することにも成功。

これによって、エックス線結晶構造解析が可能となり、
GSaseの立体構造を解明。

立体構造が分かると、GSaseに結合して、その働きだけを阻害する
物質を探し、あるいはつくり出す道が開ける。

GSaseがつくる歯垢は、虫歯だけでなく、口臭や歯周病、
誤嚥性肺炎の原因ともなることから、
今回の成果は、より効果的な虫歯を予防する物質の探索だけでなく、
予防医学的観点からも重要。

http://scienceportal.jp/news/daily/1102/1102181.html

フロンティア:世界を変える研究者/15 東京大宇宙線研究所教授・鈴木洋一郎さん

(毎日 2月15日)

宇宙を構成する物質の7~8割を占めながら、
謎だらけの「暗黒物質」を捕まえる。

東京大宇宙線研究所神岡宇宙素粒子研究施設で始まる
「XMASS(エックスマス)実験」の責任者として、
約30人のスタッフを率いる。

「存在が分かってから約40年、
物理学を学んだ者なら、誰でも知りたいと思って来た大きな謎。
(暗黒物質検出の)信号がいつ見えるか、わくわくしながら準備している」

現在の想定では、暗黒物質は、我々の周囲にも
1立方メートル当たり3000個ほどあり、
秒速270kmの猛スピードで飛び交っているが、光も電波も出さず、
他の物質ともほとんど反応しない。

実験では、マイナス100度に冷やした液体キセノン850kgを詰めた
球体の内側に、微弱な光も感知できる検出器(光電子増倍管)を
800本並べ、暗黒物質がキセノンと、
ごくまれに反応して発生する光をとらえる。

十数年前、このアイデアを発表した国際会議では、
「キセノンはきたない(不純物のクリプトンが多い)から駄目だ」と不評、
「他人がやらないなら、やれば面白いと感じた」

検出には、放射線などによるノイズを、
「10日間、まったく信号が出ないくらい」の極限にまで落とす必要。
キセノン中のクリプトンを、従来の1000分の1に減らす製法を開発。
光電子増倍管自体のノイズも、1000分の1に落とすことに成功。

米国のライバルたちの50倍の感度が期待。
「(暗黒物質を)見つける、見つけないという結果ではなく、
目標感度を達成できること自体が成果」

根源的なことを考えるのが好き。
大学受験は文学部哲学科も考えたが、
「未知の領域に足を踏み入れ、他人の見ていないものを見る」
魅力に取り付かれ、一貫して実験物理の道を歩いてきた。

素粒子ニュートリノの質量について、
現在の理論に見直しを迫る成果を上げてきた
「スーパーカミオカンデ」実験でも、指導的立場を担った。

暗黒物質は、宇宙にあふれる星や銀河を形作る
原動力になったと考えられている。
「137億年の宇宙の歴史を、最初から現在まできちんと
理解するのが究極の夢。
あと100年かかっても、できるかどうか分かりませんが」
暗黒物質検出の瞬間、その夢が一歩前進するに違いない。
==============
◇すずき・よういちろう

東京都生まれ。79年、京都大大学院理学研究科(物理学専攻)
博士課程単位取得退学。同年理学博士。
米ブラウン大研究員、大阪大助手などを経て、96年から現職。
04~08年に宇宙線研究所長。
01年、仁科記念賞。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2011/02/15/20110215ddm016040006000c.html

評価される先生(4)横並び排除し意識向上

(読売 2月12日)

宮崎県立宮崎工業高校で行われた建築科の実習。

稲用光治教諭(50)が、「しっくいはまんべんなく塗って」、
「ここは回り縁だな」と、生徒に声をかける。

近所に残る伝統的建造物の模型作り。
「生徒に興味を持たせ、理解しやすい授業を」と、
稲用教諭が提案して実現。

宮崎県教委は2009年度、教員評価の完全実施に踏み切った。

立場に応じた能力や行動などについて、
校長らがSABCの4段階で評価する「職務行動評価」、
教師の自己目標達成度を見る「役割達成度評価」の2種類。

同高に赴任して7年目の稲用教諭は、
職務行動評価で最上位のS評価を受けた。
授業の工夫だけでなく、校長が考える学校目標を、
ほかの教諭に理解してもらう主幹教諭、
学習指導も担う教務主任としての活動が認められた。

稲用教諭は、「若い人の育成に、まだ不足の面があると指摘。
自分が何を求められているか明確にわかり、取り組みがしやすい」

田内博夫校長(60)は、「雑談ではなく、面談を重ね、
人間関係を深めた上で、互いに納得した評価を出せる」

04年度から試行が始まった同県の制度は、
アンケートなどで、教員の声も取り入れた全国でも先進的な例。
その「絶対評価・結果開示」という方法は、
評価される立場に慣れない教員にも受け入れやすい形として、
多くの教委で取り入れられている。

07、08年度の教員採用試験で、県教委幹部や小学校校長・教頭らの
口利きなどによる汚職が起きた大分県。
10年、「同じ学校教員の間で相対評価」という、
全国でも珍しい評価制度を導入。

最上位のAを10%、Bを20%、CDEを計70%の割合で、
校長が教員を評価し、教委が最終調整。
DEがついた場合、本人に結果が告げられ、
ボーナスカット、昇給抑制、研修の受講となる。

「県教委幹部らの不祥事を、現場に尻ぬぐいさせるのか」という
現場の反発もあるが、河野盛次・同県教委教育人事課長(53)は、
「人事考課に使うのだから、相対評価でないと意味がない」

客観的な評価を入れることで、
曖昧な基準で行われていた人事を改め、教育再生を図る。

教育界への信頼を一挙に失った不祥事からの起死回生の試みは、
横並び意識の強い教員の世界への挑戦でもある。

◆教員評価

2000年の教育改革国民会議が、
「教師の意欲や努力が評価される制度を」と報告。
01年、公務員制度改革大綱などを受け、
文部科学省が導入を都道府県・政令市教委に指導。
能力評価と業績評価(目標管理)があり、絶対評価方式を導入する
自治体が大半を占める。
以前の勤務評定は、形骸化が指摘。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20110212-OYT8T00101.htm

2011年2月22日火曜日

漢方最前線(1)ずばり的中、ツボ診断

(2011年2月16日 読売新聞)

漢方--日本に根付いた中国伝統医療。
明治以来主流からはずれていたが、
1980年代から漢方薬を使う医師たちが増え始めた。

根強かった医学界の反発も和らぎ、現在、漢方は医療現場に広く普及。
その最前線を訪ねる。

7か月待ちという、人気の医療ドックがある。
東京女子医大・東洋医学研究所の「漢方養生ドック」。
通常の臨床検査と同時に、漢方的な体質診断を行い、
食事、運動、節制など日常生活の養生法を伝える。

「この電極を左手で握ってください」
手渡された金属棒を握ると、針灸師の吉川信さん(48)は、
もう一つの電極を、記者の左右の手や足のツボに当て、
体の電気抵抗を読み取ってゆく。
良導絡(りょうどうらく)という針灸診断結果がプリント。

「筋肉のこりや痛み、目の疲労がありませんか?」
こころの余裕がない、手足が冷えやすいなど、体質がずばりと診断。

2年前に始まった漢方ドック、針灸以外にも、
同研究所長の佐藤弘教授(63)らが、受診者の手首に指先を当てて
脈の拍動の様子を調べたり、痛みはないか、夜は良く眠れるかなど、
会話をしながら「漢方データ」を集めてゆく。

漢方医学には、病気になる前の段階、未病を診断する方法があり、
未病を治して長生きにつなげる養生法がある。
これは、数値化できるようなものではないが、
1人ずつ体質に合わせたアドバイスができる」

それは、西欧近代医学とは全く違う診断体系。

「気」、「血」が、全身をバランスよくめぐることで健康が支えられる、
という身体論に基づいて、体が健康状態からどのくらい、
どの方向にズレているのかを診る。
漢方薬も、これに基づいて処方。

