2008年6月21日土曜日

脳を元気に (2)簡単テストで自己診断

(読売 6月12日)

日本人の死因で、脳卒中はがん、心臓病に続き3位。
血管性の脳疾患は、認知症の代表的な要因の一つとされ、
セルフチェックで危険信号を見つけたい。

赤坂パークビル脳神経外科の水上公宏理事長が考案した
「脳卒中危険度テスト」は、10項目の簡単な質問で、
脳卒中発症の可能性を大まかに判別できる。

該当する項目の点数を足し、80点以上は黄色信号、120点以上は、
医療機関の診断を必要とする赤信号。
特に重視するのは、年齢と血圧。
遺伝性もあり、両親のどちらかが脳卒中の病歴がある場合も「高得点」。

自覚症状のない「隠れ脳こうそく」にも注意。
40代の3割、50代の半数にみられるとの報告。
放っておくと、症状がでる恐れ。

その可能性をあぶり出すのが「渦巻きなぞりテスト」。
眞田クリニック(東京・大田区)の脳神経外科医、眞田祥一院長が作成。
5ミリ~1センチほどの幅で5周巻いた渦巻き模様の線の間に、
色違いのペンで中心から外側へ向け、元の線に触れないよう
渦巻き模様を10秒以内に描く。
元の線と2か所以上で交わったら、微小な脳こうそくで運動機能に
障害が発生している可能性がある。
入浴後などリラックスした状態で、心配な結果が出た場合は、
磁気共鳴画像装置(MRI)などで精密検査する「脳ドック」の受診もお勧め。

脳卒中の予防について、東京女子医大の内山真一郎教授は、
「食事の塩分を控えたり、適度な運動をするといった
一般的な生活習慣病対策が有効。中でも最大の防御策は禁煙」。
喫煙は、脳こうそくを招く血栓を作る主要因のひとつ。
禁煙はお金もかからない、脳を元気に保つ方法。

http://www.yomiuri.co.jp/iryou/medi/plus/20080612-OYT8T00403.htm

スポーツ21世紀:新しい波/271 バレー協会・個人登録制度/6

(毎日 6月14日)

部外者をシャットアウトして行われた東京都高体連女子バレーボール
専門部会の総会(4月13日)は、個人登録制度問題で揺れた。
矢面に立たされた松野下健部長(当時)は、何度も同じ言葉を繰り返した。
「私たちは、日本バレーボール協会(JVA)と友好協力関係にあります」

国内のバレーに関する活動を統括するJVAと、
高校スポーツを統括する全国高体連は別組織。
全国高体連バレー専門部は、JVAに加盟する立場にあり、
東京都高体連女子バレー専門部はその下部組織。

反対派は、「全国高体連は、JVAの下部組織なのか。
JVA(の個人登録制度導入)に従わないといけないのか」。

松野下部長は、「下部組織ではないが、友好協力関係にある」と答え、
「JVAの個人登録制度について、全国高体連バレー専門部が
協力することを決めた。私たちも制度に賛同し、順守する義務がある」。

「個人登録制度に反対する草の根バレーの会」の発起人の一人、
都立狛江高の佐藤甚一教諭は、「体育会系ならではの上意下達。
こう決まったんだから、黙って従えという態度だ」。
「もっと現場の意見を吸い上げ、制度に反対せよ」という

反対派教員の意見に、森田政行副部長は反論。
「現場の問題をまとめ、東京の代表として上部団体に改善は要望した。
新制度は完ぺきではないと思う。我々も疑心暗鬼、暗中模索。
だが、以前の制度ではJVAも限界だった」。

板挟みの苦しい胸中を訴えた。
東京は、今季の大会出場資格について、折衷策を採った。
JVA主催大会である全国高校総合体育大会、
全国高校選抜優勝大会などにつながる予選の出場選手は
個人登録を義務付け、それ以外の夏季大会などは、
個人登録していない選手も出場を認める。

松野下部長は、「個人登録してほしいが、『それでは大会に出場しない』
という人が現れては困るので」。

http://mainichi.jp/enta/sports/21century/

創立記念、節目祝う ブラジル岩手県人会

(岩手日報 6月16日)

ブラジル岩手県人会(千田曠暁会長、会員約280人)の
創立50周年記念式典は、サンパウロ市の
ブラジル日本文化福祉協会講堂で行われた。
会員、本県からの訪問団、各地の県人会などから約400人が出席、
半世紀を刻んだ移住の歴史をかみしめ、
新たな県人会活動の発展を誓った。

千田会長が、「第1回の笠戸丸移民から今年で100周年。
この節目に県人会も50周年を迎え、郷土を思う心と
地道な努力のたまものと皆さんに感謝する」。

岩手・宮城内陸地震で帰国した達増知事の祝辞を、
岩間隆県NPO・国際文化課総括課長が読み上げ、
渡辺幸貫県議会議長、大石満雄花巻市長、
同県人会賛助会訪問団の南部利昭団長、
ニューヨーク岩手県人会の岩崎雄亮会長らが祝辞。

県人会活動に功績のあった男女20人の会員に、
渡辺議長が感謝状を贈呈し、功績者を代表して
大志田寿さん(74)=盛岡市出身=が
「県人会の発展のためさらに精進していく」。

式典後は祝賀パーティーに続き、「いわて芸能まつり」を開催。
盛岡山車推進会(工藤勲会長)メンバーによる音頭上げや
岩手郷土芸能団(団長・藤沢清美県民謡協会長)の民謡、踊りで
にぎやかに50周年を彩った。

ブラジル岩手県人会は、移住した県人24人が集まって発足。
県人の交流や本県との連絡窓口として、移住者実態調査や
本県からの農業視察団受け入れなどに取り組んだ。
1977年にサンパウロ市内に県人会事務所を開設。
83年に現在の県人会館が落成。

県との連携で、県人ブラジル移住者の子弟を本県に留学させる
「県費留学生制度」も導入され、交流が始まっている。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20080616_18

学生をつくる(4)危機意識 教員も共有

(読売 6月6日)

歴史ある大学が、基礎学力の向上をめざす。
「エビで釣るのは『タイ』だよな」、「ウのマネをするのはだれ?」
1年生18人が机に向かいながら話し合っていた。
高千穂大学(東京都杉並区)の1年生必修の「基礎ゼミ」で
毎週行われる「ガンバレ高千穂!10分勝負」。
日本語や英語、理科、数学、一般常識各20問を週替わりで解く
小テストの時間。学ぶ姿勢を作るきっかけにしようという狙い。

この日の課題は「動物を使ったことわざ」。
解答はその場で配らない。学生が事務局まで受け取りに行く。
図書館には、小テスト参考文献が並ぶ専用コーナーも設けた。

基礎ゼミは、3学部の1年生664人を十数人ずつに分けた混成クラス。
図書館の利用方法やリポートの書き方、討論・発表の仕方、
授業でのノートの取り方などを1年かけ、手取り足取り教える。
40人もの担当教員が、学力を把握し、学期ごとの学習目標を
達成させるため、学生との面談を重ね、相談に乗る。

笹金光徳副学長(50)は、「ここまでやるのは、おせっかいだと思う。
だが、何の考えもなく大学に来た多くの学生たちに、
将来に向けて今やるべきことに一時も早く気づいてほしい」。
それは、「社会に出る最後の関門としての大学の責務」。

取り組みが本格的に始まったのは、
OBである藤井耐現理事長(58)が学長に就任した2002年。
旧制高千穂高等商業学校は、企業のトップも数多く輩出した名門。
18歳人口がピークを迎えた1990年代前半も、受験者は1万人超。
しかし、就任時はその5分の1。
授業の欠席率や退学率の高さ、学生の覇気のなさに、
藤井さんは危機感を募らせた。

教職員との合宿で問題点を洗い出し、入学してすぐに、意識を変え、
意欲を喚起し、知識を増強する必要があるという結論。
入学式直後の静岡・下田での合宿では、
教職員や上級生と共に学生生活について話し合い、
レクリエーションに汗を流し、大学生意識を醸成する。

出席を取る授業を増やし、教員の意識変革にも力を入れた。
基礎ゼミの授業は、互いの授業参観を奨励。
勝手に休講したり、授業時間を短くしたりする教員はゼミ担当から外した。
熱心な教員とボーナスの差を、30万円もつけたことも。

反発も出たが、「大学全体で危機意識を共有して教育に
取り組んでいかなければ、学生は変わらない」。
昨年度の退学者数は、約4%と前年度をわずかに上回ったものの、
ここ数年を見れば減少傾向。
出席をとらない藤井さんの授業「経営管理」も、
約9割の学生が顔をそろえるように。
「まだ途上。だが光は見えてきた」(笹金副学長)という改革が続く。

◆退学率

日本私立学校振興・共済事業団が2005年度、550私大に尋ねた
退学率は平均2.9%。年間約5万5000人が退学。
船戸高樹・桜美林大教授(大学マーケティング戦略論)によると、
個々の退学率は1%未満から10%以上、
地方で小規模、資格につながる学部を持たない大学は高い傾向。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080606-OYT8T00273.htm

[第1部・ブルガリア](下)指導陣確執 癒えぬ傷

(読売 5月14日)

「一匹オオカミの首が太いのは、すべてを自分で賄うからだ」と、
他力にすがる行為を戒めることわざが、ブルガリアに存在。
幅広い分野で、優秀な個人が多く存在するにもかかわらず、
集団行動が苦手で能力を発揮し切れない。
自他共に指摘する国民の特徴。
かつての輝きを取り戻そうと苦しむ新体操界は、その縮図。

ネシュカ・ロベバさん(61)。
代表チームのヘッドコーチとして黄金期を実現した指導者は、
今、ソフィア市内でダンス・カンパニーを主宰。
「もう競技の世界には戻らない。嫌気がさしてしまった」。
1999年の世界選手権で惨敗した責任をとり、辞任。
しかし、本当の理由は連盟のマリア・ギゴバ現会長(61)との確執。

2人とも、60年代後半~70年代初めの名選手。
「現役時代に格上だったギゴバが、成功したロベバに嫉妬した」、
「ロベバが富と名誉を独り占めしたせいだ」。
中傷が飛び交ったが、この手の話で理由は後から膨らむもの。
真相はともかく、感情のもつれは明らかにあった。

当時、日本からコーチ留学して指導力を認められ、
ナショナル選手の強化に携わっていた山本里佳さんは、
双方の間を駆け回った。
「どちらも新体操を愛していたから、悲しくて仕方なかった。
『意地を張らないで手を取り合って』と説得したんですが……」。
結局、溝は埋まらなかった。

首脳陣の衝突は、後進にも波及。
89年に社会主義体制が崩壊して混乱の時を迎え、
イグナトバ、ゲオルギエバ、パノバといった元女王たちは、
生活の糧を求めて国外へ去った。
一枚岩でない組織は、彼女らを引き留められなかった。

現ヘッドコーチのイリアナ・ラエバさん(45)は、
「昔は選手だけでなく、コーチの養成も優れていた。
指導者を育てるスタイルを持っていたから継続性があった」と、
自戒を込めて決意した。

「コーチが一体となって強化にあたる。
選手の育成を含め、北京には間に合わないけど、
ロンドン五輪までに何とかしてみせる」

練習場の確保もままならなかった時代は、ようやく終わりを告げ、
2年前に新しいナショナルチームの体育館がオープン。
改修費約1億6000万円で、フロア3面のアリーナ、マッサージルーム、
30人収容の宿泊施設、食堂などを整備し、
トレーニングの環境は飛躍的に改善。
まだ遠くにかすんでいるけれど、復活への光は確かに見えている。

http://www.yomiuri.co.jp/olympic/2008/feature/continent/fe_co_20080514.htm

2008年6月20日金曜日

脳を元気に (1)運動で血流高まる

(読売 6月11日)

いつまでも若く、柔軟な頭脳を維持したい。
そんな願いに、科学の光が当たる。
実証されつつある脳を元気にするコツを紹介。

東京都品川区中延のアーケード街近くに、楽器メーカー「ヤマハ」が
開設した「音楽と健康スタジオ」教室がある。
リズミカルな音楽に合わせ、熟年世代から80歳代までの10人が、
手足の曲げ伸ばし、ストレッチ、軽いエアロビクスなどに汗を流す。
合間には、合唱団のような発声練習も行う。
振るとマラカスのような音を出す「サウンドフープ」という器具を使い、
リズムに体の動きを乗せていく。

教室は、「運動と音楽の両面から脳を刺激する」
(同社の宮下順治・プロジェクトリーダー)ことを目的に、
2005年から始まった。1回1時間、月3回。
「無理せず、継続が大事」。

予備的な実験で、教室の参加者は、思考、計算などをつかさどる
脳の前頭葉(額に近い部分)の血流が高まることが確認。
会員約200人へのアンケートでは、「気持ちが明るくなった」、
「若返った気がする」と効果を挙げる声。

運動が、筋肉や心肺機能を向上させるだけでなく、
脳を元気にさせるという研究成果が、次々に発表。

米国の研究チームは、ネズミに自由に運動させると、
神経細胞を元気にする「BDNF」が脳内で増加することを突き止めた。
「BDNFを増やす引き金は、筋肉細胞が分泌する別のたんぱく質」と、
東京大の柳原大・准教授(身体運動科学)は説明。
「ネズミは、自発的には激しい運動をしない。
人間ならウオーキングや水泳、ハイキングなど適度な運動が当てはまる」。
運動後の壮快感は、脳が元気になるサインでもあるようだ。

http://www.yomiuri.co.jp/iryou/medi/plus/20080611-OYT8T00330.htm?from=nwla

スペースシャトル:ディスカバリー、無事帰還 星出さん、2週間ぶり地球に

(毎日 6月15日)

国際宇宙ステーション(ISS)に、日本の有人宇宙施設「きぼう」
本体の実験室を設置した星出彰彦宇宙飛行士(39)らが搭乗する
米スペースシャトル「ディスカバリー」が、ケネディ宇宙センターに着陸。
初の宇宙飛行を終えた星出さんは、2週間ぶりに地球に帰還。

ディスカバリーは、マーク・ケリー船長(44)ら7人が乗り組み、
5月31日に打ち上げられた。
飛行4日目に、星出さんがISSのロボットアームを操作し、
実験室を取り付けた。
翌日に入室した後、飛行10日目までに実験室の起動や、
きぼうのロボットアームの機能点検を行い、
正常に作動していることを確認。

流体力学と生命科学の2個の実験装置も実験室に運び込まれ、
これで室内実験ができる施設が整った。
きぼうを運用する宇宙航空研究開発機構は8月上旬から、
流体力学の実験を皮切りに本格的な実験を開始。

きぼうは、今年度末に最後の船外実験施設が
スペースシャトルで打ち上げられ、完成。

http://mainichi.jp/select/science/news/20080615ddm041040060000c.html

杉松公使の新墓碑除幕 ブラジル・リオ

(岩手日報 6月15日)

ブラジル移住事業を進め、同国のリオデジャネイロ市で客死した
盛岡市出身の杉村濬(ふかし)駐ブラジル第三代公使
(1848-1906年)の新たな墓碑除幕式は、
同市のサンジョアン・バティスタ墓地で
南米訪問中の達増知事やブラジル岩手県人会の千田曠暁会長らが出席。
達増知事、渡辺幸貫県議会議長、千田会長ら同県人会員、
同県人会賛助会の訪問団(南部利昭団長)一行ら約50人が出席。
知事と千田会長が新たに整備した墓碑を除幕し、全員で黙とう。
杉村公使は、外務省通商局長などを務め、日本人移住の必要性を説いた。
駐ブラジル公使として、1905(明治38)年にリオデジャネイロ市に着任。
移住事業の準備を進めたが、日本人移住第1号の入国2年前に病没。
歳月の経過で墓碑にひびが入ったことなどから、
岩手県人会が内外に募金を呼び掛け、創立50周年の記念事業として、
「第三代駐伯日本国 杉村濬之墓」などと記した
高さ0・8メートル、幅1メートルの黒御影石の墓碑を新たに整備。
千田会長は、「ブラジル移住100年の歴史をつくった人であり、
立派にしたいという思いで完成できた」と振り返り、
達増知事は、「海外最大の日系社会の礎を築き、古里の方々に
墓参してもらえるのは、国際人として本懐を遂げたと、ここで実感した」。
盛岡藩士の次男でもあった杉村公使について、
南部家45代当主の南部訪問団長は、
「存在は県民にあまり知られておらず、先人を知る取り組みを広げてほしい」。

学生をつくる(3)日本語鍛え 学ぶ姿勢

(読売 6月5日)

予備校からも人材を得て、習熟度別に日本語を教える大学がある。
「見て!『新明解』の『恋愛』の説明、生々しい~」、
「こっちは、あっさりだよ」、「おもろいやん」

5月初め。連休前の街のにぎわいをよそに、
京都精華大学(京都市)の講義室では、約30人の学生が
机に積んだ6種類の辞典を熱心に見比べては声を上げていた。
「日本語リテラシー」の授業。
リテラシー(読み書き能力)にとどまらず、自ら調べ、考え、表現できる
大学生に育てることを目指した人文学部1年生の必修科目。

新明解国語辞典(三省堂)の面白さをつづった「新解さんの謎」
(赤瀬川原平著、文春文庫)を読ませ、
実際に他の辞典と比べて感想を書かせていた。
辞典の使い方を覚えさせるだけでなく、日本語の豊かさに気づかせる。

「今の子は、関心の対象が狭いが、語彙が豊かになれば関心も広がる。
そこから大学での学びが始まる」。
大手予備校の河合塾と駿台予備学校で、小論文を通算約20年教えた
日本語リテラシー教育部門長の森下育彦教授(53)が授業内容に胸を張る。

森下教授は、事実羅列型文章の多さが気になっている。
例えば「私の好きな季節」を書かせると、「春は花が咲く。入学式がある」と
表面的な現象を連ね、なぜ好きか伝えようとしない。
「工夫しなくても伝わるメールに慣れているからだろうか」

本格的に授業が始まったのは3年前。
日本語リテラシー教育部門は、学長直属の組織として発足、
学外からも人材を集めた。
教員4人と助手10人でチームを編成し、徹底的に指導をするため、
課題作文を書かせて習熟度別クラスに分ける。
漫画や映画も教材に、課題に沿って何を書きたいかをメモ。
それを元にした討論や教員との面談、添削指導も経て、
1学期に1000~2000字の課題作文五つを完成。

今年の場合、約450人の1年生が30人前後ずつの11クラス。
課題は、上位クラスでは、「記憶に残ること」、「他者との間合い」、「変身」
など抽象概念も入り、下位クラスでは「私が影響を受けた人・モノ・こと」など。
学生の自尊心に配慮し、森下教授なら「Mクラス」など
担当教員の頭文字で表示する。
どのクラスでも、課題を通して自分を客観的に見つめ、
他者とのかかわり方を考えさせる構成は共通。

欠席すると、呼び出しを受けるほど出席管理は厳しいが、
昨年度の学生満足度は、どのクラスも9割以上。
人文学部は今年度、定員割れ。
在籍学生の高評価が受験生には届かない。

悩みながらも今後、同様の授業を、漫画、芸術、デザインの3学部にも
広げ、全学的な取り組みに。
漫画家でもあるヨシトミヤスオ副学長(70)は、
「学生の学びを、大学側が一からきちんとおぜん立てしなければ
ならない時代だからだ」

◆大学生の日本語力

独立行政法人「メディア教育開発センター」(千葉市)は4年前から、
入学したばかりの大学1年生に、日本語の語彙力、文法や漢字の
知識を問うテストを実施。
昨年度の調査(54大学、約2万9000人)では、国立大の9割が
高3レベルだったが、私立大では中1から高3まで幅広く、
中学生レベルが6割以上の大学も。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080605-OYT8T00262.htm

[第1部・ブルガリア](上)新体操の伝統 刷新拒む

(読売 5月12日)

ブルガリア各地の民俗舞踊は、
細分化すれば、数百種類に及ぶと言われ、
五つのプロチーム、100以上のアマチュア団体が、
貴重な文化を現代に引き継いでいる。

雨ごいの祈り、求婚、クリスマス……。
遠い昔から、体の動きで感情を伝えるのは、自然な作業。
歴史が導いたのか、この国で新体操が大いに発展した。

1963年に第1回大会を迎えた世界選手権で、
ブルガリアは常に頂点を争い、87年の第13回大会までに
延べ7人の個人総合優勝者を輩出。
93年の第17回大会から、マリア・ペトロバが3連覇。
ところが、これを最後に女王は誕生していない。

首都ソフィアの小さなカフェで、エマヌイル・コテフさん(68)は
エスプレッソを一口すすり、「残念ながら北京五輪のメダルも難しいな」。
30年以上、新体操に接していた元新聞記者。

ブルガリアの持ち味は、巧みな手具操作と豊かな表現力。
しかし、難度の高い技の数や、体の柔軟性を重視する方向へ
採点規則が改定され、この分野を得意にしていた
ロシア、ウクライナなどの旧ソ連勢が、90年代後半から表彰台を独占。

芸術性にこだわるブルガリア選手への、得点上の低い評価に、
異を唱えるファンは少なくない。
新体操の本来の魅力を体現しているのに、というわけだ。
よしあしはさておき、伝統国の誇りがスタイルの刷新を、
言い換えれば世界のトップへの追随を拒んでいる。

さらに、別の側面も。
ブルガリアは第2次世界大戦以降、「ソ連16番目の共和国」
ささやかれるほど、旧ソ連に忠実な体制を敷いていたが、
89年の民主化を経て、少なくとも一般の国民の間では「恨み節」も噴出。

旧ソ連の支配で、自由な社会の到来が遅れた。
そうした事情もかんがみて、コテフさんは「強くならなきゃならん。
だが(新体操界が)旧ソ連勢のマネをするのは許されない」。

ナショナルチーム練習施設の壁に、自国の名選手と並び、
ロシア勢の写真が飾られている。
「誰がライバルなのか知ってもらうためよ」。
ブルガリア連盟、マリア・ギゴバ会長(61)の笑みは、
どこか緊張感に似た空気を漂わせていた。

民俗舞踊は、独自の形態を保って受け継がれ、
他の土地のものと融合することは、まずあり得ない。
「個性を大切にする国。マネは、文化を捨てるのと同じ」。
図らずも、新体操が抱えるジレンマを言い当てている。

http://www.yomiuri.co.jp/olympic/2008/feature/continent/fe_co_20080512.htm

2008年6月19日木曜日

通販番組でテレ朝に警告 乗馬器具の効果めぐり キー局初、公取委

(共同通信社 2008年6月13日)

通販番組で乗馬型運動器具「ロデオボーイII」について、
1日1時間の運動で短期間に体重が減ったと紹介したのは
景品表示法違反(優良誤認)の恐れがあるとして、
公正取引委員会は、テレビ朝日に再発防止を求め警告。
通販番組で民放キー局への警告は初めて。

公取委は、「大きな影響力を持つ全国ネットのキー局の表示が、
器具本来の効果と懸け離れていたのは問題だ」。

同社は2006年6月から昨年6月にかけ、
自社の通販番組「セレクションX」と「ちい散歩」で計約200回、
「シェイプアップ3週間チャレンジ」として、体験モニター14人による
ロデオボーイIIの効果を放送。

「1日1時間だけの運動で、6.6-1.4キロ体重が減った」としたが、
モニターのうち6人は、食事制限やロデオボーイII以外の運動も続けていた。
テレビ朝日広報部は、「モニターには普段通りの生活をお願いし、
自発的な食事制限があったことは事後の調査で判明した」と説明。

公取委によると、ロデオボーイIIの負荷はウオーキング程度。
1日1時間の運動で減るのは、3週間で0.4キロぐらいで、
数キロ単位でやせることはあり得ないとしている。

テレ朝は、1台2万9800円で約5万3000台を販売、
約15億円を売り上げたという。

テレビの通販番組では昨年、通販大手の
ジュピターショップチャンネルとQVCジャパンが製品の防カビ・消臭効果の
不当表示で公取委の排除命令を受けたほか、
フジテレビ系列のディノスも、ひな人形セットの価格表示で警告。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=75282

学生をつくる(2)単位取得「健診」が義務

(読売 6月4日)

健康管理を通じて、学生生活を支援する大学がある。
4月の入学式から数日後。
金沢大学は、新入生1823人に3日かけて健康診断を行った。
身長・体重の測定、血圧検査や採血など、お決まり項目の最後に、
臨床心理士との面談も用意。
心理士の女性は、「少しでも不安なことがあったら、いつでも相談してね」
と優しく学生に悩みがないかを聞き、
学生による悩み相談部屋「ピアサポートルーム」の存在も紹介。

同大では今年度から、健康診断の受診を、1年生の必修科目
「大学・社会生活論」の単位取得の条件に。
受診しないと、運動部系のクラブやサークル活動の試合に参加出来ない。
診断のデータに少しでも異常があれば、学生に対して連絡を取る。

この科目の前期では、喫煙、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)、
熱中症などの知識や、健康診断結果の読み方も教える。
ビデオ教材を視聴後の確認テストもする。
同大の校医、吉川弘明教授は、
「健康教育は、自分でものを考える手段の一つ。
生涯にわたって、健康の重要性を考える姿勢を身につけてほしい」。

精神面のケアも重視する。
学内の保健管理センターの相談室にはここ数年、相談が増えている。
健康診断などで異常がわかった学生には、大学側から連絡を取るが、
カウンセラーの人数も限られており、
組織的に予防からかかわることが必要。

臨床心理士の足立由美講師は、
「大学では、自発的に動かなければ特定の人と一緒になる機会がなく、
対人関係を築けない学生もいる」。
大学が、約4キロ離れた二つのキャンパスをつなぐシャトルバスを
新設した狙いの一つにも、学生の交流の促進を図る。
授業以外の学生の居場所を確保する「コミュニケーションプレイス」
4か所設置、今後も拡大する予定。

金沢大の一連の取り組みは昨年度、文部科学省の
「新たな社会的ニーズに対応した学生支援プログラム(学生支援GP)」
に4年間の計画で採択。
「心と体の育成による成長支援プログラム-社会に幸せをもたらす
生活の知恵を持った学生の育成-」と名前の付いたプログラムには、
大学入学という大きな変化に直面する学生に対して、
心身ともに大学が健康作りを管理することで、
学生生活を軌道に乗せる狙い。

大学の取り組みに対して、ある学生は
「健康管理なんて、自分でやるのが当たり前。
試合に出られなくするところまでやるのもどうかと思う」と懐疑的な声。
一方で、一人暮らしを始めたばかりの1年生の中には
「自分で出来ないところを大学が面倒をみてくれて、安心感がある」。

学習を支えるため、学生の生活面に大学はどこまで関与すべきか。
金沢大の取り組みは、そのことの問題提起とも。

◆GP Good Practice(すぐれた取り組み)の略。

文部科学省は大学を競わせ、教育面で他大学の参考になる
取り組みに補助金を出している。
2003年度からの「特色ある大学教育支援プログラム(特色GP)」と
04年度からの「現代的教育ニーズ取組支援プログラム(現代GP)」
の額が大きかったが、08年度から統合して
「質の高い大学教育推進プログラム(教育GP)」に。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080604-OYT8T00241.htm

WHO:「骨粗鬆症で骨折」ネットで予測 ツール開発、公開

(毎日 6月10日)

世界保健機関(WHO)は、骨粗鬆症による骨折リスクを
予測する評価ツール(FRAX)を開発。
40歳以上が対象、身長や体重、喫煙や骨折歴の有無など12項目を指標、
10年以内に背骨や腕、大腿部骨折が起きる確率を予測。

骨粗鬆症は、骨密度が低下して、骨がもろくなる病気で、
高齢者の場合、骨折して寝たきりになる場合がある。
日本には、約1000万人の患者がいると推定。

専用サイト(http://www.shef.ac.uk/FRAX/tool_JP.jsp?locationValue=3)、
12項目のデータを入力。
大腿骨頸部BMD(骨密度)は省略できる。
発症リスクが表示され、数値が10%以上になると要注意。

評価法を開発した英シェフィールド大のジョン・ケーナス名誉教授は
「世界中の疫学調査をもとに作った。
骨密度不明でも骨折の可能性を予測できる」。

折茂肇・骨粗鬆症財団理事長は
「今後、数値がいくつになったときから治療が必要になるか
について基準を作りたい」。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2008/06/10/20080610ddm013100130000c.html

研究成果、現場に還元 盛岡の東北農研センター

(岩手日報 6月12日)

盛岡市下厨川の独立行政法人農研機構東北農業研究センター
(八巻正所長)は、研究成果を農家らに直接実演、説明する
「出前技術指導制度」を発足。

研究の成果が生産現場に届きにくいという反省をもとに、
技術の普及活動に本腰を入れる。

同制度は、農業者や農業改良普及センター、企業らが対象。
研究者らが現地での技術指導や説明、講演などを行う。
指導者の出張経費は、東北農研センターが負担。
試作農機具の運送費や説明会開催経費は、原則として応募者が負担。

東北農研センターでは毎年、研究成果をまとめた冊子を発行。
成果発表会も開いてきたが、参加するのはほぼ研究者で、
農家は皆無。
技術普及には、研究者個人の努力に頼る面も多かった。

前身の東北農業試験場時に開発された「寒締め野菜」など、
産地で大きな成果を挙げている技術も多いが、
独立行政法人化した2001年以降、
県や各農業改良普及センターとの関係も薄れ、
生産現場で技術普及をするにも、「手足がない状態だった」。

出前技術指導制度は、現場の声を聞き、
研究の完成度を上げるとともに新研究につなげるのも狙い。
東北農研センターの児嶋清産学官連携支援センター長は、
「これまでは一方的に研究発表するだけで、
現場で実際に生かされていなかった。
農家や農業改良普及センターなどと連携し、技術を高めたい」。

同制度への応募方法や東北農研センターの研究技術紹介は
ホームページhttp://tohoku.naro.affrc.go.jp/
問い合わせ、産学官連携支援センター(019・643・3402)。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20080612_10

「JŌDO」ブランド発信 平泉の全国展開委員会

(岩手日報 6月13日)

平泉文化に関係する、全国展開の新商品を開発し、
市場調査やPRして売り出そうという全国展開委員会の初会合は、
平泉町の平泉商工会館で開かれた。

純米酒「延年」、かわらけせんべい、新たな秀衡漆器の3商品を
開発し、「JŌDO」ブランドで販売。

同商工会(千葉庄悦会長)が、中小企業庁の
「地域資源全国展開プロジェクト」で800万円の
補助を受け、委員会を設立。

初会合には、仙台市のコンサルタントや毛越寺、
平泉観光協会などの代表ら約20人が出席。
事業の基本概念として、「香る浄土」、「味わう浄土」、「触れる浄土」
を掲げ、持ち帰れる商品開発を目指す。

純米酒は、一関市の世嬉の一酒造が同市の骨寺村荘園で
栽培した米で醸造し、毛越寺の南洞頼教貫主が「延年」と揮毫(きごう)。
10月の発売を目指す。
せんべいは、町内の菓子店にレシピや材料を提示し、
地元の米粉やきな粉、小麦粉を使って商品開発を目指す。
漆器は、同町の翁知屋が中心。

