2009年9月5日土曜日

NIE20年(5)先駆者の経験次代へ

(読売 8月25日)

NIE(新聞活用学習)の先駆けとなった先生たちは
今、どうしているのだろうか。

新聞の社説のコピーを手に、生徒らが頭を悩ませていた。
東京都武蔵村山市立第二中学校で、都議選を取り上げた
新聞2紙の社説を読み比べる授業が、2年生のクラスで行われた。
「新聞によって書き方が違う。よく読んで理解して」と、
熊谷浩教諭(26)が訴えた。

教室で授業を視察していたのは、持田浩志教育長(58)。
20年前、NIEのパイロット計画に参加した一人。

当時は、東久留米市の小学校教師。
新聞を授業で使う教師は少なかった。
同僚と相談しながら、算数で相撲の星取表を使った
勝率計算をしたり、新聞広告を使って地理を学習したりしてきた。

教育長として、今もNIEに携わる。
来春、同中を隣接の小学校と一緒にして
小中一貫校に衣替えするが、市教委では9年間の基本カリキュラムに
「NIE・新聞づくり」を位置づけ。
「興味のある記事をスクラップする」(3、4年)、
「新聞各社の記事を読み比べる」(5~7年)などと、
学年ごとに目標を定めている。

授業に新聞を使う教師は多いが、いずれも個人の裁量で、
熱心な教師が別の学校に異動すれば、下火になる傾向。
市教委が位置づけることで、組織的に取り組め、
他校への広がりも期待できる。全国でも珍しい事例。

教師時代、児童がごみ問題の記事に関心を持ち、
自主的にクリーンキャンペーンに参加したことがある。
「NIEで、子どもたちが社会に主体的にかかわるようになる。
新聞は、社会の入り口。
そこに早く接することができるようになれば」

「紙面の作り方が全然違う。比べるだけでも勉強になる」
東京都豊島区立千川中学校で、小林豊茂校長(48)が教師らに、
阪神大震災の際の新聞各紙を見せながら説明。

同中は、今年度にNIE実践校の指定を受け、10月からスタート。
パイロット計画に参加した小林校長が、
自身の経験が少しでも役立てばと、教師の心構えや
目指す子ども像などを教師らに伝えた。

20年前、江戸川区の中学校教師だった。
ゲーム感覚で文字に慣れさせるため、新聞から「人偏」のつく
漢字を探させたり、記事の中からできることを探ろうと、
環境問題の記事を集め、生徒会でアルミ缶を収集して
リサイクル運動につなげたりしてきた。

今は、校長として生徒や教師のサポート役。
新聞を読みやすい台を作るなど環境整備をしたり、
自身の経験を教師に伝えたりしている。
ゲストティーチャーとして授業に入ることも検討中。
小林校長は、「新聞は生涯学習の教材。
新聞に親しむ習慣をつけるのは学校の責務。
新聞嫌いにならないよう、焦らずに成果が出るようにしたい」

先輩教師の経験や思いが、後輩や子どもたちへと引き継がれる。

◆パイロット計画

1989年9月、教育界と新聞界が協力し、NIEの効果や
注意すべきことを調べるため、一定期間、毎日学校に新聞を提供、
授業などで活用。
東京の小学校1校、中学校2校で始まり、持田、小林両氏も参加。
最終年度の95年度、全国の112校に拡大、分析結果をまとめた。
現在は、NIE実践指定校として全国で536校が取り組んでいる。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090825-OYT8T00315.htm

テニス資料館:設立へ基金 宮城黎子さん記念、歴史の殿堂目指し

(毎日 8月29日)

日本のテニスの歴史的な資料やグッズなどを収集し、
常設のテニス資料館を設立しようと、
日本テニス協会(JTA)が今年4月、
「宮城黎子記念・JTAテニスミュージアム基金」を創設。

5年後をめどに、資料保管・閲覧室の設置、
2000万円の募金集めなどを目標。

基金を運営する「JTAテニスミュージアム委員会」(小田晶子委員長)は、
昨年6月に86歳で死去した全日本選手権女子シングルス10回優勝の
宮城黎子さんを初代委員長に02年に発足、
資料収集・展示活動をしてきた。

03年から毎年秋のジャパンオープンの期間中、
会場の東京・有明コロシアム内に、日本の名選手の遺品などを
展示した「テニスミュージアム」を開設。

有明テニス・マネージメントチーム(日本テニス事業協会)と提携、
有明テニスの森公園のクラブハウス1階に、
07年10月から展示コーナーを常設。

小田委員長は、「歴史的な資料や写真、グッズを体系立てて
展示・保管し、マスコミや研究者らの問い合わせにも
対応できるようにしたい」と基金創設の趣旨を説明。

当面の5カ年計画として、資料収集・整備や募金集めのほか、
▽資料保管・閲覧室の設置、
▽学芸員の確保--などを目指す。
有明のクラブハウスの展示コーナーでは、
4月から陳列ケースを1台から2台に増設。

1920年アントワープ五輪男子シングルスとダブルスで銀メダルの
熊谷一弥さん(故人)の使用ラケット、宮城さんの弟淳さん(77)の
55年全米選手権ダブルス優勝カップなどが飾られ、パネル展示も。
小田委員長は、「資料があれば提供、連絡してほしい」

http://mainichi.jp/enta/sports/general/archive/news/2009/08/29/20090829dde018050054000c.html

水から生まれた奇跡の燃料「酸水素ガス」

(日経 2009-08-28)

どこにでもある水を、特殊な方法で電気分解して
水素と酸素からなる「酸水素ガス」を作り、
燃料などに使う試みが進んでいる。

ガスバーナー燃料への利用に続き、小型エンジンを動かすことに成功。
この燃料は、組成や燃焼効率などに未解明な点があり、
いっそう関心をかき立てている。

東京海洋大学海洋工学部。
伊藤雅則教授らの手で、酸水素ガスを使った初めての
エンジン作動試験が始まった。

試験には、1馬力のLPガスエンジンを使用。
タンクにためた酸水素ガスをエンジンに送り、
約1時間の連続運転に成功。

このガスには、水素と酸素がほぼ2対1の割合で含まれる。
燃焼後は水に戻り、有害な排ガスは発生しない。
面白いのは、エンジンに空気の取り込み口が不要。
ガス中の酸素が燃焼剤になるため、外の空気無しでも燃える。

伊藤教授は「潜水艇の動力源としても使えそう」
小型エンジンに続いて、乗用車エンジンを酸水素ガスで動かし、
燃焼データを集める計画。

酸水素ガスは、プラントメーカーの
日本テクノ(大政龍晋社長)が開発。
発明者である同社長の名前にちなんで、「OHMASA—GAS」と呼ぶ。

水の電気分解で得られる燃料といえば、「ブラウンガス」と呼ばれる
水素と酸素の混合ガスが古くから知られる。
超高温で燃焼する特徴があるが、爆発しやすいというネックがあり、
普及はいまひとつ。

日本テクノの酸水素ガスは、圧縮しても爆発しにくい。
厳重な漏れ対策が必要な水素ガスとも異なり、
通常のステンレス容器で200気圧を超える高圧で、
長期間貯蔵できることも確認。

日本テクノは、電気メッキ用プラントを扱っている。
大政社長は、低周波の振動・攪拌をしながらメッキをすると、
通常は電気分解で発生する大きな気泡が生じず、
水素爆発も起きないことに気が付いた。
これをヒントに、同じ方法で水を電気分解することを試みた。

こうして得られた酸水素ガスは、水素と酸素が
単純に混合しているのではなく、両者が特殊な結合をして
水分子とも異なる特殊な構造を作っている。
水素と比べ、貯蔵容器からの漏れが少ないことも説明。

高圧で貯蔵できれば、プロパンガスのようにボンベで流通させたり、
給油所のような場所でガスを供給したりするといった利用が容易。

日本テクノは、酸水素ガスの用途開発と並行して、
ガスの正体を調べる研究を進めている。
今春、特殊な装置で酸水素ガスを液化してみた。
酸素はセ氏マイナス183度、水素はマイナス253度で液化、
この気体は酸素の液化温度より3~7度高い温度で
液化することが分かった。

