2009年10月24日土曜日

公園や緑地が健康を守る

(2009年10月21日 WebMD)

公園や森など緑地の近くに住むと、
心と身体の健康が向上することを示す。
新たな試験では、緑地に近いとうつ病、不安など
健康上の問題が少なかった。
この関係は、小児と低所得者で最も強かった。

緑地が健康維持に役立つことを示唆する研究は最初ではないが、
特定の健康状態に対するその影響を評価したのは初めて。

オランダの研究者が、国内の医療機関の患者健康記録を調べた。
郵便番号を利用、各患者の自宅から約3.2km以内にある
緑地の割合も計算。

研究者Jolanda Maas(Amsterdam's VU University)は、
「緑地と健康との関連性が最も強く認められたのは、
自宅から半径1km以内」

◆不安、うつ病に最も影響

試験では、96施設約350,000例における治療期間が
1年以上に及ぶ24症状の有病率に関するデータも検討。
24症状中15症状に、健康に影響を及ぼすことが確認されている
因子を補正した場合でも、年間有病率は最も緑の多い地域に
居住する患者の方が低かった。

◆その他の主な研究結果

1)心の健康に及ぼす影響が最も大きかった。
緑地が最も少ない地域に住む者と比較すると、
緑地が最も多い地域に住む者では、治療を要する不安障害の
有病率が1/3低く、うつ病の治療を受ける可能性は約1/5少ない。

2)身体の健康は、緑の多い地域に居住することの明らかな
保護効果は喘息、COPD、上気道感染症など呼吸器疾患で最も高い。

3)心血管疾患、糖尿病、癌など他の一般的な疾患については
関連性ははるかに低い。

驚いたことに、緑地を利用しやすいことは、
この試験に組み入れられた最も都会に近い地域に住む者の
健康には影響しない。

研究者らは、この理由を質が悪い、大都会にある緑地は安全でない、
と考えられ、それほど多く利用されていないと推定。

◆緑地はストレスを軽減し、運動を促す

これまでの試験から、主に都会の緑地はストレスを低下させ、
運動を促すことにより健康を向上させることが示唆。
「緑地を利用できることは、精神的に有利であることを示す
多数の研究がある」
Urban Green Institute(オレゴン州ポートランド)の事務局長で
都市自然保護活動家のMike Houck。

1980年に仕事を始めたとき、よく都市設計家に町の中には
自然が入り込む余地はないと言われた。
「彼らに、私のやるべきことは、町の外の自然地域を保護することで、
町の中の自然はすべて誰でも手に入れられると言われた。
30年かかって、明らかに態度が変わった」

オレゴン州ポートランドの主要健康保険会社2社は、
2006年新たに緑地を取得するため、
2億2700万ドルの公債発行法案を可決させるよう
積極的に有権者を説得。

「公債発行法案が承認されたのは初めてだったが、
その重要さを理解してくれた。
散歩したり、サイクリングしたり、カヤックに乗ったりする人が、
身体的にも精神的にも恩恵を受けないとは、私には想像もできない」

http://www.m3.com/news/SPECIALTY/2009/10/21/109630/

小学生と外国語(2)授業の技 研修で磨く

(読売 10月15日)

英語が得意な教師も得意でない教師も、
指導技術を身に着けようと奮闘。

外国人講師が1枚ずつ絵をめくりながら、
英語で童話「桃太郎」を読む。
この日は、生徒となった先生たちが、同じ言葉を繰り返す。
埼玉県上尾市の聖学院大学で、小学校英語の講習会が開かれた。

講習会は、2001年、総合学習の時間を念頭にスタート。
9回目の今年は、小学校の外国語活動の必修化に向けて開催、
過去最高の264人が参加。
午前と午後で、計4講座を選んで受講。
実践技術への要望が強いのか、模擬授業のある講座が人気。

参加者の中に、各小学校を代表して英語活動の推進にあたる
「中核教員」の姿があった。
都道府県教委などが実施する研修を受講して、
校内研修に生かす役割を担う。
校内研修は、研究授業も含め、2年間で30時間程度。

都内の公立小の中核教員、森本康仁さん(28)は、
「我が校では、英語に自信のある教員は皆無。
自分も、海外旅行で話した経験がある程度」
少しでも知識、技能を高められればと、この日の講習会に参加。
中核教員ですら、誰もが英語が得意なわけではない。

英語の使い手でも、授業となると事情は違う。
米コロンビア大学ティーチャーズカレッジ日本校は、
8月初めの3日間、児童英語の講習会を開いた。
受講者は3、4人のチームに分かれ、それぞれ歌や自作の
小道具などを使った授業プランを考え、最終日に発表。

講義は、すべて英語。
21人の参加者も全員、英語を使いこなしていたが、
「会話ができるのと、児童に教えるのは別の話」と
都内の公立小教員の秦さやかさん(34)。
英語活動では、ゲームや歌が主体となり、これまでの授業とは違う
方法論が必要になる。

愛知県教委は今年9月、通常の研修に加え、
独自の中核教員育成プログラムを県内40地域で始めた。
模擬授業を行ったり、実際の授業を見て助言したりする
大学教授などの英語教育のプロを、各地の学校に派遣。

小学校全7校で、英語活動を導入している知多郡東浦町で、
研修には、中核教員のほか、町内の中学校長なども参加。
教員養成大学の教授が5年生を相手に模擬授業を行い、
質疑応答などで授業の技を磨いた。

同町では、これまで大きな混乱はないが、中核教員の
松山幸代さん(34)は、「人前で自分を表現するのが苦手な児童も。
英語嫌いにならないように気を配るのが担任の務め」

小学校の授業として定着するまで、道は遠い。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20091015-OYT8T00232.htm

抑うつと不安が体重増加に関係する

(2009年10月16日 Medscape)

抑うつや不安などの精神疾患を持つ者は、
そうした疾患を持たない者よりも、体重が次第に増えていく
傾向が強いことが、新研究で示された。

この研究は、精神衛生が肥満に及ぼす影響を調べた
研究の中では最長のもののひとつ、
4000人を超える英国の公務員をほぼ20年間追跡。

抑うつ、不安といった精神疾患のエピソードを、
慢性もしくは反復性に有する者は肥満になる傾向が強い。
調査期間において、精神疾患の症状がひとつでもあった者が
最終検診で肥満になっていた確率は、
そうした症状を申告しなかった者の2倍。

ロンドン大学ユニバーシティ・カレッジのMika Kivimakiは、
「調査を始めた時、肥満ではない者を対象。
精神疾患症状の申告回数が多いほど、調査期間が終わるまでに
肥満になるリスクが大きかった。
精神疾患と体重増加との間には、用量反応関係がある

対象者は、1980年代中盤から末にかけての登録時に
35~55歳までだった公務員4,363名。

研究登録時と、平均19年間の追跡期間の中で3回、
精神衛生と身体の診察を行った。
身体所見には、体重、身長、肥満指数(BMI)。

体重増加が見られる抗精神疾患薬の使用といった
肥満の既知のリスク因子について調整すると、
調査開始時に抑うつや不安といった精神衛生上の問題を持つ者は、
それらを持たない者に比べて、肥満になる傾向が強かった。

抑うつ、不安、その他の精神疾患のリスクは、
肥満では有意に増えなかった。
『BMJ』オンライン速報版に掲載。

「体重増加が、精神疾患を誘発するのかどうかを
逆の方向で調べてみたが、その関係性は明白ではなかった。
ただ、関係性がないのではなく、今回の調査では
とても弱いものでしかなかった」

シアトルの精神科医、Gregory E. Simonは、
抑うつと肥満とが関係することはかなり強いエビデンスで示されたが、
その関係の向きについて、はっきりしていない。

「抑うつで、肥満のリスクが増える理由、肥満で抑うつのリスクが増える
理由としてもかなり有力。
その両方が起きている可能性が高いと思っている」

2006年のSimon博士の研究は、両方向の関係性が働いている
可能性を示している。
食欲が増し、運動量が減るのは抑うつの一般的症状で、
そのために体重が増える。
肥満には悪いイメージがつきまとうので、それで抑うつが誘発される
可能性もある。

米国人口の肥満率は、25~30%だが、
顕著な抑うつを持つ者の肥満率はその2倍。

抑うつでは肥満があたりまえなので、
その2つを分離することはかなり難しい。
抑うつを持つ者は、結婚生活上の問題が起きやすく、
結婚生活上の問題を持つ者は抑うつになりやすいと言うのと同じ。
この2つを分離するには、相当に鋭利なナイフが必要」

Kivimaki, M., BMJ, 2009; vol 339: p b3765.