漢方医学は明治以降、政府の西洋医学一本化政策で、
臨床医療現場からはほとんど姿を消していた。

80年代、臨床現場で漢方医療に取り組む医師たちを取材、驚いた。
患者の身体に丁寧に触れ、患者の訴えに真剣に耳を傾ける
医師の姿があった。
「漢方では、脈に触れたり、訴えを聞かないと診断できない」(佐藤教授)

臨床検査データに頼り、患者には触れない医師、患者の顔も
きちんと見ない医師が増えている傾向とは、正反対。
現代の患者の多くが求めているのは、
身近なまなざしで、心身の健康を見守ってくれるこうした医療では。

果たして漢方への蔑視、批判は次第に減り、
漢方薬を使用する医師は増え続けた。
最近の臨床医を対象とする実態調査では、
80%以上の医師が、「漢方薬を使用する」と回答。
漢方診療機関は、全国に広がっている。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2011/2/16/132473/

宮城・仙台厚生病院、連携先に東北福祉大 医学部新設構想、政府容認待ち準備へ

(2011年2月16日 毎日新聞社)

医学部新設を目指す、仙台厚生病院(383床)は、
東北福祉大を連携先とすることを正式決定。

大学側も、「前向きに取り組んでいきたい」(渡辺信英学長補佐)。
大学の理事会で、今回の決定の受け入れを正式に承認すれば、
両者による医学部新設構想の具体的な準備が始まる。

文部科学省は、医学部新設を認めておらず、
実現には政府の方針転換が必要。

仙台厚生病院は、理事会で東北福祉大との連携を賛成多数で承認。
同大が、
(1)看護師養成課程を持っている
(2)既に大学付属病院「せんだんホスピタル」(144床)を保有している
(3)健康や福祉関連の学部を設置し、
医療系の教授や講師が20人を超えている--
との理由で、「連携先に最もふさわしい」と判断。

医療系スタッフが豊富で、入学後2年間の教養課程を教える
即戦力が充実、早ければ13年度に新設できる点も大きなメリット。

文科省は、新設を認めていないため、認可に必要な病床数の基準は
現時点で不明だが、仙台厚生病院は、
「既存の大学病院の病床数が600床以上だから、
少なくとも同数以上は確保したい」

せんだんホスピタルと合わせた病床数は、527床。
両病院には、脳外科や産婦人科、小児科など医師養成に必要な
診療科がそろっていないため、県内外の民間や自治体の病院とも
連携することで、さらに300床を追加、診療科も倍増させる考え。

文科省は、1979年の琉球大の認可を最後に、新設を認めていないが、
医師不足解消に向け、10年12月に専門家会議を設立、
容認の検討を始めている。

東北福祉大が、3月の理事会で連携を承認した場合、
病院側と大学側は、それぞれ「準備室」や有識者らで構成する
「諮問委員会」を設置、政府が容認に方針転換した場合に備える。

新設には、「教員確保のため、勤務医が減り、医療崩壊を助長する」
(全国医学部長病院長会議)と慎重な意見もあり、
専門家会議の議論の行方は不透明。

仙台厚生病院の目黒泰一郎理事長は、
医療の進歩とともに、一人一人の医師が扱う専門領域は
狭くなるため、将来的にも医師不足は続く。
解消のためには、医師の絶対数を増やさないといけない」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2011/2/16/132456/

評価される先生(3)教員同士 授業を採点

(読売 2月11日)

「配った紙に書いてある『民族』になりきって、あいさつして下さい」
安田千恵教諭(28)の呼びかけに、
生徒たちは三つの架空の民族グループに分かれ、あいさつし合った。
あいさつのジェスチャーが違うため、
お互いの行動の意味が分からずにまごついている。

北海道の中富良野町立中富良野中学校で、
「多文化共生社会」をテーマに行われた1年生の道徳の授業。
教室の後ろでは、林晃淳校長(58)や福島康文教頭(47)らが、
授業の様子を細かくチェック。

授業改善のため、教員同士で授業を評価し合う取り組みが、
各地の学校に広がっている。
同中では、昨年度から本格的に始めた。
今年度、評価対象となる研究授業は、
国語、数学から道徳まで約100回だ。

林校長は、「本校は、一般教員13人のうち20~30歳代が11人もいる。
若手に力をつけてもらい、生徒の学力向上につなげたい」
自身も教壇に立ったと明かし、「率先垂範です」と笑った。

授業を見てもらう教員は、同中が重点を置く「授業構成」、
「明確・効果的な指示と発問」などの項目の中から、
自分がチェックを受けたい項目を選ぶ。

評価者は、A4判の「コメントシート」に、各項目を原則4段階で評価し、
自由意見も書き加えて、本人に返す。

今回、安田教諭が選んだのは、「子どもへの目線」、
「多様な学習形態」と、情報機器など「モノの使用」の3項目。

福島教頭は、「3民族の異なるあいさつなどをテレビ画面に映し、
分かりやすかった」と、モノの使用を「4」と高く評価。

多様な学習形態について、「グループ活動は良かったが、
生徒への指示が不十分」として「3」。
子どもへの目線は、「グループ別の人数がアンバランスだった」と指摘、
「2・5」をつけた。

評価結果に対し、安田教諭は「勉強になる。
自分の課題を客観的に見つめることができ、納得することも多い」と
謙虚に受け止める。
評価をきっかけに、どうしたら授業がうまくいくか、
同僚の教員に相談することも増えた。

林校長は、「生徒に出す指示が明確になるなど、
全体的に教員の指導技術が向上してきた」と胸を張る。
教員が、校務や授業準備に追われ、
評価者としてなかなか参加できないなど、課題も抱える。
小さな学校の挑戦は、これからも続く。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20110211-OYT8T00180.htm

2011年2月21日月曜日

医療競争力強化へ共同歩調 国立センターと10大学 研究、新薬開発に基盤整備

(2011年2月16日 共同通信社)

医療分野での国際競争力強化を図る、
政府の新成長戦略の柱の一つ「医療イノベーション」の推進に向け、
国立がん研究センターなど、6カ所の国立高度専門医療研究センターと
東京大など10大学は、研究基盤の共通化など、
共同歩調を取ることで大筋合意。

政府も、必要な法整備など後押しする意向で、
国を挙げて革新的な医薬品や医療機器の開発に取り組む構想。

各機関が、患者の同意を得た上で採取した体の組織やDNAなどを
集積した「バイオバンク」や、治療経過などのデータを集めた
情報センターを設立。

匿名化された試料や情報は、設立に参加する16機関以外の
研究者も含め、病気の研究や新薬開発などに利用できる。

バイオバンクや情報センターは、製薬企業のニーズを把握し、
研究現場に情報提供するなど、産業界とのパイプ役になることも想定。

研究成果の中から、産業化につながりそうなものを選び出す
"目利き"機能を持ち、特許を維持するコストを抑えて、
戦略的な特許取得を図る知的財産専門チームの創設も検討。

法整備などの制度改正に向け、16機関は政府への共同提言を検討。
遺伝子解析の結果、病気になる危険性が高いと判明した人でも、
保険加入や雇用などの面で不利益を被らないための
「遺伝子差別禁止法」制定など、
患者や被験者を保護する法整備を要請。

