(読売 1月13日)
教科専門教育を重視し、得意分野を持った小学校教員を養成。
「数式を出す前に、なんでそうなるんか自分でよく考えて。
図をかいてもいいし、絵でもいいよ」
大阪市立大江小学校。
大阪教育大学4年の二井健一さん(22)が、
教育実習で教壇に立っていた。
黒板と机の上のノートをにらめっこしながら、
問題に取り組む児童たち。
「先生できた」。
しばらくして1人の男子が大きな声で手を挙げると、
「はい」「はい」「はい」――。競い合うように挙手が続く。
児童が黒板に答えを書いている間も、
別の児童が自分の考えを聞いてほしいと訴えるなど、
教室内は終始、活気にあふれていた。
二井さんは、小学校教員養成課程の数学専攻。
教科専門の「問題解決型の算数授業の進め方」を研究テーマに、
昨年9月から毎週1回大江小に通い、
算数の教材研究や実習などを行っている。
今年4月から小学校教員になる二井さん。
「教科の専門性を高めてきたおかげで、子どもたちに
自ら考えさせる授業がいかに重要かが分かった。
得意な分野を持つことを強みとして、頑張りたい」と意欲。
同大の小学校教員養成課程では、戦後の学制改革以来、
特定教科を重点的に学ぶピーク制を採用。
学生たちは、教職と全教科の基礎科目を履修したうえで、
専攻する教科の専門知識や指導法を深めている。
「長い年月にわたって務めを果たせる教員を養成するには、
理論を中心とする学問的素養を身につけさせることが重要。
本学の教科専門が目指すのはこの点で、
学校現場に即戦力として送り出すためではない」
長尾彰夫学長(63)は、実践力偏重の教育とは距離を置く。
同大の卒業生に占める教員就職率はここ数年、
60%台半ばで推移し、全教員養成大学・学部の中で
上位を維持し続けている。
教員に正規採用された者の数は毎年270人前後で、
4年連続全国1位。
来年度から、教科専門教育をさらに重視したしくみに改編。
従来は、小学校と中学校の2課程内にそれぞれ教科別専攻を
設けてきたが、改組後は国語、社会、数学などの教科別専攻を
柱とし、その下に小学校と中学校の2コースを設ける。
「教員養成大学・学部の統廃合が進む一方、
小学校教員養成課程を新設する私立大学が増え、
われわれの存在意義が問われている。
今こそ、教育の特色を鮮明に打ち出していかなければならない」
長尾学長は力を込める。
教科専門教育の伝統は、教育環境の変化を
冷静に受け止めながら、さらなる進化を続けている。
◆ピーク制
全科担任が原則である小学校教員の養成課程で、
全教科の基礎を学んだうえで、特定の教科や分野について
深く専門的に学ぶしくみ。
比較的規模の大きい教員養成大学・学部で導入している
ケースが多く、課程内に国語、社会、理科など
教科別の専攻やコースを設けている。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100113-OYT8T00202.htm
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