2010年12月31日金曜日

「減クルマ」でCO2削減40トン 盛岡市など3市

(岩手日報 12月19日)

県公共交通利用推進協議会(会長・達増知事)は、
公共交通の利用推進とCO2排出抑制の取り組み
「減クルマチャレンジウイーク」(10月4~11日)の結果をまとめた。

盛岡、一関、釜石の3市で、1万4592人が参加、
約40トンのCO2を削減。
県は、全域に運動を拡大する方針。

チャレンジウイークは、今年で3年目。
3市で269事業所が参加し、通勤を自家用車から公共交通に切り替えたり、
私生活でのエコ運転や車利用を控えるなどに取り組んだ。

取り組み結果は、車の利用距離で、地球約4・2周分に当たる
16万7124kmを抑制。
1日当たりのCO2削減量は5トン。
参加者は、1年目の5381人から1万4592人まで拡大。
参加者からは、「マイカー生活を見直すことができた」、
「健康にも良く続けたい」などの声があり、意識の高まりを感じさせた。

公共交通が充実していない地域では、運動をどう浸透させるかが課題。
今回、エコ通勤の手段で鉄道・バスを選択した人は、
盛岡が38%だったが一関11%、釜石19%と低かった。
一関市協働推進課の佐藤武生課長補佐は、
「通勤で、公共交通を使うことが難しい地域もある」と現状を語る。

CO2削減の取り組みとともに、公共交通を守る意識の浸透も
求められそうだ。
県地域振興室の野中広治交通課長は、
「チャレンジ参加をきっかけに、公共交通への理解が深まっている。
地道に運動を広めたい」

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20101219_13

小学校受験(7)都市と地方に温度差

(読売 12月25日)

「さあ1分で解くんだよ。スピードを大事に、集中して」。
講師の合図で、子どもたちが一斉に国立の福岡教育大学付属の
入試の模擬試験に取りかかった。
「学習受験社ガゼット」本社のある中央教室(福岡市)の年長コース。
試験を受ける12人の表情は、真剣そのもの。

福岡市と久留米市に3教室を展開する「学習受験社」は、
県内で幼児教室と中学受験塾を開校して約40年。
小学校受験では、県内の国立、私立への合格実績でトップを誇る。
子ども4人に講師1人のきめ細かな指導が特徴で、
講師手作りのプリント教材は年間約3000枚に上る。

県内の小学校受験事情について、同社の上迫純一社長(61)は、
「志望校は、福岡教育大付属の3小学校が人気の上位。
いずれも中学までで、付属中を経て、トップクラスの県立高校、
九州大学へと進学するのが『エリートコース』とされている」

受験準備は、かつて家庭でする場合が多かったが、
「10年余り前から付属小のペーパー試験が難しくなり、
教室通いが目立つようになった。
近年、抽選よりも、先に行われる試験で落とす割合が高くなったことも
拍車をかけている」と、上迫社長。

「付属小」、「私立」、「併願」で1年と2年のコースがあり、
最も多いのは「付属小」の1年コース(週1日2時間~2時間半で、
月額約2万3000~2万6000円)。
県内ではこの数年、私立の西南学院小学校や東明館小学校などが開校、
併願が増えているが、あくまでも第1志望は付属小。

首都圏と関西、北九州以外ではどうか?
全国の小学校受験情報をネットで提供する
「小学校受験総合研究所」の高橋秀幸代表(38)によると、
愛知県や広島県など受験熱が高まってきている地域もあるが、
首都圏のような盛り上がりは見られない。

地方は私立小が少なく、国公立志向が強いため、
小学校受験の中心は国立。
複雑な問題は出されず、倍率も低いため、友だちと外で遊び、
自分で服をたためて、お母さんのお手伝いができれば、
対応できる学校が多い」、高橋代表は解説。

幼児教室で季節感や生活習慣を学び、私立小を目指す。
お受験熱は、都市部特有の現象かもしれない。

◆メモ

学習受験社によると、福岡教育大学付属の3小学校の
2010年度入学の受験倍率は、福岡小(福岡市)が
男子4・7倍、女子4・2倍、小倉小(北九州市)が男子2・8倍、女子1・8倍、
久留米小(久留米市)が男子2・0倍、女子2・2倍。
出願倍率が約9~80倍にもなる都内の国立大付属小と比べ、
大きな開きがある。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20101225-OYT8T00173.htm

2010年12月30日木曜日

小学校受験(6)幼児教室 関西も熱く

(読売 12月24日)

「お箸を使って、赤いおはじきを自分のお皿に入れてください」。
講師の指示に従い、子どもたちが、
「生活習慣」の課題に取り組んでいた。

おはじきを上手につまめなかったり、途中で落としてしまったりしながらも、
時間内にひとつ残らず移し終えた。

幼児教室「伸芽会」の四条河原町教室(京都市)で、
行われた4、5歳児の授業。
3年保育の「年中」だが、来年の私立小学校受験まであと1年となり、
教室では「新年長」として授業がスタートしたばかり。
「これから1年で、様々な実践形式の授業を体験し、
大きく力を伸ばしていく」、教務企画局長の飯田道郎さん(50)。

小学校・幼稚園受験で知られる伸芽会は、1956年設立。
本部は東京都豊島区、首都圏1都3県に26教室、
関西2府1県に3教室、計29教室を運営。
教育理念は、その名の通り幼児の興味の芽を伸ばすこと。
例えば、図形や数量の問題では、折り紙やおはじきで関心を引き、
遊びながら学べるよう工夫する。

年長児コースでは、週2日、「総合」、「志望校別」の2コマ、
計4時間が平均的で、費用は月10万円程度。

そんな東京の幼児教室の老舗が、四条河原町教室の開校で
関西進出を果たしたのは2008年。
今年、大阪市と兵庫県西宮市にも教室を設けた。
以前も大阪市内の教室と業務提携し、指導方法を提供していた
時期があったが、今回は本格的な展開。

背景には、ここ数年、名門私立大の関関同立
(関西大、関西学院大、同志社大、立命館大)の付属小学校が
相次いで開校し、小学受験熱に一気に火が付いたことがある。

中学受験の「浜学園」(本部・西宮市)は05年、未就学児童向けの
「はまキッズ」を開設。
中学・高校・大学受験の「京進」(本部・京都市)も06年、
「京進ぷれわん」を開校し、小学受験指導を始めた。
08年、「教室通いへのニーズが高まり、ノウハウを十分に生かせる」
(飯田さん)と判断した伸芽会が進出。

「関関同立」付属小の開校以前も、一定の小学受験層は存在。
首都圏に比べ、私立小の数が少なく、私立の中高一貫校人気や
公立高校への信頼が高いことなどから、
お受験熱はそれほど高くはなかった。

相次ぐ私立小の開校が、幼児教育への特需をもたらしている。

◆メモ

関西では、2006年の同志社小学校(京都市)と立命館小学校を
手始めに、08年に関西学院初等部(宝塚市)、
今年、関西大学初等部(高槻市)と、名門大学の付属小学校の開校が続いた。
来春、同志社国際学院初等部(木津川市)が開校予定。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20101224-OYT8T00221.htm

三重大など日本人研究、遺伝子2種発見

(2010年12月22日 読売新聞)

三重大は21日、日本人の心筋梗塞発症に関連する
2種類の遺伝子を発見したと発表。

発症の危険性を予測し、個人の遺伝情報に基づいた
個別化予防が期待。

遺伝子を発見したのは、同大生命科学研究支援センターの
山田芳司教授(54)と、理化学研究所などの研究チーム。

日本、韓国両国の計1万7447人分のヒトゲノムの一部を解析し、
「BTN2A1」と「ILF3」の2遺伝子が、日本人の心筋梗塞と
強い関連があることを突き止めた。
心筋梗塞を発症させる遺伝子は人種によって異なり、
20~30の遺伝子が関係。
今回の研究では、韓国人の発症と両遺伝子の関連は見られなかった。

欧米では白人での研究が進み、日本人に関連するとみられる
遺伝子は3種類見つかっている。
山田教授らは、新たに2種類の遺伝子を確認。
山田教授は、「日本人での研究をさらに進め、
治療薬の開発につなげたい」

研究成果は今後、欧州動脈硬化学会誌「アテロスクレローシス」に掲載。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/12/22/130212/

2010年12月29日水曜日

小学校受験(5)工作 自由にさせ、ほめる

(読売 12月23日)

JR国立駅近くにある「チャイルド右脳教育研究会」(国立市)
教室をのぞくと、子どもたちの元気な声が聞こえてきた。
「あっ、崩れちゃうよ」、「きれいに飾ろうね」――。

年長クラス最後の工作の授業で、テーマは「お城」作り。
色画用紙を切ったり、牛乳パックをセロハンテープで
張り付けたりして仕上げていく。
ある男子(6)は、「高い高いの作ったよ。
『よくできました』って、先生やママに言われた」とうれしそう。

チャイルドは、1991年の設立
地元国立市を中心に、年中と年長を合わせて約60人と小規模ながら、
桐朋学園小学校(国立市)や国立学園小学校(同)など、
多摩地区の有名小学校への合格実績で知られる。
授業は工作のほか、運動や行動観察、ペーパー対策の指導を
週に1回(2時間)行っている。
費用は月額約3万円。

指導の特徴は、工作に最も多くの時間を割いていること。
しかも、入試に必要な知識やテクニックを教え込むことはせず、
自由にやらせている。
なぜなのか?

数や言葉などをイメージでとらえる力、つまり右脳を鍛えることが、
受験に必要な創造力や思考力、観察力を育むことにつながる。
その手法として、最も重要なのが工作なのです」、
かつて中学・高校受験塾で数学を教えていた山本寿春代表(62)。

山本代表によると、自発性を尊重して自由にやらせ、
良い点を見つけてほめるのだ。
幼児期に自発的に身につけた力は、小学生になってから
読解力やひらめきといった基礎能力になる。

立川市に住む桐朋学園小2年の女子は、年少の冬から
約1年半通ったお受験教室が合わず、年長の春からチャイルドに移った。
母親(34)は、「前の教室は、成績を上げるために厳しく指導され、
娘を追い込んでしまった。
チャイルドでは、良い点をほめてもらい、
自分で考えて楽しく取り組めるようになった」

白梅学園大学の汐見稔幸学長(63)(育児学、教育人間学)は、
「幼児期に押しつけられて勉強させられると、後に問題を発見、解決する
姿勢が失われるばかりか、自尊感情が損なわれる可能性がある」

詰め込みが過ぎると、学ぶ意欲が低下し、燃え尽きることもある。
受験が過熱するなか、長所をじっくり伸ばす指導が支持を集めている。

◆メモ

首都圏の幼児教室情報をネットで提供する「幼児教育情報センター」
によると、東京など1都3県の小学校受験向けの幼児教室数は、
現在400程度で、大半は中小や個人経営。
1980年代後半から増え始め、90年代半ば以降横ばい。
お受験教室を2、3校かけ持ちするケースが、
数年前から目立ち始めた。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20101223-OYT8T00185.htm

赤ワイン、認知力向上 マウスの脳神経細胞倍増 名古屋市大

(2010年12月19日 毎日新聞社)

赤ワインが、記憶に関わる脳の神経細胞の数を倍増させ、
認知能力を高めることが、岡嶋研二・名古屋市立大大学院教授
(展開医科学)のチームの動物実験で分かった。
白ワインでは効果がなかった。
近く米国の栄養生化学雑誌に発表。

これまで、赤ワインを1日400ml(グラス3杯程度)を飲む人は、
飲まない人に比べ、認知症の症状が表れにくいことが、
フランス・ボルドー大などの疫学調査で分かっていた。

チームは、赤ワインに含まれ、心疾患減少に効果のある
「レスベラトロール」という成分に注目。
マウスに、レスベラトロール含有量の多い赤ワイン0・2mlを毎日、
3週間にわたり飲ませた。

その結果、脳の中で記憶をつかさどる「海馬」と呼ばれる部分の
神経細胞が、飲まないマウスに比べ2倍に増えていた。
迷路でゴールにたどりつく時間も、訓練開始から5日目に、
飲まないマウスに比べ、ほぼ半分になった。
白ワインを飲んだマウスは、飲まないマウスと同じ結果。
効果がどこまで継続するかはこれからの課題だが、
持続して摂取する必要がある。

レスベラトロール濃度が高いのは、
フルボディーや色の濃いタイプの赤ワイン。

岡嶋教授は、「赤ワインの健康効果は、欧州の人々の間で言われてきたが、
やはり科学的な裏付けがあった。
アルコールの過剰な摂取は、肝臓への悪影響もあり、
飲み過ぎないでほしい」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/12/20/130034/

2010年12月28日火曜日

小学校受験(4)国立付属「タフさ」必要

(読売 12月22日)

年長クラスの子どもたちが、テープレコーダーから流れる
「動物村の運動会」の話を2分程度聞いた後、
「お話の記憶」の問題に取り組んでいた。
「動物村の村長さんに○をつけましょう」、
「運動会で一番目に行った競技に○をつけましょう」。
試験官役の講師が質問すると、子どもたちがすばやく答えを書いていく。

「にっけん(日本教育研究所)」(本部・国立市)の仙川教室で、
「国立大付属小学校合格判定テスト」が実施。
ペーパー試験、行動観察、運動、面接など、
計1時間の国立大付属小の入試を想定したテスト。

1972年に設立された「にっけん」は、都内と神奈川県に計7教室を運営、
国立大学付属小の受験対策で定評がある。
ペーパーから絵画・工作や行動観察、運動まで、
バランスよい指導を重視。
年長クラスは週2日、計3時間(2コマ)の授業と月1回のテストを
受けるのが一般的で、費用は月9万円。

国立大付属小は全国に74あるが、多様な子どもを集めることなどから、
多くが入試に抽選を含めている。
このため、都内の東京学芸大付属の4小学校、お茶の水女子大付属小、
筑波大付属小は、軒並み高倍率となっている。
私立小の多い首都圏では、国立が第1志望でも、
私立と併願するケースが多い。

「国立は、大勢を落とさなければならない分、
私立に比べて試験時間が短く、問題が複雑な傾向に。
積極的にきびきびと、自ら考えて行動する力をアピールできるように
指導している」、にっけんの福田菊子・副理事長(67)。

付属小から大半が付属中学校に進むが、
付属高校があっても進学できないことも多く、
大学への優先入学制度もない場合がほとんど。
系列校進学など、進路がある程度決まっている私立と違い、
国立は、各段階で進路選択や受験に向き合わなくてはならない。

抽選に外れて受験すらできなかったり、試験に合格したものの
抽選で外れたり。
親子で落ち込む国立ならではのケースが少なくないため、
にっけんでは親向け相談も充実。
福田副理事長は、「不合格でも、お受験準備は必ず小学校での学びに
生かせると、前向きに考えるようアドバイスしている

「親子ともにタフさが求められる」(福田副理事長)という国立受験。
それでも、教育の質を求め、挑戦者は後を絶たない。

◆メモ

東京都内の国立大学付属小学校は、抽選を試験の前後2回行う場合と、
試験後1回の場合がある。
にっけんの調べでは、2011年度入学の出願倍率は、
東京学芸大付属竹早小が男子76.4倍、女子66.5倍、
お茶の水女子大付属小が男子46.5倍、女子72.0倍、
筑波大付属小が男子30.0倍、女子24.6倍など、かなりの高倍率。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20101222-OYT8T00158.htm

高強度運動、BMI・胴囲・体重の増加抑制、20年調査

(2010年12月17日 JAMA)

文献:Hankinson AL et al. Maintaining a High Physical Activity Level Over 20 Years and Weight Gain. JAMA. 2010;304(23):2603-2610

18~30歳の男女3554人を対象に、
運動強度とBMI・胴囲・体重の変化の関係を、
20年にわたる前向き縦断的研究で調査。

高強度運動群は、低強度運動群に比べ、
BMI・胴囲・体重とも増加量が少なく、
1年あたりの増加量の群間差は、男性で体重2.6kg、胴囲3.1cm、
女性で体重6.1kg、胴囲3.8cmと、女性で顕著な抑制が見られた。

http://www.m3.com/news/THESIS/2010/12/17/10938/

2010年12月27日月曜日

iPS利用、豚で人の膵臓 東大と明治大が計画

(2010年12月20日 共同通信社)

豚の胎児に、人間の人工多能性幹細胞(iPS細胞)を移植し、
この胎児に人間の膵臓を作らせる計画を、
東京大医科学研究所の中内啓光教授と明治大の長嶋比呂志教授らが、
文部科学省の専門委員会で明らかに。

iPS細胞は、さまざまな細胞になる能力があり、
再生医療への応用が期待。
中内教授は、「慎重に研究を進め、将来は人間に移植可能な臓器を作りたい」

計画では、遺伝子操作で生まれつき膵臓ができない豚を利用。
この豚が、母豚の子宮内にいる胎児の段階で、
人間のiPS細胞かiPS細胞から分化させた膵臓の前駆細胞を移植。
もともとは豚の膵臓ができる場所に、人間のiPS細胞由来の膵臓が
できる可能性がある。

細胞は、受精の約40日後に相当する妊娠初期の段階で移植。
この段階は、膵臓ができ始める時期。

中内教授は、膵臓ができないマウスの実験で、
受精卵が分割を繰り返し、胚盤胞という状態になった段階で、
異種の動物であるラットのiPS細胞を注入、
生まれたマウスの体内にラットの膵臓を作ることに成功。

現在の国の指針では、人間の細胞を含む胚を動物の胎内に
移植することは禁止され、人間のiPS細胞を胚盤胞に移植する方法で
膵臓を作ることはできない。
動物の胎児への移植は、指針上は可能。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/12/20/130069/

睡眠不足、健康でも見た目の印象悪い

(2010年12月17日 BMJ)

文献:Axelsson J et al. Beauty sleep: experimental study on the perceived health and attractiveness of sleep deprived people. BMJ. 2010; 341:c6614

18~31歳の健康成人23人の写真を、
一般人65人がVAS(100mm)で評価し、
睡眠不足が見た目の印象に及ぼす影響を調査。

睡眠不足の写真は、十分な睡眠後の写真に比べ、
健康、魅力に関するVASが低く(平均63mm対68mm、同38mm対40mm)、
疲労に関するVASが高い(同53mm対44mm)と評価。

http://www.m3.com/news/THESIS/2010/12/17/10933/

2010年12月26日日曜日

睡眠不足、ダイエット効果を阻害

(2010年12月15日 Ann Intern Med)

文献:Nedeltcheva AV et al. Insufficient Sleep Undermines Dietary Efforts to Reduce Adiposity. Ann Intern Med. 2010;153(7):435-441

喫煙習慣のない肥満成人10人(平均年齢41歳)を対象に、
低カロリーダイエットの効果に対する睡眠不足の影響を、
無作為化クロスオーバー試験で検討。

睡眠不足により、脂肪体重の減少が55%低下し、
除脂肪体重の減少が60%上昇。
ダイエットの効果が損なわれる可能性を指摘。

http://www.m3.com/news/THESIS/2010/12/15/10923/

男女の治療、一律にせず コレステロールを考える/下

(2010年12月17日 毎日新聞社)

佐賀県武雄市の「ニコークリニック」を受診した女性(60)は、
悪玉のLDLコレステロールが212mg/dlと高かった。
日本動脈硬化学会の診断基準では、LDLが140以上の人は
「脂質代謝異常」とされ、医療現場でもコレステロールを下げる薬が
処方される例が少なくない。

同クリニックの田中裕幸院長は、
「閉経後の女性は、一般にLDL値が上がる。
140を超えたからといって、すぐに薬を出すことはしない」。
この女性は他に異常はなく、魚をよく食べ、運動もしていたため、
特に治療はしなかった。

田中院長は、薬を処方しない理由として、
「一般的に女性はLDLが200程度まで上がっても、
心筋梗塞の発症率が増えないという臨床研究報告が多い」

同学会がまとめた、「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」(07年)、
女性における冠動脈疾患の発生率は低く、
女性の高LDLコレステロール血症は、男性以上に他の危険因子の
存在を考慮して管理することが必要」