委員長を務める東北地域環境研究室代表志賀秀一さんは
「地元の業者を巻き込んで全国、世界に発信できる商品を開発し、
統一ブランドで売り出したい」。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20080613_8

[第1部・ルーマニア](下)細る体操王国

(読売 5月10日)

女子体操の強豪、ルーマニアで、代表監督の背負う重圧はすさまじい。
2005年に就任したニコラエ・フォルミンテ氏(51)は北京大会で、
初めて五輪の指揮を執る。
「選手は余計なことを考えず頑張ればいい。責任は我々がとる」
と声を張り上げて一転、肩をすぼめた。
「実は今の時代、うまく指導するのは難しいんだ」。
社会の変化の波は、体操界にも及んだ。
一流選手を目指す子供が、減っている。


首都ブカレストから北西へ約400キロ、人口8万人のデバ。
1978年に開校した「国立スポーツ専門学校」が、強化の拠点。
シニアのナショナルメンバー14人は、敷地内の寮に住み込み、
7人のコーチに見守られ、1日に6~8時間の練習。

常に世界の頂点を狙う姿勢は30年間、全く変わらない。
ただし、樹木の幹は同じ太さでも、枝葉の形が以前と違う。

例えば、1年に1度しか許されなかった家族との面会は近年、
事前に手続きをしておくことで、無制限に認められる。
体重の増加を防ぐための食事制限も、ほぼ自己管理に任されている。
フォルミンテ氏が、「厳しすぎると、ついて来ない子が出るかもしれない」。

実際に、トラブルが起きている。
五輪で3個の金メダルを獲得したカタリナ・ポノルが、
何度も引退と復帰を繰り返し、昨年の世界選手権後に表舞台から消えた。
実力は衰えていない。
関係者によれば、「生活まで縛られるのは、おかしい」と、
集中強化システムに対する不満をぶちまけ、結局、代表チームを去った。

専門学校のアドリアン・リーガ校長は、
「インターネットの普及などで、情報収集が簡単になった。
子供の価値観の多様化が、体操人口の減少につながっている」。
都会から遠く離れたデバは、かつて少女たちを体操以外の刺激から
隔離するのに、うってつけの環境。
もはや、その壁はなくなったも同然。

もう一つ。 「(89年12月の革命で)社会主義体制が崩壊し、
体操での成功が、必ずしも人生の成功と結びつかなくなった。
だから、若者はスポーツよりも、コンピューターなど、
将来の就職に役立つことをしたがる」(リーガ校長)

ルーマニアは、07年に欧州連合(EU)加盟、社会全体が変革の途上。
ナディア・コマネチらを輩出した伝統国にとって、
本当の試練は、これから訪れるのかもしれない。

http://www.yomiuri.co.jp/olympic/2008/feature/continent/fe_co_20080510.htm

2008年6月18日水曜日

学生をつくる (1)意欲引き出す 授業や行事

(読売 6月3日)

学生のやる気を奮い起こすため、大学が知恵を絞る。
「おめでとう」「ようこそ」--。
えんじ色のアカデミックガウンを着た浜名篤学長(51)が
新入生を1人ずつ壇上に招き、手を握っては声をかけていた。

満開の桜に彩られた関西国際大学(兵庫県三木市)の入学式。
学長に就任した3年前に始めた握手を、今年は427人と交わした。
30分以上もかかる歓迎の儀式に、
新入生たちは戸惑いながらも笑顔を見せる。

入学式後も「歓迎」は続く。
学長や上級生らが、南京町など神戸市内の観光地を1日がかりで
案内する「神戸ウオーカー」、キャンパス内でのバーベキュー大会……。
「本学生として、自信を持って一緒に学ぼうと伝えたい。
そのための活動だ」と浜名学長は強調。
同大が一貫して重点施策に掲げるのが、「鉄は熱いうちに打て」。

10年前の開学当時、無気力な学生が目立ち、退学率の高さにも悩んだ。
4年間で一つでも「これならできる」という自信をつけて
社会に送り出すには、入学直後からの戦略が欠かせない。
次々と編み出された歓迎行事は、その第1弾。

開学の翌年には、成績優秀者の授業料の5~10%を免除する
奨励金制度を創設。
4年前には学習や資格取得、課外活動に力を入れると
ポイントがたまるマイレージシステムも始めた。
資格取得5~10ポイント、大学祭での活躍10ポイントといった具合。
1000ポイントたまると、米国研修旅行を贈る。
その達成者はまだ1人だが、奨励金対象者は全体の2割前後。

こうした工夫で、「面倒見のいい大学」という世評が広まり、
昨年度の退学率は約4%と、3年前に比べて半減した。
今年度からは、1年生の必修科目サービスラーニング。
社会貢献活動を通し、学ぶ目的や意味を見つめ直してもらう。

浜名学長は、よく学生に将来の夢を尋ねる。
「ほどほどの暮らしができる中小企業で働きたい」が大半。
将来の夢はない、との答えも少なくない。
「『面倒見のいい大学』は、過保護と同義語という面も。
大学という小さな社会で充足し、新しい学びへの意欲が乏しくては困る」、
校外に出て行くことを考えた。

山下泰生副学長(48)と山本秀樹講師(39)が、
教育学部教育福祉学科の2年生3人を連れ、カンボジアに1週間滞在。
今後の授業展開に、学生の視点を取り入れるため。

まだ内戦の後遺症を引きずる国で、病院や児童養護施設に
足を運んだ学生たちが様々なことを吸収する姿を見て、
山下副学長は生の現実を通した学びの効果を確信。
「1年生にもぜひ経験させてあげたい」と参加者、村井香那さん(20)。
ただ、1年生全員を学ばせるのは、衛生・治安面から難しいと判断、
カンボジアでの学習は自由参加とし、今年度は、地元を中心に
専門分野と関連ある活動をすることに。
三木市と韓国の子供たちの交流の橋渡しをしたり、
同市内の高齢者との交流を深めたりするための授業が始まっている。

「新入生のやる気を起こす効果はある。
今こそ、教員の力量が問われる」と山下副学長。
問題は、教員の負担感だ。

カンボジアに渡航する前の数週間、山本講師は学生たちと何度も
学習会を開く一方、現地での安全確保について調べ、
保護者向けパンフレットも作った。
研修後も、学生が発案したチャリティー募金の意義などについて
共に学び、「行ってきました、だけでは学びの意欲は喚起できない」。

どの教員も同じように取り組めるのか。
学生の学びを変える試みは、教員を変える試みでもある。

◆サービスラーニング

社会貢献を通して学生が学ぶ意味や目的を確認し、
学校で得た知識を深める体験学習。
調査・交渉・企画力を身につけ、職業意識や社会への関心も高める。
欧米では、次代を担う市民育成にもつながるとして、
大学や高校が様々な形で導入している。

◎「初年次教育」で学ぶ習慣確立

大学生に学ぶ意欲やコミュニケーション力を持たせるため、
新入生を集中的に教育する「初年次教育」が、全国的な広がり。
大学教育の質の保証が厳しく問われている。
学ぶ意欲を欠いたままでは中退者増にもつながり、学校経営を圧迫。

初年次教育学会(会長=山田礼子・同志社大学教授)も設立。
会員には、東京大や慶応大、早稲田大など約50大学の教職員約200人。
全国の国公私立大の1980学部長のうち、回答した1378学部の9割が
何らかの取り組みを実施。

1年生段階では、
〈1〉コンピューターを使った情報処理や通信の基礎技術
〈2〉リポートや論文の書き方などの文章作法
〈3〉自立した自己学習の基礎
〈4〉図書館の利用・文献探索の方法
〈5〉学生生活における時間管理や学習習慣の確立--が重視。

大学は、4年間で学生の力をどれだけ伸ばせるか。
その初めの一歩として、初年次教育に熱い視線が集まっている。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080603-OYT8T00244.htm

毎日100%果汁を飲む小児はより良い栄養摂取ができる可能性

(Medscape 6月2日)

100%果汁を毎日摂取する2-11歳の小児は、
過体重または肥満のリスクが上昇することなく、
より良い栄養摂取ができることを示す横断的研究の結果が
『Archives of Pediatrics & Adolescent Medicine』に報告。

ベイラー医科大学(ヒューストン)のTheresa A. Nicklasらは、
「全国標本を用いた最近の諸研究では、
100%果汁の摂取と体重との間に関係はないことが示されている」

「この研究の2つの目的は、2-11歳の全国を代表する小児の標本に、
100%果汁の摂取が(1)栄養摂取と食品群、(2)体重の状態に
影響を及ぼすかどうかを明らかにする」

National Health and Nutrition Examination Survey (1999-2002)
のデータの二次解析において、2-11歳の小児3618例を対象に
果汁の摂取について検討。
果汁の1日の平均摂取量は4.1液量オンス(約121mL)、
平均エネルギー価は58キロカロリー、全エネルギー摂取量の3.3%に相当。

100%果汁を飲む小児は、100%果汁を飲まない小児と比較し、
エネルギー、炭水化物、ビタミンC、ビタミンB6、カリウム、リボフラビン、
マグネシウム、鉄、葉酸の摂取量が有意に多く、
総脂質、飽和脂肪酸、任意摂取の脂質(discretionary fat)、
添加した砂糖の摂取量が有意に少ない。

100%果汁を摂取した小児は、摂取しない小児より、
全ての果物の皿数も有意に多い。

過体重である可能性について、
果汁摂取者と非摂取者との間に有意差なし。
「小児が摂取した100%果汁の量は、米国小児科学会(AAP)が推奨する
100%果汁の最大量に満たなかった。
2-11歳の小児では、100%果汁の摂取は非摂取より優れた栄養摂取と関連、
体重の状態や過体重である可能性とは関連しなかった」

研究の限界として、因果関係の判断を除外した横断的デザイン、
エネルギー摂取の過小報告または過大報告の可能性、
その他の報告上のミスが挙げられる。

「総合的健康食の一部としての100%果汁の摂取は、
その栄養学的利点に基づいて奨励されるべき。
科学的エビデンスの重要性は、100%果汁摂取の栄養学的利益を
明らかに裏付け、小児における過体重と100%果汁摂取との
関係を裏付けていない」

出典Arch Pediatr Adolesc Med. 2008;162:557-565.

