2010年1月23日土曜日

iPS細胞出現を撮影 数時間で変化開始、放医研

(2010年1月15日 共同通信社)

体細胞から、さまざまな細胞になることができる
新型万能細胞「iPS細胞」ができる様子を撮影したと、
放射線医学総合研究所が発表。

体細胞に4遺伝子を入れた後、早いものでは数時間で
iPS細胞への変化が始まることが分かった。
最終的に、iPS細胞になる頻度は低いが、
途中までは変化が進む細胞が多いことも判明。

同研究所の研究グループは、マウスの胎児の
線維芽細胞5千個以上に、4遺伝子を導入、
細胞培養装置に顕微鏡を組み込んで、
約10分間隔で2週間撮影。

細長い線維芽細胞は、分裂を繰り返すうちに
丸みを帯びた細胞になり、やがてiPS細胞の固まりを形成。

画像をさかのぼって分析し、最終的にiPS細胞になったのは、
どの細胞だったかも突き止めた。
体細胞に遺伝子を導入しても、どの細胞がiPS細胞になるかを
予測するのは難しく、これまで変化の様子を観察するのは困難。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/1/15/114394/

フォルシアのデラブリエールCEO「自動車部品でも業界再編」

(日経 1月7日)

自動車産業の世界再編が加速し、
その波が部品業界へも及びつつある。
電動化や新興国市場の台頭など、激変する自動車市場の中、
部品メーカーとしてどのような戦略を描くのか?
自動車部品大手、仏フォルシアのヤン・デラブリエール
会長兼最高経営責任者(CEO)に聞いた。

——現在の自動車市場の変化をどうとらえる?

「様々な変化の中、特筆すべきは2つ。
1つは環境、特に燃料消費の問題に大きく焦点が当てられる。
軽量化やパワートレーンの電動化など、
商品として変化が今後も一段と進む」

もう一方が新興国。
今回の経済危機の中、新興国の対処はこれまでとは異なっていた。
今までの経済危機では、真っ先に新興国が打撃を受けていたが、
今回は全く逆の構図。
これは、自動車業界に大きな影響を及ぼし、
すべてのメーカーの関心は特にアジアに向かっている」

——どのような対応をとるのか?

生産や開発、物流の効率やコストを、
世界中で最適化することが重要。
中国を旅するとよくわかるが、
欧米や日本と大差のない車が走っている。
これからは、新興国でも先進国でも、同水準の技術が
同時に求められるようになる。
当社も、中国やインドの技術拠点で、
グローバル共通のプログラムを採用し、世界同水準の対応が
可能な体制を築いている」

環境関連では、米国の排ガス浄化システムの
エムコン・テクノロジーズの買収契約を結んだ。
同分野での当社のシェアは大きく高まり、同分野では
世界をリードできると考えている。
こうした部品業界の再編の動きは、今後も広がる」

——変化の中で、どのような点に好機を見いだすのか?

「日本の自動車業界は、商品技術は非常に高く、
今後の成長も見込める一方、強固なサプライヤー基盤を
自前で持っており、日本の中での参入は難しかった。
新興国など、グローバルでの対応となれば、
我々にも新たな商機が巡ってくる」

——三菱自動車とPSAなど、完成車メーカーの再編が及ぼす影響は?

PSAと三菱自が関係を強化すれば、
我々にとっても日本メーカーとの取引を拡大するチャンス。
三菱自の欧州向けディーゼル車のエンジンを、PSAが供給することで、
当社も三菱自との取引が広がった経緯がある」

——業界再編の中で勝ち残りの条件は?

「当社は、事業規模を追求するためのM&Aで拡大してきた企業。
現在、欧米の自動車部品メーカーの多くは経営危機に立たされ、
再編機運は高まっている。
今回は、事業の合理化を前提に、キャッシュ流出などの面で
管理の行き届いた再編の時期にあり、
むやみやたらなM&Aはできない」

「技術の変化スピードも、ますます加速することは間違いない。
我々も経済危機の中、業界も大きな打撃を受け、
そこから回復する局面に。
その過程で、どこまでコストを抑制して新規の開発投資に
回せるかが生き残りの条件となる

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/interview/int100106.html

教員養成(8)経営学部で「体育」免許

(読売 1月16日)

体育系以外の学部・学科で、保健体育の教員を養成。

静岡産業大学磐田キャンパスで昨年11月、
経営学部の学生たちがテニスの授業を受けていた。
2人1組でのショートラリー、サービスの練習――。

ほとんどが初心者で、動きがぎこちない者も少なくない。
一見、一般教養科目のようだが、実は、教職課程の体育実技。
「生徒は苦手な種目だと、どうしても後ろに隠れてしまう。
そんな子にも目を配って、しっかりと教えないとだめだよ」。
窪田辰政専任講師(41)が指導法を伝えると、
学生たちは汗だくになりながらも、熱心に耳を傾けた。

同大は2006年、経営学部に新設したスポーツ経営学科に、
中学・高校の保健体育の教職課程を設けた。
今年度は、学科在籍学生のうち3割にあたる約200人が、
同教職課程を取っている。

同学科は、スポーツクラブ運営・管理者やインストラクター、
運動行事の企画者など、スポーツ産業で活躍する人材を
養成するのが目的。

スポーツ経営学、同産業論など経営学部ならではの専門科目と
並んで、スポーツ指導論や運動学などインストラクターに
なるために役立つ科目があり、これらの科目の大半が、
教員免許の取得に使える。

大坪檀学長(80)は、「一般企業への就職でも、
教員免許を持っていると有利。
スポーツ経営学科で、教員免許が取得できるのは、
学生にとってメリットがある。
多様な教員を育成する開放制の狙いにも合っている」

戸惑いやストレスを抱えている学生もいる。
窪田専任講師は、「必ずしも、体育が得意で入学してくるわけではなく、
経営の専門科目を学びながらの教職課程のため、
教員免許取得へのモチベーションを維持するのが難しく、
途中であきらめるケースも」

教員を目指して入学した同学科3年の大沢登さん(21)は、
「地域スポーツ運営など、学科で学んでいる専門知識は
教員として生かせると思う。
教員採用試験では、ハンデになるのではと不安」と、
複雑な心境を明かす。

札幌大学でも07年度から、文化学部文化学科スポーツ文化コースに、
中学・高校保健体育の教職課程を設けた。
同学部の瀧元誠樹准教授(40)は、
「スポーツ文化学という新たな学問分野を習得した
教員の輩出には意義がある」

文部科学省によると、体育系以外の学部・学科で、
中学・高校保健体育の教職課程認定を申請する
私立大学が増え始めたのは04年ごろ。

学部や学科の性格と免許状との関係が薄かったり、
十分な教員養成教育が行われていなかったりする大学もあり、
09年5月に認定基準が厳格化されるなどの動きも。
一般大学での教員養成のあり方が改めて問われている。

◆教職課程認定

中央教育審議会の答申を受け、文部科学大臣が認定。
08年現在、認定を受けた教職課程を持つ私立大学は、458校。
全私立大に占める割合は79.9%、
国立大の92.7%よりも10ポイント以上低いが、
1998年に比べ、国立大が3校減ったのに対し、
私立大は112校多い。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100116-OYT8T00291.htm

スポーツ21世紀:新しい波/331 ゴルフ世界戦略/2

(毎日 1月16日)

ゴルフが、五輪競技復帰を果たすに当たり、
IOCとの交渉役となった国際ゴルフ連盟。

米ツアーを中心に構成された組織の中、
異色の存在感を放つのが、米ジョージア州にある
オーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブ。
世界4大大会の一つマスターズ・トーナメントの開催コース、
一プライベートクラブが委員会の中で
大きな発言力を持つのはなぜか?

昨年4月、マスターズに石川遼が特別招待。
「彼はまだ17歳だが、素晴らしいゴルフをする。
その姿を、世界の人々に見てほしい」
オーガスタのメンバーで構成される大会主催者
「マスターズ委員会」のビリー・ペイン会長(62)。

ペイン氏は以前にも、ゴルフの五輪復帰を画策。
96年、アトランタ五輪開催にあたって、
ペイン氏が会長を務めた現地の五輪組織委員会が、
IOCにゴルフの公開競技採用を要請。
会場としてオーガスタを用意したが、最終的にIOC側が
クラブの閉鎖性を理由に反対、もくろみは実現しなかった。

ペイン氏は、多額の企業協賛金を集めて、
近代五輪100周年の記念大会を成功させた手腕を買われ、
マスターズ委員会のトップに就いた。

マスターズ委員会は近年、アジアに目を向けてきた。
04年、中国の張連偉、07年、インドのJ・M・シンを特別招待。
石川の出場も、その流れの中にある。

昨年10月、マスターズ予選を兼ねたアジア・アマチュア選手権
新設、中国で第1回大会を開催。
今年の大会は、日本での開催。

ペイン氏は、「一度でも公式に五輪種目となった競技は、
五輪で生み出される財政のいくらかを、IOCを通じて分配。
それこそが、より多くの国にゴルフを広める重要な方法となる」

いまだメンバーを男性に限るなど、米南部特有の保守性、
閉鎖性をかたくなに守る名門クラブといえども、
五輪を契機に門戸を開く用意があることをうかがわせる。

http://mainichi.jp/enta/sports/21century/

2010年1月22日金曜日

“ステルス小売”、コストコの実力

(日経 2010-01-09)

米国生まれの流通企業。
コストコ・ホールセールスが、日本でも人気。
週末ともなれば、低価格商品を買おうとする車客が
大勢押しかけ、渋滞が発生することもザラ。

消費者や飲食店が会員となり、食料品や日用雑貨類などを
低価格で販売するのが、コストコのビジネスモデル。
現在、北海道、千葉、埼玉、東京、神奈川、兵庫、福岡に
9店を展開。

基本的には、業務向け利用を想定し、大容量が基本。
枕のような肉の塊、座布団のような大きなピザ、
飲料もパック売りが大半。
少子高齢社会の日本では、多くのスーパーでは
少量パックが主流になりつつあるが、コストコはその正反対。

1999年、日本進出を果たした時の評判は、
「あんな大容量だったら、日本の家庭にある冷蔵庫に入らない。
日本では、受け入れられるのは難しい」という指摘。

それが今では、店舗周辺に渋滞を起こすほどの盛況ぶり。
買い物する姿は、家族連れのほか、
買い物仲間たちが集団でやってくる。
日本のスーパーにあるよりも1回り、2回りも
大きなショッピングカートに山積みになるほど買い込んでいく。

レジでの精算が終わると、買い物仲間は、欲しかった商品を
山分けするように“仕分け”作業に。
とても1世帯では食べきれない大容量の商品でも、
3、4世帯が山分けすればちょうどいい分量。

デフレ経済の中で、いかに安い商品を手に入れることができるか。
賢い主婦たちの腕の見せ所。
確かに、買い物上手な面はある。
コストコファンの会員と話しをすると、意外な答え。
「お店やメーカーに、自分たちの購買行動を知られなくてすむ」
という答え。

この店に入るには、会員になることが必要だが、
“共同購入”の場合、支払いは1人の会員の購買行動として
データは蓄積。
それ以外の買い物仲間は、匿名性が担保される。

今やスーパーなど、日々の買い物でもクレジットカードや
ポイントカードは欠かせない。
知らず知らずのうちに、どんな消費行動をしているのかが、
小売店やメーカーにフィードバック。
コンビニでも、レジには年齢層や性別のキーボードがある。

消費者は、自分の買い物行動が吸い上げられていることに
嫌悪感を抱き始めているのでは。
便利になった社会の代償として、監視・管理社会に。
ストレス発散にもなる買い物ですら、
消費者は苦痛でストレスに感じている証左。

コストコ人気は、「知られたくない」という消費者心理を
うまくくみ取って、日本の消費者に溶け込もうとしている。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/syohi/syo100108.html

新年に地球環境と暮らし方を考える

(日経 2010-01-11)

今年も、お正月はわが家でのんびりと過ごした。
最近お正月を迎えるたび、子供のころのお正月と
現在のそれとの違いが気になってしょうがない。

私の子供時代だから、50年以上前。
「もういくつ寝るとお正月~」と歌った時代。
今の子供たちには考えられないほど、お正月を迎えるのは
子供たちだけでなくみんなが楽しみに、
何となくワクワクとした気分であった時代。

大みそか遅くまで、おせち料理の用意に大忙しの母と
それを手伝っていた父、つまみ食いをして叱られたことなど。
元日は、近所の神社への初詣、凧揚げ、羽付き、
カルタ取り、まさに定番のメニュー。

テレビが、お正月のメニューに入ってきたのは、
私が高校生。
お正月は、世の中全体が「お休み」であった。
バスや鉄道は動いていたし、郵便局の方も
年賀状の配達があるから、働く方々にとっては休みではない。
友人のお父さんが運転手さんだったので、
お正月に家族一緒にお休みできないのが、
子供心に気の毒に感じた。
それを除けば、まさに町中がお休み。

私は田舎で育ったので、デパートの初売りなるものが
3日から始まることなど、関係なかった。
最近は、もう元日から開いているお店が少なくない。
デパートの初売りも2日から。

大手家電販売店が、元日を休みにしたことが
新聞で報じられる時代。
365分の1は0.3%弱に相当、1日休むと売り上げが
相応に減少する。
商店が全部休んでしまうと、困る人もいるのであろう。

しかしである。
一斉に休んでゆったりとした時間の流れを確認し、
休みでも困らないような、心がけと対応が出来ぬはずがない。

2度の石油危機のおり、石油不足からガソリンスタンドは
緊急対応の当番店を除いて、日曜日は一斉休業。
ネオンサインも、夜10時以降は消灯、テレビも深夜放送は禁止。
これは、緊急的避難対策として政府の指示で実行。

今とは車の数も違うから、同列に論ずるわけにはいかないが、
それで社会的混乱があったという記憶はないし、
私自身不都合を被ったという記憶もない。

ドイツでは、商店は夕方6時を過ぎると、みんな閉まってしまう。
6時を過ぎてお店に行くと、ショーウインドーの配置が絶妙で、
店の奥まで入って行って、品定めが出来る。
これが、ウインドーショッピングの可能な仕掛け。

フランスのパリでは、商店は日曜日はどうも休日らしい。
旅行者としてパリに行って日曜日に出合うと、
楽しみにしていた買い物はあきらめざるを得ない。
ドイツもフランスも、このような習慣は規則で決まっている。

お正月休みも、こうした営業時間のあり方も、
一昔前の日本では当たり前のこと。
お休みの日が、日曜ではなく水曜だったり、木曜だったり。

今年も、温暖化ガス削減目標を巡って
さまざまな議論がされるに違いない。
技術論、経済論、政策論など、いろいろな方策が論じられるが、
ぜひ社会制度の面からも、いろいろと議論をしてもらいたい。
そういった意味で、サマータイムも社会制度の一方策。

私たち一人ひとりが実感を持って参加できるような仕掛けを
ぜひ定着させたいものだ、
と思いを新たにしたお正月。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/tanso/tan100106.html

副作用少ない抗がん治療へ道 抑制酵素の仕組み解明…広大チーム

(2010年1月12日 読売新聞)

肺に深刻な副作用を起こす抗がん剤「ブレオマイシン」の
働きを妨ぐ酵素の仕組みを、広島大の杉山政則教授らが解明。

酵素の構造を調べるため、地球上では得られない
高純度なたんぱく質の結晶を、国際宇宙ステーション(ISS)で作製。
宇宙実験が成果につながった。

抗がん剤の働きを酵素でコントロールできれば、
副作用の少ないがん治療が期待。

ブレオマイシンは、がん細胞のDNAを切断する働きがあり、
食道がんなど広く治療に使われている。

肺に蓄積されやすく、正常な細胞のDNAも切断するため、
間質性肺炎を引き起こす副作用がある。

酵素は、杉山教授が1994年に発見、BATと名付けた。
ブレオマイシンとともに放線菌で作られる。
研究チームは、無重力下で不純物の少ない質の高い
結晶ができるISSでBATの結晶を作り、
大型放射光施設「スプリング8」で立体構造を解明。
BATは、ブレオマイシンをつかまえて、自分が蓄えている
有機化合物に反応させて、DNA切断機能を失わせていた。

杉山教授は、「構造がわかったので、ブレオマイシンの働きを
調節する薬の開発につながる」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/1/12/114250/

教員養成(7)私大も小学校教職課程

(読売 1月14日)

小学校教員の養成課程を設ける私立大学が増えている。

「鮮やかな色で、大きく描いたほうがいいんじゃない」、
「分かりやすく説明するには、どうしたらいいかな……」
アイデアを出し合いながら、画用紙に絵を描いたり、
写真を張ったり――。
早稲田大学教育学部の教室で、
初等教育学専攻の2年生たちが、夢中で作業。

対人関係能力の育成を狙った、生活科の授業。
「学生生活を支える人々」というテーマのもと、学生たちは
通学バスの誘導員や近くの飲食店店主など、
様々な人をインタビュー。
近く発表会が行われ、その準備をしている。
「授業を楽しみながら学ぶことを、子どもたちの立場になって
体験できるよう工夫した」。
指導する藤井千春・同学部教授(51)。

前身の高等師範部から、1世紀以上の歴史を誇る
同大の教育学部が初等教育学専攻を開設し、
小学校教員の養成に乗り出したのは2008年。
教育学や教育心理学、指導法などが専門の
元教員養成大学教授ら4人を招き入れた。
入学定員は30人、1年次から少人数指導を徹底。

同専攻2年の中江友里奈さん(20)は、
「きめ細かな指導を受けながら、いろんな教育問題について
クラスメートと議論する機会も多く、とても刺激になる」

教科専門科目について、非常勤教員のほか、理学科や社会科など、
学部内の他学科教員も指導に加わる。
小林宏己教授(56)は、「付属校をフルに活用できる
教員養成大学・学部に比べ、実践教育ではまだ劣るかもしれないが、
文系、理系ともに専門家がそろった教育学部教員陣の指導力を
生かすことができる」とアピール。

教員養成は、戦後の学制改革で開放制の原則が導入、
認定を受ければどの大学でも行うことが可能に。
小学校教員の養成は、「教員養成を主たる目的とする
学科等でなければならない」と規定、
中学校や高校教員の教職課程に比べ、
手厚い指導体制が求められた。
国による需給調整もあり、私立大学での小学校教員養成は抑制。

小学校教員需要の高まりを受け、
国は06年度分から定員抑制を撤廃。
大学全入時代の学生集めに悩む私立大学の多くが、
小学校教員の教職課程を設置。
文科省の調べでは、08年時点で小学校教員の教職課程を持つ
私立大学は118校と、1998年時点(40校)に比べて3倍。

東洋大学でも、文学部教育学科に初等教育専攻を開設。
文京区、荒川区など都内6区の教育委員会と協定を結び、
1年次から小学校での授業観察など体験型学習を取り入れている。

教育学科の宮崎英憲教授(66)は、
「特別支援教育や社会教育など、学科内の他専攻の
科目履修が可能、幅広く学べるのが強み」

私立大学の相次ぐ参入で、小学校教員の養成は
新たな時代を迎えている。

◆教員養成の開放制

文部科学大臣による教職課程の認定を受けることで、
教員養成大学・学部以外の大学でも
教員免許が取得できるしくみ。
幅広い分野から人材を求めることで、
高度な専門知識を持つ多様な教員を育成する狙い。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100114-OYT8T00384.htm

2010年1月21日木曜日

大手ゼネコン、不可避の「開国」

(日経 2010-01-12)

大手ゼネコンが、海外事業で大やけどする懸念。
頭打ちの国内建設市場に、半ば見切りをつける形で、
各社が海外受注拡大に拍車を掛けたのが5年前。

土木、建築ともに技術力の評価は高かったが、
労務対策や発注者の信用不安など、
リスク管理の面で思わぬトラブルに見舞われている。

前原誠司・国土交通相は、建設業界団体などとの会合で、
「国内ばかりに目を向けていないで、
海外でもうけることを考えては」と提案、
民族、風土の異なる国での事業の難しさを、各社は痛感。

「アルジェリア東西高速道路」という巨大プロジェクト。
東はチュニジア国境から、西はモロッコ国境まで、
アフリカ北部の砂漠の国アルジェリアを横断する
全長1200キロの高速道路建設計画。

3つに分けた工区のうち、最長の399キロの東工区について
鹿島、大成建設、西松建設、ハザマ、伊藤忠商事の
5社JV(共同企業体)が、2006年9月に発注者の
アルジェリア公共事業省と受注契約を結んだ。

日本の5社JVの名称は、「COJAAL(コジャール)」。
06年、国際入札では米べクテル、中国系の2つのJV、
イタリア系JVの4者を下した。
受注金額は、3410億ディナール(約5400億円)。
入札金額は最も高かったが、技術評価が最高で、
優先交渉権を得た。

アルジェリアは地震が多く、日本勢が得意とする耐震設計技術が
決め手の一つになった。
受注契約の翌月に着工、予想を上回るもろい地質や
悪天候などで工事は難航。

大きな障害となったのは、テロ対策。
用意されていた図面が古く、新たに航空測量を行おうとしたが、
反政府ゲリラに狙われるとの理由で、
飛行許可がなかなか下りなかった。
発破作業で必要な火薬も、政府軍の厳重な管理下にあり、
必要な量を確保できなかった。

昨年、COJAALの工区で暴動が起きた。
工事現場から数百メートル離れた自宅にいた20歳代の女性が、
発破で吹き飛んだ石に当たって死亡したことが引き金に、
周辺住民が押し寄せて建設機械に放火、
町役場を占拠して公文書などを燃やした。

女性の死因と工事との関連性は明確ではないが、
COJAALは発破作業を行っていたのは事実、
女性の遺族に謝罪して補償をした。

こうした一連のトラブルで、工事は遅れている。
計画では2010年1月に完成予定、
昨年12月初めの時点で工事進ちょく率は約60%。
鹿島の中村満義社長は、「工事は約1年遅れており、
工事損失発生の可能性は(交渉で)努力している時点」。

COJAALのJV出資比率は、鹿島と大成建設がそれぞれ37.5%、
西松建設が15%、ハザマが5%、
ウエートの高い鹿島と大成の株価の下落要因として、
「アルジェリアでの損失懸念」を指摘する声。

海外工事での苦戦は、これだけではない。
オイルマネーのバブルがはじけたUAE・ドバイにも、
大手ゼネコンの懸案。

代表格は大林組、鹿島、三菱重工業、三菱商事、
トルコのヤピ・メルカジ社の5社が、2005年にJV受注した
ドバイ都市交通システム(ドバイ・メトロ)。

当初は、東部のドバイ国際空港からジュベルアリ経済特区まで
52キロを約1時間で結ぶ計画。
全自動無人運転システムとして、世界最長路線というのが
売り物、昨年9月に一部開業。

当初の受注金額は3600億円、06年の追加受注で4900億円となり、
昨年8月時点では7200億円と、当初のほぼ2倍の規模。
路線延伸(全長74キロ)や駅の増設、デザイン変更、
歩道橋の追加などが工費膨張の要因。

費用が増加しても、支払ってもらえるならば問題はないが、
ドバイ・メトロの場合、工事に使用する材料の仕様について
発注者のドバイ政府道路輸送局(RTA)とJV側の解釈が一致せず、
RTAは膨らんだ工費と契約額の差額の支払いに応じない姿勢。

年明け6日、JV側は工事関係者による緊急会議を開き、
「工費の支払い遅延が続き、債権回収のための交渉を
打開するため」と、工事の一時中断を決めた。

未回収の債権額は、昨年10月時点で計52億ドル(約4800億円)。
今後の交渉の成り行き次第では、JV側の損失が
1000億円単位になる可能性も。

ドバイ・メトロでも、受注の決め手になったのは、
東京の臨海副都心を走る「ゆりかもめ」などで実績を積んだ
三菱重工の無人運転システムの技術。
400両近い電車車両は近畿車両が製造し、
変電設備は明電舎が納入。

タイ・バンコクの地下鉄工事での大林組の実績も評価、
2番札より3割以上安い価格を提示、
独シーメンスや仏アルストムなど欧州勢を蹴落として、
中東での大型プロジェクトをモノにできた。

アルジェリアやドバイでの損失懸念で、大手ゼネコン各社は、
アクセルを踏んできた海外工事受注の拡大戦略を見直す動き。

ここで尻尾を巻いて、逃げ出してしまって良いのかどうか。
「失敗は成功のもと」と受け流すには、余りに損失が巨額だが、
大やけどの経験を踏まえ、今後のプロジェクト管理の態勢を
再構築すれば、1000億円を今ドブに捨てたとしても、
将来その出費が生きてくる。

鹿島では、アルジェリア高速道路の工事のためのスタッフを
募集したところ、若手を中心に応募者が次々に手を挙げ、
現在100人弱の技術者が現地入り。
海外プロジェクトに対する社員の関心は高く、士気も旺盛。

建設経済研究所の予測では、
2010年度の国内建設投資は41兆6000億円。
これは、ピークの1992年度の84兆円の半分に満たない。
縮小する一方の国内市場をみれば、大手ゼネコンの
今後の成長は海外戦略なしにはあり得ない。

自民党政権下でほぼ半世紀続いた「土建国家」は、
ダムや道路、橋梁などプロジェクトを次から次に創出することで
建設需要を賄ってきたが、世界最高峰の建設技術を持つ
大手ゼネコンを国内市場に閉じ込めてしまっていた。

民主党政権の「コンクリートから人へ」は、ゼネコン業界の
“開国”を意味すると考えて良い。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/mono/mon100108.html

「鈍感力」から金の卵 ダチョウを愛して 「暮らし大国 挑む人々」「研究室を飛び出して」ウイルス研究の塚本康浩・京都府立大教授

(2010年1月12日 共同通信社)

ダチョウの卵から、新型インフルエンザなどのウイルス抗体を
世界で初めて開発した、
京都府立大教授の塚本康浩(41)。

抗体を使ったマスクは6千万枚売れ、文字通り「金の卵」に。
病気やけがを物ともしないダチョウの「鈍感力」を愛した男は、
逆境をひょうひょうと生き抜いてきた。

▽テーマは後付け

身長2・5メートル、体重150キロ超。
時速60キロで走る最強の鳥類、ダチョウ。
寿命は60年、重傷も数日で治る生命力も持つ。

「あの巨体で、脳みそはネコなみの小ささ。
とてつもない力があるのに、アホゆえに日陰の道を歩んできた。
そこが面白い」

のんびりした風ぼう、口調。
少年時代から鳥好きで、最初はニワトリの専門家に。
大学というヒトの群れに息苦しさを感じ、
神戸市のダチョウ牧場に入り浸るように。
何も考えずに走り回るダチョウに、心がいやされた。

