2009年10月20日火曜日

「電気の低炭素化」あいまいな新政権

(日経 2009-10-12)

電機・電子業界は、CO2排出量削減の自主行動計画で、
「生産額あたりのCO2排出量(生産高原単位)を、
2008~12年度平均で1990年度比35%改善する」
07年度時点で、32%だった改善幅は、40%を大幅に超えそう。

世界不況で大規模な減産を強いられ、CO2排出量は減っても、
原単位は悪化するのが一般的。
空調に、大量に電力を使うクリーンルームは、半導体の生産水準に
かかわらず、清浄度を保つため稼働させ続けなければならない。
「固定費みたいなもの」で、温暖化対策の足を引っ張る。

原単位が大幅に改善するのは、電力そのものが「低炭素化」
電機・電子産業では、生産に使うエネルギーの約8割が電力。
使用電力量1キロワット時あたりのCO2排出量の増減に、
企業の排出量は大きく影響。

1キロワット時あたりCO2排出量は、07年度は0.453kg。
08年度は0.444kgだが、電力会社が保有の排出枠を使い、
排出量を大量に相殺(オフセット)し、計算上0.373kgまで下がった。
同じ電力使用量でも、CO2排出量は07年度より17%も少なく、
設備稼働率低下など減産による原単位悪化を帳消しに。

電機大手の環境部門幹部は、「生産ラインの省エネ改善は一巡。
CO2排出量を下げる余地は電力」
電気を低炭素化する方法は、オフセットだけではない。

「化石燃料の枯渇と温暖化の危機を解決するには、
原子力の平和利用が不可欠」
有馬朗人・元東大総長は、「(温暖化ガスの)25%削減は
大変難しい問題。どうやったら実現できるかを考えてほしい」

鳩山政権が、「20年までに90年比25%減」と温暖化ガスの
大幅削減を表明、原子力の位置付けが注目テーマに。

90年比25%削減する場合、20年の発電電力量のうち
新エネルギーが14%(05年は1%)。
太陽光発電の導入量を55倍、発電した電気を固定価格で
全量買い取る制度も創設。

全体を見渡した時の主役は、原子力。
発電電力量に占める割合は、05年31%から20年45%に上昇。
新エネが急拡大しても、原子力の利用拡大がなければ
電力需要を賄えない。

スウェーデンやイタリアに続き、稼働中の原発を段階的に
停止する方針だったドイツでも、原発活用論が再燃、
「脱原発」に、揺り戻しが起きている。

鳩山政権は、原子力に対する姿勢がはっきりしない。
民主党は、政策集で「原子力利用については着実に取り組む」、
連立パートナーの社民党は、「原子力発電からは段階的に撤退」

懸念された不協和音が早くも起きた。
小沢鋭仁環境相が、九州電力の川内原子力発電所3号機の
建設計画に、温暖化ガス削減に最大限活用する意見書を提出。
福島瑞穂消費者・少子化担当相は、原発反対集会に出席、
「脱原子力の動きを強め、日本の政策を変えていこう」

鳩山政権は今後、「25%削減」に向けどんな施策を
積み上げていくか、具体的に国民に示すことに。
原子力の活用度によって、削減策のメニューは大きく変わってくる。
お茶を濁すようなことになれば、大幅削減を打ち出し、
国際舞台で喝采を浴びた「鳩山演説」の鮮烈な印象も、
色あせたものになりかねない。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/tanso/tan091009.html

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