東京工業大学の谷岡明彦教授は、「非常に興味深い現象」
日本テクノは引き続き、ガスの組成などの解析を進めている。

大分県佐伯市にある共栄船渠(山本健二社長)では、
日本テクノの酸水素ガスをガスバーナー燃料に使い、
鉄板を切断する作業に使っている。
「通常のバーナーと比べて切断面がきれい」(山本社長)。

酸水素ガスを、燃料電池で水素燃料の代わりに使えば、
発電効率が向上することも確認。
ガスの燃焼によって発生する発熱量は、もともとの電気分解に使った
エネルギーの2倍程度に達する。
投入した電力以上の熱量が得られるヒートポンプ給湯機のような
効果が期待できる可能性。

未解明の部分が多い酸水素ガスだが、
それだけに、大きな可能性を秘める。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/techno/tec090827.html

ミドリムシ:火発の排ガスで培養 温暖化対策に新技術

(毎日 8月30日)

動物と植物の中間的性質を持つ単細胞生物「ミドリムシ」を、
多量のCO2を含む火力発電所の排ガスを使って培養することに、
バイオベンチャー企業「ユーグレナ」が成功。

同社は、ミドリムシからバイオ燃料を作る技術も開発中で、
排ガスのCO2を減らし、代替燃料を作る新たな温暖化対策として注目。

ミドリムシは、体長約0・1ミリ、水田などにすむ。
光合成により、CO2を吸収する植物の性質を持ちつつ、
鞭毛という器官で動物のように動く。
光合成能力が高いのが特徴で、熱帯雨林の数十倍に。

同社は05年、沖縄県石垣市に食用可能なミドリムシの
大量培養施設を世界で初めて建設。
ミドリムシを素材にした健康補助食品やクッキーを製造、販売。

今年6月、沖縄電力金武火力発電所(沖縄県金武町)で、
煙突から出る直前の排ガスを、ミドリムシの培養槽に吹き込む実験。

排ガスは、CO2濃度が大気の400倍近い約15%。
ガスを入れた培養液は酸性になり、大半の生物は生きられないが、
ミドリムシは順調に成長。
増殖速度は、空気を通した場合の最大20倍。
排ガス中の豊富なCO2で光合成をし、増殖した。

ミドリムシなどの藻類は、細胞内に脂質が多く、
細胞を壊して化学処理すれば、良質なバイオディーゼル燃料に。
同社は、培養したミドリムシからバイオ燃料を作り、
発電などに利用、その排ガスで再度ミドリムシを培養--
という循環システムの開発を目指す。

出雲充社長は、「ミドリムシが、高CO2濃度のガス中でも育つと証明。
CO2削減と炭素循環型社会の実現を進めたい」

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2009/08/30/20090830ddm003040135000c.html

宇宙では聴覚領域鋭敏に 無重力状態に脳適応

(2009年8月28日 共同通信社)

宇宙空間のように、体が回転し天地が常に入れ替わる状態では、
頼りにならなくなった視覚の機能を補うかのように、
聴覚をつかさどる脳の領域が鋭敏になるとの研究を、
自然科学研究機構生理学研究所の柿木隆介教授らがまとめた。
ドイツの脳科学専門誌に27日までに発表。

研究チームは、「人が感覚のバランスを取りながら、
宇宙空間に適応しようとすることを示している。
宇宙の無重力状態で、人の感覚がどう変化するかを知る
手掛かりになる」

柿木教授らは、国際宇宙ステーション「きぼう」船内の
コンピューターグラフィックス(CG)画像を利用。
目の前がくるくる回る画像や、床と天井が縦方向に回転する画像を
被験者に見せ、無重力状態にいるかのような感覚を体験。

静止画像を見た場合と比較したところ、
音に反応する脳の聴覚野の反応が最大20%増大することを確認。
実際に聴力が高まるかどうかは確かめていない。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/8/28/106541/

2009年9月4日金曜日

NIE20年(4)新聞活用 大学授業でも

(読売 8月22日)

大学も、新聞活用の学習効果に着目する。

「障害者、高齢者になったつもりで意見を書いてもらいます」
近畿医療福祉大で、精神保健学の授業に朝刊が運び込まれた。
約50人の受講生たちが新聞を選び、受け取っていく。
新聞が提供されるNIE実践指定校は本来、小中高が対象だが、
NIEの効用を知った勝田吉彰教授の働きかけで、
大学で初の指定となった。

「新聞のどの面でもいいから、障害者たちが関心を持つ記事を読み、
それについて気持ちを代弁してください」と勝田教授。
思い思いに新聞をめくる学生たち。
「不満系に限らず、喜び系、ほのぼの系、なるほど系などでも……」
学生たちは、専用A3プリントの片側に記事を張り付け、
片側のマス目にペンを走らせる。

うつの人たちが集まって悩みを話し合い、
心の均衡を取り戻したという、読売1面連載
「日本の活力 壁を越えて4」を選んだ松本久美さん(20)。
「若い人でも、うつになる人が多い。
理解してもらえると、安心した気持ちになれる。
障害者は、地域で認めあうことが大事」

読売の「人生案内」は、摂食障害の夫に嫌悪感を抱く妻の相談。
目をとめた弘田竜一さん(20)は、
「自分を振り返らず、夫の非ばかりを言う。
『あなたの意識、態度を変えた方がいい』という
海原純子さんの回答に納得」

同大では、3年になると施設で1か月実習する。
以前は、高齢者や障害者と話が合わず、
相手に気を使わせてしまう学生もいた。
勝田教授は、「福祉に携わるなら、相手の気持ちを推し量り、
代弁できる力が必要。新聞には投書欄をはじめ、
弱者らの意見が多く紹介。理解し共感できるかどうか?
新聞は教材の宝庫

心理学を担当する遠藤正雄講師も、新聞活用を始めた。
授業で学んだ理論を踏まえ、新聞記事から「人の心」について
意見をまとめさせる課題を出したりする。

横浜国立大教育人間科学部。
良きNIE実践者が出てほしい、と創設された科目「新聞と教育」が
5年目に入った。
大学教員のほか、経験豊かな小中学校教諭、元記者などを
講師に招き、学生は授業の構想、発表まで行った。

講師の一人、臼井淑子横須賀市立田戸小教諭は、
「児童が興味を持つようにし向けることが大切」と説明。
「にこにこ新聞」、「うまいもの新聞」など各自好きな題字に合わせた
記事を集めさせたり、子どもたちが関心を持つニュース記事をもとに
質問するクイズ大会などの指導案を紹介。

社会人から編入した村上一仁さん(30)は、
「新聞をどう活用するのか想像できなかったが、
いろいろな方法が分かって参考に」
担当の高木まさき教授は、「受講生の多くが、中教審の求める
『言語力』や『社会力』を高めるのに、自分にも役立ったと答えている」
情報を選び、集め、伝える力を育てるNIE。
その手法を、大学も取り入れている。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090822-OYT8T00270.htm

真央とヨナ:バンクーバー五輪に向けて/上 「新技」と「精度」異なるプラン

(毎日 9月2日)

開幕まであと半年を切った、2010年バンクーバー冬季五輪。
最大の注目は、フィギュアスケート08年世界女王の
浅田真央(中京大)と、昨季世界女王の金妍児(キム・ヨナ、韓国)
による「ライバル対決」

昨季はショートプログラム(SP)、フリーの合計得点で
「200点超え」を達成。
今月中にはそろって19歳。
本格的なシーズン開幕を前に、2人の五輪への取り組みを追った。

8月11日、愛知・中京大アイスアリーナであった浅田の公開練習。
連続ジャンプを得意の3回転フリップ-3回転ループ以外の、
さまざまな組み合わせで披露。

浅田は、「プログラムに入っていない(連続)ジャンプも練習。
自分のジャンプを増やせば、余裕も出てくる」と狙いを説明。
タチアナ・タラソワコーチは、トリプルアクセル(3回転半)
-3回転トーループという女子初の大技に取り組んでいる。

