2010年12月15日水曜日

総合学習を生かす(14)教師も鍛える真剣勝負

(読売 12月11日)

「アンキョ(暗渠)ってどんな意味か、記者さん知ってるかな」と、
先生が突然聞いてきた。
僕たち知ってるよ、と39人の視線がこちらに刺さってくる。

東京学芸大学付属世田谷小学校の2年2組。
総合学習の授業「呑川たんけん」で、子どもたちは、航空地図で
学校を見て、川に関心を持ち、「呑川緑道」の地下に
水が流れていることを発見してきた。

「キョってなあに?」との記者の質問に、ある子が
「漢字のほうが意味わかるかも」とつぶやくと、
先生が辞書を引いて、黒板に書いた。
「さんずいに意味がある!」、「水専用の道!」、「すいろ!」、
次々に声があがる。

「知りたい」というエンジンに火がついた子どもたちは、実に積極的。
このクラスは、共通の問いが生まれると、「学習問題」と呼び、
ノートに赤い印をつけるルールがある。
ネットや本で調べたり、両親と探検したりした情報が持ち寄られ、
次の時間には、別の「はてな?」に発展していく。

「子どもたちが今後、世の中で出会うことが、
みんな面白く見えてくれば大成功」、担任の鈴木聡教諭(43)は、
同小14年目のベテラン。
同小の総合研究部長でもある。

駆け出し時代は、指導案通りに授業ができると達成感を感じた
時期もあったが、経験を積んだ今、
「指導案からずれる瞬間こそ、教師の勝負どころ」との思いが強まり、
総合学習の面白さが増した。

同小は20年前、低学年で教科の垣根を外し、
総合的に学ぶ自由度の高いカリキュラムを導入。
担任と子どもの話し合いで学習を計画し、時間割を変える。

低学年こそ、生活に根ざした総合的な学習が必要と考えた
挑戦的な取り組みだったが、実践を経て徐々に変化。
総合学習のよさは認めつつ、低学年でも、
「計算や漢字の基礎など、最低限の知識の確認は必要」との
方向性は定まりつつある。

鈴木教諭は、「総合の授業力は、すべての教科に通じる」と考えている。
子どものつぶやき、ノートの変化を見逃さない注意深さ、
臨機応変さが鍛えられるからだ。

同小は、教員養成大学から年間約130人の実習生を受け入れる
「養成所」の役割も持つ。
若い先生には、総合は重荷になりがちだが、藤田留三丸副校長(55)は、
「子どもと一緒に、山を乗り越える喜びが味わえるからこそ、
教師も挑戦しがいがある」

子どもたちと作る一期一会の真剣勝負が、先生の力も育んでいる。

◎学芸大付属世田谷小の総合学習のテーマ例

▽「あみものにちょうせん」(1年)、
▽「ミュージカルをつくろう」(1、2年)、
▽「木の家をつくろう」、「クラスの映画づくり」(4年)、
▽「お米作りに挑戦」、「土器を作ろう」(5年)、
▽「アライグマを育てる」(5、6年)

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20101211-OYT8T00177.htm

0 件のコメント: