2008年4月5日土曜日

血管周囲の一酸化窒素勾配は腫瘍脈管構造を正常化する

(nature medicine 3月号Vol.14 No.3 / P.255 - 257)

血管周囲の一酸化窒素勾配は腫瘍脈管構造を正常化する

腫瘍の脈管構造の正常化は、細胞傷害療法を発展させるための新戦略。

本論文では、神経細胞NO合成酵素のサイレンシングまたは阻害によって
腫瘍細胞での一酸化窒素(NO)の産生を消失させると、
マウス中のヒト神経膠腫異種移植片の血管周囲にNO勾配が生じ、
腫瘍の脈管構造が正常化して、その結果腫瘍の酸素化が改善され、
放射線治療への反応性が向上することを示す。

血管周囲におけるNO勾配の生成は、異常な脈管構造を
正常化させるのに有効な戦略であると考えられる。

[原文]
Perivascular nitric oxide gradients normalize tumor vasculature

Satoshi Kashiwagi1, Kosuke Tsukada1, Lei Xu1, Junichi Miyazaki1, Sergey V Kozin1, James A Tyrrell1, William C Sessa2, Leo E Gerweck1, Rakesh K Jain1 & Dai Fukumura1

1 Edwin L. Steele Laboratory, Department of Radiation Oncology, Massachusetts General Hospital and Harvard Medical School, 100 Blossom Street, Boston, Massachusetts 02114, USA.
2 Department of Pharmacology, Boyer Center for Molecular Medicine, Yale University School of Medicine, 10 Amistad Street, New Haven, Connecticut 06536, USA.

Normalization of tumor vasculature is an emerging strategy to improve cytotoxic therapies. Here we show that eliminating nitric oxide (NO) production from tumor cells via neuronal NO synthase silencing or inhibition establishes perivascular gradients of NO in human glioma xenografts in mice and normalizes the tumor vasculature, resulting in improved tumor oxygenation and response to radiation treatment. Creation of perivascular NO gradients may be an effective strategy for normalizing abnormal vasculature.

http://www.m3.com/tools/MedicalLibrary/nature/200803/nature_medicine/01.html

博士号取得者は中等教育を変えられるか

(サイエンスポータル 2008年4月1日)

秋田県教育委員会が実施した、博士号取得者(ポスドク)の
教員特別採用が関心を集めている。
応募条件は「39歳以下」と「博士」だけで、教職課程修了の有無は問わない。
これに海外を含め57人もの応募。

地元紙「秋田魁新報」のニュースサイトによると、
正規職員5人と非常勤講師1人が採用となり、
新学期から以下の学校に配置(カッコ内は年齢)。

東京大学大学院修了・理学博士(35)=大館鳳鳴高、
東京工業大学大学院修了・理学博士(30)=秋田高、
東北大学大学院修了・理学博士(30)=大曲農高、
東北大学大学院修了・工学博士(36)と
大阪市立大学大学院・理学博士(35)=横手清陵学院高。

非常勤講師として採用された一人(40)=東北大学大学院修了は、
必要に応じて県内の小中学校と高校に出向く。

「博士が中等教育の現場にどのような影響を与えるのか。
秋田県の試みを、一つのシミュレーションとして大いに注目したい」
NPO法人サイエンス・コミュニケーションの発行するメールマガジン
「SciCom News」(3月31日付)で、榎木英介氏が
この秋田県の試みを評価。

榎木氏は、「日本学術会議生物科学学会連合からの研究体制に関する提言」
(2003年11月23日)で、中等教員へのポスドク活用が盛り込まれている事実や、
高校の先生から実際に「ぜひポスドクは教育現場に来てほしい」と
言われた自身の体験も紹介。

他方、「生徒が問題を起こしたときの対応、進路指導、
その他多数の仕事がある」教育現場に、
「あたまでっかちな博士が送り込まれたとしても、
現場に迷惑がかかるだけではないか、という懸念も」。

「新聞記者に博士を、という意見と同じで、教育現場においても、
必ずしも専門性が生かされるような仕事ばかりではない」。
こうした心配は、産業界などから聞かれる博士課程修了者に対する
根強い不満を気にしてのことだろう。

榎木氏に例示された新聞社は、確かに理工系の人間や科学報道を担う人間が、
組織全体の責任を負う指導的立場に立つのは当分、ありそうもない。

株価や為替を初めとする経済にかかわる話、
政治や犯罪、事故がらみの話は、新聞社が毎日、血眼になって探さなくても、
ニュースとして向こうからやってくる。
それも、多くの読者が関心を持つニュースとして。

これに対し、科学に関するニュースは異質で、
居住まいを正さないと読めないようなものが少なくない
(無論、えせ科学のような話は別)。
大勢の読者に支えられている新聞の記事としては、
主流にはなり得ない宿命にあるようにみえる。

ただし、これからはどうだろうか?
博士号取得者を記者として積極的に採用するくらいでないと
新聞社もやって行けない時代になっているかも。
初中等教育現場のように。

秋田県の初中等教育現場に飛び込んだ博士号取得者に対し、
研究者の多くは榎木氏と同様、エールを送ると思われる。
榎木氏の懸念も、これらポスドクを激励した上での話。

ただ、別の心配をする人はいないだろうか。
これら博士号取得者が今後、経験を積み、いずれ理科教育だけでなく
初中等教育全体のありようにまで能力を発揮したいと考え出した場合、
周囲がきちんと対応するだろうか。

http://www.scienceportal.jp/news/review/0804/0804011.html

イソフラボン血中濃度、高いほど乳がん発症の危険減--厚労省研究班調査

(毎日新聞社 2008年3月25日)

大豆などに含まれるイソフラボンの血中濃度が高い女性は、
低い女性に比べて、乳がんになる危険性が約7割低いことが、
厚生労働省研究班(主任、津金昌一郎・国立がんセンター予防研究部長)
の大規模調査で分かった。

特定保健用食品などによる過剰摂取の問題も指摘されているが、
「食事から摂取する限り、多い方が乳がんの危険が低下する」。

研究班は、90年と93年に登録した9府県の女性約2万5000人を
02年まで追跡。
乳がんを発症した144人と、発症しなかった288人
(発症したグループと年齢構成や居住地域の分布が
ほぼ同じになるように選定)の計432人を対象に、
イソフラボンの成分のうちの「ゲニステイン」と「ダイゼイン」の
血中濃度と発症の危険性を分析。

ゲニステインの血中濃度別に4グループに分けたところ、
濃度が最も高いグループの乳がん発症の危険性は、
最も低いグループの0・34倍。
閉経前の女性だけで比較すると、
最も高いグループは最も低いグループの0・14倍。

研究班の岩崎基・国立がんセンター予防研究部室長によると、
ゲニステイン濃度が最も高いグループは、
食事でイソフラボンを1日当たり46・5ミリグラム、
豆腐に換算すると約100グラム摂取。
ダイゼインについては、濃度と発症の危険に関係は見られなかった。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=69799

2008年4月4日金曜日

IRF-7を介した自然免疫応答の翻訳による制御

(nature 2008年3月20日号Vol.452 No7185 / P.323-328)

IRF-7を介した自然免疫応答の翻訳による制御

I型インターフェロン(インターフェロン(IFN)-αおよびIFN-β)のような
サイトカインの転写活性化は、抗ウイルス防御の最前線。
本論文では、I型IFNの産生誘導に翻訳制御が重要であることを示す。

翻訳リプレッサー4E-BP1および4E-BP2を欠損する
マウス胚性繊維芽細胞では、I型IFN産生を引き起こす閾値が低くなる。
その結果、脳心筋炎ウイルス、水疱性口内炎ウイルス、
インフルエンザウイルス、シンドビスウイルスの複製が大幅に抑制。

4E-BP1、4E-BP2(別名Eif4ebp1、Eif4ebp2)遺伝子の両方が
ノックアウトされたマウスは、水疱性口内炎ウイルス感染に耐性があり、
この耐性は形質細胞様樹状細胞でのI型IFN産生の亢進および
肺でのIFNによって制御される遺伝子発現と相関。

4E-BP1−/−4E-BP2−/−ダブルノックアウトマウスの胚性繊維芽細胞での
I型IFN応答の亢進は、インターフェロン制御因子7(Irf7)
メッセンジャーRNA翻訳の上方制御によって引き起こされる。

これらの知見は、4E-BP群がI型IFN産生の負の調節因子の役割をもち、
Irf7 mRNAの翻訳抑制を介して働くことを明らか。

[原文]
Translational control of the innate immune response through IRF-7

Rodney Colina 1,4 , Mauro Costa-Mattioli 1,4, Ryan J. O. Dowling 1, Maritza Jaramillo 1, Lee-Hwa Tai 2, Caroline J. Breitbach 3, Yvan Martineau 1, Ola Larsson 1, Liwei Rong 1, Yuri V. Svitkin 1, Andrew P. Makrigiannis 2, John C. Bell 3 & Nahum Sonenberg 1

1.Department of Biochemistry and McGill Cancer Center, McGill University, Montreal, Quebec H3G 1Y6, Canada
2.Institut de Recherches Cliniques de Montreal, Laboratory of Molecular Immunology, Universite de Montreal, Montreal, Quebec H2W 1R7, Canada
3.Ottawa Health Research Institute, Ottawa, Ontario K1H 8L6, Canada
4.These authors contributed equally to this work.

Transcriptional activation of cytokines, such as type-I interferons (interferon (IFN)- α and IFN-β), constitutes the first line of antiviral defence. Here we show that translational control is critical for induction of type-I IFN production. In mouse embryonic fibroblasts lacking the translational repressors 4E-BP1 and 4E-BP2, the threshold for eliciting type-I IFN production is lowered. Consequently, replication of encephalomyocarditis virus, vesicular stomatitis virus, influenza virus and Sindbis virus is markedly suppressed. Furthermore, mice with both 4E- and 4E-BP2 genes (also known as Eif4ebp1 and Eif4ebp2, respectively) knocked out are resistant to vesicular stomatitis virus infection, and this correlates with an enhanced type-I IFN production in plasmacytoid dendritic cells and the expression of IFN-regulated genes in the lungs. The enhanced type-I IFN response in 4E-BP1 -/- 4E-BP2 -/- double knockout mouse embryonic fibroblasts is caused by upregulation of interferon regulatory factor 7 (Irf7) messenger RNA translation. These findings highlight the role of 4E-BPs as negative regulators of type-I IFN production, via translational repression of Irf7 mRNA.

http://www.m3.com/tools/MedicalLibrary/nature/200803/nature/7185/01.html

机上の空論、メタボ健診 新年度開始、自治体から疑問百出

(毎日新聞社 2008年3月26日)

メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の患者を減らすことで、
医療費削減を目指す特定健診・保健指導(メタボ健診)。
新年度からのスタートを前に、全国806市区を対象に実施した調査には
「机上の空論」などと厳しい声が多数寄せられた。
現場の担当者の声から問題点を探った。

メタボ健診は、「腹部に内臓脂肪がたまったメタボリックシンドロームの人は、
脳卒中や心筋梗塞などの心血管疾患を起こしやすい」学説に基づき計画。
メタボを防ぐことで生活習慣病の患者を減らし、医療費の削減を目指す。

対象者は、妊婦などを除く40-74歳の医療保険加入者全員。
医療保険の保険者に実施が義務付け。
組合健康保険など被用者保険は職場などで、
国民健康保険は地元の医療機関などで実施。
被用者保険の扶養家族(専業主婦など)は、健保組合が委託した
医療機関などで受ける場合が多い。

腹囲やBMIが基準以上で、血糖値、血圧、血中脂質の数値も
基準を超えた人は、保健師や管理栄養士らの指導(保健指導)のもと、
食事や運動など生活習慣の改善に取り組まなければならない。

◇目標達成遠い、財政悪化拍車


自治体のメタボ健診は、従来の住民健診を衣替え。
住民健診との最大の違いは、保険者へのペナルティーがあること。
市町村の場合、12年度までに
▽健診実施率65%
▽指導対象者に対する保健指導実施率45%
▽メタボ該当者・予備群の減少率10%
を達成できないと、後期高齢者医療制度への財政負担が最大10%加算。

東京都内のある市の試算では、最大2億円のペナルティーがあり得る。
大都市ならさらに大きくなる。
同市は、「国民健康保険は高齢者や低所得者が多く、
一般会計からの繰り入れや基金取り崩しで収支を保っている。
ペナルティーは財政の不安定要因」。

健診実施率や指導実施率の目標達成も容易ではない。
05年度の住民健診受診率は全国平均43・8%で、65%には程遠い。
市町村国保の過半数は赤字で、ペナルティーによって保険料値上げが
必要になる自治体が出る恐れ。
目標を達成できないと、住民が連帯責任を負わされる。

住民の健康への悪影響を懸念する声も。
兵庫県内の市は、「ペナルティーで財政が悪化すればサービスも低下し、
改善率などもさらに悪くなる。成績の悪い地域こそ支援してほしい」。

財源の問題も。
国と都道府県が費用の3分の1ずつを負担するが、補助単価は全国一律。
健診や指導の実施機関が多く人口も集積する大都市に比べ、
地方はコスト高が予想。
秋田県内の市の見通しでは、国の補助が実際の費用の8分の1程度。
担当者は、「地方では健診などの各実施場所ごとに集まる人数が少なく、
コストが高くなる。国はかかった実額の3分の1を負担してほしい」。

◇見落とし発生、総合対策が先

メタボ健診は、内臓脂肪型肥満が原因の生活習慣病を主なターゲット。
腹囲や体格指数(BMI)が基準値未満だと、血糖や血圧などに異常があっても、
食事や生活習慣の改善を指導する保健指導の対象にすらならず、
健診の質を疑問視する声も。

福岡県内のある市の試算では、保健指導の対象者は
同市の国保加入者のわずか3%。
血糖などに異常があっても、腹囲は基準以下という人も多い。
同市は、「メタボだけに焦点を当てては、国が掲げる
『生活習慣病有病者・予備群の25%削減』は達成できない」。

がん検診と住民健診を同時に実施してきた自治体にとっては、
がん検診の受診率低下も懸念。
従来は、両健診とも市町村が全住民を対象に実施。
しかし、市町村のメタボ健診は原則として国保加入者だけが対象、
国保加入者以外はがん検診を別に受ける必要。
山形県内の市は、「住民健診受診者にがん検診も受けるよう呼びかけ、
やっと受診率が伸びてきたのに……。
がん検診受診者が減れば、がんによる医療費増につながりかねない」。

メタボ基準には、腹囲の数値の妥当性などを巡って異論がある。
基準策定に加わった日本内科学会が、
「今後、新たな疫学研究や臨床研究を踏まえて科学的検討を行う」
との見解を発表。

健康には、労働環境など社会的な要因が深く関係。
京都府内の市担当者は、「体にいい生活をと思っても、
収入を得るためにできないこと、収入が少ないためにできないこともある。
就労環境の改善や喫煙対策など、国を挙げて取り組むべき課題を抜きに、
ペナルティー付きの制度を導入するのは矛盾を感じる」。

◇準備遅れ、人も不足

「介護保険制度は、何回も改正が繰り返された。
特定健診でも同じことになるのではないか」。
厚生労働省の情報提供の遅れによる準備不足を不安視する声。

厚労省健康局が具体的な健診や指導の内容を盛り込んだ
「標準的な健診・保健指導プログラム(確定版)」を公表したのは、
開始が1年後に迫った昨年4月。
法的側面から解説する厚労省保険局の「手引」が出されたのは7月。
年明け以降も、通知が五月雨式に出され、細かな変更も続く。
京都府内の市は、「確定版で準備を進めていたら、
手引などで違うことが書かれていて困った」。

公務員の増員が困難な中、保健指導を担う職員の不足も深刻。
京都府の別の市の担当課は、「国が目標に掲げる『保健指導実施率45%』を
実現しようにも、今の職員数では不可能」。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=69841

2008年4月3日木曜日

大腸がん高率発症のDNA配列を7カ国共同チーム解析

(毎日新聞社 2008年3月31日)

大腸がんの発症率を高める3カ所のDNA変異(SNP)を、
1万7500人分のデータを解析した
日欧など7カ国の研究チームが突き止めた。

3つとも発症しやすい型だと、大腸がんの発症率は通常の2・6倍。
大腸がんに関連するDNA解析では最も大規模な調査で、
「ネイチャー・ジェネティクス」電子版に発表。

遺伝子の本体であるDNAは、
4種類の塩基という化学物質がつながってできている。
塩基配列のうち、1カ所だけが通常と異なっている場所を
1塩基多型(SNP=スニップ)と呼ぶ。
塩基数百個に1個程度存在。

研究チームは、各国の患者データを解析。
中村祐輔・東京大医科学研究所教授らのグループが、
日本人約4400人分を解析。

3つのSNPがいずれも発症率を高める型である割合は、
欧米系が約280人に1人、日本人では約3500人に1人で
日本人の方が低かった。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=70041

県立住田病院、4月から地域診療センターに

(東海新報 3月30日)

住田町の県立住田病院(佐藤芳行院長)は、4月1日から診療所化され、
県立大船渡病院附属住田地域診療センター」となる。
気仙保健医療圏の広域基幹病院である県立大船渡病院(八島良幸院長)
との連携を一層強めながら、診療体制の維持充実を図る。

県立病院全体の累積赤字がかさむ中、県医療局は16年度から
5カ年間を実行期間とする「県立病院改革基本プラン案」を作成。
診療所化はこれに伴うもので、18年度に紫波と花泉、
19年度に大迫と伊保内の各病院ですでに実施。
今回の住田の診療所化が最後。

当初は無床化の計画もあったが、町民らの反対により、
現在ある65床のうち19床を残す。
常勤医による内科と外科の外来診療をはじめ、
大船渡病院や開業医の応援で行っている循環器や小児科、耳鼻咽喉科
などの診療は現行通り維持される見通し。

しかし、1日発令の県立病院人事で、
佐藤院長が沼宮内病院長に転出することが決定、
常勤医は3人から2人に減ることに。
県医療局では診療所化に際し、住民説明会などの場で常勤医3人体制を
維持していくと重ねて示してきたが、
改めて医師確保の厳しい現状が浮き彫り。
後任のセンター長には、加藤貞之副院長兼外科長が就く。

世田米地区の70代女性は、「医師が少なくなるのはやむをえないとしても、
いまの形だけは保ってもらわないと、通院している人みんなが困る」。

町と町議会、町民有志でつくる「県立住田病院の無床化に反対し
診療体制の強化・充実を求める会」(泉秀雄会長)は今年1月、
医療局に対し、診療所化後の診療体制や訪問サービスの
維持充実などを要望。

町は2月に広報でも同様の内容を訴え、
「新たな縮小計画が出ないとも限らず、これからも動向を注視していく」。

住田病院は、昭和6年に初の県立診療所として開設された
県立世田米診療所が前身。
昭和17年に県立病院第1号の「県立世田米病院」となり、
その後、現在の県立住田病院へと移行。

http://www.tohkaishimpo.com/

博物館の達人・寺本さん(気仙中) 念願の野依賞に気仙で初、県内2人目

(東海新報 4月1日)

独立行政法人・国立科学博物館の「めざせ!博物館の達人」に
認定された寺本沙也加さん(13)=陸前高田市立気仙中学校2年=が
「野依科学奨励賞」を受賞。

広田湾の貝を研究した小論文が優れた内容と認められ、
気仙で初、県内でも二人目の栄えある受賞。
寺本さんは、「受賞はうれしく、達成感を感じた」と、
今後の研究へ意欲を見せている。

国立科学博物館は、博物館を通して“調べる”学習に取り組む
小中学生を支援しようと、平成14年から「博物館の達人」を実施。
優れた小論文には、ノーベル化学賞受賞者・野依良治博士の協力を受け、
野依科学奨励賞」を贈っている。

寺本さんは、海と貝のミュージアムの勧めを受け、達人に応募。
『広田湾の磯に住む貝の研究』として、広田湾の磯八カ所で、
春、夏、秋、冬の合計32回、ムラサキインコ(またはムラサキイガイ)という
貝が密集した2枚貝床にすむ生物の種類や数を調査。
2枚貝床が1年を通して穏やかな環境で、数多くの生物のすみかであると証明。

研究成果が認められ、気仙で2人目、
ミュージアムからは初の達人となった寺本さん。
その内容は、「10センチ四方の二枚貝床の中に、
多くの動物が生活しているという貴重な記録。
8地点で、年4回のサンプル分析による努力も素晴らしい」と
審査員から高く評価され、「野依科学奨励賞」に選ばれた。

国立科学博物館で開かれた授賞式には、
研究を支えてくれた家族と共に出席。
全国から選ばれた10組の受賞者らとともに、
野依博士から賞状と記念の楯を受け取り、
寺本さんは研究を継続する大切さを改めて感じたという。

指導にあたったミュージアムの熊谷賢主任学芸員は、
「観察のデータは申し分なく、あとはどうまとめるかであり、
本人が一番大変だったと思う。
今後も、子どもたちが研究に取り組める環境づくりに一層努めていきたい」。
気仙で初、県内でも2人目の受賞に、
寺本さんは「貝の個体数三万個を数えるのは大変でしたが、
微小貝について調べたいという興味も出てきました。
時間があればまた受賞できるよう挑戦したい」。

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2008年4月2日水曜日

IL-22はグラム陰性菌による肺炎に対する粘膜感染防御を仲介する

(nature medicine 3月号Vol.14 No.2 / P.275 - 281)

IL-22はグラム陰性菌による肺炎に対する粘膜感染防御を仲介する

17型ヘルパーT (TH17)細胞は、自己免疫に関与するだけでなく、
細胞外増殖性の病原体に対する粘膜免疫でも中心的な役割を
担っているという考えを支持。

インターロイキン22(IL-22)とIL-17Aは、TH17細胞によって産生される
エフェクターサイトカインで、グラム陰性の肺炎桿菌である
Klebsiella pneumoniaeの局所における感染制御に両方共に重要。

これらのサイトカインは、肺におけるCXCケモカインと
顆粒球コロニー刺激因子の産生を促進したが、
IL-22のみが肺上皮細胞増殖と損傷に対する上皮細胞の修復能力を高めた。

