(日経 2009-01-13)
「世界的な経済危機で、大企業が中小企業との関係を断ち切る動きを
加速すれば、玉のような技術はどっと海外に流出してしまう」。
半導体や薄型パネルの技術コンサルティング、オムニ研究所の吉見武夫社長は、
日本の生命線、モノ作りを根っこから支えてきた中小の有望技術が、
今度こそ崩壊の危機を迎えるのでは、と危惧。
毎年12月、幕張メッセで開催される半導体製造装置展示会「セミコンジャパン」。
オムニ研究所は、東京エレクトロン、ニコンなど大企業のブースの真ん前に
展示コーナーを構える。
集客力が高いメーンストリートにこだわるのは、同社のブースに展示する
中小企業の独創技術を多くの人に知ってもらいたいから。
セミコンでのオムニ研究所のブースは、中小の独創技術をみようと大勢の来場。
景気悪化を反映、出展中止など会場の活気は盛り上がりを欠いたが、
オムニ研究所のブース来場者は、前年より1割多い1800人。
吉見氏は、「セミコンで、目からうろこが落ちる中小企業の一押し技術を
アピールする機会を無償提供する活動を、8年前から続けてきたことが認められた」
世界初の膜封止技術で、厚さ0.5ミリメートルの超薄型白色有機EL量産に
成功した東北デバイス(岩手県花巻市)が、注目の的で多くの人であふれた。
光の透過率を高めたガラス薄膜を開発して、太陽電池の省エネを進める
フューチャー・プロダクト(埼玉県毛呂山町)、
非接触で電気を伝えるワイヤレス空間送電システムのユー・ディ・テック(東京・大田)
など出展9社の試作品は、参加者から「驚いた」と称賛。
技術発掘の原動力は、吉見氏の幅広い人脈。
会費や規則もない異業種交流会を、吉見氏は30年前から開催、
メンバーは現在5800人(2300社)。
業種や企業の壁を超え、腹を割った議論をすることが会の趣旨で、
開発や製造の第一線で活躍する会員が、
「大手では思いもつかない中小の面白い技術を見つけた」と知らせてくれる。
昨年は、50社が支援候補になり、その中から9社が選ばれた。
吉見氏は、98年に日立製作所を退社、オムニ研究所を設立。
日立では半導体事業部副技師長を務め、工場の設備予算の配分権限。
当時の日立は、予算の2割は日立グループに最優先で割り振る決まり。
現場が中小の装置や材料購入を提案しても、入り込む余地はなかった。
吉見氏が中小企業の支援に奔走するのは、
「日立時代、モノ作りを支える中小企業に目を向けなかった反省の意味も」
米ゼネラル・エレクトリック(GE)は07年、
「ジャパン・テクノロジー・フォーラム」と称して、日本の中小企業33社を集めた
技術評価会議を開き、センサーなど3社を提携先に選定。
日本GEの藤森義明会長は、「日本の技術力を、
GEとしていかに吸収するかに焦点を当てている」
東京・大田や東大阪では、中国や韓国メーカーがトヨタ自動車や
パナソニックなどのモノ作りノウハウを入手できる好機と、
資金支援をちらつかせて技術力ある中小企業に買収や提携を
持ちかけているとの話をよく聞く。
技術流出の懸念は現実のものとなっているだけに、
吉見氏は、「日本の中小企業の有望技術の発掘と育成にもっと力を入れ、
大手に採用を呼びかける活動の輪を広げていきたい」
http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/mono/mon090108.html
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