2008年6月19日木曜日

学生をつくる(2)単位取得「健診」が義務

(読売 6月4日)

健康管理を通じて、学生生活を支援する大学がある。
4月の入学式から数日後。
金沢大学は、新入生1823人に3日かけて健康診断を行った。
身長・体重の測定、血圧検査や採血など、お決まり項目の最後に、
臨床心理士との面談も用意。
心理士の女性は、「少しでも不安なことがあったら、いつでも相談してね」
と優しく学生に悩みがないかを聞き、
学生による悩み相談部屋「ピアサポートルーム」の存在も紹介。

同大では今年度から、健康診断の受診を、1年生の必修科目
「大学・社会生活論」の単位取得の条件に。
受診しないと、運動部系のクラブやサークル活動の試合に参加出来ない。
診断のデータに少しでも異常があれば、学生に対して連絡を取る。

この科目の前期では、喫煙、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)、
熱中症などの知識や、健康診断結果の読み方も教える。
ビデオ教材を視聴後の確認テストもする。
同大の校医、吉川弘明教授は、
「健康教育は、自分でものを考える手段の一つ。
生涯にわたって、健康の重要性を考える姿勢を身につけてほしい」。

精神面のケアも重視する。
学内の保健管理センターの相談室にはここ数年、相談が増えている。
健康診断などで異常がわかった学生には、大学側から連絡を取るが、
カウンセラーの人数も限られており、
組織的に予防からかかわることが必要。

臨床心理士の足立由美講師は、
「大学では、自発的に動かなければ特定の人と一緒になる機会がなく、
対人関係を築けない学生もいる」。
大学が、約4キロ離れた二つのキャンパスをつなぐシャトルバスを
新設した狙いの一つにも、学生の交流の促進を図る。
授業以外の学生の居場所を確保する「コミュニケーションプレイス」
4か所設置、今後も拡大する予定。

金沢大の一連の取り組みは昨年度、文部科学省の
「新たな社会的ニーズに対応した学生支援プログラム(学生支援GP)」
に4年間の計画で採択。
「心と体の育成による成長支援プログラム-社会に幸せをもたらす
生活の知恵を持った学生の育成-」と名前の付いたプログラムには、
大学入学という大きな変化に直面する学生に対して、
心身ともに大学が健康作りを管理することで、
学生生活を軌道に乗せる狙い。

大学の取り組みに対して、ある学生は
「健康管理なんて、自分でやるのが当たり前。
試合に出られなくするところまでやるのもどうかと思う」と懐疑的な声。
一方で、一人暮らしを始めたばかりの1年生の中には
「自分で出来ないところを大学が面倒をみてくれて、安心感がある」。

学習を支えるため、学生の生活面に大学はどこまで関与すべきか。
金沢大の取り組みは、そのことの問題提起とも。

◆GP Good Practice(すぐれた取り組み)の略。

文部科学省は大学を競わせ、教育面で他大学の参考になる
取り組みに補助金を出している。
2003年度からの「特色ある大学教育支援プログラム(特色GP)」と
04年度からの「現代的教育ニーズ取組支援プログラム(現代GP)」
の額が大きかったが、08年度から統合して
「質の高い大学教育推進プログラム(教育GP)」に。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080604-OYT8T00241.htm

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