これらのデータは、TH17細胞とそのエフェクター分子が
細胞外病原体に対する粘膜における感染防御にあたるために
進化してきたという考えを支持する。

[原文]
IL-22 mediates mucosal host defense against Gram-negative bacterial pneumonia

Shean J Aujla1, Yvonne R Chan2, Mingquan Zheng1, Mingjian Fei1, David J Askew3, Derek A Pociask1, Todd A Reinhart4, Florencia McAllister1, Jennifer Edeal1, Kristi Gaus4, Shahid Husain5, James L Kreindler1, Patricia J Dubin1, Joseph M Pilewski2, Mike M Myerburg2, Carol A Mason6, Yoichiro Iwakura7& Jay K Kolls1

1Children's Hospital of Pittsburgh, Suite 3765, 3705 Fifth Avenue, Pittsburgh, Pennsylvania 15213, USA.
2Division of Pulmonary, Allergy and Critical Care Medicine, University of Pittsburgh, 3459 Fifth Avenue, 628 Northwest, Pittsburgh, Pennsylvania 15213, USA.
3University of Pittsburgh Medical Center Newborn Medicine Program, Children's Hospital of Pittsburgh and Magee-Women's Research Institute, 300 Halket Street, Pittsburgh, Pennsylvania 15213, USA.
4Department of Infectious Diseases and Microbiology, Graduate School of Public Health, University of Pittsburgh, 130 DeSoto Street, Pittsburgh, Pennsylvania 15261, USA.
5 Division of Infectious Diseases, Transplant Infectious Disease Unit, University of Pittsburgh Medical Center, 3601 Fifth Avenue, Pittsburgh, Pennsylvania 15213, USA.
6 Division of Pulmonary and Critical Care Medicine, Louisiana Health Sciences Center, New Orleans, 1901 Perdido Street, Louisiana 70112, USA.
7 Center for Experimental Medicine, The Institute of Medical Science, The University of Tokyo, 4-6-1, Shirokanedai, Minato-ku, Tokyo 108-8639, Japan

Emerging evidence supports the concept that T helper type 17 (TH17) cells, in addition to mediating autoimmunity, have key roles in mucosal immunity against extracellular pathogens. Interleukin-22 (IL-22) and IL-17A are both effector cytokines produced by the TH17 lineage, and both were crucial for maintaining local control of the Gram-negative pulmonary pathogen, Klebsiella pneumoniae. Although both cytokines regulated CXC chemokines and granulocyte colony-stimulating factor production in the lung, only IL-22 increased lung epithelial cell proliferation and increased transepithelial resistance to injury. These data support the concept that the TH17 cell lineage and its effector molecules have evolved to effect host defense against extracellular pathogens at mucosal sites.

http://www.m3.com/tools/MedicalLibrary/nature/200803/nature_medicine/04.html

北京五輪:聖火、世界21都市へ 抗議や妨害懸念しつつ

(毎日 3月31日)

五輪開催まであと130日となった北京に31日、聖火が到着。
天安門広場で行われた歓迎式典では、
聖火リレーの約2万2000人の走者の代表として、
陸上男子百十メートル障害の世界記録保持者で五輪連覇が期待される
中国のヒーロー、劉翔が登場。
華やかに紙吹雪が舞う下で、トーチを誇らしげに掲げて
リレーの第一歩を刻んだ。

聖火は、1日にカザフスタンのアルマトイへ運ばれ、世界の21都市を巡る。
中国国内では、5月4日から中国最南部・海南島の三亜を起点に
113都市でリレーされ、5月には並行して、取り分けられた火が
世界最高峰のエベレスト(中国名チョモランマ)登頂を目指す。

チベット暴動に対して強硬姿勢を貫く中国には、
多くの国から批判の声が起きている。
そのさなかに行われる北京五輪の聖火リレーも、
各地で抗議や妨害の行動に遭う懸念を抱える。

巡回する世界の21都市には4月6日のロンドンなど、
すでに人権団体などが抗議活動を展開している都市も。
4月9日にサンフランシスコを通る米国では、
ペロシ下院議長が聖火リレーの際の抗議行動を支持する声明。
中国は、各国に十分な保安態勢を要請した模様だが、
実際の警備は各国に任されている。

中国国内でも、特に暴動の発端となったチベット自治区を通過する
6月19~20日などは、厳重な警戒態勢の中で行われることは必至。
平和の象徴とされる聖火だが、ものものしい雰囲気のなかで
引き継がれることになりそうだ。

http://mainichi.jp/enta/sports/08olympic/news/20080401k0000m050122000c.html

約1300万人きょう新制度に 75歳以上、診療報酬も改定

(共同通信社 2008年4月1日)

75歳以上の高齢者約1300万人を対象に新たな
後期高齢者医療制度」が始まる。
診療報酬も改まり、新年度から医療の仕組みが大きく変わる。

現在加入している健康保険から新制度に移行する高齢者は、
医療機関を受診する際、既に交付された新しい保険証の提示を
求められるので注意が必要。

窓口での自己負担は、現行通り1割(現役並み所得者は3割)。
保険料は、原則的に年金からの天引き。
国民健康保険から移る人は、一部地域を除き4月15日の年金支給分から
天引きされる。健康保険組合などから移行する人は10月から。
保険料額は、加入者の所得や都道府県ごとに異なる。

現在の負担に比べ、「傾向としては所得水準が高い人は負担増、
低めの人は負担減になる」(厚生労働省)。

新たな診療報酬では、中小病院(ベッド数200床未満)の再診料が
570円から600円に値上げ。
処方せん様式が変更され、価格の安い後発医薬品が使いやすくなる。

メタボリック症候群の予防目的で、40-74歳を対象に
職場などで特定健診も始まる。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=70142

2008年4月1日火曜日

野口英世賞にウェレ博士ら 政府、賞金1億円授与

(共同通信社 2008年3月27日)

政府は、アフリカの医学研究や医療活動に貢献した人に贈る
「野口英世アフリカ賞」の第1回受賞者を発表し、
医学研究部門にイギリスのブライアン・グリーンウッド博士(69)、
医療活動部門にケニアのミリアム・ウェレ博士(67)を選んだ。

5月に横浜市で開催される第4回アフリカ開発会議(TICAD)で
授賞式を行い、それぞれに賞金1億円を贈る。

グリーンウッド博士は、アフリカの現場に密着して行ったマラリア研究が、
ウェレ博士はエイズ予防の活動が評価。

この賞は、2006年に当時の小泉純一郎首相がアフリカ外遊中に発案。
賞金は国費と寄付がほぼ半額ずつ。
内閣府によると、寄付は現時点で約9000万円集まっているほか、
計1億7000万円分の申し出もあるという。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=69897

小学校理科教育改善は地域一体で

(サイエンスポータル 2008年4月1日)

小学校の理科教育支援のあり方を検討してきた
科学技術振興機構の検討チームは、学校と社会が一体となった
取り組みが必要とする報告書をまとめ、公表。

同機構は、理科教育の支援を目的とする「理科教育支援センター
(有馬朗人センター長)を昨年9月に設立、
報告書の内容を小学校理科教育の支援に活かしたい。

報告書は、学校だけの限られた人的・物的教育環境下では、
理科教育に課せられた使命と期待にこたえるのは困難

理由として、教師が多忙で、授業の準備や研究の時間が
十分にとれないことに加え、理科に苦手意識を持っている教員が多い。
財政難による教材、設備費の不十分さも指摘、
教員研究者授業支援の拠点だった理科教育センターなどの衰退による
地域の教育研究会機能の低下。

方策としては、地域拠点となるコアスクールを設置し、
地域全体で理科教育の活性化を図る必要。
多忙な教員を地域でバックアップする仕組みとして、
大学生や教員経験者など地域における理科教育支援人材の発掘と活用

教師の質の問題は、この報告書でもあらためて指摘、
「力を入れて研究している教科」として理科を選んだ教師は6%に満たず、
国語(26.9%)、数学(25.8%)に比べ、明白な差がついている実態。
6割以上(61.9%)の教師が「理科の授業が苦手」とし、
得意と答えた27.0%を大きく上回っているという調査結果。
算数については35.6%が得意と答え、苦手は5.2%、
小学校教師の理科嫌いの傾向がはっきりしている。

http://www.scienceportal.jp/news/daily/0804/0804011.html

2008年3月31日月曜日

タラソテラピー(海洋療法) 海の力に癒やされ 海水、海藻で運動、施療 力抜け、ゆったり

(毎日新聞社 2008年3月27日)

海の恵みであるミネラル豊富な海水と、きれいな空気を
健康増進に活用するタラソテラピー(海洋療法)。
心身のコンディションを整えるだけでなく、
欧米では治療で用いられることも。
千葉県勝浦市にある総合施設「テルムマランパシフィーク」を体験。

タラソテラピーは、海辺の自然環境の中で、海水や海藻を利用した
運動や施療を行う自然療法の一種。
施療は、温海水プールでの水圧によるマッサージや浮遊、
ジャグジーをはじめ、海藻・海泥パックなどさまざま。
数日滞在するのが理想、今回は4月から始まる日帰りの
「アンチストレス」というプログラムを体験。

このプログラムは、ストレスからくる不眠や肩こり、目の疲れに有効。
内容は、
(1)温海水プールを歩き、ジェットの水圧でマッサージする「アクアトニック」、
(2)プールに体の力を抜いて浮かぶ「ピシーナリラクゼーション」、
(3)海藻のペーストで全身をパックする「アルゴパック」。

ヘルスチェックの用紙に記入し、血圧を測定。
400平方メートルの大プールは、ウオーキングや足、腰などへの
ジェットマッサージ、ノズルから落下する海水で肩や首をほぐすなど、
13のゾーンに分かれている。
海水温度は、33~36度と場所で異なる。
運動に加え、温度が違う場所を行き来することで血行が促進。

ジャグジーバスは開放感があり、海の空気がおいしい。
横たわったまま足の裏にジェットを受けるデッキチェアバスは、
そのまま眠ってしまいたい気分に。
プール近くには昼寝ができるリラクゼーションルーム。
「休養を取るのもタラソテラピーの大切な要素」。

アクアトニックを約1時間行い、次は30分のピシーナリラクゼーション。
1・5メートルほどの細長い丸太形の浮き具に頭を乗せ、
浮き具の握り手をつかんでプールに浮く。
指導に従って、目を閉じたままゆっくりと脚を曲げ伸ばししたり、
上体を左右に揺らしたり。
手を離し、足も同じ浮き具に乗せて体重を海水にあずける。

セラピストが、私の体をゆっくりとさまざまな方向へ動かす。
水の流れが腕をなで、そよ風に吹かれているような感じがする。
体の力がすっかり抜けて、何ともいえないリラックス感があった。
「力を抜くことで、日ごろいかに体に力が入っているか感じられます」と
副支配人の藤本瞳さん(29)。

仕上げのアルゴパックは、フランス・ブルターニュ地方でとれた
海藻の粉末を勝浦の海水でペースト状にしたものを使う。
全身に塗り、寝袋のようなカバーにくるまれて20分。
体の芯からじわっと汗が出る。
シャワーでペーストを流すと、肌がしっとりしたように感じた。

食事や休養も含め約4時間ほどかけて、すべてのプログラムを終えると、
たまった疲れがすっかり抜け、体がぐんと軽くなったような気分。
海のパワーのすごさを実感した一日。

タラソテラピーに詳しい野村正・東北大名誉教授(水産増殖学)によると、
タラソテラピーはギリシャ語のタラサ(海)とフランス語のテラピー(療法)を
もとにした造語で、1860年代にフランス人医師によって名付けられた。

ストレス解消や睡眠の質改善、食欲増進、皮膚の保湿、体形調整のほか、
関節炎や腰痛、肩こり、ぜんそく、気管支炎、アレルギー性疾患、
生活習慣病の治療や予防など、さまざまな効果が認められている。
欧米では医師の監督下で治療として行われ、
ドイツやフランスなどでは医療保険が適用。
「海水のミネラルの構成が人間の血液や羊水と似ていることが、
効果がある理由の一つと考えられている」。
……………………………………………………………………………
◎タラソテラピーを体験できる施設

テルムマランパシフィーク(http://www.thalasso.jp/tmp/index.html)の
入館料は平日4200円、土日祝・特定日は5250円。
アクアトニックとリラクゼーションルーム、サウナなどが自由に利用。
プログラムの利用は、別料金で予約が必要。
「アンチストレス」(約150分、平日1万4700円、土日祝・特定日1万5750円)
「アンチメタボリックシンドローム」(約180分、平日1万500円、
土日祝・特定日1万1550円)、
スポーツ競技者・愛好者向けの「アスリート」
(約150分、平日1万2600円、土日祝・特定日1万3650円)。

テルムマランヨコハマベイ(横浜市、電話03・5200・8999)と
テルムマランラグーナ(愛知県蒲郡市、電話0533・58・2888)でも
同名のプログラムが始まるが、内容と料金はそれぞれ違う。

タラソテラピー施設は全国に16カ所以上あるが、内容や質はさまざま。
日本で第1号は92年、「タラサ志摩ホテル&リゾート」
(三重県鳥羽市、電話0599・32・1111)内にオープン。
98年には、世界初の海洋深層水を利用したタラソテラピー施設
「タラソピア」(電話076・476・9303)が富山県滑川市に開設。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=69875

コレステロール低いと危険 富山大など、17万人分析

(共同通信社 2008年3月31日)

富山大の浜崎智仁教授(脂質栄養学)らは、
総コレステロール値があまり低いと、死亡の危険がかえって高まる、
とする研究結果を発表。
日本人延べ約17万人のデータを含む複数の大規模研究を分析。

一般に、総コレステロール値が高いのは良くないことだとして、
下げるための治療が広く行われているが、
浜崎教授は、「総コレステロール値は栄養状態の指標と考えるべき。
心筋梗塞や家族性高コレステロール血症以外の人は、
無理にコレステロール値を下げる治療をしなくてもいいのでは」。

浜崎教授らは、国内で1995年以降に発表された5000人以上を
5年以上追跡した5つの疫学調査結果(対象者:約17万4000人)を分析。

男女とも最も数が多かった血中総コレステロール値(160~199)を基準に
死亡の危険を比較したところ、
男性は、160未満だと死亡の危険が1.6倍高く、200以上では0.8倍と、
コレステロール値が高いほど危険が低くなるという結果。

女性も、160未満は1.4倍と死亡の危険が高く、
160以上は240を超えても差はない。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=70052

2008年3月30日日曜日

中枢神経系自己免疫に対するTH1細胞とTH17細胞による異なる制御

(nature medicine 3月号Vol.14 No.3 / P. 337 - 342)

中枢神経系自己免疫に対するTH1細胞とTH17細胞による異なる制御

多発性硬化症は、中枢神経系(CNS)における炎症性の脱髄疾患であり、
多様な臨床的症状を特徴とする。
CNSの損傷の部位はさまざまであり、損傷部位は臨床的転帰における
極めて重要な決定因子となる。

多発性硬化症は、ミエリン特異的T細胞を介して発症すると考えられ、
T細胞による炎症開始部位を決定する機序は明らかでない。

損傷分布の差異が、HLA複合体と関連づけられてきたことは、
T細胞の特異性が炎症部位に影響することを示唆。

我々は、異なるミエリンエピトープに特異的なT細胞が、
TCRとペプチド-MHC複合体との相互作用の機能的アビディティーに依存し、
1型ヘルパーT(TH1)細胞と17型ヘルパーT(TH17)細胞との
存在比の違いによって特徴づけられる集団を形成することを示す。

注目すべきことに、浸潤性T細胞のTH17:TH1比はCNSでの炎症部位を決定
ミエリン特異的なT細胞は、TH17:TH1比に関係なく、
CNS全体にわたって髄膜に浸潤する。

しかし、脳実質でのT細胞浸潤と炎症は、TH17細胞数がTH1細胞に比べて
圧倒的に多い場合にのみ生じ、
脳内におけるインターロイキン17の不均衡な発現増加を引き起こす。
TH17:TH1比が広範囲にわたるT細胞集団は、脊髄実質の炎症を誘発。

今回の知見は、脳と脊髄では炎症の制御に極めて重大な相異があることを
明らかにしている。

[原文]
Differential regulation of central nervous system autoimmunity by TH and TH17 cells

Ingunn M Stromnes1, Lauren M Cerretti1, Denny Liggitt2, Robert A Harris3 & Joan M Goverman1
1 Department of Immunology, Box 357650, HSC H474B, 1959 NE Pacific Street, Seattle, Washington 98195, USA.
2 Department of Comparative Medicine, Box 357190, University of Washington, 1959 NE Pacific Street, Seattle, Washington 98195, USA.
3 Applied Immunology Group, Department of Clinical Neurosciences, Karolinska Institute, Solna, CMM, L8:04, 171 76 Stockholm, Sweden.

Multiple sclerosis is an inflammatory, demyelinating disease of the central nervous system (CNS) characterized by a wide range of clinical signs1. The location of lesions in the CNS is variable and is a crucial determinant of clinical outcome. Multiple sclerosis is believed to be mediated by myelin-specific T cells, but the mechanisms that determine where T cells initiate inflammation are unknown. Differences in lesion distribution have been linked to the HLA complex, suggesting that T cell specificity influences sites of inflammation2. We demonstrate that T cells that are specific for different myelin epitopes generate populations characterized by different T helper type 17 (TH17) to T helper type 1 (TH1) ratios depending on the functional avidity of interactions between TCR and peptide-MHC complexes. Notably, the TH17:TH1 ratio of infiltrating T cells determines where inflammation occurs in the CNS. Myelin-specific T cells infiltrate the meninges throughout the CNS, regardless of the TH17:TH1 ratio. However, T cell infiltration and inflammation in the brain parenchyma occurs only when TH17 cells outnumber TH1 cells and trigger a disproportionate increase in interleukin-17 expression in the brain. In contrast, T cells showing a wide range of TH17:TH1 ratios induce spinal cord parenchymal inflammation. These findings reveal critical differences in the regulation of inflammation in the brain and spinal cord.

http://www.m3.com/tools/MedicalLibrary/nature/200803/nature_medicine/12.html

自分以外の人のためにお金を使うと一層幸せになる

(WebMD 3月20日)

もっと幸せだと感じたい?
それなら自分のために散財するよりも他者または慈善のために
お金を使うと、より良い気持ちになれる可能性がある。
このニュースは『Science』3月21日号で報告。

632名の米国人に、自分が全般的にどのくらい幸福かを評価し、
収入と支出(請求書、他者への贈り物、自分自身への贈り物、
慈善のための寄付を含む)を報告するよう要請。
最も幸福であった人々は最も多くを与えた人であり、
収入の額には関係なかった。

ブリティッシュコロンビア大学(カナダ)心理学部門のElizabeth Dunnらは、
「各人がどれだけ多くの収入を得たかには関係なく、
他者のためにお金を使った人々は、より大きな幸福を報告したのに対し、
自分自身のためにより多くのお金を使った人々はそうではなかった」。

ボストンにある会社の16名の従業員に対し、
会社から賞与を受け取る1カ月前に、自分がどのくらい幸福かを
評価するよう依頼し、賞与を受け取った6-8カ月後に同じことを依頼。
従業員らは賞与の使い道についても報告。

賞与を受け取った後に、より幸福であったのは、
賞与の中からより多くのお金を他者または慈善のために使った人々。
賞与の額が多いか少ないかは重要ではなかった。
小切手の額は問題ではなく、その使い道が問題。

調査は、あくまで1つの調査。
しかし人々が現金を手にし、それを日没までに使うよう命じられた時、
どんなことが起きるのだろうか。

Dunn博士らは、ブリティッシュコロンビア大学バンクーバー校の46名に
5ドルまたは20ドルを渡した。
現金と共に、それを午後5時までに使うようにとの指示を与えた。
一部の参加者には、家賃、請求書、自分自身への贈り物のために
お金を使うよう指示した。
他の参加者には、誰か他の人への贈り物を買うか、
慈善団体に寄付するように指示した。

現金を受け取る前とそれを使った後に行った調査によると、
今回も、その日の終わりに最も幸福であったのは、他者に与えた人々。
会社からの賞与の場合と同じく、金額は問題ではなかった。
人々はより良い気分になるために、20ドルを人にあげる必要はなかった。
5ドルでも効果があった。

「我々の知見は、支出の割り当ての5ドル程度のごくわずかな変化でも、
ある一日をかなり幸福なものにするのに十分である可能性があることを示唆」

Dunn博士のグループは、ブリティッシュコロンビア大学の学生109名に、
5ドルまたは20ドルを自分自身または他者のために使うと、
より幸福になるだろうと思うか質問。

ほとんどの学生の回答は的を外れていた。
「参加者は、お金が幸福に及ぼす影響について、二重に間違っていた。
大多数の人々は、自分個人のための消費によって自分はより幸福になり、
5ドルよりも20ドル使った方がより幸せになるだろうと考えていた」。

Dunn, E. Science, March 21, 2008; vol 319: pp 1687-1688.News release, University of British Columbia.

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=SPECIALTY&categoryId=580&articleLang=ja&articleId=69820

痛みの"運び屋"発見 岡山大、頭痛治療に期待

(共同通信社 2008年3月25日)

痛みにかかわる神経伝達物質の一種を運ぶタンパク質を、
岡山大の森山芳則教授(生化学)のチームが発見し、
米科学アカデミー紀要電子版に発表。

この運び屋タンパク質は、30年以上前から存在が知られていたが、
正体がつかめていなかった。
「小胞型ヌクレオチドトランスポーター(VNUT)」と命名。

痛みのほか血管収縮にも関係しており、
森山教授は「この働きをじゃまできれば、頭痛や高血圧治療に役立ちそう」。

森山教授らは3年前、このタンパク質をつくる遺伝子を人で偶然発見。
これが神経で働かないようにすると、
痛みなどを伝達する物質の一種ATPが、神経間でうまく伝わらないことを
人や動物の実験で突き止めた。

このタンパク質は、神経の末端にある「シナプス小胞」という
袋状の微小器官にATPを運び込む役割があり、
ATPは小胞に貯蔵された後、外部に放出されて痛みなどを伝達。
長浜バイオ大(滋賀県長浜市)との共同研究。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=69802