http://www.m3.com/news/SPECIALTY/2009/10/16/109308/

2009年10月23日金曜日

朝活でやる気高める 出勤前にひと勉強

(日経 9月30日)

20代、30代のビジネスパーソンを中心に、
「勉強会」に参加する人が増えている。
出勤前の朝の時間に活動する「朝活」が注目。
テーマも多岐にわたり、学習熱を高めるのに一役買っている。

◆ユニーク講座

出勤前の1時間、市民講座「丸の内朝大学」の参加者が、
新丸の内ビルディングなどにある「キャンパス」に集まる。

「全身の力を抜いてゆっくり深呼吸して」
ヨガの基本を学び、健康管理法を身に付ける
「ヘルスマネージメントメソッド of YOGA」では、
講師の指導に合わせ、受講者が体を動かしている。
「健康な状態で仕事に取り組め、生産性も上がった」

会議や商談など現場で役立つ発声法を、独自の方法で学ぶ
「ビジネスヴォイスメソッド講座」
歌手の楠瀬誠志郎さんが講師。
呼吸や自律神経を安定させると、メンタルケアにもつながる。

丸の内朝大学の運営に携わる三菱地所都市計画事業室の
井上奈香さんは、「ここにしかない講座だからと、
職場から遠くても、足を運ぶ人も多い」
丸の内近辺に勤務地がある参加者は、3割強。

丸の内朝大学は2006年、朝型の生活様式を提案する
イベントがきっかけ。
「少し早起きすれば、自分の時間が持てる」、
「オフピーク通勤が定着して温暖化対策にもなる」
ライフスタイルへの転換を促す企画が打ち出された。
ヨガや発声法などの講座がある「心体学部」、
農業を学ぶ「食学部」、環境や社会問題を考える「環境学部」など。

アート学部」が始まり、写真を通じてコミュニケーションについて
考える講座が開かれる。
お金の運用や使い方を学ぶ「マネー学部」も。
各講座は1~9回、学費は1000~5万8000円。定員は15~40人。

◆MBAの要点

「きょうのテーマは、『あなたの会社のグーグル戦略を考える』」
渋谷の貸会議室で、経営学修士(MBA)関連の講座を運営する
「MBA Solution」(同、安部徹也社長)の勉強会。
広告会社やIT関連企業などに勤める男女9人。

この勉強会は、「できる!MBAプロフェッショナル講座
モーニングセッション」
毎月1回(1時間)のペース。
前半、「ハーバード・ビジネス・レビュー」誌などを参考に
講師が経営理論を説明。
後半、受講者同士の議論に充てられる。
1回の受講料は3800円から。

ウェブ制作会社の役員を務める岩崎正寛さんは、
これまで10回ほど参加。
「MBAの知識は、実際に日々の仕事で役に立つ。
この講座は、要点がまとまっていて便利」
「朝から勉強する熱心な人が周りにいるので、刺激を受ける」のも、
続けられる理由。

◆人脈作りも

学生時代、IT関連企業の内定者の集まりで知り合った
矢沢修さんと冨田憲二さん。
IT関連サービス企業のECナビの宇佐美進典社長に誘われ、
シティホテルでの朝食会に参加。
「その日は、仕事へのモチベーションが上がった」

この経験がきっかけで、2人は仕事への意識が高い
20代の仲間が集まる「朝からホテルで飯喰う会」を企画。
毎月1回、高級ホテルで朝食をとりながら色々な会話を楽しみ、
仕事へのやる気を高めて出社するのが目的。

ディナーは高額で難しくても、朝食であれば、
高い料金でなくても、良質で非日常を実感できるサービス。
帝国ホテルやグランドハイアット東京など、10回ほど開いた。
幹事の白川毅さんは、「長く付き合いたい仲間を
1人でも多くつくる場にしたい

朝のスタートをうまく切れれば、昼間の仕事も効率よく
こなせる可能性も高まる。
ちょっと早起きして、「勉強の秋」を体験してみては。

◆「手始めに参加」有効

リクルート情報誌「ケイコとマナブ」編集長の根岸菜穂子氏の話

最近は、資格や経営学修士(MBA)関連科目といった仕事で
役に立つ学習に取り組む人が増えた。
不況になると、自らの能力を会社にアピールしたい意識が強くなるが、
ビジネスパーソンの学びへの意欲の高さは一過性とはいえない。

会社員が、限られた時間や収入のなかで効果的に勉強するには、
朝は比較的都合をつけやすい。
朝の勉強会には、手軽で割安な講座が多い。
最近は講座の種類も増え、多くの人を引きつけている。

難関資格の取得を目指して学校に通うには、
学費や時間の工面が難しい人は多い。
手始めに、同じ目標を持つ仲間が集まる場に参加するのは
上手な学び方。
心がけと工夫次第で、朝の勉強会の活用の幅は広がる。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/bizskill/biz090929.html

小学生と外国語(1)濃密な授業へ助手交え検討

(読売 10月14日)

外国人を交えた組織的な準備で、授業の効果を高める小学校。

「この赤くて丸くて甘いのは何かな」、「アップル!」
市立成田小学校を訪ねると、校舎内には英語が飛び交っていた。
担任と外国語指導助手(ALT)が、果物の描いてあるカードを
示しながら英語で質問すると、2年生約30人が大きな声で答えた。

成田小が英語教育を本格導入したのは、1996年度。
文部省(当時)の研究開発学校の指定を受け、全学年で週2回、
20分間の英語科の授業を始めた。
2000年度から、授業は毎日、今では週4回行っている。

研究開発学校の指定は昨年度で終わったが、今年度から
成田小を含む市内の小学校5校と成田中学校の計6校で、
英語教育の小中連携などの実践を進めている。

授業は、ALTと学級担任の2人で進めるチームティーチングで、
基本的に英語しか使わない。
竹村幸延教頭(47)は、「会話の中で、theやaなどを
自然に使い分ける子もいる。英語の時間の前後は、
英語でのあいさつが普通に飛び出してこちらが驚くほど」
と効果に笑顔。

英語で話したり教えたりするのが、得意な教師ばかりではない。
小学校の教員免許には英語はなく、中学高校の英語教師と
違って、英語の教え方を学んでいないが、
成田小では、ALTと担任が準備に時間をかけることで克服。

毎週木曜日の放課後、職員室で学年ごとにALTを交えて集まり、
翌週の授業の進め方や授業で使う英語の表現を、
2時間近くかけて確認。

他の教科の準備が40分間程度であることを考えると、
英語の準備は入念。

3年生の準備では、「ティーパーティーを開いて、
おもてなしの表現を学ぶ」という単元を話し合っていた。
「カードではなく、本当にお茶やお菓子を出したらどうだろう」、
「クラスをお客とホストの2チームに分けると、
手持ちぶさたになる子が出た。
4分割して会話をさせた方がいい」
様々な工夫や意見が出た。

授業で使う英語の正しい発音や、授業に集中するよう促す
言い回しも、この時間にALTから教えてもらう。
翌週に使う数語だけなので、覚えるのは難しくない。

英語の授業開発を担当する研究主任の岸幹忠教諭(41)は、
子どもが何に興味を持つか、どんな英単語が理解しづらいかは、
毎年変わる。

「子どもの様子を見ながら、授業を組み立てる必要。
準備に時間をかけ、子どもの理解度に応じて
授業を進めることができる

授業の進め方を毎週、話し合うのは大変。
指導案通りに授業を進めるだけの方が、教師の負担は少ない。
成田小では、学年単位の事前準備を
「授業を進める上でなくてはならない研修」と位置づけ、
毎週木曜日に固定。
校内行事を別の曜日に設定することもある。

月1回程度、成田中学校の英語教師を交えた会合を開き、
授業内容や課題などについて情報交換。

岸教諭は、「ほかの授業では、恥ずかしがってみんなの前で
話せない子が、英語では、はきはき話している。
そういう子どもの姿を引き出せるようにするのが、
授業作りの醍醐味

小学校の教師にとって、英語は可能性にあふれている。

◆ALT(Assistant Language Teacher)

外国語を母国語とする助手。
英語の発音や国際理解教育の向上を目的に、
各教育委員会から学校に派遣され、授業を補助。
2008年度、全国の公立小中学校に約6000人が派遣。

◇教員の過半数「導入に不安」

小学校での英語教育は、2011年度に正式導入される
新学習指導要領で、外国語活動として盛り込まれている。
今年度から移行期間が始まり、公立小学校の98・7%が先行実施。
平均年28・2時間だが、新指導要領で規定する年35時間の学校も
53・8%と半数を超えている。

教師側の準備も進む。
08年度に都道府県教委などが主催した研修には、
80・7%の学校が教師を派遣、学校ごとの研修も66・6%で開催。
中学校教員が小学校で授業を行ったり、
指導法の合同研修を実施したりといった小・中学校の連携も、
中学校区の半数近くで行われている。