新しい医薬品の治験(臨床試験)をする中核的な研究機関に対する
ベッド数の規制緩和など、治験促進のための措置も求める方向。

※医療イノベーション

日本発の医薬品、医療機器の創出を通じた経済成長や医療、
健康水準の向上を図る政府の新成長戦略の柱の一つ。

内閣府に、推進室が設置、室長の
中村祐輔・東京大医科学研究所教授をはじめ、
産学官の各界からスタッフが集められた。

研究から実用化まで一貫してできる体制整備のほか、
再生医療、個別化医療など当面の重点分野に対する
予算の集中投入などを掲げている。

※参加機関

国立がん研究センター(東京)、国立精神・神経医療研究センター(同)、
国立国際医療研究センター(同)、国立成育医療研究センター(同)、
国立循環器病研究センター(大阪)、国立長寿医療研究センター(愛知)、
北海道大、東北大、東京大、名古屋大、京都大、大阪大、九州大、
東京医科歯科大、筑波大、慶応大

http://www.m3.com/news/GENERAL/2011/2/16/132461/

笑いヨガ 心身元気に 簡単な動作で「アハハハ」 脳が活性、リラックス

(2011年2月15日 毎日新聞社)

声を出して笑いながら体を動かす、「ラフターヨガ」(笑いヨガ)が注目。

ヨガといっても、難しいポーズはなく、
子どもから高齢者まで参加しやすいのが特徴。
約5年前に日本に紹介、既に全国に約120のクラブがあり、
笑顔の輪が広がっている。

武蔵野市で、毎週水曜日に開かれる「吉祥寺ラフタークラブ」には、
毎回15人前後が参加。
日本に初めてラフターヨガを紹介した田所メアリーさん(56)
夫の孝さん(60)が講師。

メアリーさんが、「息が切れたら座ってもいいですから、
自分のペースを守って。
笑うときに、目と目を合わせるコミュニケーションを大事にしてください」

この日は、軽いストレッチの後、
▽インドのあいさつをイメージして、両手を胸の前で合わせる、
▽ミルクセーキを作って飲むまねをする--
など8種類の動作をしながら、
参加者は、「アハハハハハ」と声を上げて笑った。
最後は、みんなで車座になり、ひたすら笑う。
記者も、つられて笑ってしまった。

約1年半クラブに通っている大和市の男性(60)は、
「リストラで職を失い、不安な日々を過ごしていたが、
ここに来て少しずつ前向きになった。
笑っていると、幸福感に包まれる」。
現在は、整体師を目指して勉強中。

「日常生活でも、以前より笑うことが多くなった」と、50代の女性。
夫を病気で亡くし、食事もとれなかったが、
ラフターヨガと出合い、元気を取り戻したという女性も。

メアリーさんは、「笑いには、脳の活性化などの効果がある。
作った笑いでも、自然に笑うのと同じ効果を期待できる」

ラフターヨガは、1995年にインドの医師夫妻が考案した健康法、
笑いを取り入れることで、自然に腹式呼吸ができる。
世界60カ国以上に広がっており、
米国では、がん患者の病棟で取り入れている例も。

大阪府立健康科学センターでは数年前から、
「健康教室」に笑いヨガを取り入れている。
大平哲也・大阪大准教授(公衆衛生学)によると、
実施後では、唾液中のストレス関連ホルモンの値が低下する傾向。

「運動効果に加え、心理的ストレスを減らすリラックス効果が
得られるのではないか」と大平准教授。

笑いのためのエクササイズは、「あいさつ」、「ライオン」、「言い争い」など、
たくさんの種類があるが、どれも簡単で慣れれば自宅でもできる。
高齢の愛好者も多く、仙台市「りらくらぶラフターヨガ教室」のリーダー、
佐藤四郎さん(63)は、「地域の公民館などに出張実演すると、
1人暮らしのお年寄りから、『こんなに笑ったのは何カ月ぶりかしら』
と言われる」

人気の背景について、普及に取り組む「ラフターヨガ・ネット」(中野区)
杉浦彰・代表理事は、「経済状況が厳しく、ストレスの多い現代社会で、
心身をリフレッシュできる笑いが見直されている。
笑いも運動。
誰でもできる手軽さがいいのではないか

◇全国に約120のクラブ

全国のクラブは、「ラフターヨガ・ジャパン」のウェブサイト
http://laughteryoga.jp/)から検索。
「日本笑いヨガ協会」(http://waraiyoga.org/)、
「ラフターヨガ・ネット」(http://laughteryoganet.jp/)も参考。