「他の危険因子」とは、高血圧や糖尿病、喫煙などで、
併せ持つ人ほどリスクは高まる。

田中院長は、コレステロール降下薬を処方するかを判断する際、
頸動脈の「肥厚」(IMT=内膜中膜複合体厚)を調べる。
肥厚は、超音波エコー検査で確認できる。
頸動脈は、動脈硬化を検査しやすい血管で、
体全体の状況も反映する。
厚みが大きく、血管が狭くなっていれば、動脈硬化が進行している表れ。

田中院長は今年4月までに、患者の男女114人(45~69歳)を対象、
LDLの数値と頸動脈の肥厚を調べた。
男性では、LDLが高いと肥厚も厚かったが、
女性では相関が見られなかった。
肥厚と関係していたのは、脂肪酸の一種のアラキドン酸。
「性差を考慮した治療が重要」と、田中院長。

個々の数値ではなく、LDLとHDLの比率が重要だとする見方も。
三井記念病院総合健診センター(千代田区)の山門實所長は、
内外の人間ドック健診データの分析に基づき、
「HDLに対するLDLの割合(LH比)が2・5倍以上だと、
頸動脈の肥厚が厚くなる傾向がある」

悪玉のLDLが正常値でも、善玉のHDLが極端に低ければ、
動脈硬化症のリスクが高まることになる。

「血清コレステロールの管理基準を巡って」と題された公開討論会が、
東京大で開かれた。
日本脂質栄養学会が、「コレステロールが高い方が長生きする」とする
独自のガイドラインを発表したのを受け、
NPO法人「臨床研究適正評価教育機構」が主催。

医療関係者3人が講演した後に討議、会場から意見も募ったが、
脂質栄養学会のガイドラインへの批判の声が多かった。
北野病院(大阪市)の越山裕行・糖尿病内分泌センター長は、
「コレステロールを下げることは有害、という考えは明らかに間違い」
などと語気を強めた。

同NPOの桑島巌理事長(東京都健康長寿医療センター副院長)は、
「高コレステロール血症が、動脈硬化を促す危険因子なのは
多くの疫学調査で明らかで、コレステロールの高い方が長生きと
結論づけるのは危険」としながら、
脂質代謝異常の基準を、男女一律にLDL140以上とすると、
不要な治療を促す要因になりかねない。
女性の更年期以前と以降の基準値も示す必要」

日本脂質栄養学会は近く、反論の声明を出した日本動脈硬化学会に、
質問書を出す予定。
批判が多い今回のガイドラインだが、コレステロール論議に
一石を投じたのも事実。
生活習慣病の治療・予防にかかわり、多くの人が関心を寄せる
コレステロールだけに、今後も徹底した前向きな論議が期待。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/12/17/129956/?portalId=mailmag&mm=MD101217_XXX

2010年12月25日土曜日

強い蚊と苦闘、急成長 インドネシアでフマキラー 「アジアビジネス」

(2010年12月17日 共同通信社)

デング熱やマラリアを媒介する蚊が生息する熱帯の国インドネシアに、
日本の殺虫剤メーカーのフマキラー(東京)が進出して20年。
日本に比べ、殺虫薬への抵抗力が非常に強い蚊に悪戦苦闘しつつも、
地道な営業努力などで主力商品である蚊取り線香の売り上げを伸ばし、
経常利益を5年間で18倍に増やした、という急成長ぶり。

「この国の蚊は、日本より5~10倍も薬への抵抗力があり、
日本向けの蚊取り線香はほとんど効かないことが、
2004年に分かった」とフマキラー・インドネシアの山下修作社長。

05年から、薬剤成分の濃度をコスト的に限界となる他社製品の
2倍まで上げた。
「蚊が強すぎて、消費者が実際に蚊取り線香を使う際、
効力の違いをそれほど体感できない」(山下さん)という壁に。

実際、殺虫効果は高いことを知ってもらうため08年から、
同国で最大の人口を抱えるジャワ島内の田舎の露店を
1軒ずつ地道に回るキャラバンセールを開始。
車両約50台を投入し、住民への試供品などきめ細かい営業を
展開し、コスト削減にも力を入れた。

その結果、同国全体の売上高は急増。
15年、売上高をさらに5倍に増やす野心的計画も立てる。

山下さんは、日本の衛生用品大手メーカーで、
インドネシアなどでの事業を立ち上げた経歴を買われ、
同社退職後の03年にフマキラーに部長職で入社。
インドネシアでの成功を高く評価、09年から同社ナンバー3の
東京本社の専務も兼任する。

人口約2億3千万人のインドネシアでは、
内需主導の経済成長が順調。
平均気温が高く、一年中蚊取り線香の需要もある。

山下さんは、「今後、蚊取り線香すら買えなかった貧困層が
買えるようになる。
今、蚊取り線香を買っている人は、電気蚊取りやスプレーを
買えるようになる。
伸び悩む日本市場に比べ、非常に有望だ」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/12/17/129970/

「高いと長生き」巡り論争 コレステロールを考える/上

(2010年12月16日 毎日新聞社)

日本脂質栄養学会が、「コレステロールは、高い方が長生きする」
とする見解をまとめ、波紋が広がっている。
高コレステロールは、心疾患などにリスクがある、
という従来の医学の常識を覆すもので、反論も相次いでいる。
コレステロールをどう考えるべきか?

◇脂質学会、常識覆す見解/動脈硬化学会は批判

現在の診断基準は、日本動脈硬化学会(北徹理事長)が
07年に定め、悪玉のLDLコレステロールが140mg/dl以上を
脂質代謝異常(高脂血症)とする。
多くの医療現場でこの基準に沿い、
治療や生活改善の指導が行われている。

日本脂質栄養学会は9月、
「長寿のためのコレステロールガイドライン」をまとめた。
学会理事長の浜崎智仁・富山大和漢医薬学総合研究所教授ら
15人で策定委員会を構成。
「総コレステロール値あるいはLDLコレステロール値が高いと、
日本では総死亡率が低い」とした。
全体は14章から成り、高コレステロールの方が
脳卒中を発症しにくいことなども記した。

特徴は、「総死亡率」との関連を重視した点で、
ガイドラインの名称にも、「長寿のための」と冠した。
浜崎教授は、「95年以降に公表された日本の五つの大規模な
臨床試験報告を見ると、40~50歳以上の集団では、
コレステロールが高くても、がんや脳卒中、心臓疾患など
総死亡率は増えていない」

大櫛陽一・東海大医学部教授らが解析した、伊勢原市の
「老人基本健診」受診者約2万2000人の追跡調査(95~06年)。
男性は、LDL140~159の群で総死亡率が最も低く、
女性では180以上で最も低かった。
大櫛教授は、「コレステロールが高めの方が、
肺炎やがんの死亡率が低い傾向にある」

浜崎教授は、「LDL140以上でも、たいていは薬を飲む必要はない」、
現在の診断基準が、「コレステロール降下薬の使い過ぎを促している」
と警告。

日本動脈硬化学会は、反論の声明をホームページに載せた。
日本脂質栄養学会が引用する論文を、
「ほとんどが査読(複数の研究者による検証)を受けた論文ではない」、
コレステロール値と動脈硬化性疾患の発症との関係は、
「多くの科学的検証を経た疫学的論文の一致するところ」と記した。

総死亡率との関連づけも、
「年齢や喫煙、高血圧などの要因を考慮して分析する必要がある」
動脈硬化性疾患の疫学を専門とする三浦克之・滋賀医科大教授は、
「肝臓疾患などでコレステロール値が下がることがあり、
コレステロールと総死亡に因果関係があるとするのは無理」と批判。

日本医師会も異議を唱え、
「高いリスクをもつ家族性高コレステロール血症の患者に、
服薬を中止している例があると聞く」などと憂慮を示した。

論争は、疫学データの選択や統計処理の問題も絡み、複雑化。
厚生労働省生活習慣病対策室も、
「学会同士の学問的な論争。国が何かを言う立場ではない」

日本脂質栄養学会のガイドラインを問題視しながらも、
コレステロールについて、さらなる議論を求める意見も。

日本疫学会のウェブ版で、自治医科大の調査データの解析結果が報告。
92年から男女1万2334人(平均年齢55歳)を対象、
約12年間追跡。
最初の5年間の死亡を除いても、総コレステロール値が
160(LDLだと約80)以下で脳出血、心不全、がんが多かった。

同データを解析した名郷直樹・東京北社会保険病院臨床研修センター長は、
脂質栄養学会のガイドラインを、「大きな問題がある」としながら、
「低コレステロールと死亡には関連がうかがわれる。
コレステロール降下薬の使い方を含め、もっと議論すべき」
………………………………………………………………………………
◇コレステロール

細胞膜やホルモンなどに欠かせない脂質。
肝臓で作られ、食事からも吸収される。
結合するたんぱく質の違いによって、善玉のHDLコレステロールと
悪玉のLDLコレステロールに区別、HDLはLDLを減らす働き。
日本動脈硬化学会は、「LDLが140以上」のほか、
HDLが40未満、中性脂肪が150以上も脂質代謝異常としている。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/12/16/129892/?portalId=mailmag&mm=MD101216_XXX

2010年12月24日金曜日

小学校受験(3)女子校「理念」で選ぶ

(読売 12月18日)

教室に2列に並べられた机に、母親と女の子が向き合い、
色とりどりの薄紙や割り箸を使って、花束を作っていた。
「次はどの色を使おうか?」と母親、
「このピンクがいいなあ」と娘。
一緒に手を動かしながら目と目を合わせ、にこやかに会話をしていた。

「幼児教育実践研究所・こぐま会」本部のある恵比寿本校での
行動観察の授業。
東京女学館小学校(同)を志望する年長クラスで、
入試で行われる「母子活動」に対応したもの。

年長は週2回、「基本」と「志望校別」の授業を1コマ(90分)ずつ、
計2コマ受けるのが平均的。
費用は、月額8万~10万円。
女学館小のクラスは、「志望校別」の3分の1を母子活動にあてている。

講師の桜井紀子さん(57)は、「女子校は、行動観察や面接で
母子関係の良好さを見る傾向が強い。
その意味で、親子一緒に工作や踊りなどを行う母子活動は
象徴的な試験。
出来不出来でなく、話し合い、協力して取り組めるかが問われる」

こぐま会では、1983年の設立以来、小学校での学習にスムーズに
進むための教育に重点を置く。
独自に開発した指導方法で、物に触れたり体を動かしたりしながら、
前後、左右といった位置関係を認識・言語化するなど、
体験を通した学びを行っている。

「発達段階に応じた教育が基本。
小学校受験は、その成果を試すきっかけに過ぎない」と、久野泰可代表(62)。
都内に展開する3校に通う約8割が女子だが、
「会の教育方針に基づいて指導してきた結果、
女子校受験で実績を上げ、女子が多数を占めるようになった」

進路指導担当の広瀬亜利子・第1教務部長(52)は、
「女子校は、求める家庭環境が明確で、
特に母親の教育参加を重視する学校が多い。
本人の性格や親の考え方が合わないと、学び続けることが困難に。
校風や教育理念を理解して、志望校を選ぶよう指導している

長女が女学館小1年の母親(40)(品川区)は、
「一人っ子で大人しく、男の子と一緒に学ぶのは向いていない」と考え、
女子校受験を決めた。
年中の春からこぐま会に通い、10校ほどの説明会に足を運んだ。
女学館にしたのは、「国際理解や伝統文化教育に共感したし、
何よりも学校の雰囲気が娘に合っていると感じたから」

学校選びの原点が、女子校受験で問われている。

◆メモ


こぐま会によると、雙葉小(千代田区)、聖心女子学院初等科(同港区)
などの名門女子校入試では、ペーパー試験や行動観察などのほか、
両親の面接が実施される。
学校の教育方針、校風理解のほか、しつけや家庭教育、
わが子の性格、成長の把握など、母子関係や母親の役割を聞く
ケースが多い。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20101218-OYT8T00172.htm

100歳食 長生きのコツ、五色の食材 食文化史研究家・永山久夫さん、紹介

(2010年12月14日 毎日新聞社)

長生きのコツは、五色の食材。
古くからの郷土の食事を見直し、大いに笑いながら暮らそう--。
食文化史研究家で、西武文理大客員教授の永山久夫さん(78)が、
健康に生きるための食事の重要性を強調し、
自ら考案した「100歳食」を紹介。

永山さんは、同市内の高齢者ら約150人を前に、
健康維持のためにどんな食事が必要かを説明。
「100歳食」を、参加者全員で試食。

五色は、白=エネルギー源になる米、小麦粉、ソバ粉、雑穀、
黄=たんぱく質の大豆、卵黄、乳製品など、
緑=ビタミンCなどで、ホウレンソウ、ニラ、わかめなど、
赤=動物性たんぱく質など、牛、豚肉、ニンジン、
黒=若さを保って体を浄化する黒ゴマ、ナス、こんにゃくなど。

永山さんは、「人口の半分以上を65歳以上が占める限界集落が、
20年後には国中に広がり、日本全体が『限界国家』になる

日本人の平均寿命が男79歳、女86歳に対し、
自立して生活できるとされる「健康寿命」は男72歳、女78歳。
その差の男性7年間、女性8年間に発生する医療費が、
日本の財政を悪化させていると説明、
高齢者の健康が単に個人の問題ではないことを指摘。

誰の世話にもならず健康に暮らしたい、
と願う高齢者の切実さを反映し、聴衆は熱心にメモを取った。
「ストレスが免疫力の大敵」と言う永山さんは、
くよくよと悩んだり生真面目であるよりも、
細かいことにとらわれずよく笑い、
積極的に地域と交わる生き方を推奨。
健康で新たなことに挑戦する“大老人”たれ、と参加者を激励した。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/12/14/129796/

2010年12月23日木曜日

小学校受験(2)働く母のため週末授業

(読売 12月17日)

「今日は、忍者の動きをしましょう。先生をよく見てくださいね」
忍者のお面をかぶった講師が、ゴムひもを跳び、
マットの上で転がってみせる。
その後、4、5歳児が1人ずつ、手本を懸命にまねしてゴールを目指す。

「アンテナ・プレスクール」原宿本校の年中クラスでは、
「指示行動」のグループレッスンが行われていた。

2002年開校、渋谷区内に2校を展開。
首都圏私立小で最難関とされる慶応義塾幼稚舎(同)や
早稲田実業学校初等部の合格実績で、知名度を上げてきた。
両校の11年度入学の出願倍率は10倍を超え、
中でも慶応幼稚舎の女子は20倍に近い。

「アンテナ」の石井至校長(45)は、
「過去問(過去に出された問題)を徹底的に分析し、
短時間で効率的に楽しく受験準備ができるよう工夫している」

「指示行動」や「行動観察」は、5~8人程度のグループで、
絵画・工作は原則、講師と一対一の個人レッスンで行う。
絵画・工作では、慶応幼稚舎や早実初等部対策として、
美術大学出身者が講師を務める。
3年保育の年少の秋から通い、年長は週1回、グループ、
個人レッスンを、各1コマ(50分)の計2コマ受講が多く、
費用は月額10万円程度。

ここの特徴は、働く母親のため、週末の授業を開講していること。
同校に通う子どもの母親の約4割が、フルタイムで働く。
「母親が仕事を持つと、お受験に不利と言われたのは過去のこと。
働く母親の方が時間を合理的に使い、集中できる面もある」と石井校長。
「家でお母さんが、何時間も勉強を見なくてもすむよう、
教室で力がつくようにしている」

大手企業に勤める東京都内の母親(41)は、
現在、早実初等部3年の長男を1年弱、同校に通わせた。
「最初は不安だったが、教室からアドバイスをもらい、
親子で頑張って、志望校に合格することができた。
母親としての自信にもつながった」と振り返る。

子育てや家庭教育に詳しい川島隆太・東北大学教授(51)(脳科学)は、
「今のお母さんは、忙しく、ストレスをためている場合が多いため、
子どもとのかかわりが表面的になっている」
子どもと過ごす時間の長さよりも、中身が重要。
遊びや料理などの共同作業で感動を共有したり、
勉強を見てあげてほめたり、ということを続けていくことが重要」

◆メモ

小学校の入試は、数量・図形や言語などから出題される「ペーパー試験」、
集団行動や遊びから仲間とのコミュニケーションができるかなどを
評価する「行動観察」、洋服をたたむなど身の回りのことができるかを見る
「生活習慣」、絵画・工作、「指示行動」などの運動、面接など。
どれを実施、重視するかなどは、学校によって異なる。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20101217-OYT8T00178.htm

ノーベル賞:化学賞・根岸さんインタビュー 受賞確率1000万分の1、努力で高まる

(毎日 11月28日)

効率よく有機化合物を製造する手法を開発した業績で、
今年のノーベル化学賞に選ばれた
根岸英一・米パデュー大特別教授(75)。

現在、妻すみれさん(73)と帰国。
受賞確率は、「1000万分の1」と分析、
「努力で高められるので、宝くじと違う」と主張。
「人工的な光合成を実現したい」と意欲を示した。

「50年の夢がかなった」。
受賞発表直後、喜びをこう表現した。
渡米した60年秋、日本人受賞者は故湯川秀樹氏のみで、
ノーベル賞は「雲の上の存在」。
後に恩師となった米パデュー大のハーバート・ブラウン博士の
講演を聴き、「この人はノーベル賞をとる」と確信、門戸入り。
予想は、79年に現実となった。
授賞式に同行し、「ノーベル賞が目標として近くなった」と感じた。

20世紀に生きて死んだ人の数と過去の受賞者数から、
ノーベル賞に選ばれる確率は、「1000万分の1」に。
「低過ぎて宝くじに当たるような確率に思えるが、
1000万は10を7回かけ合わせた数。
10人中1位になる経験を、7回繰り返すと考えればいい」と
努力を継続する大切さを強調。

今後の研究テーマとして、「人工的な光合成の実現」を挙げた。
「食料やエネルギー問題の解決になり、地球温暖化対策で
炭酸ガスの排出をなくそうとするのもナンセンスになる。
論理的には可能なはずで、今世紀中にできなかったらおかしい」

ブラウン博士とは、たびたび意見が対立し、
「お前みたいに、自分に反論する日本人は初めて」と言われた。
他の著名研究者の論文の誤りを何度か指摘し、
その正しさが証明されるにつれ、次第に信頼を寄せられるようになった。
若手研究者には、「人のまねから本質的に抜け出すよう、
心がけてほしい」と助言。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2010/11/28/20101128ddm041040055000c.html

2010年12月22日水曜日

小学校受験(1)幼児教室 親も子も成長

(読売 12月16日)

横浜市内の私立小学校入試開始まで1週間に迫った10月中旬、
「ジャック幼児教育研究所」横浜元町教室では、
年長クラスの最終日の授業が行われていた。

大半が、名門私立中学への進学実績で知られる
精華小学校を受験するクラス。
工作の授業で子どもたちは、参観席で保護者が見守る中、
青やオレンジ色のビーズなどをひもに通し、ネックレスを作っていた。

1969年に設立された「ジャック」(本部・世田谷区)は、
都内と神奈川、埼玉の両県に計15教室を展開。
ペーパー試験から運動、面接対策まで各種授業をそろえ、
年長ではそれらを組み合わせた志望校別クラスがメーン。
多くが、週1日3コマ(1コマ50分)か週2日5コマ通い、
月額7万3500円~9万4500円。

ジャック理事の大岡史直・横浜元町教室長(48)は、
子どもに達成感を持たせることを指導の柱。
「努力してできたという実体験を、積ませることが大切。
『お受験』合格だけでなく、小学校以降の学ぶ意欲や自信にもつながる」

小学校受験は、「親の受験」とも言われる。
ジャックでは、父母向けに講座を開くなど、親の「教育」にも力を入れる。
授業参観を求めているのも、その一環。
「入試では、季節の動植物や公衆道徳を問うなど、
かつては家庭でのしつけや体験から自然と身につけていた力を見る
問題も少なくない。
教室が代わりに教えている面もある」と、大岡教室長。

背景には、家庭環境の変化がある。
山田昌弘・中央大学教授(53)(家族社会学)は、
「核家族化や地域のつながりの希薄化が進む中、
母親同士のネットワークもうまく機能しなくなっている」
「家庭教育の術を、お金を払って教室に教えてもらうのも時代の流れ」

現在精華小1年の長男が、ジャックに約2年間通った
横浜市の母親(38)は、家庭で毎日2時間、宿題を見たほか、
絵本の読み聞かせを続けた。
週末は、家族でハイキングや昆虫採集に出掛け、
自然に接するよう努めた。
「教室で学んだおかげで、子育てや家庭教育のあり方を再認識し、
母子ともに成長できた」

首都圏を中心に、小学校受験熱が高まっている。
お受験レッスンはどのように展開され、子どもの成長にどんな影響を
与えるのかを考える。

◆メモ

東京私立初等学校協会によると、東京都内には、
全国の私立小学校の約25%にあたる、54校が集中。
応募者総数(2010年度入学)は1万8451人、
1999年度から2285人(14%)増。
公立校不信のほか、中学受験を避けて子どもの負担を軽くしたい
などの思いもある。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20101216-OYT8T00202.htm

日本のスポーツ政策を考える

(sfen)

◆日本のスポーツ基本法の「現状・今後」について

佐野:中国・広州ではアジア競技大会が開かれている。
日本の総メダル獲得数は、中国に次いで第2位。
金メダルは、韓国に遠く及ばない。
アジアナンバー1のスポーツ大国といわれた日本が、
年月を追うごとに、その面影を失っていくのではないか。

トップアスリートの国際競争力を高めていかなければならない、
一方、真っすぐに走れない子どもがいたり、
でんぐり返しができない子どもがいたりなど、運動能力の欠如も問題。

わが国では、野球やサッカーといった競技スポーツが非常に盛ん。
テレビの視聴率は別にしても、“観るスポーツ”はとても盛んに。
皇居周辺のランナーなど、“するスポーツ”も活発。
一方で、スポーツをするための施設は充分なのか、
きちんと指導する人たちが充分いるのか。
そうした問題も内在している。

12月、FIFAワールドカップの2018年と2022年の開催国が決定。
日本が2022年の開催国に立候補していることを、
日本国民のどれだけの人が認識しているのか?
昨年、2016年夏季オリンピックの開催地として、
東京が立候補していたときと同じような状態になっているのでは。
そういった危惧もある。

今、日本のスポーツ界の現状を挙げたが、若干支離滅裂のような感じ。
この支離滅裂感が、これまでスポーツ政策について、
きちっと対応してこなかったことの証なのではないか。

鍵となるのが、基本法。
基本法というのは、国のスポーツ規定の大本。
基本法を基準にしなければならない。
今日は、スポーツ基本法について先生方にお話を伺いたい。
まずは、諸外国のスポーツ基本法に詳しい筑波大学の齋藤先生に、
専門のフランスを中心に解説していただく。

齋藤 : 私は、フランスのスポーツ法と政策を専門、
諸外国のスポーツ法と政策全体を比較した中で、
何がポイントなのかを解説したい。

一つ目は、『スポーツの理念及びスポーツにおける規範価値に基づく、
スポーツ基本法の制定とスポーツ政策を実施すべき』という点。
このような理念及び規範的価値には、まずスポーツをする、
スポーツに参加する、アクセスする機会を保障すること。
スポーツの自由、スポーツにおける無差別平等、公正、安全、保護
といった観点を中核に、スポーツ基本法の内容を理念に基づいて、
もう一度スポーツ基本法というものを作っていくべき。

2つ目は、『スポーツの定義とスポーツ法及び政策の射程範囲』について。
諸外国と比べ、スポーツの定義や内容は各国で非常に異なるが、
基本的には運動競技だけでなく、身体活動も含めた余暇や
レクリエーションまで、スポーツの定義に含んでいる。
諸外国では、スポーツ基本法及びスポーツ法は、
アメリカのように競技者を中心としたスポーツ法、
フランスのようにスポーツと身体活動を含めてスポーツと定義している
スポーツ基本法、
カナダのように身体活動とスポーツのそれぞれを分けたスポーツ基本法、
という3つの形態に分類。

現代的な傾向として、スポーツの定義が拡大しているので、
身体活動とスポーツの両者をどのように規定し、
いかに政策の対象を組み合わせて両立させることが出来るか、
というのが今後のスポーツ基本法の立法の重要な課題。
わが国のスポーツ政策は、競技スポーツを重点に置いているが、
未組織あるいはレクリエーショナルな身体活動についてまで、
いかにスポーツ基本法の射程範囲を広げて立法できるか、
ということも重要。

3つ目は、『スポーツ基本法の立法論の3類型』。
立法論には、施策型つまり国が定めるトップダウン型の基本法と、
実践型つまり実践者の立場を規定してスポーツ基本法を作る
ボトムアップ型、その混合型も考えられる。

今の日本のスポーツ振興法は、どちらかというと施策型。
国が行うべき内容を規定し、スポーツをする人、支援する団体を
中心とするのであれば、実践型つまりボトムアップ型の
スポーツ基本法の構成を考えることが重要。
一つ目に挙げたスポーツ法の理念を重視した立案と関連する。

4つ目は、これまでスポーツ振興法、自民党スポーツ基本法案、
スポーツ立国戦略などであまり明確でない点、
同時に諸外国と大きく異なる点について説明。
スポーツに参加する人、団体、組織をどのように捉えるか、
いかに定義するかということ。

諸外国では、それらについて厳密に定めながら、
スポーツ政策やスポーツ立法というものを定めている。
National Governing Bodies、Federation、Association、Commission
などの専門用語が存在。
わが国でも、スポーツをする組織を明確に規定しながら、
スポーツ立法政策を進めるべき。
国、地方公共団体を含めたネットワークを、いかに形成していくか。
以上4点を、諸外国のスポーツ基本法の総括。

佐野 : 齋藤先生ありがとうございました。
私は、日本のスポーツ基本法は、立法論の3類型でいうところの
施策型になると思う。
昨年7月、自民党が単独で出したスポーツ基本法案が、
衆議院の解散で廃案、そのことがじっくり審議する機会を設けることに。
スポーツ基本法をあわてて作る必要はない。
日本のスポーツ界について、多様な立場の方たちに発言する、
いい機会になったのではないか。

今年、スポーツ立国戦略ができ、自民党公明党両党による
スポーツ基本法案が継続審議。
わが国のスポーツ基本法がどうなっていくのか、
遠藤さんと鈴木さんにお話を伺いたい。

遠藤 : 4年前、今の鈴木さんと同じポストである文部科学副大臣で、
スポーツ担当をしたが、トリノオリンピックが開催、日本は散々な結果に。
幸い、荒川静香さんが金メダルを獲ったが、
活躍を期待されたほとんどの種目で、思うような結果が残せない。
なぜこうなったのか?
文部科学省の中に、スポーツ振興に関する懇談会を設立、かなり議論をした。
わが国はなぜ、力が落ちたのだろうかと。

韓国や中国が、どんどん力を伸ばしていることがあるが、
日本ではまだ、スポーツは遊びの延長としか見られておらず、
国が責任を持って推し進める、という体制や認識が
定着していないという結論。

昭和36年に制定されたスポーツ振興法を見たが、
プロとアマのスポーツが整理されず、
障害者のスポーツや国際貢献についての記述もない。
スポーツ振興法を基本としながら、法を改正し、
時代に合った法案を作りたい。

スポーツ振興に関係する省庁は、文部科学省、厚生労働省、
経済産業省、国土交通省など、多岐に。
これらを一つにしたスポーツの中核組織を作れないかなどなど、
少なくとも10数回は議論を重ね、報告書をまとめた。
副大臣退任後、その具現化を目指し、さらに検討するため、
自民党内に全ての政党の中で初めてとなるスポーツ立国調査会を設立。

自民党だけでは成立しないし、スポーツは思想や信条を超えるので、
スポーツ振興法改正プロジェクトチームという組織を、
超党派のスポーツ議員連盟の中に設置。
鈴木さんにも入っていただき、1年にわたり議論。

アドバイザリー・ボードとして、体育や、選手の強化、ドーピングなど、
各分野の専門家20名の方々に参加。
自民党と公明党で、スポーツ基本法を取りまとめた。
残念ながら廃案になったが、あらためて修正を加え、
再度今年の6月にスポーツ基本法の法案として国会に提出。
来年、スポーツ振興法ができ、ちょうど50年目の節目の年、
1日でも早く成立させたい。

鈴木 : 遠藤さんとは、超党派のプロジェクトチーム時代から共に活動。
一番仲のいい超党派のメンバー。
民主党の主たる主張は、50年振りにスポーツに関する基本法を作る以上、
齋藤先生が理念を述べられたように、スポーツ権を盛り込むべき。

自民党はトップスポーツ、民主党は地域スポーツを重視していると

いわれるが、これは非常に不毛な議論。
トップを高めようとするなら、裾野を広げなければならない。
裾野を広げようとすれば、トップが活躍できなければならない。

私は15年前頃から、熟議の民主主義を研究のテーマに。
スポーツ政策こそ、国民の皆さんに熟議をしていただくのにふさわしい内容、
基本法ができるのが望ましいのでは。
私は、スポーツ立国戦略をまとめる中、大勢の皆さまと熟議をした。
今後さらにスポーツについての議論を、国民的に深めていただきたい。
文部科学省として、来年の通常国会でスポーツ基本法案を出せるよう、
しっかりと準備を進めている。

基本法ができるまでの過程も重要だが、できた後はもっと大切。
基本法に基づいて、基本計画を策定していくから。
基本計画において、地域に根差したスポーツ環境の拠点となる
総合型地域スポーツクラブを、全国300カ所くらい選定、
そこに引退後のトップアスリートに常駐し、
コーチング、クラブマネージメントをしていただきたいと考えている。
具体的な施策は、基本計画の中で一つひとつ位置付けながら実施。

縦横無尽の強化体制が、トップアスリートの強化に大事。
FIFAワールドカップ南アフリカ大会で、日本は大活躍し、第9位。
選手の心肺機能を高めるため、運動生理学の専門家が協力し、
標高差を乗り越えて十分戦えるようになったことが、要因の一つ。
専門や分野を越えた、縦、横、斜めの協力は、
基本計画においてはより具体的になっていく。

日本のスポーツ政策を、誰が担っていくのかをきちんと議論して
いかなければいけない。
中国や昔のソビエトのように、全部国が担うというのは、
日本ではなかなか難しい。
アメリカのように、民が全部担うパワーがあるかというと、それも難しい。

わが国では、企業が選手をサポートしている例も多いが、
経済状況の中、従来のようなサポートを継続していくのは難しい。
企業、政府、自治体、地域、学校の社会総ぐるみで
担っていく方向に進むべき。
ジュニアやユースといった層をどうするのか、
競技によって競技人口の比率が違うので、
それをどのようにしていくかという議論も深めていく必要。

http://www.ssf.or.jp/sfen/sports_policy/sports_policy1.html

2010年12月21日火曜日

フロンティア:世界を変える研究者/12 前近畿大水産研究所長・熊井英水さん

(毎日 11月30日)

◇試行錯誤のマグロ養殖--熊井英水さん(75)

「うちで生まれたマグロが産卵しました」
02年6月、出張先で受けた電話に、
「間違いないか?隣のいけすから、
タイの卵が流れてきたんじゃないな?」と何度も念を押した。
32年にわたる挑戦が実を結び、世界で初めて
クロマグロの完全養殖に成功した瞬間。

研究所が設立された48年当時、学会では、
「(養殖は)学問でなく技術だ」と批判。
「海を耕す」をモットーに、研究所はヒラメやタイなどの養殖を次々成功。
58年、就職した熊井さんの目は、自然と「海のダイヤ」クロマグロに向いた。

70年に研究が始動。
しかし、マグロの生態はなぞだらけだった。
ある漁師が、「(幼魚の)ヨコワはすぐ死ぬ」と警告したとおり、
ヨコワを1年以上生存させられるようになるまでに5年。
その幼魚が初めて産卵したのは、さらに4年後。
その卵がふ化して育ち、産卵する「完全養殖」を目指したが、
ふ化後47日で全滅した。

成熟を促すビタミンEを餌に混ぜたり、空気銃を使って
ホルモン注射も試してみたが、産卵は途絶えてしまった。
「来年こそ、と期待しては失敗の繰り返し」が続いた94年、
ようやく産卵が再開。
しかし今度は共食いを始め、いけすの網にぶつかって全滅した。

マグロは、水中の酸素を取り込むため、猛スピードで泳ぐ。
調べた結果、進むための尾びれより、ブレーキ役の胸びれや
腹びれの発達が遅いことが分かった。
沿道の車のライトが当たるだけで、パニックを起こして
網に激突することも判明。
「試行錯誤のおかげで、マグロの生態研究が進んだ。
ただでは転びません」

パニック防止に常夜灯を設置し、共食い防止のため、
体長別にいけすを分けるなど工夫した結果、
翌95年以降の卵は、ふ化して生殖能力を持つ大きさまで成長。
完全養殖に大きく前進した。

「近大マグロ」のブランドで04年から出荷し、
07年には養殖業者向けのヨコワ販売をスタート。
今では、全国の養殖用ヨコワの1割に当たる約4万匹を出荷。

海のない長野で育った。
高校2年の時、学校の部活動で三重県・答志島を訪れ、
プランクトンや甲殻類を観察した。
「すべてが珍しく、海に恋した」。これが原点だ。
研究所のマグロは、一匹一匹顔が分かる。
立場上試食する時以外、「愛着がありすぎて」口にしない。

日本の食卓に上るマグロをすべて養殖で賄うのも、
夢ではなくなりつつある。
卵から成魚に育つ確率はまだ0・5%だが、
「将来的に遺伝解析で問題ないと分かれば、自然放流もしたい」
と夢は広がる。
==============
◇くまい・ひでみ

1935年長野県生まれ。58年広島大水畜産学部卒。
91~08年、近畿大水産研究所長。現在は近畿大教授。
専門は水産増殖学。
国の「グローバルCOEプログラム」で、
「クロマグロ等の養殖科学の国際教育研究拠点」リーダーを務める。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2010/11/30/20101130ddm016040033000c.html

岩手っ子、依然ぽっちゃり傾向 11歳男子は全国1位

(岩手日報 12月10日)

文部科学省の2010年度学校保健統計調査で、
本県の子どもは依然肥満傾向であることが明らかに。

小学6年に当たる11歳男子は、肥満傾向児の出現率が
全国1位になるなど、ほぼ全ての年齢で全国平均を超えた。

車での送迎などによる運動不足が原因とみられ、
学校現場でも、スクールバスを途中下車させて歩かせるなど、
「脱ぽっちゃり」へさまざまな取り組みが進む。

調査は今年4~6月、県内の幼稚園児から高校生まで
1万2935人を抽出、発育状態を調べた。
特に顕著なのは、本県の肥満傾向児の出現率。
男子は、5~17歳まですべての年齢で、
女子も、13歳を除くすべての年齢で全国平均を上回る。

11歳男子の出現率は17・93%と、全国平均11・09%を
大きく上回り1位。
この年代の男子は10歳時は13・69%、9歳時は14・72%、
8歳時は15・17%と高めで推移。

小学校男子の出現率は、6歳以外全て全国4位以内に入り、
小学校女子も同2~5位と高い出現率が続いている。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20101210_2

2010年12月20日月曜日

タイム・カプセルトーク2010~宇宙から見つめる私たちの地球~(その2止)

(毎日 12月14日)

◇はやぶさが運んだ玉手箱--
JAXAはやぶさプロジェクト・マネジャー、川口淳一郎さん特別講演

着陸、離陸に完全に成功したと思っていた直後、
探査機上部のエンジンからの燃料漏れが判明。
数日前には、うまく試料を採取できたと思っていたのに、
弾丸を発射した記録がないこともわかった。
探査機の燃料漏れは深刻化、はやぶさは消息を絶ってしまった。

一番恐れたのは、科学技術はリスクばかりで役に立たないと、
宇宙開発のみならず、科学技術全体の信頼を落としかねないこと。

◇「ゴールは地球」

ゴールは地球だ、というプロジェクトチームの信念はゆらぎなかった。
直ちに、はやぶさの救出運用を開始。
士気が下がらないよう、可能性のある方策を求め、
検討会を増やすなどアクションを出し続けた。

はやぶさに指令を送り続けて7週目、はやぶさからの電波を受信時、
担当者さえ「信じられない」思い。
昨年11月、イオンエンジンが寿命を迎え、これで終わりかと思った。
あと4カ月動いてくれれば、地球に帰れる。運命は残酷だと。
中和器とイオン源の連動運転を試みた結果、奇跡的に動き始めた。

06年の段階で、ロケット燃料は空になっていることがわかった。
カプセルを戻そうとすれば、はやぶさはそれを抱いたまま、
地球に突入する軌道に入り、カプセルを切り離した後、
ロケットエンジンを噴射して脱出する。
燃料がない以上、脱出できない。

打ち上げから7年、しつけをし続けた子どものような存在を
失うのは複雑な思い、
はやぶさのゴールはカプセルを地表に戻すことだと
気持ちを切り替え、運用を続けた。

◇驚異的な精度で

今年6月13日、はやぶさは身をていしてカプセルを守り、
自らは故郷の空に輝いて大気に戻っていった。
大気圏再突入から1時間後、ヘリコプターからカプセルを
確認できたとの情報。
発見場所は、予想地点から500m。驚異的な精度。

はやぶさが返してきたのは、
太陽系50億年のタイムカプセル「玉手箱」。

◇支えは高い目的意識

幾多の困難を切り抜ける努力を支えたのは、
ゴールは地球という高い目的意識の共有。
技術より根性。

幸運に助けられ、飛行を続けることができたが、
ハイリスクハイリターンの活動を締めくくるには、
運を実力に変えて定着させることが必要。
はやぶさの後継機で、この技術を定着させたい。
高い塔を建ててみなければ、新たな水平線は見えてこない。
一歩高いところを目指して背伸びをする。
若い人には、むちゃをしてでも挑戦し続けてほしい。
==============
◇取り出したこうじ菌で日本酒

元村 (2号機の)2000年の最初の開封では完璧な状態。
保存技術の素晴らしさについて、
開封を担当された大村さん、いかがですか?

大村 1号機は地下15m、2号機は9mのところに埋められている。
カプセルの中には29の容器があり、ビス留めされ、
それを開けるためのドライバーがセットされ、
5000年後の人たちへの気配りを感じた。
気圧や湿度を保つ技術など、当時の技術者の誇りと威信が
かかっているようで、感心しながら一つ一つ開けた。

元村 「はやぶさ」との共通点は?

川口 ターゲットマーカー(着地のための目印として、
イトカワに投下されたソフトボール大のアルミ球体)。
世界から集まった88万人の署名が記録。
誰も盗みには来ないが(笑い)。
しかも、半永久ではない。
地球に近づく小惑星は、地球にぶつかって運命を終える。
だいたい1億年後か。

人類は、地球を防衛するために小惑星へ向かう。
1億年とどまるタイムカプセル。
はやぶさが持ち帰ったカプセル本体の裏側には、紙が張ってある。
カプセル担当のグループが、自分たちの名前を張っていた。
私は、はやぶさが持ち帰って初めて知ったが、
これは7年ぶりに開封されたタイムカプセル。うらやましく思った。

元村 2000年に開封、再埋設した時の裏話は?

大村 入れられていたこうじ菌で、日本酒を作った。
マツも発芽し、松下電器の歴史館の前などで育っている。

八木 日本酒を入れたかったが、結局できず、作り方の文書を入れた。
偽札も入れた。
大阪府警からもらった本物(笑い)。
記者たちはブツブツ言いながらも、面白がって集めた。

元村 収納品を5000年後に見た人は、何を思うか?

吉田 2000年開封時、1970年生まれの学生たちにアンケート。
30年しかたっていないのに、分からないものがいくつかあった。
「国電」、「米穀通帳」、「平凡パンチ」。
考古学者の立場からもシミュレーションしてもらった。
最大の問題は、カプセルの内容と埋設場所の大阪城に関係がないこと。
考古学者は、(遺物が見つかった)場所によっていろいろ考えるから、
解釈が困難になる(笑い)。

◇「文明の転換点」をも伝える

元村 タイムカプセルを今作るとしたら、5000年後に向け何を入れるか?

川口 5000年後、天文現象で顕著なのは地軸の変動。
現在の星図など、記録すべきこと。

吉田 今の大阪の生活の縮図を作ってみたい。
私の目から見たミクロコスモス(小宇宙)を作り封入してみたい。

大村 土と水と空気を入れたい。
1970年にタイムカプセルを作った人は完璧だ、と次の開封の
100年後に伝え、「100年後もよろしくお願いします」と言いたい。

八木 この40年の経過で入れなきゃいけないのは、携帯電話。
環境問題の高まりは70年以降のこと、
(EXPO’70のタイムカプセルに)環境問題のデータが入っていない。

元村 はやぶさが持ち帰ったカプセルは、46億年前にできた
太陽系の記録を残した微粒子が入っていた点で、まさにタイムカプセル。

川口 おっしゃる通り。

元村 5000年後の宇宙、地球、人類はどうなっているか?

八木 5000年後の人がカプセルを開け、首をかしげる様子を
思うとおかしくて。
トイレットペーパーが、何の説明もなしに入っている。
ぐるぐるほどいてみても、何も書いてない。
京都市の職業別電話帳も入っている。
京都の職業が日本一多いだろうという理由。

大村 70年当時、生駒山から眺めたら大阪城は、スモッグで見えなかった。
70年は、環境問題の重要性に気づき、行動を起こし始めた年、
そして実を結びつつあった転換点だったと分かってもらえる。

吉田 我々は、文明の大きな転換点に立っている。
中心とされる側が、周縁とされる側を一方的に支配した時代は終わり、
双方向の接触と交錯が起こっている。
5000年後、2000年前後は、力学の転換点だったと見えるのでは。

川口 宇宙飛行を考える時、すぐ直面する壁が人間の寿命。
数百年、数千年先、人類は、信じられない領域の活動をしている。
5000年は、その時代(数百年後、数千年後)には
「長いスケール」と言っているのかどうか。

大阪万博のタイムカプセルの一つは、100年ごとに開封。
ある面、将来の人類を当てにせず、自己完結している。
将来を当てにしていいと考えるなら、ピラミッドで言えば
第何王朝というように、タイムカプセル第何王朝、
そういう連鎖的な活動が存在し得る。
5000年伝えるなら、100年ごとに作ってもせいぜい50個、
タイムカプセル50王朝。

元村 はやぶさのドラマを通し、夢を見ることは大切だな、
夢を見させてくれる何かがあるって幸せだな、と皆さん感じた。
タイムカプセルも、大きな夢を見せてくれる、
人類共通の財産として伝えたい。
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◇トーク参加者

毎日新聞客員編集委員・八木亜夫さん/
元松下テクノリサーチ取締役・大村卓一さん/
国立民族学博物館教授・吉田憲司さん/
宇宙航空研究開発機構教授・川口淳一郎さん/
毎日新聞科学環境部・元村有希子副部長
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◇ネットでも反響

イベントは、インターネット「ユーストリーム」で生中継、
1万1791人が視聴。
視聴を中断、再視聴した人を含めると2万679人、
延べ視聴時間は1865時間、高い関心を集めた。
視聴者からの反響は、イベント進行とともにツイッターで寄せられた。
「日本がものづくりにいちずに取り組み、輝いていた時代」、
「タイムマシンがあったら、当時に行ってみたい」、
「(はやぶさは)諦めず、可能性にかける姿勢がすごい!」、
中継終了までに約900件。
==============
◇伊藤芳明・毎日新聞社常務取締役大阪本社代表

記録ビデオを見て、改めてすごいプロジェクトだと感心。
5000年という時間軸でとらえたこと。
文明発祥が5000年前、5000年後なら今が、人類文明史のまん中にあたり、
どんな技術があったかを記録する貴重な資料に。

我々は小粒になっていないか?
5000年という夢のある発想を、次の世代に伝えていきたい。

◇大澤英俊・パナソニック株式会社役員、コーポレートコミュニケーション本部長

「タイム・カプセルEXPO’70」は、当社の創業50周年(68年)記念事業の
一つとして実施。
人類がどのような文化を創造し、未来への理想を掲げ、
生活していたか、5000年後へ残すという夢のあるプロジェクト。
創業者、松下幸之助も、著作の中で熱い思いを書いている。
タイムカプセルへの理解を深め、サポーターとして温かく
見守っていただきたい。
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◇やぎ・つぎお

1934年、大阪府出身。同志社大卒。
毎日新聞大阪本社学芸部長、編集局次長などを歴任。
万博取材班キャップ、タイムカプセルにも企画段階から携わった。
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◇おおむら・たくいち

1945年、広島県出身。70年、広島大大学院(応用化学専攻)修了、
松下電器産業入社。2000年、1回目のタイムカプセル開封・点検を指揮。
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◇よしだ・けんじ

1955年、京都府出身。京大文学部卒、阪大大学院修了。
国立民族学博物館教授、総合研究大学院大学教授。
文化人類学、博物館人類学専攻。
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◇かわぐち・じゅんいちろう

1955年、青森県出身。京大工学部卒、83年東大大学院修了、
旧文部省宇宙科学研究所へ。
JAXA教授、はやぶさプロジェクト・マネジャー。
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◇もとむら・ゆきこ

1966年、福岡県出身。九州大卒。
ノーベル賞や科学技術政策などを取材。
連載「理系白書」報道で、06年日本科学ジャーナリスト大賞受賞。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2010/12/14/20101214ddm010040071000c.html

三陸地質の魅力確認 宮古地域でセミナー・見学会

(岩手日報 12月9日)  

いわて三陸地質・地形セミナー&現地見学会
(県、浄土ケ浜ビジターセンター主催)が行われた。

参加者は、岩泉町のモシリュウ化石発掘現場や
洋上から田野畑村の断崖の地層を見学し、
地球が刻んだダイナミックな歴史を学んだ。
本県沿岸地域の地質資源を生かした
「ジオパーク」(地質遺産)認定に向け、弾みをつけた。

現地見学会には、宮古市などから13人が参加。
北上山地(北上高地)を中心とする古生代から中生代の研究、
古生物のアンモナイトとオウムガイ研究で、
国内第一人者の永広昌之東北大名誉教授が現地で解説を行った。

岩泉町小本では、約1億1千万年前の地層から、
国内で初めて発見された白亜紀の恐竜「モシリュウ」の
化石発掘現場や小本層植物化石産地を見学。

1億2千万から1億3千万年ほど前の植物化石産地で、
参加者が現場の石を手に取り、シダ類とみられる植物の化石を見つけた。
地元の小本中の生徒も、見学に加わった。

田野畑村では、サッパ船に乗り込み、ハイペ・コイコロベ化石産地などを
洋上から観察し、海岸段丘の成り立ちを学んだ。

県は、いわて三陸ジオパーク研究会を立ち上げるなど、
「世界ジオパーク」認定も視野に、地質資源の活用を摸索。
セミナーと見学会は初めての開催、宮古市の浄土ケ浜ビジターセンターで
セミナーが行われた。

同研究会委員も務める永広名誉教授は、
宮古-田野畑間の地質資源について、
「白亜紀前期の地質の激しい構造運動が見られる地域」とし、
本県沿岸の地質資源については、
「日本列島の中でも、特に古い地層も見られ、国内で一番大切な地域」

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20101209_9

2010年12月19日日曜日

総合学習を生かす(15)テーマ 地域に必ずある

(読売 12月15日)

今回、効果的な総合学習を行っている全国各地の実践を報告。
探究的な学びの場として、より良い総合学習を進めていくには
どうしたらよいか?
日本生活科・総合的学習教育学会の嶋野道弘会長
(文教大学教育学部教授)に話を聞いた。

――総合学習の授業を視察して感じることは何か?

総合学習についての認識は、学校間でかなりの温度差がある。
受け身ではなく、探究的な学習などを通して、主体的に考えさせる
授業を行って、学力を向上させた学校もある一方、
いまだに知識を覚えさせることだけに力を注ぐ学校もある」

総合学習は、知識を活用して問題を解決する思考力や判断力、
表現力など、生きていく上で必要な能力を育成する場。
各学校には、万難を排して取り組む姿勢が必要。
体験や調べ学習をして発表する、といった形だけの学びになっていないか、
教師たちはもう一度、総合学習の意義を見つめ直してほしい」

――総合学習で身に着く能力は見えにくい。

子どもをよく見てほしい。『人間力』が高まっている。
人ごとではなく、自分のこととして社会を考える厚みのある人間に育っている。
小学生であっても、さびれた地域を活性化するにはどうしたらいいか、
自分たちにできることは何かなど、
様々な情報や知識を得て意見を言い、行動する」

――とはいえ、学習テーマに悩む学校も多い。

総合学習を通して、どんな子どもを育てたいか。
学校や教師側に、その目標が定まっていれば、テーマは地域に必ずあり、
知識を詰め込むだけの学習にもならないはずだ。
東京都墨田区のある小学校では、『伝統』というテーマで
地域の花火大会を調べた。
戦争などで過去に2度中断され、復活されたと分かった。
子どもたちは、伝統とは『単に昔からあるものではなく、
なくなりそうになりながらも今に続くもの』と新たに考えた。
裏で支える地域の人々の存在も知り、
『伝統をなくさない人になりたい』と、自己の生き方につながる学びになった」

――教師に必要な視点は何か?

「算数のテストの答えは一つかもしれないが、
世の中には答えが一つでない問題が多い。
『なぜ働かなければならないのか』、『なぜ学ぶのか』など、
一人一人の答えがあっていい。
総合学習では、子ども同士で様々な角度から考え、
課題にぶつかって再び考える、という繰り返し。
その中で考える力が養われ、自ら学び続ける人にもなれる。
子どもが、自分なりの答えを出した過程も大切にして、
学びを深める努力をしてほしい

◇しまの・みちひろ

専門は総合学習教育。公立小学校教諭、
文部科学省主任視学官などを経て、現在は文教大学教授。64歳。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20101215-OYT8T00190.htm

魅力向上へ農家が知恵 花巻のグリーンツーリズム

(岩手日報 12月9日)

花巻市のグリーンツーリズム受け入れ農家を対象とした研修会
(はなまきグリーン・ツーリズム推進協議会など主催)は、
湯本のホテルで開かれた。
同市の受け入れ実績は近年、他地域との競合を背景に減少傾向。
受け入れ農家の意欲は高く、地域活性化にもつながる取り組みだけに、
花巻の魅力、特色の発信が課題。

同協議会は市や県、農協、観光協会、受け入れ農家の会の
代表者らで組織。
研修会は年1回で、今回は農業者約30人を含む約50人が参加、
意見交換や衛生講習会に励んだ。

同市のグリーンツーリズムは、全国の小・中・高校生が教育旅行として
農山村生活を体験するのがメーン。
本年度の教育旅行は、市内農家延べ466戸が、
日帰りと宿泊付きを合わせ、児童生徒計1976人を受け入れた。

学校の所在地域は、北は北海道から南は大阪府に及んだ。
教育旅行は近年、受け入れ要請が減っており、
本年度の受け入れ者数は、ピークだった2007年度(3034人)に比べ、
1千人超の減。
特に、宿泊付きが減っている。

受け入れ数減少の背景には、県内外の他都市や沿岸部との競合や
高齢化、介護などによる受け入れ農家の確保難が挙げられる。

同日の意見交換は、参加者から「別れるときは、
子どもたちが涙を流してくれ、やって良かったと感じる」、
「農産物を一生懸命に作っていることが伝わると、
嫌いなものでも食べてくれる」など、
充実した交流の様子が数多く報告。

同協議会長の菊池俊雄花巻農協生活福祉部長は、
「花巻の農業、観光、文化をマッチングし、
地域そのものをPRしていく必要がある」

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20101209_11

2010年12月18日土曜日

タイム・カプセルトーク2010~宇宙から見つめる私たちの地球~(その1)

(毎日 12月14日)

◇EXPO’70のロマン 5000年後への贈り物

1970年、日本万国博覧会(大阪万博)に合わせ、
毎日新聞社とパナソニック(旧松下電器産業)が、
「タイム・カプセルEXPO’70」を企画・製作し、
大阪城公園に埋設してから40年。

その記念事業「タイム・カプセルトーク2010~宇宙から見つめる
私たちの地球~」が、松下IMPホールで開かれた。
トークでは、事業に携わった主役たちが尽きない夢とロマンを語り合った。

特別講演講師の川口淳一郎・宇宙航空研究開発機構(JAXA)教授は、
偉業となった小惑星探査機「はやぶさ」プロジェクトの
苦難の足跡をユーモアたっぷりに語り、会場を沸かせた。
カプセルの次回開封は2100年で、最終開封は6970年。

◇2098点を収納、大阪城公園に埋設

大阪万博当時の記録ビデオ
「5000年に挑むタイム・カプセルEXPO’70」が上映。
71年、大阪城公園に埋設されたカプセルは、
同じものを収納した1、2号機からなる。
内径1m、50万立方センチ容量の特殊ステンレス製。

1号機は5000年保管、2号機は2000年と以後100年ごとに開封。
「技術委員会」に日本を代表する23人の学者、
「選定委員会」には自然科学、社会、芸術分野の学者、
専門家27人が選ばれた。
36カ国632人の有識者アンケート、国内から12万件の提案を受け、
収納品は2098点に絞り込まれた。

ビデオは、いずみたくさんの力強い音楽で進み、
小林清志さんのナレーションでこう結ばれた。
「世界平和の永遠なることを願い、未来に旅立って行きました」
==============
◇太陽の塔、月の石、最初の人工衛星……

元村 1970年の大阪万博の開催当時、何をしていたか?

川口 中学3年生だった。万博には行ってないが、
印象に一番強く残ったのは、岡本太郎さんの太陽の塔と月の石。
69年、アポロの月着陸の実況中継を見た翌年で、
「これがアメリカだ」という時代。
70年が印象深いのは、日本の最初の人工衛星がやっと飛んだこと。

元村 当時から宇宙に関心を?

川口 関心はずっと持っていたが、78年に大学院に進むとき、
初めて宇宙をさわってみようと思った。
81年、最初のスペースシャトルが飛ぶと予告され、
ロケットが消えると言われていた。
日本の宇宙開発は、とんでもなく遅れていたが、
研究するなら最後のチャンスだと思った。

吉田 私も中学3年生。ボーイスカウトに入り、
(万博会場内の)お祭り広場で、手旗信号ショーに出演。
会場の跡地にできた国立民族学博物館(民博)で働いているのは、
不思議な縁。
私の研究のベースは、文化人類学。
アフリカで30年来フィールドワークをしてきて、
アフリカの古い資料を見ておきたいと、
90年にロンドンの大英博物館に客員研究員で行った。
圧倒的な収蔵物を見て、「人間はどうして物を集めるんだろう」という
素朴な疑問がわき、博物館学を研究するようになった。

元村 吉田さんは、国際タイムカプセル学会のメンバー。

吉田 大英博物館で、ブライアン・ダランズという、
当時、民族誌部門の副部長が、タイムカプセルの研究をしていると。
「けったいなやっちゃなー」と思ったが、タイムカプセルは未来の観客を
想定した博物館。
学会は、私が5人目の会員。
その学会を基盤に、タイム・カプセルEXPO’70の2号機を開封した
2000年に国際シンポジウムを民博で開いた。
タイムカプセルをテーマにした唯一の国際シンポ。

大村 大学を卒業して会社に入った年。
35年間、ずっと(部品や装置の)分析をやった。
当時、半導体が脚光を浴び、カラーテレビがIC化された頃。
エアコン(クーラー)が世の中に出始め、それから自動車。
「3C」と言われた時代。
分析も、いろんな面で役に立った。

八木 万博の取材班キャップで、1年半ほど前に担当に。
タイムカプセルも(デスクに)、「早く取材して書け」と言われたけど、
「(開封は)5000年後って、ふざけたことを言うな」と(笑い)。
ぶつぶつ言いながら通ううちに、のめりこんで愛着が。
カプセルはお釜みたいな形で、仲間内では「釜」と呼んでいた。
「きょうは、あんたどこへ行くんや」と聞かれ、
「釜の委員会や」(笑い)。
実行委員の最末端に名前を連ね、36歳で一番若い委員。

元村 各国の著名人へのアンケートと、公募で集まった12万点もの
候補の中から、どうやって2098点の収納品を選んだのか?

八木 選定委員会を作って、自然科学、社会、芸術の三つの委員会に
分かれて、そりゃ大変だった。
一番印象に残っているのは、「人間の精子を入れろ」と。
それを検討する委員会で、茅(誠司・当時の日本学術振興会会長)先生は
「俺は自信ない」と(笑い)。
ふと顔を上げたら、みんながぼくの顔を見てる。
「あれが一番若い」言うて。
でも、膨大な装置が必要だということになって、ぱあになった。

元村 埋設場所が決まるまでに、議論があったのか?

八木 最初は、宇宙空間に飛び出せとか。
当時は開発ブームで、変なところに埋めたら掘り返されてしまうと。
(歴史家の)奈良本辰也先生がおっしゃったのが、
「史跡が一番いい」と。
それで大阪城公園がええじゃないかとなった。
大阪市経済局が管理していて、交渉は難儀した。

元村 この事業にいくらかかったのか?
ずっと秘密だったらしいが、八木さんだったら教えてくれるかなと。

八木 松下電器さんははっきり言わない。
半分冗談で換算してみると、今の貨幣価値で50億円くらい。
今作るとしたら、とても蓮舫さんは承知してくれませんわな(笑い)。

元村 究極のメセナ(企業の芸術文化支援活動)。
EXPO’70の後、タイムカプセルのブームが起きたと聞くが。

吉田 小学校の卒業式で埋めたものまで含めると、
日本は世界最大のタイムカプセル大国(笑い)。

元村 外国では、タイムカプセルはメジャーではないのか?

吉田 タイムカプセルという言葉は、1938年から39年にかけて
開かれたニューヨーク万博で初めて登場。
総合電機会社のウェスティングハウス社が、タイムカプセルと名づけ、
開封時期は6938年を想定、地下に埋めたのが始まり。

これには先行モデルがあった。
1936年、実質的に世界で最初のタイムカプセルと言われるのが、
米国アトランタのオグルトープ大学に設けられた「文明の地下室」。
当時、大学の理事だったソンウェル・ジェイコブズの発案、
25mプールぐらいの大きさ。
マイクロフィルム化された資料やニュース映画、ドナルドダックの人形
などが納められ、8113年まで開封されないことに。
エジプト暦ができたとされるBC4241年から、
地下室を設けるまでの6177年と、同じ年数が経過した時点として算出。

ジェイコブズが発想したのは、関東大震災が契機。
直後、ウェスティングハウス社がカプセルを作った。
背景には、関東大震災と、第一次世界大戦を経験し、
世界全体の破滅への予感というものが具体的に感じられた。

70年万博のタイムカプセルのすごいところは、
保存技術と開封のシステム。
カプセルが二つあり、一つは100年ごとに開ける。
100年なら何とか、埋まっていることも記憶されているだろうと。
今もって、最も遠い未来まで実際に保存できる可能性を持った
唯一のタイムカプセル、タイムカプセル史に残る金字塔だ。
=============
◇背伸びしてつかんだ夢
--JAXAはやぶさプロジェクト・マネジャー、川口淳一郎さん特別講演

はやぶさについて11月16日、イトカワ起源の1500個の微粒子を
発見したと発表。
アルミニウム粒子と一緒に見つかったかんらん石や輝石が、
イトカワ起源の地球外物質と確認された。
太陽系や地球の起源を解く手がかりになる、画期的な成果。

はやぶさは03年に打ち上げられ、05年9月イトカワに着いた。
滞在の間に5回、表面に向け高度を下げ、最後の2回は着陸し、
試料採取を試みた。
07年6月、帰還予定だが、燃料漏れが起き、3年間延期した。

目指したのは、目的地から試料を持ち帰る
「サンプルリターン」技術の実証。
サンプルリターンには、(1)イオンエンジン、(2)ロボット機能、
(3)試料の採取方法、(4)カプセルの技術、(5)スイングバイ
(地球の重力で軌道の方向を変える技術)の5大技術要素。

はやぶさ本体の下には、試料を採取するための筒が付いて、
弾丸を撃ち、跳ね返ってきた破片を受け止める仕組み。
採取できれば、兵庫県の「スプリング8(大型放射光施設)」など、
大掛かりな装置で分析でき、保管しておけば、
50年後に最新技術で再分析できる。
そのために必要なのが5大要素。

小惑星サンプルリターン計画は、25年前から目指していた。
わが国初の人工衛星が上がった70年に開かれた大阪万博の目玉は、
前年にアポロが採取した月の石、すごいギャップ。
NASAは、われわれの数十倍の予算規模で、
何万人というスタッフがいる。
オリジナリティーを発揮するには、NASAもためらうような計画でないと。
はやぶさ計画も当初は、はったりだった。

イトカワ着陸のため、最終的に必要とした精度は、1cm毎秒。
アリの歩くような速さを、3億kmかなたで制御する必要。
表面は凸凹が激しく、着陸できる場所はわずか。
少しの誤差も許されない。
最初の3回は、誘導制御に失敗、タイムリミットまで1週間に迫ったとき、
思いもよらぬ方法を取った。

それまで、完全自動化した計算機処理で、高精度な計算を目指していた。
その処理に、あえて人間を入れたことが劇的な成果を生んだ。
人間のある種特別な能力が、爆発的な高速化につながった。
経験や所属を問わず、良い意見を直ちに評価にかけたことが功を奏した。
==============
◇はやぶさ

軽自動車の半分程度の大きさで、画像などを使った自律航行と
小惑星への接近・着陸、ほとんど重力のない環境での試料採取、
カプセルを大気圏に突入させての回収など、人類初の技術を多数実証。

◇イトカワ

地球と火星の間の軌道を回る、最大直径約540mの小惑星。
米国の研究所が1998年に発見、はやぶさ打ち上げ後、
日本のロケットの父、故糸川英夫博士にちなみ名付けられた。
重力は地球の10万分の1程度、12時間周期で自転。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2010/12/14/20101214ddm010040187000c.html

教員の時間外勤務、実態把握へ 県教委が来年度から

(岩手日報 12月7日)

県教委は来年度から、市町村教委の協力を得て、
公立小、中、高校の教員の時間外勤務の実態把握に乗り出す。
全教員を対象に、時間外勤務記録簿の記入を求めて集計し、
県教委が分析する。
教員の多忙化が問題視される中、時間外勤務は年々増加。
実態を明らかにし、多忙化解消や各職場での仕事の効率化、
精神疾患の原因解明などを目指す。

県教委が、県議会商工文教委員会で示した。
時間外勤務記録簿の記入は、職場のパソコンを使用する予定。
各教員が授業準備や学校行事、保護者対応などの業務分類と
超過時間を記入し、一人一人の結果を1カ月ごとに集計する仕組み。

県教委は、結果をまとめて教員の勤務実態を把握。
時間外勤務の内容や地区ごとの傾向などを詳しく分析する。
多忙化の解消に加え、増加傾向にある精神疾患の
原因解明にもつなげる考え。

岩教組(豊巻浩也委員長)が、2010年9月上旬に行った
勤務実態調査(小中58校を抽出)によると、1週間当たりの
時間外労働(時間外勤務と持ち帰り仕事)は、
小学校が14時間32分、中学校は20時間3分。
いずれも昨年度より増加、多忙化の実態が明らかになった。

時間外労働で行った業務で多いのは、
▽授業の準備
▽校務の担当
▽部活動指導―など。

現場からは、「多忙化に拍車が掛かっている」、
「退勤時間は名ばかりで、その時間に帰れることはない」などの声。

県教委は毎年度、小、中学校抽出による時間外勤務を調査、
高校を含めて取り組むのは初の試み。
県教委教職員課の及川伸一総括課長は、
「多忙化の解消、業務の改善につながるように、
現場の先生たちと一緒に努力していきたい」

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20101207_4

2010年12月17日金曜日

スポーツ政策を考える:広畑成志・日本共産党スポーツ委員会責任者

(毎日 12月11日)

日本共産党は、「国民が主人公」となる社会の実現を目指す中、
スポーツを国民の権利と位置づけている。

スポーツは、国民が保障されるべき活動であり、
国づくりにスポーツは欠かせない。
今後、スポーツ団体と関係者および政府、他党との討論や
意見交流を通して、人間の諸能力の開花を促すスポーツの
多面的な発展につながるような政策の形成にかかわっていきたい。

文部科学省のスポーツ立国戦略は、
「スポーツを通じて、幸福で豊かな生活を実現することは、
全ての人々に保障されるべき権利の一つ」としている。

スポーツすることを、初めて権利として認めた文言で、
国際的な水準の方向に一歩踏み出したものと言える。

しかし、スポーツの権利は、国民の自由な活動を確保するため、
基本的人権を構成する思想信条の自由と結社・表現・集会などの
自由を包み込んだものであるにもかかわらず、
今回の立国戦略では、自己展開を含めて不十分で、
まだ据わりきっていない。

自由で自主的な活動であるスポーツを擁護し、どう発展させていくか?
そのために政治は何をなすべきか?
モスクワ五輪ボイコット時のような政治的介入ではなく、
スポーツ施設の拡充、充実、指導者の配置、競技者の活動保障などの
環境整備を財政的に支援するのが政治の役割であり、責任でもある。

長引く経済不況の中、雇用が不安定になって余暇時間が削られている。
経済格差も進んで、スポーツをしたいけどできないという問題が生じている。
スポーツを楽しめる自由な時間を国民が確保でき、
社会的サービスとして国民が無理なく適切な費用で楽しめるような条件を
整備していくことが非常に大事だ。

文科省の来年度のスポーツ関連予算の概算要求は、約238億円。

今年度より10億円ほど多いが、それでも先進国の中では極めて少なく、
スポーツ立国戦略を公表した直後の予算としても、さみしい金額だ。
これでは、スポーツに対する低い位置づけや貧しい枠組みを
変えることは難しい。
そこから脱し、社会のニーズに見合った予算を獲得することが
求められている。

広州アジア大会を視察した。
卓球の福原愛選手は、インタビューに中国語で答え、
地元ファンに笑顔で手を振っていた。
他の国の人たちと自然体で交流している姿を見て、ステキだと感じた。
彼女が、国際的な大会で力を発揮できるのは、
インターナショナルなセンスがあるから。

そういうセンスを育んでいけば、対戦相手をメダル争いの敵ではなく、
ライバルとして尊重する発想が生まれてくるのではないか。
そんな点も、21世紀のスポーツマン像を論じ合ううえで必要になる。
==============
◇ひろはた・せいじ

1944年生まれ。東京教育大卒。日体大大学院修了。
大学講師などを経て、スポーツ研究者として活動。
著書に「終戦のラストゲーム」。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/general/archive/news/2010/12/11/20101211dde035070033000c.html

水ビジネスの海外展開目指す『ウォータープラザ』完成

(サイエンスポータル 2010年12月15日)

世界の水・エネルギー問題の解決と水ビジネスの海外展開を目指す
国内初の「ウォータープラザ」が北九州市に完成。

ウォータープラザを建設したのは、
新エネルギー・産業技術総合開発機構の委託を受けた
「海外水循環ソリューション技術研究組合」
(日立プラントテクノロジーと東レが3月に設立)。

施設は、国内最大規模の海水淡水化と下水再利用の機能を持ち、
省エネ・低環境負荷・低コスト型造水システムの運営実証を行う
「デモプラント」と、多様な水処理機器を試験できる「テストベッド」から成る。

日本は、東京都水道局が3.3%という世界一低い漏水率を
達成しているように、優れた水システムを持つ。
排水処理に必要な膜技術でも世界をリードし、
都市の水再利用が盛んだ。

「ウォータープラザ」は、自治体、国、企業が連携し、
総合的な水処理技術に関する運営ノウハウを蓄積、研究開発する
モデルケースになる、と新エネルギー・産業技術総合開発機構は期待。

http://www.scienceportal.jp/news/daily/1012/1012151.html

新生児対応で学会最高賞 県立大船渡病院

(岩手日報 12月7日)

大船渡市の県立大船渡病院(八島良幸院長)の小児科チームは、
作成困難とされる新生児のクリニカルパス(診療計画表)を
導入して、成果を挙げている。

同パスは、治療や検査、看護などの内容やスケジュールの一覧表で、
患者の理解を助ける。
新生児の状況に応じた細かい組み合わせパターンを構築し、
全国学会で最優秀賞を受けた。
赤ちゃんの命を守るシステムとして、全国への波及が期待。

「クリニカルパス」は、患者用と医療スタッフ用があり、
入院指導や検査、退院指導などをスケジュール表のようにまとめたもの。
▽医師によって対応が異ならない「医療の標準化」、
▽過剰診療や医療過誤を防ぐ「業務効率化」、
▽患者への説明の充実―などの
効果があるとして、全国的に導入が進む。

小児科、特に新生児の同パス作成は困難とされてきた。
パスは、入院から退院までを一覧表にした形が一般的。
新生児は、出生時の体重や状況が異なり、さまざまな病状があるため、
一括作成が難しく、諦める場合が多かった。

「行き当たりばったり」な診療は、現場や患者が負担を強いられる。
同病院小児科は、2008年3月から一括ではなく、
状況に応じて、細かく短期間のパスを組み合わせる方法を導入。

まず、出生後4時間で、「保育器に入る場合」、「新生児室に入る場合」
などに分類。
過程をチャート表にし、状況や段階ごとに必要なケア、
投薬方法を設定したパスを作成。

2年間で1297例を対象に実践。
適切な治療方針の構築や過剰診療防止、業務効率向上が図られ、
「マニュアル」的な機能を十分に果たした。

成果は、第11回日本クリニカルパス学会で発表。
全国524件から、最高賞の最優秀賞に輝いた。
同様の取り組みは、これまで発表されていない。

大津修小児科長は、「新生児にも、ある程度の共通項があり、
作成できない訳はないと取り組んだ。
全国で参考にしてもらい、より良いものに発展できればいい」

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20101207_13

アクチン繊維 生成の仕組み解明 世界初、千葉大・遠藤教授の研究班

(2010年12月10日 毎日新聞社)

筋肉の収縮運動に必要な「アクチン繊維」が、
細胞内で作られる仕組みを、千葉大大学院理学研究科の
遠藤剛教授(55)の研究グループが、世界で初めて解明。
10日、米科学誌「サイエンス」に掲載。

研究結果は、遺伝子異常による筋疾患や、心肥大、心筋症の
画期的な治療法の糸口になる可能性があるとして注目。

アクチンは、「ネブリン」という1umの直線状のたんぱく質に沿って作られる。
遠藤教授らは、このネブリンの端に特定のたんぱく質が結合するのを
きっかけに、長さの同じアクチンが作られ始めることを実験で突き止めた。

筋肉の収縮は、手足を動かすとともに、呼吸や心臓の動きを担っており、
生命維持に直接かかわる。
アクチンができる仕組みは、筋肉の再生や筋肉が大きくなることにも
必要であることが研究で分かった。

5万人に1人の割合で起こる筋疾患「ネマリンミオパチー」は、
重症だと呼吸障害や嚥下障害で、1歳未満で死亡してしまう。
遠藤教授によると、ネブリンを作る遺伝子の異常で起こる場合が多く、
ネブリンが不完全なためアクチン繊維も不ぞろいになり、
筋肉の収縮がうまく起こらない可能性がある。

遠藤教授は、「今後、同じような仕組みが心筋でも働くか実験し、
心肥大につながるかを調べたい」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/12/10/129633/

2010年12月16日木曜日

鳥類の新たな遺伝資源保存・復元法開発

(サイエンスポータル 2010年12月14日)

地鶏や絶滅の恐れがある貴重な鳥類の効率的な保存・復元を
可能にするユニークな方法を、農業・食品産業技術総合研究機構
畜産草地研究所と信州大学農学部の研究チームが開発。

貴重な胚を使い捨てにすることなく、始原生殖細胞だけを取り出し、
凍結保存できるのが、最大の特長。
岐阜地鶏の胚から取り出した始原生殖細胞を、
実際に代理親である白色レグホンの胚に移植し、
岐阜地鶏を復元することに成功。

この方法は、鶏以外の家禽や、絶滅危惧種などの希少鳥類へ
応用することが可能で、新たな遺伝資源の保存法として
生物多様性の維持に貢献することが期待できる。

始原生殖細胞は、精子あるいは卵子の元になる細胞。
胚発生の極めて初期にのみ存在する。
研究チームは、始原生殖細胞が発生の一時期に血流中を循環する、
という鳥類に特徴的な性質に着目し、
ふ卵中の受精卵を割って、発生中の胚を取り出す従来の方法に
よらない貴重な遺伝資源の保存・復元法を実現。

http://www.scienceportal.jp/news/daily/1012/1012141.html

中1虫歯、最少の1・29本 26年前の3割以下に

(2010年12月10日 共同通信社)

中学1年生(12歳)1人当たりの永久歯の虫歯本数は、
処置済みを含め、前年度より0・11本減の平均1・29本で、
過去最少を更新したことが、
文部科学省の2010年度学校保健統計調査(速報値)で分かった。

中1のみを対象とする本数調査を始めた1984年度(4・75本)の
3割以下の値。
本数は、90年度を除き減り続け、文科省は
「学校歯科医による歯磨き指導などの効果ではないか」

虫歯がある子どもの割合の推移を、80年度と今回で比較すると、
幼稚園は87%から46%、小学生が94%から60%、
中学生が94%から51%、高校生が96%から60%にそれぞれ減少。

年齢別では、8歳と9歳が最多で66%、17歳64%、7歳61%、
10歳と16歳60%、15歳56%などの順。

今年4~6月、幼稚園児と小中高校生の計約340万人を対象に調査。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/12/10/129612/

リハビリ機能集約求める 県立療育センター移転計画

(岩手日報 12月5日)

盛岡市の県立療育センターの移転・新築をめぐって、
障害者団体などから、いわてリハビリテーションセンター(雫石町)の
機能を集約した総合リハビリセンターとしての整備を
求める声が上がっている。

県は財政難から、現時点でリハビリセンターの移転までは
難しいとの考えだが、本年度内に有識者懇談会を立ち上げ、
本県の総合リハビリ体制の在り方を検討。
財政面と折り合いをつけながら、利用者ニーズに合った支援体制を
どう構築できるのか?

県立療育センターは、病院や学校を併設した肢体不自由児の
入所・通所施設と、障害者の生活や身体機能の訓練、
就労支援を行う自立支援施設などがある。

施設は、築50年以上経過し、老朽化している部分もあり、
県は、▽盛岡市の旧盛岡短大跡地、
▽矢巾町の岩手医大付属病院移転予定地付近―
などを候補地として移転・新築する計画。

新たな療育センターは、超重症心身障害児の入所施設を整備するなど、
障害児療育の拠点として機能を強化。
整備費は、数十億円と見込まれる。

障害者団体などからは、移転を機に、療育センターとリハビリセンターの
機能を集約させ、医療と訓練相談、自立支援までを1カ所で行う
「総合リハビリテーションセンター」としての整備を求める声。

事故や病気で障害を負った人の中には、社会復帰を望む人も多い。
現在、専門施設が盛岡と雫石に分散しているため、
社会復帰まで継続してサポートする体制が課題。

もりおか障害者自立支援プラザの大信田康統所長は、
「訓練後から社会復帰に至るまでの支援が途切れ、
在宅にならざるを得ない人もいる。
治療から社会復帰まで、一貫した流れをつくるための施設が必要

県は、厳しい財政状況も踏まえて、療育センターの移転に合わせた
リハビリセンターの移転・集約は難しいとの姿勢。
医師や障害者団体の関係者らで構成する有識者懇談会を設立し、
療育センターとリハビリセンター、県福祉総合相談センター(盛岡市)の
連携などを検討。

県保健福祉部の千葉茂樹部長は、
「本県の総合リハビリ体制については今後、議論を進める。
まずは、ソフト面の連携を強化し、機能を充実させたい」

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20101205_7

減塩メニュー広めよう 新潟県やニューヨーク市、英国で先進的な活動

(2010年12月9日 毎日新聞社)

日本人の塩分摂取量は、依然として多い。
過剰摂取は高血圧を招き脳卒中、心筋梗塞、胃がんなどの
原因となるため、減塩メニューの普及に乗り出す自治体も現れた。
海外では、食品メーカーや外食産業の取り組みも始まっている。

荒川規矩男・日本高血圧協会理事長(福岡大名誉教授)によると、
高血圧になる人は、食塩の摂取が少ない民族ほど少なく、
塩を使った加工食品をたくさん食べる文明国に多い。
日本では、群馬県や秋田県に多い。

日本人の成人の1日あたりの塩分平均摂取量は約11g(08年)。
厚生労働省は、「男性9g未満、女性7・5g未満」を推奨、
日本高血圧学会は、さらに少ない「6g未満」を提唱。
荒川さんは、「減塩食を広めれば、高血圧は確実に少なくなる」

新潟県は、昨年度から「にいがた減塩ルネサンス」を始めた。
県民の塩分摂取量は、全国平均よりやや高い11・5g。
塩分摂取と関係する胃がんの死亡率は、全国でワースト4位、
脳卒中死亡率もワースト7位。

汚名返上を狙って、「食塩1日1g減」を目標に、
モデル企業と保健所が連携した社員食堂の減塩メニュー開発や、
家庭・レストランでの減塩料理の普及に取り組んでいる。
プロ、アマを問わず参加できる減塩料理コンクールを開いており、
その入賞作品をまとめた「受賞作品レシピブック」は好評。

昨年のコンクールで優秀賞を受賞した「かづや食堂」(十日町市)の
「焼き野菜と白身魚の甘酢ジュレ」は、
同店の定食メニュー(750円)として人気。
考案した経営者の根津勝治さん(70)は、
「濃いめのだし汁と甘酢を使い、食塩の使用を0・9gに抑えた」

モデル企業の一つ、東京電力柏崎刈羽原子力発電所では、
社員食堂のみそ汁の食塩を、1杯1・5gから1gに減らしている。
カロリーの少ない野菜たっぷりの減塩ヘルシーメニューも開発し、
メタボリック症候群になりそうな肥満気味の男性20人に、
半年間毎昼食べてもらったところ、7人が体重を減らすことに成功。

同社の取り組みに協力する柏崎保健所管理栄養士の
鈴木一恵さんは、「ダイエットに成功した人たちは、減塩をきっかけに
1日1万歩以上歩くなど、健康への意識が高まったようだ」

社員食堂や家庭で、塩分を減らすだけでは十分とはいえない。
血圧に詳しい木村玄次郎・名古屋市立大大学院教授によると、
日本人が1日に取る塩分の約8割は、加工食品や外食が占める。
「加工食品の塩分を1割減らしても、味覚に影響することはほとんどない。
食品企業や外食産業が、足並みをそろえて減塩に取り組めば、
大きな成果が期待できる」

海外では、先進的な減塩活動が進んできた。

ニューヨーク市は今年1月、市民の塩分摂取量を、
今後5年間で2割減らす活動を始めた。
レストランに協力を呼びかけ、メニューに含まれる塩分を、
5年間で25%減らすよう求めているほか、スーパーには減塩ハムや
薄味ポテトチップス、塩分の少ないトマトケチャップが登場。

英国政府も6月、今後15年間で1日3g以下にするとの目標。
既に減塩のピザやフライドポテトも出ている。
海外の減塩事情にも詳しい荒川さんは、
「日本政府や自治体は、こうした国々や新潟県を見習ってはどうか」

新潟県は、減塩料理コンクールの「受賞作品レシピブック」(09年)を
希望者に配布(送料別)。先着100人。
問い合わせは、県健康対策課(電話025・280・5198、ファクス025・285・8757)。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/12/9/129567/

2010年12月15日水曜日

総合学習を生かす(14)教師も鍛える真剣勝負

(読売 12月11日)