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=SPECIALTY&categoryId=580&articleLang=ja&articleId=74700

バーチャルエクササイズで子供が熱くなる kids-feel-the-burn-with-virtual-exercise

(WebMD 5月30日)

アウトドアスポーツの代わりとなるものではないが、
ニンテンドーWiiのような身体を動かすタイプのテレビゲームが
子供に汗をかかせ、カロリーを消費させるのに役立つかもしれない。

米国スポーツ医学会(American College of Sports Medicine)で
発表された2つの新しい試験の結論。

ネブラスカ大学の運動科学准教授Gregory Brownは、
「お子さんがテレビゲームで遊び、あなたがそのことを知っているなら、
体を動かすタイプのゲームは、親指だけを動かす
従来のジョイスティックを用いるゲームよりも健康に良い」。

バーチャルエクササイズプラットフォームは、
自宅にいながらにしてゲーム相手と対戦でき、
内気な子供に運動を促進するのに実際に役立つ。

学齢期および十代の子供のほぼ5人に1人が肥満。
「肥満の蔓延と戦うため、われわれができることは何でも役に立つ」。
小児期および思春期の肥満は、成人期の肥満および
心血管系疾患のリスク上昇に関連。

Brown博士らは、子供25名(平均年齢11歳)を対象。
子供のカロリー消費は、WiiボクシングおよびWiiテニスをした場合、
従来の手持ち型テレビゲームをした場合よりも2~3倍多い。
平均心拍数は、80拍/分から120拍/分に急激に増加、
「これは、ウォーキングやスローダンス時の心拍数とほぼ同じ」。

子供がダンス・ダンス・レボリューション
(テレビの前で、画面の指示と映像に従ってダンスするゲーム)
をした場合、さらにカロリー消費が大きくなると予測したが、
3種類のゲームの効果は同じだった。

グラスゴー大学(スコットランド)の博士課程学生兼講師(PhD candidate)
Viki Penprazeも、同様の試験をし、
2種類の身体を動かすゲームと、手持ち型のゲームおよび
シンプトンズのDVD鑑賞とを比較。

被験者は子供13名、10歳前後。
DVDを鑑賞した場合、従来のハンドコントロール型のテレビゲーム
をした場合、読書によるカロリー消費を上回ることはない。
しかし、Dance Mat ManiaおよびEye Toy Boxing
(プレイヤーがボクサーの真似をする)をした場合、
子供の心拍数は80拍/分から最高で160拍/分まで急激に増加。


この心拍数は、早足でのウォーキング、ジョギングと同等。
子供は座って行う活動に比べて、2~3倍カロリーを消費。

オランダで実施された第3の試験では、
すべてのゲームの結果が同じではないことが指摘。
研究チームは、6種類のゲームシステム(ダンス・ダンス・レボリューション、
Wiiテニス、Eye Toy Beach Volleyball、Xerbike、Lasersquash、
Apartgame)を比較。

その結果、WiiテニスおよびEye Toy Beach Volleyballでは、
他のゲームほど子供の消費カロリーが大きくない。
TNO Prevention and Health(ライデン)のSanne de Vriesは、
「身体を動かすタイプのゲームは、手持ち型ゲームよりも子供によい」

セントビンセント病院(ニューヨーク)の指導リハビリテーション医
Edward J. Mendelsohnは、「新しい身体を動かすタイプのゲームは、
カロリー消費に役立つということに疑問の余地はない」。

Mendelsohn博士は、7歳の息子と数ラウンドのWiiボクシング後、
よく汗をかく。
屋外に出て、スポーツを行うことに取って代わるものはない。
しかし、雨降りなら、このようなゲームは子供の生活に
フィットネスを取り入れるため、楽しくて簡単な方法

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=SPECIALTY&categoryId=580&articleLang=ja&articleId=75042

[第1部・ルーマニア](上)「妖精伝説」色あせず

(読売 5月9日)

枯れ枝のように細い手足の少女が、ルーマニア体操連盟の幹部に
付き添われ、代表チームの練習場に現れた。
アンカ・グリゴラシュさん(50)は、あの日の衝撃を忘れられない。

「私も選手で、新顔を気に留めなかった。
でも、彼女が練習を始めたら、あまりの才能に『この世の人間か』と疑った」。
30年以上も昔の話。ナディア・コマネチは文字通り、宙を舞っていた。

1969年、画期的な強化システムを導入。
優秀な選手を、北東部のオネスティに集めて寮に住まわせ、
練習と生活を一括管理し始めた。
さっそく成果が表れる。
76年モントリオール五輪で、14歳のコマネチは史上初の「10点満点」を連発、
個人総合など3個の金メダルを獲得。
愛らしい容姿で、「白い妖精」と呼ばれ、
世界各国の好意的な視線を一身に浴びた。

しかし、英雄の名誉を得たコマネチは皮肉なことに、自由を失う。
チャウシェスク大統領の独裁政権下で、
体操は国威発揚と海外向けの宣伝に利用。
亡命を恐れる権力者は、現役引退後のコマネチに、
外国への渡航を認めなかった。
悲劇のヒロインは89年11月、ハンガリー経由で米国に脱出。
グリゴラシュさんは、「内向的で無口なナディアに、
あんな勇気があったなんて」と驚いた。

国の象徴的な人物が自由を奪われて、国民は絶望し、
同じ人物の行動力に希望を取り戻した。これは飛躍しすぎか。
「政府の内部でも、コマネチを後押しする動きがあったらしい。
彼女が国境近くにいたとき、なぜか警備が手薄だった」。
約半月後、チャウシェスク大統領を処刑に追いやる革命が起きた。

旧政権のにおいを残す集中強化システムは解除され、選手は各地へ散った。
ところが、復活を望む声が連盟に殺到。
グリゴラシュさんは、「わずか数か月で、体操界は元に戻りました。
多くの才能が死んでしまう。あのコマネチを育てたシステムなのに、と」

78年、北西部のデバに設置された二つ目の体操専門学校。
その校長室の壁に、巨大なコマネチの写真が飾られている。
ルーマニア・リベラ紙、ダニエラ・イオネスク記者は、
すべてはナディアから始まり、現在でもナディアの成功が支えに。
『祖国を捨てた』なんて批判は、ほとんど耳にしない」

北京五輪での活躍を期待されるステリアナ・ニストル(18)が、
「ナディアは模範的な存在。彼女の努力は、私たちに受け継がれている」。
うっとりした表情を浮かべていた。

http://www.yomiuri.co.jp/olympic/2008/feature/continent/fe_co_20080509.htm

カキ殻活用で壁材開発 シックハウスに効果

(岩手日報 6月7日)

岩手大の河田裕樹教授と、大船渡市の建設コンサルタント業
菊池技研コンサルタント(菊池透社長)は、
シックハウス症候群の原因物質ホルムアルデヒドや
たばこから出る化学物質を吸着、分解する壁材の開発に成功。

水産廃棄物のカキ殻の吸着作用に着目し、有害物質を分解する
光触媒の酸化チタンなどを組み合わせることで実現。
最後の試験を行い、来春からの実用化を目指す。

気仙地区で、年間5千トンに及ぶ水産廃棄物・カキ殻の
有効利用を模索する中で生まれた。
カキ殻にある吸着作用のほか、有害化学物質を分解する
酸化チタンを素材に開発を始めた。

光触媒の酸化チタンは、電子の受け取りと供与どちらでも、
有害化学物質を分解する働きを持つ。
紫外線が当たることで、活性酸素などが発生し分解を進める仕組み。
紫外線は太陽光はもちろん、室内の蛍光灯でも可能。
大きな面積で使う壁材に使用することで、
より効果的な分解を進めることができる。

壁材は、シックハウス症候群の原因物質ホルムアルデヒドを吸着・分解、
たばこ臭の原因物質アセトアルデヒド、たばこのやにも完全に分解。

菊池技研コンサルタントの菊池喜清会長は、
「モニター調査などもう少し時間がかかりそうだが、
来年度には実用化できるよう進めたい」。

県内のカキ殻の廃棄物は年間、約7千トンにも及ぶ。
さまざまなリサイクル方法が模索されているが、
これといった方法はまだ確立されていない。

一方、国内のシックハウス症候群の対象者は約100万人。
河田教授は、「有効利用が難しいカキ殻と、光触媒を組み合わせることで
さまざまな効果が生まれた。
廃棄物のリサイクルと同時に環境浄化ができる技術」。

◆酸化チタンとは

代表的な光触媒活性物質。
紫外線が当たることで有害化学物質を分解し、親水性も発揮。
汚れ防止効果もあり、道路のガードレールや外壁材などにも使われる。
カビ、細菌の繁殖防止や大気汚染物質の分解作用で
売り出している商品も近年増えている。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20080607_3

三陸沖の資源活用探る 研究会が初会合

(岩手日報 6月7日)

県や沿岸自治体、研究機関などでつくる
「いわて海洋資源活用研究会」の初会合は、
宮古市臨港通のシートピアなあどで開かれ、
本県沖における石油や天然ガスなどの資源活用の可能性について
調査・研究に取り組むことを決めた。

関係者ら20人が出席。
県科学・ものづくり振興課の黒沢芳明総括課長が
「三陸の海洋資源のポテンシャルを生かし、県北・沿岸振興に向けて
新しい産業の芽として育てていきたい」。

今後の取り組みとして、
▽海洋資源に関する情報収集
▽地元企業などとのネットワークづくり
▽企業や研究機関の誘致
などを進めていくことを決めた。

国に対し、三陸沖での探査プロジェクト実施などを働き掛ける。
東大海洋研究所の徳山英一教授は、
「三陸沖で期待できるのは石油、天然ガス、メタンハイドレート。
資源についての情報を積み上げ、次のステップにつなげることが大切」。

http://www.iwate-np.co.jp/economy/e200806/e0806072.html

2008年6月17日火曜日

[第1部・ハンガリー]動乱直後「金」 水球は特別

(読売 5月8日)

ハンガリーは、世界一の水球国。
五輪で8個の金を含む14個のメダルを獲得し、
男子は北京五輪で3連覇を目指す。
中欧の真ん中に位置する海なし国だが、
全土からわき出る温泉を利用し、各地にプールがある。
ハンガリー水球連盟のジョルジ・マルティン会長は、
「一年を通してプールを利用できるのが利点」。

環境に恵まれたハンガリーでは、もちろん競泳も強い。
しかし、男子水球日本代表で、1部リーグのフェヘールバールで
プレーする長沼敦(25)が、「日本では考えられないが、
ここでは水球がプールの真ん中を占領し、競泳の人は端の方で泳いでいる
と驚くような特別な地位を得ている。

背景には、社会主義時代の悲しい事件。
1956年10月。ソ連(当時)の影響力に反対した労働者や学生が
自由を求めて立ち上がった。
ハンガリー動乱と呼ばれる事件は、ソ連軍の戦車2500両によって
踏みつけられ、1万7000人以上が命を落とす結末。

