2010年12月12日日曜日

総合学習を生かす(11)郷土の先人に学ぶ志

(読売 12月8日)

盛岡市は朝から激しい雨。
市立厨川小学校の6年生は、計画していた「先人ウォーク」を
泣く泣く延期し、掲げて歩くはずだった「立志隊」と書かれたのぼりを囲んだ。

「天気のいい日に改めて行きましょう。
立志の丘で何を叫ぶか、を心の中で考えておいてね」、
千葉美保教諭(43)が子どもたちに語りかけた。

2007年に始まった「先人ウォーク」は、郷土の偉人について学ぶ
6年の総合学習の総仕上げで、今ではすっかり同小の名物行事に。
先人の足跡をたどりながら、盛岡市内を約5km歩き、
最後に先人記念館の脇にある「立志の丘」で、自分の夢や目標を叫ぶ。
太平洋戦争の終結に力を注いだ元首相、米内光政が少年のころ、
岩手山に向かって大声で叫び、自らを鼓舞したという逸話にちなむ。

盛岡は、歴史的に偉人を多く輩出した土地柄。
米内のほか、「平民宰相」と呼ばれた原敬、
「武士道」を著した新渡戸稲造、歌人の石川啄木、
アイヌの「ユーカラ」研究に半生を注いだ金田一京助が代表的な「先人」。
市は、小中学校向けの副読本やカレンダーを作って、
「先人教育」に力を入れている。

厨川小では、子どもたちが人生について考える機会につなげている。
「先人」にも、若き日の失敗や葛藤が必ずある。
「単に、聖人君子として受け止めたのでは、子どもたちの心に残りにくい」
と考えた千葉教諭は、調べ学習が進んだ段階で、
「何かマイナスポイントなかった?」と問いかけた。

石川啄木のカンニング事件など、失敗談が次々にあがった。
「最初は成績が悪かった」、「甘えん坊だった」。
子どもたちは、遠い存在だった先人をぐっと身近に感じた上で、
「人一倍努力した」、「強い意志を持っていた」などと、
現状に安住しない志の尊さに気付いた。

最後の振り返りでは、自分の調べた先人への思い入れを
グループで語り合った。
振り返り用のワークシートには、あえて「生き方」という言葉は
使わなかったが、子どもたちは先人から学んだ姿勢を自分に引き寄せ、
自然に、「自分はこんな生き方をしたい」という言葉が出てきた。

「人を幸せにできる人間になりたい!」、
「悔いの残らない生き方をするぞ!」。
シートの最後に力強く記されていた子どもたちの誓いは、
先人の背中をしっかりと見据えていた。

◎先人に学んだこと(振り返りシートから)

▼原敬
努力し、最後まであきらめなかった。人に信用される生き方をしたい。

▼石川啄木
他人を思う心、貧しさに負けない強い心があった。
純粋な心を持って、信頼されるようになりたい。

▼新渡戸稲造
勉強は楽しんでやればいいのだと思った。

▼金田一京助
自分もいろいろなことに挑戦して、みんなを勇気づけたい。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20101208-OYT8T00215.htm

0 件のコメント: