2008年5月24日土曜日

データ捏造論文は14本 死亡した助教が担当

(共同通信社 2008年5月19日)

鹿児島大の医学部・歯学部付属病院に勤務していた
男性助教(38)=昨年11月死亡=が、
実験データを捏造した論文を、病理学会雑誌に発表していた問題で、
同大は、不正データを使った論文が計14本に上るとの調査結果を発表。

新たに不正が分かった13本の論文は、
2004~07年にかけ国内や米国の内科学、免疫学などの専門誌に発表。
6-11人の共同研究だが、いずれも助教が実験データの処理を担当。

同大は、助教が国から受けていた科学研究費補助金(科研費)
計約700万円を返還する方針。
共同研究者に対し、論文取り下げを勧告し、
捏造を見抜けなかった上司らの懲戒処分を行う。

助教は、自宅謹慎中の昨年11月に死亡。自殺とみられている。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=73059

日本看護協会 看護基礎教育4年制化強力に推進を 09年度予算に向け

(じほう 2008年5月14日)

日本看護協会は、2009年度予算案の編成に当たって、
看護師の資質向上と離職防止・再就業への支援を求める要望書を、
厚生労働省の外口崇医政局長に提出。

看護基礎教育の4年制化の強力な推進と合わせ、
死因究明制度の創設を視野に入れて、遺族や関係職種などとの
調整を行う看護職(調整看護師)の養成・確保対策を求めている。

看護基礎教育の教育年限は、60年来見直されておらず、
現在の医療ニーズや安心・安全な看護を実現するためには不十分。
基礎教育4年制化と合わせ、厚労省が今年度から開始した
「新人看護職員の臨床研修モデル事業」の対象を大幅に拡大するよう求めた。

看護職の離職防止・再就業の支援については、日看協が今年度、
全国5カ所の医療機関で実施する「多様な勤務形態に関するモデル事業」を、
各都道府県に1カ所程度に拡大するよう予算措置を講じることを要望。

第7次看護職員需給見通し(11年-15年)の策定に当たって、
在宅医療も含めた実態を正確に把握すべきとし、
特に助産師については十分な供給がなされるよう計画することを求めた。

産科医療での助産師の活用に向け、
助産師主導で妊婦健診から正常分娩、産後ケアを提供する
「助産センター」を地域の拠点病院に設置すべき。

専門分野での看護師育成事業の拡大や、看護学生の実習を受け入れる
訪問看護ステーションへの予算措置などを要望。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=72797

植物の根が細長く成長するしくみを解明!

(nature Asia-Pacific)

奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス研究科武田征士 特任助教

自らの意志で動くことができない植物は、生きるために必要な物質の
すべてを、生まれ落ちた環境で入手する必要がある。
葉や茎、根、花などが特徴的な形態をもつのは、
それぞれの細胞のかたちや機能を柔軟に変えることで、
限られた資源を効率よく利用するため。
根に生える根毛は、土壌中の水分や養分を効率よく吸収するため、
一つ一つの細胞が細長く成長することでできていく。

奈良先端科学技術大学院大学の武田征士特任助教は、
シロイヌナズナを用いて、根に生える根毛の細胞が一方向に
細長く伸びていくしくみを明らかにした。

根毛は、根の表面に生える細かな毛のことで、
陸上植物のほとんどがもつ。
「土壌中の水分や無機栄養分を体内に取り込む」、
「植物体を支える」、「土壌の微生物と相互作用を行う」といった役割。
毛の一本一本が細長いのは、根の表皮細胞の一部だけが
細胞分裂をせずに、先端方向にのみ成長した結果。

根毛の先端だけが成長するのは、なぜか?
シロイヌナズナの根毛の先端では、「NADPHオキシダーゼ」という
酵素が活性酸素を作り出していること、
作り出された活性酸素は細胞膜上のカルシウムチャネルを活性化して、
カルシウムイオンの細胞内流入を促すことが知られていた。

武田特任助教は、イギリス、ジョインネス研究所のリアム・ドーラン教授の
チームの一員として、東京理科大学の朽津和幸教授らとともに、
細胞に流入したカルシウムイオンに、
「NADPH酸化酵素を活性化して活性酸素の量を増やす機能」
があることを突き止めた。

RHD2遺伝子は、NADPH酸化酵素をコードし、
この遺伝子が働かない突然変異体では根毛が作られない。
この点に着目した武田特任助教らは、RHD2タンパク質の発現(局在部位)を
調べ、それが根毛の先端部分に限られることを明らかにした。

「NADPH酸化酵素は、活性酸素がたまる先端に蓄積し続けていた」。
活性酸素によって細胞内に流入したカルシウムイオンが、
今度はRHD2タンパク質を活性化させることも突き止めた。
根毛の先端で、RHD2活性化→活性酸素発生→カルシウムイオン流入
→RHD2活性化→活性酸素発生→……という正のフィードバック機構
回り続けることによって、根毛が一方向に成長し続けられるのでは」。

活性酸素は、ヒトでは免疫低下やがんを引き起こす。
有害物質を、根毛はなぜ利用しているのか?
「活性酸素は酸素が不対電子をもっている状態で、
エネルギーが高く、きわめて不安定。
このエネルギーが細胞膜やDNAを壊すことから、人体などに有害。
ところが、植物の根毛ではこのエネルギーを逆手にとって使うことで、
カルシウムチャネルを刺激したり、かたい細胞壁の構造を
ゆるめたりして成長を促している」。

根毛組織では、活性酸素が存在する先端でのみ細胞壁がゆるみ、
植物細胞としてはかなりのスピードで伸びていけるようになる。
根毛が有害物質である活性酸素を利用している点について、
武田特任助教は、「生物が害のあるものや毒のあるものを
上手に使う例は、たくさんある」。

動物にも、RHD2遺伝子と似た遺伝子があり、
病原体を殺すための活性酸素や、身体のバランスを保つ耳石を
作るための活性酸素を作り出している。
動物も、活性酸素の毒性を都合のよいように利用。
「根毛は、ある程度伸びると成長しなくなるが、
正のフィードバック機構を人為的に活性化させ続けることができれば、
これまでにない長い根毛をもつ植物を作ることができるかも」。

そのような植物は、やせた土地や乾燥した土地でも
効率よく水分や養分を吸収できる可能性がある。
受精卵というたったひとつの細胞から、さまざまな組織や器官ができていく
しくみに魅せられ、発生の研究を選んだという武田特任助教。
生物の基本となる「細胞のかたちづくり」を探求することで、
基礎研究の大切さをアピールしていきたい。

http://www.natureasia.com/japan/tokushu/detail.php?id=98

高田松原 ハマエンドウ咲く

(東海新報 5月22日)

陸前高田市の名勝・高田松原で、濃紫色のハマエンドウが咲き、
初夏の砂浜に彩りを添えている。
小ぶりな花が風に揺れる光景が愛らしく、
ジョギングやウオーキングに訪れる市民の目をなごませている。

ハマエンドウは、マメ科レンリソウ属の多年生。
北海道から九州までの海岸に分布し、
日当たりの良い砂地や岩場によく見られる。
名前の由来は、浜辺に育ち、エンドウマメに似ている。

約2キロの砂浜が広がる高田松原。
これから暖かさが増すと、
ハマナスやハマヒルガオなどが次々と咲き出し、
本格的な夏の到来を告げる。

2008年5月23日金曜日

メタボ検診計画策定 国保の加入者対象生活習慣病を早期発見

(東海新報 5月17日)

陸前高田市は、食生活の乱れや運動不足などで
全国的に生活習慣病が増加傾向にあることから、
若いうちから予防して健康づくりを進めようと
「特定健康診査等実施計画」を策定。

国民健康保険に加入している40~74歳の被保険者と
被扶養者を対象に、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)に
着目した特定健診、特定保健指導を行っていく。

高齢化の進展に伴って疾病構造が変化し、生活習慣病が増加。
全国の死亡原因では、6割にも達し、医療費の3分の1を占め、
若いうちから予防を進めて病気を早期発見することが求められている。

同計画の策定は、国保を運営している市(保険者)が
加入者(約1万1600人)の健康維持や生活の質の向上を図り、
内臓脂肪型肥満のメタボ該当者や予備軍の減少を図るのがネライ。

計画期間は、20年度を初年度に24年度までの5カ年。
「高齢者の医療の確保に関する法律」により、
保険者は被保険者と被扶養者に、特定健康診査と特定保健指導の実施が
義務づけられたことが背景。

病気の早期発見には健診が欠かせないが、
同市の国保加入者の健診受診状況(40~74歳)は、
19年度が30.8%(2012人)と低迷。
年齢区分別では、男女とも年代が上がると数値が高まる傾向にあり、
40、50代の受診率が低い。

今後は、特に若い世代の受診率を高めていくことを重点に掲げ、
計画最終年度の受診率の目標を「65%(3935人)」と設定。

具体的な健診は、9月以降にスタートする予定。
メタボ該当者や予備軍に対し、生活習慣を改善し、
内臓脂肪を減少させるよう指導。

メタボの診断基準の一つとして、腹囲(へそ周り)が男性は85センチ、
女性は90センチを超えると指導の対象。

http://www.tohkaishimpo.com/

<サイエンスリポート>歩き方の癖とらえる

(東京新聞 2008年5月6日)

マスクやサングラスで変装しても、あなただということはバレバレですよ。
歩き方のちょっとしたくせで個人を特定する「歩容認証」技術を、
日本科学未来館で開かれた新映像技術の紹介イベント
「Dive into the movieの現在そして未来」の会場で体験。

この技術を開発した大阪大学産業科学研究所の八木康史教授は、
「空港や街中の人ごみから犯人を見つけるなど、犯罪防止に役立てたい」。

「カメラの前を歩いて」の指示に従い、ちょっと緊張しながら
直線距離を4、5メートル歩く。待つこと数十秒。
分析結果は、歩幅70センチ弱、歩行周期約0.9秒。

「猫背度」は小、だけど「左右非対称性」が大でびっくり。
左右で腕の振りや歩幅が違った。
納得がいかずもう一度、左右対称になるよう細心の注意を払って歩いた。
結果は同じ。くせというものはなかなか直らない。

歩行は、足をけり出す、腕を振るなどを繰り返す「周期的」な運動。
歩く姿を撮影し、シルエットの連続画像を解析すると、
周期的に現れる特徴、つまり一人一人の歩き方のくせがとらえられる。
シルエットを使うのは、服の色柄の影響を防ぐため。
高さ30画素ほどの粗い画像でも、94%の確率で個人の照合ができる。

「指紋や目の虹彩による認証とは違い、遠くから気づかれずに識別」。
撮影の環境が良ければ、家庭用のウェブカメラとノートパソコンでも認証。
実際の街中では、背景が複雑でシルエット抽出が難しいため、
赤外線カメラでくっきりと撮影する必要。
歩き方の特徴は、角度によりとらえにくくなり、
どのような方向からでも認証できるよう研究を進める。

この技術、セキュリティー以外でも役立つ。
アニメのキャラクターに人間らしい動きをさせたり、
パーキンソン病の患者さんの体のふるえから、病気の進行や
リハビリ効果を測るなどの応用も。
ひょっとすると、オリンピック選手の強化にも威力を発揮するかも。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/technology/science/CK2008050602009235.html

国際学生科学技術フェア、日本代表は6年連続で特別賞受賞

(読売 5月16日)

米国で開催されている世界最大の科学コンテスト
「国際学生科学技術フェア」(ISEF)の特別賞が発表され、
第51回日本学生科学賞の代表として参加した
筑波大1年の牧野美咲さん(渋谷教育学園幕張高卒・18)が
プラズマ科学連合賞を受賞。

静岡県立浜松北高地学部=三浦拳さん(17)、井上真美さん(17)、
鈴木茉友さん(17)=も国際計算機学会賞と人工知能振興協会賞を受賞。
日本学生科学賞代表の特別賞受賞は、6年連続。

ISEFには、今回、51の国と地域から選ばれた高校生ら約1600人が参加。

http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20080516-OYT1T00413.htm

米政府、危惧種に指定 北極海開発は容認

(毎日 5月16日)

ケンプソーン米内務長官は、ホッキョクグマを絶滅危惧種に指定。
生息地である北極海の氷冠が減少していることが理由。
しかし、北極海周辺の天然資源開発は容認する意向で、
環境保護団体からは「名目だけの指定になりかねない」との批判。

今回の指定は、北極海の氷(9月時点)の減少を予測した
10モデルを根拠に行われた。
7モデルで、今世紀末までに97%が消滅するとの結果。
指定により、推定2万~2万5000頭が生息するホッキョクグマの狩猟や、
生息地を破壊する行為は禁止。

一方、北極海での天然資源開発について内務省は、
「現行法に基づき、環境的に健全な方法で行うことが可能」と結論付け、
容認する姿勢を明確に打ち出した。
ブッシュ大統領の方針に沿ったもの。

ホッキョクグマの絶滅危惧種指定は、07年に内務省魚類野生生物局が提案、
同長官は決断を延期。
環境保護団体の申し立てを受け、カリフォルニア州の連邦地裁は、
内務省に対し今月15日までに指定の可否を決定するよう命じた。

http://mainichi.jp/life/ecology/select/news/20080516ddm002030048000c.html

2008年5月22日木曜日

盛岡は「高コスト」 全国25中核市の市議会比較

(岩手日報 5月19日)

