2010年10月9日土曜日

部活新時代(1)走って鍛えて 書道熱演

(読売 9月23日)

「もっと力強く書いて!」
墨汁で手足を真っ黒にした女子高生が、
縦4m、横6mの巨大な紙に大きな筆を振り下ろす。

愛媛県四国中央市の県立三島高校の教室。
軽快な曲が流れる中、書道部の女性部員11人が、
1週間後に地元で開かれる「書道パフォーマンス甲子園」
向けて、練習に励んでいた。

同甲子園は、「紙のまち」として知られる同市で、
書道ブームに乗った街おこしとして始まった。

同甲子園を描いた映画『書道ガールズ!!』の公開で、
認知度が一気に高まり、3回目となる今年の参加希望校は、
前年(4県5校)の4倍近く(11府県18校)に急増。
初めて、書類審査も行われた。

パフォーマンスのおかげで、魅力を多くの人に知ってもらえた」、
映画のモデルにもなった同高で、書道部顧問を務める
阿部秀信教諭(33)。
かつては部員集めに苦労したが、
今は毎年数人の入部希望者がいる。

練習は、運動部顔負け。
筆を握る前、2km走に腕立て伏せ、腹筋、スクワットなど
トレーニングは欠かさない。
パフォーマンスに使う重さ10kgを超える筆を、
自在に操るには、体力も求められる。

「作品を書く様子を、人前にさらす必要はない」などの批判も。
部長で3年の近藤友希さん(17)は、
「書道の楽しさが伝わり、書道を始める若い人が増えればいい」

7月31日、同市立体育館で行われた本番。
部員たちは、そろいのはかま姿で登場。
惜しくも3位に終わったが、約3000人の観客たちは
地元校の健闘をたたえた。

暗い、地味と言われがちだった文化系の部活に今、活気がある。
90年代から00年代にかけ、「~甲子園」と銘打つ
文化系の大会が相次いで登場した影響。
高知県などが、92年に始めたまんが甲子園から、
ディベート、版画、短歌まで。
いずれも高校生たちが一つの会場に集まり、審査員の前で
作品の制作や発表のパフォーマンスを競う。

全国高校文化連盟会長の藤原正義・岩手県立盛岡第四高校長(60)は、
球児だけでなく、文化系の活動に励む高校生たちにも
注目が集まるのはすばらしいこと。
パフォーマンスは、表現力の向上につながり、
社会に出ても必ず役に立つ」

学力や体力、道徳意識の低下を背景に、部活が注目。
中学と高校の新しい学習指導要領にも、
その意義などが初めて明記。
時には地域も巻き込み、様々に変容しながら
展開する実態を追った。

◆書道パフォーマンス甲子園

高校生が、文字の美しさや表現力を競う大会として、
2008年に始まった。
1チーム最大12人が音楽に合わせ、
特大用紙(縦4m、横6m以内)に自由に書く。
制限時間は6分。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100923-OYT8T00236.htm

ノーベル賞:炭素新素材開発の2氏に物理学賞

(毎日 10月6日)

10年のノーベル物理学賞を、炭素の新素材「グラフェン」を開発した
英マンチェスター大のアンドレ・ガイム教授(51)=オランダ国籍=と
コンスタンチン・ノボセロフ教授(36)=英、ロシア国籍=に授与。

グラフェンは、炭素が六角形につながったシート状の新素材で、
厚みが原子1個分しかない。
現在知られている素材の中で、最も薄くて強く、銅と同程度の
電気伝導性があり、熱伝導性も最も高い。

ガイム氏らは04年、炭素の蜂の巣構造が何層も重なり、
鉛筆の芯の材料として使われている「グラファイト」(黒鉛)に、
粘着テープを張ってははがす作業を繰り返して薄片をはがし、
原子1個の厚みの層(グラフェン)を分離することに成功。

ごく薄い構造を持ったグラフェンは、「驚異の物質」として、
物理学や材料科学の分野で注目、
太陽電池や液晶ディスプレー、従来のシリコン製を上回る性能の
半導体への応用が期待。

ガイム氏は00年、カエルを生きたまま磁力で浮かせる実験で、
「イグ・ノーベル賞」(物理学賞)を受賞。

◇同じ分野、大変残念--「カーボンナノチューブ」飯島氏

炭素の新素材では、炭素原子がサッカーボール状になった
「フラーレン」を発見した英米の3氏が、96年のノーベル化学賞を受賞、
グラフェンはそれに続く受賞。

日本では、グラフェンが円筒形に丸まった
「カーボンナノチューブ(CNT)」を、91年に発見した
飯島澄男・NEC特別主席研究員(71)らの受賞が期待。

飯島氏は、「同じような分野なので、大変残念。
一緒に受賞ならいいなと思っていたが、置いていかれちゃった。
理論的にリードしてきた安藤恒也・東工大教授が
共同受賞でないのも、合点がいかない」と悔しさ。

CNTの量産技術を開発した遠藤守信・信州大教授は、
「新素材として非常に強いインパクトがあったことが、
早期の受賞につながったのではないか」と分析。

フラーレンを研究する篠原久典・名古屋大教授は、
「CNTは、発見から十数年が経過した。
今後、本当にいい応用例が出れば、
飯島さんが受賞する可能性は十分にあると思う」

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2010/10/06/20101006ddm002040054000c.html

食物アレルギー仕組み解明 マウス実験、治療に道

(2010年9月30日 共同通信社)

本来、異物である食べ物が体内に入っても、
免疫機構が攻撃を仕掛けない「経口免疫寛容」の仕組みを、
マウスの実験で明らかにしたと、
理化学研究所の佐藤克明チームリーダーらが、
30日付の米科学誌ブラッド電子版に発表。

生きるのに必要な食べ物を、異物と判断してしまうと、
食物アレルギーを引き起こし、命にかかわることも。
佐藤さんは、「アレルギー治療につながる成果」。

佐藤さんらは、食べ物が吸収される腸の粘膜では、
免疫細胞の一種「樹状細胞」の表面に、「B7H1」と「B7DC」という
2種類の分子が顔を出し、免疫を抑制するT細胞を作り、
異物を攻撃する抗体の生産を抑えるなど、
重要な役割を果たしていることを突き止めた。

普通のマウスに、あらかじめアレルギー物質のタンパク質を
食べさせると、1週間後に同じタンパク質を皮下注射した場合に
できた抗体の量は、事前に食べさせなかったマウスの約20%に減り、
経口免疫寛容が成立することを確認。

遺伝子操作で、この2種類の分子をなくしたマウスで
同様の実験をすると、抗体は70~80%できた。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/9/30/126263/

保育・幼稚園、保護者一体の園児総合支援システム実践

(サイエンスポータル 2010年9月29日)

子育てに関する研究成果を保育園、幼稚園などの実際の現場で、
実践する園児総合支援システムの実装プログラムがスタート。

科学技術振興機構 社会技術研究開発センターが、
新規の研究開発成果実装支援プログラムとして発足、
安梅勅江・筑波大学人間総合研究科教授らが、
12年間かけて子供たちの発達状況を追跡調査した
コホート研究成果が基礎に。

少子高齢化や核家族化の進行、地縁の崩壊といった
日本社会の急激な変化で、子どもの生育環境も大きく様変わり。
子育てに対する不安を持つ、親や問題行動をとる子供たちに対する
科学的根拠に基づいた支援を求める声も強い。