浅田が大技を開発中--。
このニュースは、韓国でも関心を集めた。
2日後、ソウル市内のホテルで翌日のアイスショーに向けて
会見したキムは、その件について質問されると、
「私は自分のやることに集中している」と無関心。

キムに、トリプルアクセルはなく、ループが苦手。
浅田に比べ、跳べるジャンプは限られる。
キムを指導するブライアン・オーサーコーチは、
ヨナは、自然体で戦える選手。
私のゲームプランは、技術的にも芸術的にも、照準を合わせるのは
マオや他の選手ではなく、ヨナ自身が自分の演技に集中すること」

昨季は、3回転フリップ-3回転トーループの加点が低く、
最初をルッツに変える案もあるらしいが、
従来から演技構成を大きく変えることはない。

五輪に向け、新技開発に積極的な浅田と、
従来の技の精度を高めるキム。
浅田のフリーの新プログラムは、ラフマニノフの前奏曲「鐘」で、
「すごく力強い曲。見せ場もあるので、
ジャッジにアピールするところを踏まえて練習している」と意気込む。

キムも、新SPは映画「007」シリーズメドレーと新機軸を打ち出した。
「新しい挑戦的なものなので不安はあるが、うまくできると思う」
同14日のアイスショーでは、昨季SPのサンサーンス作曲
「死の舞踏」を演技。
朝鮮日報の成鎮赫(ソン・ジンヒョク)記者は、
「今も『死の舞踏』を練習しているようだ。
『007』が合わなかったら、『死の舞踏』に戻すのでは」

http://mainichi.jp/enta/sports/general/archive/news/2009/09/02/20090902ddm035050110000c.html

世界ジオパーク認定の意義

(サイエンスポータル 2009年8月25日)

洞爺湖有珠山、糸魚川、島原半島の3地域が、
世界ジオパークに認定されたニュースに、
一番喜んでいるのは地学の教師、研究者たち。

イタリア・ポンペイといえば、ベスビオ火山の噴火(79年)で、
一瞬のうちに火山灰の下に埋まってしまった町。
噴火で埋まった家の真下に、さらにその前の噴火で埋まった家の跡が。
そんな場所も近くに発掘されていたから、
たぶん今でも目にすることができる。

この地域一帯が、ベスビオ火山の噴火で壊滅ないし壊滅的被害を
受けたのは一度ではない。
火山の活動は、人間の生活や歴史の時間軸とはまるで異なり、
そのエネルギーはとてつもない。

雲仙普賢岳の噴火(1944~45年)でも、火砕流の下に家が
すっかり埋まる被害が出た。
その跡を見た時、これは片付けてしまわず、
ポンペイのように遺跡として残すべきではないか。

島原半島を含む3カ所が世界ジオパークに認定されたことを、
一番喜んでいるのは地学の教師や研究者ではないか。

理科教育軽視、理科離れが叫ばれているが、
かつて高校教育で同等の扱いをされていた「物理」、「化学」、「生物」、
「地学」4教科のうち、特に地学の地盤沈下は著しい。

物理と化学が、日本の製造業重視の機運にも乗って、
そこそこ大事にされてきた。
地学同様、生物も戦後生物化学の勃興によって、
伝統的な生物学である分類学が大学の講座からなくなるなどの
危機に立たされた。

地学の場合は、もっと変化が激しい。
明治時代、最初につくられた国立研究所が地質調査所だった事実から、
地学、地質学者の地位は元々、高かった。
これは、太平洋戦争中も同様。

経済の高度成長期、安価な原料を海外から大量に輸入する傾向が
強まり、国内での鉱産物生産の必要性は低下、
学校教育における地学も軽視されるようになった。

生物学(者)の場合、自然保護運動や環境問題に取り組むことで、
社会的要請にこたえ、地盤沈下を食い止めてきたのに対し、
地質学者は、「資源中心の学問体系を変えようとしなかった。
自己変革を怠り、社会から遊離して象牙の塔に閉じこもった」
という指摘。

地球環境が、人類の直面する最も大きな課題の一つで、
この解決のためには物理、化学、生物と並び地学の役割は大きい。

「地学研究者の層はますます薄くなっており、
特に野外で調査にあたる地質学者や地形学者は、
後継者を育てることすら難しくなっている」
という現実との落差をどうするのか?
とにかくさまざまな手を尽くさない限り、
地学軽視の傾向は変えようがない。

洞爺湖有珠山、糸魚川、島原半島の3地域が、
世界ジオパークに認定されたことは、こうした現状を変える
一つのきっかけになり得るのでは。

http://scienceportal.jp/news/review/0908/0908251.html

日の丸省エネ技術「世界一」の呪縛(住環境計画研究所所長 中上英俊)

(日経 2009-08-24)

ドイツで開かれた世界陸上選手権。
陸上100メートル走で、ジャマイカのボルト選手が
驚異的な世界新記録で優勝。
予選での流したような走りで、日本のエースの記録を超えていた。
どう見てもあの体形、体力とわが大和男子では、
並大抵のことでは勝てそうにない。

世界一とは何だろう、と改めて考えてみた。
わが国の省エネ技術は世界一、最近までは太陽電池の普及も
世界一等々の記事や論評を見るたびに、誇らしく思っていたが、
ここ数年このような表現にかげりが。
太陽電池の普及はドイツに追い越され、
太陽熱の温水器に至っては中国の足元にも及ばない。

ドイツに抜かれるのは、何となくシャクのような気もするが、
中国となると、ま、仕方ないかと思ってしまう。
わが国の10倍の人口がいる国なのだ。
物量比較では、何かにつけて中国やインドといった人口大国が
どんどん上位に連なってくる。
深く考えなくとも、至極当たり前のこと。
CO2排出量も、そろそろ中国が世界一の排出国に転じる。

省エネ技術は、わが国が世界のトップレベルにあることは間違いない。
世界を引っ張っていく役割はありそう。
何でもかんでも世界をリードすることが、わが国の役割なのだろうか?
冷静に、分相応に考えて行動することに、
しっかりと軸足を据えることを考えてはどうだろうか?

「アフター京都議定書」に向けての次なる目標設定での議論もそう。
2050年に向けての環境相の構想が、8月14日付で公表。
中身について、詰めが甘いところがあるが、
40年先なら、80%の温室効果ガス削減は不可能ではない。
そのシナリオが、現在の技術に拘泥しすぎている。

2020年となると、話は違ってくる。時間がない。
分不相応な数値目標を掲げると、自らの存在を危うくさせかねない。
数値目標設定に際し、「わが国が温暖化防止に向けて、
世界のリーダーシップをとるには・・・」といった表現。
何もリーダーシップをとることを目標にしなくても。

日本の1家庭当たりのエネルギー消費量は、
欧米の2分の1~3分の1。
数字横並び的な目標値の設定に、私は疑問。
横並びでないと、世界のリーダーシップがとれないなら、
とれないでよいではないか。
とれないと困るのならば、その理由が聞いてみたい。

決してわが国は、エネルギー浪費的な国ではない。
省エネルギー、脱二酸化炭素へ向けて速度を増していけばいい。
身の丈に合わせて行動することを恥じることはない。

わが国で生まれた柔道は、「柔よく剛を制す」とされ、
体は小さいが大男を投げ飛ばすことが尊ばれた。
これとて同じ日本人という体格の中での話。
今やオリンピック種目にまでなったわが国の国技は、
身の丈に合わせて体重別に技を競うスポ−ツとなった。
世界陸上選手権を見ていて、そんなことが妙に気になった。

◆なかがみ・ひでとし

1973年(昭48年)東大大学院工学系研究科修了、
住環境計画研究所を創設し所長。
慶大システムデザイン・マネジメント研究科教授、
経済産業省の総合資源エネルギー調査会委員なども務める。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/tanso/tan090821.html

有機化合物「ファトスタチン」にメタボ阻止効果 京大教授ら解明

(2009年8月28日 毎日新聞社)