「アンキョ(暗渠)ってどんな意味か、記者さん知ってるかな」と、
先生が突然聞いてきた。
僕たち知ってるよ、と39人の視線がこちらに刺さってくる。

東京学芸大学付属世田谷小学校の2年2組。
総合学習の授業「呑川たんけん」で、子どもたちは、航空地図で
学校を見て、川に関心を持ち、「呑川緑道」の地下に
水が流れていることを発見してきた。

「キョってなあに?」との記者の質問に、ある子が
「漢字のほうが意味わかるかも」とつぶやくと、
先生が辞書を引いて、黒板に書いた。
「さんずいに意味がある!」、「水専用の道!」、「すいろ!」、
次々に声があがる。

「知りたい」というエンジンに火がついた子どもたちは、実に積極的。
このクラスは、共通の問いが生まれると、「学習問題」と呼び、
ノートに赤い印をつけるルールがある。
ネットや本で調べたり、両親と探検したりした情報が持ち寄られ、
次の時間には、別の「はてな?」に発展していく。

「子どもたちが今後、世の中で出会うことが、
みんな面白く見えてくれば大成功」、担任の鈴木聡教諭(43)は、
同小14年目のベテラン。
同小の総合研究部長でもある。

駆け出し時代は、指導案通りに授業ができると達成感を感じた
時期もあったが、経験を積んだ今、
「指導案からずれる瞬間こそ、教師の勝負どころ」との思いが強まり、
総合学習の面白さが増した。

同小は20年前、低学年で教科の垣根を外し、
総合的に学ぶ自由度の高いカリキュラムを導入。
担任と子どもの話し合いで学習を計画し、時間割を変える。

低学年こそ、生活に根ざした総合的な学習が必要と考えた
挑戦的な取り組みだったが、実践を経て徐々に変化。
総合学習のよさは認めつつ、低学年でも、
「計算や漢字の基礎など、最低限の知識の確認は必要」との
方向性は定まりつつある。

鈴木教諭は、「総合の授業力は、すべての教科に通じる」と考えている。
子どものつぶやき、ノートの変化を見逃さない注意深さ、
臨機応変さが鍛えられるからだ。

同小は、教員養成大学から年間約130人の実習生を受け入れる
「養成所」の役割も持つ。
若い先生には、総合は重荷になりがちだが、藤田留三丸副校長(55)は、
「子どもと一緒に、山を乗り越える喜びが味わえるからこそ、
教師も挑戦しがいがある」

子どもたちと作る一期一会の真剣勝負が、先生の力も育んでいる。

◎学芸大付属世田谷小の総合学習のテーマ例

▽「あみものにちょうせん」(1年)、
▽「ミュージカルをつくろう」(1、2年)、
▽「木の家をつくろう」、「クラスの映画づくり」(4年)、
▽「お米作りに挑戦」、「土器を作ろう」(5年)、
▽「アライグマを育てる」(5、6年)

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20101211-OYT8T00177.htm

「50年来の夢かなった」、「自由に使ってください」 根岸、鈴木氏が記念講演

(2010年12月9日 共同通信社)

有機化合物の画期的な合成方法に関する研究で、
ノーベル化学賞を受賞する根岸英一・米パデュー大特別教授(75)と
鈴木章・北海道大名誉教授(80)が、
ストックホルム大の講堂で記念講演を行った。

「50年来の夢がかなった」と切り出した根岸さんは、
自らの研究が効率よい物づくりを通じて、
「グリーンな(環境に調和した)化学につながる」と強調。

鈴木さんも、「私は特許を取っていない。
興味を持ったらご自由に使ってください」と、
研究を社会に役立てたい希望を語った。

記念講演は、授賞式を前に、受賞者自らが成果を紹介する
ノーベル賞の恒例行事。

根岸さんは、「遷移金属の不思議な力-過去、現在、そして未来」
題した講演で、授賞理由にもなった、パラジウムが触媒の
クロスカップリング反応について解説。

天井や飾りの花、客席を指さしながら、
「木も花も人間も、ほとんど有機化合物でできている」と
研究の重要性を指摘。

留学時代に実験が苦手で悩んだことが、その後の成功につながったと
振り返る一方、反応を促す金属の触媒や元素を検討し、
さまざまな組み合わせの化学合成を実現した実績を強調。
壇上を動き回り、身ぶり手ぶりで聴衆に訴えた。

鈴木さんも、「有機ホウ素化合物のクロスカップリング反応-炭素と
炭素を結び付ける簡単な方法」との題で、
自ら開発した「鈴木カップリング」を解説。
狙った構造の物質をつくりやすいなどの特徴を示した。

米ハーバード大の日本人研究者が、
最も複雑な有機化合物として知られる天然毒の人工合成に成功した際、
最終段階で鈴木カップリングが使われたことや、
世界で2200万人が利用する血圧降下剤、農薬、液晶の製造にも
広く利用されていると紹介。

この日は2人に先立ち、
共同受賞のリチャード・ヘック米デラウェア大名誉教授(79)が講演。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/12/9/129543/

虫歯と歯周病菌99・99%死滅…東北大新手法

(2010年12月9日 読売新聞)

虫歯や歯周病などの原因菌を、ほぼ死滅させられる新たな殺菌法を、
東北大大学院歯学研究科の菅野太郎助教らのチームが開発。

治療機器の開発も進められ、画期的な治療法が数年以内に
実用化できるとの期待が高まっている。
米国の代表的な薬学雑誌12月号に掲載。

菅野助教らは、虫歯菌や歯周病菌など4種類の口腔内細菌と
過酸化水素の水溶液に、目に見える波長のレーザー光を照射。
強い殺菌作用のある物質「活性酸素」の一種を発生させ、
3分以内に99・99%以上の菌を死滅させた。

人体への影響はないとみられ、治療が難しい歯周病の奥深い病巣を
殺菌することなどへの応用が期待。

研究チームは、精密機械製造「リコー光学」(岩手県)などと、
過酸化水素水とレーザー光を同時に出す歯周病用の治療機器の
開発を進めている。
今年度中には動物実験を終え、2011年度以降に臨床研究に入る予定。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/12/9/129580/

岩手医大に最新鋭MRI 認知症やうつ病解明へ

(2010年12月9日 共同通信社)

岩手医大は、国内最高級の性能となる最新鋭の
磁気共鳴画像装置(MRI)を、矢巾キャンパスに導入すると発表。
来年2月から運用を開始、脳卒中や認知症、うつ病などを対象に、
予防や治療に直結する研究に活用。

装置に用いる磁場の強さは7テスラで、病院で医療用に使われる
MRIより、2~5倍精細な画像が得られる。
同性能の装置は、国内では新潟大に続き2例目。

研究は、人だけでなくサルやマウスなどでも実施。
細かな脳の血流などの観察が容易になるほか、
脳神経細胞の機能を調べることも可能で、疾患を早期発見する
新たな検査手法の開発が期待できる。

装置は、米GEヘルスケア製で約10億円。
北海道大や大阪大なども、研究チームに参加する。

小川彰岩手医大学長は、「脳卒中やうつ病の治療例が多い
岩手医大の特徴を生かし、研究成果を世界に発信したい」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/12/9/129545/

2010年12月14日火曜日

総合学習を生かす(13)指導案を例示「質」保つ

(読売 12月10日)

総合学習には教科書がなく、テーマややり方を自由に決められる反面、
授業の進め方に戸惑うことも少なくないが、
愛知県岡崎市には教師向けの“あんちょこ”がある。

市立城北中学校3年4組で行われた総合学習の授業。
テーマは、地球温暖化だ。
広瀬浩司教諭(36)が、計11kgのペットボトルが入ったバッグを
見せながら、「これは、日本国民1人が1日に使うあるものの重さですが、
何でしょう」と質問。

答えは、「日本国民1人当たりの1日のエネルギー消費量を換算した
石油の重さ」。
環境団体が試算したもの。
「エネルギーとは石油やガス、電気などのこと。
生活の中で、エネルギーを消費すれば、二酸化炭素が排出される」

広瀬教諭はこの日、市教育委員会が作成した指導案を活用。
生徒に配ったプリントにある主要8か国の1人当たり
二酸化炭素排出量を表した棒グラフも、
市教委が集めた参考資料から転載した。

市教委は今年度から、環境保全への参加や環境問題に取り組む力を
着けさせようと、市内の公立小中学校に、
年15時間の環境学習を総合学習などで行うよう要請。

小中の9年間で系統立てて学べるよう、学年ごとの学習項目などを
「環境学習プログラム」としてまとめ、指導案や資料、確認テストも
盛り込んで冊子にした。
プログラム作成に携わった一人でもある広瀬教諭は、
「指導案通りに授業をする必要はなく、独自の教材を使ってもいい。
困った時は助けになる」

背景には、総合学習が苦手な教師の存在があった。
市教育研究所の中村公治・所長補佐は、
「総合学習は教科書がなく、どのように授業をすればいいか
困る教師もいる。
教育の質を確保するために、指導案の例示も必要という結論」

兵庫教育大学大学院の佐藤真教授(教育方法学)は、
「学校や教師によって、授業の質に差がある現実を直視し、
市が授業モデルを示したのは評価できる」と語る一方、
「教師が提示された指導案で満足してしまい、
形だけの授業になるのが心配」と懸念。
授業を子どもの実態に合わせないと、
探究力や思考力は決して身に着かないからだ。

市教委は今後も、各学校の実践報告をもとに、
プログラムの検証や良い授業の事例集の作成を行う考え。
授業作りの模索が、自治体ぐるみで続いている。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20101210-OYT8T00334.htm

消化管伸縮の謎解明 便通改善薬開発に期待

(2010年12月8日 共同通信社)

排便を促すため、小腸などの消化管が伸び縮みするメカニズムを
マウス実験で解明したと、自然科学研究機構生理学研究所の
富永真琴教授らが、8日付米科学誌
ジャーナル・オブ・ニューロサイエンス電子版に発表。

便通を良くする医薬品の開発や、消化不良感をもたらす機能性胃腸症の
原因解明などに役立つ可能性がある。

食べた物は、消化管が伸縮を繰り返すことで、
肛門へ押しやられ排便される。
消化管はもともと縮む性質があり、一酸化窒素(NO)が増えると、
筋肉が緩んで伸びることが分かっていたが、詳しいメカニズムは謎。

富永教授らは、小腸などの神経細胞内にあり、温度感知センサーとして
働くタンパク質「TRPV2(トリップブイツー)」の働きを解明。
食べた物が腸に入ってくると働きが活性化し、
細胞の外にあるカルシウムを取り込んで、
NOを合成する酵素の活動を強めることが分かった。

TRPV2の働きを薬で抑えると、消化管は伸びることができなくなった。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/12/8/129495/

インサイド:大河流れて 総集編 アジア大会で見えたもの/5止

(毎日 12月4日)

「高気圧酸素カプセルなどでリラックスできた。
時間があればもっと行きたかった」

広州アジア大会のフェンシング女子エペ団体で、
史上初の金メダルを獲得した中野希望(大垣共立銀行)の感想。

今回のアジア大会から、文部科学省のマルチサポート事業による
強化が本格的に始まった。
目玉の一つが、選手村近くに設置されたマルチサポート・ハウス。
国立スポーツ科学センター(JISS)が高級ホテルを借り切り、
約30人の職員が常駐、選手たちの心身のリフレッシュなどに当たった。

サポートハウスは、日本とほぼ同じ環境を作り出すことが目的。
おにぎりやみそ汁などの和食を提供する食堂や、
マシンを使ったトレーニング施設、1人で思考することのできる
「個室」などが用意。

柔道やレスリングなどは減量に活用し、柔道女子の園田隆二監督は、
「これまでアパートを借りて減量メニューを作っていたが、
カロリー計算までしてくれるので助かる」

JISSによると、期間中、42競技のうち選手村に入った
39競技すべてがサポートハウスを利用し、延べ人数は2552人。
最も多かったのは、肉じゃがやレトルト食品など、
選手村では食べられない日本食を提供する「リカバリーミール」で
2066人が利用。
炭酸浴などのプール、高気圧酸素カプセルも1386人が利用するなど、
「疲労回復」が人気だった。

JISSの河村弘之・研究協力課長は、
「昼から夜まで過ごす選手もおり、ロンドン五輪に向けて
いいトライアルができた」

◆戦略基地の効果低く

ただ、課題も残った。
設置費用は2億~3億円と見込まれ、どこまでが本当に必要な
サポートだったのか、費用に見合った成果があったのかは、
明確に結びつけられない。
リラックスすることが主な利用目的であり、ある選手は
「選手村が街から離れていたため、気分転換ができなかった。
サポートハウスに行けば、時間がつぶせると口コミみたいに広がった」

一方で、勝つために重要な映像分析の利用は216件、
情報関連サービスの活用も59件と低く、
戦略基地としての機能は低かった。

マルチサポート事業で、五輪でのメダル獲得が有望視される
「ターゲット競技」に指定されているのは、夏季は13競技・種目。
今大会では、トライアスロンが男女とも金銀を占め、
セーリングとカヌーでもそれぞれ3個の金を獲得。
陸上や競泳などは、ターゲット競技とされながらも多くの選手が苦戦。

◆五輪へ向けて検証

マルチサポート事業の来年度予算は、
概算段階で今年度の約19億円から大幅に増加、27億円。
一方で、日本オリンピック委員会(JOC)の強化の補助金は
今年度並みにとどまる見込み。

日本選手団長を務めた市原則之・JOC専務理事は、
「どれだけ活用できたのか、競技団体と協議していかなければならない」と
検証するつもり。

日本は、ロンドン五輪の金メダル獲得数で世界5位という目標。
今大会の金メダル争いでは、中国、韓国に前回以上の差をつけられた。
マルチサポートによる強化は本筋ではない、という見方もあるが、
事業は始まっている。
五輪本番まで1年7カ月余りしか残っていない。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/news/20101204ddm035050011000c.html

2010年12月13日月曜日

ワクワク感に伝達物質関与 PETで脳内の受容体研究

(2010年12月8日 共同通信社)

宝くじに当せんするような、低い確率を主観的に高く見積もってしまう
「ワクワク感」や、逆に高い確率を低く見積もる「ハラハラ感」の強さに、
脳内の神経伝達物質ドーパミンが関与していることが、
放射線医学総合研究所などのチームの研究で分かった。
8日付の米科学誌THE JOURNAL OF NEUROSCIENCE電子版に掲載。

確率を、ゆがんだ形で見積もる度合いが強すぎると、
ギャンブルへの依存症などにつながる恐れがある。
チームは、「研究を進め、依存症の客観的な診断や原因の解明、
治療につなげたい」

20~30代の男性を対象、宝くじの当せん確率をどのように
見積もるか検証。
多くの人は、経済理論などで提唱されている通り、
低い当せん確率は高く、高い確率は低く見積もる傾向。

この際、陽電子放射断層撮影装置(PET)を使って、
脳内のドーパミン受容体を調べたところ、
大脳の線条体という部位にある特定の受容体の密度が低い人ほど、
低い確率を高く見積もったり、高い確率を低く見積もったりする

傾向の強さが見られた。

受容体の密度が低い理由は解明されていないが、
遺伝的な原因のほか、生活習慣が影響している可能性も。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/12/8/129494/

伝統医学に"共通言語" WHOが作成へ

(2010年12月7日 共同通信社)

世界保健機関(WHO)は、漢方やはりなどの伝統医学で使われる
病名や施術名などの用語をまとめた「伝統医学国際分類」作成に着手。
伝統医学に関する統計や研究、政策の基礎となる
世界の"共通言語"を作る初の試み。

都内で記者会見した計画の中心メンバーの1人、
慶応大の渡辺賢治漢方医学センター長によると、
伝統医学は世界で多くの人に利用されているが、
どんな治療にどの程度の効果があるかといったデータ収集や評価、
国際的な情報交換が進んでいない。

日中韓を中心とした東アジア起源の伝統医学について、
各国で使われている用語の共通点や相違点を整理。
2014年までに作業を終える見通し。

WHOは、西洋医学について「国際疾病分類(ICD)」という体系を
まとめており、現在は第10版。
15年までに改訂する見込み、伝統医学は第11版に組み入れることを目標。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/12/7/129406/

総合学習を生かす(12)児童の成長 信じて32年

(読売 12月9日)

11月下旬。
ぬかるんだ広場で、子どもたちが長靴を泥だらけにしながら、
子豚の「さな」の体重を量っている。

教室に戻ると、壁に時間割はなく、あるのは
「さなちゃんのたいじゅう」の棒グラフや、カタカナの勉強用に
張り出された「ブタ」、「エサ」、「ワラ」の文字。
長野県伊那市立伊那小学校の1年夏組では、
子豚との生活がすべて教材に。

32年前から、全校で取り組む総合学習の先駆者。

3年間クラス替えをせず、子どもたちが選んだテーマを
時間をかけて発展。
テーマは、低学年は動物の飼育が多く、高学年になると
熱気球作りや五平餅作りなど様々になる。

1年夏組では、いろいろな家畜に親しんだ後、子豚を選んだ。
2学期から飼い始めたが、たびたび脱走し、校舎内で大暴れ。
そこで、子どもたちは、慣れないノコギリやトンカチを握り、
丈夫な柵を作りあげた。

同小では、子どもたちの中から意見や解決策が出てくるのを、
教師がねばり強く待つ。
動物の名前をつけるのに、話し合いが1か月かかったクラスも。
チャボを育てるクラスでは、チャボを怖がった子が
抱けるようになるのを、2か月間見守った。

「先生たちは、祈るような気持ちで子どもを見ている」と武田育夫校長(52)。
根底には、「子どもたちが、自ら成長する力を信じる」という
揺るぎない理念がある。

既成のノウハウが通用しない授業だけに、先生も悩みの連続。
学習指導要領の順番を飛び越えたり、欠けたりするのを補う必要も。
短期的な視点で成果を判断しないのは、
子どもたちが夢中になった活動の達成感の大きさを実感しているから。

2年前、「総合学習30年」を記念して行った卒業生へのアンケートでは、
約70%が、「総合の経験が生き方や進路に影響を与えた」と答えた。
総合学習を経験した卒業生が親になり、
地域全体がよき理解者なのも強み。

毎年2月に開く公開研究会には、全国から約600人もの先生が集まる。
実践をまねるより、子どもと一緒に奮闘し、成長する教師の姿に、
「教師を志した原点に立ち返る」と何度も訪れる人が多い。

マニュアルでは、人は育たない。
先生同士が、子どもを語り合う大切さを発信しつづけることが、
伊那小の使命」と武田校長。
「総合の火をともし続ける」という覚悟と喜びが、学校全体に漂っていた。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20101209-OYT8T00193.htm

インサイド:大河流れて 総集編 アジア大会で見えたもの/4

(毎日 12月3日)

水色のユニホーム姿の選手たちは、
何度も先頭でフィニッシュラインを駆け抜けた。
陸上競技が行われた広州・奥体スタジアムに吹き荒れたインド旋風。
大会終盤の女子1600mリレーで3連覇を果たし、
陸上だけで五つの金メダルを獲得。

象徴的だったのは、女子長距離の躍進。
日本が、過去全6大会でメダルを獲得してきた女子10000mで、
2連覇を狙った国内第一人者の福士加代子(ワコール)は、
インド勢のラストスパートに屈した。

優勝したプリージャ・スリードハランは、5000mでも銀メダル。
10000m銀のカビタ・ラウトも、5000mで3位と、実力は本物。
日本は、中国やアフリカ出身選手が国籍を取得した中東勢を
警戒していたが、インドの強さは全くの想定外。

日本陸連長距離・ロード特別対策委員会の河野匡副委員長は、
「インドの実力は未知数で、正直驚いた。
アジアの経済が発展する中、どの国のレベルも上がっている」と
現実を受け止めた。

スリードハランらを指導するベラルーシ人コーチは、
「インドには、才能豊かな選手があふれている」と自信。
外国人コーチを招いた強化も実ったようだ。

◆政府が多額報奨金

競技別にみると、陸上で11個、ボクシングで9個、射撃で8個の
メダルを獲得、テニス男子ではソムデブ・デブバルマンが
シングルスで初優勝、ダブルスと合わせて2冠。
ゴルフでも、男子団体で銀メダルを手にするなど、
プロスポーツでも実績を残した。