盛岡市は、同市議会(工藤由春議長)の定数や議員報酬などを
全国の中核市24市の市議会と比較。

同市は、市議1人当たりの市民の数が最も少ない一方、
市民1人当たりの議会費は3番目に高い。

市民と距離が近い「身近な議会」である半面、「高コスト議会」ともいえ、
定数削減をめぐる議論に一石を投じそう。
同市は、中核市に移行した4月、全国の中核市を対象に
議会制度に関する独自調査を実施。
中核市39市のうち、規模が異なる人口50万人以上の市を除く
27市にメールでアンケートを送り、24市から回答を得た。
盛岡市議会は定数42で、法定上限数46に対する削減率は8・7%の14位。
他市に比べて人口が少なく、市議1人当たりの市民数は7105人と最少。
1位の福山市は同1万2118人で、1・7倍の開き。
議員1人当たりの議会費は、約1580万円と3番目に低かったが、
市民1人当たりでは2217円で、和歌山市の同2328円、
久留米市の同2281円に次いで3番目に高い。
全国の中核市の中では、人口や予算規模に対する議会コストが
高いという現状が浮き彫りとなった。
盛岡市議会は、議会制度検討委(菊田隆委員長)で議員定数の検討を開始。
2010年度までに答申案をまとめる方針。
工藤議長は、「中核市となり、北東北の拠点都市を目指す盛岡の議会が
どう在るべきか、定数の削減を含めて議論を深めたい」。

スポーツ21世紀:新しい波/268 バレー協会・個人登録制度/3

(毎日 5月17日)

日本バレーボール協会(JVA)は、個人登録制度で
選手たちが受けられるメリットの一つに、
「JVA主催の大会と、予選に出場する権利を得られること」。

これについて、「個人登録に反対する草の根バレーの会」の中心メンバー、
筑波大付高の藤生栄一郎教諭は、「部活動の実態に合わない」。

新制度では、登録選手全員に登録料の支払いが義務づけ。
しかし、中学、高校の部活動は、公式戦に出場する
レギュラー選手ばかりではない。

初心者など、当面試合出場の可能性がほとんどない部員にも、
レギュラーと同額の登録料が課される。
「試合でベンチにも座れず、体育館の別の所で応援するだけの子に
『お金を払え』とは言いにくい」と藤生教諭は話す。

藤生教諭は、東京都内の強豪校にあった2軍チームが忘れられない。
「都内外を巡り、練習試合をしていた。
公式戦に出られれば、都で16強入りは間違いなかった」。
しかし、控え選手である彼女たちが日の目を見ることはなかった。

これは、構造的な問題。
全国中体連、全国高体連は、大会への出場を「1校1チームが前提」。
この前提を改めないままでは、新制度によるメリットを受けられない
控え選手が数多く生まれるだろう。

JVAも、この課題を意識し始めた。
立木正夫会長はホームページで、
「選手が年間に出場できる試合が少ないなら、
(中略)出場機会を増やす工夫が求められる」、
「10歳前後からジュニア年齢までの選手やチームに対し、
どの地域で、どのような大会を充実させ、創造する必要があるのか。
個人登録制度により実態をつかみ、具体的な対策を考えられる」。

JVAの山岸紀郎専務理事は、
「同一校から複数チームが出場したり、
中学・高校生が地元クラブチームから大会に出場したりできるよう、
将来は検討が必要かもしれない」。

http://mainichi.jp/enta/sports/21century/

氷じゃないスケートリンク 本物の味わい 三菱樹脂販売

(朝日 2008年05月13日)

三菱樹脂の子会社アストロ(東京)は6月から、
氷の代わりに樹脂板をしきつめたスケートリンクを販売。
スペイン企業が開発。

設営が簡単なうえ、通常の広さのスケート場(1800平方メートル)だと
電気代が年間2千万円以上節約。
実際に滑った選手からは、「氷と変わらない」との感想が寄せられたが、
公式戦には使えない。

リンクは縦2メートル、横1メートル、厚さ2センチで
重さ38キロの特殊なポリエチレン樹脂板を並べ、
表面に専用のワックスを塗る。
1平方メートル当たりの価格は、6万~7万円の見込み。

開発元のエクストラアイス社によると、すでに世界11カ国で50カ所、
計2万平方メートルが使われている。

アストロは、日本での販売総代理店。
三菱樹脂の会議室に、100平方メートルのリンクを仮設。
アイスホッケーの元スペイン代表だったエクストラアイス社の
トニ・ベラ営業部長は、自ら滑りながら「氷のリンクとの違いは、
止まったときに氷のくずが飛ばないことだけ」と売り込みに懸命。

http://www.asahi.com/sports/spo/TKY200805120274.html

「世界最小」燃料電池、シャープが開発

(朝日 2008年05月17日)

シャープは、小型で高出力な燃料電池の試作機を公開。
電子辞書につなげば、メタノール10ccでワンセグ放送を
4~7時間見ることができ、大きさは18立方センチとマッチ箱程度。

同じ能力を持つリチウムイオン電池に比べ、
体積は約2割小さく約6割軽いため、携帯電話などにも組み込める。
出力は従来型の7倍。
同じ出力なら、世界最小に出来る。

燃料電池は、メタノールに含まれる水素と空気中の酸素を
反応させて電気を取り出す。

試作機は、電気を作る「セル」と呼ばれる短冊形の部品を
井げたのように積み上げ、セルを空気に触れやすくし、出力を高めた。

従来の燃料電池は、同能力の充電池より大型で、
NECなどの試作機は携帯電話に外付けするタイプ。
シャープは安全性を高め、数年後の実用化を目指す。

http://www.asahi.com/science/update/0517/OSK200805160091.html

2008年5月21日水曜日

記憶・学習に神経細胞内タンパクのリン酸化が関与

(サイエンスポータル 2008年5月16日)

記憶・学習機能は、神経細胞をつなぐシナプス中に存在する
タンパクのリン酸化がとっかかりになっていることを、
理化学研究所脳科学総合研究センターの研究者たちが突き止めた。

これまで記憶や学習は、シナプス後部のタンパクが変化することによると
考えられていたが、詳細なメカニズムは不明。

脳科学総合研究センター発生神経生物研究チームの、
御子柴克彦チームリーダー、水谷顕洋研究員らは、
小脳にあり記憶・学習に中心的な働きをすることが分かっていた
プルキンエ細胞に存在する、Homer3というタンパクに着目。

生化学的手法を用いて調べたところ、
このタンパクがシナプス後部だけでなく、一部が可溶性の区画にも存在。
シナプス後部にあるべきタンパクが可溶性区画で見つかった理由は、
タンパク分子が一部リン酸化(タンパク1分子当たり少なくとも3カ所)
したことで、可溶性に変わったことも、電気泳動法で明らかに。

細胞内で、カルシウムイオンが上昇すると活性化する
タンパク質リン酸化酵素(カルシウムカルモデュリン依存性キナーゼⅡ)
によって、このリン酸化が起きている。

研究グループは、小脳のプルキンエ細胞のシナプス後部にある
タンパク「Homer3」は、神経の活動によって活性化された
タンパクリン酸化酵素の働きでリン酸化され、
「Homer3」で結びついたタンパク複合体の柔軟化がもたらされる。

このシナプス構造の柔軟化が、記憶と学習機能の契機となり、
Homer3のリン酸化部位を破壊したノックインマウスをつくって
さらに研究を進めたい。

http://www.scienceportal.jp/news/daily/0805/0805161.html

スポーツ21世紀:新しい波/267 バレー協会・個人登録制度/2

(毎日 5月10日)

今年2月に文部科学省が示した新しい学習指導要領で、
学校の部活動が初めて次のように規定。
スポーツや文化および科学などに親しませ、学習意欲の向上や
責任感、連帯感の涵養などに資するものであり、
学校教育の一環として、教育課程との関連が図られるよう留意」
競技的な視点にとどまらず、部活が持つ生活指導などの役割を重視。
中学校では、12年度からの実施が予定。

大阪市中学校体育連盟バレーボール部会の総会も
終盤に差し掛かったころ、一人の男性教諭が立ち上がった。
「中学校のバレー部員は、積極的に参加している子ばかりじゃない。
私はプロのバレー指導者じゃない。
将来の全日本選手なんて育てられない。
でも、プロの教師です」。

こう言い切った男性は、自身が勤務する学校の例を挙げた。
「髪の毛を茶色に染めた子がいます。
その子に、『おい、ちょっとバレー部に顔を出してみろよ』
と声を掛けるんです。
生活指導の一環として、バレーを通じて人間を育てていこうと。
そんな子に、『個人登録費を払え』なんて言えば、部に来なくなる」。

日本バレーボール協会(JVA)の幹部は、
参加者の拍手に戸惑いの表情を浮かべた。
JVAの伊藤晃執行役員は、新登録制度の狙いについて
「バレーにかかわるすべての人の支えにより、
組織の基盤整備や競技普及、強化などを進める」。

しかし、「バレーにかかわるすべての人」との線引きは
明確なようでいてあいまい。

別の教諭は、「中学生は、その時々の気分で部を出たり入ったりする。
その中の一部が定着して、選手として育っていく」と現状を説明。
「出たり入ったり」の生徒にまで、登録費の支払いを求めていくのか。
この教諭は、「普及にかえってブレーキがかかるのでは」。

http://mainichi.jp/enta/sports/21century/

環境意識:東京は「高いが行動せず」…世界8都市アンケ

(毎日 5月15日)

博報堂生活総合研究所は、世界8都市の市民を対象に実施した
環境意識アンケートの結果を発表。

東京は、環境破壊への危機感は強いものの、
「便利な生活は手放せない」と答えた割合が最も高く、
環境意識は高いが具体的な行動に踏み出せない姿が浮き彫りに。

調査は、インターネット上で20~59歳の男女を対象に実施。
東京と米ニューヨーク、加トロント、英ロンドン、独フランクフルト、
仏パリ、伊ミラノ、露モスクワの計2600人(男女半数)から回答。

「地球温暖化対策は自分自身がやりたい」との回答は8都市平均で72%、
「温暖化対策は自国が主導すべきだ」は同69%、
世界的な環境意識の高まりがうかがえる。

「温暖化への危機感」を感じている割合は、
東京が88%で最高、最低はモスクワの60%。
ただ、東京では「温暖化防止のために現在の便利な生活を犠牲にしたくない」
と答えた割合も42%と最高、最低のミラノの16%を大きく上回った。

環境保護の具体的な行動を「している」が最も高かったのは、
パリの96%で、東京は78%と8都市平均の82%を下回った。

http://mainichi.jp/select/science/news/20080516k0000m040107000c.html

スキー誘客、豪に照準 県、旅行博に職員派遣へ

(岩手日報 5月16日)

県は、本県へのスキー客が減少していることを受け、
南半球に位置する豪州に照準を合わせて本格的な誘客対策に乗り出す。

日本は、欧州などと比べ豪州に近く、渡航費用が安いことなどから
近年は、北海道などに長期滞在してスキーを楽しむ豪州人が急増。

県は、シドニーで開催されるスキー旅行博に職員を派遣、
県内のスキー場をPRしたり、現地旅行会社と意見交換して
新たな市場開拓を進める。

計画では、スキー旅行博に東北観光推進機構
(会長・幕田圭一東北経済連合会長)が東北地方の専用ブースを
出展することから、今回初めて商工労働観光部の職員1人を派遣、
パンフレットを配ったり、個別相談に応じる。

現地旅行会社やマスコミ関係者との観光セミナーも予定、
東北からは本県のほか、仙台市や安比高原スキー場を経営する
岩手ホテル&リゾートなど6団体・企業が参加。

本県へのスキー客入り込み数は、1992年の延べ372万人を
ピークに減少を続け、2007年は延べ116万人と低迷。
新たな市場開拓が求められている。

県が注目しているのは、
豪州から北海道ニセコ地方へのスキー客の急増。
北海道によると、豪州からニセコ周辺のスキー宿泊者数は
03年度の延べ2万3000人から、06年度は7万8000人に増えた。

背景には、▽欧州と比べ、近距離で渡航費用が安く治安がよい、
▽時差も1時間と少ない、▽雪質がよい。
北半球に位置する日本とは季節が逆という点も魅力で、
平均滞在日数も10―14日と長い。
近年は長野、新潟両県にも流れ始めている。

スキー旅行博に2人の職員を派遣する
岩手ホテル&リゾートの安藤茂副社長は、
豪州からのスキー客は、滞在日数の長さが一番の魅力。
誘客対策で先行する北海道や長野県に勝てるようなPRをしたい」。

県地域産業課の橋本良隆総括課長は、
「韓国からの誘客も一定の効果はあるが、
現状を見ればさらなる市場開拓が必要。
誘客に熱心な地元企業とタイアップして誘客を進めたい」。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20080516_3

2008年5月20日火曜日

「岩手の技」50社選定 県が冊子に

(岩手日報 5月16日)

県科学・ものづくり振興課は、県内の優れたものづくり基盤技術を
有する50社を選び、冊子「いわての技」(A4判、80ページ)、
素人にも分かりやすく解説した「岩手のものづくりバイブル」。
今月下旬から配布を始め、人材育成、企業間取引拡大に結びつける。
冊子は、オンリーワン技術やナンバーワン技術、
業界で優れた精度・品質を実現する技術を有する50社
金属加工、樹脂成形、表面処理、組込・設計、
その他の5分野に分け掲載。
例えば、小林精機(滝沢村)の
「難削材の高精度加工を実現する精密切削技術」、
盛岡東京電波(盛岡市)の「安定した無線通信を支える水晶加工技術」。

「この技術とは」、「ここがポイント」、
「こんなところに使われているのです」という項目で
専門的表現は避け、イラストや写真を織り交ぜ、分かりやすく紹介。

冊子は、5000部作製。
同課の黒沢芳明課長は、「県内工業高校や大学などの
教育機関にも配り人材育成に役立てるほか、
県内外の商談会でも配布し、企業間の取引拡大に役立てたい」。

米男子ゴルフ:「米国育ちのたたき上げ」の快挙…今田竜二

(毎日 5月19日)

米プロゴルフツアー、AT&Tクラシックで、
今田竜二がツアー初優勝を飾った。

日本人男子選手の同ツアーでの優勝は、
青木功(1勝)、丸山茂樹(3勝)に次ぐ快挙。

39歳の先輩プロ、深堀圭一郎がかつて、
8歳年下の今田の米ツアー制覇を予言。
「竜二みたいに若い頃からこっち(米国)で対応力をつけていれば、戦える」。
14歳で渡米した今田には、米国で長年、闘ってきた者のみが持つ強さがある。

例えば芝一つをとっても、
「日本は素直な芝だが、アメリカの芝はくせがあり、ボールが曲がりやすい」。
ラフは深く、グリーンの傾斜はきつく、ピンの位置は難易度が高い。
パワーや技術に加え、タフなコースを攻略するには慣れが不可欠。

日本ツアーでの成功を礎に、世界へ挑戦する
従来の日本人プロゴルファーとは違い、今田は弱冠14歳にして
故郷の広島県三原市からバッグ一つで単身渡米。
米国のアマチュアゴルフ界でもまれてきた。

ジョージア大を経て99年にプロ転向し、04年の下部ツアーで好成績を挙げ、
05年から米ツアー出場資格を得た。
「米国育ちのたたき上げ」とも言うべき異色のキャリアによって、
今田は一朝一夕ではいかない米ツアーへの対応力を養った。

今回の優勝で、来年のマスターズ・トーナメント出場資格を獲得。
生涯の目標というマスターズ優勝への第一歩を、
今田が31歳にして力強く踏み出した。

http://mainichi.jp/enta/sports/golf/news/20080520k0000m050002000c.html

認知症の予防のためには体重に注意

(WebMD 5月8日)

健康体重を維持している高齢者は、
同時に知性と記憶を保護しているのかもしれない。
『Obesity Reviews』で発表された研究は、
認知症を防止するという点で体重が重要。

ジョンズホプキンズ大学ブルームバーグ公衆衛生学部の研究者らが、
肥満者は、標準体重の人々と比較してアルツハイマー病のリスクが
80%上昇していることを見出した。
低体重でも、そのような認知障害が発現する可能性が36%高い。

科学者らは、肥満と認知症の関連について長い間、議論してきた。
以前の知見は、「種々雑多であり、決定的ではなかった」。
国際保健疫学講座の准教授Youfa Wangらは、認知症患者を含む
1995 - 2007年の10件の国際的な研究
(米国、フィンランド、スウェーデン、フランス、日本)のレビューと解析。
研究開始時の各被験者の年齢は40 - 80歳、3 - 36年間追跡調査。

レビューした研究は、アルツハイマー病、高血圧、高コレステロールと関連し、
脳卒中に起因することもある血管性認知症を含む、
すべての種類の認知症を対象。
「メタ解析から、男女とも肥満によって認知症の相対リスクが
標準体重と比較して平均42%上昇したことが明らかに」。

60歳より前に認知機能の低下が発現した人々、
または10年以上追跡調査を行った研究において、
肥満がアルツハイマー病と血管性認知症のリスクに重大な影響を及ぼす。
リスクは、性別によってもわずかに異なる。
「肥満がリスクファクターになる可能性がより高かったのは、
アルツハイマー病に関しては女性、血管性認知症については男性」。

解析から、中心性肥満は血管性認知症のリスクを上昇させるが、
アルツハイマー病についてはそうではない。
中心性肥満とは、身体の中央部分の周りの脂肪の蓄積。
危険な腹部の脂肪は、高コレステロール、心臓発作リスクの上昇と関連。

アルツハイマー病は進行性の脳疾患で、
65歳以上の人々の認知症の最も一般的な原因。
アルツハイマー病協会によると、米国には約500万人の患者。
米国のベビーブーム世代が老年に達する今後数年間で、
その数は大きく増加する可能性があると懸念。

「正常な老化がアルツハイマー病に進行するのを防ぐ有望な方法」として、
肥満率を低下させるための、より健康的な生活習慣を推奨。
米国立衛生研究所によると、成人の3分の2が体重超過または肥満。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=SPECIALTY&categoryId=580&articleLang=ja&articleId=72651

2008年5月19日月曜日

夜型リズムにブレーキ 体内時計の遺伝子特定

(共同通信社 2008年5月13日)

昼夜のリズムを刻む体内時計が正確に働くよう、
生物の脳などで「DEC」と呼ばれる遺伝子が調節役を果たしていることを、
広島大の加藤幸夫教授らが突き止めた。

体内時計に関しては、「CLOCK」など4種類の遺伝子が知られているが、
DECはそれとは別に午前中に強く働き、
リズムが夜型にずれないように調節。

加藤教授は、「リズムが狂うと、睡眠障害のほか高血圧やがんに
なるとの報告もある。病気の治療薬開発につながるかもしれない」。

チームは、DECが働かないようにしたマウスで実験。
正常なマウスに比べ、昼夜の周期が長くなって、
夜型になりがちなのを確かめた。

既知の4遺伝子は2つ1組で働き、片方が時計を進めるのに対し、
もう一方は遅らせるよう反対に作用してバランスを取っている。
DECは、光などの環境の変化に素早く反応、
リズムが正確に24時間になるよう、周期を少し速める
ペースメーカー的な役割を果たしていた。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=72630

地球と暮らす:/47 あそんで学ぶ環境と科学倶楽部 川から歴史が見える

(毎日 5月12日)

江戸時代に人や物を運んだ川や運河。
車社会が発達し、現代人から水辺は忘れ去られたが、
東京の川には歴史や環境を学ぶ教材がたくさんある。

NPO「あそんで学ぶ環境と科学倶楽部」は、
都市の川をボートでめぐるエコツアーを実施。

隅田川に注ぐ都市河川の日本橋川と神田川をめぐる半日ツアーに同行。
親子連れやカップルら10人を乗せ、JR水道橋駅近くの日本橋川を出発。
普段は上からのぞき込んでいた川を、ボートでゆっくり進む。
水面からの目線で眺めると、コンクリートの護岸が切り立っている。
高速道路の橋脚が視界をさえぎる。
高度成長期に「用地買収に時間がかからない」という理由で、
川の上に高速道路が次々と建設。

倶楽部の代表で、船長兼ガイドの中林裕貴さんは、
川は、私たちの便利な生活の『裏方』として追いやられてしまった」。

神田川に入ると、両方の護岸はギリギリまで高い塀がそびえる。
川に面した側には窓のない家もある。
「神田川は今はずいぶんきれいになった。
が、生活排水で川が汚れていたころは悪臭がひどく、
家は川に背を向けていた」。
最近は、川辺にテラス席を置くレストランも見かけるようになった。

日本橋川では、千代田区一ツ橋付近で、護岸の下に石垣が見えた。
江戸城の外堀として利用されていた日本橋川の石垣の名残で、
伊豆の採石場から石船に乗せ江戸に持ち込んだ。

約2時間のツアーを終えた乗客たちは、
「川から江戸や東京の歴史を見ることができた」、
「ふだんは遠い存在だった川を身近に体験できてよかった」と満足。

倶楽部は、都心の川の魅力に気付いたボートのオーナーら40人が
02年6月に結成。
05年にNPO法人化し、一般を対象にエコツアーを始めた。
昨年4月からは、排ガスを出さない電気で動くエコボートを導入。
中林さんは、「遠くの大自然を体験するのもいいが、
身近なエコツアーは、翌日から日常生活を見直すことにもつながる」。
==============
神田川・日本橋川エコツアーは、1日コース(4時間)大人5000円。
半日コース(2時間)4000円。
「小名木川」や「芝浦・天王洲」をめぐるコースもある。
電話03・5547・8778、ウェブhttp://enjoy-eco.or.jp/

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2008/05/12/20080512ddm016040007000c.html

住田で達増知事と森の案内人懇談 豊かな自然、発信を

(東海新報 5月16日)

住田町の遊林ランド種山で、県政懇談会
「草の根地域訪問『こんにちは知事です』が開かれ、
達増拓也知事が「すみた森の案内人」(佐々木義郎代表)の
メンバーと懇談を深めた。

懇談会は、県が重要課題とする県北・沿岸振興の推進を図るべく
沿岸地域で行っている「移動県庁」の一環。
県の「元気なコミュニティー100選」に選ばれた団体と懇談し、
県北・沿岸圏域の持つ資源にスポットライトを当て、
知事自身が現場に足を運んで行う地域住民との交流、意見交換を
今後の施策に生かしていこうとのネライ。

達増知事や高橋克雅大船渡地方振興局長、森の案内人の佐々木代表、
水野清副代表、佐々木慶逸事務局長、紺野好子さん、
佐々木康行さんのメンバー5人が出席。

知事は、「懇談は、コミュニティーの元気を県政に役立てたいとの趣旨」。
佐々木代表が、種山ケ原と五葉山森林公園、気仙川をフィールドとした
同組織のガイド活動、町の森林の科学館構想の一端などについて説明。

「案内人の活動は、素晴らしい資源を広く伝えたいと16年に始まり、
昨年は30回以上ガイドを行ってきた。課題は、会員不足」、
「一般の観光ツアーにはない、ふれあいが魅力と思う」、
「自然とともに先人が築いた文化も知り、伝えたい」。

知事は、「江刺の人首に親戚がおり、幼いころは種山で昆虫採集をした」
岩手は、本州一の森林面積を誇り、森のよさについて
県民に知ってもらい、外への発信も広げ、県産材が売れる流れをつくりたい。
次世代に自然を伝えようという皆さんの活動をありがたく思う」。

懇談終了後は、小雨の降る中で案内人とともに種山を散策し、
活動のさらなる広がりに期待。

http://www.tohkaishimpo.com/

2008年5月18日日曜日

シンポジウム「iPS細胞研究の展望と課題」(その2止)

(毎日新聞社 2008年5月13日)

◆基調講演

◇分化した細胞核に全能性--発生学の世界的権威、ジョン・ガードン氏

私たちは卵への核移植を研究し、細胞核の遺伝的な同一性を実証。
この研究からクローン羊、iPS細胞へとつながっていく。
卵から胚、胎児、成人になる発達の過程で、細胞は不可逆的に分化。

しかし、皮膚や腸の細胞核を卵に移植して胚をつくり、
心臓や筋肉の細胞に再分化させることができる。

私たちは、アフリカツメガエルのクローニング。
両生類の卵は大きいので、核移植しやすい。
脊椎動物では初めてクローニングされたカエルは、
正常なカエルとして約20年生きた。生殖機能も正常。

この研究から、分化した細胞の核は全能性を有していること、
30%程度の効率で再分化が可能なこと、
分化の際にゲノム(全遺伝情報)が保全されていることが実証。

現在は、どんなメカニズムでリプログラミングが起こるのかを、
卵母細胞という成長過程にある卵細胞を使って研究。

英国では、卵を使う研究に対する倫理的憂慮があるが、
私自身は心配していない。
別人の治療に使う細胞を作るため、人の生命を殺すと批判する人も。
私自身は、胚は移植しない限り生命にはならず、
胚をその段階の前にとどめれば、生命とはいえない。
倫理的に心配することはない。

◆「時間は不可逆」常識覆す--理化学研究所ディレクター・西川伸一氏

すべての科学的発見には源流がある。
iPS細胞の一つのルーツは、胚性幹細胞(ES細胞)。
もう一つのルーツ、細胞のリプログラミング
(いったん分化した細胞が、元の未分化の細胞に変化)については、
あまり語られていない。

1800年代に、ワイスマンは分化の際に遺伝子が
なくなっていくのではないかと考えた。
それが本当かどうかを確かめるため、核移植が行われ、
分化しても遺伝子が保たれていることがわかった。
後に、ガードン先生はカエルを使って、大人の細胞から
リプログラミングできるということを示した。

3人の方は、細胞の分化が一方向ではなく、戻りうるということを
証明する重要な研究をされた。
私たちの文化では、時間の経過は不可逆的だと思ってきた。
そうした常識を覆す研究がどのように生まれたのか?

◆パネルディスカッション(コーディネーター:永山悦子・毎日新聞科学環境部記者)

永山 ガードン、ウィルムット先生にiPS細胞を知った時の感想は?

ガードン 研究成果は素晴らしい。
体細胞を、直接ES細胞に変換することは考えてもいない。
ただ、卵子はリプログラミングを100%成功させるユニークな能力を持ち、
卵子への関心は残っている。

ウィルムット ここで確立された手順は有用であり、私たちはこの手法を使って、
ALSなどの疾病の解明に役立てる。iPS細胞が安全であるということを、
時間をかけて確認する必要がある。

永山 iPS細胞研究は、クローン胚研究に完全に置き換わるのか?

ウィルムット ES細胞から学ぶことはたくさんあり、研究は続けるべき。
近い将来、iPS細胞が胚由来の幹細胞と同じだと分かり、
iPS細胞が唯一使うべき細胞となる日が来る。

永山 倫理的な側面をどう考えるか?

ガードン 毎年、頼まれて聖職者にレクチャーをする。
私たちの考え方に対し、敵意を持つ聖職者は少なくない。
研究により、初期段階の限られた胚を失うが、潜在的な利益がある。
だんだんと多くの聖職者が支持し、昨年は85%が研究を続けるべきだと。

ウィルムット 私は生きてきた60年の間、数多くの発見があった。
抗生物質の発見、人工受精、臓器移植、新しい化合物の開発など。
私たちが問うべきことは、なぜもっと早く治療法を開発できないのか。
例えば、ALSやパーキンソン病などの治療法。
治療法ができた時、世界中の人たちが使えるようにするために、
どうしたらよいのか。
これの方が、私にとって(倫理的問題よりも)重要な問題。

山中 培養器中のヒトの受精卵を顕微鏡で見た時、ものとは思えない。
その感覚は失いたくない。
病院が火事になり、培養中の受精卵と自力で動けない患者さんがいれば、
当然、受精卵を放置して患者さんを助ける。
患者さんを救うのに、受精卵を使ったES細胞しか方法がなければ、
受精卵を使うべき。
技術が進んで、受精卵を使わずきるようになれば、両方を大事にすべき。
将来、iPS細胞から精子や卵子ができてしまう可能性がある。
新たな倫理的課題をつくり出している。野放しにしないことが必要。

永山 日本ではiPS細胞への期待が大きく、
政府はこれまでにない速さで支援体制を作った。英国ではいかがですか?

