2009年10月19日月曜日

農業に学ぶ(12)地域活用へ 高大連携

(読売 10月10日)

地域にある学校の連携が、農業活性化のカギに。

教科書をめくっているうちに、授業に耐えられなくなった。
花の流通、品種、原産地、栽培に適した温度――。
「私は高校3年間で、嫌というほど学んだ。
また同じ内容をやっていたら、1年間が基礎で終わってしまう」
2年前の夏、島根県に住む女性(20)は、農業大学校を中退。
入学して半年もたっていなかった。

農業高校で、花の栽培方法の勉強に打ち込んだ。
土や肥料の特性を調べ、校内の花壇をパンジーやサルビアで
彩ったことも。
「花を育てる農家になりたい」という夢を描き、農業大学校に進んだ。

大学校には、普通科の高校を卒業して入ってくる人もいる。
おのずとカリキュラムは基本から始まる。
農業高校で受けた授業と、内容が重なっている部分も多い。

女性は中退後、会社勤務を経て生花店で働き始めた。
「農家になるのは厳しいと言われる。
でも、農業高校と農業大学校の連携があれば、
もっと農家になりやすい環境を作れるのでは」と注文。

農業高校は教育、農業大学校は農政と、
行政の担当が分かれている。
30年前まで、両校の関係者が集まれば、
「大学校は学生を育てていない」、「農業高校はレベルが低い」と、
非難しあう場面も珍しくなかった。
縦割りの関係は続き、今でも、カリキュラムで両校の連携が
進んでいるとは言い難い。
国も連携支援に乗り出したことはあったが、
対象校や期間が限られていた。

高校と大学校の5年間の一貫教育を、独自に模索し始めたところも。
山梨県北西部の北杜市にある専門学校、
山梨県立農業大学校では、今年度から、
県立農林高校の3年生が試験的に授業を受けている。
高校側は、システム園芸科27人の中でも、
特に大学校での勉強を望む生徒6人を送り込む。

高校の授業に出てこない、市場を意識したノウハウを
大学校では伝える。
トマトは少し青いうちに出荷すれば、消費者に届くときには、
ちょうどいい赤色になると教える。

両校は、授業で重複したり不足したりする部分を把握しながら、
一貫教育が可能かを検討。
当初は、「同じ農業を教えているのに、何が違うのか」と悩んだ
農林高校の清水章男教諭(44)。
大学校の現場を歩き、「日本全国で使える技術を教えるのが
農業高校だとしたら、地域の農業を肌で感じて情報を
持っているのが農業大学校。
二つが連携すれば、より地域を活用した農業が展開できる

高齢化、過疎、自給率低下……。
日本の農業を語る時に暗い言葉ばかりが目立つが、
地域には資源と知恵、そして熱意が残されている。
その組み合わせ次第で、可能性は幾通りにも広がっていく。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20091010-OYT8T00275.htm

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