不安も根強い。
旺文社が08年、全国の公立小の英語活動担当教師に、
11年度の英語導入がスムーズに進むと思うかどうかを聞いたところ、
「思う」はわずか8・7%、
「課題があり、導入には不安が残る」は52・5%と過半数。
問題点(複数回答)は、「指導内容・方法」が78・6%で最も多く、
「評価内容・方法」、「指導計画」などが続いた。

小学校の英語には教科書がなく、統一した授業内容が
決まっているわけではない。
文科省は、教科書の代わりとなる補助教材「英語ノート」を作成、
具体的な指導方法も含め、当分は模索が続きそう。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20091014-OYT8T00228.htm

食と科学-生命の対話 パネルディスカッション

(2009年10月10日 毎日新聞社)

「食と科学--生命の対話」をテーマに、
英国の初代食品基準庁長官ジョン・クレブス上院議員
(オックスフォード大学ジーザスカレッジ校長)を招いた
「クレブス卿特別講演会とパネルディスカッション」が開かれた。

◇小島--メディアは危険情報を流しやすい
◇唐木--消費者の不安と実際行動に違い
◇姫田--情報提供は事実を分かりやすく
◇小泉--情報不足が消費者不安の背景に
◇阿南--食の世界では知恵の伝承が大切
◇木村--企業も安全情報の長期的構想を

西澤真理子氏:病原性大腸菌O157による食中毒があった。
食中毒や各種事故のリスクは高いのに、
リスクのきわめて低い残留農薬や遺伝子組み換え作物などが
不安に思われているのは、なぜか?

ジョン・クレブス氏:人は、未知でなじみがなく、
自力で制御できないものに、大きなリスクを感じる。
原子力発電所の近くに住むリスクに比べ、車の込みあう道路を
自転車で走るリスクの方が高いのに、人々の意識は逆。

唐木英明氏:消費者の不安感と実際の行動は異なることを
知ることも重要。
消費者の約8割は、アンケートで「添加物に不安」と答えるが、
実際に買い物をする時に不安を感じない。
アンケート結果に、企業や行政がどこまで対応すればよいのか。

クレブス氏:メディアが、子どもの多動と添加物が関係あるかのごとく
報道するのも、不安感を高めている一要因。
政府が、「絶対に安全です」と言うのは大きな誤解の元で、
ゼロリスクを絶対に言ってはいけない。

西澤氏:情報提供のあり方だ。

姫田尚氏:行政側は、「科学的に安全だから受け入れるべき」
といった押し付け的要素があった。
BSE問題でも、国が「全頭検査をしているから絶対に安全」と
言ってしまうなど、反省すべき点も。
記者との関係を緊密に保ち、事実を分かりやすく伝えることが大事。

小泉直子氏:消費者の不安感の背景には、情報不足も大きい。
毎年、約100万人に1人がクロイツフェルト・ヤコブ病にかかる。
この病気は未知で、個人の力では制御できないが、
不安感は持たれていない。
BSE感染した牛肉を食べ、変異型ヤコブ病を発症するリスクは
ほとんどゼロなのに、不安感が大きい。
確率の考え方をもっと知ることが大切。

阿南久氏:未知なものに消費者が不安を抱くのは当然だが、
食べ過ぎなど真のリスクや、添加物が食中毒を防ぐなどの
メリットを学ぶことも大切。
食の世界では、知恵の伝承も大事。

小島正美氏:メディアの世界では、安全な情報より、
危険な情報を流しやすい。そのへんの自覚も大事だ。

唐木氏:安全な情報は、聞き逃しても損はないので、
消費者は危険な情報に注目しやすい。
情報に単純に反応しないよう、メディアはもっとメリットを伝えてほしい。

木村毅氏:企業側の対応も重要。
企業の品質保証部門で、安全だと分かっている添加物を使っても、
営業サイドは無添加商品として売っていこうとする問題も。
食品企業が、安全情報に関し、長期的なビジョンを示す必要。

◆特別講演
科学的根拠を基本に--英国初代食品基準庁長官、ジョン・クレブス氏


世界的には大きな問題が二つ。
先進国での食べ過ぎによる肥満、途上国での食料不足と飢餓。

過去15年間、英国では子供たちも含め肥満者は増えている。
何が健康リスクかと言えば、がん、脳血管疾患、糖尿病、
食べ物の誤飲などによる窒息死、子供の事故など。
残留農薬や食品添加物、BSEではない。
英国では、BSEが大問題になったが、すでに脅威ではない。

政府が目指すべきことは、リスクをゼロにすることではなく、
分別ある消費者が受容できるレベルまでリスクを下げること。

英国の食品基準庁は、「オーガニック農産物は通常の農産物に比べ、
安全性と健康への効果の点で差がない」とする報告書。
有機農産物の栽培は、環境にはよい面をもっているが、
健康への効果で優れているわけではなく、
食料問題を解決する手段にはならない。

今後も、食料需要やエネルギー消費の増加が予想。
水や肥料が少なくても育つ遺伝子組み換え作物などにも期待。
科学的な根拠を基本に、食や健康を考えてゆくことが大事。
………………………………………………………………
◇パネリスト
小泉直子 食品安全委員会委員長
唐木英明 東京大学名誉教授
姫田尚  農林水産省消費安全局総務課長
阿南久  全国消費者団体連絡会事務局長
木村毅  味の素品質保証部長
小島正美 毎日新聞生活報道部編集委員
コーディネーター 西澤真理子・リテラジャパン代表

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/10/13/108990/

2009年10月22日木曜日

グーグルはどこへゆく?

(日経 2009-10-08)

インターネット検索で世界トップシェアを独走し、
ネット広告市場でも敵無しの米グーグル。
世界景気低迷のあおりで業績は伸び悩んでいるが、
同社が「世界最強のネット企業」。
株式上場から5年を迎えた同社は、どこへ向かうのか?
エリック・シュミット最高経営責任者(CEO)の発言から。

「『検索を良くすること』に、多大な投資を費やしている。
(検索データベースの)インデックスを今より巨大に。
対応言語を増やす。
ユーザーが打ち込む検索語彙から、意味を理解する
検索エンジンを作りたい」
最重視している分野を問うと、真っ先に返ってきたのがこの答え。

企業向け有償ネットサービスや、基本ソフト(OS)など、
新分野への参入を相次ぎ発表しているが、
会社設立11年の今も屋台骨は、創業事業である「検索技術」。

収益源について、「現在展開中のネット広告ビジネスの改善が、
新たな収益源の獲得に」
主力事業である「検索」と「広告」への揺るぎない自信。

ネット検索とネット広告で、グーグルに先行を許した
マイクロソフトは、「打倒グーグル」を掲げてヤフーとの提携。
マイクロソフトとの頂上決戦は、避けて通れない。
どう戦うのか?

シュミット氏は、「我々もヤフーと提携しようと試みたが、
(市場独占と判断した米司法省に)妨げられた。
両社の提携については、スタンスを決めかねている。
詳細を見極める必要がある」

「誰が勝つかは、ユーザーが決めること。
ライバルを心配するのではなく、自身の技術革新を続けること。
新サービスや、アイデアを誰よりも早く投入することに細心の注意」
マイクロソフト・ヤフー連合に、「イノベーション」で挑む姿勢。

グーグルがけん引するネットサービスの普及は、
IT業界の秩序をも変えつつある。
OSのマイクロソフトと、半導体のインテルの「ウィンテル」支配が
続いたが、グーグル台頭で完全に崩れた。
今後はどうなるのか?

「インテルの(CEO)ポール・オッテリーニは、グーグル社外取締役。
インテルは、グーグル製OS『クロームOS』などを搭載する
情報機器に半導体を提供。
アップルも、インテル製半導体を使う。
インテルは、携帯向け半導体にも力を入れ、『ウィンテル』は別々に」

ではマイクロソフトは——?
「マイクロソフトは、(パソコン用OSで)巨大な基盤を持つ。
(ネット経由でソフト機能を提供する)『クラウドコンピューティング』
への移行に苦労。
今後は、アップルが成功を収め、グーグルも成功を収める。
マイクロソフトの減速には、時間がかかる。
(グーグルが目指す)『クラウド』への移行は、10~15年かかる」

世界中の有力エンジニアが、技術革新に明け暮れるグーグル。
ネット社会の将来をどう見るのか?

「世界中のデータが『クラウド』に集まり、誰もがどこからでも
アクセスできる世界で、何ができるかを想像すればいい」

「世界の人々が携帯電話を持ったことで、技術的には世界のどこに
利用者がいるのかが、センチメートル単位で分かる。
これら技術を生かせば、全く新しいサービスを開発できる。
私が運転している車のスピードや、私の性格までも考慮して、
私がこのインタビュー到着時間を予測するサービスなども実現可能」

グーグルは、環境技術を持つベンチャー企業への投資を積極化。
データセンターで消費する電力を、技術でまかなうことを目標。

「太陽熱や太陽光、風力分野のベンチャーに資金を投じている。
(巨大データセンターを運営する)グーグルは、膨大な電力を使う。
風力発電のコストは、石炭を使う発電コストに近付きつつある。
エネルギーセクターは、ネットよりも進化が遅く、
実現可能な時期は分からないが、到達できると信じている」

最先端ネットから次世代エネルギーまで——。
世界の技術革新をけん引するグーグルだが、
シュミット氏にも見えないものがある。5年後の自社の姿。

「5年前の上場がまるで昨日のよう。
グーグルは、ものすごいスピードで進化し、
(5年後の姿は)想像できない。新しい問題を解決し続けていたい」

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/ittrend/itt091006.html

ホースセラピー、馬に揺られ心身をリハビリ 山梨・南アルプス市センター

(2009年10月11日 毎日新聞社)

馬と触れ合うことで、心身のリハビリをする「ホースセラピー」が、
南アルプス市塩前の市フレンドリーセンターで体験できる。
正式には、ホース・アシステッド・セラピー(馬の助けによる療法)。

欧州では、医学療法として市民権を得ているが、
国内での認知度はまだ低い。

同センターは01年、旧白根町と同町社会福祉協議会が設立。
乗馬ではなく、ホースセラピーのために運営。
年間約2000人が訪れ、4分の1は心身に障害を持った人。

ホースセラピーでは、乗馬によって複雑な馬の背の揺れが
日常使わない筋肉を刺激するため、
身体的なリハビリ効果があり、バランス感覚も養える。

馬と触れ合うことで、不安や緊張が緩和されるなど、
心のケアにも効果がある。

施設責任者の福田資久さん(37)は、ミュージシャンとして活動、
北杜市白州町で両親が乗馬クラブを経営していたことが縁で、
08年から馬の飼育管理を担当。

福田さんによると、引きこもりの子供たちが馬と触れ合うと、
同伴の家族は一様に、「普段見たことのない笑顔を見られた」と驚く。

厚生労働省の研究班が04~06年度の間にまとめた、
不登校や引きこもりの子供や若者に対するホースセラピー効果の
研究結果によると、セラピーを受けた14人の大半が
気分の落ち込みや不安・緊張の緩和を感じ、
自尊心も高まる傾向。

07年、国内初のホースセラピー専用牧場を大阪府枚方市に
開設したNPO「ホース・フレンズ」の芦内裕実理事長によると、
ドイツとスイスでは、ホースセラピーに健康保険の適用
認められている。

ホースセラピーが、犬など他のアニマルセラピーと最も違うのは、
その大きさ。
福田さんの愛馬ジョー(20歳・雄)の背にまたがってみた。
視点は一気に高くなって視野が広がり、爽快だ。
馬が1周120メートルの馬場をゆっくりとかっ歩し始めると、
複雑な揺れが体を伝わる。
力を抜くと自然と姿勢が正され、バランス感覚を養える
という理由がよく分かった。

手綱を少し引くとゆっくりと立ち止まり、
腹部を軽くけると歩き始める。
体重500キロもある動物が、言うことを聞くことだけうれしくなる。

福田さんは、「ホースセラピーの認知度がもっと高まり、
本格的なリハビリとしての利用者が増えれば」と期待。

同センターの乗馬料金は中学生以下600円、一般1200円、
中学生以下の障害児300円、障害者600円。
問い合わせは、同センター(電話055・285・8181)。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/10/13/109015/

メタボリックシンドロームの定義を統一する共同声明を発表

(2009年10月16日 Medscape)

メタボリックシンドロームの定義は、各団体によって異なり、
明確な臨床診断基準を定める新たな共同声明が発表。
メタボリックシンドロームの定義が厳格化される。

10月5日『Circulation』オンラインに発表されたこの声明は、
メタボリックシンドローム患者の判定方法に関する混乱を
解消しようという試みで、国際糖尿病連合(IDF)、
米国心肺血液研究所、世界心臓連合、
国際アテローム性動脈硬化学会、米国心臓協会が参加。

「この論文は、定義をグローバル化するための試み」と、
Dr Robert Eckel(コロラド大学)。
IDFと、米国コレステロール教育プログラム成人治療パネル
ATP IIIの定義は、最もよく使用されている二大定義。
混乱を引き続き防ぐという点で、一歩前進した」

新しいメタボリックシンドロームの定義は、
ウエスト周囲径の測定値により決められていた腹部肥満に関する
これまでの違いを一本化。
以前は、ウエスト周囲径の基準値で8 cmも差があった。
ウエスト周囲径増大の基準値は、集団および国ごとに決める。
基準は統一されたが、やるべき課題が残っている。

「問題は、ウエスト周囲径が何cmなら、
心臓病や糖尿病のリスクになるか、各国で大きな地域差が。
ウエスト周囲径とリスクの関連付けに、
地理的に異なる地域、各国のデータベース分析に頼っている」

今回の定義では、ウエスト周囲径は医師が
メタボリックシンドローム診断に参照する5項目の単なる1項目。
ウエスト周囲径の増加、中性脂肪の上昇、
HDLコレステロール値の低下、高血圧、
空腹時血糖値の上昇から成る5つの基準のうち、
3つに該当する患者はメタボリックシンドローム。

◆メタボリックシンドロームの臨床診断基準

・ウエスト周囲径の増加:集団および国別の定義による
・中性脂肪の上昇:>150 mg/dL
・HDLコレステロールの低下:男性<40 mg/dL、女性<50 mg/dL
・高血圧:収縮期 >130 mm Hg、拡張期 >85 mm Hg
・空腹時血糖値の上昇:>100 mg/dL

注目は、米国糖尿病学会(ADA)が共同声明に加わらなかった。
メタボリックシンドロームに関し、未解決の科学的問題がある。
メタボリックシンドロームを、心臓病や糖尿病の危険因子と
位置づけるやり方に反対、各危険因子を積極的に
治療することに重点を置くべき、と主張。

2005年、メタボリックシンドローム、症候群としての名称、
臨床的実用性の批判的評価を求める独自の共同声明を発表。
2008年、新しいメタボリックシンドロームの定義に関する
検討を開始、ADAが参加しないままで進めることに。

メタボリックシンドロームが、病気ではなく単なる危険因子の
集まりであることを強調。
メタボリックシンドロームの判定は、臨床医と一般の人の関心を
質の高い生活習慣の重要性に向けさせることを意図し、
心臓病や糖尿病の予測因子として使用するものではない。

http://www.m3.com/news/SPECIALTY/2009/10/16/109309/

2009年10月21日水曜日

インテルの技術代表 移籍の意味

(日経 2009-10-01)

9月は日米IT企業で、驚きの人事が相次いだ。
2005年、米グーグルが米マイクロソフトから引き抜いた
華人技術者、カイフー・リー副社長が突然退社。
富士通の野添州旦社長が、病気療養を理由に辞任。

最も衝撃的だったのは、インテルのパット・ゲルシンガー
上級副社長(48)のEMCへの移籍。
30年に渡ってインテル技術陣の先頭に立ってきた同氏は、
技術者主導で成長してきたインテルの社風の象徴。
一時期、次期社長の有力候補の1人。

移籍の理由を、「インテルの経営トップをやりたいと公言、
近い将来にそれが実現しないと分かった」

EMCが用意したポストは、次期トップ含み。
サーバーのCPU(中央演算処理装置)として主流のインテル製
MPU(超小型演算処理装置)の今後の進化の方向性を熟知する
同氏の加入で、EMCの技術開発がより効果的で競争力を増す。

ゲルシンガー氏の天才ぶりは、経歴をみれば歴然。
インテルに入社したのは、18歳だった1979年。
グーグル創業者の2人が会社を興したのが、
大学博士課程在籍中の20歳代半ば。

入社から間もなく、MPUメーカーとしてインテルが
世界的な覇権を確立していく基礎となった
「80286」(82年発売)の設計・開発チームに参加。
85年発売「80386」の設計・開発チームで、中核的な役割。

同モデルは、パソコン用MPUとして初めての32ビットチップで、
マルチタスクを実現。
コンパック・コンピューターがCPUに採用、
パソコンの32ビット化が進み、パソコン用MPUとして
事実上の標準の地位をインテルが確立。

後継モデルの「80486」(89年発売)では、
20歳代半ばで主任設計者(アーキテクト)に。
90年代、パソコン用と共通の設計思想を採用した
サーバー用MPUの開発を主導。
2000年代、チップの回路の微細化が極限まで進んで
漏電と発熱が抑えられなくなり、電力消費と発熱を抑えつつ
MPUの処理能力を高めるマルチコア(複数核)化という、
根本的な技術開発の路線転換を主導。

インテルで初めてのCTO(最高技術責任者)に就任、
一貫して同社の基本的な技術戦略をリード。

童顔の天才に、あだ名は「ウィズ」(魔法使い)。
イチロー選手が、渡米後すぐにシアトルのチームメイトに
つけられたあだ名と同じ。

ゲルシンガー氏は、学歴に関係なく若者に活躍の舞台が
与えられた1980年代までのシリコンバレーも象徴。
アップルのスティーブ・ジョブズ氏、オラクルのラリー・エリソン氏、
20世紀のシリコンバレーを代表するスター経営者はともに大学中退。

インテルは、ロバート・ノイス、ゴードン・ムーア、
アンディー・グローブという理系の博士が創業し、
成長させた高学歴企業だが、
能力で判断するシリコンバレー的気風も強かった。
大学入学前のゲルシンガー氏を口説いて採用したのはその表れ。
同氏は、入社後仕事と学業を両立させ、
85年スタンフォード大で電子工学修士号を得ている。

インテルの現最高経営責任者(CEO)は、
同社創業以来初めての営業系トップとなったポール・オッテリーニ氏。
最有力後継者候補も、営業系のショーン・マローニー氏。
インテルでは、技術者が経営を主導する時代は終わった。

ゲルシンガー氏が、同社でのキャリアに終止符を打つ決断は、
そんな変化が背景。
技術開発を伴う企業の経営にとって、その技術分野が成熟すると、
性能を上げる技術革新が競争力の源泉にならなくなるのが、
「イノベーションのジレンマ」で有名な
クレイトン・クリステンセン・ハーバード大教授の説。

ある程度技術水準が上がると、少々の性能アップでは
消費者にとって、有意差を生まなくなる。
MPUはその典型。
十分高速化し、ITの機能を消費者に提供する主なエンジンは、
端末からネット上のサーバーに。

ゲルシンガー氏の移籍先のEMCは、ネット上のサーバーで
力を発揮する技術分野のリーダー。
インテルは、技術よりマーケティング主導で、成長の突破口を。
今回の人事は、ITの最新トレンドの必然といえそう。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/ittrend/itt091001.html

戦国武将の脳」を語る 秀吉らめぐり対論 健やかわかやま

(2009年10月10日 毎日新聞社)

直木賞作家の津本陽さん(80)と県立医大脳神経外科教授の
板倉徹さん(63)の対論「『戦国武将の脳』を語る」が、
和歌山市友田町5のホテルグランヴィア和歌山であった。

2人の共著「戦国武将の脳」(東洋経済新報社)発売(9月)と、
和歌山放送開局50周年を記念、同社が企画。
企業や行政の関係者約150人が訪れた。

板倉さんが、武将の行動から脳で発達している部分を
スライドで解説。

津本さんは、「大将と足軽に同じくらい危険がある野戦を、
毛利元就は260回、徳川家康は150回くらいやった。
2、3代目になると、野戦経験が乏しく、学問だけで指導するため
現状認識が甘くなった」と経験の重要性を説いた。

対論では、豊臣秀吉について熱弁。
津本さんは、秀吉が通常の2、3倍の速度で軍隊を移動させたとし、
「兵隊をふんどし一丁で走らせ、武器や傷薬、米などは現地で調達。
武器を持っている百姓から時価の3倍で買い取り、人心をつかんだ。
武術より才覚で世渡りした

板倉さんは、「天下統一できたりしたのは、瞬時の判断力。
何事も素早く決定する訓練や運動が判断力を伸ばす。
貧しかった秀吉には選択肢が少なく、自然と鍛えられたのだろう」

和歌山市の電車運転士、田中基也さん(35)は、
「脳のタイプによって、戦国武将の考え方や生き方を
見るのは面白かった。
脳の使い方は、仕事で参考にしたい」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/10/13/108992/

やせ、太りすぎより短命 40歳の余命で6年の差

(2009年10月13日 共同通信社)

40歳の人の平均余命は、肥満度別にみると
「やせ」の人が最も短く、最も長い「太りすぎ」の人より
6年程度短命との研究結果を、
東北大公衆衛生学の研究グループがまとめた。

肥満度は、体重(キロ)を身長(メートル)の2乗で割った
体格指数(BMI)。

研究グループは、世界保健機関(WHO)の基準に基づき、
18・5未満を「やせ」、18・5以上25・0未満を「普通」、
25・0以上30・0未満を「太りすぎ」、30・0以上を「肥満」と分類。

宮城県内の40~79歳の男女約4万4千人を、
1995~2006年まで追跡調査、分析。

40歳の人の肥満度ごとの平均余命は、男女とも順序は同じで、
「太りすぎ」が最長(男性40・5年、女性47・0年)。
「普通」(男性38・7年、女性46・3年)、
「肥満」(男性37・9年、女性44・9年)、
「やせ」(男性33・8年、女性41・1年)の順。

分析した大学院生の永井雅人さんは、
「循環器疾患による死亡リスクは肥満だけでなく、
やせでも上昇するとの報告や、やせでは肺炎など
呼吸器系疾患による死亡リスクが高いとの研究もあり、
そうした影響によるのではないか」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/10/13/109056/

2009年10月20日火曜日

「電気の低炭素化」あいまいな新政権

(日経 2009-10-12)

電機・電子業界は、CO2排出量削減の自主行動計画で、
「生産額あたりのCO2排出量(生産高原単位)を、
2008~12年度平均で1990年度比35%改善する」
07年度時点で、32%だった改善幅は、40%を大幅に超えそう。

世界不況で大規模な減産を強いられ、CO2排出量は減っても、
原単位は悪化するのが一般的。
空調に、大量に電力を使うクリーンルームは、半導体の生産水準に
かかわらず、清浄度を保つため稼働させ続けなければならない。
「固定費みたいなもの」で、温暖化対策の足を引っ張る。

原単位が大幅に改善するのは、電力そのものが「低炭素化」
電機・電子産業では、生産に使うエネルギーの約8割が電力。
使用電力量1キロワット時あたりのCO2排出量の増減に、
企業の排出量は大きく影響。

1キロワット時あたりCO2排出量は、07年度は0.453kg。
08年度は0.444kgだが、電力会社が保有の排出枠を使い、
排出量を大量に相殺(オフセット)し、計算上0.373kgまで下がった。
同じ電力使用量でも、CO2排出量は07年度より17%も少なく、
設備稼働率低下など減産による原単位悪化を帳消しに。

電機大手の環境部門幹部は、「生産ラインの省エネ改善は一巡。
CO2排出量を下げる余地は電力」
電気を低炭素化する方法は、オフセットだけではない。

「化石燃料の枯渇と温暖化の危機を解決するには、
原子力の平和利用が不可欠」
有馬朗人・元東大総長は、「(温暖化ガスの)25%削減は
大変難しい問題。どうやったら実現できるかを考えてほしい」

鳩山政権が、「20年までに90年比25%減」と温暖化ガスの
大幅削減を表明、原子力の位置付けが注目テーマに。

90年比25%削減する場合、20年の発電電力量のうち
新エネルギーが14%(05年は1%)。
太陽光発電の導入量を55倍、発電した電気を固定価格で
全量買い取る制度も創設。

全体を見渡した時の主役は、原子力。
発電電力量に占める割合は、05年31%から20年45%に上昇。
新エネが急拡大しても、原子力の利用拡大がなければ
電力需要を賄えない。

スウェーデンやイタリアに続き、稼働中の原発を段階的に
停止する方針だったドイツでも、原発活用論が再燃、
「脱原発」に、揺り戻しが起きている。

鳩山政権は、原子力に対する姿勢がはっきりしない。
民主党は、政策集で「原子力利用については着実に取り組む」、
連立パートナーの社民党は、「原子力発電からは段階的に撤退」

懸念された不協和音が早くも起きた。
小沢鋭仁環境相が、九州電力の川内原子力発電所3号機の
建設計画に、温暖化ガス削減に最大限活用する意見書を提出。
福島瑞穂消費者・少子化担当相は、原発反対集会に出席、
「脱原子力の動きを強め、日本の政策を変えていこう」

鳩山政権は今後、「25%削減」に向けどんな施策を
積み上げていくか、具体的に国民に示すことに。
原子力の活用度によって、削減策のメニューは大きく変わってくる。
お茶を濁すようなことになれば、大幅削減を打ち出し、
国際舞台で喝采を浴びた「鳩山演説」の鮮烈な印象も、
色あせたものになりかねない。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/tanso/tan091009.html

魚市場活性化へ助成 県、2事業に計2050万円

(岩手日報 10月16日)

県は本年度、魚市場の活性化に向け、
「産地魚市場緊急活性化対策事業費補助」を行う。

2009年度9月補正予算に、2050万円を計上。
地域一体で漁船誘致を行い、本県魚市場へ水揚げを誘導したり、
魚市場の施設機能を適切に維持・更新し品質の競争力強化を
促進することで、水産振興を目指す。

事業は、「漁船誘致対策事業(水揚げ奨励金)」と
「鮮度・衛生管理施設機能維持支援事業」の二つ。
実施期間は10年3月末まで。

漁船誘致対策事業は、県内各魚市場が漁船の船主へ渡す
水揚げ奨励金に対して助成。
サンマ棒受け網漁業、イカ釣り漁業、カツオ一本釣り漁業を
操業する県内外の漁船を対象に、水揚げ金額の0・2%以内を補助。
事業費は1300万円。

鮮度・衛生管理施設機能維持支援事業は、
魚市場の鮮度・衛生管理施設の長寿命化のための補修に対し助成。
対象となる施設は、製氷冷凍設備、魚市場の屋根や床、
鮮度保持タンクなど。
補助率は補修費の10分の3以内、限度額は300万円未満。
事業費は750万円。

県内13魚市場の水揚げ額の合計は、1998年度302億円、
08年度は274億円と減少傾向。
関連する水産加工業の生産量も、98年度の21万2千トン、
07年度は13万9千トンに減少。

県水産振興課の五日市周三漁業調整課長は、
「地域一体となって魚市場を活性化させ、水揚げが増加するよう、
事業を積極的に活用してもらいたい」

http://www.iwate-np.co.jp/economy/e200910/e0910161.html

薬学の国際賞を受賞した東京大教授の杉山雄一さん

(2009年10月14日 共同通信社)

体内に入った薬は血管から細胞に入り、
やがて尿とともに体の外に出て行く。
その動きを、分子レベルで解明した業績が高く評価、
国際薬学連合の「ヘストマドセン・メダル」を受賞。

日本から、星薬科大の永井恒司前学長に次いで2人目。
「受賞者は、特別な存在の方ばかり。
そのメンバーに加わったことがとてもうれしい」と
人懐こい笑顔を浮かべる。

研究への目覚めは遅かった。
高知市の進学校から東京大に入学。
「何のために生きるのかと悩み、講義には出ずに
哲学や心理学の本を読みふけった。悪い学生でした」

本気になったのは大学院時代。
体内で薬がどう動くかを、試験管内で起こる現象を基に、
数学的手法で予測する。
そんな新しい学問に出合った。
「一生をささげるべき研究だと思った。
数学が得意なことも役立ちました」

細胞の表面にあって薬を運ぶ「トランスポーター」という
タンパク質分子を次々と発見。
遺伝子の個人差によって、肝臓のトランスポーターの働きが鈍り、
副作用につながることも解明。

遺伝子操作で作った2種類のトランスポーターを持つ細胞は、
新薬開発の強力な道具として世界に普及。
62歳の今、研究の総仕上げとして、微量の薬の体内での動きを
調べる大規模な研究プロジェクトに取り組む。

多忙な日々の息抜きは、「ラップ」。
「歌が下手でも語れる。気が晴れます」
研究室の若手の結婚式では、Tシャツに着古したジーンズ姿で
ORANGE RANGEの曲を披露することも。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/10/14/109120/

2009年10月19日月曜日

インタビュー・環境戦略を語る:三井住友海上火災保険・秦喜秋会長

(毎日 10月12日)

国内大手損保のうち、アジア展開で先行する
三井住友海上火災保険は、インドネシア・ジャワ島で
熱帯雨林の再生プロジェクトを手がけるほか、
生物多様性の保全に向けた取り組みで国内企業と連携を図るなど、
環境活動を推進。
秦喜秋会長に、狙いと抱負を聞いた。

--熱帯雨林再生プロジェクトとは?

ジャワ島中部のパリヤン野生動物保護林内にある荒れ地
430ヘクタール(東京ドーム約90個分)を、
元の豊かな熱帯雨林に戻す計画。
かつては希少動物のオナガザルが生息していたのに、
97~98年のアジア通貨危機に伴う混乱の際に不法伐採され、
荒れ地に変わり果てた。
今年3月まで4年かけて30万本を植樹、11年までの再生を目指す。

--始めた理由と成果は?

当社は、契約書類などに年8600トンもの紙を使い、
世界の森林に負荷をかけている。
アジアは、当社の国際展開で最も重要な地域なので、
現地の熱帯雨林の再生に協力できないかと考えた。
植林で、森は次第に緑を増し、野鳥29種と昆虫18種と
多様な生物が戻ってきた。
現地の人に植林してもらうことで、森を守る重要性を認識し、
収入源になる果樹も一緒に植え、
住民と森が共存するための工夫も凝らした。

--なぜ生物多様性を重視するのか?

生物多様性は、人間の豊かな生活には不可欠。
人間の勝手な行為で、環境が破壊されれば、
すぐに失われてしまう。
当社は、同じような問題意識を持つ国内企業と
「企業と生物多様性イニシアティブ」(27社)を設立。
情報交換のほか、各社の取り組みを紹介する
シンポジウムの開催などを始めた。

--保険や金融での環境関連の取り組みは?

当社の代理店を務める自動車整備工場で、
エンジン内部のすすを取り除き、燃費を10%以上改善する
「エコ整備」を10年間続けるなど、本業に直接関係する
環境貢献にも積極的に取り組んでいる。
事故車などの修理では、リサイクル部品の活用を進め、
それによるコスト削減効果の一部を、公共施設の太陽光や
風力発電設備設置のために寄付。

--今後の抱負は?

環境への取り組みは本業の一つで、終わりはない。
来年4月、あいおい損害保険、ニッセイ同和損害保険と
経営統合し、収入保険料で日本トップの損保会社になり、
環境面でも統合効果を発揮したい。
生物多様性保全のための取り組みをアジアで続け、
人と動植物が共存できる地球づくりに貢献したい。
==============
◇しん・よしあき

九州大経卒、68年住友海上火災保険(現三井住友海上火災保険)
入社。副社長を経て06年から現職。
三井住友海上グループホールディングス会長を兼務。
大分県出身。63歳。

http://mainichi.jp/select/science/news/20091012ddm008020043000c.html

農業に学ぶ(12)地域活用へ 高大連携

(読売 10月10日)

地域にある学校の連携が、農業活性化のカギに。

教科書をめくっているうちに、授業に耐えられなくなった。
花の流通、品種、原産地、栽培に適した温度――。
「私は高校3年間で、嫌というほど学んだ。
また同じ内容をやっていたら、1年間が基礎で終わってしまう」
2年前の夏、島根県に住む女性(20)は、農業大学校を中退。
入学して半年もたっていなかった。

農業高校で、花の栽培方法の勉強に打ち込んだ。
土や肥料の特性を調べ、校内の花壇をパンジーやサルビアで
彩ったことも。
「花を育てる農家になりたい」という夢を描き、農業大学校に進んだ。

大学校には、普通科の高校を卒業して入ってくる人もいる。
おのずとカリキュラムは基本から始まる。
農業高校で受けた授業と、内容が重なっている部分も多い。

女性は中退後、会社勤務を経て生花店で働き始めた。
「農家になるのは厳しいと言われる。
でも、農業高校と農業大学校の連携があれば、
もっと農家になりやすい環境を作れるのでは」と注文。

農業高校は教育、農業大学校は農政と、
行政の担当が分かれている。
30年前まで、両校の関係者が集まれば、
「大学校は学生を育てていない」、「農業高校はレベルが低い」と、
非難しあう場面も珍しくなかった。
縦割りの関係は続き、今でも、カリキュラムで両校の連携が
進んでいるとは言い難い。
国も連携支援に乗り出したことはあったが、
対象校や期間が限られていた。

高校と大学校の5年間の一貫教育を、独自に模索し始めたところも。
山梨県北西部の北杜市にある専門学校、
山梨県立農業大学校では、今年度から、
県立農林高校の3年生が試験的に授業を受けている。
高校側は、システム園芸科27人の中でも、
特に大学校での勉強を望む生徒6人を送り込む。

高校の授業に出てこない、市場を意識したノウハウを
大学校では伝える。
トマトは少し青いうちに出荷すれば、消費者に届くときには、
ちょうどいい赤色になると教える。

両校は、授業で重複したり不足したりする部分を把握しながら、
一貫教育が可能かを検討。
当初は、「同じ農業を教えているのに、何が違うのか」と悩んだ
農林高校の清水章男教諭(44)。
大学校の現場を歩き、「日本全国で使える技術を教えるのが
農業高校だとしたら、地域の農業を肌で感じて情報を
持っているのが農業大学校。
二つが連携すれば、より地域を活用した農業が展開できる

高齢化、過疎、自給率低下……。
日本の農業を語る時に暗い言葉ばかりが目立つが、
地域には資源と知恵、そして熱意が残されている。
その組み合わせ次第で、可能性は幾通りにも広がっていく。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20091010-OYT8T00275.htm

激減する気仙の人口 2035年には4万人台に2010地域経済総覧

(東海新報 10月15日)

『2010地域経済総覧』が、東洋経済新報社から発行。
市区町村別の将来推計人口(2008年推計)によると、
2035年の気仙の推計人口は、2005年の約7万4千人から
34%も減り、4万人台となる見通し。

人口減少率は県平均を大きく上回っており、
2035年の高齢化率は44%を超す。
超高齢社会の到来が見込まれる一方、その社会を支える
生産年齢人口は、2005年からの30年間でほぼ半減、
三市町の基礎自治体としての存立基盤に深刻な影響。

市区町村別将来推計人口は、厚生労働省の付属機関である
国立社会保障・人口問題研究所が調査。
2008年12月1日現在、全国1805市区町村
(1782市町村と東京23区)の推計人口について、
2005年から2035年までの5年間ごとの人口の推移。

気仙の推計人口は、2005年7万4888人、2015年6万7147人、
2025年5万8200人と推移。
2035年には2005年比34・1%(2万5553人)減の
4万9335人となり、5万人台を割り込む。

市町別の2035年の推計人口は、大船渡市が2005年比33・9%減の
2万8657人、陸前高田市が同32・8%減の1万6613人、
住田町が同40・6%減の4065人。

三市町の減少率は、県平均の24・9%を大きく上回り、
人口減少の加速が顕著。

年齢階級別の推計人口をみると、2005年で9897人だった
気仙の年少人口(0~14歳)は、2035年に4333人となる見込み。
2005年比での減少率は56・2%。
年少人口は、この30年で半分以下に激減し、少子化が急速に進む。

2005年、2万1773人だった気仙の老年人口(65歳以上)は、
2035年に大船渡市1万2186人、陸前高田市7695人、
住田町1904人の計2万1785人になると推計。

気仙の2035年の総人口が、2005年比34・1%減、
老年人口は同0・06%増となる見込み。
2005年、29・1%だった気仙の高齢化率
(総人口に占める老齢人口の割合)は、2035年に44・2%まで上昇。

市町別の2035年の高齢化率は、大船渡市が42・5%、
陸前高田市が46・3%、住田町が51・4%。
住田町は、2035年の老齢人口が2005年比で23・7%減、
総人口の減少がこれを大きく上回るペースで進み、
町民の二人に一人が65歳以上という超高齢社会の到来。

少子高齢化の進展が予想される中、地域社会の中核を担う
生産年齢人口(15~64歳)は、2005年4万3218人、
2015年3万5758人、2025年2万8978人と減少を続け、
2035年には2005年比46・3%減の2万3218人まで減る見通し。

この30間の減少率は、県平均の35・8%を大きく上回り、
労働力不足による経済規模の縮小や税収の減少が
三市町の財政に深刻な影響を与えていく。

年少人口や生産年齢人口の減少は、社会全体の活力低下や
地域コミュニティーの希薄化につながるとの指摘もあり、
三市町には今後、急激な人口減少を見据えた、
基礎自治体としての自立戦略の構築が求められる。

http://www.tohkaishimpo.com/

2009年10月18日日曜日

農業に学ぶ(11)団塊向け実践研修で汗

(読売 10月8日)

新規就農を目指す人たちのため、実践的研修の場がある。

埼玉県農業大学校では、「団塊の世代就農体験研修」。
農場の一角で、思い思いの作業着姿の熟年男女が一団となり、
農作業に汗を流していた。

葉が大きくなったサトイモには、追肥して土寄せ。
ニンジンの畝にも、堆肥をまんべんなくまく。
「身なりも決まっている。すっかり堂に入っている感じだね」、
「土いじりは子どもの時以来。けっこう楽しい」
軽口も飛び交い、和気あいあいの雰囲気。

畝を作る際は、まっすぐになるようひもを張り、
それに沿ってクワを入れる。苗は等間隔に。
講師の鈴木貫司さん(65)は、「基本が肝心。
目分量でいいかげんにやると、それなりの作物しかならない」

近くで農業を営む鈴木さん。
実は6年前、この学校で研修後、就農。
流通関係のサラリーマンだったが、定年後は地域に戻って
農業をやろうと、同校の門をたたいた。
農業に関する情報を得られる利点もあり、
3年前から後進の指導を引き受けている。

団塊の世代を対象にした研修は、3年目。
定年を機に農作業をしようという人が増える見通しが当たり、
春・夏・秋の年3回、各20人の定員に対し、4~5倍の応募。
本格的な農業を目指す人向けの研修でも、
新卒者や転職しようとする若い人の姿が目立ってきた。

農業大学校の目的は、高校を卒業した農家の後継ぎの育成。
同校県民学習部長の田中克典さん(53)は、
「若者の農業離れに悩むこともあったが、
近年は農業に対する関心の高まりで活気が戻ってきた」

「私が作りました。無農薬、無化学肥料でおいしいです」
手書きの看板と共に、色とりどりの野菜が並ぶ。
近所の主婦が詰めかけているのは、東京都目黒区の住宅街に
毎週月曜に開店する八百屋さん。

吉田仁さん(61)が、石岡市で妻と共に栽培し、
車で週末自宅ガレージに運んで販売。約35軒に宅配も。
農地が借りられない、売り先がない、赤字続き……と
苦しい時期を経て、今は年間約450万円を売り上げる。

定年後、何かをしなくちゃならない。
趣味を見つけるのも大変だし、ひきこもりになるのもいやだ」
50代半ば、新聞広告で見つけた農業セミナーを訪ねた。
就農準備校で稲作、野菜栽培を学び、
埼玉県内の農家で1年間住み込み実習。

「私がたどり着いたのは、直売と宅配だが、
課題を乗り越え収入を確保するのは簡単ではない」
就農までの道は、学校で学べる。
軌道に乗るまでの道のりは、各人が切り開かなくてはならない。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20091008-OYT8T00378.htm

夢のエンジンが示す環境技術の底力

(日経 2009-10-05)

石油や石炭の代替エネルギーといえば、
太陽光や風力がまず思い浮かぶ。
将来性のありそうなエネルギー源は、ほかにもある。
工場や車両などからの「排熱」もそのひとつ。

石油や天然ガスなどの1次エネルギーは、約10%が排熱として
そのまま捨てられている。
そこに着目したのが、パナソニックの社内ベンチャー、
eスターの赤沢輝行社長。

工場の排熱からエネルギーを取り出して発電するエンジンと
一連のシステムの事業化をめざし、2005年、eスターを設立。
技術をほぼ確立し、今年6月にパナソニックの
ホームアプライアンス社・奈良工場で、
開発した新しいエンジンの実証実験を始めた。

赤沢氏が開発したエンジンは、200年近く前に原理が
考案されながら世の中に普及してこなかった、
スターリングエンジン

スターリングエンジンは1816年、英国の牧師の
スターリング氏が考えだした。
シリンダーの外部から熱を加え、中の気体を膨張させ、
加熱と冷却を繰り返してピストンを動かす。
理論上、熱効率が高く、多様な熱源が使えるため、
理想的な外燃機関とされた。

「石油と自動車の時代」が到来し、一気にガソリンエンジンが普及。
スターリングエンジンは、世の中からほとんど忘れられた。
熱源の温度差によって発電するので、
セ氏1000度以上の非常に高い温度の燃焼ガスを使うエンジンは
これまでも作ることができたが、工場排熱に多い
セ氏300~500度の熱で発電するエンジンは実用化されないまま。

産業界で出されている排熱は、熱量にして全体の97%が、
セ氏500度以下。
セ氏300度や400度の排熱を、いかに有効活用するかが課題。
それを克服したのが、赤沢社長。

排熱のエネルギーを回転運動に変える際、
エネルギーの損失をできるだけ抑えられるよう、
摩擦や摩耗が少ない構造を考えだした。
どんな機構か簡単にいえば、部品の数を少なくした
「シンプルなメカニズム」(赤沢社長)。