参加費は、クラブによってまちまちだが、
1時間~1時間半で500~1000円程度が一般的。
「吉祥寺ラフタークラブ」のように寄付制のところも。
高血圧や心臓病、腰痛などの持病がある人は、
医師と相談の上で始めるのが望ましい。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2011/2/15/132398/

評価される先生(2)授業改善へ「満足度調査」

(読売 2月10日)

江東区立大島西中学校で昨年末、
今年度後期の授業評価アンケートが実施。
生徒が、先生の授業をチェックするもので、
「先生への通信簿」とも呼ばれている。

教科ごとに、授業が「工夫されているか」、「理解しやすいか」、
「興味がわくか」など7項目について、4段階で評価。
自由意見も記入。
1年の女子生徒(13)は、
「私たちがつけた評価を参考にしてもらえて、うれしい」

同中の授業評価制度は、2008年春に着任した
川原博義校長(51)が導入。
「教師の力を向上させていくには、生徒の目線で評価を受けることも大切」
以来、毎年、前、後期の2回、欠かさず実施。

当初、教員の間には戸惑いの声もあったが、
社会科の竹原真・主幹教諭(50)は違った。
「暗記ものと思われがちな社会科を、考える教科にしていきたい」、
同中に配備されたばかりの電子黒板に、資料やグラフを映し出し、
生徒に話し合わせる授業に力を入れていた。
生徒が、新しい授業スタイルをどう受け止めているか、ぜひ知りたかった。

初めての08年度前期調査で、竹原さんが教える2年生のうち、
「工夫」について、「満足」、「やや満足」と答えた生徒は87・6%。
「理解」は72・7%、「興味」は60・3%にとどまった。

竹原さんは、「新しいスタイルは受け入れられているが、
興味や理解を十分に引き出すには至っていない」と、改善に乗り出した。

生徒が新しく学んだことを消化できるように、
板書の内容をきちんと書き取る時間を、授業中に設けた。
授業に関連する動画を、インターネットで探し出し、
生徒に見せる機会も増やした。

こうした努力を重ねた結果、卒業前の09年度後期調査で、
興味は83・6%に大幅アップ。
工夫も93・1%、理解も82・8%に上昇。

竹原さんは、「生徒の評価は、教師自身が気づかない点を教えてくれる。
生徒の満足度が上がってくると、数値よりも、
自由意見が改善のヒントになった」

竹原さんが採った改善策も、自由意見にあった
「授業の進み方が早い」、「電子黒板で、もっと動画が見たい」など、
生の声を参考にした。

満足度が高いほど、保護者らは納得してくれるが、
さらに改善を図っていく上では、参考になりにくくなる。
そこに、生徒による授業評価のジレンマが芽生えつつあるようだ。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20110210-OYT8T00191.htm

2011年2月20日日曜日

2010年自殺率、全国ワーストか 県が対策本部設置へ

(岩手日報 2月10日)

県は2011年度、自殺の総合対策本部を設置し、
自殺防止対策を強化する方針。

本県の自殺死亡率は、全国でも上位にあるが、
10年の厚生労働省の統計では、全国ワーストになる可能性が高い。

県は、自殺対策を専門に担当する特命課長のポストを新設し、
一般医と精神科医の連携や自殺未遂者ら、ハイリスク者の
見守り態勢構築などに全県で取り組む。

県精神保健福祉審議会(会長・酒井明夫岩手医大神経精神科学講座教授)で、
県が11年度の対策を説明。
千葉茂樹県保健福祉部長は、
「本県の10年の自殺死亡率が、全国ワーストになる可能性がある」、
取り組みを強化する考えを示した。

厚労省の統計によると、09年の本県の自殺死亡率
(人口10万人当たり)は34・4人。
秋田、青森両県に次いで、全国で3番目に高い。

秋田、青森両県は、10年に自殺者を大幅に減らし、
今夏発表する統計で、本県の自殺率が最も高くなる可能性がある。

県は、11年度に知事を本部長とする対策本部を設置、
庁内の連携を強化、障がい保健福祉課に自殺対策の特命課長も配置。
11年度当初予算案には、自殺対策緊急強化事業費8100万円を計上。