京都大物質-細胞統合システム拠点(iCeMS=アイセムス)の
上杉志成教授らの研究グループが、
有機化合物「ファトスタチン」に、細胞内での脂肪の合成を
阻止する働きがあることを発見。

将来的には、糖尿病薬の開発や内臓脂肪症候群
(メタボリックシンドローム)の治療に役立つことが期待。
27日、米科学誌「ケミストリー・アンド・バイオロジー」電子版に掲載。

上杉教授らは、ファトスタチンが体内の脂肪量を感知する
たんぱく質「SCAP」と結合し、脂肪合成を指令する
たんぱく質の活性化を抑えることを解明。

突然変異で、食欲調節機能をなくしたマウスに
ファトスタチンを投与し、過食による肥満や糖尿、脂肪肝が
抑制されることを確認。

コレステロールの合成を抑える薬として実用化されている
「スタチン」が、脂肪合成に必要な酵素の働きを抑えるのに対し、
ファトスタチンは脂肪合成の指令を出すたんぱく質そのものの
働きを阻害するのが特徴。

上杉教授は、「安全性を確かめる必要があるが、
実用薬の開発も期待できる」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/8/28/106623/

2009年9月3日木曜日

インタビュー・環境戦略を語る:ビックカメラ・宮嶋宏幸社長

(毎日 8月24日)

政府のエコポイント制度が追い風となり、
省エネ家電の普及が本格化。
家電業界で、ビックカメラは昨年、環境省から
「エコ・ファースト企業」第1号に認定、環境対策に熱心に取り組んでいる。
同社の宮嶋宏幸社長に、具体的な取り組みを聞いた。

--家電量販店は以前、派手な電飾で多くの電力を消費。

◆私が入社した80年代前半、1店舗の外壁の装飾に
1万2000個の電球を使うなど、省エネの意識がなかった。
現在は順次、長寿命で消費電力が少ないLEDに切り替え。
点灯時刻も、日没時刻を参考に、月ごとに設定を変えている。
店内照明は、消費電力の少ない「Hf蛍光灯」の導入を始めた。

--環境を意識し始めたのはいつごろ?

◆01年、家電リサイクル法がきっかけ。
電機メーカーなどから出資を受け、リサイクル会社を設立、
05年に廃棄家電の回収、解体、仕分けを行い、
資源として再利用する体制が整った。
06年、中古パソコン販売を主力とするソフマップを子会社化し、
リユース(再利用)を強化。
新品の販売から回収、再販売、再資源化まで手がける。

--「エコ・ファースト企業」に認定され1年。

◆業界のトップランナーとして、地球温暖化防止に取り組むことを
環境相に約束した。
具体的には、カラフルな買い物袋をやめ、光沢のない
無漂白の再生紙を使った紙袋に切り替えた。
薄型テレビ、冷蔵庫、照明器具などの約30%は常時電源を切り、
客の要望があった時につける「エコ展示」も始めた。
見栄えが悪くなり、売り上げが落ちるとの懸念もあったが、
実際には落ちず、客からはお褒めの言葉をいただいている。

--消費者の環境意識を高める取り組みも。

◆当社は、政府のエコポイント制度が始まる1年以上前、
省エネ性能が高い製品を購入すると、ポイント還元率をアップさせる
キャンペーンを実施。
昨年から、プロ野球球団やJリーグのチームと組み、
試合会場で携帯電話の回収を呼びかけている。
京都店では、京都大が開発した電気自動車を展示するイベントを展開。
07年、10年までにCO2排出量を06年比で4%削減する目標を立て、
08年度だけで10・26%削減できた。

--今後、取り組みたいことは?

◆「エコ・ファースト企業」には、日産自動車やキリンビール、ユニーなど、
当社を含め25社が認定。
業界の垣根を越えて、共同の取り組みができないか模索。
省資源の観点から、取扱説明書の薄型化や廃止を
メーカーに働きかけたい。
==============
◇みやじま・ひろゆき

法政大文卒。84年ビックカメラ入社。
渋谷東口店長、営業部長兼池袋本店長、人事部長、営業本部長、
専務兼商品本部長などを経て05年から現職。
長野県出身。49歳。

http://mainichi.jp/life/ecology/archive/news/2009/08/20090824ddm008020015000c.html

エコで勝負:大塚製薬 ポカリスエット・エコボトル

(毎日 8月24日)

大塚製薬は、清涼飲料水「ポカリスエット」で、
容器のペットボトルを30%(12グラム)軽くした
「エコボトル900ミリリットル」を今月発売。

ボトルの重さは、従来品の41gから29gへと軽量化。
年間約2300万本の販売を見込んでおり、
樹脂の使用量を年間約276トン減らし、
CO2排出量を年間約882トン削減できる。

希望小売価格は、1本200円(税込み)。
形状は、従来品の角形から丸形に変え、
中央にくびれをつけることで、「女性が片手で持てる形」を目指した。
ボトルの厚みは、約58%(0・26ミリ)減らし、よりつぶしやすくした。

07年、ボトルの重さを27gから18gに軽量化した
ポカリスエットの「エコボトル500ミリリットル」を発売。
同社の調査によると、エコボトルの認知度は
07年の8%から08年には34%に向上。
同社は、「認知度が高まることでブランド価値が増し、
より飲んでもらいやすくなる」と期待。

http://mainichi.jp/life/ecology/archive/news/2009/08/20090824ddm008020017000c.html

EVがもたらすもう1つのクルマ革命

(日経 2009-09-01)

新しいクルマの形として、電気自動車(EV)に
異様といえるほどの注目。

ハイブリッド車を超える「次世代車の本命」とみて、
開発を本格化させている自動車メーカーもある。
いつごろ電気自動車が主流になるのか?
米マサチューセッツ工科大学の調査結果によると、
20年には世界での販台数の10%を占める。

金融危機以来落ち込んでいた自動車の販売が、
やや持ち直しているとはいえ、先進国で販売台数が
以前と同じ水準にまで戻るとは考えにくい。

長期的な傾向として、ユーザーは自動車を単なる移動手段と
考えるようになり、所有したり使ったりすることでの「楽しさ」を
感じにくくなっている。
デザイン性があまりアピールしなくなり、燃費の良さ、
安全性といった基本性能が重視。

安全に走ることができればどれでもよい、なるべく安い方がいい、
という購買行動に。
メーカーから見ると、ガソリン車は個性を出しにくい、
差異化の難しい商品になっている。
ハイブリッド車が売れている理由は、ガソリン代が安い上、
環境にやさしいという個性が際立っているため。

この視点で電気自動車を考えると、いろいろな可能性が見えてくる。
ハイブリッド車よりも環境にやさしい、という現在の延長で
考えられることだけではない。
多様な個性を持ったクルマを、設計者の考え方次第で
生み出せるようになるのでは、という期待。

電気自動車ではモーター、2次電池、インバーターといった機器を搭載、
ケーブルで接続すれば動くシステムになる。
どのユニットをどこに置くかは自由で、現在のガソリン車のような
厳しい制約はないため、アイデア次第でさまざまな自動車を
生み出せる可能性がある。

日産自動車のコンセプトカー「PIVO2」。
四輪すべてにモータを組み込み(インホイールモーター)、
インバーターも車輪ごとに組み込み、
四輪独立に向きなどを変えられる。
四輪を90度横にして駆動すれば、カニのように横ばいができ、
縦列駐車が非常に楽にできる。
左右の車輪を互いに逆に駆動することで、
車体を移動させずに方向だけを変える、
戦車のような超信地旋回さえ可能。

米ゼネラル・モーターズ(GM)と米セグウェイは共同で、
電動二輪車「セグウェイPT」をベースに、車幅を広げて
2人分のシートを載せたクルマを開発。
最高速度は時速56キロメートルで、充電1回当たりの
航続距離は40~56キロメートル。
自動車メーカーが考える電気自動車とは大きく懸け離れているが、
電気自動車の時代になると、こうした小型でユニークな車両が
たくさん生まれる可能性がある。

まだ2次電池のコスト低減が十分ではなく、
航続距離の少ないことが、電気自動車の最大の弱点。
それを弱点ではなく特徴ととらえれば、
近所に買いものに出かけたり、駅や学校までの送り迎えを
するためのクルマ、という新たな分野が見えてくる。
非常に小型だから、自宅でも出先でも駐車スペースを抑えられる。
普段はクルマをあまり使わないが、
雨が降ったときの送り迎えには必要、といった用途にはぴったり向く。
遠出をするときは、あらかじめ予定が分かるから、
レンタカーでガソリン車を借りてもよい。

電気自動車になると、エンジンやパワートレーンの部品が
大幅に減ってしまう。
部品メーカーにとっては大きな問題だが、
手をこまぬいているわけにはいかない。
変速機と車輪をつなぐドライブシャフト・アセンブリーなどを
現在生産しているNTNは、インホイールモーターに
荷重センサーを組み合わせ、制動機能も付加した
「インテリジェントアクスルユニット」を開発。
走行中にユニットが受ける接地荷重とコーナリング力に応じて、
モーターのトルクや回転数を調整したり、ブレーキを利かせたりする。

ガソリン車のエンジンルームなどに用いられる、耐熱性の高い
エンジニアリング・プラスチック(エンプラ)も、
電気自動車になると使用量が減ると、一般にはみられている。
より軽量化を求められる電気自動車では、
これまで汎用的なプラスチックを使っていた部分にも、
強度の高いエンプラを使う必要が出てくる、とエンプラメーカー。

電気自動車の登場・普及で見込まれるクルマの大きな変化は、
新たな価値を提供できるチャンス。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/mono/mon090831.html

日本栄養士会 「栄養ケア・ステーション」先行モデル整備へ

(2009年8月28日 Japan Medicine(じほう))

日本栄養士会(中村丁次会長)は、2008年度から
全国47の都道府県栄養士会に設置してきた
「栄養ケア・ステーション(CS)」の中から、
効果的で効率的な栄養支援を行うモデルCSを選定。

市町村レベルでもCSを整備し、地域や医療機関から求められる
栄養管理・指導(特定保健指導含む)を提供する受け皿としたい。

08年度に始まった特定健診・保健指導制度の中で、
管理栄養士の位置付けが明確化されたことを受け、
特定保健指導を含む地域や医療機関からの栄養管理・指導に
対する受け皿として、日本栄養士会では
全国47都道府県に栄養ケア・ステーションを設置。

将来的には、実際の活動拠点となる市町村レベルにもCSを設置、
医療機関や市町村との契約主体とするとともに、
介護者・患者を含む住民に対する栄養支援拠点としたい考え。

日本栄養士会では、国から委託された
保健指導・食育活動拠点整備事業として、
47都道府県のCSの中から10カ所程度を、
全国を主導するCSとして選び、先行的に整備を進める方針。

全国展開されたものの、医療機関との連携に力を入れている
CSもあれば、介護分野に重点をおくCSもある。
活動規模や取り組み内容は、CSごとにバラツキがあるため、
今後の市町村レベルでの展開に向けて、
効果的で効率的な栄養支援を行うための方法を確立。

今後の構想について、迫和子常務理事は、
「訪問看護ステーションのように、医療機関が多いところに設置し、
住民や地域に向けた栄養支援ができるようにしたい」

モデルとなる10カ所については現在調整中で、
年内にはモデルCSの特徴や取り組みなどの途中経過を示し、
年度内に報告をまとめる。

◆特定保健指導が求める個別指導

日本人のライフスタイルの多様化に伴って、医療同様に、
栄養指導にも個別的なアプローチが求められるようになった。
従来の集団的なアプローチでは、「制限の指導」に陥りやすい。
今も、医師や保健師の指導には制限中心の指導が多い。

40代に、コレステロールが高いために卵の摂取を制限された人が、
70代となり、低体重・低栄養になっても制限を守っていることがある。
「食事制限は、ある意味簡単。
年齢や状態によって、指導内容は変わるべきであるのに、
その後も制限がマイナス要素として残ってしまうことがある」

特定保健指導や高齢者の介護予防をはじめ、
十分なアセスメントに基づいて、行動変容を促すための
個別的な指導が求められる。

管理栄養士は、医師や保健師と共に、特定保健指導の
実施者として位置付け。
日本栄養士会では、各都道府県栄養士会と共に、研修事業を行い、
約1万5000人の管理栄養士・栄養士が研修を修了。

◆エビデンスベースドの食事療法

食事療法は、生活習慣病の治療にとって、薬物療法や運動療法と
同様に重視されるべき治療法だが、食事内容と治療成績との関連を
示すエビデンスが乏しいことや、診療報酬上のインセンティブが
低いことなどから軽視されがち。

日本栄養士会は、CKD(慢性腎臓病)の重症化予防に向けた
国の戦略研究FROM-Jに協力し、
<1>食事療法の有効性(アカデミックエビデンス)
<2>効果的な医療システムの有効性(メディカルエビデンス)
<3>管理栄養士活用の有用性(プロフェッショナルエビデンス)
の確立を目指している。

昨年10月からの介入に先立ち、全国のCSで研究方法の確認が
行われ、栄養指導の標準化を図った。
「CKDや糖尿病への対策が急がれる中、
短時間で成果が上がることを期待したい」(迫常務理事)

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/8/28/106594/

低酸素で作製効率アップ 京大、iPS細胞で

(2009年8月28日 共同通信社)

通常より酸素濃度が低い環境で培養すると、
人とマウスの新型万能細胞「iPS細胞」の作製効率が
大幅に向上することを、京都大の山中伸弥教授らが突き止め、
27日付の米科学誌セル・ステム・セル電子版に発表。

さまざまな組織に分化するiPS細胞は、
新薬開発や難病治療への応用が研究されているが、
作製効率が低いのが課題。
安全で効率の良い作製手法の確立に、将来役立つと期待。

山中教授らは、培養容器中の酸素濃度を変えて実験。
人の皮膚細胞を用いた場合、通常の21%の濃度で培養した結果と
比べ、5%と低い濃度ではiPS細胞の作製効率が最大4倍に高まった。
さらに低濃度の1%では逆効果で、一部の細胞が死滅。

マウスの場合も5%が最も好条件で、作製手法や培養期間を
変えることで、効率を最大20倍に高めることができた。

チームは、「がん化の心配が少ない作製手法と低酸素培養を
組み合わせることで、より高品質なiPS細胞ができるかもしれない」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/8/28/106542/

2009年9月2日水曜日

スポーツ21世紀:新しい波/316 剣道/3止

(毎日 8月29日)

剣道を武道として国際的に普及するため、
全日本剣道連盟が近年力を入れているのが、審判員の強化。

全剣連常任理事の村上済審判委員長は、
「審判が良くなれば、剣道の質も是正できる」と
審判の正しい判断と、選手のレベルの向上は表裏一体。

竹刀が打突部位に当たっただけで一本と判断されたり、
つばぜり合いで時間稼ぎをするようなことが見過ごされれば、
選手の力も向上せず、試合の質も落ちる。

世界選手権では、日本人以外も審判を務める。
主審1人、副審2人の3人が選手を区別する赤と白の旗を持ち、
技が決まった時に上げる。
レベルの高い試合を経験している日本の審判に比べれば、
審判としての目が劣る場合も。

過去の大会では、他の審判につられて旗を上げたり、
日本人選手の速い竹刀さばきに目が追いつかず、
一本を見逃すこともあった。
ある日本の選手は、「きわどい技を出した時、
反対の旗が上がるのではという不安もあった」

97年の第10回世界選手権から、審判講習会が始まった。
米国、欧州、アジアの三つのゾーンに分かれ、
各ゾーンに全剣連が指導員を派遣。
ブラジルで世界選手権(28~30日)が開かれる今年は、
5月に千葉・成田で14カ国・地域の審判36人を集めて講習会を開催。