ガードン 英国民は、iPS細胞研究の成果に感動。
過去に、科学技術や医療の進歩への期待が裏切られる経験をしているため、
過剰な期待はよくないという国民感情も。
難病が近い将来、治癒可能になるとは思っていない。

永山 国際協力をどうすべきか、アイデアはありますか?

ガードン iPS細胞研究の重要性は多くの人たちが理解し、
研究者同士が知識を共有。
複雑な国際協力の枠組みを確立しなくても、研究は進展する。

山中 iPS細胞研究は、ヒトゲノム計画のように
一国では予算的にも研究者の数からもできない研究とは違い、
手技が簡単で小さな研究室でもできる。
私が期待しているのは、病気の方の細胞からiPS細胞をつくって
病気の解明や創薬に使いたい。
世界のいろいろな国の方のiPS細胞を同じ手法でつくって、
誰でも使えるバンクを設立するような協力は早い時期に必要。

ウィルムット ES細胞の研究で連携している国際グループがある。
そういった連携があれば、進展が加速される。

西川 早く患者さんのために使えることが一番重要。
皆が知財の所有権を、主張し合って争っていては仕方がない。
英国や米国が1000人のゲノムを読み取るプロジェクトを進め、
ゲノムが分かっている方のiPS細胞ができると、さまざまな形で使える。

永山 ALS患者にとって、iPS細胞は希望につながるか?

山中 今は何もできない。
そのことを、できるだけ正確に伝えるように努めている。
しかし、今の患者さんからつくったiPS細胞の研究は、
将来の患者さんに役に立つ可能性は十分にある。

西川 研究所に、医学部出身で突発性心筋症の研究者が入ってきた。
動機は、自分の体を治すためだったが、選んだ研究テーマは
DNAについての極めて基礎の研究。
心臓発作で亡くなったが、回り道のように見えることが実は大切。
患者さんたちが集まって力を合わせると、研究は進む。
多くの人が参加する仕組みをつくることが必要。
……………………………………………………………………………
◇ジョン・ガードン
1933年英国生まれ。62年にアフリカツメガエルの体細胞クローンを作成、
後のクローン羊「ドリー」など哺乳類の体細胞クローンの実現に道を開いた。
73年ケンブリッジ大教授。現在、同大ガードン研究所所長。
……………………………………………………………………………
◇にしかわ・しんいち
1948年滋賀県生まれ。京都大医学部卒。京大結核胸部疾患研究所、
ドイツ・ケルン大遺伝学研究所。熊本大医学部教授、京大医学部教授を経て、
理化学研究所発生・再生科学総合研究センター幹細胞研究グループ・ディレクター。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=72706

シンポジウム「iPS細胞研究の展望と課題」(その1)

(毎日新聞社 2008年5月13日)

京都大の山中伸弥教授らが、世界で初めてつくった
人工多能性幹細胞(iPS細胞)への理解を広げようと、
シンポジウム「iPS細胞研究の展望と課題」が開催。

山中教授のほか、発生学の世界的権威ジョン・ガードン博士と、
クローン羊「ドリー」を誕生させたイアン・ウィルムット博士が基調講演し、
体細胞クローンからiPS細胞に至る研究の流れが明らかに。

西川伸一・理化学研究所幹細胞研究グループ・ディレクターを加えた
パネルディスカッションでは、iPS細胞の意義や将来像、
倫理的問題などが語られた。

会場には一般の人々や研究者、患者など約500人が集まり、
生物学の歴史を作った研究者たちの話に聴き入っていた。

◆基調講演

◇人の病気治すため研究--京都大教授・山中伸弥氏

研究を始めた時から尊敬していたガードン先生、
万能細胞研究を始めるきっかけとなったウィルムット先生にお会いし、
研究結果を発表できることは、研究者人生にとって記念すべき日。

ES細胞は、心臓や神経などのさまざまな細胞に分化。
この性質から、創薬や毒性の研究に使うことが期待。

しかし、問題点もある。
一つは、ヒトの受精卵からつくるという点。
治療、医学のためとはいえ、受精卵を使うことに対し、反対が多い。
二つ目は、患者さん自身の細胞からつくることは難しい。

これを解決できないかと考え、
1999年に奈良先端科学技術大学院大学でプロジェクトを始めた。
体の細胞に、特定の因子(遺伝子)を導入することによって、
ES細胞と同じような幹細胞をつくることができないか?

その因子を、多能性誘導因子(PIF)
ガードン先生の研究によって、カエルの卵子には
体細胞の時計を巻き戻すPIFがあることが示された。
ウィルムット先生のドリーにより、哺乳類の卵子にもPIFがある。
2000年、京都大・多田高先生により、ES細胞にもPIFがある。
そこで、マウスのES細胞を使った研究を始めた。

その結果、24個の因子が大事だと分かった。
04年に京大に移り、線維芽細胞という体細胞に24個の一つずつを
入れてみましたが、万能細胞はできない。
次に、いくつか組み合わせて入れた。
4つを同時に入れると、ES細胞にそっくりな細胞ができることが
05年に分かり、これをiPS細胞。論文にしたのは、06年夏。
ES細胞と同様、iPS細胞からマウスができ、07年に報告。

私は、元々整形外科医。治したいのは人であり、マウスではない。
05年から、ヒトのiPS細胞づくりに着手。
マウスの論文発表をしたころ、ヒトでも同じ因子でできることが分かった。
今は4因子のうち、腫瘍発生に関連する「c-Myc」という因子を
入れなくてもよく、3因子を入れる。
培養すると、ヒトのES細胞と区別できないような細胞ができる。
慎重にデータを積み重ねて、07年11月に論文発表。

iPS細胞は、ES細胞と同様にさまざまな細胞に分化。
どくどくと拍動する心臓の細胞もできた。
それを見た時は、僕の心臓もどくどくと拍動した。

iPS細胞で何ができるのか。
さまざまな病気の患者さんの体の細胞からiPS細胞をつくり、
心臓や神経などの細胞にすることができる。
病気の解明に役立つと期待。
効果の高い薬のスクリーニング、個人ごとの副作用の検査にも役立つ。
細胞移植療法にも使える可能性。

患者さんからiPS細胞をつくることは、高額の費用、時間がかかる。
皮膚細胞からiPS細胞をつくるまでに1カ月、量を増やすのに1カ月、
さらに分化させるのに1カ月と、最低でも3カ月。
脊髄損傷は、損傷から10日ほどで治療しなければ効果が出ない。
そこで、iPS細胞バンクを作ってはどうか。
健常な人から皮膚細胞をもらい、iPS細胞をつくっておく。
移植には、HLA(白血球の型)という細胞のタイプを合わせる。
タイプの異なる細胞をそろえたバンクをつくっておく。