「スコッチヨーク」と呼ばれる機構を独自に改良
摩擦や摩耗を抑えるには、潤滑油などのオイルを使う手が
ありそうだが、オイルが炭化し、機構内部の細かなすき間を
埋めてしまう恐れが。
それを防ぐには、設計を工夫する必要があり、
結局、部品点数が増えてしまってコストも高くなる。

赤沢社長は、オイルを使わずに済む方式を開発し、
「シンプル」で小型化も進めたメカニズムを実現。

赤沢氏は起業前、パナソニックの空調研究所で、
潤滑油を使わないエアコン用コンプレッサー(圧縮機)の
開発に携わっていた。
豊富な蓄積がある技術を、エンジンの「オイルレス」化に生かした。

「排熱回収スターリングエンジン」は、工業炉、ボイラー、
原動機などから出るセ氏300〜650度の排熱を利用して
発電ができる。

発電効率は、セ氏450度の排熱を使った場合で15%。
従来のスターリングエンジンに比べ、部品点数は3割ほど
減らせたと推定、コスト面でも実用レベルに到達。

パナソニックのホームアプライアンス社・奈良工場での
実証実験では、排気ガスの煙道に開発したエンジンを装着し、
500ワットの発電。

今年度中、約5~10キロワットの発電ができる
エンジンを開発する計画。
排熱を再利用して電気をおこし、温暖化ガス排出の削減に
貢献する新設備として、2011年度の商品化をめざす。

鳩山由紀夫首相は、国連の気候変動首脳会合で、
温暖化ガスを2020年までに、1990年を基準とした場合、
25%削減すると表明、国際公約とした。
欧州などから評価された高い目標に、
日本企業の間では反対意見が多い。

長らく夢物語とされてきたスターリングエンジンが、
実用化に向かい始めた動きも。
手の届きそうにない「25%削減」も、日本の環境技術を
結集すれば、けっこう“いける”ような気がする。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/tanso/tan091001.html

スキー飛躍動作をデータ化 県立大が実用化目指す

(岩手日報 10月13日)

地磁気・加速度センサーをスキーのジャンプ選手に装着し、
飛び出す時の動作をデータ化するシステムの開発を
進めている、県立大ソフトウェア情報学部の村田嘉利教授らは、
八幡平市の田山スキー場ジャンプ台でデータ取得の試験を行った。

本格的な試験は初めてで、データを積み重ねて
来年の実用化を目指す。

スキー複合で活躍する同市出身の永井陽一さん(28)と
健弘さん(22)兄弟が、マッチ箱大のセンサーを入れた
ベルトを足首、太もも、腰の3カ所に巻いて飛んだ。

踏み切り位置付近に設置した受信器に、
飛び出しの動作のデータが送られ、
パソコンに3次元の動きがグラフで表示。
ジャンプ後、即時にデータが解析され、表示されるのが特徴。

普段の練習は、ホームカメラでフォームを確認するという
健弘さんは、「センサーを体に付けても、ジャンプに影響は
まったくない。カメラでは分からない微妙な動きが分かり、
実用化できればありがたい」と期待。

今後はデータを積み重ね、正確な測定ができるよう
システムを精査していく。
スタートから着地まで計測距離を長くすることや、
実際のフォームの映像とデータを連動させることも目指す。

村田教授は、「選手の声を聞くと、グラフが実際に
何を示しているのかが分かる。
これからの課題も見えてきた」と手応えをつかむ。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20091013_2

2009年度イグ・ノーベル賞の顔ぶれ

(National Geographic News October 6, 2009)

イグ・ノーベル賞の第19回受賞者を称える授賞式が、
アメリカのハーバード大学で開催。
テロ発生時に人命を救うブラジャー、テキーラから作るダイヤモンド、
パンダの排泄物を利用したゴミ削減策など、
ユーモアあふれた研究内容は今年も多岐にわたっている。

◆ガスマスク・ブラ:公衆衛生賞

エレナ・N・ボドナー氏率いる研究チームは、
緊急時にガスマスクとして使用できるファッショナブルな
ブラジャーを開発。

2つのカップがマスクに早変わりする方式で、
粒子捕集効率の高いHEPAフィルターを採用。
「ブラとしても25秒で着用できるが、緊急時にマスクとして使う場合、
1つ5秒で装着できる。
余ったもう片方は、たった20秒でラッキーな男性の命を
救うことになる」

滑稽な発明だと思うかもしれないが、本人はいたってまじめ。
ウクライナ人のボドナー氏が医学生だった1986年当時、
ソ連のチェルノブイリ原子力発電所で大事故が発生。
そのとき、被害者を助けた経験がこの発明の原点。

◆ウシに優しく:獣医学賞

イギリス・ニューカッスル大学の研究チーム。
名前を付けて育てた牛の方が、名無しの牛より乳の出が
良くなることを証明。

家畜生産学者のピーター・ロウリンソン氏は、
「名前を付ければ愛着が増し、手間を惜しまず世話をする。
ウシのストレスが軽減し、乳の出も良くなる。
1頭に付き、1日当たり1リットルほど増えることが確認、
これだけ増えれば酪農家も助かるだろう」

◆ビール瓶の乱闘:平和賞

スイス・ベルン大学のステファン・ボーリガー氏らは、
ビール瓶で頭部を殴打した場合、実際にはどれほどの
ダメージがあるのか、空き瓶と中身の詰まった瓶で比較調査。

法医学の専門家であるボーリガー氏は、酒場のケンカで
ビール瓶が与えるダメージの程度について、
何度も法廷で意見を求められた。
調査の結果、ハリウッド映画の乱闘シーンよりはるかに
深刻なダメージを与えることが明らかに。
空瓶かどうかに関係なく、ビール瓶で頭部を殴れば
頭蓋骨が骨折する可能性がある。

◆テキーラからダイヤモンド:化学賞

メキシコ国立自治大学、ミゲル・アパティガ氏らは、
テキーラからダイヤモンドを作ることに成功。

低コスト生産が可能で、原料のテキーラも安物で十分。
テキーラが変身するのは、光学機器や電子機器の生産などで
使われる極小のダイヤモンド薄膜で、
ダイヤモンドの指輪ができるわけではない。

◆銀行の膨張と関節鳴らし:経済学賞、医学賞

経済学賞は、アイスランドの4つの銀行の重役たち。
彼らは、小さな国の小銀行が国際的なメガバンクへと
急成長できること、その逆もあり得ることを証明。
国家経済でも、同じ理論が当てはまることを実証し、
それも評価の対象。

医学賞は、カリフォルニア州在住のドナルド・L・アンガー氏。
関節を鳴らすことで関節炎が生じるのか、
60年かけて究明した功績が高く評価。
アンガー氏は、左手の指関節を60年間毎日鳴らし続けたが、
右手の指関節は1度も鳴らさなかった。
いまだどちらの手にも関節炎の症状は出ていない。

◆妊婦のバランス感覚:物理学賞

妊婦はなぜひっくり返らないのか?
キャサリン・K・ウィットカム氏らは、昔からの疑問に答えを出し、
物理学賞を受賞。

女性は、3つの腰椎がくさび形に進化し、
体重のかけ方を変えてバランスを維持できる。
男性には、くさび形の腰椎は2つしかない。
男性の体が出産に向いていない理由は多々あるが、これもその1つ。

◆違反切符、パンダの排泄物、etc.:文学賞、数学賞、生物学賞

アイルランド警察は、“1人”のポーランド人
“プラヴォ・ヤズディ(Prawo Jazdy)”に対し、
50回以上違反切符を書き続け、文学賞を受賞。

ポーランド発行の運転免許証には、「運転免許証」を意味する
ポーランド語「PRAWO JAZDY」が冒頭に表記、
取り締まりに当たったアイルランドの警察官はこれを個人名と誤認し、
ポーランド出身の人物が違反すれば、
誰でもプラヴォ・ヤズディ名で登録し続けた。
警察が真相に気付いたとき、この勘違いが50回を超えていた。

数学賞は、独創的な通貨を採用したジンバブエ準備銀行の
頭取ギデオン・ゴノ氏。
1セント~100兆ジンバブエドルという額面が、非常に幅広い銀行券を
発行、国民の計算能力を世界トップレベル(推定)に押し上げた。

生物学賞は、北里大学大学院医療系研究科の微生物学者、
田口文章氏率いる研究チ―ム。
ジャイアントパンダの排泄物を利用、台所の生ゴミを削減する
画期的な方法を編み出した。

パンダは、その愛らしい見た目からは想像できないほど
大量の糞を排泄するが、その糞には生ゴミを分解する菌が
豊富に含まれている。
排泄されるのは、ほとんどが未消化の笹であるため悪臭もない。
「悪臭で実験が難航せず、良かった」

http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=32405727&expand