直後の11月末から行われたメルボルン五輪男子水球。
ハンガリーは、決勝でユーゴスラビアを1点差で破って、金メダルを獲得。
しかし、人々の記憶に刻まれたのは準決勝。
相手はソ連。その相手を4―0で下したから。
当時の主将、デジェ・ジャルマティさん(80)は、
「ラジオで結果を聞いたハンガリーに残った人、国外に亡命した人たちに
勇気を与えることができた」と振り返る。

試合中、接触プレーでハンガリー選手の右目の下が切れた。
その様子は、多くの血が流されたハンガリー動乱になぞらえられ、
「メルボルンの流血戦」として長く語り伝えられる。
「ソ連に勝ったということは、みんなの支えになった。
水球だけの歴史ではなかった」とジャルマティさん。
不幸な事件と、五輪での栄光が、
水球をハンガリー人にとって特別なスポーツに変えた。

社会主義時代に水球は、政治集会以外では最も人を集めるイベントで、
女性は着飾って会場に駆けつける晴れの場。
今は、金髪で長身のアイドルのような選手に、黄色い声援を送る
10代の女の子が観客の半分を占める。
ジャルマティさんは、「時代やファン層は変わっても、
水球の人気は続いている」と、目を細めた。

http://www.yomiuri.co.jp/olympic/2008/feature/continent/fe_co_20080508.htm

薄まると感じる酸っぱさ 酸味センサーの仕組み解明

(共同通信社 2008年6月9日)

強い酸味を感じる舌の細胞のセンサーは、
酸っぱさにすぐに反応するのではなく、
唾液などで酸味が薄まってから反応していることを、
自然科学研究機構・岡崎統合バイオサイエンスセンターの
研究チームが突き止めた。

今回の発見は、酸味のない食べ物を酸っぱく感じさせたり、
逆に強い酸味を酸っぱく感じさせなくしたりする調味料の開発などに
役立ちそう。欧州分子生物学機構速報誌(電子版)に発表。

このセンサーは、舌の細胞の表面にあるタンパク質の複合体
「PKDチャネル」で、強い酸味だけに反応。
弱い酸味のセンサーも別にあると考えられているが、まだ見つかっていない。

稲田仁・特任助教(分子細胞生理学)や富永真琴教授(同)らは、
PKDチャネルを持つ細胞で実験。
このセンサーが強い酸性にすぐに反応するのではなく、
酸性度が少し弱まった段階で反応することを確認。

基本的な味覚のうち、甘味と苦味、うま味は、
細胞の表面にあるセンサーが刺激にすぐに反応する仕組み。
塩味を感じるメカニズムはよく分かっていない。
酸味の感覚は、腐った食べ物など危険に対する防御システム。

稲田さんは、「強い酸味を感じて食べ物を吐き出した後も、
この仕組みなら酸っぱさが口の中で長く続くので、
危険に対する学習効果が大きくなる利点がある」。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=74679

高校に出前講義 大船渡・北里大

(岩手日報 6月7日)

大船渡市の北里大海洋生命科学部(緒方武比古学部長)
本年度、高校に講師を派遣する「出前講義」を本格スタート。
高校生に、海洋生命科学の面白さを伝えると同時に、
同学部の志願者増にもつなげたい考え。
特に、全学生の2%に満たない本県出身者の拡大を目指す。

一時は移転論議もあった同大だが、
自治体との連携も加速しており、地域貢献活動を積極的に展開。
出前講義は、海洋生命科学部の教員が高校に出向き、
専門分野を分かりやすく講義する企画。
交通費や講師料などの経費は、同学部が負担。
昨年度は、試験的に本県の3校を含む全国17校で実施。

本年度からは講座数を12から16に増やし、
「ナマコの生態」や「クラゲの秘密」、「魚の成長メカニズム」など
メニューを拡充。
実施校も増やす方針で、東日本を中心に約1700校に
募集書類を送付。中でも、県内高校の利用を呼び掛けている。

高校生を対象にした「海洋生物科学シンポジウム」を、
10月に奥州市で開催することも決定。
毎週土曜日には、キャンパス見学会も開いている。

高校との連携を進める背景には、少子化による志願者減少。
同学部の志願者数は、2003年度入試の1267人をピークに減っており、
本年度は948人。
全学生770人のうち本県出身者は14人で、県内高校へのPRが課題。

旧水産学部は、北里大の全体改革の一環で移転が議論されていたが、
2年前に現在地での存続が決定。
これを機に、本年度から学部名称変更などの学部改革を行ったほか、
同大を運営する学校法人と県、釜石市が連携協定を締結し
バイオ関連の研究事業をスタート。
地元大船渡市とも連携協定を結ぶ方向で協議を進めている。

同学部広報委員長を務める高橋明義教授は、
「三陸をテーマに研究している本学にとって、
地元との連携は非常に重要。
高校へのアプローチを皮切りに、さまざまな貢献活動を考えており、
岩手出身学生の増加にもつなげたい」。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20080607_14

声援後押し競技挑戦 県障がい者スポーツ大会

(岩手日報 6月8日)

第10回県障がい者スポーツ大会は、
盛岡市内の3会場で開かれ、県内全域から1384人が参加。
選手らは、陸上や水泳、ボウリングなどに
すがすがしい汗を流して交流を深めた。

盛岡市みたけ1丁目の県営運動公園では、陸上競技が行われ、
選手らは短距離走や投てき種目に挑んだ。
全力で体を動かす選手に、会場からは大きな声援や拍手が送られた。

200メートル走に車いすで参加した遠野市の佐藤憲光さん(49)は
「緊張したが、応援の声がうれしかった。
どんどん走る距離を長くしていきたい」。

シンガー・ソングライターの松本哲也さん=奥州市出身=が作った
テーマ曲も披露され、公募していた曲名は「SKY(スカイ)」と発表。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20080608_1

早くも活発交流 県立大生とIT関連企業

(岩手日報 6月8日)

滝沢村が、情報技術(IT)関連産業の集積を目指し2009年4月、
県立大に開設するIPUイノベーションセンター(仮称)事業を見据え、
学生と企業の交流が活発化。

県立大地域連携研究センターに試行入居している企業と、
学生らで構成する特定非営利活動法人(NPO法人)などが契約を結び、
学生たちはソフト開発などに「頭脳」を提供。
自動車、携帯電話などに組み込まれている「組み込みソフト」の技術者が
不足する中、企業にとって貴重な戦力に。

学生と企業の交流は、学生らで構成するNPO法人HCC(瀧澤寛之理事長)、
同大ソフトウェア情報学部の研究室が橋渡し役となり、
2年ほど前にスタート。現在は50人以上の学生、大学院生が3社で働く。
時給は、850円前後。
携帯電話や車載機器の組み込み制御ソフトなどの検証と開発に携わる。
同学部3年の小室良君は、「実際の仕事が分かる。よい経験だ」。

学生を受け入れる組み込みソフトウエア開発、
岩手CSK(盛岡市)の登坂誠一システム開発事業部長は、
「学生の指摘で、より良い商品になることもある」。

IPUイノベーションセンターは、貸事務所機能を主とし、
2008年度末に地域連携研究センター隣に完成する予定。
運営は県立大に委託。

現段階で入居を希望している企業は、
首都圏や名古屋市など県外が15社程度、県内は3社。
入居を見据え、ソフトウエア部門を分社化した企業もある。

経済産業省の07年調査では、
組み込みソフトウエア開発技術者は全国で約10万人が不足。

同大地域連携研究センターの岸本輝昭教授は、
「首都圏などでは有能な学生の獲得競争が激しく、
県立大は魅力的な人材確保の場と映っている」。

同学部は毎年度、大学院生も含め約200人を輩出。
HCCの瀧澤理事長は、「イノベーションセンター開設に伴い
企業進出が増えれば、学生の地元定着につながる」。

柳村典秀村長は、「イノベーションセンター事業は産業振興の目玉」と、
企業集積を目指していく。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20080608_3

2008年6月16日月曜日

被災児童心のケア 奥州・衣川小が交流会

(岩手日報 6月16日)

岩手・宮城内陸地震発生後、被害の大きかった奥州市衣川区にある
衣川小(藤川ひとみ校長、児童124人)は、
同校など学区内の3カ所で児童の心のケアを目的に交流集会を開いた。
余震におびえながら過ごした児童らは、友達や先生に会い、
ほっとした表情を浮かべた。

教諭らが同校と北股、南股の両地区センターに出向き、
ショックを受けた子どもたちの心を癒やそうと集団遊びを行った。

同区上衣川の南股地区センターには、
保護者に手を引かれ児童24人が集合。
藤川校長が「よく来たね」と一人一人に声を掛けると、
児童たちは「元気だったよ」と応じ、全員で輪になっての遊びに興じるなど
次第にいつもの笑い声を取り戻した。

南股地区センターまで1年女子の孫を送ってきた
同区中河内の高橋ヒロ子さん(66)は、「余震におびえ泣きだすことも。
早く普段の生活に戻してあげたい」。
藤川校長は、「表情の硬い子がまだいるが、少しでも心をやわらげたい」。

同校は同日休校とし、集会は自主参加とした。
奥州市では、損壊が激しい胆沢区の愛宕小も休校。
衣川区の衣里小、衣川中も午前授業の措置を取った。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20080616_21

住民の孤立状態は解消  死者10人、不明者12人に

(岩手日報 6月16日)

震度6強を記録した岩手・宮城内陸地震で、
宮城県栗原市の旅館「駒の湯温泉」の倒壊現場から見つかった遺体は、
旅館を経営する一家の長男菅原孝夫さん(58)と確認。
地震による犠牲者は10人目。行方不明者は12人。

土砂崩れで道路が寸断されるなどし、最大約730人が孤立していた住民は、
すべてが避難所に救出され、住民の孤立状態は解消。

生き埋めとなった人の生死の境とされる発生後72時間が17日朝に迫り、
県警などは残る不明者の捜索に全力を挙げたが発見には至らず、
16日は捜索を打ち切った。17日早朝から再開。

栗原市災害対策本部によると、休校にしていた市内の幼稚園や
小中学校の約60校は、4校を除き17日から再開。
気象庁によると、14日からの余震は320回を超えた。

菅原さんは、県警による検視の結果、窒息死と判明。
旅館では7人が生き埋めとなり、4人が死亡。

http://www.iwate-np.co.jp/newspack/cgi-bin/newspack_s.cgi?s_main+CN2008061601000410_2

ヘッドホン型の健康支援機器「カラダトレーナー」

(スポーツ早耳ニュース 6月16日)

セガトイズは、ヘッドホン型の健康支援機器「カラダトレーナー」発売。

通常時の心拍数や性別、年齢を入力し、
運動すると音楽と言葉で適切な運動の強さを助言。
運動の種類は、ウォーキング、ジョギング、エアロビクスの3種。
準備運動ではゆっくりした音楽が流れ、次第に速くなるので、
音楽に合わせて運動することができる。
耳につけたセンサーが心拍数を感知し助言する。
使い勝手については、有森裕子さんがアドバイス。

[第1部・イタリア]「アタックNo.1」に導かれ

(読売 5月2日)

北京五輪への出場権をかけたワールドカップ(W杯)で初優勝し、
本番でも初のメダルへの期待が高まるイタリアの女子バレーボール。

競技人口でも、男子の約7万5000人に対して、女子は約23万人と、
圧倒的に「No.1」のスポーツ。
ここまで浸透した背景に、トリノ大学外国語学部の八木宏美・契約教授は
「日本のアニメの影響が大きかった」。

2002年、イタリア女子は初めて世界選手権で頂点に立った。
メンバーは、1982年に放映が始まった『ミミとバレーボールの仲間たち』
を見て、バレーを始めたり、さらに熱中するように。
当時の主将、アンナマリア・マラージさん(38)は、
「みんな主人公のミミにあこがれていた。
努力すれば、報われるとか、イタリアのアニメにはない面白さに、
みんなが夢中になった」と少女時代を振り返って目を輝かす。
『ミミ』と呼ばれたアニメは、『アタックNo.1』のイタリア語版。

マラージさんは、男性に圧倒的な人気を誇るサッカーと比べ、
汚れのないように見える点が特に女性から人気を得た理由。
イタリアサッカー界は、ここ数年を見ただけでも、
審判を巻き込んだ大規模な不正が発覚したり、
サポーターの暴力や死亡事件が後を絶たないなど、暗い影に。

バレーは、『ミミ』の影響もあり、友情や努力などをはぐくむいいイメージがあり、
サッカーを毛嫌いする母親が娘たちに勧める。
イタリア連盟広報のカルロ・リージさんは
「(バレーは)女性は常に美しくありたいという、イタリア人の感性に合っている」。
ネットで隔てられたバレーは、接触プレーによるけがも少なく、
美しさを損なうほどの筋肉がつくこともない。

1990年男子世界選手権優勝メンバーで、バレーの普及活動を行っている
アンドレア・ルケッタさん(45)は、
「『ミミ』は自分にとって聖書のようなものだ」。
ただ、25年以上も再放送され続けているため、時代遅れの部分もあるとして、
『スパイク・ガールズ』という“新約版”の製作を進めている。

『アタックNo.1』の精神を受け継いだ作品は、来年末に放送開始予定。
「子供にバレーの素晴らしさを知ってもらうのに、アニメは素晴らしい手段。
これからの25年、『ミミ』の役割を果たすものにしていきたい」。

http://www.yomiuri.co.jp/olympic/2008/feature/continent/fe_co_20080502.htm

iPS細胞・研究最前線:/下 将来の臨床応用へ、続く試行錯誤

(毎日 6月8日)

人工多能性幹細胞(iPS細胞)からさまざまな細胞を作り、
病気の治療に利用する。
現在、描かれている再生医療のビジョンを現実化しようとした場合、
どんなハードルがあるのか?

研究者たちは細胞の実像を探る基礎研究に加え、
将来の臨床応用を視野に入れた試行錯誤も。
一方で、iPS細胞を人類共有の資産とするため、
国際的な協力体制をつくるための議論も始まった。

◆iPSバンクの必要性

京都で開かれたiPS細胞国際シンポジウム。
山中伸弥・京都大教授は、「iPS細胞バンク」設立の必要性を語った。

バンクは、多くの人から提供されたiPS細胞そのものと、
そこから分化させた各種の細胞を集め、保管しておくもの。
本来、iPS細胞は病気やけがをした患者自身の細胞から作ることで、
拒絶反応を避けた再生医療につなげる。

実際には、そんな手順を踏めないケースも多い。
例えば、交通事故などによる脊髄損傷は、
けがをしてから9日目ごろに、神経細胞のもとになる
神経幹細胞を移植しなければ、症状の回復が見込めない。
本人のiPS細胞を作成するには、数カ月かかってしまう。

◆50種類で9割カバー

iPS細胞バンクの具体像を示したのが、京都大の中辻憲夫教授。
日本人に多い白血球の型(HLA)を分析し、
「50種類のHLAのiPS細胞を用意すれば、
日本人の9割で拒絶反応をほぼ回避か、大幅に軽減できる」。

拒絶反応の有無や強さは、移植した細胞や臓器と、
患者の体のHLAが適合するかで決まる。
中辻教授と東京大の徳永勝士教授らは、
拒絶反応の強さにかかわる三つのHLA遺伝子に着目。

国内の臍帯血バンクのデータから、
日本人に多い3遺伝子の組み合わせの分布を計算すると、
上位50種類の組み合わせで、90・7%の日本人をカバーできる。
最も珍しい第50位の組み合わせで日本人3万人中1人、
最多の組み合わせは3万人中199人。
50種でカバーできない残り約1割の人にも、
3つのうち2つの遺伝子が適合するiPS細胞を使えば、
拒絶反応の大幅な軽減が可能。

中辻教授は、「がん化などの恐れのない安全なiPS細胞の
作成技術の確立が大前提だが、50株のiPS細胞バンクを作れば、
日本人のほぼ全員が恩恵を受けられる」。

◆国際協力の推進を

日米欧のほか、中国、韓国、オーストラリアなど
各国から幹細胞研究の第一人者が集った国際シンポでは、
iPS細胞研究の未来を話し合うパネルディスカッション。

議論の焦点の一つが、iPS細胞や胚性幹細胞(ES細胞)を使った
再生医療の安全性をいかに確保するか?

iPS細胞やES細胞からさまざまな臓器の細胞を作り、患者に移植する、
というのが、再生医療の基本的な手法。
現時点では、作りたい臓器の細胞だけを、
確実に作り出す技術は確立していない。
移植した細胞が、想定外の細胞に分化し、がん化する危険性がある。

西川伸一・理化学研究所発生・再生科学総合研究センター副センター長は
「(安全性確保に向けて)国際的に協力できることはないか」と問題提起。
マックス・プランク分子医薬研究所(独)のハンス・シェラー所長は
「(iPS細胞が)がん化しない段階まで分化が進む仕組みを、
理解することが必要。そこを把握できれば、実用に近づくだろう」。

若年性糖尿病研究財団(米)のロバート・ゴールドスタイン科学部長は
「各国の研究者が協力してデータを出し、それをもとに各国政府が
安全性評価を行えれば有益」。

iPS細胞の登場で、ES細胞が不要になるわけではないとの指摘も。
iPS細胞を使い、遺伝性貧血やパーキンソン病の治療を目指している
ルドルフ・イェーニッシュ米マサチューセッツ工科大教授は
「ヒトのES細胞とiPS細胞が、成長した後も含めて本当に同じ能力かは、
まだ分かっていない。比較のためES細胞の研究が今後も必要」。
==============
◇一般向け解説本、売れ行き好調

ヒトiPS細胞について、一般向け「解説本」の出版が相次いでいる。
売れ行きも好調。
科学雑誌「ニュートン」は、08年6月号で「万能細胞」を特集。
山中教授と、同時にヒトiPS細胞を作成した
ジェームズ・トムソン米ウィスコンシン大教授のインタビューを掲載。
都心のビジネス街でよく売れ、通常の3~5倍に達した店も。

集英社は、山中教授とウイルス学の権威、畑中正一・京都大名誉教授の
対談をまとめた「ひろがる人類の夢 iPS細胞ができた!」を発売。
山中教授の生の声を収録。

「iPS細胞 ヒトはどこまで再生できるか?」(日本実業出版社)は、
科学技術振興機構のiPS細胞リポートも手がけた
田中幹人さんが研究を解説。“iPS細胞誕生秘話”も盛り込む。
中畑龍俊・京都大iPS細胞研究センター副センター長が監修した

「iPS細胞って、なんだろう」(アイカム)
細胞のカラー写真を豊富に掲載。

http://mainichi.jp/select/science/news/20080608ddm016040005000c.html

3行とも増収 県内地銀決算

(岩手日報 6月7日)

岩手、北日本、東北の県内3銀行の2008年3月期の決算。
個人向けを中心に預金が伸び、住宅ローンなど貸し出しも堅調で、
3行とも増収。

岩手は、米国の信用力の低い個人向け住宅ローン(サブプライムローン)を
一部組み入れした債券の減損処理が響き、5期ぶりに減益。
北日本は、支払利息負担増などで6期ぶり減益。
東北は、経費節減に努め、当期純利益が過去最高を記録、2期ぶりの増益。
一般企業の売上高に相当する経常収益は、3行とも増加。
岩手は、貸出金増加のほか株式などの売却益も増え、
14・0%増の2けたの伸び。北日本は0・5%増、東北は2・1%増。
北日本は、住宅ローンが好調に推移したが、
投資信託販売は計画を下回った。
東北は、個人預金が順調だが、貸出金残高が微減。
岩手は、サブプライムローン関連債券19億円を含む
有価証券評価損33億円を減損処理。
北日本、東北はサブプライムローン関連商品を保有していない。
不良債権比率は、不良債権の売却や取引先の経営改善を進め、
3行とも改善。自己資本比率は、各行とも低下。
株式市場低迷により有価証券評価益が減少した一方、
岩手、北日本は貸出金残高の増に伴い、リスク資産も増えた。
09年3月期は岩手が減収増益、北日本が増収増益、東北が増収減益。
岩手の高橋真裕頭取は、「有価証券の減損処理分を
株式などの売却益で一部カバーしたが、結果は減益。
県内シェアを上げるとともに、県外の営業強化に取り組む」。
北日本の佐藤安紀頭取は、「金利や株価がマイナスに働いたが、
貸出金、預金は増加し、将来につながる取引は拡大した」。
新基幹システムに移行し、今期はローンなどの新商品を投入。
東北の浅沼新頭取は、「当期純利益は10億円を超えた。
本来業務のところでプラスとなり、今までで最高益となった」、
来期はシステム関連や店舗関連の投資に伴う減価償却費の増加を見込む。

2008年6月15日日曜日

[第1部・ドイツ]乗る、育てる…馬は友達

(読売 5月1日)