「眺めているうちに、飼いたい気持ちを抑えられなくなって。
研究テーマは後付けで考えた」

▽コロンブスの卵

当時、鳥インフルエンザの世界的流行が始まっていたが、
免疫力の強いダチョウの感染例はほとんどなかった。

「血液からウイルス抗体を作ろうと。
実験には、多くのダチョウを殺さないといけない。
大変な作業の割に、取れる抗体もわずかだった」

行き詰まる研究。
協力していた牧場も、ダチョウ肉が全く売れず閉鎖を検討。
孤立無援の状況だったが、塚本の心は折れなかった。

卵を使ったらどうや、とひらめいた。
鳥は、抗体を卵の中にも作る。
ダチョウの卵は巨大で、年100個も産むから、
大量の抗体が取れる」

鳥インフルのウイルスを雌に注射し、卵の黄身から抗体を抽出。
「コロンブスの卵」のアイデアを、2年がかりで実現。

▽大変な方がおもろい

最終実験を行ったのは、鳥インフルが猛威をふるうインドネシア。
現地の研究所で、ウイルスに感染したひよこに、
ダチョウ抗体を注射。
3日後、研究所に戻ると、助手が弾んだ声で叫んだ。
「先生、全部生きてますわ!」

研究成果を知った企業から、オファーが次々舞い込んだ。
クロシード(福岡県飯塚市)と昨年開発したマスクは、
表面に新型インフルに対応するダチョウ抗体を塗り、ウイルスを阻止。
爆発的ヒットに。
フィルターに抗体を塗った空気清浄器も、富士フイルムと開発。

「ダチョウは、飢えて命の危険を感じるときの方が卵を多く産む。
人間も、大変な時代の方がおもろいビジネスが出てくる」

今、完成を目指しているのは、
鳥インフルのワクチンと肺がんの特効薬。
ダチョウは人類を救うのか-。
そんな期待をよそに、彼らはきょうも気ままに走り回っている。

※塚本康浩氏略歴

68年京都府生まれ。大阪府立大卒。
同大准教授を経て、08年から現職。
獣医師で、ダチョウ製品を開発する企業も経営。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/1/12/114242/

植物が理想的人工骨に 伊研究チームが開発

(2010年1月12日 共同通信社)

イタリアの研究グループが、編みかごや家具に使われる
植物のトウなどを用い、従来のセラミックや金属製を上回る
理想的な人工骨の開発に成功。
耐久性や強度、人骨とのつながりやすさなどが優れている。

開発したのは、北部ファエンツァの
セラミック素材科学技術研究所などの研究グループ。
既に、羊を使った動物実験に成功、
2011年にも人体への臨床実験を始めたい。

詳しい製造方法は明らかにしていないが、
トウを炉内で高温高圧下に置くなどの方法で
化学変化を起こさせ、1週間ほどかけて製造。

羊の骨につないだところ、完全に生体の骨と同化。
植物にある無数の小さな穴を、血管や神経が通ることで、
生体との親和性が高まると考えられている。

従来の素材を上回る強度もあり、人工骨としては
完ぺきに近い特性を備えていた。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/1/12/114200/

教員養成(6)小学教員に得意分野

(読売 1月13日)

教科専門教育を重視し、得意分野を持った小学校教員を養成。

「数式を出す前に、なんでそうなるんか自分でよく考えて。
図をかいてもいいし、絵でもいいよ」
大阪市立大江小学校。
大阪教育大学4年の二井健一さん(22)が、
教育実習で教壇に立っていた。

黒板と机の上のノートをにらめっこしながら、
問題に取り組む児童たち。
「先生できた」。
しばらくして1人の男子が大きな声で手を挙げると、
「はい」「はい」「はい」――。競い合うように挙手が続く。
児童が黒板に答えを書いている間も、
別の児童が自分の考えを聞いてほしいと訴えるなど、
教室内は終始、活気にあふれていた。

二井さんは、小学校教員養成課程の数学専攻。
教科専門の「問題解決型の算数授業の進め方」を研究テーマに、
昨年9月から毎週1回大江小に通い、
算数の教材研究や実習などを行っている。

今年4月から小学校教員になる二井さん。
「教科の専門性を高めてきたおかげで、子どもたちに
自ら考えさせる授業がいかに重要かが分かった。
得意な分野を持つことを強みとして、頑張りたい」と意欲。

同大の小学校教員養成課程では、戦後の学制改革以来、
特定教科を重点的に学ぶピーク制を採用。
学生たちは、教職と全教科の基礎科目を履修したうえで、
専攻する教科の専門知識や指導法を深めている。

長い年月にわたって務めを果たせる教員を養成するには、
理論を中心とする学問的素養を身につけさせることが重要。
本学の教科専門が目指すのはこの点で、
学校現場に即戦力として送り出すためではない」
長尾彰夫学長(63)は、実践力偏重の教育とは距離を置く。

同大の卒業生に占める教員就職率はここ数年、
60%台半ばで推移し、全教員養成大学・学部の中で
上位を維持し続けている。
教員に正規採用された者の数は毎年270人前後で、
4年連続全国1位。

来年度から、教科専門教育をさらに重視したしくみに改編。
従来は、小学校と中学校の2課程内にそれぞれ教科別専攻を
設けてきたが、改組後は国語、社会、数学などの教科別専攻を
柱とし、その下に小学校と中学校の2コースを設ける。

「教員養成大学・学部の統廃合が進む一方、
小学校教員養成課程を新設する私立大学が増え、
われわれの存在意義が問われている。
今こそ、教育の特色を鮮明に打ち出していかなければならない」
長尾学長は力を込める。

教科専門教育の伝統は、教育環境の変化を
冷静に受け止めながら、さらなる進化を続けている。

◆ピーク制

全科担任が原則である小学校教員の養成課程で、
全教科の基礎を学んだうえで、特定の教科や分野について
深く専門的に学ぶしくみ。
比較的規模の大きい教員養成大学・学部で導入している
ケースが多く、課程内に国語、社会、理科など
教科別の専攻やコースを設けている。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100113-OYT8T00202.htm

2010年1月20日水曜日

スポーツ21世紀:新しい波/330 ゴルフ世界戦略/1

(毎日 1月9日)

石川遼が出場し、日本でも注目された米国選抜と
世界選抜(欧州を除く)との団体対抗戦
「プレジデンツ・カップ」(昨年10月・米サンフランシスコ)。

華やかな大会前夜祭で、日本ゴルフツアー機構(JGTO)の
小泉直会長(70)に、米プロゴルフ協会(PGA)の
ティム・フィンチェム・コミッショナー(62)がある提案。

「2015年に、プレジデンツ杯を日本で開きたい。
協力してもらえないか」
その直後、IOCは、16、20年夏季五輪での
ゴルフの実施競技復帰を正式決定。

94年に始まったプレジデンツ杯の開催地は、
米国、カナダ、豪州などいずれも英語圏。
大会の知名度を考えても、他地域での開催は
スポンサー確保などの面で困難と指摘。
そんな中、日本側への異例の売り込みに、
小泉会長は、「五輪復帰の動きと無関係ではない」

「打診は、米ツアーがアジア市場に目を向け始めた証拠。
一大イベントを契機に、アジアに急速に
アプローチをかけてきている」と分析。

ゴルフの五輪復帰をIOCに強く働き掛けたのは、
国際ゴルフ連盟(IGF)。
交渉役を務めたのが、PGAの副会長でもあるタイ・ボウトウ氏(47)。

ボウトウ氏は、37歳で米女子プロゴルフ協会(LPGA)コミッショナーに
就任し、低迷していた米女子ツアーを復興。
06年、男子ツアーからヘッドハンティングされ、
フィンチェム氏の片腕。
IOCとの交渉カードとして、多額の放映権料が期待できる
トップ選手が、五輪に参加できる環境整備を
強力に推し進めたのも、ボウトウ氏。

米ツアー主導で進んだ五輪復帰活動。
その背景を、小泉会長は「ここ数年、世界をリードしてきた
米ツアーの弱体化が目立ち始めたから」とみる。

ゴルフが、1904年セントルイス大会以来となる五輪復帰。
五輪が、ゴルフを選んだ意味は?
ゴルフ界が目指す方向や日本が抱える課題を探った。

http://mainichi.jp/enta/sports/21century/

マウス内臓細胞、生きたまま観察 三重大、システム開発

(朝日 2010年1月9日)

生きたマウスの内臓の細胞を、レーザー顕微鏡を使って
観察するシステムを、三重大医学部の楠正人教授
(消化管・小児外科学)の研究グループが開発。

生体内で、がん細胞が転移する様子を観察でき、
新薬開発に役立つ。
日本消化器病学会の英文誌(電子版)。

楠教授らは、生きたマウスを固定した
「2光子レーザー光学顕微鏡」の振動を吸収するシステムを開発。

同顕微鏡では、体の表面から1ミリの深さにある細胞の活動を
見られるが、内臓は動脈の拍動や呼吸などで絶えず振動し、
生体での観察は不可能。

カメラの「手ぶれ補正機能」からヒントを得て、
マウスを固定する台と顕微鏡を同じように振動させることで
ぶれをなくし、生きたマウスでも肝細胞や大腸の細胞の活動を
観察することを可能にした。