安梅教授らのコホート研究により、保育園に預けるか否かよりも、
親が自信を持ち、しっかり子どもと向き合って育児をすることが、
子どもの健やかな育ちに大きく影響することなどが分かってきた。

新プログラムは、研究者と全国の保育園、幼稚園、子ども園が
ソーシャルネットワークサービスを介して情報交換し、発達評価、
育児環境評価、保育環境評価などの支援ツールと
支援設計活用ツールをシステム化。

ウェブを活用し、これらの支援ツールを見やすく、汎用性の高い形で
保育園、幼稚園、子ども園と保護者に提供し、
保護者が携帯電話から子どもの情報を得ることもできるようにする。

安梅教授は、乳幼児期から質の高い保育と教育を行うことの重要性と、
保護者を孤立させない地域に根差した
「子育て支援ネットワーク」の必要を従来から唱えている。

http://www.scienceportal.jp/news/daily/1009/1009291.html

2010年10月8日金曜日

途上国との関係模索 日本企業、リスクも重視 「生物多様性会議」「新たな争奪戦―遺伝資源」

(2010年9月28日 共同通信社)

植物や微生物といった、遺伝資源を求める日本企業が、
発展途上国との関係を模索。

医薬品や健康食品などの開発に道を開き、
莫大な利益を生む遺伝資源。
一方、「原産国側からの利益配分の要求が過剰だと、
企業は経営上、大きなリスクを抱える」(製薬大手)側面も。

カルピスは、07年、モンゴルで乳酸菌や酵母の採集を試みた。
遊牧民のテント式住居「ゲル」を研究員が訪ね歩き、
20日間程度で馬乳酒などから約240株を集めた。

現地に派遣された発酵応用研究所の安田源太郎主任は、
「製品化には至らなかったが、日本にはない微生物を入手できた」

海外での遺伝資源の採取に、慎重な日本企業は多い。
「現地で得た利益を、どのように分配するか。
調整は一企業だけでは難しい」(安田氏)ことも一因。

アステラス製薬は、マレーシアの熱帯雨林で微生物を採取。
新薬開発につなげる狙いだが、遺伝資源に絡む知的財産の法律が
整備されている国でのみ、採取活動をするのが同社の方針。
渡辺裕二知的財産部長は、「予想していなかった多額の利益配分を
要求されると、企業はとんでもないリスクを抱えることに。
利益も大切だが、リスク回避はもっと大切」

鳥インフルエンザウイルス(H5N1型)への感染で、
多くの死者が出たインドネシア
ワクチン開発に必要なウイルス検体の「所有権」を主張し、
世界保健機関(WHO)への提供を拒んでいた。
検体からできたワクチンを、先進国が高額で販売することへの
反発が背景にある。

阪大微生物病研究会は、インドネシアの製薬企業に、
ワクチン製造技術の提供を欧米の企業に比べ、低額で始めた。
同研究会の合田英雄常務理事は、
「もしワクチン開発に遅れがでれば、取り返しがつかない」

医療関係者は、「インドネシアが自国でワクチンを製造できれば、
かたくなな態度も軟化するかもしれない」と期待。

産学連携で遺伝資源の問題に取り組むバイオインダストリー協会の
炭田精造生物資源総合研究所長は、
「生物資源を得て、商品開発に至っても、すべて金銭で
(原産国に)還元するのは現実的には厳しい」
「途上国の求める技術提供などを地道に続けて、
双方が得をする仕組みを構築するしかない」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/9/28/126120/

インサイド:次代の針路 第3部 子どもの体力/5止

(毎日 9月25日)

千葉県佐倉市で、総合型地域スポーツクラブを運営する
NPO法人「ニッポンランナーズ」は毎週土曜日、
小学生向けの「土曜スポーツ探検隊」(土スポ)を開催。

土スポが始まったのは、02年6月。
学習指導要領の改定で、学校が完全週5日制になった時期と重なる。
「隊長」を務める北晃チーフコーチ(29)は、
「絶対的な運動量を確保し、アスリートの基盤作りができればと考えた」
と狙い。

最も重視しているのは、一つの競技に特化させないこと。
現在、参加者は約70人、年間で15を超える運動種目に取り組む。
子どもたちを、プレゴールデンエージ(小学1~3年生)、
ゴールデンエージ(同4~6年生)の年代に分け、
4月にはランニング、一輪車などで体幹部分を鍛える。
それが終わると、器械体操などで姿勢を保つ能力を、
夏ごろにはレスリングやカバディでフットワークを磨く。
最後には野球、ゴルフ、剣道などで、
自分の力を道具に伝えることを学習する。

それぞれの競技の元日本代表などゲストコーチを招くこともあるが、
主眼は技術を磨くことではなく、年間を通していろんな角度から
運動神経を刺激すること。

北チーフコーチは、「もっとも運動神経が発達するこの時期に、
さまざまな体の動かし方やその楽しさを覚えておけば、
後のスポーツ活動にも必ず生きる」と強調。

日本において、子どものスポーツ振興は、約50年前の1962年、
日本体育協会の50周年事業として創設された
日本スポーツ少年団が軸。
昨年度の登録数は、3万6138団体にも及ぶ。

そのほとんどが野球やサッカー、バスケットボール、剣道などの
単一競技を教える団体であり、複数の競技を行う「複合タイプ」は
4487団体と、全体の12%に過ぎない。

山梨大教育人間科学部の中村和彦准教授は、
運動する、しないの二極化と同時に、運動する子どもの中でも、
特定のスポーツしかできない子が増えている。
子どもの体力低下は、日本特有の問題ではないが、
海外はすでに取り組みを始めている」と指摘。

米国では、09年から小学生以下の全国・ブロック大会を禁止、
小学生時代は競技スポーツ、競争主義に偏らないように取り組み、
日本の少年団に当たるクラブは、3種目以上の競技が必須。

オーストラリアでは、政府が子どもたちの放課後の運動プログラムを
提供する取り組みを始めている。
競技の技術力向上を図るのは中学生以降で、
小学生の時は運動機会の増加と、さまざまな運動形態を
体験することに重点を置いている。

競技者としてスポーツを続けるためには、
いつかは一つの競技を選択する。
土スポの第1期生で、女子7人制ラグビー日本代表の
川野杏吏(18)は、「小学生時代に複数の競技を経験したことで、
対応力や柔軟性がついたと思う

時々、土スポや自分が通っていたラグビースクールで
子どもたちを指導しているが、新しい動きを吸収する能力は
土スポの生徒の方がたけている。
「体の動かし方を知っているというアドバンテージは大きい」と川野。
子どもたちが、複数競技に取り組む効果を身をもって実感している様子。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/news/20100925ddm035050003000c.html

ノーベル賞:医学生理学賞に、英のエドワーズ氏 体外受精を開発

(毎日 10月5日)

スウェーデンのカロリンスカ研究所は、
10年のノーベル医学生理学賞を、英ケンブリッジ大名誉教授の
ロバート・エドワーズ博士(85)に授与。

エドワーズ博士は、生殖補助医療(不妊治療)の体外受精技術を開発、
世界初の体外受精児を誕生。
世界のカップルの10組に1組以上が不妊と言われ、
この技術で子を持つ道が開けた。

授賞式は12月10日にストックホルムで行われ、
賞金1000万スウェーデン・クローナ(約1億2800万円)が贈られる。

エドワーズ博士は1950年代、ウサギの卵子を試験管内で
精子と受精させる技術をヒトに応用することを着想。
69年、ヒトの卵子を試験管内で初めて受精させることに成功。
産婦人科医のパトリック・ステプトー氏(88年死去)と連携、
採卵技術を改良し、78年7月25日、
世界初の体外受精による女児、ルイーズ・ブラウンさんを誕生。

この技術の普及により、400万人近くの赤ちゃんが誕生。
日本産科婦人科学会によると、国内でも年間約2万人が生まれ、
累計で約20万人。
カロリンスカ研究所は、「彼の研究は、現代医学の発展の中で
一里塚となっている」とたたえた。

この技術によって、当事者以外の女性から卵子提供を受けて
出産したり、自分の卵子を使って他人に出産してもらう
代理出産が可能になり、倫理的な問題も提起。

◇不妊治療に道

日本初の体外受精(83年)に携わった
星合昊・近畿大教授(産婦人科)は、博士の業績を
「人の卵子と精子の受精を、初めて直接観察できるようにした。
それが不妊治療の技術開発につながった」

大型動物で、世界初の体外受精に成功した入谷明・近畿大教授は、
「ある時、『君はノーベル賞に値する研究者だ』と言うと、
『ありがたいが、人の体外受精は倫理的問題があると言われた。
それでひっかかる面があるのかも』と話していた」
「世界中の不妊カップルが、彼らの技術の恩恵を受けるようになった」
==============
◇体外受精

卵子を卵巣から取り出し、培養液の中で精子と受精させ、
その受精卵を子宮に戻して妊娠させる不妊治療。
排卵時に合わせ、精子を特殊な器具で直接子宮内に入れる
不妊治療は、「人工授精」と呼ばれる。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2010/10/05/20101005ddm002040169000c.html

ネットワークづくり急務 高次脳機能障害で県内

(岩手日報 9月30日)

雫石町のいわてリハビリテーションセンター(高橋明理事長)が
08、09年度に行った、高次脳機能障害者に関する
「市町村の相談状況調査」で、市町村担当者の65%が
医療機関など、関係機関との「連携がない」ことが分かった。

専門機関でのリハビリなど、適切な支援につながらないことが懸念、
関係者は「ネットワークづくりが急務」と訴える。

調査は同センターが、08、09年度に県内35市町村を対象に実施。
32市町村が回答した。

医療機関や福祉施設などとの連携について、
21市町村(65・6%)が「ない」と回答。
「ある」と答えた11市町村(34・4%)を大きく上回った。

高次脳機能障害は、交通事故や脳出血などで、
脳が損傷したことで記憶や言語障害、感情の
コントロールが効かないなどの症状が出る。

外見では判断しにくいため、本人や周囲も障害に気付きにくく、
症状から周囲に誤解を与える場合もある。

リハビリで、日常生活に必要な力を高めることもできるため、
相談を受ける市町村の窓口と専門的な治療などをする
医療機関との連携が不可欠。

盛岡市のNPO法人いわて脳外傷友の会イーハトーヴの
堀間幸子代表は、「リハビリや社会復帰に向け、
適切な情報を得られていない当事者や家族もいる。
関係機関のネットワークを強化し、どこでも相談と支援が受けられる
体制づくりが必要

県障害保健福祉課の朽木正彦総括課長は、
「市町村担当者を対象とした研修の充実を図るとともに、
県民に対しても、障害への理解が広がるよう啓発していく」

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20100930_15

2010年10月7日木曜日

「赤ワインの認知症予防効果」メカニズムを解明

(2010年9月29日 読売新聞)

名古屋市立大大学院医学研究科の岡嶋研二教授(56)と
原田直明准教授(43)らのグループが、赤ワインに含まれる
植物成分のポリフェノールが、学習機能や記憶をつかさどる
脳の海馬を活性化するメカニズムを突き止めた。

認知症の予防や改善につながる研究結果で、
近く研究論文が米化学誌に掲載。

1日にワイングラス2杯程度(250~500ml)を飲むと、
認知症に効果があることは従来、別の研究者の実験で知られていたが、
メカニズムは解明されていなかった。

岡嶋教授らのグループは、マウスの知覚神経を培養、
ポリフェノールを加える実験をしたところ、
脳の海馬を刺激する物質「CGRP」の放出量が増加。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/9/29/126185/

心の病、自宅訪問で支援 全都道府県に専門家チーム 厚労省、自殺対策も

(2010年9月27日 共同通信社)

うつ病など、精神疾患を抱えた人の自宅を訪問し支援するため、
厚生労働省は11年度、精神科医や看護師らでつくる
専門家チームを、医療機関に設置するモデル事業を、
全都道府県で始める。

受診や相談をためらう間に重症化するのを防ぐのが目的で、
自殺防止につなげる狙いも。
患者の家族は、「社会とのつながりを回復する第一歩になる」と歓迎。

精神疾患があっても、偏見を気にして病院に行かなかったり、
途中で治療をやめたりして症状が悪化する人が少なくない。

国内の自殺者数は、12年連続で年間3万人を超え、
うち約3割は、うつ病などの精神疾患が原因。
担当者は、「病院で患者を待つ従来の医療では、
十分に対応できていなかった」

チームは、精神科医や看護師、作業療法士、精神保健福祉士など
数人で構成。
家族らからの依頼を受け、自宅を訪れて家族や本人と話し合い、
通院治療などにつなげていく。

チームづくりは、各地の医療機関に委託。
厚労省は、11年度予算の概算要求の特別枠で、16億円を計上、
当面は各都道府県に1、2チーム程度になる見通し。

「当事者が周囲の人を傷付け、自殺に至る場合もあり、
家族だけでは支えきれない」
東京都精神障害者家族会連合会の野村忠良会長(67)は、
「夢のようにありがたい話。
一人一人に合った支援を丁寧に探ってほしい」と期待。

岡山県精神科医療センターの中島豊爾理事長(64)は、
「将来的には、人口10万人に1チームが理想。
チームを生かすためには、心の問題を抱えた人を
地域で支える体制づくりも重要」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/9/27/126059/

インサイド:次代の針路 第3部 子どもの体力/4

(毎日 9月24日)

横浜市青葉区の市立つつじが丘小学校。
日焼けした青年が、職員玄関から入ってくるのを、
子どもたちは目ざとく見つけた。
「あっ、近さんだ!」。
たちまち輪の中にうもれたのは、横浜市体育協会の近佑治さん(28)。
週に一度、35分間の昼休みを使って、子どもたちに遊びを教えている
「遊びのお兄さん」。
この日は、「ダブルダッチ」と呼ばれる2本組みの縄跳びと、
軟らかいフライングディスクを使ったゲーム「ドッヂビー」を教えた。

4年生の笹木美来さんは、「縄跳び、最初は全然跳べなかった。
今は(連続で)16回も跳べるの。すごくためになる」と目を輝かせた。
近さんのほか、ボランティアの保護者と上級生が指導に当たり、
基本的に教諭はかかわらない。

ボランティアの一人、西川一江さん(43)は、
「子どもを狙った犯罪も多く、外で遊ばせるのは抵抗がある。
(ここでは)子どもたちの様子も見られるし、何より安全なのでありがたい」
外で遊ばせない傾向は、体力低下と密接にかかわる。