全体では金14、銀17、銅33と、メダル総数は過去最多の計64個。
金メダル数の順位では、前回ドーハ大会の8位(10個)から6位に上昇。
政府は多額の報奨金も用意し、インドメディアによると、
スリードハランは10000mの金メダル獲得で、
12万5000ドル(約1050万円)を得る。

躍進の背景には、10月に初めて自国開催した英連邦大会の存在。
4年に1度のビッグイベントに向けた強化が実り、
金メダル38個を含む、計101個のメダルを獲得。
金メダル数は、オーストラリアに次ぐ2位で、
イングランドやカナダなどを上回った。

◆躍進大国化「手段」に

インドは、伝統的に肉体より精神を重視、
スポーツよりも勉強を優先する価値観が根強い。

インドの社会事情に詳しい亜細亜大非常勤講師の関口真理さんは、
「経済的な成功に見合うように、スポーツも強化すべきだという
意識が強くなった。
スポーツの強さを、一流国の証しととらえている

昨年10月、インドの国際オリンピック委員会委員が、
ニューデリーで24年夏季五輪を開催したい意向を表明。
インドには、主要新興4カ国(BRICs)の中で、ブラジル、ロシア、中国に
五輪開催実績(予定を含む)で取り残された危機感があり、
英連邦大会は、成功をステップに、将来の五輪招致へつなげる思惑も。

大会をめぐっては、巨額の準備資金が不正に使われたとの
汚職疑惑が浮上。
大会経費は、当初見積もりの20倍の約70億ドル(約5880億円)で、
過去最高に膨れあがったとの批判もあり、混乱が続いている。

約12億の人口を背景に、経済的発展を続けるインド。
政府は先月30日、7~9月期の実質国内総生産(GDP)は
前年同期比8・9%増と発表、経済の好調さに陰りはない。
スポーツを大国化の手段として位置づければ、
ひずみが生じる危険性も否定できない。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/news/20101203ddm035050126000c.html

2010年12月12日日曜日

破壊抑え骨粗しょう症治療 阪大、原因細胞遠ざける

(2010年12月7日 共同通信社)

骨を壊す破骨細胞を、骨に近づけないようにして骨の破壊を抑え、
骨粗しょう症を治療することに、大阪大と米国立衛生研究所(NIH)
チームがマウスで成功。
6日付の米医学誌ジャーナル・オブ・エクスペリメンタル・メディシン
(電子版)に掲載。

国内患者が推計1千万人以上とされる骨粗しょう症のほか、
関節リウマチやがんの骨転移など、骨が壊れていく病気の
治療法開発に役立つとして、ヒトへの臨床応用の準備を進めている。

チームは、破骨細胞のもとになる前駆細胞が、
血管から骨へ移動する過程に着目。
「スフィンゴシン1リン酸(S1P)」という脂質が、
この移動を制御することを発見。

S1Pを感知する前駆細胞表面のタンパク質「S1PR2」の働きを抑える
阻害剤をマウスに投与すると、前駆細胞が骨へ移動しないことを、
生きたまま骨の中を観察できる顕微鏡で確かめた。
阻害剤を投与した骨粗しょう症マウスは、
骨の密度が約1・5倍に改善。

現在の主な治療法では、破骨細胞を殺す薬を投与するが、
正常な骨で繰り返されている、古い骨を壊し新しい骨を作る
サイクルのバランスが崩れ、壊死するなどの副作用が問題。

大阪大の石井優准教授は、
「今回の治療法は、無理やり細胞を殺さないので安全で、効果も大きい」

※骨粗しょう症

骨がもろく、折れやすくなる病気。
背中が曲がる原因となり、寝たきりにもつながる。
更年期に、女性ホルモンの一種「エストロゲン」が急激に減少するのが一因、
高齢女性に多い。
65歳以上の約3割、75歳以上では約半数が患っている。
2050年、高齢化がさらに進んで、患者が5千万人を超える可能性、
対策が求められている。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/12/7/129404/

総合学習を生かす(11)郷土の先人に学ぶ志

(読売 12月8日)

盛岡市は朝から激しい雨。
市立厨川小学校の6年生は、計画していた「先人ウォーク」を
泣く泣く延期し、掲げて歩くはずだった「立志隊」と書かれたのぼりを囲んだ。

「天気のいい日に改めて行きましょう。
立志の丘で何を叫ぶか、を心の中で考えておいてね」、
千葉美保教諭(43)が子どもたちに語りかけた。

2007年に始まった「先人ウォーク」は、郷土の偉人について学ぶ
6年の総合学習の総仕上げで、今ではすっかり同小の名物行事に。
先人の足跡をたどりながら、盛岡市内を約5km歩き、
最後に先人記念館の脇にある「立志の丘」で、自分の夢や目標を叫ぶ。
太平洋戦争の終結に力を注いだ元首相、米内光政が少年のころ、
岩手山に向かって大声で叫び、自らを鼓舞したという逸話にちなむ。

盛岡は、歴史的に偉人を多く輩出した土地柄。
米内のほか、「平民宰相」と呼ばれた原敬、
「武士道」を著した新渡戸稲造、歌人の石川啄木、
アイヌの「ユーカラ」研究に半生を注いだ金田一京助が代表的な「先人」。
市は、小中学校向けの副読本やカレンダーを作って、
「先人教育」に力を入れている。

厨川小では、子どもたちが人生について考える機会につなげている。
「先人」にも、若き日の失敗や葛藤が必ずある。
「単に、聖人君子として受け止めたのでは、子どもたちの心に残りにくい」
と考えた千葉教諭は、調べ学習が進んだ段階で、
「何かマイナスポイントなかった?」と問いかけた。

石川啄木のカンニング事件など、失敗談が次々にあがった。
「最初は成績が悪かった」、「甘えん坊だった」。
子どもたちは、遠い存在だった先人をぐっと身近に感じた上で、
「人一倍努力した」、「強い意志を持っていた」などと、
現状に安住しない志の尊さに気付いた。

最後の振り返りでは、自分の調べた先人への思い入れを
グループで語り合った。
振り返り用のワークシートには、あえて「生き方」という言葉は
使わなかったが、子どもたちは先人から学んだ姿勢を自分に引き寄せ、
自然に、「自分はこんな生き方をしたい」という言葉が出てきた。

「人を幸せにできる人間になりたい!」、
「悔いの残らない生き方をするぞ!」。
シートの最後に力強く記されていた子どもたちの誓いは、
先人の背中をしっかりと見据えていた。

◎先人に学んだこと(振り返りシートから)

▼原敬
努力し、最後まであきらめなかった。人に信用される生き方をしたい。

▼石川啄木
他人を思う心、貧しさに負けない強い心があった。
純粋な心を持って、信頼されるようになりたい。

▼新渡戸稲造
勉強は楽しんでやればいいのだと思った。

▼金田一京助
自分もいろいろなことに挑戦して、みんなを勇気づけたい。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20101208-OYT8T00215.htm

インサイド:大河流れて 総集編 アジア大会で見えたもの/3

(毎日 12月2日)

9対24と、あやうくトリプルスコアの大差がつくところだった。
今大会、日本と中国の競泳チームが取った金メダルの数。
前回ドーハ大会は、16対16の「引き分け」。
4年で激変した勢力図の背景には、外国人コーチの存在が透けて見える。

「海外の経験あるコーチに育てられると、正直に言って脅威だ」
日本代表の平井伯昌コーチは、そう言って危機感を募らせる。
今大会に登録された競泳の中国代表コーチ陣に、外国人の名前はないが、
選手たち約20人は定期的に2組に分かれて渡豪し、
オーストラリア人コーチの指導を受けている。

中国だけではない。
男子自由形で、2大会連続3冠を達成した韓国の英雄、
朴泰桓(パク・テファン)のコーチもオーストラリアのマイケル・ポール氏。
他を圧倒する朴の泳ぎは、ポール氏の存在なくしては語れない。
「日本以外のほとんどの国は、欧米などから外国人コーチを招請している」
国境を超えた指導は、今や常識となりつつある。

◆流動化の波アジアに

国同士の争いの様相が濃い国際スポーツ界で、
外国人コーチが増え始めたのは、旧東側諸国が崩壊後の90年代前半。
社会主義国家では、国威発揚につながるスポーツ選手やコーチに、
国家による手厚い支援があったが、体制崩壊とともに彼らは
生活の糧や活躍の場を求めて、西側諸国へ移った。
プロとして雇われた指導者が、欧米各国を渡り歩くようになり、
コーチの流動化が進んだ。
その波は、ついにアジア諸国にも到達。

中国選手団は今大会、全競技で計20人の外国人コーチをエントリー。
その中には、日本のシンクロナイズドスイミング指導の第一人者、
井村雅代さんの名前も。
数年前まで中国のシンクロは発展途上だったが、
井村さんが指揮した北京五輪のチームで、銅メダルを獲得。
今大会は、全3種目で金メダルを手にした。
かつて、日本の「お家芸」ともいえたシンクロで、
日中の立場は完全に逆転した。

その中国ですら、コーチが外国に流出している。
今大会の飛び込みで、銀と銅合わせて9個のメダルを獲得し、
中国に次ぐ2位につけたのはマレーシア。
同国の飛び込みコーチの大半が中国人。
それだけの人材が流出しても、中国の競技レベルには変化がない。
指導者の層の厚さもうかがえる。

◆育成との両立を

一方の日本。
外国人コーチの招請は、競技団体によって温度差があるのが実情。
ある競技団体のコーチが、「外国人コーチに育ててもらうと、
中(自国)のコーチが育たなくなるのではないか」と言う通り、
国内での指導者育成に重きを置く意見は根強い。

コーチ陣4人を外国人で固めたフェンシングは、目覚ましい実績を残した。
オレクサンダー・ゴルバチュク氏(ウクライナ)が専属コーチを務める
女子エペは、団体で大会史上初の優勝を果たした。
北京五輪では、フルーレで同じウクライナ人の
オレグ・マツェイチュク氏がコーチとなり、
太田雄貴(森永製菓)が銀メダルを獲得。
その後、エペとサーブルにも外国人コーチを招請した強化策が結実した形。

自前のコーチ育成と、レベルの高い外国人コーチの活用。
その両立ができなければ、世界の潮流にのまれかねないことを、
今大会の成績は雄弁に物語っている。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/news/20101202ddm035050092000c.html

還元型コエンザイムQ10がインフルエンザウイルスの感染を予防

(日経ヘルス 12月7日)

カネカは、還元型コエンザイムQ10が、インフルエンザウイルスの
感染に対し、予防効果を発揮すると発表。

コエンザイムQ10で、インフルエンザに対する有用性が
示唆されたのは初めて。
コエンザイムQ10は、抗酸化作用やエネルギー産生を促進する
作用で知られる成分。

日本では、もともと医薬品成分だったが、2001年から食品に、
2004年には化粧品への使用が可能、
サプリメントや化粧品など様々な製品に配合されてきた。

従来は、酸化型のコエンザイムQ10が一般的だったが、
体内では大部分が還元された形で存在することから、
同社が、「還元型コエンザイムQ10」を開発、
2006年から原材料供給を開始。

今回は、富山大学大学院医学薬学研究部の林利光教授との共同研究。
還元型コエンザイムQ10を経口投与したマウスに、
A型インフルエンザウイルス(H1N1亜型)を鼻から感染させ、
気道と肺のウイルス量、ウイルスに対する抗体産生量を測定。

マウスは、
(1)普通に飼育した群(対照群)、
(2)還元型コエンザイムQ10低用量を投与した群、
(3)還元型コエンザイムQ10高用量を投与した群、
(4)感染してから抗インフルエンザウイルス薬オセルタミビルを
投与した群で、各10匹ずつ飼育。

還元型コエンザイムQ10を投与した群は、ウイルス感染7日前から
還元型コエンザイムQ10を投与し、感染後も7日間投与を続けた。

その結果、還元型コエンザイムQ10を投与した群は、
対照群に比べ、3日後の気道、肺中のウイルス量がともに
有意に抑えられていた。

抗インフルエンザウイルス薬を投与した群では、
抗体をほとんど作らないのに比べ、還元型コエンザイムQ10を
投与したマウス群で、14日目に抗体産生量を確認し、
抗体は十分に産生され、対照群とほぼ同等。

同社QOL事業部技術統括部開発グループ学術・知財チームの
細江和典氏は、「コエンザイムQ10には、直接的な抗ウイルス作用が
ないことは、もともと知られていた」

乳酸菌のように、体内で免疫機能を動かす働きをしているかというと、
「作用機序はまだ不明、コエンザイムQ10のエネルギー産生を高める
作用が関与している可能性がある。
現在、富山大学で作用機序解明のための研究を進めている」

インフルエンザに関して別途実施した動物試験では、
還元型コエンザイムQ10と乳酸菌を一緒に付加したところ、
さらに高い効果が見られた。

酸化型との比較では、酸化型の低用量では効果が
確認できなかったのに比べ、還元型では低用量でも効果が確認。
これらの内容について、今後、論文や学会などで発表していく。

http://nhpro.nikkeibp.co.jp/article/nhpro/20101207/109503/

2010年12月11日土曜日

インサイド:大河流れて 総集編 アジア大会で見えたもの/2

(毎日 12月1日)

大会の視察を終えたスポーツマーケティング会社
「UFAスポーツアジア」(本社・シンガポール)のジェフ・チュー常務は、
声を弾ませた。
「アジアには、まだまだ可能性を秘めた競技があると感じさせてくれた」

アジア大会最大の特徴は、広いアジアのさまざまな民族の間で
親しまれている競技を多く取り入れていること。
今大会でもドラゴンボート、クリケットのほか、チェスの一種目となった
囲碁などが新設、過去最高となる42競技476種目が行われた。

「民族スポーツ」を取り込む傾向は、86年ソウル大会で
韓国の国技・テコンドーが採用されたのを皮切りに、
90年北京大会で東南アジアのセパタクロー、インドの国技・カバディ、
中国に由来する武術、94年広島大会で沖縄発祥とされる空手と、
年々強まってきた。

テコンドーは、88年ソウル五輪で公開競技となり、
00年シドニー五輪から正式競技に採用、今や国際的競技に成長。
カバディも、04年に第1回ワールドカップをインドで開催、
今年4月、円形のコートで行う「サークルスタイルカバディ」の
ワールドカップを初めて行うなど、世界戦略に乗り出している。
民族スポーツにとってアジア大会は、いまや「国際化への登竜門」。

セパタクローは、今大会期間中に国際サーキットの大会創設を表明。

プランを作成したのは、欧州最大のメディアグループ
「RTLグループ」傘下の「UFAスポーツアジア」。
チュー常務は、セパタクローに目をつけた理由について、
「テレビを含め、観戦する人にわかりやすいように『再梱包』すれば、
必ず人気が出ると思った」

個人的な見解とした上で、「カバディや、中央アジア、中東からの参加が
増えた武術には大変魅力を感じたし、アジア大会未実施の競技でも、
(ビジネスの対象として)興味を持っているものがある」
人口が世界の6割を占めるとも言われる巨大なアジアには、
まだ掘り起こされていない“商品”と“市場”が眠っている。

◆本質失われる恐れも

国際化には弊害もある。
テコンドー女子49キロ級で、台湾選手が失格となった件を巡って、
台湾で韓国への反感が高まる騒ぎが起きた。
台湾選手の相手はベトナムの選手だったが、一部で、
世界テコンドー連盟が本部を韓国に置くことなどから、
韓国関係者が今回の判定にかかわったという報道が。

台湾では韓国国旗が燃やされ、韓国外交通商省が憂慮を表明するなど、
国際問題に発展しかねない状態に。
あってはならない「事件」ではあったが、それだけ競技が世界で認知され、
人気が高まったことの証左とも言えた。

クリケットは、五輪に不可欠なテレビ放映に対応するため、
最近の国際試合では「20オーバー(1チームの投球数が120球)制」を採用。
伝統的なものでは、テストマッチ(国代表試合)で5日間もかかっていた
試合を、約3時間に短縮。

「(20オーバー制は)五輪でやれば完ぺきだ。
今がクリケットにとって大きなチャンス」と選手の中には歓迎する声がある
一方で、専門家は「(競技が持つ)本来の良さが失われつつある」

いかに競技の本質を守りながら、国際化の波に乗るか。
残された課題は大きい。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/news/20101201ddm035050053000c.html

インタビュー・環境戦略を語る:住友生命保険・佐藤義雄社長

(毎日 12月6日)

メーカーや小売りと異なり、保険という形のない商品を扱う生命保険業界。
住友生命保険は、06年「スミセイ環境方針」を策定し、
環境負荷低減に向け、自然保護活動の支援やボランティア活動などを
積極的に行っている。
佐藤義雄社長に、具体的な取り組みについて聞いた。

--スミセイ環境方針の理念は?

住生は、「豊かで明るい長寿社会の実現」を目指す。
本業である生保事業の公共性や社会的責任を踏まえ、
事業活動を通じて、地球環境問題への対策にも
積極的に取り組もうという姿勢。

--具体的な取り組みは?

◆08年から、石垣島とフィジーで、サンゴ礁保全プロジェクトを始めた。
サンゴ礁は、数多くの生物の貴重なすみか。
石垣島では、サンゴの生育に悪影響を及ぼす赤土の流出を
防ぐための植栽、子供たちへの環境教育、
フィジーでは、サンゴの植え付けをそれぞれ行っている団体に、
社内の基金から毎年寄付。
フィジーでは、今年3月末までに1万5000本以上の植え付けに成功。

--保険の分厚い約款などは紙資源を大量に使う。

◆商品内容を丁寧に説明すると、どうしてもページ数が増える。
住生では、08年から約款をCD-ROM化し、
紙の使用量を年間約400トン削減。
紙の約款も選べるが、CDを選んでもらうと、
契約1件につき10円がサンゴ礁保全プロジェクトに寄付される。
同プロジェクトへの支援額は、基金からの寄付も合わせ、
今年度末で累計約8500万円となる見込み。

お客様への連絡を、封書でなく電子メールで行うサービスも以前から実施、
今年4月から、新規利用1件につき10円を自然保護団体に寄付。

--全国の営業職員による活動は?

営業職員や内勤職員らによる地域ボランティア活動を92年度に始め、
09年度は植林や里山保全、竹林整備など239活動に
延べ2万7267人が参加。
日常的な訪問活動の中、お客様から応援したい
環境・社会貢献活動に投票してもらい、票数に応じ住生が寄付する
キャンペーンも行っている。
サンゴ礁保全プロジェクトには、08~09年度で10万票以上が集まり、
50万円を超す寄付を上乗せした。

--今後の環境対策の方向性は?