楠教授らはこのシステムを使い、生きたマウスで脾臓から
肝細胞へがんが転移したり、潰瘍性大腸炎が発生したりする
様子の動画撮影に成功。

楠教授は、「病気のマウスに薬を投与した際の反応を瞬時に
見ることもできる。新薬の開発に応用できる」

http://www.asahi.com/science/update/0107/NGY201001070013.html

中尊寺が新本尊を造立へ 2年後の完成を予定

(岩手日報 1月9日)

平泉町の中尊寺(山田俊和貫首)は、
阿弥陀如来像に代わる新たな本尊として、釈迦如来像を造立。

8日に同寺で開いた金盃披きの席上、
山田貫首が明らかにした。
新たな本尊は京都で造られ、2年後の完成を予定。
丈六の釈迦如来像は、奥州藤原氏の初代藤原清衡が
平和を願い、中尊寺を建立した際、
最初に着手した多宝塔の本尊とされる。
現在の本尊阿弥陀如来像は、12世紀平安時代の作。
丈六仏で、高さ約2・7m。
国の重要文化財に指定。

1955年、同寺の宝物館「讃衡蔵」が建立された際、
保護のため本堂から讃衡蔵に移った。
2008年、平泉文化の世界遺産登録の取り組みを受けて、
約50年ぶりに本堂に還座し、多くの参拝者が手を合わせた。
山田貫首をはじめ、一山の僧侶の
「本堂にいま一度、丈六仏を奉安したい」との願いもあり、
清衡の願いを反映する丈六の釈迦如来像を
新たに造立することになった。
山田貫首は、「新たな本尊の元で修行し、
中尊寺の心を世界に発信したい」と願っている。

教員養成(5)「触れ合い」へき地で学ぶ

(読売 1月12日)

へき地での実習で地域と触れ合い、教職のやりがいを知る。

「子ども一人ひとりと向き合って授業を進める、
複式学級の難しさとやりがいを実感できた」、
「保護者や地域の人と触れ合い、
学校と地域とのつながりの深さを知った」

北海道教育大学札幌校で開かれた
「へき地校体験実習」の報告会。
同8月下旬から9月にかけて約1週間、道内のへき地にある
小規模校で体験実習した学生約30人が、学んだことなどを発表。

実習は、道内の小・中学校1994校のうち、ほぼ半数の963校が、
へき地指定学校という特殊事情を踏まえたもの。
複式学級などでのきめ細かな指導や、地域と連携した学校運営を
学ぶのが目的。
岩見沢校で1978年スタート、2006年大学再編で本格導入。
へき地校へのマイナスイメージ解消という狙いも。

2、4年生の希望者が対象で、実習中、
学生たちは学校や公民館に宿泊。
2年生は、複式学級の授業を週1時間、
4年生は、期間中の全授業で教壇に立つ。
授業実習以外にも、一緒に芋掘りや虫捕りをしたり、
夏祭りに参加したりして、子どもを見る目を養い、
へき地という地域を学ぶ。

実習担当の前田賢次・同大准教授(43)は、
「札幌市など都市部出身の大多数の学生にとって、
へき地での教育の特性や、そこで暮らし、学ぶ子どもたちを、
実体験から理解することは大切。
実習は、教員になってからの実践に大いに役立つはず」

教育臨床専攻2年の川田恵子さん(20)は、
渡島半島北部の人口約6000人の今金町にある
町立種川小学校で、1、2年生合わせて8人の複式学級で実習。
「学年ごとに異なる単元を、時間内に配分して教えるのが難しかった。
児童それぞれの習熟度に合わせた授業の展開など、
小規模校だからこそできる教育を学べた貴重な体験だった」

道内で教員になれば、へき地に赴任する可能性は高い。
同大からは毎年、卒業生で教職に就いた者の約8割にあたる
400人前後が道内で採用。
前田准教授によると、近年は、子どもとの距離が近い、
住民との触れ合いがあるなどの理由で、
へき地校勤務を望む者が増えてきていることもあり、
毎年200人程度がへき地での実習を希望。

受け皿には限界があり、今年度、実習を体験できたのは、
希望者の半数程度の97人。
教員養成課程2学年の学生数の1割にも満たなかった。
「実習協力校を増やすのが、今後の課題」と前田准教授。

全国へき地教育研究連盟の安谷功事務局長(77)は、
「へき地校は、不便さもあるが、特殊な指導技術が
求められるため、赴任したがらない教員も多い。
学生さんに、へき地の教育事情を知ってもらうことはとても重要」

◆へき地指定学校

へき地教育振興法に基づき、各都道府県の条例で
指定された公立小・中学校。
都道府県や市町村には、教育の特殊事情に適した学習指導の
調査研究や教員の研修などが義務付けられている。
全学校数に占める割合が最も多いのは北海道で、
次いで鹿児島県、高知県の順。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100112-OYT8T00272.htm

2010年1月19日火曜日

温泉の健康効果をまとめた無料ガイドが登場 温泉の効能、入浴法などを解説

(日経ヘルス 12月28日)

新潟県南魚沼地域で、地域密着型の「健康づくりプログラム」を
推進する「天・地・健康人コンソーシアム」は、
同地の温泉資源とその健康効果をまとめた温泉ガイド
「入浴アドバイザーが伝授する!
雪国魚沼の大地 温泉に育まれる健康づくり」を制作、
市役所や観光案内所、南魚沼市内の温泉施設などでの
無料配布を開始。

同ガイドは、「温泉の効能」、「温泉の種類」、
「各泉質の特徴と新潟県の温泉地」、「効果的な温泉の入り方」、
「入浴にあたっての注意事項」、
「温泉を有効活用するための入浴のペース」、「ダイエットの達人」、
「これからの温泉療養」、「温泉成分表」などから構成、
温泉による健康づくりを支援する内容が中心。

「温泉の効能」では、温泉が体によい理由として、
(1)温泉地の自然環境、
(2)温泉成分の薬理作用、
(3)お湯の物理的作用、の3つを挙げ、
これらが総合的に体を刺激することで、人間が本来持っている
自然治癒能力を高める。

具体的には、自律神経系、ホルモン分泌系、免疫系などを整え、
体調を健康状態に導く。
自律神経系への働きでは、42℃以上の高温浴では交感神経が、
37~40度の温浴・微温浴では副交感神経が優位に立つので、
目的に応じた入浴方法を提案。

ガイドの監修および編集を担当した市立ゆきぐに大和病院
(南魚沼市)副院長で、温泉療法専門医の長嶋起久雄氏は、
「温泉には、転地効果や薬理効果など多様な健康効果が確認。
今回のガイドを通じて、こうした健康効果とあわせ、
効果的な入浴方法や泉質の特徴などを伝え、
地域の健康づくりに貢献していきたい」

http://nh.nikkeibp.co.jp/article/nhpro/20091228/105401/

アレルギー治療のカギ?新種リンパ球発見 慶大

(朝日 2010年1月8日)

慶応大学の茂呂和世研究員らは、
免疫を活性化させるたんぱく質を大量に作り出す
新種のリンパ球を見つけた。
「ナチュラルヘルパー(NH)細胞」と名付けた。

将来、花粉症やアレルギー疾患を治療する手がかりになりそう。
英科学誌ネイチャーに論文が掲載。

リンパ球は、B細胞、T細胞、NK細胞などに分けられる。
グループは、マウスの腸の近くの脂肪組織から、
新種の細胞を発見した。

マウスにこの細胞があると、免疫を活性化させるたんぱく質
Th2サイトカインが大量に作られ、NH細胞と名付けた。
ヒトにも、NH細胞と思われる細胞を確認。

体内に、Th2サイトカインが増えすぎると、
花粉症や食物アレルギー、ぜんそくなどを起こす。
小安重夫・慶応大教授は、「NH細胞を制御できれば、
アレルギー疾患の治療に役立つかもしれない」

http://www.asahi.com/science/update/0108/TKY201001080111.html

教員養成(4)実験重視で理科に強く

(読売 1月9日)

理科に強い教師を育てる教員養成大学・学部がある。

宮城教育大学は、緑豊かな青葉山の一角に。
実験棟を訪れると、学生たちが、熱した水に硝酸カリウムなどの
試薬を溶かして、結晶の溶解度を調べる実験に取り組んでいた。
試験管を振って溶液を確認したり、天秤で試薬を量ったりする
表情は、みな真剣。

実験に参加していた初等教育教員養成課程理科コース2年の
佐藤舞さん(21)は、「理科は好きですが、高校まで実験の機会が
少なかったので、自分に教えられるのかという不安も。
様々な実験や野外観察を体験し、自信もついてきました」と笑顔。

理科コースは、小学校で理科教育の中心的役割を担える
人材の育成を目指し、2007年度に新設。
それまでの教員養成課程を初等、中等の2課程に分け、
初等教育にも理科をはじめ、国語、社会など14のコースを設けた。

理科コースでは、生物、化学、物理、地学の各分野について、
基礎知識の習得とともに、実験や青葉山の自然環境を生かした
野外観察・調査を重視。
初等教育課程では、理科コースだけでなく、
すべての学生に、理科実験を必修とした。

