2008年6月15日日曜日

野口英世アフリカ賞受賞者に教えられたこと

(サイエンスポータル 2008年6月2日)

日本政府が設立した野口英世アフリカ賞の授与式が、
第4回アフリカ開発会議が開催された横浜市で行われた。
第1回の受賞者となったブライアン・グリーンウッド博士
(ロンドン大学衛生熱帯医学校教授)、ミリアム・ウェレ博士
(アフリカ医療研究財団会長、ケニア国家エイズ対策委員会委員長)の
受賞記念講演会が開催。

グリーンウッド博士は、英ケンブリッジ大学で医学博士号を取得後、
英医学研究評議会の在ガンビア研究所長を15年間務め、
30年間にわたりアフリカでマラリアの研究を続けた。
髄膜炎や肺炎など、アフリカにおける乳幼児死亡の主要な原因の
感染症の解明にも貢献。

野口英世アフリカ賞委員会委員長を務める黒川清・内閣特別顧問の
紹介によると、若くしてアフリカでの研究生活を選んだ博士に対して
「彼はおかしいのではないか」という声が周囲から。

ウェレ博士は、出身地ケニアのナイロビ大学後、
米ジョンズ・ホプキンズ大学で修士、博士号を取得するなど
医学研究のかたわら、一貫してアフリカにおける医療サービスの提供
という実践的活動に力を注いだ。

公衆トイレを継続的に設置や、
子供たちを小グループに分けて予防接種に連れて行き、
乳幼児接種率を大幅に引き上げ、
エイズ感染者・患者など弱者の側に立った医療活動を
40年にわたって続けて来た。

ウェレ博士が、講演の中で紹介した
サハラ砂漠以南のアフリカの現状は厳しい。
世界人口の10%がここに住む。
世界中で病気にかかっている人々の25%は、この地域。

妊娠関連の合併症で死亡する女性は16人に1人に達し、
世界平均の74人に1人、先進国は2,800人に1人という比率に比べ、
著しく大きな危険にさらされている。
母親が亡くなると、子どもはほとんど生存できず、負担は家族全体に。

先進国では平均寿命が80歳台になろうとしているのに、
この地域は30歳代に下がった。

こうした状況で、両博士の長年にわたる献身的努力を支えてきたのは何か?
コミュニティに対する信頼のように見えた。
「アフリカでは、自分のやっていることの結果を見ることができる。
ワクチンへの不安の声を聞いて、コミュニティに出かけ説明したことも。
何が起きているか、理解してくれた。
ロンドンや日本に伝える前に、まずコミュニティで話す。それが鍵になる

グリーンウッド博士は、医学研究、医療サービスの向上には
コミュニティのサポートが重要であることを強調。
アフリカの楽しみは、屋外で研究できること、現場で活動できること。
アフリカの人々は賢くないと思っている人がいるが、そうではない。
独立してまだ50年、貧困のため、どうしてよいか分からない。
私も、宿題をするとき、明かりがなく、火をたいて勉強をした。
アフリカに問題があると思うなら、日本からももっとアフリカに来てほしい。
われわれは東の人たちとも交流したい」

ウェレ博士の訴えに、国際協力の在り方を
考えさせられた参加者も多いのでは。
黒川清・内閣特別顧問は、「日本の政府開発援助(ODA)は、
かつて世界1位だったのが、今や1位は米国、英国が2位、
フランス、ドイツにも追い越されて現在は5位に。
来年は、オランダにも抜かれ6位になるだろう。
こんな国になりたいだろうか」

http://www.scienceportal.jp/news/review/0806/0806021.html

0 件のコメント: