2009年1月24日土曜日

現場再訪(6)「地域枠」医学生 高い意欲

(読売 1月15日)

地元優先枠で入った医学生が、へき地医療に熱意を持ち始めた。

「将来は、医師になってこの島に戻ってきます」
島根大医学部3年の高梨俊洋さん(20)が力強く語ると、拍手が巻き起こった。
島根県隠岐の島町で、昨年10月に開かれた「地域医療教育シンポジウム」。
パネリストの一人、高梨さんは地元出身。
町で授産施設を運営する斎藤矗一さん(67)は、
「島に帰ってきてくれれば本当にうれしい。崩壊寸前の離島の医療を支えてほしい」

人口約1万6300人の町では、昨年4月から四つの診療所のうち
一つが医師不在になった。
町のテコ入れで半年後に確保したものの、
今春には別の診療所の医師がいなくなる。
中核病院・隠岐病院の産科医は一人で、危険を伴うお産はできない。

高梨さんは、そんな大変さをよく知るだけに、「一日でも早く貢献したい」と意欲。
県内唯一の医師養成機関である同大医学部が、2006年度から導入した
「地域枠」入試の1期生。
受験には、へき地の医療機関などでの研修と、出身地の首長の推薦が必要。
受験できるのは、松江市と出雲市の都市部などを除く県内出身者。
導入から3年がたち、学士入学を含めて32人が学んでいる。

地域枠の学生に将来、へき地の医療機関に勤務する義務はない。
だが「思いは伝わっている。受験段階で地域医療の実情の厳しさを見ており、
地元からの期待も感じている。地域に貢献したいという意欲はとても高い」
と木下芳一医学部長(53)。

授業内容は一般学生と変わらないが、春夏の長期休暇中に、
県内の医療機関で行う医療体験実習への参加を強く勧めている。
数日間、来院患者の案内や補助、診察の様子を観察し、
勤務医から話を聞く内容で、実際に地域枠の学生の参加率は高い。

県中央部、大田市出身の岡田祐介さん(20)(2年)は昨夏、
隠岐諸島・西ノ島の病院で実習。
「古里が好きだし、古里に貢献したいと改めて思った。
実習を通して、勉強の意欲も高まった」

ただ、地域にとどまらず、高度な医療を学んで能力を高めたいという
声があるのも事実。
「島根で働きたい気持ちは変わらないが、理想の医師像はまだ見えない。
他県の先進地域に行って、様々なことを身につけたい」と3年の山口祐貴さん(21)。

地域枠の学生を担当する地域医療教育学講座の熊倉俊一教授(48)は、
「医師が高度な医療技術を身につけることは、地域住民にも大切なことだ」
島根県では、県内のへき地に一定期間勤務した後、
大学病院や都市部の基幹病院に一時的に移り、
大学での研究に従事できる仕組み作りも始まっている。

全国的な問題になっている都市部とへき地の医療格差。
「医師不足の地域で働く医師を育てるモデルを作るには、
10年、20年先を見越す必要がある」(木下医学部長)。
息の長い取り組みが続く。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090115-OYT8T00225.htm

中小企業の技術流出を防げ

(日経 2009-01-13)

「世界的な経済危機で、大企業が中小企業との関係を断ち切る動きを
加速すれば、玉のような技術はどっと海外に流出してしまう」。

半導体や薄型パネルの技術コンサルティング、オムニ研究所の吉見武夫社長は、
日本の生命線、モノ作りを根っこから支えてきた中小の有望技術が、
今度こそ崩壊の危機を迎えるのでは、と危惧。

毎年12月、幕張メッセで開催される半導体製造装置展示会「セミコンジャパン」。
オムニ研究所は、東京エレクトロン、ニコンなど大企業のブースの真ん前に
展示コーナーを構える。

集客力が高いメーンストリートにこだわるのは、同社のブースに展示する
中小企業の独創技術を多くの人に知ってもらいたいから。
セミコンでのオムニ研究所のブースは、中小の独創技術をみようと大勢の来場。

景気悪化を反映、出展中止など会場の活気は盛り上がりを欠いたが、
オムニ研究所のブース来場者は、前年より1割多い1800人。
吉見氏は、「セミコンで、目からうろこが落ちる中小企業の一押し技術を
アピールする機会を無償提供する活動を、8年前から続けてきたことが認められた」

世界初の膜封止技術で、厚さ0.5ミリメートルの超薄型白色有機EL量産に
成功した東北デバイス(岩手県花巻市)が、注目の的で多くの人であふれた。
光の透過率を高めたガラス薄膜を開発して、太陽電池の省エネを進める
フューチャー・プロダクト(埼玉県毛呂山町)、
非接触で電気を伝えるワイヤレス空間送電システムのユー・ディ・テック(東京・大田)
など出展9社の試作品は、参加者から「驚いた」と称賛。

技術発掘の原動力は、吉見氏の幅広い人脈。
会費や規則もない異業種交流会を、吉見氏は30年前から開催、
メンバーは現在5800人(2300社)。
業種や企業の壁を超え、腹を割った議論をすることが会の趣旨で、
開発や製造の第一線で活躍する会員が、
「大手では思いもつかない中小の面白い技術を見つけた」と知らせてくれる。
昨年は、50社が支援候補になり、その中から9社が選ばれた。

吉見氏は、98年に日立製作所を退社、オムニ研究所を設立。
日立では半導体事業部副技師長を務め、工場の設備予算の配分権限。
当時の日立は、予算の2割は日立グループに最優先で割り振る決まり。
現場が中小の装置や材料購入を提案しても、入り込む余地はなかった。
吉見氏が中小企業の支援に奔走するのは、
「日立時代、モノ作りを支える中小企業に目を向けなかった反省の意味も」

米ゼネラル・エレクトリック(GE)は07年、
「ジャパン・テクノロジー・フォーラム」と称して、日本の中小企業33社を集めた
技術評価会議を開き、センサーなど3社を提携先に選定。

日本GEの藤森義明会長は、「日本の技術力を、
GEとしていかに吸収するかに焦点を当てている」

東京・大田や東大阪では、中国や韓国メーカーがトヨタ自動車や
パナソニックなどのモノ作りノウハウを入手できる好機と、
資金支援をちらつかせて技術力ある中小企業に買収や提携を
持ちかけているとの話をよく聞く。

技術流出の懸念は現実のものとなっているだけに、
吉見氏は、「日本の中小企業の有望技術の発掘と育成にもっと力を入れ、
大手に採用を呼びかける活動の輪を広げていきたい」

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/mono/mon090108.html

=慶応大医学部の挑戦=

(Japan Medicine 2008年12月22日)

慶応大医学部は、教育環境の充実に向けて情報通信技術(ICT)を
積極的に活用している。
教師側から医学生への一方通行だった従来型の教育体制を見直したのが契機。
特に力を入れるのは動画教材の充実で、
2007年度からは文部科学省の補助を受け、臨床実習を行う医学部5、6年生を
中心に医学生が自由に教材を入手し、活用できる環境整備を加速。

慶応大医学部が教育体制の変革に着手したのは、4年ほど前から。
07年度、文部科学省の現代的教育ニーズ取組支援プログラム(現代GP)に採択。
GPは“グッドプラクティス”の略で、優れた取り組みを選んで
金銭的な支援をするだけでなく、情報提供を通じて、
他大学にも教育改革を促すことを目的。
選考では、教師側からの一方向の従来型教育を見直し、
学生との双方向性を確保しやすい問題解決型学習への転換を図る趣旨が評価。

テーマは、「ICT(Information and Communication Technology)導入による
授業効果の向上」。
効果は認められているものの、膨大な教材が必要で、
授業でカバーできる学習範囲も少なくなるという問題解決型学習の課題をICTで解消。

学内のイントラネットに教材を蓄積し、図書館やラウンジなどの固定端末(PC)から
閲覧できる環境はすでに構築。
現代GPでは、アップルの携帯プレーヤーiPodなどを導入、
医学生がイントラネット上の専用サーバーから教材をダウンロードして、
いつでもどこでも学べる環境を整えた。

04年度から医学教育統轄センター長の天野隆弘氏は、
「特に動画は、言葉で説明するより内容を容易に伝えることができます」
“画像化”を掲げて教育体制を変革する背景には、
医学部教育や卒業後の医師養成の在り方が大きく変化したことがある。

04年度に必修化された新医師臨床研修制度の目的は、
幅広い臨床能力を持つ医師の育成。
天野氏は、「医学部教育とのつながりの中で、授業が従来のままでは
なかなか臨床ですぐに診療を、というわけにはいかない」と指摘。

慶応大では5、6年時の臨床実習の充実に向けて、
毎年20~30人の模擬患者(SP)を養成して診察の仕方を学ばせたり、
シミュレーターというヒト型模型で手技を体験させたりしている。

動画教材は、教育の実効性を高めるために役立てる。
天野氏は、「実際に教育をする前に、シミュレーターを使った手技などの
実際を見せておく必要があります」
自前の視覚教材は70種類超 学内に呼び掛けて制作した自前の動画教材は
70種類を超えた。
天野氏も、専門の神経内科で意識障害レベルの診察のポイントなどを
動画にした教材をSPと協力して制作。

編集方針は、医学生に考えさせること。
集中力が途切れず、何度でも繰り返して視聴できるように、
1教材当たりの時間は10分前後。

製品化された教材も積極的に導入。
知りたい症状や病名を入力すると、該当する情報が一覧表示される
電子臨床情報「Up To Date」を皮切りに、国内外で臨床医に活用され、
診断・治療の最新動向を学べる教材をそろえてきた。

導入を決めたのがクリニカル スーパーライブサーバー(CSL)。
天野氏は、「医学部の6年を中心に、初期研修医も学べるプログラムが
ありますという提案があり、役立ちそうなものを選んで導入」

CSLの動画コンテンツの企画・制作は、ケアネットが行った。
泌尿器科が専門で、週末は訪問診療もする同社・取締役の姜氏は、
「米国などで教育体制の素晴らしさを実体験した医師に、講師を依頼。
教育としてのエンターテインメント性も加味した」

システム開発は、フォルトゥーナが担当。
医学生同士で情報交換ができるソーシャルネットワークサービスの機能があり、
指導医も、学生の視聴状況を確認したり、質問や相談に応じたりもできる。

文科省予算のため、「iPod」は医学生のみに貸し出している。
天野氏は、いずれは初期研修医らにも貸し出すとともに、
CSLのコンテンツも「iPod」に移し、病棟で使えるようにしたいと考えている。
院内のPC端末も現在の15カ所から、最終的には45病棟に設置し、
動画を含めた種々の教材をダウンロードできるようにする。

「医師には、目の前の患者さんを何とかするために、あの本を読めばいい、
この検査をすればいいということを、積極的に行って
問題を解決する姿勢が求められる。
学生のうちからその積極性を身につけてもらうことが重要」(天野氏)。

問題解決型学習の課題を解消しつつ、教育環境を充実させるための
ICT導入は、ほぼ一段落した。
蓄積した教材は随時更新する方針。
医学生らから人気があり、繰り返し視聴されているかなどの指標をもとに
教材を評価して、継続的な質の底上げを図っていく。

http://www.m3.com/tools/MedicalLibrary/jiho/200812/trend1.html

夜間の良質な睡眠が風邪をおとなしくさせる

(WebMD 1月12日)

夜間の良質な睡眠が、風邪の予防のもっとも優れた方法のひとつ。

夜間の睡眠が7時間未満である者は、8時間以上の睡眠をとる者に比べて、
風邪原因ウイルスへの曝露後に風邪をひく傾向が3倍高い。

よく眠らないと風邪をひきやすいと一般的に考えられているが、
そのことを支持する科学的エビデンスはこれまでほとんどなかった。

『Archives of Internal Medicine』に掲載された今回の研究では、
健康な男女153名を調べた。
14日間の睡眠習慣を追跡し、前日の夜の睡眠の長さと質および
休息できたと本人が感じられたかどうかを記録。
14日後に被験者を検疫隔離して、風邪原因ウイルス(ライノウイルス)を含む
液を点鼻し、その後5日間にわたって風邪の徴候を監視。

その結果、実験日までの夜間の平均睡眠時間が7時間未満であった者は
夜間の睡眠時間が8時間以上だと答えた者に比べて、
風邪を発症する傾向が3倍近く高かった。

しかし、ベッドに入っていた時間数は関係がなかった。
研究者のSheldon Cohen(カーネギーメロン大学)らによれば、
実際に睡眠した時間の割合が特に重要。

例えば、ベッドに入っている時間のうち睡眠時間が92%であった者は、
ベッドに入っている時間の98%が睡眠時間であった者に比べて、
風邪になる傾向が5.5倍も大きかった。
ただし、休息したという自覚は、風邪をひくこととは関係なかった。

「今回の結果は、睡眠が風邪への感受性に対して因果的役割を果たしている
可能性を強く示唆するものである」

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=SPECIALTY&categoryId=580&articleLang=ja&articleId=86522

2009年1月23日金曜日

現場再訪(5)統合せず「少人数」生かす

(読売 1月14日)

県教委の名物職員が、教育長として山間の町の教育を変え始めた。

宮崎県五ヶ瀬町立三ヶ所小学校で行われた3年生の音楽の授業は、
40人の児童に教師が5人がかりだった。
1人の伴奏で子供全員が輪唱をした後、個別に楽器を選ぶ時点からは、
教師がグループごとに付いて指導した。

昨年から始めたG授業(GはGOKASEのG)。
熊本県境に接する町の人口は約5000人だが、
小学校が4校、中学校が2校ある。
G授業は年20回ほど、他校の子供もスクールバスで集まって一緒に行う。
教師も集まれば、指導は当然手厚くなる。

小中学生は全町で400人足らず。普段は輪唱も難しい。
G授業では逆に、児童2人に教師1人が付いて算数を指導する場面や、
小学校の教師が中学校に出向く場面も。
どんな内容の時に、どういう規模が最適か探っている。

この取り組みを始めた日渡円町教育長(52)は県教委時代、
教員の評価制度や学校事務の共同実施を進め、文部科学省幹部も一目置いた。
「条文に照らして市町村にダメ出しをするのが、県教委の仕事だった。
でもダメが多過ぎれば、ルールがおかしいということになる」。
長年の経験や思いを今の仕事にぶつけている。

2年前の就任時、校長たちが示した学校の教育目標を、
「当たり前のお題目ならいらない」と突き返した。
「算数の力が弱い」、「コミュニケーション力が……」と低学力を訴える校長たちに
「教師の力量のせいでは」と問いかけた。

秋には、43年ぶりの全国学力テストの結果が出た。
町の成績は、全国平均よりも県平均よりも高かった。
「理由は少人数教育しかない。少人数は町の教育の強みだ」。
前任者の頭には学校の統廃合があったが、
発想を180度転換して町の教育ビジョンを作った。
統合すれば、教職員数が大幅に減る。現在は6校で計82人。
その力を生かしたいと考えた。

ビジョンの実行部隊となる3委員会14部会のすべてに教職員が入った。
教職員を核に、町を変えようとしている。

図書館の代わりに、学校の玄関、農協、バス停など、
至る所に方々から入手した図書を置き始めた。
それをネットワーク化し、借りたい人がいる所に本を運ぶ仕組みを作る。

校長らには議会の傍聴を義務づけ、学校に予算要求をさせる。
高齢者が役場に足を運ばなくても、学校で公的手続きができる形を作る。
住民が助けてほしい作業や学校が手伝ってほしい仕事の掲示板を学校に設け、
その仕事や作業の対価として地域通貨を使う。
地域通貨は、学校施設の利用時にも使ってもらう。
住民が学校に集まる仕組み作りだ。

わずか2年の間で教職員が主体的に動き始めた。
例えば、学校給食を、お年寄りのデイサービスでも使えるようにできないか
といった検討が、教職員の発案で始まっている。

教頭たちが、教育長の前で教育について夢を語る。
教職員の心に火をともすことが、過疎の町再興につながる道かもしれない。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090114-OYT8T00295.htm

ブリヂストンスポーツ河野久社長 「消耗品のボールで米ゴルフ市場攻略」

(日経 1月6日)

ブリヂストンスポーツが、米国市場の開拓に力を入れている。
日本では、米国発の金融危機の影響でゴルフ人口の減少が懸念されるが、
河野久社長によると、「米国のゴルフ市場は、日本ほど影響を受けていない」。
消耗品のボールを中心に生産体制を強化し、シェア拡大を目指す。
米国市場攻略の狙いなどを聞いた。

—米国向けでは、特にゴルフボールを増産している。

「2008年末、日本を含む全世界のゴルフボールの供給量を10%程度増やした。
その8割程度は米国向け。
米国市場の開拓には、4年前から開拓に取り組んできた。
試し打ちを通じ、自分に合ったボールを探してもらう『フィッティング』など
地道な営業の効果で、米国のゴルファーに日本のボールの品質の高さが
やっと認知されつつある。
米国部門の収支も、08年12月期には黒字化する見通しで攻勢を強める」

—米国のゴルフ市場には金融危機は影響していないのか。

「高額なゴルフクラブなどは、販売が伸び悩んでいるようだ。
市場全体で見ると、日本よりも影響は少ない。
米国では、ゴルフが文化として根付いており、5000円程度でプレーできる。
費用のかかる旅行をやめて、安いゴルフを楽しもうといった動きも出てくる。
クラブを買い控えているゴルファーでも、消耗品のボールなら買ってくれる」

—ゴルフの本場である米国メーカーの牙城をどう崩すのか。

「クラブの失速や経済環境の悪化で、現地メーカーは投資に
慎重になっているのではないか。
攻略するなら今しかない。
米国での弊社のゴルフボールのシェアは7-8%だが、
供給量を増やして『タイトリスト』、『キャロウェイ』といった
米国のトップブランドを追い上げたい」

—円高・ドル安の影響は。

「米国、マレーシア、中国にそれぞれボールの工場がある。
一部、日本の工場で生産し米国に輸出している製品もあるが、
ゴムなどの原材料は海外で調達している場合が多く、
円高は大きなマイナス要因にはならない」
「日本国内には、若い世代のゴルファーが非常に少なく、
市場が今後大きく伸びる可能性は少ない。
多少のリスクをとっても、米国を含めた海外に出て行くしかない

—米国以外の海外市場での展開は。

「中国や東南アジアのゴルフ人口はまだ数十万人で、日本の10分の1以下。
それでも普及期に入った時にすぐ対応できる体制を整えておくことが必要。
日本のボールの品質は、世界のメーカーと比べてもトップレベル。
きちんとアピールできれば、海外でのシェアを伸ばせるはず。
親会社のブリヂストンの技術力を生かし、
ボールの研究開発にもさらに力を入れていきたい」

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/interview/int090105.html

がん抑制遺伝子の働き阻害 九大、タンパク質を発見

(共同通信社 2009年1月19日)

がんの増殖を抑える「p53」という遺伝子の働きを、
主として胎児期の細胞に多く存在する「CHD8」というタンパク質が
阻害することを、九州大生体防御医学研究所の中山敬一教授らの
グループが発見し、英科学誌ネイチャー・セル・バイオロジー電子版で発表。

p53は、がんなど細胞の急激な増殖に反応して「自殺」(アポトーシス)に
追い込む代表的な「がん抑制遺伝子」。
その働きが阻害されることで、がん細胞の増殖に歯止めが利かなくなる。
中山教授らは、「がん発症のメカニズム解明につなげたい」

中山教授らは、胎児期には正常な細胞もがんと同じように
急激に増殖することに着目。
マウスで調べた結果、CHD8と結び付いたp53はアポトーシスを
引き起こさなくなることが分かった。

CHD8は、胎児期の活発な細胞増殖がアポトーシスで
妨げられないようにしていると考えられる。
CHD8は、胎児期の後期には減り、アポトーシスも起きるようになるが、
何らかの原因で再びCHD8が多くなると、がんになるリスクが高まることに。

中山教授のグループは今後、CHD8が増減する仕組みを研究する方針。
中山教授は、「CHD8とp53との結合を防ぐ薬剤ができれば、
新たな抗がん剤になる」

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=86519

2009年1月22日木曜日

河田阪大教授が“私塾”開講 「理工系博士を社会へ」 NPOも申請

(日経 2009-01-19)

理工系の博士取得者を政治家や起業家として送り出そう—
最先端の科学を学んだ人材が、研究以外の分野でも社会で活躍できるよう、
大阪大学の河田聡教授が“私塾”を開講。

ベンチャー企業の社長や作家になった理系出身者らを講師に招き、
博士課程在籍者に様々な進路を紹介。
国際社会で活躍できる人材の育成を目指す。

河田教授は光学が専門で、阪大工学部の改革にも。
主宰する「科学者維新塾」は、幕末の蘭学者、緒方洪庵が大阪で創設し、
明治維新期に社会で活躍した多くの人材を輩出した「適塾」にならった。

博士号をもつ理工系人材が、政府や企業経営の重要ポストに就いて、
国や企業を率いている例は、海外ではよくみられるが、日本では少数。
大学や大企業で研究職に就くだけでなく、議員や小説家、経営者などに就いた
体験談を聞き、若手科学者のキャリア形成に生かしてもらう。

「メルトダウン」などの著書がある作家の高嶋哲夫氏や
阪大発ベンチャー、ナノフォトンの謝林社長らを講師に毎月1回、
大阪市内で塾を開く。
運営のための非営利法人の設立も内閣府に申請。東京の開催も計画。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/_techno/_te090116.html

関西独立リーグ運営会社の中村明社長 「首都圏リーグも設置したい」

(日経 1月12日)

4月に開幕する「関西独立リーグ」は、第3の独立プロ野球リーグだ。
先行した四国・九州、上信越・北陸では営業面での苦戦が続くが、
プロスポーツとしての勝算を、運営会社であるステラ(大阪市)の
中村明社長に聞いた。

—人気の吉田えり選手とキャッチボールできる福袋などが話題だ。

「一選手がアイドルのように取り上げられるのは、
正直好ましいとは思わないが、リーグが注目されるのはありがたい。
彼女の実力は、じきに試合で明らかになるが、ナックルボールの威力は本物。
一過性のブームにとどまらず、チームの戦力として育つはずだ」

「ネットでの優勝チーム予想投票でも、吉田選手が所属する
神戸9クルーズがトップ。
実力派の選手の加入などで戦力が充実しているのを、ファンは熟知。
人気や話題性だけで評価してもらえるほど、関西の野球好きは甘くない

—同じ地盤の阪神タイガースのファン層には太刀打ちできない。

「私もタイガースファンだが、独立リーグは選手とファンが一体となり、
野球を楽しむ新しい試みだ。
『タイガースも好きだが、地元の独立リーグも応援する』、
そんな熱意が後押ししてくれる」

「4球団のうち明石レッドソルジャーズは当初、兵庫県の播磨地域を地盤とする
広域型の運営を想定していたが、首長が全面協力を申し出てくれたので、
明石のチームになった。
多くの明石市民に応援してもらえば、経営は成立する」

—先行する2つの独立リーグは、経営的に成功しているとはいえない。

「ファンの基礎票となる人口の多寡や、スポンサーになる有力企業の有無など、
都市部である関西地区との条件の違いが大きい。
先行地域で苦戦したら、独立リーグに将来性がないと判断するのは早計」

「関西リーグ始動前には、精密な経営シュミレーションを何度も繰り返した。
巨額の利益は出なくても、スポンサーを確保できれば十分に継続できる。
独立リーグ誕生に貢献した石毛宏典氏のアドバイスも受けて、やろうと決めた」

—4チーム以外への拡大構想も具体化している。

「三重県では、新チームが誕生。来シーズンから参加する予定。
京都府や滋賀県でも、チームの結成が具体化しているし、
人口の多い大阪府にはもう1つチームがあっても良い。
今シーズンの144試合で、どれだけ観客を引き付けられるかが、
リーグ拡大のカギを握る

首都圏リーグの設置も前向きに検討したい。
人口が集中する巨大市場だが、全国区の球団が多く、
地域密着の独立リーグがビジネスとして成立する余地は十分ある。
試算では、関西よりも可能性が高いという結果も。
関西で足元を固めながら、首都圏でのマーケティングにも力を入れたい」

—野球への思い入れはこれからも続くのか。

「私自身は、選手として野球に取り組んだキャリアは長くない。
野球に夢を抱く若者に、セ・リーグやパ・リーグにランクアップする
チャンスを提供し、健全育成に寄与する独立リーグの理念を実現
することに意味があると考えている」

「ステラの本業である情報関連事業とプロ野球球団の運営、
2つの仕事のバランスをとりながら、充実した1年を過ごすことができそう」

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/interview/int090108.html

【展望09 岩手】

(読売 2009年1月19日)

雪が時に激しく降るなか、九戸村の公民館には、
開会の30分前から次々と住民が集まってきた。
県立病院の新しい経営計画案の説明会。
村唯一の医師がいる地域診療センターでは、
19床を全廃する無床化が計画。

「11月の発表で、4月に実施するというのは唐突で拙速だ。
私たちにも考える時間がほしい」、
「医師が少ない地域にこそ県立の役割がある。切り捨てではないか」。
2時間余りにわたった会では、10人が質問に立ち、拍手がわいた。

県医療局長らと並び、九戸センター長も兼ねる佐藤元昭・二戸病院長(59)が
説明する声を一段張り上げた。
「皆さん、医師不足を実感されないのが残念だ。
ベッドがあれば医師は来ません。無床化すれば来る」。
医師招請に駆け回る佐藤院長の言葉に、会場は一瞬、静まりかえった。

常勤医が1人しかいない九戸は、二戸からの外来診療応援と、
二戸と盛岡市の中央、医大の計3病院による派遣当直で診療を支えている。

医療局創業の精神は、「県下にあまねく良質な医療の均霑(てん)を」。
聞き慣れない言葉に広辞苑をひくと、
「生物が等しく雨露の恵みに潤うように、各人が平等に利益を得ること」
無医村に医療を、と始まり重ねてきた、岩手に暮らす苦闘は今も続く。

「通院のお客様、お体の具合が悪いお客様は気軽にお声をかけてください」
朝の車内に優しい声が響いた。
盛岡駅着午前9時のIGRいわて銀河鉄道の上り電車には、
県内に入った金田一温泉駅から世話役のアテンダントが乗る。
昨年11月5日から平日に始めた「地域医療ライン」サービス。

二戸市、一戸町から盛岡市内へ通院する人を対象に、
あんしん通院切符の発売、ワンマン電車内で接客にあたるアテンダント、
最寄り駅の無料駐車場と盛岡でのタクシー手配を組み合わせて、
「自宅から病院まで」を主に公共交通で結ぶ。
全国の鉄道でも先進的な取り組みだ。

「地域の医療機関だけでは対応しきれない患者さんがいるが、
高齢や病後ではマイカー運転もままならない。
通院は、本人や家族の大きな負担だ。
一方、公共交通は地域に欠かせないとの認識が広まってほしい」と、
企画、準備をした同社の米倉崇史さん(26)。
開始2か月で339枚の切符が売れた。
1日平均10人、多い日は20人近い利用があり、徐々に広まって、
沿線のほか軽米町や青森県内からの人もいる。

アテンダントは、3人が交代の有償ボランティア。
田中敦子さん(47)は、駅ごとに通院客がいないか、
ひざ掛けを持って車内を回り、話しかけた。
水のペットボトルやカイロなどを携えて乗務し、車内からタクシー会社へ
利用人数を携帯メールで送信する。
指定3病院なら、利用客の自己負担は200円。

小鳥谷駅から乗った地蔵堂民之助さん(76)は、
「妻も利用する。安心して通える」と話し、到着ホームで待っていた
タクシー運転手に導かれ、医大へ向かう車に乗った。

広い県内で、医療の厳しくて多様な現実、
雇用をはじめとする経済の動向、自治の動き--。
総選挙の年に、暮らしに身近な地域の課題、朗らかな話題と元気を支局、
通信部の記者とともに伝え、皆さんと考えたい。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=86462

オムロンがスマイルチェック装置、接客研修用などで売り込み

(日経 1月18日)

オムロンは、人の笑顔の度合いを数値にして表示する装置
「スマイルスキャン」を開発。

独自のセンサー技術によって、目や口の形状を分析し、
笑顔の度合いを0―100%で表示。
接客の研修用などとしてサービス業や医療機関へ売り込む。
第1弾は病院に納入する。

小型カメラに映った画像から人の顔を選び出し、
目や口の開き具合、目尻や口角の形状などをもとに「笑顔度」を測定。
笑顔になるほど数値が高まり、画面上に人の顔とともに笑顔度を表示。
同時に2人まで測定できる。

http://www.nikkei.co.jp/news/main/20090118AT1D1700217012009.html

2009年1月21日水曜日

2009年、ハイテク分野を占う

(日経 2009-01-09)

ハイテク分野の2009年を占ってみると、生命科学・バイオ分野では、
ゲノム(全遺伝情報)にとどまらない、複雑で多様な生命現象全体を研究する
「オミックス」の時代を本格的に迎えそう。
宇宙分野は今後の基本計画がまとまるが、厳しい経済情勢が逆風に。

巨大科学だったゲノム解読は、今や珍しくなくなってきた。
米国、英国、中国によるプロジェクト「1000人ゲノム計画」の解読データが
公開されようとしている。
1000人分のゲノムを解読、個人差を詳しく調べて病気の研究に役立てる。
解読期間は実質わずか2年ほど。

ヒトのゲノムは、DNAを構成する塩基分子の配列が1セット30億個(塩基対)。
1990年に始まった国際ヒトゲノム計画は、これを13年かけて解読。
解読装置(シーケンサー)の技術革新は著しく、昨年1月に始まった
1000人ゲノムの当初計画では、1日に平均82億塩基対、
1000人分の6兆塩基対(1人2セット)を2年という速さ。
粗い生データの公開が近く始まるうえ、人数も1200人に増える見通し。

ゲノム解読は、データの大量生産時代に入った。
米パシフィック・バイオサイエンシズ社は、30億塩基対をたった2分で解読する
シーケンサーを、2010年に製品化すると発表、大量生産は加速する。

生命現象はゲノムにとどまらず、たんぱく質や代謝物質など
様々な分子レベルの要素の複雑な絡み合いまで理解することが重要。
ゲノムだけでも、データは膨大でまだまだ奥が深いが、
他の要素のデータ蓄積も急速に進んでいる。

こうした研究全体を、オミックスと呼ぶ。
ゲノムの研究をゲノミクス(Genomics)、生体のたんぱく質全体の研究を
プロテオミクス(Proteomics)、共通する末尾の「omics」を取った名称。

日本でも、ヒトのゲノムやたんぱく質などのデータベースを統合する
「ヒトゲノムネットワークプラットフォーム」を、国立遺伝学研究所で構築。
同研究所副所長の五條堀孝教授は、オミックス時代に向けて
「分子レベルの情報を網羅的に取っていくだけでなく、
データベース同士をつなぐ技術、解析する技術が重要で、
バイオインフォマティクス(生命情報工学)の人材育成も必要

欧米に加え、中国が急速に力を入れており、
データ記憶設備の計画だけ見ても中国は日本の20倍以上。
研究を医療につなげる国際競争で日本が打ち勝つには、一層の強化が必要。

宇宙分野では、昨年の宇宙基本法施行を受けて
今年5月に宇宙基本計画がまとまる。
すでに方向性は出ており、観測などの衛星、ロケット、有人宇宙活動、
科学探査機、防衛利用や宇宙産業振興など手広いラインアップになりそう。

日本は、宇宙航空研究開発機構の予算が米航空宇宙局(NASA)の10分の1、
欧州宇宙機関(ESA)の半分など規模が小さい。
実用衛星を国際入札とする1990年の日米合意で、
国内衛星メーカーは大打撃を受け、
ロケット打ち上げ期間が限られるなど国際競争でも不利。

抜本的な選択と集中をすればいいというわけではないが、
幅広く手掛けるなら、どれも中途半端で非効率にならないか懸念。

09年度の宇宙関係予算(政府案)は3488億円で、10.4%増、
額で約328億円の増加。
この半分に相当する額が防衛関連で伸び、そのほとんどは防衛省の
弾道ミサイル防衛(BMD)関連の大幅増による。
基本計画の推進には、10年度以降の予算増が焦点になるが、
厳しい経済情勢の中、宇宙以外に優先すべき課題があるという声も。
予算を増やすうえでは、一時しのぎではなく将来の発展につながる内容が期待。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/techno/tec090108.html

オバマ新政権と「水男爵」

(日経 2009-01-19)

世界中で、「グリーン・ニューディール」ばやりだ。
新エネルギーの導入拡大で、地球温暖化対策と景気浮揚の両方を目指す政策。
提唱者は、米国の第44代大統領に就任するバラク・オバマ氏。
選挙戦でその構想が脚光を浴び、
当選と同時に欧州や日本、新興国に一気に広がった。

だが、具体的な中身はまだ判然としない。
「太陽光や風力など再生可能エネルギーに、
今後10年間で1500億ドルを投資する」と言及。
発電設備や装置はどこでどう開発・生産するのか、
どの企業を主体に投資するかについては沈黙したまま。

新エネルギー産業に雇用吸収力があるのかは、米国でも議論がある。
太陽光や風力は、数千人、数万人単位の雇用を生むことはできる。
だが、それだけでは「ビッグスリー(米自動車3社)のリストラなどで増える
失業者を吸収しきれない」

就任後のオバマ氏に注目するとしたら、次の2つの分野の扱い。
1つは、原子力をグリーン・ニューディールに含めるかどうか。
厳重な安全管理が求められる原発産業は設計から建設、メンテナンスまで
他の新エネルギーとはけた違いの雇用を生み出す可能性がある。

原発の将来について、オバマ氏は考えをほとんど示したことがない。
大統領選では、「(再開には)安全面で注視する必要がある」と慎重。
就任後、オバマ氏はこれを修正するのか。
日本のある重電メーカーは「楽観視している」と話すが、
反対派のロビー活動も活発で、先行きは見えにくい。

2つ目は、安全面で「当確」が間違いない。水道事業である。
電力ではないが、オバマ氏は米メリーランド州で最近起きた水道事故を憂慮し、
「水資源のインフラ整備が急務」と。
老朽化した上下水道設備は全米各地に存在し、
これを最新鋭の設備に更新・増設したら、
少なくとも数十万人単位の雇用機会が生まれる。

この商機を海外勢、特に欧州の企業が狙っている。
欧州は、水道分野の民営化で先行し、上下水道の管理運営公社だった
フランスのヴェオリアやスエズ、英独系のテムズ・ウォーターなどが急成長。
オイルマネーで、水道インフラ整備を積極的に進める中東などでは
「水メジャー」、「ウォーター・バロン」(水男爵)などと呼ばれ、
存在感が急速に強まっている。

だが、水道事業には政治が介入する可能性がある。
オバマ新政権は、ニューディールを通じ、ウォーター・バロンを
米国でも育成したいと考えている。
公共投資の恩恵を最も受けるのは、米エンジニアリング大手のベクテル

資源エネルギーで積極的なトップセールスを展開するフランスの
サルコジ大統領などは、ベクテルの受注独占に異を唱え、
フランス企業への門戸開放を求めている。

イラクではこんなことがあった。
ブッシュ政権は、復興のための10大事業の1つに上下水道の修復、
メンテナンスを位置づけ、内外の企業に参加を呼びかけた。
最終的に主契約企業に選んだのは、ベクテル。
イラク戦争に反対したフランスのヴェオリアとスエズは、
入札から締め出された格好。

フランスやドイツとの関係改善を目指すオバマ氏が、そこまでする可能性は低い。
グリーン・ニューディールの大きな目的は、国内企業の育成。
外国企業への門戸開放とどう両立させるのか、
オバマ政権はここでも難題を抱えることに。

日本企業は、米国の一大商機に食い込めるのか。
環境は、日本のお家芸といわれ、
海水から塩分や有害物質を取り除く事業などで世界の評価は高い。
圧倒的に規模が大きい上下水道の管理・運営事業では、
「バロン」が育っておらず、蚊帳の外に置かれる可能性。

原発では、東芝が米ウエスチングハウスを買収し、世界的に存在感を高めた。
水の領域でも、日本は巻き返すべきではないか。
民営化の遅れが根幹にあるなら、それも真剣に検討すべき。
20世紀は石油の世紀だったが、21世紀は水の世紀になる。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/tanso/tan090115.html

慶応大・医学教育統轄センター長 天野隆弘氏に聞く

(Japan Medicine 2008年12月22日)

問題解決型学習を重視して慶応大医学部の教育体制を変革してきた
医学教育統轄センター長の天野隆弘氏に、
ICT(Information and Communication Technology)を活用した
教育環境の次なるステップと、将来展望について聞いた。

天野氏は、教える立場にある全国の医師が、最良の授業を行えるように、
最新の知識を共有して自由に活用できる全国規模の教材データベースを
構築するのが「将来の願い」

―ICTを活用した教育環境整備は一段落ついたが、次のステップは?

天野氏 足りないものは必ずあり、教材を充実させたい。
アップルの携帯プレーヤーiPodも、初期研修医に貸し出したい。
現代GPは文部科学省予算で、あくまで学生向けだが、
医学部で購入して研修医全員に配ることも。

整形外科では10台使用、週間予定と教材をリンクさせ、
事前に学習しておくといった活用も。
内科などほかの診療科にも当てはまる。
診療科ごとに教材をクラスターのような形で利用できるようにし、
研修医が回ってきたら貸し出す、そういう体制に持っていければ。

―将来的な発展形として、考えられていることは?

天野氏 教材のデータベースを構築したい。
当学のイントラネットには教員専用のページがあり、
「講演用に作成した資料をストックしませんか」と呼びかけ。
資料は医学部の資産。
お互いがシェアして、必要な資料はすぐに入手できるようにしたい。

大学の教員が異動すると、これまではほとんどの場合、資料もなくなっていた。
引き継ぐ医師が授業の準備をするため、いちから資料を集めることになり、
合理的とはいえない。
講演資料は、マイクロソフト「PowerPoint」などで作成、それを蓄積し、
教材データベースとして運用する仕組みにすれば、
任意な部分をピックアップして教材を自由に作成することができる。

教材データベースを構築した後、法人を設立し、
全国の大学病院などを統合した総合教材データベースにつなげるのが願い。
会員制にするなどして、入会者は自由にデータベースを使えるようにする。

実現するためには、1カ所だけでは限界。
出版社なども加わればいい。
全国の指導する立場にある医師が、自由に教材を使い、
一番良い授業をできる環境が整えばいい。
悪いところは改善し、学生を教えるための画像や図などを皆で作成していくと、
教材の完成度も高まる。
皆がシェアできる教材データベースが、全国に広がればと考えている。

http://www.m3.com/tools/MedicalLibrary/jiho/200812/trend2.html

地方債大幅増、財務を圧迫 県07年度バランスシート

(岩手日報 1月15日)

県は、2007年度のバランスシートをまとめた。
普通会計は、07年度に解散した県林業公社の債務継承によって
地方債総額が264億円増加。

資産から負債を差し引いた正味資産は1兆2242億円で、
06年度と比べ884億円減少、財務状況が悪化。
資産は、2兆8291億円。

財政難で投資的経費を抑制したことや、借金返済のため県債管理基金を
約60億円取り崩した影響で、06年度比649億円減少。

負債は、1兆6050億円。
職員の削減で、退職給与引当金は1291億円と06年度より約27億円減少、
林業公社の債務継承によって地方債総額が大幅に増加したため、
総額では06年度比235億円増加。

普通会計に病院や電気事業などの公営企業会計、
県立大や県工業技術センターの地方独立行政法人、
県出資の34法人を加えた連結バランスシートは、
資産が3兆1257億円(06年度比968億円減)、
負債が1兆7900億円(同215億円減)で、
正味資産は1兆3356億円(同754億円減)。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20090115_9

2009年1月20日火曜日

記憶CD8 T細胞区画のサイズは免疫学的経験とともに増大する

(nature 2009年1月8日)

Nature Vol.457 No7226 / P.200-204

記憶CD8 T細胞区画のサイズは免疫学的経験とともに増大する

記憶CD8 T細胞は、病原体への自然暴露あるいはワクチン接種により生じ、
特定のウイルス感染に対して宿主を防御する。
宿主の記憶CD8 T細胞の数は決まっており、個々の細胞は
限られたスペースを常に奪い合っている、と長い間考えられてきた。

したがって、目的の抗原に特異的な記憶CD8 T細胞を
過剰に誘導するワクチンは、過去のすべての感染に特異的な
記憶CD8 T細胞を排除して置き換わるため、
宿主にとって壊滅的な結果を引き起こしかねない、と考えられていた。

この考え方を検討するために、我々は、単一のワクチン抗原に
特異性を示す新たな長期生存記憶CD8 T細胞を、
接種前の宿主の記憶CD8 T細胞数と同程度の数だけ導入する
ワクチン接種法をマウスで開発した。

本論文では、予想に反して記憶CD8 T細胞区画のサイズが倍増し、
これらの新しい細胞を受け入れるためのスペースができたことを示す。
この変化は、エフェクター記憶CD8 T細胞が
加わったことだけによるものであった。

この増加は、CD4 T細胞やB細胞、ナイーブCD8 T細胞の数には影響せず、
以前遭遇した感染に特異的な既存の記憶CD8 T細胞は
大部分が保存された。

したがって、哺乳類宿主におけるエフェクター記憶CD8 T細胞の数は
免疫学的経験に従って変化する。
新しい記憶CD8 T細胞を大量に誘導するワクチンの開発は、
ほかの感染に対する既存の免疫を
必ずしも減弱させるものではないと考えられる。

[原文]
Memory CD8 T-cell compartment grows in size with immunological experience

Vaiva Vezys 1,2,4 , Andrew Yates 3,4 , Kerry A. Casey 1 , Gibson Lanier 2 , Rafi Ahmed 2 , Rustom Antia 3 & David Masopust 1,2 1.Department of Microbiology and Center for Immunology, University of Minnesota, Minneapolis, Minnesota 55455, USA 2.Emory Vaccine Center, Emory University School of Medicine, and,3.Department of Biology, Emory University, Atlanta, Georgia 30322, USA4.

http://www.m3.com/tools/MedicalLibrary/nature/200901/nature/7226/02.html?Mg=4b8368a37fc15ffa26a1e4b3ebcfe5cc&Eml=12b55b931cb52b4152963c77864c5aec&F=h&portalId=mailmag

座禅でリセット 「月曜が憂うつ」と言う前に

(日経 12月2日)

激務などで心の病にかかる人が増えている。
あまりの忙しさに、「週末に休んだ気がしない」、「月曜日が憂うつだ」
手軽なリフレッシュ方法として、「座禅」に注目。

東京都文京区にある禅寺、是照院では、
毎週土曜日の夕方に座禅会が開かれる。
約20人の参加者の年代は20—50代と幅広い。
自営業の40代の女性は、「座禅で1週間の疲れをリセットできる」
官庁に勤務する30代男性は、「仕事とは無関係の静かな環境に身を置いて、
心身を落ち着かせる時間が必要と考えた」

是照院が座禅会を始めたのは3年前。
住職(45)は、「寺院でも、住職の世代交代が進んでいる。
お寺を一般の人にも開放して社会に貢献しようとする意識が高まり、
座禅会を開く寺が増えている」

住職によると、景況感が急速に悪化していることもあり、
「心の軸足を、どこに置いたらよいのかわからない」との不安を持つ
ビジネスパーソンの姿が目立つ。
座禅は、何らかの目的を持って行うものではないが、
「心を安定させる効用はある」と住職は強調する。

毎週金曜日夕方に座禅会を開いている成願寺(東京・中野区)の僧侶、
伊原玄遊さん(37)は、「座禅は苦行ではない。
体を楽にして、心を落ち着かせることが1番大切」
近くに禅寺はなくても、自宅で座禅を組むことはできる。

仏教の宗派で座禅が修行に組み込まれているのは、臨済宗や黄檗宗など。
宗派によって座る向きは違うが、座り方に大きな差異はない。
お寺では座禅専用の「座蒲(ふ)」を使うが、座布団でも構わない。
座布団を一枚敷き、その上に別の座布団を半分に折り畳んで置く。
一定の高さに、腰を浮かせるためのクッションの役割。
背骨の先が座布団の中央に位置するように座り、背筋を伸ばす。

顔は左右に傾けず、正面を向くように。
耳から下に降りていく線が肩と垂直に交わるように意識し、
地面から上に垂直に伸びていく線の上に、鼻とへそを乗せる感覚を保つのが
姿勢を正しくするコツ。
上半身を左右に揺らし、徐々に揺れを小さくして最後に真っすぐに落ち着かせる。

足の組み方は2通り。
1つは右足を左足の付け根の上に乗せ、左足を右足の付け根の上に乗せる方法。
もう1つは右足を左足の付け根の下に入れて、
左足だけを右足の付け根の上に乗せるやり方。
初心者には、2番目の片足だけを乗せる組み方がお薦め。

両手はへその前に据えて、右の手のひらを上向きに。
その上に、左の手のひらを上向きにして置く。
両手の親指の先を軽く合わせる。
目は自然に開き、視点を約1メートル前方に置く。
目を閉じると瞑想になるので、目は開ける。

最後に呼吸法だ。
へそに力を入れて「吸う、吸う、吐く」のサイクルを、腹式呼吸で繰り返す。
テンポは「長めにゆっくり」を心掛ける。
1回の座禅の時間は約35分。線香が1本燃え尽きる時間。
通常の座禅会ではこれを3度繰り返す。

成願寺の僧侶、伊原さんによると、「朝の出勤前に座禅を組む人も増えている」。
昼休みにいすに座り、腹式呼吸で心を落ち着かせるだけでも
リフレッシュ効果がある。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/bizskill/biz081202.html

プレゼンの成功、台本づくりがカギ

(日経 1月14日)

企画の提案や製品説明など、ビジネスの様々な場面で求められる
プレゼンテーションのスキル
達人の2人にコツを尋ねると、
「目的と話の組み立て方の準備に、時間を費やすべきだ」
どのようなやり方で準備に取り組んでいるのだろうか?

◆要点は3つまで

「聞き手を説得するのではなく、聞き手の役に立つ気持ちで」。
プレゼンテーション専門コンサルタントで、愛媛大学客員准教授の田中省三さんは、
プレゼンの心構えをこう話す。
プレゼンの最大のポイントは内容と構成、つまり台本づくり。
これは、準備段階でほぼ決まる。

台本づくりのコツは、まず目的を明確にすること。
だれに何を伝えるのかをはっきりさせて、必ず話の最初に持ってくる。
「本日、私がお伝えしたいのは○○です」と冒頭に言う。

田中さんは、いくつか自己流のコツを考案。
まずは「ミラクル構造」と呼ぶもの。
冒頭に目的を言った後、そのテーマについて「今までの流れ」、「現状の分析」、
「現状への提案」、「今後の展望」の4つに分けて話を進めていく。
現状への提案と今後の展望の2つに、全体の時間の7— 8割を充てる。

「現状への提案」で採用するのが、「SDS法」と呼ばれるやり方。
サマリー(概要)、ディテール(詳細)、サマリー(まとめ)の頭文字を取った。
提案内容のポイントを最初に話し、次にポイントの詳細を説明、
最後にポイントを繰り返す。
ポイントは、最大3つまでが理想。

ディテールの説明で使えるのが、「PREP(プレップ)法」と呼ぶやり方。
ポイント、リーズン(理由)、イグザンプル(具体例)、ポイントという流れ。
ポイントと理由の2つで構成する簡略版もある。

これらの手法に沿って事前に話を組み立てて、資料をつくっておけば、
一定水準以上のプレゼンができるようになる。

マイクロソフト日本法人の飯島圭一さんも、
目的と話の組み立て方を準備することがコツと指摘。
飯島さんは、プレゼン資料作成ソフト「パワーポイント」などのオフィス製品の
マーケティング担当で、プレゼンのコツについて講演をすることも。

プレゼンを、「製品説明でなく、相手に行動を起こすために説得すること」と定義。
飯島さんも、だれに何をしてほしいかという目的を冒頭に明確に話す。
営業のプレゼンであれば、「この製品をよろしくお願いします」ではなく、
「1週間以内に購入契約をしていただきたい」などと、
こちらが相手に期待していることをできるだけ具体的に話す。

飯島さんは、目的や説明する話を準備する際に、「KISS」を心がけている。
KISSとは、「Keep It Simple and Specific(単純かつ明確に)」
実際には、(1)なぜこの提案が必要なのか、(2)対価はどの程度なのか、
(3)相手の利益は何なのか、(4)相手に何をしてほしいのか——を
不可欠な要素として取り込む。

話は、できるだけ論理的に組み立てる。
そのためには複数の要素から結論を導く「帰納法」か、
ある結論から複数の要素を見いだす「演えき法」の2つがある。

飯島さんは帰納法を採用。
思いつくままに材料を紙に書き出し、それらをテーマごとに分類する。
一度印刷し、順番にうまくつなげるために話の順番を入れ替える。
どこにどのような図やデータが必要かも考える。

飯島さんは、論理的に話を組み立てるうえでの参考として、
落語の「風が吹けばおけ屋がもうかる」を挙げる。
「風が吹く」、「砂ぼこりが上がる」、「目の不自由な人が増える」といったように
順々に話が展開する「論理っぽさ」もプレゼンには欠かせない。

飯島さんは、「見た目をきれいにするために、資料づくりに時間をかけ過ぎるのが
日本人のプレゼンの現状」と指摘。
目的と話の組み立て方に、準備の時間の8割を割くようにしている。

◆話の構成以外のポイントは?「緊張は当然」の心で

目的と話の組み立て方を重視する2人の達人。
実際のプレゼンの現場は、それ以外の様々な要素もかかわってくる。
緊張感とどう向き合うか?

田中さんは、「緊張するのは当たり前。緊張することも失敗することも
素直に受け入れよう」と助言。
「聞き手に役立つプレゼント(贈り物)をすることだけを考えるようにすれば、
不安を感じる暇がなくなる」。

聞き手を笑わせたりするユーモアは必要なのだろうか?
「相手に伝えることが大事。それ以外の技術を身につけるのは余裕がある上級者」

プレゼンの場所は、取引先など大抵が「アウェーでの戦い」。
飯島さんは相手の人数や役職、プレゼンに使える時間、使える道具など
情報収集にも念を入れる。
プロジェクターを使うなど、自分の得意な表現スタイルに持ち込むのも肝心。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/bizskill/biz090114.html

参謀が明かすオバマのネット戦略

(日経 2008-12-25)

オバマ次期大統領の勝因に、「インターネットの有効活用」が挙げられる。
当初、政治経験の長いヒラリー・クリントン上院議員やマケイン上院議員より
知名度や献金収集力で劣っていたが、ネット戦略が奏功し挽回。
ネットを多用したことが、「政治に無関心」とみられてきた若者層を掘り起こす
という副産物も生んだ。

オバマ陣営で、ネット戦略の中心的役割を担った
ネット広告会社ブルー・ステート・デジタル社のトーマス・ゲンセマー氏に聞いた。

—オバマ氏の選挙戦で特徴的だったことは。

インターネットを活用したことで、効率的に人と人を結びつけ、
支持者を加速度的に増やすことに成功。
候補者の主張を伝えるウェブサイト、支持を喚起する電子メール、
支持者と支持者を『友達』としてつなげて、次に近所で行われる集会への参加を
呼び掛けるソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)などのツールを併用」

ネット活用で、選挙の経済学が変わった。
オバマ陣営がネットを通じて集めた献金額は、5億ドル(約450億円)。
650万件のネット献金のうち、600万件が100ドル以下の小口献金。
小口献金は、ダイレクトメールや集会を通じて集めていたが効率が悪く、
高額献金者だけを集めた大型パーティーに集金力でかなわなかった。
ネットの登場で、多くの人数から小口の献金を短時間で集めることが可能になり、
少ない人数から多額の献金を集める献金モデルに対抗できる」

—具体的にどのようなことをしたのか。

「一度集会に参加した人の電子メールアドレスは、必ず記録。
会場の入り口でフォームに記入、スタジアムの掲示板にアドレスを表示して
携帯からショートメールを送ることを呼び掛け、
イベントへの参加券と引き換えに電子メールの登録を求めた。
オバマ陣営には、130万件以上の電子メールアドレスが登録」

アドレスを入手すれば、オバマ陣営とその参加者の『交流』は継続。
候補者の主張や次の集会情報など、電子メールで届く。
『明日、忘れずに投票所に行ってね』というような古典的なメッセージを、
効率的に大量の支持者に伝える」

—オバマ陣営は、若者層の取り込みに成功した。

「彼らは、フェースブックやマイスペースなどのSNSを
日常的に使っている世代、選挙活動にもSNSの要素を取り入れた。
候補者の主張を載せたサイト『バラクオバマ・ドット・コム』とは別に、
支持者を『友人』としてつなげるSNS専用のサイト
『マイバラックオバマ・ドット・コム(通称・マイボー)』を設けた。
支持者が自己紹介のページを作ったり、友人と支持集会の情報交換できる。
クレジットカードで簡単に献金できるようにしたことが、小口献金者の増加に」

「SNSを使う若者層は、気に入った情報はネットですぐに共有したい世代。
それは、政治でも同じ。
候補者や演説を気に入れば、共有したがる。
SNSのような共有を促すツールを提供すれば、情報はどんどん広がっていく。
大衆の『共有したい』という意志があって、初めて可能に。
我々は、インターネットを通じて共有しやすくする技術的な屋台骨を提供。
若者が参加意識を高めたのは、オバマ氏が魅力的な候補者だったから」

—オバマ陣営のネット戦略チームについて教えてほしい。

SNSの最大手フェースブックの共同創業者クリス・ヒューズ氏
ブレーンの1人として参加。
ネット戦略を支える技術は、我々(ブルー・ステート・デジタル)が提供。
『ニューメディア(新媒体)』を担当するチームが設置、80人ほど働いていた」

—大統領就任後もオバマ氏は、国民との対話にネットを多用するか。

「もちろん。ネットを使ったコミュニケーションをフル活用する初の米大統領に。
選挙活動を通じて、オバマ氏や側近たちは、
ネットが国民にどのようにメッセージを運ぶのかをじっくり学んだ。
(従来の政治家のように)ネットを必要以上に恐れることはない。
SNSや動画共有サイト『ユーチューブ』などを使って、
国民との対話に力を入れる可能性は高い」

「ウィキノミクス」、「デジタルチルドレン」などの著作、米ネット事情に詳しい
ダン・タプスコット氏は、来年誕生するオバマ政権を
「ネット大統領時代の到来」と呼ぶ。
ラジオ演説「炉辺談話」で、国民へ直接訴えることを重視した
フランクリン・ルーズベルトが「ラジオ大統領」、
テレビ・ディベートで好印象を残したことが勝因になったといわれる
ジョン・ケネディが「テレビ大統領」とすると、
ネット時代を制して大統領の座を射止めたオバマは「ネット大統領」。

タプスコット氏も、オバマ氏は国民との対話にネットを積極利用。
ネットを通じて、草の根の支持を徹底的に開拓してきたオバマ氏が、
「『今まで支援ありがとう。今後は、ただ動向を見守っていて』
という姿勢を見せた途端、支持を失う」。
テレビやラジオのような一方的なメッセージ発信ではなく、
今まで通り支持者との対話はネットを通じた双方向なもの。
「政策を決める前に3日間、ネット上で国民からの意見を自由に受け付ける
『オンライン・タウンミーティング』などを行うのではないか」

ネット時代は、「隠しだて」や「前言撤回」のできない時代。
テレビは一度見逃したら、再度確認する機会はほとんどなかったが、
今では動画共有サイトを使って何回でも視聴できる。
政治家が失言をして、「そんなことは言っていない」と後から否定しても、
現代の選挙民には確認する方法がある。
「事実は、事実と認めることが大切。ばれることを隠すのは逆効果。
間違えを犯した場合は、素直になぜそういうことになったのかを伝える努力が、
逆に好感を呼ぶこともある」(タプスコット氏)。

オバマ大統領誕生まであと1カ月を切った。
「変革」を旗印に、景気対策に取り組む同氏のネットとの付き合い方にも注目。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/ittrend/itt081224.html

2009年1月19日月曜日

「フィンランド・カルタ」の思考法

(日経 10月3日)

「フィンランド・カルタ」と呼ばれる手法を、企業の新入社員研修などで紹介する、
ティーズスキル教育技術研究所の諸葛正弥代表(34)。

コミュニケーション力の前提となるのは、自分の考えを整理すると
同時に、できるだけ視野を広げて相手の立場を理解すること。

諸葛氏は、フィンランドの小学校の授業などで用いられている「カルタ」作りを提案。

頭の中で思ったことは、それだけではあやふやなまま終わってしまう。
カルタはキーワードから、関連する言葉を実際に書いていくことで視覚化し、
問題点を明らかにして視野や発想を広げていく狙い。

例えば、「春」という言葉から思いつく言葉を、
数を制限せずに書き出し枝状につなげていく。
「桜」、「散歩」、「季節」を連想して書いたら、
そこから連想する言葉を順々につなげる。
季節から、「気温」、「温暖化」、「フルーツ」、
桜からは「花見」といった風に発展。

ここで重要なのは、単なる連想ゲームではなく、
「なぜその言葉がつながるのか、説得力のある理由を3つ考える習慣を持つこと」
例えば、「好きな果物」で「ミカン」を連想するのであれば、
なぜという答えを「甘くてさわやか」、「値段が比較的安い」、
「ビタミンCが豊富」など3つ考える。
何となくとか、昔から好きだったからとかではなく、
他人が納得できる理由を挙げることで、
自分の思考を相手の視点に立って説明できる。

諸葛氏は、こうしたトレーニングは「ビジネスの現場でも大変役にたつ」
例えば、ノートパソコンの新商品をある保険会社に売り込みたい場合。
新商品Aの特徴として、「ノートパソコン」、「軽量化」、「低価格」などを書き出し、
そこから発想する言葉の枝をつなげていく。
「移動なし」と「持ち運び」のように、相反する言葉が出てきた場合は
「⇔」を用いて、関係を明確にする。
商品の魅力は何か、欠点は何か、どう売りたいか、その理由などを整理する。
自分なりの売り込みの仕方を思い浮かべることができる。
顧客Aとして、保険会社側の特徴をカルタ化し、
どういう性質を持つ顧客かを確認する。
発想を広げていった結果、2つのカルタで同じような言葉が出てきたら、
そこが両者の接点であり、売り込みの上でポイントになる。
接点が見つからなければ、商品と顧客にどのような所で距離があるのか、
それを埋めるにはどうすればいいかが明確になる。

商品の魅力を訴えるだけでは、顧客の心には必ずしも通じない。
顧客の立場も理解することで、購入に結び付くような販促を考える。

カルタを作る時は大勢で相談せず、担当者がそれぞれ行うのが原則。
各人が作った後で持ち寄って会議をすると、
「人によって発想が違うことがわかり、自分が考えもしなかった
思わぬ発見があることも多い」

諸葛氏は、就職活動を行う学生がこうしたカルタを作ることも勧める。
自分自身を中心におき、自分の武器、苦手なこと、やりたいことなどを
線でつなげていく。
同時に「なぜそれが武器なのか」などを、3つずつ書き出す。

就職希望先の企業について特徴をカルタ化する。
なぜ自分がその企業に就職したいのか、
就職した場合自分はどんなことができるのか、などが整理され、
面接の時には大いに役立つ。

企業からみると今の学生は、話が通じない、何を聞いても「別に」とか
「何となく」といった言葉しか返ってこない、というイメージ。
フィンランド・カルタは、企業と学生のコミュニケーションを図る上でも有効。

慣れてくれば、頭の中で枝を伸ばして考えれば同様の効果がある。
カルタ以外にも、たとえば「納豆」をキーワードに1分間即興でスピーチしたり、
「石油」「割りばし」「お使い」といった関連性の少ない3つの言葉を使って
最も短い文を作ったりすることも、1つのキーワードから視点を広げる練習に。

フィンランドの教育方法が注目を集めているのは、
子どもの読解力に関する国際調査で高い結果が出ているため。
経済協力開発機構(OECD)が、15歳を対象に行っている
学習到達度調査(PISA)では、読解力分野で
フィンランドは2000年、03年が1位、06年も2位。
日本は8位、14位、15位と低下傾向。

自分の意見と異なるものについて理解しているかを問う問題で、
両国で大きな差がつく。
日本語は、聞き手が相手の言いたいことを察して理解する言語体系。
相手に伝える論理的思考力に乏しくなってしまう傾向」(諸葛氏)
フィンランドの公立小学校では、「カルタ」を作成して情報の関連性や知識を
視覚的に整理する授業が取り入れられている。
必ずしも手法が体系的に確立されているわけではなく、
現場教師の権限に任される部分も多い。
「フィンランドメソッド」を紹介する本は最近増えているが、
「具体的にどう分析し解釈するかは、研究者によってかなり違いがある」

◆もろくず・まさや

1974年、東京都生まれ。進学塾講師、建築設計事務所勤務などの経験を経て、
2003年にフィンランドの教育手法に興味を持ち、
05年に教育技術のコンサルティング会社を設立。
06年にティーズスキル教育技術研究所に社名を変更。
著書に、一般向けの「フィンランドメソッド実践ドリル」など。
ビジネスパーソン向けの解説書の出版も計画。

ミゾタ、「がん免疫物質」をキノコから効率抽出

(日経 1月14日)

水門・ポンプメーカーのミゾタ(佐賀市、井田建社長)は、
バイオ分野に進出した。
キノコの一種である鹿角霊芝から、がん細胞に対する免疫力を高める
働きがあるとされる多糖類を、効率良く抽出する技術を開発。

食品メーカー向けに多糖類の販売を開始。
数年後に年間3000万円の売り上げを目指す。

ミゾタは、多糖類であるβグルカンが多く含まれる鹿角霊芝に着目し、
高温高圧の水で処理する独自技術を使って、
重量の30%を水溶性βグルカンとして抽出することに成功。

従来の圧力釜を使った方法で取り出せるのは1%程度で、
抽出効率は30倍高まったことに。

http://www.nikkei.co.jp/news/tento/20090114AT1S0500D13012009.html

「子どもたちに夢を」 北島が夏季五輪招致で街頭演説

(日経 1月18日)

北京五輪の競泳男子平泳ぎで連続2冠を達成した北島康介選手(26)が、
2016年夏季五輪招致を目指す東京都がPR目的で“設立”した
「招致応援党」の党首として、街頭で応援演説した。

「まだ先と思ってるかもしれませんが、
開催地はことしの10月に決まってしまいます。ここからが勝負。
子どもたちに夢を」と熱心に語りかけた。

北島選手のほか、体操の森末慎二さん(51)、競泳の柴田亜衣さん(26)、
森田智己さん(24)ら五輪メダリストが党員として参加。
渋谷駅ハチ公前広場には約1200人、新宿駅西口には約2500人が集まった。

渋谷での呼び掛けを聴いた男性会社員(48)は、
「選手が応援するのはよいこと。(五輪を)実際に見てみたい」

演説を終えた北島選手は、「(演説は)初めてで緊張したが、思いを伝えられた」、
15日に招致委員会が70%と発表したばかりの支持率アップに期待を寄せた。

http://sports.nikkei.co.jp/index.aspx?n=SSXKA0260%2018012009

2009年1月18日日曜日

生ごみ処理機の利用PR 減量化に向けた取り組み

(東海新報 1月15日)

陸前高田市は、家庭から排出される生ごみを電動で処理する機械を
無償で貸し出しているほか、購入しようとしている市民に費用の一部を補助。

寒いこの時期、処理機を使うことによって、
生ごみを屋外のコンポストへ捨てに行かずにすむほか、
処理後は堆肥として有効活用できるなどのメリット。
「一度試用し、使い勝手が良かったらぜひ購入を」と呼び掛け。

生ごみ処理機の貸し出し期間は3カ月間。
試用する人は、「電動生ゴミ処理機モニター」として、
簡単な報告書を提出することが条件。

市では現在、処理機を10台保有。
希望者に3カ月間貸し出し、返却されたのち次の希望者に貸し出すシステム。
市役所一階ロビーに展示しながら貸し出しの利用を呼び掛け。

購入費の補助制度は、市内の小売店で購入(一般的な機械は5~7万円)
した市民に、購入費の2分の1(限度額3万円)を補助。
19年度実績で、処理機は24人に貸し出し、56台分の購入に補助。

これらの事業は、ごみの収集と運搬、処理の費用は国や県からの補助金がなく、
すべて市民の税金によってまかなわれていることが背景。
減量化に向けた取り組みの一環。

同市の19年度ごみ処理費用額は、清掃センター維持管理費540万円、
可燃物処理事業費1億5560万円、不燃物処理事業費3410万円、
廃棄物再生利用維持管理費事業費3350万円、
最終処分場維持管理費1590万円で、合計2億4480万円

同市では、平成19年から「指定ごみ袋」を導入し、
リデュース(ごみ発生の制御)、リユース(再利用)、リサイクル(再資源化)の
「3Rの推進」を図っている。

燃えるごみの量は減少傾向にあるものの、水分が多く含まれていることが課題。
市は、各家庭で生ごみ処理機を活用してもらいながら
一層の減量化を図っていきたい考え。

燃えるごみについては、平成23年度から
広域(同市、大船渡市、釜石市、大槌町、住田町)で処理することに。
施設の建設費(約96億円)は、20~23年度までのごみ処理量の割合に応じ、
この5市町で負担、市民のごみの量が減れば市の負担金も減ることから、
財政面からも分別と減量化の取り組みが必要。

同市民生部市民環境課の村上勝課長補佐は、
「処理後に出る堆肥は畑で有効利用でき、
その堆肥で育てた農産物は利用者の間で『おいしい』と評判に。
生ごみ処理機というとあまりいいイメージはないかもしれないが、
『堆肥を作る機械』と思って広く利用し、ごみの減量化に協力してほしい

http://www.tohkaishimpo.com/

長寿革命・老いの形…100歳超でも腕立て20回

(読売新聞 2009年1月13日)

写真家の小野庄一(45)が、百寿者の撮影を始めたのは、1991年。
鹿児島県屋久島で樹齢数千年の縄文杉を目にし、
最も長く太陽の光を浴びた「人間」を撮ろうと思いたった。
全国で150人以上。その出会いを経て今、小野は思う。
「21世紀の百寿者は、18年前とは別の生き物だ」

101歳の女性は乳がんを手術した。
100歳の男性はパソコンで孫とメールで会話する。
撮影のため薄化粧すると、途端に目を輝かせ、
鏡に映った自分に見入る女性……。
時間を超越した「長老」のたたずまいはない。
日常を生きる元気な高齢者が、ファインダーの先にいる。

小野が生まれた63年、全国で153人だった百寿者は、
現在、3万6000人超。
100年前に生まれた女性の51人、男性の267人に1人が
百寿者になった計算で、増加率は世界トップレベル。
2050年の推計百寿者は、なんと70万人に。

寿命の延びは、国立社会保障・人口問題研究所の予測を超え続けた。
「限界が見えない。寿命があるという前提自体に無理があったのでは」と
金子隆一人口動向研究部長。

軽部征夫・東京工科大学長(生体工学)も、
「子孫を残す、という遺伝子の使命を超えて長寿を手に入れた人間は、
極めて特異な生物」と指摘。

岩手県釜石市の下川原孝(102)は、99歳からマスターズ陸上大会に参加し、
昨年、100歳以上の砲丸投げで5メートル11の世界新記録を出した。

元体育教諭だが、練習といえば、毎日4回の腹筋と20回の腕立て伏せ、
30分余の散歩。「自分を熟知して、こまめにケアをすることが大切」

高齢者の若返りは、データでも示されている。
東京都老人総合研究所の鈴木隆雄・副所長らが、秋田県大仙市で
92年と02年の65歳以上を比較。
握力、通常歩行速度など基本的な運動能力は、10年間に3~11歳若返り、
「その傾向はさらに進む」

姫路少年刑務所(兵庫県)の面接室。
窃盗を重ね、出所する20歳代の青年の前に現れたのは、
105歳のボランティアの面接委員、黒田久子。
教職を経て、52年前から3200人以上の受刑者の声に耳を傾けてきた。

「親が悪いんだ」と訴える青年には、「育てる苦労も知らんで」と一喝。
「一人ひとり違う。相手におうたように話す」という黒田の対話は
時に数時間に及ぶ。
「待ってくれる若者がおることが生きる支え。人間は100歳で一人前」とも。

老化と共に低下する記憶力や認知機能。
しかし現代の脳科学は、「脳を使うことで、神経細胞のネットワークが活性化される」
(甘利俊一・前理化学研究所脳科学センター長)

長寿の最長記録は、フランス・アルルの老人ホームで97年に亡くなった、
ジャンヌ・カルマン夫人。122歳5か月。

カルマン夫人の研究者で、国立保健医療研究所の
ジャン・マリー・ロビン研究部長が、最も注目する国がある。
フランスの4・8倍の速度で高齢社会に突入した、最長寿国??ニッポン。

「家族関係や社会構造が影響しているのでは?」。
今年4月、ロビン部長は日本で共同研究を開始する。

「老いの形」が急速に変わっている。
長い老後をどう生きるか?どんな知恵や仕組みが必要か?
直面する課題をシリーズで探る。

◆百寿者◆

100歳を超える高齢者のこと。
米寿(88歳)や白寿(99歳)などと並び、長寿の祝いの意味を込めて呼ぶ。
最近、厚生労働省の長寿研究などで用いられ、名称として一般化。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=86101

長寿、8割が不安 長寿者の役割、まとめ役頼る傾向も 生きがい調査

(毎日新聞社 2009年1月14日)

市民グループ「静岡福祉文化を考える会」(静岡市、平田厚代表)が、
県民を対象に「長寿者の生きがい」について調査を実施、
長寿者を頼りにする傾向が目立つ一方、8割弱が自分が長寿者になった
場合の将来に不安を持つ実態が浮き彫りに。

調査は昨年8-10月、県内25市町の社会福祉協議会などの協力を得て、
10代から高齢者まで1274人から回答を得た。

家族生活での「長寿者の役割」(複数回答可)では、
「家族や親族のまとめ役」が26・9%、
「家族・親族の相談相手」が20・7%と頼りにする傾向が強かった。
その半面、「分からない」も48・4%を占め、
長寿者の役割が見いだしにくいことも分かった。

将来、自分が長寿者になった場合の生活については、
「とても不安」、「不安を感じる」が計76・2%。
この回答者に、更に選択肢(複数回答可)を設けて尋ねたところ、
「自分が病気になったり介護が必要になる」(50・4%)、
「配偶者が同様の状況になる」(34・3%)、
「生活のための収入」(33・0%)などが多かった。

同会は2月21日、「長寿者と福祉文化」をテーマにしたセミナーを
静岡市葵区駿府町、県総合社会福祉会館で開き、詳しい調査結果を報告。
平田代表は、「実践と理論を融合して、それぞれの立場で
より豊かな生き方や望ましい地域を作っていきたい」

問い合わせは、平田さん(054・624・1924)へ。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=86188