文系の学生が多いうえ、ゆとり教育の影響で、
高校までに理科で学ぶ内容が減っていた。
新学習指導要領では、学ぶ内容が増えている。
教員になれば、それを教えなくてはならず、
理科教育の充実は緊急課題」と、池山剛教授(54)。

山梨大学教育人間科学部は、今年度から、
山梨県教育委員会、同県立科学館と連携し、
理科指導に優れた教員を育成する教育プログラムをスタート。
独立行政法人・科学技術振興機構が進める
コア・サイエンス・ティーチャー養成拠点構築事業として採択。

野外での動植物や鉱物の観察・調査をはじめ、
光合成色素分析、気体発生など、小中学校理科をより深めた
内容の実験、移動プラネタリウム実習などを実施。
学校教育課程の2年生10人と、県内の30、40歳代の
公立小・中学校教員10人の計20人が参加。

来年度までの試行期間を経て、3年間の本格実施に
移行する計画。
松森靖夫教授(53)は、「体験学習を通して、学生たちは
科学への関心をいっそう高め、理科にたけた教師を志す
モチベーションの向上にもつながっている」と効果を強調。

同機構と国立教育政策研究所が実施した08年度
「小学校理科教育実態調査」によると、学級担任として
理科を教える教員の約5割が、理科の指導に苦手意識を、
約7割が、指導に必要な知識・技能の不足を感じている。

高校までの学習不足を補ったうえで、
理科を得意とする教師をいかに育てていくか?
取り組みは、まだ始まったばかりだ。

◆コア・サイエンス・ティーチャー

地域の理数教育において中核となる小・中学校教員。
独立行政法人・科学技術振興機構が、学生と現職教員を対象に、
大学や教育委員会などと連携し、養成拠点の構築を進めている。
現在、教員養成大学・学部を中心に全国16大学で、
育成プログラムが実施。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100109-OYT8T00182.htm

夢を紡ぐ:地球に優しい新技術/6 げっぷ抑えメタン減らす飼料 海外から熱い視線

(毎日 1月13日)

◇丸紅・機能化学品部副部長、伊東宏明さん(52)

岐阜県海津市にある「川瀬牧場」。
風通しのいい牛舎で、60頭を超すホルスタインが
のどかに飼料を食べる。
この飼料は伊東宏明さんが、
飼料会社を通じて販売する特別のもの。
「あれが、状態のいい緑褐色のふん。
飼料に含まれる繊維がちゃんと消化されている」

その秘訣は、BLCS(微生物利用の家畜清浄システム)
呼ばれる家畜の飼料。
乳酸菌やバチルス菌など、数種類の微生物を含有。
牛など反すう動物のげっぷに含まれるメタンガスの抑制に加え、
栄養素の消化・吸収力の向上、
ふんの消臭効果まである「夢の飼料」。

いま、海外の熱い視線が集まっている。
メタンの排出量の4~5割を、家畜のげっぷが占めるとされる
ニュージーランド政府が03年、牛などの農家に
「げっぷ税」を課す検討をしたことがある。

伊東さんは、台湾系のベンチャー、日本仁安堂薬健が開発した
BLCSを聞きつけ、05年販売権を取得。
飼料会社と協力し、BLCSと通常の飼料を混ぜた混合飼料を開発。
しかし、農家の関心は薄かった。
「まず裏付けデータを取って、効果を数字で見せよう」

06年、日本畜産学会。
畜産界の権威、帯広畜産大学の高橋潤一教授が、
仁安堂のBLCS入りの混合飼料を牛などに食べさせた
実験結果を発表。
牛の胃液に含まれるメタンガス含有量が通常に比べ、
37・5%も削減されたとの結果。
混合飼料には、消化・吸収力アップで生育を早める効果も。

川瀬牧場では、混合飼料を使いだしてから、25L程度だった
牛の平均乳量(1頭当たり)が30Lを超え、
お産の回数も2~3回から3~3・5回に増えた。

国内販売は、月十数トンと低迷したままで、
国内の事業化の道はおぼつかない。
国の補助金がつく通常の肥料に比べ、5%もコスト高に。

最近、「生育力アップ」、「消臭」効果で、
中国への売り込みが奏功しつつある。
すでに、大連の一部酪農家と取引を始めた。
内モンゴル自治区の「蒙牛」など、大手2社とも商談を始め、
年内の本格進出も見えてきた。
「海外で成功すれば“逆輸入”も可能」。
暗いトンネルに光が差してきた。
==============
◇げっぷ抑えメタン減らす飼料

牛や羊など反すう動物のげっぷには、第1胃で繊維を
消化する際に発生するメタンガスが含まれる。
メタンの温室効果は、CO2の二十数倍に上り、
その15%が反すう動物のげっぷ。
世界全体の温室効果ガスで見ると、げっぷは3~5%を占め、
最大の発生源とも指摘。
メタン抑制の研究が続き、複数の微生物を混合した飼料もその一つ。
抑制効果の定量化など、ハードルも残されている。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2010/01/13/20100113ddm008020086000c.html

2010年1月18日月曜日

研磨極める大津技研「工程を壊せ」

(日経 2010-01-05)

研磨という、地味な業界で究極の生産性を追求する会社。
熊本県の大津技研(大津町、木村幹男社長)。
同社を引っ張ってきたのは、専務の木村哲也氏(43)。

溶かした金属を、金型に注ぎ込んで作る自動車用ダイカスト部品。
これが、大津技研の工場にどんどん運び込まれる。
工場では、ダイカスト部品の製造時にできたバリを、
タガネやヤスリで取り除く。
高速回転するグラインダーで羽布(バフ)加工、表面を磨き上げる…。

同社には、際立って異なる点。
手を止めている作業者が皆無であること。
朝から晩まで、部品の流れが瞬時も滞ることがない。
同業者も、全国から見学に来て、効率のよさに一様に驚く。

秘訣は、各々の従業員の作業時間を徹底して
均等にしていること。

ある作業者が、どのバリをタガネで落とし、
次の人は別のどのバリに電動ヤスリをかけるか—。
作業の配分を工夫するほど、時間の無駄はなくなる。

「工程は壊せ」。
こんな発想も打ち出す。
決めた作業分担でも、実際にやってみて、
作業時間にデコボコができることがある。
予想外に時間のかかる工程の前工程の従業員は、
無意識のうちに動作を遅らしがち。

前工程の従業員には手を緩めさせず、
あえてラインの中に“滞貨”を作る。
ボトルネックとなる場所を早期に発見、管理職が応援に入るなど
ラインスピードを落とさないよう対応。

時には、部品の渡し方も変更する。
次の従業員がすぐに作業に入れるよう、部品の上下、裏表を
考えて手渡すのが基本マナー。
ある工程の時間が標準以上にかかる際、
マナーにはこだわらず、一番時間のかからない方法で部品を渡す。
次の従業員は、ヤスリがけに入る前、部品をひっくり返す動作が
必要になるが、待ち時間はなくなり流れは止まらない。

同社が優れているのは、一人ひとりの従業員の能力を
見極めて配置を決めること。

すべての工程の作業時間を完全に同じにでき、
すべての従業員が同じ時間である工程をこなせるのが理想。
能力に応じて、工程の分担を変える。
ある従業員が休んだ場合、代打の人の能力に応じて分担を変える。

機械と人の関係も工夫。
バリ取りロボットも導入。
ダイカスト部品は、製造時の状況や金型の経年変化で、
ほんのわずかだが形状が変わることが多く、
それに応じてロボットへの指示も年中変える必要。

同社は、形状が変化しにくい部分だけはロボットで加工し、
変化しやすい部分は人の手で処理する仕組み。
ロボットに入力し直す手間と時間は不要。
ロボットと人の作業に、必要な時間をすり合わせ、
双方の待ち時間をゼロにすることは同じ。

ロボット以外に、簡単なバリ取り専用機も自社開発。
市販の数値制御装置付きの工作機械を使う手もあるが、
あまりに高価。
バリ取り専用の安価な装置を設計。
自動車産業の振興を狙う熊本県は2005年、
この装置の開発に、500万円の補助金を支給。

研磨業界は賃加工。
納入先に見積書を出す際、部品1つの研磨にかかる作業時間と、
賃率(労賃の秒当たりの単価)を提示。
「ウチの賃率を見て、『普通の会社と比べかなり高い』と
不満を漏らす購買担当者もいる」と木村専務。
そんな時、「作業時間も見てほしい。他社の半分でしょ」と答える。

見積金額は、時間と単価の掛け算。
「結局、ウチの方がはるかに安い」。
大津技研は、際立つ生産性の高さを武器に伸びてきた。
ホンダの協力工場としてスタートしたが、
2000年から、ヤマハ発動機の熊本の生産子会社から注文。

自動車産業では、「系列」がやかましい。
ホンダとヤマハは、1980年代に激しい二輪車戦争を繰り広げた。
系列を超えた取引は、当時の新聞で大きく取り上げられた。

同社にとって、「時間単価の高さ」にも大きな意味。
きめ細かな工程管理は、現場の従業員が相談、生み出している。
従業員は毎日、きめ細かな日報をつけ、作業班ごとの
売上高と収益性を自らチェック。
従業員の高い士気は、「高い時間単価」が支える。
高い士気が、「高い時間単価」を生むという好循環に。

なぜ、こんなユニークな会社が育ったのか?
日本の下請け、賃加工の業界では、大津技研のまったく逆、
「激しい競争→納入価格の切り下げ→賃下げ→従業員の退職→廃業」
というコースをたどる会社が相次ぐ。

木村専務は言う。「『バトンをつなぐ』。この思いだけだった」
同社は、社長で父親の木村幹男氏が、
「他の仕事の片手間に」85年、創業。
92年、同社の経営を全面的に任せていた人が突然、退職。
当時、25歳で地元の会社に勤めていた哲也氏が、
赤字に陥っていた同社すべてを切り盛り。
従業員は9人。
取引先との交渉はもちろん、製品の納入から現場の作業まで、
文字通り寝る間もなく走り回ることに。

研磨の仕事を全く知らなかった哲也専務は、
「どうやって生産性を上げるか」の一点を、従業員と試行錯誤。
まったくのゼロからのスタート。
不良を出すたび、納入先からは「(ホンダ発祥の地)浜松
(の下請け)は、こんなもんじゃないぞ」とレベルの低さを指摘、
唇をかみ締める日が続いた。
「今から考えると、よく倒れなかったと思う」
30歳、工場の現場で働いていた父親は、もう現場は見ない、と。
「任せても大丈夫、と思ったのでしょう」。

現在、従業員は約90人。
昨年からの大不況で仕事は減ったが、派遣労働者を含め、
人員整理はしていない。
日本の組み立て産業が、海外にどんどん移る。
研磨の仕事が、これから拡大するとはとても思えない。

最近、同社は林業に進出。
山奥から木を切り出す仕事。
「日本の林業は、コスト高で立ち行かないといわれている。
研磨で練り上げた生産性向上の手法を使えば、必ず突破できる」

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/mono/mon091224_2.html

北里大系列校、南魚沼食材の健康価値に注目した健康レシピを開発

(日経ヘルス 12月17日)

北里大学保健衛生専門学院は、経済産業省の委託事業
「天・地・健康人コンソーシアム」活動の一環として、
地元新潟県南魚沼地域の食材を利用して健康レシピを開発。
レシピは計100種類、コンソーシアムが地域住民の
健康テーマとして設定した「肥満改善」、「カロリーコントロール」、
「便秘解消・整腸」を念頭に、設計。

内訳は、「肥満改善」、「カロリーコントロール」、「便秘解消・整腸」
それぞれ31~42種類、季節に応じた旬の食材や同地域の
伝統料理なども採り入れている。
「肥満改善」では、腹回りが気になる男性(メタボ気味な男性)、
「カロリーコントロール」では若い女性、「便秘解消・整腸」では
中高年女性を意識。

「ずいきのごま和え」、「ヤーコンヨーグルト」、「辛子なます」、
「豚肉のきのこ巻き焼き」、「魚沼きのこごはん」、
「大根菜とあたたか豆腐」など、南魚沼の地域食材を意識した
レシピも多く含まれている。

今回のコンソーシアム活動は、地域住民の健康づくりの支援と
サービスモデルの構築を目的、
支援サービスの1つに、「食生活改善健康づくりプログラム」を提供。
参加者が、「肥満改善」、「カロリーコントロール」、
「便秘解消・整腸」の中から健康目標を設定し、
その達成に向け3ヶ月間食生活改善に取り組んでいく。
管理栄養士が、食生活のカウンセリングを行い、
今回開発した健康レシピや食生活をアドバイス、
参加者は健康目標の達成に向け、
カウンセリングに応じた食生活を実践。
患者ではなく、健常人を対象としているのが特徴、
治療ではなく健康増進を主な目的。

レシピ開発を担当した同学院管理栄養科の佐久間直美氏は、
「患者さんが対象の場合、『カリウムの少ないレシピ』といったように
目的が明確で、食生活改善意識も高い。

健康な人の場合、食生活改善の動機付けが弱く、目的も千差万別。
満足度や作りやすさ、見た目などを重視し、
継続しやすさに重点を置いた。
男性では、満腹感を満たしつつカロリーを抑える、
女性では、豆乳やコラーゲンなどで美容を意識する。
今回は、南魚沼の地域食材とのバランスを考慮して開発した」

今回開発したレシピは、同コンソーシアムの特設Webサイト
「健康人の地・南魚沼」に順次掲載予定。

http://nh.nikkeibp.co.jp/article/nhpro/20091217/105293/

インタビュー・環境戦略を語る:三菱自動車・益子修社長

(毎日 1月11日)

昨年7月、世界初となる量産型電気自動車(EV)
「i-MiEV」を発売した三菱自動車。
EVは、CO2を全く排出しないエコカーとして注目。
益子修社長は、「環境性能の高さをてこに、アイ・ミーブを核にした
環境に優しい街づくりを目指したい」

--アイ・ミーブの販売は順調。

09年度は、法人向けを中心に計画通り1650台を販売。
EVの量産メーカーとしての一歩を最初に踏み出し、
責任や期待の大きさを感じる。

高い評価もある一方、走行距離が不十分で、
充電設備が整っていないという人も。
国や自治体などの支援を得ながら、課題を解決していきたい。

--エコカーでは現在、ハイブリッド車(HV)の普及が
進んでいますが、EVの強みは?

◆欧米では、EVを量産しようという人が増え、
世界はその方向に動いている。
視界に入っている中では、EVが環境対応では最も優れた車。
HVを否定するのではなく、HVやプラグインハイブリッド車
(PHV)も素晴らしい車で、使われ方や地域性によって
すみ分けが進む。

走行距離が1日100キロでいい、という人にはEVが適している。
長距離を走るのなら、走行距離が長いPHVなどの選択肢。
各社が少しでもCO2を出さない燃費がいい車を追求しながら、
環境についてできることをやっていくことが大切。

--三菱自動車として何ができるか?

◆総生産台数の20%以上をEVにすることなどを柱にした
2020年に向けた環境ビジョンを策定。
EVとともに低炭素社会を築くことを目指すもので、
先行者としてEVの理解者を増やす役割。

長崎県などが進めるEV普及事業では、
充電設備の整備や住民向けの試乗会など、
啓発活動に取り組んでもらっている。
民間との連携では、ローソンと充電設備の整備を手掛け、
シャープとは太陽光発電で作った電気をEVに供給する
「EVのある暮らし」を提案。
環境についてみんなが考える中、アイ・ミーブを核にした
街づくりができればいい。

--4月からアイ・ミーブを一般販売し、海外にも本格展開。

◆一般販売の前に、法人を中心に使ってもらった結果、
技術的、品質的な問題はない。
一般人が乗っても大丈夫だ、と確信を持って市販を始める。
10月から、欧州向けを中心に輸出し、
11年に米国に投入することで、世界はほぼカバーできる。
米国では、数万台規模で販売する見込み。
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◇ますこ・おさむ

早稲田大卒。72年三菱商事。執行役員を経て、
04年、三菱自動車常務。05年1月から現職。
東京都出身。60歳。

http://mainichi.jp/select/science/news/20100111ddm008020029000c.html

動物のDNA内、新たなウイルス遺伝子を発見 阪大

(朝日 2010年1月7日)

ヒトやサルなど動物のDNAが、少なくとも4千万年前までに
感染したとみられる「ボルナウイルス」の遺伝子を
取り込んでいることを、大阪大学微生物病研究所の
朝長啓造准教授(ウイルス学)らが発見。

遺伝子治療で、体内に有用な遺伝子を入れるための
運び屋として使うなど、ウイルスの新しい利用法開発に
つながる可能性もある。
7日付の英科学誌ネイチャーに発表。

生物のDNAには、進化の途中で感染したウイルスの
遺伝子の一部がとりこまれ、残っていることが知られている。
ヒトのDNAの全遺伝情報(ゲノム)の約8%は、
DNAに入り込む性質を持つ「レトロウイルス」のもの。

ウイルスの感染と生物進化の関係が研究され、
これまでレトロウイルス以外のウイルスの遺伝子が、
ゲノムに侵入するかどうかはわかっていなかった。

朝長さんらは、ボルナウイルスに注目。
このウイルスは、はしかウイルスなどに近縁で、
動物の細胞の核の中で持続感染。
DNAを分析、サルや象、マウスなど様々な動物のDNAから
ボルナウイルスの遺伝子が見つかった。

とりこまれた遺伝子は、今もたんぱく質を作り出し、
今後役割を突きとめていく。

http://www.asahi.com/science/update/0107/TKY201001070238.html

2010年1月17日日曜日

石化の好調、風前の灯火?

(日経 2010-01-06)

中国向け輸出需要が好調なプラスチック市況に、
変調の兆しが出ている。
代表的なプラスチックのポリエチレンとポリプロピレンの
国内値上げが、原料高にもかかわらず交渉が長期化。
難航の背景には、中東の石化プラントの新増設による
供給増観測がある。

2009年11月、住友化学がサウジアラビアで出資する
石化会社「ペトロ・ラービグ」が完成、本格稼働を始めた。
合成樹脂原料になるエチレンの年産能力130万トンは、
日本の能力の2割近くを占める。
スケールメリットに加え、割安な天然ガスを原料に使うため、
圧倒的なコスト競争力が強み。

「10年は、アジア市況は軟化するだろう」(三菱化学)。
日本の石化業界は、中東勢の台頭に身構える。
中東での新設プラントの稼働が相次ぐ。

ラービグの主要な出荷先は、中国。
日本には、直接的な影響は小さいとみられる。
中東品が、大量に中国に流入すれば、韓国勢など
中国向け輸出に力を入れてきた製品があぶれる。
日本勢が懸念するのは、アジア市況の軟化。

既に影響が出始めている。
ポリエチレンのアジア市場価格は、1トン1410ドル(中心値)。
中国向け需要の好調にけん引され、ほぼ一本調子で上昇、
12月半ばに1400ドルを割り込んだ。
「中東品の流入見通しから、旺盛な買い意欲が
やや落ちついてきた」(日本の石化会社)。
アジア市況が崩れる前兆、とみる向きもなくはない。

日本市場では、すでに先を見越した動きが出ている。
「韓国勢のポリエチレンの売り込みが激しくなった」
ポリ袋メーカー大手の購買担当者。
韓国勢は、中国市場を閉め出される前に先手を打って、
日本の需要家に販売攻勢をかけ始めた。
国内のポリ袋メーカーも、品質と安定供給の体制に支障はなく、
価格が安いことから、「徐々に輸入ポリエチレンを増やす」。

三菱化学グループや三井化学グループなど、
石化各社は原油高を背景にしたナフサ(粗製ガソリン)価格の
高騰を理由に、09年2回目の値上げを詰め切れずにいる。
11月までに、中・小口需要家向けはほぼ満額の受け入れで
決着したが、大口需要家は交渉が続く。

「越年交渉もありうるか」。
昨年、大手メーカーの担当者はため息。
中東勢の動きを背景に、買い手は交渉態度を保留し始め、
メーカーも出荷拒否などの強気の交渉に出られない。
値上げ後、シェアを失う恐れがあるため。

石化は、産業素材のなかでは勝ち組。
鉄鋼やセメント、紙の主要素材が需要不振にあえぐなか、
需要は前年水準を上回っている。
国内のエチレンプラントの稼働率は、
11月には95%とフル生産に近い。
勝ち組に吹き始めた逆風は、これからさらに強まるのか。

中東勢がアジア向け出荷を増やしても、
中国の旺盛な需要が勝れば、アジア市況の軟化は避けられる。
リーマン・ショックからの回復を先導したのは中国。
需要急減の最悪期を脱した今も、頼みの綱は中国。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/shikyou/shi091226.html

夢を紡ぐ:地球に優しい新技術/5 蓄電池 「安く」「軽く」「安全」追求

(毎日 1月9日)

◇パナソニック技術統括グループマネジャー・湯浅浩次さん(47)

リチウムイオン電池をつなぎ合わせ、家庭用の電力をためたり、
電気自動車(EV)の動力源にできないか。

湯浅浩次さんのチームは、2年前から新たな取り組みを始めた。
リチウムイオン電池は通常、商品や用途別に設計。
EVの多くは、直方体の角形電池を使う。
目を付けたのは、パソコンなどに使う円筒形の
リチウムイオン電池(直径1・8cm、高さ6・5cm)。
「年間3億本も生産する汎用品で廉価。
コストが大幅に削減され、一気に普及」

試作を重ねてたどりついたのは、円筒形のリチウムイオン電池を
20本ずつ7列、計140本並べた「電池モジュール」と呼ぶ蓄電池。
モジュール1個は重さ8キロ、容量は1・5kw時。
1日5kw時が必要とされる一般家庭なら4~5個、
軽自動車なら12~13個、電動バイクならわずか1~2個。
「将来の生活に欠かせないものになる」

発売は早ければ1年後、価格はモジュール1個5万~10万円。
1kw時あたり、EVに用いられる角形電池の半額以下。
量産化すれば、「5万円以下」になり、
住宅への設置や車への搭載が期待。

開発で苦労したのは、発火リスクを抑えること。
リチウムイオン電池は、高温になると発火する。
円筒形電池には、独自の耐熱性素材を用いたが、
「万が一に備え、モジュールの内側も温度管理できる」
一部が故障しても、全体がダウンしない技術も盛り込んだ。

湯浅さんは10代のころ、第2次オイルショックを経験し、
エネルギー問題に強い関心を持った。
京大時代には、リチウムイオン電池を研究。
87年の入社以降も電池一筋。
「ある種の使命感を持って」研究に打ち込む。

太陽光で発電した電力や電力会社から購入した
夜間の安い電力を、蓄電池にため、電気代やCO2排出を
大幅に抑制することも可能。
「将来的には、家庭がためた電力を売るのも夢じゃない」

CO2削減が世界的な課題となる中、
電池市場は大幅な伸びが期待。
「すべての自動車がEVに置き換われば、
電池が地球を救うかもしれない」
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◇蓄電池

繰り返し使える電池のことで「2次電池」、「充電池」とも呼ばれる。
携帯電話など、持ち運びできる家電製品の電源、
電気自動車(EV)の動力源としても使われる。
家電分野では、ニッケル水素電池から、より高出力、高容量の
リチウムイオン電池に替わりつつあり、
EVなどでもリチウムイオン電池が採用。
18年のリチウムイオン電池市場は、
現在の5倍の3.2兆円が見込まれる。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2010/01/09/20100109ddm008020152000c.html

ウナギの古里やはり深海

(サイエンスポータル 2010年1月7日)

ウナギの祖先は、元々深海で住んでいた可能性が高いことを、
東京大学海洋研究所と千葉県立中央博物館の
研究チームが突き止めた。

深海で住んでいた先祖が、極端に餌の乏しい熱帯の
外洋中・深層を見捨て、餌が豊富な熱帯・亜熱帯の淡水域で成長、
産卵だけは遠い昔から慣れ親しみ、
しかも外敵が少ない安全な外洋の深海で行う。

ウナギは、異なる2つの環境をうまく利用するように
進化してきたと考えられる。

東京大学海洋研究所の塚本勝巳教授、西田睦教授、
井上潤研究員(現ロンドン大学)、宮正樹・千葉県立中央博物館
上席研究員らは、ニホンウナギを含むウナギ属19種に加え、
アナゴ科、ウツボ科、ウミヘビ科なども含めた56種の標本を
世界中から集め、細胞中に含まれるミトコンドリアの
DNA全塩基配列を調べ上げた。

この結果、これら56種は最終的には同じ祖先から
枝分かれしてきたと見られるものの、
ウナギ属は浅海や大陸棚に生息し外見も似ている
アナゴ、ハモ、ウツボなどとは遺伝的には遠く、
シギウナギ、ノコバウナギ、フウセンウナギ、フクロウナギ、
タンガクウナギ、ヤバネウナギなどの深海魚と
近縁であることが分かった。

これら深海魚は、外洋の水深200~3,000mに生息。
ウナギという名がついているものの、巨大な口やくちばしのような
顎を持つ体型から、ウナギ属とは全く遠い種と考えられていた。

ウナギが生息する川や湖から数千キロも離れた外洋で
産卵することは、生まれたてのウナギの幼生が
マリアナ諸島沖の西部北太平洋で見つかったのに続き、
一昨年、水産庁開洋丸による同海域の調査で初めて成熟した
ニホンウナギが採集されたことで確実視。

なぜ、ウナギがこのような大規模な回遊を行うのかは
長い間、謎。

http://www.scienceportal.jp/news/daily/1001/1001071.html

アラブ首長国連邦で水処理実証事業

(サイエンスポータル 2010年1月5日)

アラブ首長国連邦で、日本の水処理事業が動き出す。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と
アラブ首長国連邦ラスアルハイマ首長国は、
水循環実証事業を実施するための覚書を締結。

NEDOの委託企業である日立プラントテクノロジーが、
同首長国「アルガイル工業団地」に水循環事業体を設置し、
3月までに設備を建設、4月から実証運転を開始。

水循環事業体は、工業団地内から出る生活排水を
タンクローリーで集め、処理した再生水を販売。
下水処理費用も徴収。
処理設備の設置費用は、約4億円。

ユニット型膜分離活性汚泥法で処理した中レベルの再生水は、
修景用水などに、逆浸透膜でさらにきれいにした
高レベル再生水は、コンクリート練水や
地域冷房設備用などに再利用。
実証事業の期間は3年間の予定、
その後は現地の政府機関などと特別目的会社を立ち上げ、
事業を継続することを検討。

水不足や排水処理設備不足に悩む他の地域への
事業展開も目指す。
膜分離活性汚泥法で使われる膜や浄水場システムなど、
日本は優れた水処理技術を持つ。

国内の水供給システムは、地方公共団体、メーカー、
コンサルティング会社、建設会社などが分担する形になり、
水供給事業として世界に進出するため、
一体となった事業売り込みの仕掛けづくりの必要が指摘。

http://www.scienceportal.jp/news/daily/1001/1001051.html