模擬試合で、旗の上げ方や審判の立ち位置などの基本的な動作や、
旗を上げるタイミングを見極める。
3人の判断が分かれた場合、その理由を審判に問い、
他の審判員を含めて話し合う。

審判泣かせは、「グレーゾーン」と言われるケース。
竹刀が打突部位に当たっても、試合の流れや打った時の体勢などで、
有効打突として判断できるかどうか変わる。

村上委員長は、「3人が気持ちを合わせることが必要。
判断が分かれれば、選手に不安感を与える。
各審判が確信を持って旗を上げられるようにしなければいけない」と、
強化の必要性を訴える。

日本の審判の一人は、「審判によって、勝敗に影響を及ぼすことも
あったが、徐々に講習会の成果が出て、
武道としての剣道に戻ってきている。
今大会は、良い試合になると思う」

26日、ブラジルで講習会を行い、審判も最後の仕上げをして
世界選手権に臨んでいる。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/archive/news/2009/08/29/20090829ddm035050160000c.html

時差ボケ解消?体内時計を遅らす物質を発見

(2009年9月1日 読売新聞)

生物の基本的な機能を、約24時間の周期で調整する
「体内時計」を遅らせる物質を、
理化学研究所発生・再生科学総合研究センターの
上田泰己チームリーダーらが見つけた。

時差ボケや睡眠障害の治療薬の研究につながる成果として注目。
米科学アカデミー紀要電子版に掲載。

上田さんらは、人間の腫瘍などから採った細胞を培養し、
約1200種類の化合物を加えて反応を観察。
10種類の化合物に体内時計の周期を大きく遅らせる効果がある。

うち9種類は、時計遺伝子と深くかかわっている酵素の働きを妨げ、
周期を最大で2倍の48時間まで遅らせた。
温度を大きく下げても、安定して周期を保つ働きをすることも確認。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/9/1/106798/

ナノ粒子、がん狙い撃ち…慈恵医大グループが開発

(2009年8月24日 読売新聞)

磁石にくっつく超微細な磁性ナノ粒子を使って、
がん細胞を集中攻撃する手法を、
慈恵医大の並木禎尚講師らのグループが開発。

患部近くに磁石を埋め込み、粒子を引き寄せるため、
正常細胞が攻撃を受けにくくなる。
副作用の少ない治療に結びつくと期待。
科学誌ネイチャーナノテクノロジーに発表。

がん細胞は、新しい血管を作って、酸素や栄養分を
取り込みながら増殖を繰り返す。

並木講師らは、脂質で表面を覆った磁性ナノ粒子に、
血管を新たに作る遺伝子の働きを抑える核酸医薬を結合。

磁石を埋め込んだ胃がんのマウスの静脈に、
磁性ナノ粒子を注射したところ、粒子は血液の流れに乗って
がんの患部に集中。

ナノ粒子から放出された核酸医薬により、
がん細胞の増殖が抑えられた。
これまで副作用も見られない。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/8/24/106246/

免疫異常起こす細胞発見 HAMの治療法開発期待

(2009年8月24日 共同通信社)

成人T細胞白血病ウイルス(HTLV1)が原因で発症し、
歩行障害などが出る免疫異常疾患の脊髄症(HAM)について、
免疫異常を引き起こす特定の感染細胞を、
山野嘉久・聖マリアンナ医大准教授(神経免疫学)らが発見、
「THAM細胞」と命名、
米科学誌プロスワン(電子版)に発表(5日付)。

山野准教授は、「HTLV1が感染する細胞の中でも、
THAMだけを破壊する治療法を開発できれば、
少ない副作用で病状を改善できるはずだ」

THAM細胞は、リンパ球の一種であるT細胞のうち、
CCR4というタンパク質を持つ特定の種類が
ウイルス感染によって変化したもの。

本来は出さない炎症性の物質インターフェロン・ガンマを放出、
脊髄損傷につながっている。

HAMは、免疫系が過剰に働いて自分の脊髄を傷つけてしまう
自己免疫疾患の一種と考えられ、根本的な治療法は確立されず、
国が研究を後押しする難治性疾患に指定。

HTLV1は、主に母乳を通じて母子感染、
全国に推計約108万人の感染者。
数十年の潜伏期間を経て、3~5%が成人T細胞白血病を発症、
患者団体によると、HAMの患者は全国に約1500人いる。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/8/24/106241/

2009年9月1日火曜日

政権交代:東京五輪招致、どうなる財政保証

(毎日 8月31日)

民主党中心の政権が誕生することを受け、
スポーツ界にも波紋が広がった。

16年夏季五輪開催を目指す東京都の石原慎太郎知事は、
招致活動への影響について、「ないと思う。本質的に変わりはない」

民主党を含む超党派のオリンピック日本招致推進議員連盟が
結成されてはいるが、東京都議会の民主は
新設の五輪メーンスタジアムが過大投資になる恐れがあるとし、
見直しを求めてきた。

民主党は、国会の招致決議に政府の財政保証を盛り込むことにも
抵抗し、麻生太郎首相のサイン入り財政保証書が発行された経緯。

マニフェストでも、自民党が
「2016年東京オリンピック・パラリンピックを国を挙げて招致する」と
明記しているのに対し、民主党は五輪招致に触れていない。

IOCが開催都市決定の際、最も重視する条件の一つが、
財政保証を含めた国家レベルの支援。
民主党中心の政府が、五輪招致で日本がアピールする
財政保証を受け入れるか注目。

JOCの竹田恒和会長らは、4月に民主党の鳩山由紀夫代表を
訪ねて理解を求めたが、市原則之専務理事は、
「しっかり説明していく責任がある」と民主党に理解を求める考え。

自民党が、「『スポーツ基本法』を制定し、スポーツ庁を創設する」と
マニフェストに盛り込んだのに対し、
民主党はスポーツについて言及しなかった。
民主党も、政策集に基本法制定や地域に根ざした
スポーツの確立などを盛り込んでいる。

日本体育協会の岡崎助一専務理事は、
「国際競技力の向上と、スポーツ振興のバランスが大切」
議席を守った元首相の森喜朗日本体育協会会長について、
「政権与党とのパイプ役を果たしてほしい。
これまで通りの尽力を期待している」

政権交代の影響について、「誰が文部科学省トップになるかにもよる。
見当もつかない状況」(岡崎専務理事)と手探りの状況。

http://mainichi.jp/select/seiji/news/20090901k0000m050113000c.html

三陸の恵み、駅名でPR 釜石で三鉄が看板除幕

(岩手日報 8月28日)

三陸鉄道(山口和彦社長)が募集していた
駅の命名権(ネーミングライツ)で、釜石駅が
「南部さけコンドロイチン釜石駅」に決まり、看板の除幕式が行われた。

スポンサーは、水産加工業丸辰カマスイ(田代勝男会長)。
同社が、11月に発売予定の商品名が駅名として掲げられ、
関係者は「長年愛される商品になってほしい」とPR効果を期待。
除幕式には、関係者約20人が出席。

田代会長は、「たくさんの市民や観光客に広くアピールしたい」
山口社長は、「駅名が地域や全国に発信され、地域水産業の
PRにつながってほしい」と、田代会長ら4人が除幕。

看板は横4メートル、縦0・9メートルの大きさ。
水色の背景に、鮮やかな赤で書かれた「コンドロイチン」の文字が目を引く。
駅名と一緒に、サケのイラストも加えられた。

同社は、サケの未利用部位を使った商品開発・販売などを展開。
サケの頭部から関節痛に効果があるとされる「コンドロイチン硫酸」
抽出に取り組み、健康食品の商品化を進めてきた。
田代会長は、「三陸由来の海洋バイオテクノロジーや
南部サケを知ってもらいたい」と命名。

契約期間は1年間で契約料は24万円(税込み)。
三陸鉄道のネーミングライツ決定は、
宮古駅、久慈駅に続いて3駅目。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20090828_7

無重力でのES細胞培養、成功 薬剤など不要、安全性高まる

(2009年8月25日 毎日新聞社)

さまざまな細胞になる胚性幹細胞(ES細胞)を、無重力の状態で
培養したと、弓削類・広島大教授(細胞生物学)が発表。

重力のある地上では、培養時に足場役の細胞や培養液が
必要だが、無重力ではこれらを使う必要がない。
安全なヒトES細胞の作成に道を開き、
再生医療実用化に弾みをつけるとして注目。

ES細胞は、受精卵の内部から、細胞を取り出し培養して作る。
培養時には、他の細胞にならない状態を保ったまま増やす。
その際、マウス由来の足場役細胞を敷いた容器を使い、
ウシなどの血清を含む培養液やES細胞の分化を抑える
たんぱく質などを加える。

ES細胞を、さまざまな臓器や細胞に分化させて治療に使う際、
安全性に問題があるのではないかと指摘。

研究チームは、無重力下で細胞が分化しにくくなることに着目。
人工的にほぼ無重力状態を作る装置を使い、
マウスES細胞を培養すると、ほとんどの物質が不要。
できたES細胞の性質も通常と同じ。

弓削教授は、「細胞には重力を感知し、分化を制御する
仕組みがあるのだろう。
今後、ヒトES細胞や人工多能性幹細胞(iPS細胞)で試したい」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/8/25/106297/

精神疾患、血液で判定 たんぱく質濃度指標に 大阪市大准教授らが確立

(2009年8月26日 毎日新聞社)

大阪市大大学院医学研究科の関山敦生・客員准教授(43)が、
兵庫医科大と共同で、うつ病や統合失調症などの精神疾患を
判定できる血液中の分子を発見、
血液検査に基づく判定法を確立。

問診や行動観察が主流だった精神科診療で、
客観的な数値指標を診断に取り入れることができる。
疾患の判定だけではなく、ストレスの強度や回復程度もわかる。
関山准教授は、日本心理学会で発表。

ストレスや感染などを受けて、生成・分泌されるたんぱく質
「サイトカイン」の血中濃度データの差異を積み上げて分析。
データをパターン化することで、心身の変調やうつ病、
統合失調症などを判定できることが分かった。

精神疾患の約8割を占めるうつ病や統合失調症について、
3000人近くのデータから疾患の判定式を作成。
別の400人の診断に用いた結果、うつ病の正診率は95%、
統合失調症は96%に達した。

精神疾患の判定だけではなく、健常者に対するストレスの
強度、疲労からの回復スピードも数値化。

80人の男女を対象に、計算作業で精神的ストレス、
エアロバイクなどで身体的ストレスを加える実験を実施。
いずれのストレスを受けたか、100%判別することに成功、
ストレスの強度を数値で評価できる方法も見つけ出した。

精神疾患とともに、サイトカインと関係の深い糖尿病、
骨粗しょう症などについて、早期発見を含めて
診断できるように研究を進めたい。
関山准教授は、「心身の健康管理のためのツールに成りうるのでは」

◇実用レベル世界初--徳野慎一・防衛医大准教授(防衛医学)の話

精神科領域での客観的診断は課題だったが、
実用レベルとしては恐らく世界最初のもの。
採血結果を基に、カウンセリングを勧めることが可能になるなど
高い利用価値がある。
心的外傷後ストレス障害(PTSD)など、
他の精神疾患診療にも役立つのではないか。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/8/26/106450/

2009年8月31日月曜日

スポーツ21世紀:新しい波/314 剣道/1

(毎日 8月15日)

3年に1度、世界の強豪剣士が集う第14回世界剣道選手権が、
ブラジル・サンパウロで開幕。
第1回大会から、日本が不動の地位を保ち続けてきたが、
前回、男子団体で日本が初めて準決勝で米国に敗退、
国内外に大きな影響を与えた。
日本の関係者は、「勝負に対する執念が足りなかった」と総括。

各国のレベルが向上する一方、世界に普及することで、
剣道の質が変化しつつあるという指摘。
全日本剣道連盟の理事の一人は、
「剣道は武道だが、勝つことだけに執着している選手もいる」
日本は、このはざまで「武道」としての剣道を守るため、
対策に乗り出している。

剣道の国際的機運が高まったのは、1960年代。
17カ国・地域が参加して国際剣道連盟(FIK、本部・東京都)が
70年に誕生、第1回世界選手権が日本武道館で開かれた。
世界選手権に合わせて開かれる今年の総会で中国、イスラエル
などの加盟が承認、50カ国・地域に増える見込み。

日系人や日本に滞在した外国人が剣道を始めることが多かったが、
「日本の文化を学びたい」という海外の外国人も目立つ。
米国では、約4000人が全米剣道連盟に登録するなど、
競技人口が増え、ブラジル、カナダ、韓国なども実力をつけている。

東京都内の会社員、ダニエル・ヤングさん(28)は、
今大会に米国代表で出場。
母親が日本人で、米国生まれ。
祖母からもらった剣道の漫画「六三四の剣」にあこがれて、
小学4年で剣道を始めた。
高校入学と同時に来日、現在は富士ゼロックス剣道部に所属。

ニューヨークやカリフォルニアで盛んで、全米選手権もある。
日本を破った前回は、韓国に敗れて準優勝。
「前回、日本に勝ったのはたまたま。
100回に1回しか勝てないかもしれないが、その1回に懸けている。
そのために厳しい練習をしている」とヤングさんは意気込む。

来日当初は、上下関係や礼儀作法、剣道の精神論などが
全く理解できなかった。
「米国では、『正しい剣道で勝つ』という考えを意識したことはなく、
勝てばいいと思っていた。カルチャーショックを受けた」
今では、「ただ当てるだけ、パワーやスピードがあるだけでは勝てない。
剣道には、相手を尊重するなど、日本の文化が混じっている。
それを分からないと、面白くないという考えに変わってきた」
その言葉には、貪欲に剣道を学ぼうとする姿勢が浮かび上がる。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/general/archive/news/2009/08/15/20090815ddm035050116000c.html

大船渡を売り出せ 9月に東京タワーさんままつり

(岩手日報 8月29日)

大船渡港に水揚げされた新鮮なサンマを、
東京都の東京タワーでPRする
「三陸・大船渡東京タワーさんままつり」の実行委設立総会が開かれた。
販路拡大と知名度アップを狙ったもので、今年が初めての挑戦。

同まつりは、9月27日に開催予定。
「東京タワーで初秋を味わおう」をテーマに、
東京タワー正面玄関前特設広場で催す。

炭火焼きサンマを無料で提供、大船渡の特産品も販売。
サンマつかみ捕りゲームや先着プレゼントも実施。

サンマは、東京タワーの高さ333メートルにちなんで、3333匹用意。
同市が、全国に先駆けて24年前から始めた「さんま直送便」の受け付けも。

東京でのサンマPRは、宮古市が目黒のさんま祭りに参加するなど、
各地がしのぎを削る。

甘竹勝郎大船渡市長は、「県内1位、全国でも5位の水揚げを誇る
大船渡のサンマを一層PRしたい。
今回成功させて、継続開催にこぎ着けたい」

http://www.iwate-np.co.jp/kanko/f2009/f0908/f200908293.htm

ミトコンドリア病防止に道 卵子段階でDNA置換 米国のチーム、サルで成功

(2009年8月27日 毎日新聞社)

遺伝性の難病、「ミトコンドリア病」の原因となる
異常ミトコンドリアDNAを、卵子の段階で遺伝しないよう
置き換える技術を、米オレゴン健康科学大などの研究チームが開発、
その技術を使って、アカゲザルの子どもを誕生させることに成功。

約5000人に1人と言われる同疾患の防止につながる可能性。
26日、英科学誌「ネイチャー」(電子版)に発表。

生物の遺伝情報が書き込まれたDNAは、
染色体として細胞の核の中に存在。
核外の細胞質にある小器官「ミトコンドリア」にもDNAがあり、
この異常が心臓や脳などの機能障害を引き起こす。

チームは、ミトコンドリア病が原則として女性だけから遺伝することに着目。
アカゲザルの成熟した卵子から、核の染色体を包み込んだ
「紡錘体」を取り出し、別のメスの卵子から紡錘体を
抜いたものに入れ、融合させた。