06年、改定された国のスポーツ振興基本計画には、
目標として「子どもの体力向上」が加わった。
横浜市の場合、05年度の全国体力・運動能力調査をみると、
同市の小学生が全国平均を上回ったのは96項目中、
4年男子の握力など5項目だけ。
市体協の職員は頭を抱えた。

市内を視察して気づいたのが、休み時間に閑散としている
学校のグラウンド。
大阪教育大付属池田小学校で起きた無差別殺傷事件(01年)以降、
教諭の目が届きにくい休み時間は、グラウンド使用に
消極的になっている実態が浮かび上がった。
その中で生まれたアイデアが、休み時間に体協職員が
遊びを教える「出前授業」だった。

市体協では、07年度から3年間で延べ134校、
1908回の出前授業を実施。
永嶺隆司・地域スポーツ支援担当課長は、
「放課後や休日は参加率が低く、体育の時間は先生たちの領域。
休み時間は子どもたち全員がそろっており、
(授業と放課後の)すき間を狙った」と自信を深める。

学校まで出向いて、子どもたちに遊びを教える活動は、
まだなじみが薄い。
安全上の理由で、外部の人間の立ち入りを拒んだり、
「学校のことは教師がやる」と、市体協の活動に難色を示す学校も。

つつじが丘小の小正和彦校長は、
「学校外のリソース(資源)を活用することは重要。
子どもにとって、親でもなく教師でもない大人とかかわることは
刺激につながる」と理解を示す。

小正校長は、児童の体力低下を「二極化」ととらえている。
「意識の高い家庭では、野球や水泳などをさせ、体力も充実。
一方、(放課後の生活を)子どもに任せっきりの家庭では、
テレビゲームなどに走りがちだ」と指摘。
その結果、平均値として体力が低下していると憂える。

「子どもたちは本来、集団で遊ぶことが好き。
集団での遊びは、体を動かさない子どもたちを引っ張り出す効果もある」
と小正校長。
近さんも、「体を動かすことは楽しい、と思ってもらいたい」と期待。

休み時間を活用した“遊び指導”。
運動の「きっかけ」づくりを狙った地道な活動が続く。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/news/20100924ddm035050139000c.html

ネバネバ菌が鉄道網…日本人にイグ・ノーベル賞

(2010年10月1日 読売新聞)

愉快な科学研究に贈られる「イグ・ノーベル賞」の授賞式が、
ハーバード大で行われ、単細胞生物の粘菌が最適な鉄道網を
設計できることを見つけた中垣俊之はこだて未来大教授らの
チームが、「交通計画賞」を受賞。

中垣教授らは、粘菌に迷路を解かせる研究で、
2008年にも「認知科学賞」を受賞。

ネバネバの粘菌の集合体は、エサを求めて細長く伸びる。
迷路のゴールにエサを置けば、粘菌は入り口から出口まで
最短距離でつなぐほか、都市に当たる場所にエサを配置すると、
粘菌はエサの間に、鉄道網とそっくりの効率的なネットワークを形成。

このほか、「靴の外側に靴下をはけば、凍結路での転倒頻度が低下する」
研究が「物理学賞」、「従業員をランダムに昇進させると
組織の効率が上がる数学的証明」が「経営賞」を受賞。
メキシコ湾で原油流出事故を起こした英石油大手BPには
「油と水は混じらないという古い定説を否定した」として
「化学賞」が与えられた。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/10/1/126334/

2010年10月6日水曜日

日本音楽療法学会学術大会 音楽療法のあり方探る

(2010年9月26日 毎日新聞社)


国内の音楽療法のあり方を探る
「第10回日本音楽療法学会学術大会」
鳩山由紀夫前首相の妻幸さんや音楽評論家らが座談会を行った。

テーマは、「いのちに寄り添い、こころをつなぐ・音楽療法の原点と課題」
阪神大震災の被災地では、音楽が被災者の大きな心の支えと
なったことから、県は独自に音楽療法士の養成を進めている。

井戸敏三知事は、療法士の養成方法を説明した上で、
「震災時に『立ち上がろう、復興しよう』という
思いにさせていったのは、音楽だった」

鳩山さんは、ニューヨークで出会った自閉症の子どもと
一緒に踊ったエピソードを紹介。
「素直な気持ちで入っていくと、一つの世界になれる。
音楽は、人の心を開ける」と笑顔。

同学会の日野原重明理事長は、
「音楽療法士をボランティアではなく、国家資格として
法制化していきたい。
そのため、国民に音楽の必要性をもっと理解してもらいたい」


http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/9/27/126049/

年間死者15万5千人減少 肥満対策で、OECD推計

(2010年9月24日 共同通信社)

経済協力開発機構(OECD)は、学校で規則正しい食生活を
教えたり、医師が個人カウンセリングをしたりするなどの
総合的な肥満対策を講じれば、
日本では慢性疾患による死者を、年間15万5千人減らせるとした
報告書「肥満と予防の経済学」を発表。

対策の費用は、国民1人当たり年間19ドル(約1600円)。
カロリーの高い食事の普及や運動量の減少など、
OECD加盟の多くの国で、肥満の割合が増えていることを踏まえ、
報告書を初めて作成。

肥満対策により、主要な慢性疾患にかかる医療費の総額を
約1%削減できると分析。

詳細な分析を希望した日本、イギリス、イタリア、カナダ、メキシコの
5カ国について、世界保健機関(WHO)と共同で、
肥満対策の効果で、今後100年間で慢性疾患による死者数が
どのくらい減少するかを推計。

その結果、イタリアが年平均7万5千人、イギリスが7万人、
メキシコが5万5千人、カナダが4万人で、日本の減少数が最も多い。

日本の成人に占める肥満の割合は約3%と、
OECD加盟国で最低水準だが、報告書を執筆した
OECDのエコノミスト、フランコ・サッシ氏は、
日本は高齢化率が高く、慢性疾患を抱える人の割合も多いため、
肥満対策の効果が大きくなる」と分析。

報告書は10月、OECDの保健担当相会合で議論される予定。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/9/24/125972/

唾液で疲れ測定 ヘルペスウイルスの量に注目、1年以内に実用化へ

(2010年9月24日 毎日新聞社)

だるい、眠い、体が重い--。
日本人の6割が感じている疲れは、痛みや発熱と同様、
体の異常を知らせるアラーム。

これまで客観的に測る物差しがなかったが、
最近新たな測定法が開発されつつある。
その一つが、唾液中にいるウイルス量を調べるというもので、
1年以内に実用化できそう。

会社員の女性(32)は、昨年の育児休暇中に味わった
悔しい思いが忘れられない。

昼夜を問わない乳児の世話で、へとへとに疲れていたが、
「仕事を休んで家にいるんじゃないか」と、
夫は家事も育児もほとんど手伝ってくれなかった。
「いくら『疲れた』と口で言っても、説得力がなくて困った。
『これだけ疲れているから手伝って』と、数値で示せる材料が欲しかった」

疲れは、これまで客観的な指標がなく、どのくらい疲れているのか、
自己申告に頼るしかなかった。

東京慈恵会医科大の近藤一博教授(ウイルス学)は、
疲れと疲労感は違う。
疲労感は、報酬や達成感などで吹き飛んでしまうこともあるが、
疲れは、体を休めないととれない」