午後6時、気温はマイナス1度。馬も人間も、吐く息が白い。
ドイツ北西部は3月下旬でも、まだ寒い。
「1、2、1、2……。もっとリズムを作って」。女性指導員から声が飛ぶ。
馬上の少女は14、15歳。
ほおを真っ赤にしながら乗馬を続けていた。

ノルトライン・ウエストファーレン州中部の町ワーレンドルフ。
馬術協会、オリンピック委員会馬術支部(DOKR)、国立乗馬学校。
歴史を感じさせる古い建物と厩舎が立ち並ぶ。
全国地図に載っていない人口4万人足らずの小さな町が、
ドイツ馬術界の聖地。

DOKRには、馬術を志す少年、少女が各地から集まり、指導を受ける。
厳しさの中に、ときおり笑顔も交じる指導風景。
過去に34個の金メダルを獲得した強さの秘密が、ここにある。

「ドイツ人のまじめな性格や我慢強さは、乗馬に向いている。
馬の育成に時間がかかる」。
力説するのは、前回のアテネ五輪馬場馬術団体で金メダルを獲得した
フベルトス・シュミット

五輪で唯一動物が参加する馬術は、いかにいい馬を育てるかが勝負。
馬をリラックスさせ、柔らかく動かす騎乗に定評があるシュミットは、
馬に乗ること以上に育てることが、ドイツ人に合っているという。

DOKRで少女が乗っていたライトポニーは、
小型馬のポニーを他品種と掛け合わせ、
子供の乗馬用にわざわざ作られた品種。
種付け、売買、調教。
すべてが産業として成り立ち、いい馬を生み出す土台に。

ブリンクマン・グループといえば、バスケットボール界のナイキのような存在。
乗馬服のピカー、乗馬用品のエスカドロンを中核に、
複数の高級ブランドを傘下に従え、年商はグループ全体で
2億4000万ユーロ(約390億円)。ドイツ代表の制服も請け負う。

グループ代表のウォルフガング・ブリンクマンさんは、
「馬術から学んだのは、人を信頼すること。
それがなければ、サッカーをやっていた」。
やり手のビジネスマンとは思えない温和な表情。
1988年ソウル五輪で団体優勝した後、補欠選手に
個人の出場権を譲った美談でも知られるが、
「僕らの時代は、馬術はみんなで助け合う団体スポーツだった」。

現在も、週末は各地で“草馬術”の大会が開かれ、
10歳足らずの子供から大人までが技術を競う。
ドイツの人々が馬に注ぐ優しい視線。それこそが強さの秘密。

http://www.yomiuri.co.jp/olympic/2008/feature/continent/fe_co_20080501.htm

スポーツ21世紀:新しい波/270 バレー協会・個人登録制度/5

(毎日 6月7日)

日本バレーボール協会(JVA)の選手登録は従来、
代表者がチーム単位で所定の用紙に書き込む方式。
昨年4月からは、選手個々が携帯電話やパソコンを使い、
インターネットを通じて行う方式に改められた。
これが、中学や高校で部活の指導にあたる教諭らの懸念を呼んだ。

背景には、教育現場に根強く残る携帯電話やパソコンへの警戒感。
近年、学校裏サイトや出会い系サイトが、
犯罪やいじめの温床として指摘。
「インターネットから生徒の問題行動が起きているだけに、
教師は取り扱いに悩んでいる」、
「個人情報が流出することはないのか」、
「普段は使うなと指導しているのに(新登録制度は)矛盾する」

大阪市中学体育連盟バレーボール部総会では、
不安の声が相次いだ。
加えて、システムが難解だという声がある。

ある教諭は、「アナログ世代の私自身、登録に挑戦したが、できなかった。
だから子供たちにも教えられない」、
「紙で登録する方法に戻してください」と、
出席したJVA関係者を恨めしそうに見つめた。

この二つは、背中合わせの関係。
システムの開発、整備にあたったJVAの岡山保美氏は、
登録が難解になった理由が、個人情報保護にある。
「情報にアクセスする権限を厳しく制限する発想で、システムを作った。
個人情報の登録や修正は、基本的に生徒本人や親以外にはできない。
親ができない場合は先生がするが、
その場合は生徒の親から委任状を出してもらう」。

現場の意見を受け、顔写真の添付を義務から外すなどしたが、
「基本線は譲れない」との考え。
「インターネットという便利なツールが、悪い形で使われている現状もある。

しかし、悪を排除しつつ、便利を生かしていくことが大事」と話す岡山氏。
「5年先、10年先のIT(情報技術)の浸透状況を考えれば、
方向性は間違っていない」。

http://mainichi.jp/enta/sports/21century/

バイオ燃料:非食物の植物、アフリカで栽培支援へ

(毎日 6月8日)

政府は、バイオ燃料の原料となる非食物の植物「ジャトロファ」
について、アフリカでの栽培を広めるため、経済支援に乗り出す。

穀物から作ったバイオ燃料は、食物価格上昇の一因とも指摘、
新たな「非食物バイオ燃料」の普及により、
食糧問題解決と地球温暖化対策の両立、
さらにはアフリカの地域開発という「一石三鳥」を目指す。

福田康夫首相は、「食糧サミット」で、
食糧を使わないバイオ燃料の必要性を強調。
ジャトロファは、中南米原産の低木で、乾燥地でも成長が早く、
油がよく取れるという。
繰り返し栽培でき、穀物に代わる有力なバイオ燃料の原料とされる。
二酸化炭素の吸収にも役立つ。

アフリカ各地で栽培が進み、マリの首都バマコ郊外の村では、
ジャトロファによる燃料が村内や周辺地域の発電、
自動車にも使われている。
売り上げが、住民らの貧困解消につながる効果。

栽培支援は、当面は普及が進むマリを中心に、
自治体や非政府組織などに対する「草の根無償資金」
(上限1000万円)で援助。
国際協力機構(JICA)を通じ、村落開発に詳しい専門家の派遣も検討。

http://mainichi.jp/select/science/news/20080608ddm002010148000c.html

「万能細胞から心筋」効率上げるたんぱく質 千葉大発見

(朝日 2008年6月7日)

さまざまな細胞や組織になりうる万能細胞の一つ、
胚性幹細胞(ES細胞)から心筋の細胞をつくる効率を
最大20倍に高めるたんぱく質を、
千葉大学医学部の小室一成教授らの研究グループが
マウス実験で見つけた。

心臓病の再生医療の開発につながる。
新型の万能細胞である人工多能性幹細胞(iPS細胞)でも試す。
英科学誌ネイチャー(電子版)に発表。

研究グループは、骨髄系の細胞を培養した液を使うと
万能細胞から心筋細胞への分化が促されることに着目。
この培養液中にある「IGFBP―4」というたんぱくが
心筋をつくる効率を上げる働きがあることをつかんだ。

ES細胞から心筋細胞になるのは、これまではよくて全体の1%程度、
マウスのES細胞にふりかけて培養したところ、10~20倍もできた。

再生治療に使うためには、万能細胞を心筋細胞にして移植するか、
このたんぱく質を含んだ薬剤を注射し、
心臓内にある幹細胞を心筋に変身させる方法。

http://www.asahi.com/science/update/0606/TKY200806060038.html

野口英世アフリカ賞受賞者に教えられたこと

(サイエンスポータル 2008年6月2日)

日本政府が設立した野口英世アフリカ賞の授与式が、
第4回アフリカ開発会議が開催された横浜市で行われた。
第1回の受賞者となったブライアン・グリーンウッド博士
(ロンドン大学衛生熱帯医学校教授)、ミリアム・ウェレ博士
(アフリカ医療研究財団会長、ケニア国家エイズ対策委員会委員長)の
受賞記念講演会が開催。

グリーンウッド博士は、英ケンブリッジ大学で医学博士号を取得後、
英医学研究評議会の在ガンビア研究所長を15年間務め、
30年間にわたりアフリカでマラリアの研究を続けた。
髄膜炎や肺炎など、アフリカにおける乳幼児死亡の主要な原因の
感染症の解明にも貢献。

野口英世アフリカ賞委員会委員長を務める黒川清・内閣特別顧問の
紹介によると、若くしてアフリカでの研究生活を選んだ博士に対して
「彼はおかしいのではないか」という声が周囲から。

ウェレ博士は、出身地ケニアのナイロビ大学後、
米ジョンズ・ホプキンズ大学で修士、博士号を取得するなど
医学研究のかたわら、一貫してアフリカにおける医療サービスの提供
という実践的活動に力を注いだ。

公衆トイレを継続的に設置や、
子供たちを小グループに分けて予防接種に連れて行き、
乳幼児接種率を大幅に引き上げ、
エイズ感染者・患者など弱者の側に立った医療活動を
40年にわたって続けて来た。

ウェレ博士が、講演の中で紹介した
サハラ砂漠以南のアフリカの現状は厳しい。
世界人口の10%がここに住む。
世界中で病気にかかっている人々の25%は、この地域。

妊娠関連の合併症で死亡する女性は16人に1人に達し、
世界平均の74人に1人、先進国は2,800人に1人という比率に比べ、
著しく大きな危険にさらされている。
母親が亡くなると、子どもはほとんど生存できず、負担は家族全体に。

先進国では平均寿命が80歳台になろうとしているのに、
この地域は30歳代に下がった。

こうした状況で、両博士の長年にわたる献身的努力を支えてきたのは何か?
コミュニティに対する信頼のように見えた。
「アフリカでは、自分のやっていることの結果を見ることができる。
ワクチンへの不安の声を聞いて、コミュニティに出かけ説明したことも。
何が起きているか、理解してくれた。
ロンドンや日本に伝える前に、まずコミュニティで話す。それが鍵になる

グリーンウッド博士は、医学研究、医療サービスの向上には
コミュニティのサポートが重要であることを強調。
アフリカの楽しみは、屋外で研究できること、現場で活動できること。
アフリカの人々は賢くないと思っている人がいるが、そうではない。
独立してまだ50年、貧困のため、どうしてよいか分からない。
私も、宿題をするとき、明かりがなく、火をたいて勉強をした。
アフリカに問題があると思うなら、日本からももっとアフリカに来てほしい。
われわれは東の人たちとも交流したい」

ウェレ博士の訴えに、国際協力の在り方を
考えさせられた参加者も多いのでは。
黒川清・内閣特別顧問は、「日本の政府開発援助(ODA)は、
かつて世界1位だったのが、今や1位は米国、英国が2位、
フランス、ドイツにも追い越されて現在は5位に。
来年は、オランダにも抜かれ6位になるだろう。
こんな国になりたいだろうか」

http://www.scienceportal.jp/news/review/0806/0806021.html