その卵子を受精させて子宮に移植した結果、4月に双子が誕生、
その後2匹が生まれた。
4匹とも健康で、元のメスのミトコンドリアDNAは受け継いでいなかった。

同大オレゴン霊長類研究所の立花眞仁研究員は、
「人に応用するには、第三者からの卵子提供が必要になるなど
課題があるが、将来、ミトコンドリア病の遺伝を防止する
一つの選択肢となる可能性がある」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/8/27/106487/

2009年8月30日日曜日

挑戦のとき/14 山口大工学部准教授・星田尚司さん

(毎日 8月11日)

◆山口大工学部准教授・星田尚司さん

「比べてください。肉眼で見ても違うでしょう」
差し出された二つのシャーレは、45度で培養した2種の酵母。
片方だけ増えている。
これが星田さんの研究対象、
「クルイベロマイセス・マーキシアヌス(KM)」という耐熱性酵母。

酵母は、「発酵」の立役者。
酵母にとっては、生命活動のエネルギーを得るためだが、
人は古来、発酵を利用して酒や食品、薬などを作ってきた。
代替燃料として注目されるバイオ燃料も、
糖を発酵させてできるエタノールを精製して作る。
発酵時の熱が、酵母の活性を落とすため、
生産現場では適温の30度前後まで冷やす。
星田さんは今年度、KMを高温下でも活動する
強い酵母に育てるプロジェクトを始めた。

KMのうち、タイの精糖工場内で最近見つかった
「DMKU3-1042」という株は、通常の酵母の生存上限(40度)より
はるかに高い49度でも増殖。

45度になると、活性が落ちることが難点。
45度でも活発に働く酵母に育てるため、星田さんが考えた戦略は
「酵母本来の能力に任せる」こと。

方法は単純。
エタノールを混ぜた培地にこの株を入れ、45度以上で育てる。
過酷な環境にも適応して元気に生きる株が見つかれば、
遺伝子の変異を探す。
これを手がかりに、遺伝子工学で新株を作り出していく。
「自然の力に頼ってみようと思います。生き物ってすごいんです」

高校1年の理科で、光合成の仕組みを学び、
「光合成は究極のエネルギー生産法だ」と感じた。
太陽光からエネルギーを生み出す光合成は、
太陽光発電とは比較にならないほど効率がいい。
「人工光合成」の研究に大学院まで取り組んだが、
「人間にはまねでけへん、と思った」
まねよりも、生き物そのものの力を借りた方が現実的と考え直し、
今のテーマにたどり着いた。

新株が見つかれば、発酵タンクを冷やす工程は不要に。
年3万キロリットルのバイオ燃料を生産するプラントを
想定した試算では、発酵温度を5度上げることで、
約5000万円の設備投資と年間500万円の冷却コストが削減。
地球温暖化防止にも貢献する。

研究室では、微生物を使って環境をよくしたい、
病気を治したい、と考える学生・院生約30人が、
こつこつと取り組む。
「環境のために僕ができることは、狭い範囲の小さなこと。
一生懸命やった仕事が、環境を守ることにつながればうれしい」
と笑顔を見せた。
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◇ほしだ・ひさし

1970年、大阪生まれ。京都大大学院博士課程修了。
99年、山口大助手、07年から現職。専門は遺伝子工学。

http://mainichi.jp/select/science/rikei/news/20090811ddm016040109000c.html

コメ:「強く・うまい」15年がかりで成功

(毎日 8月21日)

いもち病への抵抗力と、コシヒカリ並みのおいしさを
兼ね備えた水稲を作ることに、農業生物資源研究所(つくば市)の
福岡修一主任研究員や愛知県農業総合試験場などが
15年がかりで成功。
抵抗力を持つ遺伝子を陸稲から発見し、
交配でコシヒカリに組み込んだ。
農家が希望すれば、来年から栽培できる見通し。
米科学誌「サイエンス」の8月21日号に論文が掲載。

いもち病は、カビの菌が起こす病気で、イネを枯らすこともあり、
水稲の被害は全国で年数百億円。
原因菌は40種以上、すべてに耐える水稲の開発は難しかった。

陸稲は、どの菌にも抵抗力はあるものの味は劣り、
水稲との交配が約80年前から試みられてきた。
抵抗力と味の両立はできていなかった。

福岡さんたちは、約3万2000個ある陸稲の遺伝子から
菌への抵抗遺伝子を特定。
陸稲は、抵抗遺伝子の近くに味を落とす遺伝子を持つと想定。
陸稲と水稲を交配したイネ約6000種から、抵抗遺伝子は持つが、
近くの遺伝子はコシヒカリなどと同じで、
美味を期待できる品種を三つ見つけた。

うち一つを「中部125号」と命名
いもち菌11種類への抵抗力を感染実験で確認し、
食味試験でもコシヒカリと同等との評価を得た。

http://mainichi.jp/select/science/news/20090821k0000m040125000c.html

NIE20年(3)情報吟味する力 養う

(読売 8月20日)

「見出し付けコンテストをやりましょう」
埼玉県立川越女子高校で、国語の佐藤弥生教諭(50)が
1年生のクラスで見出しを空白にした新聞記事のコピーを配った。
「子どもに携帯電話を持たせるべきかどうか」
対立した2人の識者の意見を紹介した記事を読み、
生徒らは黒板に自作の見出しを書いた。

携帯電話の所持を規制する、石川県の条例を取り上げた
記事について意見を聞いた。
「賛成。使っていて時々怖くなる」、
「反対。保護者がすべきこと」。
身近な携帯電話の話題だけに、生徒らも真剣に意見をかわした。

見出しを隠すのは、先入観を持たずに記事を読み、
自分で記事のポイントを考えるため。メディアリテラシーを意識した授業。
「今までは流し読みだったが、読み方が変わった感じ」と
渋谷瑞葉さん(16)。

いつもは朝学習の時間を使い、週1回、同僚教師と
記事や本の中から選んだ題材について、
生徒に翌週までに意見を書かせる。
題材は、死刑や教育、メディア論など幅広い。
大学入試で論文を書くためにも、
まずは社会の多くのことを学んでほしい。

佐藤教諭が、NIEを始めたのは約10年前。
生徒の読解力に物足りなさを感じ、週1回、
自分で関心のある記事をスクラップしてもらうことに。
初めは小さな記事しか張れなかった生徒も、
続けるうちに大きなテーマの記事を張るようになった。
「社会への関心が広がり、読解力も向上した」と手応え。

佐藤教諭は、「大学や社会人になると、自分で学ぶ機会が増える。
情報をうのみにせず、自分で吟味し活用できる力をつけさせたい」

机の上には、話題の本「1Q84」などと、
それらの書評記事のコピーが並んだ。
東京都立小石川中等教育学校の国語で、
4年生(高校1年)が5人1組に分かれ、書評記事を読み、
記事の優れた点や特徴を話し合った。

「難しい横文字ばかりで分かりにくい」
一人の生徒が記事について感想を述べると、
稲井達也主幹教諭(47)が、「読み手にそれなりの知識を求め、
レベルの高い書評」と解説。

書評欄は、著名な作家が書くことが多い。
この日は、「プロの書き手が本をどのように批評するのか」を
学ぶことが授業の狙い。

稲井教諭は、4月から月1冊、課題の本を出し、
生徒に批評を書かせている。
大学入試などを見据え、「批判的な思考力を付けさせたい」と、
読書感想文より難しい批評を書いてもらう。

「新聞は、身近な社会問題を考えさせやすい」
これまでも3年で、新聞と同じスタイルのコラムを書かせ、
今後は社説の要約などを授業に取り入れる方針。

新聞で社会を学ぶだけでなく、その情報を正しく理解し、
自ら発信する力の育成が進んでいる。

◆メディアリテラシー

テレビや新聞、インターネットなどのメディアを批判的に読み解き、
表現したり発信したりする力。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090820-OYT8T00185.htm