(読売 1月9日)
理科に強い教師を育てる教員養成大学・学部がある。
宮城教育大学は、緑豊かな青葉山の一角に。
実験棟を訪れると、学生たちが、熱した水に硝酸カリウムなどの
試薬を溶かして、結晶の溶解度を調べる実験に取り組んでいた。
試験管を振って溶液を確認したり、天秤で試薬を量ったりする
表情は、みな真剣。
実験に参加していた初等教育教員養成課程理科コース2年の
佐藤舞さん(21)は、「理科は好きですが、高校まで実験の機会が
少なかったので、自分に教えられるのかという不安も。
様々な実験や野外観察を体験し、自信もついてきました」と笑顔。
理科コースは、小学校で理科教育の中心的役割を担える
人材の育成を目指し、2007年度に新設。
それまでの教員養成課程を初等、中等の2課程に分け、
初等教育にも理科をはじめ、国語、社会など14のコースを設けた。
理科コースでは、生物、化学、物理、地学の各分野について、
基礎知識の習得とともに、実験や青葉山の自然環境を生かした
野外観察・調査を重視。
初等教育課程では、理科コースだけでなく、
すべての学生に、理科実験を必修とした。
「文系の学生が多いうえ、ゆとり教育の影響で、
高校までに理科で学ぶ内容が減っていた。
新学習指導要領では、学ぶ内容が増えている。
教員になれば、それを教えなくてはならず、
理科教育の充実は緊急課題」と、池山剛教授(54)。
山梨大学教育人間科学部は、今年度から、
山梨県教育委員会、同県立科学館と連携し、
理科指導に優れた教員を育成する教育プログラムをスタート。
独立行政法人・科学技術振興機構が進める
コア・サイエンス・ティーチャー養成拠点構築事業として採択。
野外での動植物や鉱物の観察・調査をはじめ、
光合成色素分析、気体発生など、小中学校理科をより深めた
内容の実験、移動プラネタリウム実習などを実施。
学校教育課程の2年生10人と、県内の30、40歳代の
公立小・中学校教員10人の計20人が参加。
来年度までの試行期間を経て、3年間の本格実施に
移行する計画。
松森靖夫教授(53)は、「体験学習を通して、学生たちは
科学への関心をいっそう高め、理科にたけた教師を志す
モチベーションの向上にもつながっている」と効果を強調。
同機構と国立教育政策研究所が実施した08年度
「小学校理科教育実態調査」によると、学級担任として
理科を教える教員の約5割が、理科の指導に苦手意識を、
約7割が、指導に必要な知識・技能の不足を感じている。
高校までの学習不足を補ったうえで、
理科を得意とする教師をいかに育てていくか?
取り組みは、まだ始まったばかりだ。
◆コア・サイエンス・ティーチャー
地域の理数教育において中核となる小・中学校教員。
独立行政法人・科学技術振興機構が、学生と現職教員を対象に、
大学や教育委員会などと連携し、養成拠点の構築を進めている。
現在、教員養成大学・学部を中心に全国16大学で、
育成プログラムが実施。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100109-OYT8T00182.htm
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