うつ病患者の早期治療に向けて、岩手中部保健医療圏で取り組んでいる
一般医と精神科医の連携を他地域にも広げたり、
自殺未遂者や多重債務者らリスクが高い人を、
地域で見守るネットワークの構築などに力を入れる。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20110210_7

初期人類、足に土踏まず…地上生活への移行示す

(2011年2月12日 読売新聞)

370万~290万年前にいた初期人類
アウストラロピテクス・アファレンシス(アファール猿人)は、
アーチ形で土踏まずがある現代人と似た足を持っていたとする
研究結果を、米ミズーリ大の研究者らがまとめ、
10日発行の米科学誌サイエンスに発表。

人類は、約300万年前には樹上生活を捨て、
地上生活に移行していたことを示している。

アファール猿人は、1974年にエチオピアで見つかった
推定身長110cmの女性「ルーシー」の化石で知られる。

直立二足歩行をしていたと考えられていたが、
カギとなる足の指の骨が見つかっておらず、
木に登ることもあったか、議論が続いていた。

研究チームは、エチオピアで新たに発掘された
約320万年前のアファール猿人の足の甲の骨(中足骨)を分析。

現生人類の足と同様、足の裏がアーチ状になり、
歩行時に地面をけったり、衝撃を吸収したりできたと確認。
二足歩行が完成し、地上生活に完全に適応していた。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2011/2/14/132360/

評価される先生(1)優れた若手 積極表彰

(読売 2月9日)

「8分の3と6分の3は、どちらが大きい?」
香川大学付属高松小学校の3年の教室で、
仲西長代教諭(38)が、笑顔で問いかける。
なぞなぞを出し、児童たちを分数の世界へと引き込んでいく。

仲西教諭は昨年度、香川県教委から「優れた教育を行っている」として、
教育実践優秀表彰を受けた実力の持ち主。
2003年度以来、毎年4~7人が表彰、
仲西教諭は最年少の37歳で選ばれた。

評価されたのは、前任校である高松市立築地小学校での
3年間に及ぶ算数教育。

児童にカメラを渡し、下足箱のスリッパなど、
校内でかけ算が使える場面を探し出して撮影。
計算のポイントを図や文章でまとめた「かけ算のひみつ新聞」や、
「割り算絵本」を作らせたりもした。

毎日のように夜遅くまで、翌日の授業準備に精を出した。
その姿を見ていた校長の強い勧めで応募したところ、
61人の中から見事選ばれた。

ほとんどの都道府県は、同様の優秀教員表彰制度を設けているが、
40~50歳代のベテラン教師が選ばれがち。
香川県は、「若手にもチャンスを広げたい」と、
選考委員に保護者や地元経済界の代表ら「外部の目」を加え、
2次選考では、教員が自らの実践を委員の前で発表する
異色の方式を採った。

優秀教員に選ばれると、特別昇給をはじめ、
教員免許更新講習の一部免除、海外研修参加が
優先的に認められるなどの特典が与えられる。
新人教員対象の初任者研修などで、講師に呼ばれることも。
県教委は、「若い教員に助言するなど、リーダーとして活躍してほしい」

仲西教諭は、「選ばれたのは光栄ですが、まだまだ未熟なので、
努力していきたい。
いい意味でプレッシャーになっています」

異動した付属高松小では、築地小での実践を土台に、
さらなる授業研究に打ち込んでいる。

若くても実力ある教員を評価することは、教員全体の活性化につながる。
若手教員を積極的に評価する仕組みが広がることが期待。

◆優秀教員表彰制度

優れた成果を上げた教員を表彰する制度。
文部科学省の調査によると、2008年度、制度を設けている
都道府県や政令指定都市は計56。
同省でも06年度から、自治体推薦の教員らを表彰。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20110209-OYT8T00167.htm