この研究は、多くの若い研究者、学生が一生懸命努力をして成し遂げた。
多くの人に役立ちたいのだという純粋な気持ち。
お金もうけのために転用されることは、防がなければならない。

◆基調講演

◇難病解明、治療に役立つ--クローン羊「ドリー」生みの親、イアン・ウィルムット氏

核移植には、二つの細胞が必要。
まずは未受精卵で、ドリーの場合には成熟した雌ヒツジから取った。
遺伝子の情報を提供する体細胞は、成熟雌ヒツジの乳腺組織から。
移植後、電流をかけると、二つの細胞が融合し、細胞が発達を開始。
電流が精子のような役割を果たす。
卵を、別の雌ヒツジの子宮に入れて子ヒツジが生まれる。

ドリー以降、さまざまな動物種のクローニングが成功しているが、
霊長類はES細胞は得られるが、子は生まれない。なぜかは不明。

核移植と電流刺激などの活性化を同時にすることも、遅らせることもできる。
ヒツジではどちらでも差がない。
しかし、牛では活性化を遅らせたほうがよい。
マウスでは遅らせることが必須。
なぜ、種によって違うのかは全く分からない。

なぜ、クローン技術が有用なのか?
日本のビール会社が米国の研究に資金を提供し、
牛でヒト型抗体を産生することに成功。
がんやエイズの患者から組織をとり、牛に注入し抗体を産生。
それを患者に入れて、疾病関連細胞を破壊するということが可能。

もう一つ考えられることは、遺伝病の研究に役立てること。
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、筋力が低下する難病。
原因は分からず、治療法も確立していない。
ALS疾患遺伝子を持つ人から細胞を取り、核移植をしてクローニングすると、
患者と健常な人の神経細胞の違いを研究することができる。

ドリーが示したことは、発達を制御するメカニズムはそれほど複雑ではなく、
可逆性があるということ。考え方が変わった。
……………………………………………………………………………
◇iPS細胞(人工多能性幹細胞)

神経や筋肉、臓器など体のさまざまな部位の細胞に分化する
万能性を持つ人工の幹細胞。
同じ万能細胞であるES細胞は、受精卵を壊してつくるが、
iPS細胞は大人の体の細胞(体細胞)からつくる。

山中教授らが、06年にマウスのiPS細胞をつくったと発表後、
世界で研究が活発に進められている。
文部科学省は、「世界に誇れる日本発の成果であり、
再生医療の実現に向けた大きな第一歩である」と評価し、
08年度から5年間で総額100億円の支援策。
……………………………………………………………………………
◇体細胞クローン

1個の個体や細胞から受精によらない無性生殖によって増えた
遺伝的に同一な個体を、クローン。
体細胞クローンは、動物の体の細胞を使って作った元の動物と
遺伝的にほぼ同一の個体。
個体の皮膚などの体細胞から遺伝子を含む核を取り出し、
核を除いた未受精卵に移植する「核移植」の後、
電気的刺激などにより融合させて胚を作り、子宮に入れて妊娠、出産。
英ロスリン研究所は96年、哺乳動物では世界初のクローン羊「ドリー」誕生。
……………………………………………………………………………
◇やまなか・しんや
1962年大阪府生まれ。神戸大医学部卒、大阪市立大大学院修了。
04年から京都大再生医科学研究所教授。
07年にヒトの人工多能性幹細胞(iPS細胞)を作成。
08年、京都大物質-細胞統合システム拠点iPS細胞研究センター長。
……………………………………………………………………………
◇イアン・ウィルムット
1944年英国生まれ。ケンブリッジ大で博士号取得。
96年、ロスリン研究所の遺伝子機能・開発部の責任者、
世界初のクローン羊「ドリー」を誕生させたチームを指揮。
現在、エディンバラ大再生医療センター所長。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=72705

やっぱりにおいが決め手

(サイエンスポータル 2008年5月9日)

マウスが雄、雌の違いや個体を見分けるのは、
フェロモンとにおいを感じる細胞の働きによることを、
理化学研究所と米ストワーズ医学研究所の研究チームが突き止めた。

動物の行動や生理的な変化に関与するフェロモンは、
尿や体からの分泌物に含まれ、マウスなどげっ歯類では
鼻の中にある鋤鼻器という器官で、「におい」として感知。

鋤鼻器の中に、250種類ある嗅覚受容細胞にフェロモンが結合すると、
細胞内でカルシウムイオン濃度が上昇し、
その信号が脳へ伝わり、行動や生理的変化となって表れる。

理化学研究所脳科学総合研究センターの中井淳一研究員と
ストワーズ医学研究所のロン・ユウ博士らは、
嗅覚受容細胞でカルシウムイオン濃度が上昇すると、
蛍光を発するマウスをつくりだした。

マウスの鋤鼻器のスライス標本に薄めた尿をふりかける手法で、
どの細胞がどの尿に反応するかを調べた。
この結果、雄、雌どちらかにしか反応しない細胞があり、
去勢されたマウスの尿には雄にのみ反応した細胞も
無反応であることなどが明らかになった。

同腹の兄弟姉妹とそれ以外のマウスでも
明確な反応パターンの違いが見られ、
同腹の兄弟姉妹の尿に対しても反応パターンは全く同じではない。

これらの結果から、フェロモンに反応する嗅覚受容細胞の
パターン認識により、雄、雌の違いだけでなく、個体の識別も行われている、
と研究チームはみている。

http://scienceportal.jp/news/daily/0805/0805091.html

岩手らしい産業集積へ 移動県庁で知事が意欲

(岩手日報 5月15日)

達増知事が、沿岸地域に滞在する移動県庁は、
釜石市や住田町などで開かれた。
大船渡市の産業団体との意見交換で、達増知事は
「海洋研究機関や水産業振興で一定の効果が出ている。
岩手らしい草の根型の新しい産業集積を目指していきたい」。

気仙地域産業戦略会議の特別会で、達増知事は
海洋版シリコンバレー構想は既に効果が出てきている。
農林水産品や人の輪などは世界にも通用し、所得の上昇や
地域振興の弾みになる資源だ。県もしっかり支援していきたい」。

釜石市では、湾口防波堤を観光船から視察。
釜石市の上村俊一副市長らが、
湾内の静穏水域での養殖や観光戦略など説明。

釜石市から大船渡市までは、三陸鉄道南リアス線の「産直列車」で移動。
車内で、手作りお菓子や海産物などの販売の様子を見学、
生産者や三陸町三鉄友の会(熊谷久直会長)、乗客らと交流。
住田町では、すみた森の案内人(佐々木義郎代表)とも懇談。

達増知事は、2日間の移動県庁について
「地域資源の可能性や活用の方向性が私自身見えてきたし、
地元の皆さんと確認できた。県全体の行政にも反映させていく」。
移動県庁は29、30日、二戸市、久慈市など県北地域で実施。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20080515_6