(日経 2010-01-06)
中国向け輸出需要が好調なプラスチック市況に、
変調の兆しが出ている。
代表的なプラスチックのポリエチレンとポリプロピレンの
国内値上げが、原料高にもかかわらず交渉が長期化。
難航の背景には、中東の石化プラントの新増設による
供給増観測がある。
2009年11月、住友化学がサウジアラビアで出資する
石化会社「ペトロ・ラービグ」が完成、本格稼働を始めた。
合成樹脂原料になるエチレンの年産能力130万トンは、
日本の能力の2割近くを占める。
スケールメリットに加え、割安な天然ガスを原料に使うため、
圧倒的なコスト競争力が強み。
「10年は、アジア市況は軟化するだろう」(三菱化学)。
日本の石化業界は、中東勢の台頭に身構える。
中東での新設プラントの稼働が相次ぐ。
ラービグの主要な出荷先は、中国。
日本には、直接的な影響は小さいとみられる。
中東品が、大量に中国に流入すれば、韓国勢など
中国向け輸出に力を入れてきた製品があぶれる。
日本勢が懸念するのは、アジア市況の軟化。
既に影響が出始めている。
ポリエチレンのアジア市場価格は、1トン1410ドル(中心値)。
中国向け需要の好調にけん引され、ほぼ一本調子で上昇、
12月半ばに1400ドルを割り込んだ。
「中東品の流入見通しから、旺盛な買い意欲が
やや落ちついてきた」(日本の石化会社)。
アジア市況が崩れる前兆、とみる向きもなくはない。
日本市場では、すでに先を見越した動きが出ている。
「韓国勢のポリエチレンの売り込みが激しくなった」
ポリ袋メーカー大手の購買担当者。
韓国勢は、中国市場を閉め出される前に先手を打って、
日本の需要家に販売攻勢をかけ始めた。
国内のポリ袋メーカーも、品質と安定供給の体制に支障はなく、
価格が安いことから、「徐々に輸入ポリエチレンを増やす」。
三菱化学グループや三井化学グループなど、
石化各社は原油高を背景にしたナフサ(粗製ガソリン)価格の
高騰を理由に、09年2回目の値上げを詰め切れずにいる。
11月までに、中・小口需要家向けはほぼ満額の受け入れで
決着したが、大口需要家は交渉が続く。
「越年交渉もありうるか」。
昨年、大手メーカーの担当者はため息。
中東勢の動きを背景に、買い手は交渉態度を保留し始め、
メーカーも出荷拒否などの強気の交渉に出られない。
値上げ後、シェアを失う恐れがあるため。
石化は、産業素材のなかでは勝ち組。
鉄鋼やセメント、紙の主要素材が需要不振にあえぐなか、
需要は前年水準を上回っている。
国内のエチレンプラントの稼働率は、
11月には95%とフル生産に近い。
勝ち組に吹き始めた逆風は、これからさらに強まるのか。
中東勢がアジア向け出荷を増やしても、
中国の旺盛な需要が勝れば、アジア市況の軟化は避けられる。
リーマン・ショックからの回復を先導したのは中国。
需要急減の最悪期を脱した今も、頼みの綱は中国。
http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/shikyou/shi091226.html
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