◆既存の活動を息長く続けることが大切。
住友のルーツである別子銅山(愛媛県)では、製錬に使う燃料用に
多くの木を伐採し、煙害や洪水の被害が広がった反省から、
積極的な植林に努めた経緯も。
環境を大事にし、地域と共生しようという伝統を引き継いでいきたい。
==============
◇さとう・よしお

九大卒。73年住友生命保険入社。株式運用部長、証券投資部長、
総合法人本部長などを経て、07年7月から現職。福岡県出身。61歳。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2010/12/06/20101206ddm008020054000c.html

総合学習を生かす(10)下級生指導 統率力育む

(読売 12月4日)

四国山地にある高知県大豊町立大豊町中学校。
体育館では、1~3年生の男女15人が、人気アイドルグループ
「AKB48」の曲に合わせて、振り付けの練習中。
「顔も手と一緒に上げて」、「もう一度やるよ」と、
リーダーの3年女子生徒2人が指示を出す。

総合学習の授業で、全校生徒が「演劇」、「アート」、「ダンス」班に分かれ、
1か月先の発表会に向けて、練習や制作活動に励んでいた。

同中の総合学習は、1~3年を混成させた縦割り班で学ぶ。
狙いは、リーダーシップの育成。
リーダーは3年生に限り、なるべく部活動の部長などの
経験者以外の生徒に担当。

どの班もリーダーは複数おり、話し合いや練習など
活動すべてのまとめ役を担う。
ダンス班は、AKBを含めて2チーム、リーダーは各2人いるが、
2チーム合同で踊る「ソーラン」や、全体を統括するリーダーも計3人いる。

矢部喜久校長(56)は、「人を束ねて、一つのものを作り上げるのは大変。
その苦労と達成感を、多くの生徒に学んでほしい

総合学習の授業時間は、学年ごとに年間50または70時間と違うが、
全学年が発表会前に計31時間を集中させたカリキュラムを組む。
リーダーたちに、スケジュールの見通しを持った運営も経験させる。

ダンスの練習後、リーダーたちが、
「いつから『ソーラン』を始めたらいいですか」と質問、
担当の福留雅子教諭(36)は、「それは自分たちで考えないと」と答えた。
リーダーは、練習日程など考えて班を引っ張り、教師はあくまで相談役。

AKBでリーダーを務めた3年松本結里さん(15)と関口凛さん(14)は、
「去年は、先輩の指示に従えば良いだけで楽だった」と、
「踊りを覚えるより、人に教える方が難しい」、
「人をまとめるのは大変」

同中は町内唯一の中学校で、各学年約30人の1クラスずつしかない。
小さな頃から同じ顔ぶれに囲まれ、クラス替えもないので、
新しい人間関係を作る経験も乏しい。
リーダーシップ育成に取り組む背景には、こうした事情も。

卒業生の多くは、高校の部活や体育祭などで、
まとめ役を買って出て活躍している。
矢部校長は、「上級生の自覚が芽生えるだけでなく、
様々な人と作り上げていく力が養われている」と力を込める。

今後の人生の出会いを生かす素地が、総合学習で培われている。

◆縦割り学習

異なる学年の子どもたちが一緒のグループで活動する学習。
異年齢の人間関係を学べる効果がある。
上学年は、下学年の子どもを気遣い、責任を持って活動できるようになり、
下学年が上学年の先輩に対し、あこがれや目標を見いだす機会に。
体育祭や掃除、給食などの活動で行われている。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20101204-OYT8T00199.htm

ケータイ写真を送るだけでカロリー判定 NTTコミュニケーションズらが「健康増進アシストサービス」の実証実験開始

(日経ヘルス 12月7日)

携帯電話機で撮影した写真を送ると、自動でカロリーを推定して
食事のバランスを判定、記録し、運動量などの情報と合わせて、
食事や運動についてアドバイスする実証実験が、
2011年1月から始まる。

実験を行うのは、携帯電話機向けのアプリケーション開発などを
担当するNTTコミュニケーションズと、インターネット上での
ダイエット・コミュニティ「gooからだログ」を運営しているNTTレゾナント
写真を使った食事記録サービスを提供している
東京大学発ベンチャーfoo.log(フードットログ)の三社。

今回の実証実験の目玉の一つが、携帯電話機で写真を撮影して
メールで送信すると、カロリーや主食、主菜、副菜といった
食事のバランスを推定する「自動カロリー推定」サービス。

センター側は、送られた画像から食事領域を切り抜いて
色や質感(テクスチャー)、料理区分などの特徴情報を抽出、
データベースに登録された過去のデータと比較。
カロリーや料理区分に対するバランスを推定。

料理の種類を推定してから標準のカロリーを呼び出すのではなく、
個々の写真から直接カロリーなどを推定するので、
柔軟性が高く推定の誤差が少ない。

カロリーの推定は、東京大学大学院情報学環・工学部の
相澤 清晴教授が開発した食事画像解析技術を用いる。
今回の実証実験は、カロリー推定の精度向上やデータの蓄積を
目的とし、「カレーライス」などの食事の名称はユーザーが手入力、
将来的には、自動で判定しユーザーが複数候補から選択するなど、
入力の手間も軽減する予定。

もう一つの特徴が、従来個別の機器やパソコンを使って実現していた
複数のサービスについて、携帯電話機を使って一元管理できるようにし、
利便性を高める点。

「自動運動量測定」サービスは、携帯電話機から得られる位置情報や
加速度情報をもとに、ウオーキングなどによるカロリー消費量を算出、
データを自動で保存。

「食事/運動コンシェルジュ」サービスでは、
記録した食事や運動量、位置情報などから、その時点でユーザーに
適したレシピやエクササイズを提案する。
レシピはエルネット、エクササイズはティップネスといったように、
協力企業のコンテンツを利用して提供。

仲間の達成度や食事、運動内容を閲覧して参考にできる
「ソーシャル機能」や、歩数計や体重計といった別の機器とも連携する
「健康機器連携」なども盛り込む。

今回の実験は、1万人程度で行う予定、
まずは2011年1~3月に行うが、様子を見つつ期間は延長する見込み。
今後、モニター登録サイトを開設し、モニターには無償で
専用アプリケーションを提供。

このアプリケーションは、Google社の開発したOS「Android」を搭載した、
アンドロイドケータイ向けのもの。
Apple社の「iPhone」向けにも対応する予定、
一般的な携帯電話機への対応は未定。

http://nhpro.nikkeibp.co.jp/article/nhpro/20101129/109381/

2010年12月10日金曜日

読解力回復 数学、科学上位維持 PISA結果で判明

(サイエンスポータル 2010年12月8日)

国際的に見劣るとされていた15歳生徒の読解力が
3年前より向上、9年前のレベルに回復していることが、
経済協力開発機構(OECD)が公表した
国際学習到達度調査(PISA)結果から明らかに。

PISAは、OECD加盟国と調査実施基準を満たす参加希望国・地域を
対象に、2000年から3年おきに実施。

文章を理解、利用、熟考する能力を問う読解力、数学的根拠に
基づいて、判断できる能力を問う数学リテラシー、
科学的知識を使用し、証拠に基づく結論を導き出す能力を問う
科学リテラシーの3分野について、15歳を対象に抽出試験を行う。

各回3つの試験のうち、1つが重点分野とされ、
今回は読解力が他の2分野に比べ、倍の試験問題が受験者に課された。
前回、読解力が重点分野だったのは2000年で、
この年との比較が最も重視。

今回の調査は、09年に実施。
日本の15歳生徒の読解力平均得点は、統計的有意差を考慮すると
上海、韓国、フィンランド、香港より下だが、
シンガポール、カナダ、ニュージーランド、オーストラリア、
オランダとほぼ同じ、上位4カ国・地域の次に位置。

3年前06年の調査結果では韓国、フィンランド、香港、カナダ、
ニュージーランド、アイルランド、オーストラリア、リヒテンシュタイン、
ポーランド9カ国・地域より下位、
グリアOECD事務総長から、「文章情報を取得し、処理し、統合し、
評価することが最大の課題」と評された。

今回の調査結果は3年前に比べ、明らかに読解力の向上を示しているが、
読解力が重要分野とされた2000年の調査結果に比べ、
「統計的有意差はない」。

2000年の調査では、「1位のフィンランドとは統計的に有意差が認められるが、
上位2位グループに位置する」という結果、このレベルに回復。

数学リテラシーの平均得点は上海、シンガポール、香港、韓国、台北、
フィンランドに次ぐグループで、科学リテラシーは上海、香港、
フィンランドにつぐグループに入っている。

いずれも前回、重点分野だった調査年(数学は03年、理科は06年)に比べ、
調査結果に「統計的有意差はない」とされた。
数学リテラシーは03、06年とも高いレベルを維持していると評価。

科学リテラシーについて、「科学的知識を再現し、科学的証拠を
解釈することにより、結論を導く能力は高い」と評価、
「科学的に探ることができる問題を認識し、科学的探求に必要な要素を
見つけ出すのは苦手」とOECDから指摘。

数学、科学リテラシーとも明確な経年比較は、
それぞれが重点分野となる次の調査結果(数学2012年、科学2015年)を
見ないと分からない。

http://www.scienceportal.jp/news/daily/1012/1012082.html

インサイド:大河流れて 総集編 アジア大会で見えたもの/1

(毎日 11月30日)

中国・広州で開かれた第16回アジア大会は、27日に幕を閉じた。
大会規模は過去最大に膨れあがり、競技では中国が200個に
あと一つに迫る金メダルを獲得。
インドなど新興国の台頭や、国境を越えて流動化する指導者たち、
ビジネス化を図って五輪入りを狙う競技など、新しい動きもある。
中国や韓国に押され、成績不振が目についた日本の今後は--。
大会中に連載した「大河流れて」の総集編として、
今大会を通じて見えてきたアジアスポーツの姿に迫る。

◇ジャイアント・チャイナ

「メダル数で、中国の国力の強さを示した。
独占しているわけではなく、韓国やインドもスピードを持って成長」
アジア大会最終日の27日、大会で史上最多の199個の金メダルを
獲得した中国選手団の段世傑団長は、総括会見で誇らしげに。

同じ時刻、隣の会見場では、前回よりも金メダルを減らした
日本の選手団も会見。
ロイター通信の記者から、「アジア大会は、中国の国内大会
みたいではなかったか」という質問に対し、日本の市原則之団長は、
「中国は非常に強くて、我々は脅威を感じている」と、
率直な意見を述べるしかなかった。

中国は、08年の北京五輪で金メダル51個を獲得、
米国や旧ソ連などに代わって、世界一のスポーツ大国にのし上がった。
全国の体育技術学校を軸に、優秀な選手を集める有名な強化策に加え、
経済の急速な発展を背景に、北京五輪後も外国人指導者の数を
増やすなど、強化への意気込みはまったく弱まっていない。

◆施設規模でも力量

2年前と異なるのは、五輪や世界選手権に出場する

「競技スポーツ」に加え、市民へのスポーツの普及を強調したこと。

中国の新しいスポーツ振興策の一つとされ、
一部のエリート競技者のものでしかなかったスポーツを、
国民に広く普及させようとしている。
段団長は、「さまざまな種目でメダルを取ることは、
国内スポーツの多様性に寄与する。
これまでは、中国のスポーツ文化は低かったが、
若者のスポーツ志向は高まっている」

史上最大規模になった今大会。
施設の規模も、中国のパワーを見せつけるものだった。
バスケットボール会場となった広州国際スポーツアリーナは、
3階までで1万7000人の観客席。
中心地近くにある陸上会場の奥体スタジアムは、
中国の英雄、劉翔が出場した110m障害決勝の時は8万人を収容。

五輪をしのぐような巨大施設の数々に、日本オリンピック委員会の関係者は、
「これを見たら、もう日本でアジア大会を開こう、という都市は
ないんじゃないか」と、冗談とも本気ともとれる口調で話した。

◆仁川も拡大路線か

今大会中、アジア大会の開催をめぐっては、競技を削減したい
アジア・オリンピック評議会(OCA)と開催地の間で、対立が起きた。

OCAは、今大会から実施競技数を減らす方針、
それも広州の意向で実現せず、今大会中に協議した次回の
14年仁川大会でも決定は先送り。

オイルマネーが支えになった前回のドーハ大会に続いて、
広州が巨大市場という資金力をバックに拡大路線を貫いたため、
OCAのアーマド会長は、「(実施競技の)プログラムは、
開催都市が関心を持っているものを入れていけばいい。
開催地が資金を出すのは、その後のインフラ投資にもなる」と、
拡大容認ともとれる発言まで飛び出した。

運営規模、競技力ともに世界トップの力を見せたアジアの巨人、中国。
2年後のロンドン五輪、その後は何に向かおうとしているのか。

段団長は、気になる発言をしている。
「北京五輪で、中国はスポーツ大国になったが、
ロンドン五輪ではスポーツ強国を目指す。
中国のスポーツ力をアピールすることによって、
中国人が持っている素晴らしさを見習ってもらえるからだ」
まるで、スポーツで世界を支配しようというようなコメント。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/general/archive/news/2010/11/30/20101130ddm035050051000c.html

4期16年、甘竹大船渡市長が退任 和やかに見送り

(岩手日報 12月3日)

大船渡市の甘竹勝郎市長(67)の退任行事は2日、
同市役所で行われた。

職員や市民約300人から、4期16年のねぎらいを受け、
庁舎を後にした。

甘竹市長は、退任記者会見で、
▽旧三陸町との合併
▽重点港湾指定
▽リアスホール整備
▽全国海フェスタ開催
▽財政改革―
を成果として挙げ、「職員と市民の協力でやろうとしていたことは
ほぼ達成できた。日々全力投球で、充実感でいっぱい」と心境。
最も緊迫したのは、今年2月のチリ大地震に伴う大津波警報の発令。
今後は、晴耕雨読の生活を送ると言い、
「市民は大船渡に自信を持ち、羽ばたいてほしい」と願った。

見送りセレモニーは、甘竹市長のおはこで、
同市出身の歌手新沼謙治さんの「三陸・大船渡」が流れる中、
職員が胴上げするなど、和やかな雰囲気。
贈られた花束を高く掲げ、別れを告げた。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20101203_7

総合学習を生かす(9)就業体験 学ぶ意欲に

(読売 12月3日)

さいたま市内の美容室。
緊張した様子で洗髪しながら、「力加減はどうですか」と聞くのは、
埼玉県立蓮田松韻高校(蓮田市)1年の古川亜依さん(15)。
見守る美容師の坂巻裕美さん(39)から、
「左右の手の力加減を同じにするため、両ひじは突き出して」、
「耳に水が入らないよう手で押さえて」など細かい注意。

同高の1年生は全員、総合学習で就業体験に臨む。
古川さんは、やはり美容に興味のある同級生の中谷馨さん(15)と
2人で5日間、美容室に通った。
仕事は掃除などの雑用だが、洗髪なども教えてもらい、
最終日のこの日は、佐藤智明教頭(47)を実験台に成果を試していた。

「髪を洗うのが、こんなに大変と思わなかった。腰も痛い」、
「タオルの巻き方も、細かい配慮があった」と苦労を語る2人。
坂巻さんは、「華やかさややりがいの一方で、厳しさもあることを
学んでもらえたのでは」

就業体験は、前身の旧県立蓮田高校時代の4年前、
中途退学者の減少を目指して始まった。
柿岡文彦校長(59)は、「働く厳しさを知り、自分の将来を
具体的に見つめ、高校で学ぶ自覚を持ってもらうため」と狙い。
生徒の大半が、就職や専門学校進学を希望していることもあり、
受け入れ先には、「見学ではなく、就労させてほしい。
厳しい指導も結構です」と依頼。

当初12%を超えた退学率は半減したが、目的意識がないまま
入学する生徒は依然多く、就業体験も一筋縄には行かない。
「あいさつができない」、「働く意識が低い」などと、
その後の受け入れを拒否されたことも。

今年は、1年生234人がスーパーや農家など74か所に行ったが、
福祉施設に行ったある生徒は、休憩するよう指示され、
職員に声をかけられるまで、2時間も部屋から出てこなかった。
仕事に戻るよう指示がなかったからだと。

とはいえ、効果は少しずつ表れている。
佐藤教頭は、「社会の厳しさを知り、生徒の多くが
高校はきちんと卒業しようと考えるようになる。
将来のことを、親子で話すきっかけにもなっている

修理工場で、計器の修理をした横山勇斗さん(16)は、
「ずっと同じ作業でつらかったが、どの仕事も責任を持って
やらなければいけないということが分かった」

働く尊さを知ることが、意欲ある高校生活につながっている。

◆就業体験

学生が在学中に、民間企業などで就業を体験すること。
インターンシップともいう。
国立教育政策研究所の調査によると、2009年度は
全国の公立中学校の約95%、高校(全日制・定時制)の約71%が実施。
中学校は、「原則として全員参加」だが、体験した高校生の割合は
全体の約29%にとどまっている。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20101203-OYT8T00195.htm

2010年12月9日木曜日

日立がHDDやエアコンからレアアース回収技術開発

(サイエンスポータル 2010年12月7日)

使用済みのハードディスクドライブ(HDD)のモータやエアコンなどの
コンプレッサーから、レアアース磁石をリサイクルする技術を、
日立製作所が開発。

コストや回収率を試算した上で、2013年をめどに
リサイクルの本格稼動を目指す。

レアアース磁石は、強い磁力を持たせるためネオジムを、
耐熱性能向上のため、ジスプロシウムを鉄に加えた合金。
ネオジム、ジスプロシウムはレアアースと呼ばれ、
産出量の約97%を中国が占め、
資源確保の観点からにわかに大きな問題。

日立が開発した技術は、レアアース磁石の分離・回収の効率が
HDDの場合、現在の手作業より約8倍高く、従来、分解が困難だった
コンプレッサーについても、新たに切断装置や脱磁装置などを開発し、
高効率で安全な分離・回収を可能。

HDDの分解装置は、振動を与えてネジをゆるませる方法を採用。
コンプレッサーは、切断装置と抜き取り装置で、
レアアース磁石を含むローター(回転子)を分離、
その後振動を与えてレアアース磁石だけを分離・回収する。

レアアース磁石からのネオジムとジスプロシウムの抽出は、
岡部徹・東京大学生産技術研究所教授との共同研究で、
酸などの化学薬品を使わない、新たなレアアース抽出技術の実験に成功。

ネオジムやジスプロシウムと親和性の高い特定の抽出媒体を用い、
最終的に加熱して抽出媒体を蒸留させることで、
レアアースの合金だけを取り出すことができる。

この技術開発成果は、経済産業省の
「平成21年度新資源循環推進事業費補助金
(都市資源循環推進事業-高性能磁石モータ等からの
レアアースリサイクル技術開発)」を受け、
昨年10月から開発を始めた結果、得られた。

http://www.scienceportal.jp/news/daily/1012/1012071.html

インタビュー・環境戦略を語る:キリンビール・松沢幸一社長

(毎日 11月29日)

キリンビールは今年、自然環境保護のため、
12年のCO2排出量を、90年比で60%削減する目標。
食品メーカーにとって、環境保護活動は、消費者の環境志向に
応えるとともに、原料の天然資源の保全にもつながる。
計画の旗振り役である松沢幸一社長に聞いた。

-意欲的な目標を掲げている。

◆環境に対する社会の意識が変化し、企業は商品を販売して
利益を得るだけでは通用しない時代に。

環境保護活動は、「経営課題の一つ」との認識のもと、
ビール製造などと同じ「事業」として取り組むことにした。
環境保護のための設備更新など投資も必要になるので、
経営陣でリーダーシップをとっている。

-具体的な取り組みは?

◆製造、物流などそれぞれの段階で、CO2排出削減に取り組んでいる。
製造部門では、仕込み工程などで使用するボイラーを、
効率の良い小型のものに変え、燃料も重油からCO2排出量の少ない
天然ガスへの転換を進めている。

今年1月、約200億円を投資して最新設備を導入した
滋賀工場(滋賀県多賀町)は、使用するエネルギーも従来の約3分の1。
各工場で節水にも取り組んでおり、以前はビール1Lを作るのに
15L必要だった水が、現在は6Lで済む。

-配送、物流面では?

◆今年6月から、仙台工場から青森、秋田県の卸業者への
出荷は、トラックから貨物列車を使うモーダルシフトに切り替えた。

今年から一部の地域で製缶メーカーと協力し、製品を詰める前の空缶を
運んできたトラックに製品を積んで帰ってもらうようにした。
トラック輸送を、なるべく減らすように努力。

-自然保護にも取り組んでいる。

◆99年から、ビールの水源となる森林を保全するため、
工場の上流や周辺の森林の計17カ所で、植林活動に取り組んでいる。
社員だけでなく、地域の方々にも協力してもらい、
植林や樹木の枝打ちなどを行っている。
この活動は、参加した社員のエコ意識向上にも役立っている。

-今後取り組みたい活動は?

◆環境省が、環境保全に積極的に取り組む企業を認定する
「エコ・ファースト企業」に、08年に製造業として初めて選ばれた。
現在、エコ・ファースト企業で作る「エコ・ファースト推進協議会」の
議長を務めている。

協議会には、ビックカメラやユニーなど、さまざまな業種の企業が
参加し、加盟企業で業界を超えたキャンペーンなど、
共同事業を展開できればと考えている。
==============
◇まつざわ・こういち

北海道大大学院農学研究科修士課程修了、73年キリンビール入社。
常務生産本部生産統轄部長、キリンホールディングス常務などを経て、
09年3月から現職。61歳。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2010/11/29/20101129ddm008020006000c.html