2009年1月21日水曜日

オバマ新政権と「水男爵」

(日経 2009-01-19)

世界中で、「グリーン・ニューディール」ばやりだ。
新エネルギーの導入拡大で、地球温暖化対策と景気浮揚の両方を目指す政策。
提唱者は、米国の第44代大統領に就任するバラク・オバマ氏。
選挙戦でその構想が脚光を浴び、
当選と同時に欧州や日本、新興国に一気に広がった。

だが、具体的な中身はまだ判然としない。
「太陽光や風力など再生可能エネルギーに、
今後10年間で1500億ドルを投資する」と言及。
発電設備や装置はどこでどう開発・生産するのか、
どの企業を主体に投資するかについては沈黙したまま。

新エネルギー産業に雇用吸収力があるのかは、米国でも議論がある。
太陽光や風力は、数千人、数万人単位の雇用を生むことはできる。
だが、それだけでは「ビッグスリー(米自動車3社)のリストラなどで増える
失業者を吸収しきれない」

就任後のオバマ氏に注目するとしたら、次の2つの分野の扱い。
1つは、原子力をグリーン・ニューディールに含めるかどうか。
厳重な安全管理が求められる原発産業は設計から建設、メンテナンスまで
他の新エネルギーとはけた違いの雇用を生み出す可能性がある。

原発の将来について、オバマ氏は考えをほとんど示したことがない。
大統領選では、「(再開には)安全面で注視する必要がある」と慎重。
就任後、オバマ氏はこれを修正するのか。
日本のある重電メーカーは「楽観視している」と話すが、
反対派のロビー活動も活発で、先行きは見えにくい。

2つ目は、安全面で「当確」が間違いない。水道事業である。
電力ではないが、オバマ氏は米メリーランド州で最近起きた水道事故を憂慮し、
「水資源のインフラ整備が急務」と。
老朽化した上下水道設備は全米各地に存在し、
これを最新鋭の設備に更新・増設したら、
少なくとも数十万人単位の雇用機会が生まれる。

この商機を海外勢、特に欧州の企業が狙っている。
欧州は、水道分野の民営化で先行し、上下水道の管理運営公社だった
フランスのヴェオリアやスエズ、英独系のテムズ・ウォーターなどが急成長。
オイルマネーで、水道インフラ整備を積極的に進める中東などでは
「水メジャー」、「ウォーター・バロン」(水男爵)などと呼ばれ、
存在感が急速に強まっている。

だが、水道事業には政治が介入する可能性がある。
オバマ新政権は、ニューディールを通じ、ウォーター・バロンを
米国でも育成したいと考えている。
公共投資の恩恵を最も受けるのは、米エンジニアリング大手のベクテル

資源エネルギーで積極的なトップセールスを展開するフランスの
サルコジ大統領などは、ベクテルの受注独占に異を唱え、
フランス企業への門戸開放を求めている。

イラクではこんなことがあった。
ブッシュ政権は、復興のための10大事業の1つに上下水道の修復、
メンテナンスを位置づけ、内外の企業に参加を呼びかけた。
最終的に主契約企業に選んだのは、ベクテル。
イラク戦争に反対したフランスのヴェオリアとスエズは、
入札から締め出された格好。

フランスやドイツとの関係改善を目指すオバマ氏が、そこまでする可能性は低い。
グリーン・ニューディールの大きな目的は、国内企業の育成。
外国企業への門戸開放とどう両立させるのか、
オバマ政権はここでも難題を抱えることに。

日本企業は、米国の一大商機に食い込めるのか。
環境は、日本のお家芸といわれ、
海水から塩分や有害物質を取り除く事業などで世界の評価は高い。
圧倒的に規模が大きい上下水道の管理・運営事業では、
「バロン」が育っておらず、蚊帳の外に置かれる可能性。

原発では、東芝が米ウエスチングハウスを買収し、世界的に存在感を高めた。
水の領域でも、日本は巻き返すべきではないか。
民営化の遅れが根幹にあるなら、それも真剣に検討すべき。
20世紀は石油の世紀だったが、21世紀は水の世紀になる。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/tanso/tan090115.html

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