自己申告では、主観的な「疲労感」は測定できるが、
その人の本当の心身の「疲れ」はなかなか分からなかった。

近藤教授らのグループは、疲れると唇にヘルペスという
水疱ができるのをヒントに、ウイルスを使った新たな疲労の
測定検査を開発。

唇のヘルペスは、ヘルペスウイルスの一種が引き起こす。
このウイルスの仲間は、通常体内に潜伏し、疲労が蓄積するなど
宿主の体が危機的な状況になると、別の体に移動しようとして
再活性化し、口の中に集まってくる性質を持っている。

近藤教授らは、この仲間の中でも、ほぼ100%の日本人が
乳幼児期に感染し、突発性発疹を引き起こす
HHV6とHHV7の唾液の中の量を測っている。

HHV6は一時的な疲労、HHV7は慢性疲労の測定に適している。
検査では、4cm弱の円筒形のコットンを約3分間、
かまずに口に含んで唾液を吸収させ、専用容器に入れる。
近藤教授の研究室では、唾液中からウイルスDNAを分離、
量を調べている。

近藤教授らが、定時の仕事をしている事務職の20人と、
1日5時間以上残業している営業や研究職の40人の唾液で
ウイルスの量を測ったところ、定時の人では唾液1ml中のHHV6が
平均500個、HHV7は平均5000個、
残業が多い人では、どちらも10倍以上検出。
残業が多い人ほど、ウイルス量も多かった。

これまでの調査では、若手のサラリーマンや工事現場で働く
作業員は、どちらかというとHHV6が高い傾向、
年配の管理職の会社員は、HHV7が高い人が多かった。
近藤教授は、「疲れは、すべての病気のきっかけになる、
といっても過言ではない」

HHV6が高い人は、一時的な体の疲れなので、1日ゆっくり休むこと、
HHV7が高い人は、疲れが常態化しているので、
生活そのものを見直した方がいいとアドバイス。

現在、HHV6とHHV7を使った検査を受けられるクリニックの
開設準備が東京都内で進み、1年以内には一般人も
検査を利用できるようになる(自由診療)。

疲労に関する国内の調査では、文部科学省研究班が04年、
大阪府内に住む1万人(有効回答2742人)を対象に実施、
56%「現在疲れている」、39%「疲れが半年以上続いている」。

厚生労働省は09年、客観的な疲労の評価法と診断指針の作成を
目指す研究班を発足。
HHVをはじめ、自律神経のバランスや、血液中の活性酸素の
割合などを測定する検査を組み合わせ、
新たな疲労の診断方法の確立を進めている。

班長の倉恒弘彦・関西福祉科学大教授は、
「内科では、体温や血圧、血液中の白血球の数などで診断するが、
疲れにはこういう指標がなかった。
疲れを評価する複合的な物差しが出来上がれば、
その人にとって、何が最も適切な治療なのかもわかる。
全国のどの病院でも、適切な疲労の診断ができるようにしたい」

11年度にも、研究結果をまとめる予定。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/9/24/125991/

インサイド:次代の針路 第3部 子どもの体力/3

(毎日 9月23日)

小学校の体育の現場で近年、「ソフト化」が進んでいる。
授業に接触プレーのない競技が導入され、
ハードルやバレーボールなどで軟らかい素材の用具が普及。
文部科学省の掲げる「やさしい体育」が浸透。

新競技の代表例には、タグラグビーがある。
ボールを前に投げずにパスをつなぎ、トライを奪うのは
本家と同じだが、接触プレーは反則。
タックルの代わりに、腰につけたタグ(帯)を奪い合う。
小学校で、来年度に導入される新学習指導要領でも推奨。

秩父宮ラグビー場近くの港区立青山小学校では昨年から、
タグラグビーを授業に取り入れた。
5年生の赤池美穂さんは、「ボールの形が、いつもと違うのが面白い」と
不規則に弾む楕円球の魅力に引かれた。
後藤美咲さんも、「けがが少ない」と、女子でも安心して楽しんでいる様子。

タグラグビーの普及は、競技のすそ野拡大を目指す
競技団体の思いとも合致。
日本ラグビー協会は、19年国内初のW杯開催を控え、
ラグビー文化の醸成が課題。

日本協会で、普及育成を担当する永井康隆さん(34)は、
「タグラグビーが入り口となり、競技人口増加につながれば」と期待。
学校でのタグラグビー教室に加え、先生などを対象とした
指導者養成講座の開催に力を注ぐ。

用具のソフト化も顕著。
東京都港区立三光小学校では、バーがウレタン素材で
軟らかいハードルを購入。

従来は、転倒してけがの多かったハードルの安全性は格段に高まった。
体が触れると、軟らかいバーの中央が左右に割れる
「フレキハードル」を開発したニシ・スポーツによると、
昨年の小学校向け商品の販売数は、07年の6・8倍に急増。

同小では、ソフトバレーボールも取り入れ、
児童からは「突き指が減った」との声も。
スポンジなどで、加工した軟らかい跳び箱を使う学校もある。

文科省が掲げる「やさしい体育」とは、運動が苦手な子どもたちの
用具への恐怖心を取り除き、競技のルールを簡単にするもの。
未経験のスポーツを導入して、経験差による優劣を減らし、
活躍の場を広げる狙いもあり、
タグラグビーは鬼ごっこの延長の感覚で、体を動かす入り口だ。

現在の子どもは、危険を回避する力が育っていないとの指摘。
ドッジボールが、顔に飛んできても避けられず、
まばたきができなくて目を痛めたケースも。

三光小の小鹿原賢校長は、「少子化で、子どもは昔よりも
大事にされる傾向があり、体が弱くなったと実感。
つまずいた時、とっさに手が出ず、柱に額をぶつけた子もいた」

青山小の曽根節子校長は、「高学年では痛さを経験したり、
技術の向上などに挑戦する気持ちを育てることも大切」

国もこうした現状は把握し、文科省企画・体育課の
白旗和也教科調査官は、「体育が甘やかされた状態になる
可能性もあり、失敗を恐れないことが危険にもつながる」、
行き過ぎたソフト化には警鐘を鳴らす。

子どもが運動になじむ入り口としては、有効なソフト化。
それをどう体力向上につなげていくか?
一かゼロかの選択ではないだけに、個々の発達段階に合わせた
バランスが求められる。

http://mainichi.jp/enta/sports/archive/news/2010/09/23/20100923ddm035050148000c.html

2010年10月5日火曜日

目覚め維持の仕組み解明 不眠症の治療に期待

(2010年9月22日 共同通信社)

目覚めている状態を維持するのに、脳内の神経タンパク質
「オレキシン」がどう作用するかのメカニズムを解明、
自然科学研究機構生理学研究所の山中章弘准教授(神経生理学)
らの研究グループが、22日付の米科学誌
「ジャーナル・オブ・ニューロサイエンス」で発表。
不眠症治療への応用が期待。

山中准教授らは、マウスの実験で、脳の視床下部にある神経細胞が、
オレキシン放出後、再びオレキシンを受け取るサイクルを
繰り返していることを発見。
神経細胞が、互いにオレキシンを受け渡しあうなどして活性化を続け、
目覚めた状態を維持していることも分かった。

オレキシンが、睡眠と目覚めに関係しているのは知られていたが、
仕組みには不明点が多かった。

山中准教授によると、この放出と受容のサイクルを途切れさせる
脳の別の機能が働くと、人間は眠くなるが、
不眠症の患者は機能が阻害されている。

昼間に、過度の眠気に襲われるナルコレプシーという睡眠障害の場合、
サイクルがうまく働いていない可能性がある。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/9/22/125926/

インサイド:次代の針路 第3部 子どもの体力/2

(毎日 9月22日)

熊本市の住宅地の中にある公園。
気温30度以上の暑さが残る夕方、40歳代の男性が熱心に、
小学2年生の男子に、鉄棒の逆上がりを教えていた。

「もっと強く棒を握って」、「棒を握る手の間を広くした方がいいよ」
一見、親子のように見える会話だが、
実は2人は、体育の家庭教師と教え子という関係。

「ナガタスポーツ家庭教師サービス」を開業した永田淳一さん(42)。
以前は、事務職員をしながら地元の高校で、
野球部やソフトボール部の監督を務めていたが、
県教育委員会への異動で、子どもを指導する機会がなくなり、
05年に会社を設立。

現在、教えているのは約30人。
内容に決まったものはなく、子どもの要望に合わせる。
夏休み前になると、水泳指導が増え、運動会前はかけっこ、
鉄棒やキャッチボールなどを指導することも。
マンツーマン指導なら、60分間で2500円、
90分間で3000円という料金設定。

熊本県は、09年度の文部科学省の全国体力・運動能力調査
(体力テスト)で、握力やソフトボール投げなど8種目の体力合計点が、
男子では全国平均54・19を上回る55・25で、
全国でも上位に位置づけた。

永田さんは、「こういう地方でも、遊ぶ場所が少なくなっている。
ゲームなどの誘惑は、全国どこでも変わらない」と危機感。
当初は、ビジネスが成り立つか不安もあったが、
運動のできない子どもたちが多いことを実感。

体育の家庭教師は、90年代に東京など都市圏で始まった。
当初は、私立の幼稚園や小中学校の受験対策としてだったが、
次第に勉強の家庭教師のように、一般家庭に広まった。
インターネットの普及で、情報が入手しやすくなり、
最近は増える一方。
東京近郊だけでも、20社以上の業者がある。

世田谷、杉並両区で、体育の家庭教師を派遣する
「トライ&サポート」は、開業から3年間で、会員数が短期も含めて
150人に達しようとしている。

社長の海老沢美由紀さん(36)は、「親、兄弟、先生、
近所のお兄さん、お姉さん。
体育の家庭教師は、その子によっていろいろな代役をしている」

高校まで剣道の経験があり、教師を目指して体育大に通った。
イベント会社に勤めていたが、子どもたちに教える夢をかなえるため、転身。

巡り合った子どもたちは、さまざまだった。
自転車を使った学校行事を前に、自転車に乗れるようになりたいと、
駆け込んできた高校生。
スイミングクラブの昇級試験のため、水泳の補習に来る小学生、
やはり運動会前は、かけっこの需要が増える。

海老沢さんは、「できないのではなくて、教えられていない子が多い。
だからと言って、小学生にいきなりトレーニング形式で
教えようとしても、拒否してしまう。
あくまでも、遊びの延長の中でやらないと通用しない

かつて、鉄棒や自転車、キャッチボールなどは、
親や兄弟姉妹、友達との遊びの中で覚えてきた。
現代では、その遊びが消えようとしている。
広場が少なくなり、塾通いに追われて時間がない。

遊びに必要と言われている「空間」、「時間」、「仲間」の「3間」。
体育の家庭教師は、失われたものの一部を取り戻す産業になっている。

http://mainichi.jp/enta/sports/archive/news/2010/09/22/20100922ddm035050091000c.html

セメントを透明な金属にする夢さらに前進

(サイエンスポータル 2010年9月27日)


液晶ディスプレイなどに欠かせない、透明な金属の代わりに
なり得る、セメントに似た化合物(12CaO・7Al2O3)が、
金属のように電気をよく通す理由を、
東北大学と東京工業大学の研究チームが解明。


石灰とアルミナという、ありふれた物質の化合物である
12CaO・7Al2O3が、電気を通しかつ透明な金属になり、
超電導材料にもなることを、細野秀雄・東京工業大学教授らが
02~07年にかけて発見、国内外で大きな関心を呼んだ。


細野教授らによる世界の研究者の常識を覆す成果は、
0.5nmという微細な「カゴ」の中に、特別な工夫によって
多数の電子を入れることで実現。

今回、細野教授と東北大学原子分子材料科学高等研究機構の
相馬清吾助教、高橋隆教授らは、光電子分光という手法により、
結晶の外に抜き出した電子のエネルギー状態を調べ、
12CaO・7Al2O3の「カゴ内電子」の直接観測に、初めて成功。

セメントと同様の化合物が、透明な金属さらには超電導体となる
メカニズムが、予測されていた通り、「カゴ内電子」によることを確認。

透明な金属は、液晶ディスプレイやテレビなどに欠かせない材料だが、
現在は海外から輸入しているインジウムという
希少金属に頼っている。

細野教授らのこれまでの研究成果は、ありふれた元素から成る
材料でも、ナノ・テクにより新しい機能を発現できる可能性を
示したとして、昨年スタートした最先端研究開発支援プログラム
30課題の一つに選ばれている。

今回の金属化メカニズムの解明により、12CaO・7Al2O3を
モデルケースとした新材料開発が、さらに進展していくことが期待。

今回の成果は、最先端研究開発支援プログラム
「新超電導および関連機能物質の探索と産業用超電導線材の応用」
(中心研究者:細野秀雄教授)、科学技術振興機構の
戦略的創造研究推進事業 チーム型研究(CREST)
「物質現象の解明と応用に資する新しい計測・分析基盤技術」研究領域
(研究総括:田中通義 東北大学 名誉教授)の研究課題
「バルク敏感スピン分解超高分解能光電子分光装置の開発」
(研究代表者:高橋隆教授)によって得られた。

http://www.scienceportal.jp/news/daily/1009/1009271.html

台湾に本県観光PRへ 「どんど晴れ」人気追い風

(岩手日報 9月27日)

台湾で、今月放送が始まった本県舞台のドラマ「どんど晴れ」の
高視聴率を追い風に、県と盛岡市、盛岡商工会議所(永野勝美会頭)
などは、ドラマを活用した台湾の観光客誘致キャンペーンに乗り出す。

来月、谷藤裕明市長と永野会頭らが現地を訪れ、
ドラマの舞台盛岡をアピール。

韓国ドラマ「アイリス」の効果で、観光客が急増した秋田県のようにと、
関係者は「どんど晴れ効果」に期待。

「どんど晴れ」は、2007年に放送されたNHKの連続ドラマで、
台湾での番組名は「旅館之嫁」。

1日から、ケーブルテレビ局の日本番組専門チャンネルで放送が始まり、
同チャンネルで、常に視聴率5位以内の人気番組。

今後3年間に、最高6回繰り返し放送される予定で、
本県の自然や街並みが長期間、台湾のお茶の間に流れる。

これを好機と、永野会頭と谷藤市長ら関係者約10人は、
来月18日から4日間、台湾を訪れ、現地メディアや旅行代理店の
関係者らに、「旅館之嫁の舞台盛岡」をPR。
ロケ地巡りマップの中国語版を制作するなど、受け入れ態勢も整える。

台湾は09年度、本県を訪れた外国人観光客約9万人のうち、
約5万2千人を占める「お得意さま」。

谷藤市長は、「ドラマの舞台となった盛岡の美しい自然と
豊かな人情をアピールしたい」、
永野会頭も、「どんど晴れを縁に日台交流を一層盛んにしたい」

県などは、11月5~8日に台北市で開催される
台北国際旅行博覧会にブースを出展。
こちらも、「旅館之嫁の舞台岩手」を前面に打ち出し、
約20万人が見込まれる来場者に、八幡平の雪の回廊、
小岩井農場の一本桜、温泉旅館への宿泊などを組み合わせた
旅行プランを、アピールする方向で検討。

台北市内を走る路線バスの車体に、
「旅館之嫁の舞台」などと記した本県観光のラッピング広告を展開。

秋田県では、同県が舞台となった韓国ドラマ「アイリス」の
ロケ地などを訪れる観光客が急増。
宿泊費など、直接的な経済効果だけで2億5千万円を超える。

台湾の法人が持つ「旅館之嫁」の商標使用など、
今後解決すべき課題はあるが、盛岡広域振興局産業振興課の
伊藤等特命課長は、「台湾は中国本土への情報、
流行の発信源となっており、波及効果が期待できる。
必ず成功させたい」

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20100927_7

2010年10月4日月曜日

浜松で「心の健康」調査 在日ブラジル人、3割が「抑うつ状態」

(2010年9月24日 毎日新聞社)

浜松市精神保健福祉センターは、市内に外国人登録している
ブラジル人の「心の健康」を調べた結果をまとめた。

回答者の約3割が、悩みやストレスにより「抑うつ状態」と判定、
同センターは、「経済的な不安や生活習慣の違いなどの
複合的な問題が強いストレスになっている」
在日ブラジル人に限って、メンタルヘルスを調べたのは全国で初めて。

調査は、アンケート形式で昨年12月から今年2月にかけて行った。
16歳以上のブラジル人のうち、5000人を無作為抽出して
調査用紙を郵送。

4085人に用紙が届き、男性378人、女性343人の計721人
(回収率17・6%)から回答。

回答結果から、「抑うつ状態」と判定した割合は28・7%。
自殺を考えたことがあるとの回答は、8・6%。

過去1年間に悩みを抱いたり、ストレスを感じたと答えた約6割の人に、
その原因を複数回答で尋ねたところ、
収入減などの「経済問題」が43・6%で最多。
「家庭問題」26・6%、仕事先での人間関係など「勤務問題」26・4%、
「健康問題」13・7%--などと続いた。

同センターは、「ブラジル人が、母国語で相談を受けられる施設を
増やすなどの対策を講じる必要がある」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/9/24/125989/

インサイド:次代の針路 第3部 子どもの体力/1

(毎日 9月21日)

夏休みが終わり、小中学校では秋の運動会シーズン。
小学校卒業までの少年期は、スポーツの基本的動きや技術を
身につけるのに、最も適した「ゴールデンエージ」と呼ばれている。

日本では、その年代の運動能力低下が叫ばれ続けている。
そこに何の原因があり、どんな取り組みが進められているのか?
子どもの体力向上に焦点を当てた。

◇競技団体も向上に本腰

味の素ナショナルトレーニングセンターに、男女約10人が集まった。
女子サッカーやバスケットボール、男子ハンドボールの
元日本代表選手も含まれる。
大人たちがボールを投げたり、けったりして遊んでいた。

◆指導者養成へ講習会

国内のボール競技の団体でつくる
日本トップリーグ連携機構(JTL)が主催した、
「ボールであそぼうマイスター」の講習会。

「ボールであそぼう」は、JTLが昨年、子ども向けに作製した
DVDのタイトル。
NHKの番組「からだであそぼ」を手がけた
山梨大教育人間科学部の中村和彦准教授が中心、
ボールを投げるなどの基礎、パスなど連係プレー、
普段はできない体の動きを、遊びの中で習得してもらおうというもの。

講習会は、指導者(マイスター)を養成するもので、
2年間で46人が認定。
マイスターたちは、全国のイベントなどで、
子どもたちにボール遊びを教える。

JTLの平野祐司事務局長は、
「我々の直接的な仕事ではないかもしれないが、
体力向上とともに、ボールに向いてくれる子どもを増やすことが大事」

文部科学省が行った、09年度の体力・運動能力調査では、
小学5年生(10~11歳)の男子の50m走の全国平均は9秒37。
85年度と比べ、0秒32遅い。
ソフトボール投げでは、男子が25・41mと約4・5m短い。

85年前後は、コンビニエンスストアやテレビゲームの出現で、
生活環境が大きく変化した時期。
それまでの、子どもたちの遊びは、野球や缶けり、ゴム跳びなどの
体を使ったものが中心、現在の主流はテレビゲーム、カードゲーム。

体を動かさなくなったことが、体力の低下に。
中村准教授は、「体力そのものより、動きを習得していない子が多い

◆運動しない小学生

中村准教授は、07年、小学生以下の「走る」、「跳ぶ」、「投げる」、
「捕球する」など、7つの動きをビデオで撮影、
動きの発達度を5段階で分けて数値化する調査。

投げる動作では、発達段階に応じて、
(1)足を使わない手投げ、
(2)体のひねりが加わる、
(3)投げる時に手と同じ側の足を出す、
(4)手と反対側の足を出す、
(5)振りかぶって投げる--と分類。

85年、中村准教授が撮影した同年代の子どもと比較すると、
85年は、(3)が最も多かったのに対し、
07年では(1)と(2)が全体の7割と、未熟さの傾向が出た。

7つの動作の平均ポイントでは、07年の幼稚園年長(5~6歳)は
85年の年少(3~4歳)並みと、2歳程度運動レベルが下がる。

走る動作を分析すると、07年の小学5年生が
85年の幼稚園年長とほぼ同レベルという驚くべき結果。

体力の低下だけでなく、正確な動きができないから、
体力テストの数字も上がらない。
それを裏付ける構図だった。

国連教育科学文化機関(ユネスコ)の調査によれば、
11歳の子どもが下校後に週に2回、30分以上の運動をする割合は、
男子でオーストラリア、ドイツ、フランスが8割超、
日本はわずか37%、調査した20カ国の中で最低。

中村准教授は、「日本は、世界で最も運動していない小学生がいる
国ということを認識することが、体力向上の第一歩になる」と警告。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/general/archive/news/2010/09/21/20100921ddm035050107000c.html

携帯電源用燃料電池に期待の素材開発

(サイエンスポータル 2010年9月21日)

リチウムバッテリーに代わる小型燃料電池開発につながると
期待される新素材を物質・材料研究機構
国際ナノアーキテクトニクス研究拠点の研究チームが開発。

トラベルサ・エンリコ・グループリーダーらが作製に成功したのは、
イットリウム添加ジルコン酸バリウムの薄膜。

イットリウム添加ジルコン酸バリウムは、
小型固体酸化物燃料電池の素材として注目、
多結晶材料として焼結性が悪く、電池の性能を左右する
プロトン伝導率が低い、という難点を抱えていた。

エンリコ・グループリーダーらは、パルスレーザー堆積法を
用いることにより、結晶粒界のない薄膜の作成に成功、
携帯電源用として不可欠な低温(350℃以下)でも、
これまでに開発された固体酸化物燃料電池用電解質の中で
最高の性能(プロトン伝導率)を持つことを確認。

ノート型パソコン、携帯電話など、携帯電源用として
期待が大きい小型固体酸化物燃料電池は、環境に優しく、
かつ効率的にエネルギーを生産できる利点を持つ。

充放電サイクルを必要とせず、リチウムバッテリーよりも
エネルギー密度が大きい。
リチウムバッテリーに代わる小型固体酸化物燃料電池の開発に、
新たな展望を切り拓く可能性を持つ研究成果。

http://www.scienceportal.jp/news/daily/1009/1009211.html

森の生態系守ろう 盛岡で東北地環研が再生事業

(岩手日報 9月26日)

自然環境の調査研究に取り組む東北地域環境計画研究会
(会長・由井正敏県立大名誉教授)は、民有林で森林再生事業
「小動物が棲む森林づくり」を実施。

同地域付近で、生息が確認されている国の天然記念物・イヌワシの
すみよい環境をつくるための取り組みで、
参加者は、林業の仕事や自然環境の保護に理解を深めた。

同会メンバーや動植物の保全活動などを学ぶ
イオンチアーズクラブの子どもたちら、合計約70人が参加。

盛岡市の農林業吉田俊和さん(82)が所有するスギ林(約1ha)に移動、
切り出した木材で、イヌワシの餌となる野ウサギの隠れ家を作った。

参加者たちは、幅約1mに切り分けたスギを積み上げ、
野ウサギが入れるよう、30cmほどのすき間をつくって
枝木をかぶせ、隠れ家を完成。

吉田知世さん(津志田小5年)と泉山萌さん(岩手大付属小6年)は、
「木を切るのが思ったよりも大変だった。
野ウサギ以外にも、いろんな動物がすみやすくなるといい」と期待。

間伐は、山林の地表まで、太陽光が届くよう一定幅を決めて
伐採する「列状間伐」という手法で実施。

切り出した木材を、農耕馬で運ぶ馬搬作業も披露。
盛岡周辺では、昭和初めころまで林業に馬が使われ、
参加者は間近で伝統の技術を学んだ。

この取り組みは、今年で13回目。
イヌワシなど猛禽類の生息環境維持を目指し、県内の山林で実施。

本年度は、2006年から県が導入している
「いわての森林づくり県民税」を活用した
「県民参加の森林づくり促進事業」として採択。

由井会長は、「動植物の繁殖は、山林の環境整備と関連。
事業の結果を分析し、他地域での取り組みにも生かしたい」
同事業は、12月まで毎月1回開かれる。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20100926_10

2010年10月3日日曜日

善玉コレステロール量の調整…京大などメカニズム解明

(2010年9月21日 読売新聞)

体内で善玉コレステロール(HDL)の量が調整される
メカニズムの一端を、京都大、神戸市立医療センターなどの
チームが解明。
動脈硬化の危険性を減らす治療につながる成果、
21日の米科学アカデミー紀要電子版。

京大の尾野亘講師らは、コレステロールの代謝を制御する
たんぱく質が増えると一緒に増え、遺伝子の働きを調節している
「miR―33a」という分子に着目。

この物質を作れないよう、遺伝子操作したマウスでは、
血中のHDLが雄で22%、雌で39%増えたことから、
この物質は、HDLが作られるのを邪魔する働きがあると推察。

人の細胞で調べると、この物質は、細胞の中にあるコレステロールが
外へ出て行くのを妨げ、細胞外でHDLが合成されるのを抑える。

尾野講師は、「この物質の働きを抑える薬剤を開発すれば、
HDLが増えると期待できる。
悪玉コレステロールを下げる治療薬と同時に使えば効果的」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/9/21/125878/

インサイド:米大リーグ ビジネス最新事情/5止 新球場建設、重荷にも

(毎日 9月18日)

新球場を手に入れて、集客を飛躍的に伸ばすツインズとは対照的に、
今年最も観客を減らしているのは、ニューヨークに本拠を置くメッツ。

1試合平均約3万3000人の観客数は、
昨年より6100人も少ない。

メッツは昨年、新球場「シティ・フィールド」(4万1800人収容)を
開設したばかり。
2年目で、早くも新球場効果がはげ落ちた。
新球場建設に伴う債務の返済は、緒についたところ。

メッツは今年、高額シートを除き、
チケット料金を平均13%引き下げているだけに、
観客数の減少は経営的に痛い。

シティ・フィールドは、大手金融機関のシティグループが、
大リーグ史上最高額の20年契約、
総額4億ドル(340億円)で命名権を購入。

契約締結後に起きた金融危機で、シティは巨額の公的資金の
投入を受け、「『納税者球場』と改名すべきだ」と
批判を浴びたことも微妙に影を落とす。

◆集客効果続かず

物珍しさだけで、観客を新球場に呼び込むことができるのは、
2年が限界だ」、ハーバード大ビジネススクールの
スティーブン・グレイザー名誉教授。
景気後退も重なって、その“ハネムーン”期間はさらに短くなりそう。

新球場の建設ブームが続く大リーグでは、
この20年弱で20の新球場が完成、建設中のものが1カ所、
構想段階のものが2カ所。
多くは老朽化による建て替えが目的ではなく、
スイートルームや高額シートを増設するなど、
もうかる球場に変えることが狙い。

目先の利益だけでなく、球団の資産価値の上昇を促し、
転売時のもうけも「確約」してくれる。
建設コストの半分以上を、地元自治体が負担してくれるとあれば、
好意に甘えない手はない。
命名権販売や新球場の増収効果で、自己負担はさらに低く抑えられる。

◆資金不足で弱体化

球団の思惑ほど、新球場効果は長続きしない。
チケット料金や飲食物の価格が、一斉に値上がりするのが常、
球団は新球場への投資が足かせとなり、
選手年俸に資金を振り向ける余裕がなくなる。
チームの低迷を招く要因となり、
結果的に客足が遠のく悪循環に陥る。

球場建設だけに重きを置く姿勢は誤り。
ファンは、強いチームを望んでいる。
うちは収益確保と戦力増強の二兎を追う」。

新球場をオープンさせた効果で、少なくとも5000万ドル
(42億5000万円)の増収が見込まれる
ツインズのデーブ・セントピーター社長。
言葉通り、ツインズは今年3月、早速手を打った。

捕手マウアーと8年間、総額1億8400万ドル
(約156億4000万円)の球団史上最高額で、
契約延長にサイン。

マウアーは、地元セントポール出身。
ア・リーグの首位打者を3度獲得、昨年は同リーグMVP選出。
ツインズは、これまで貧乏球団の悲哀で、
サイ・ヤング賞投手のサンタナ(現メッツ)、
主軸ハンター(現エンゼルス)ら有力選手を
次々に放出してきた歴史があり、大きな方針転換。

セントピーター社長は、「選手年俸を(現在の8300万ドル=
約70億5500万円=から)1億ドル(約85億円)以上に増やせる」
ツインズは今、ア・リーグ中地区で首位をひた走る。

対照的に、メッツはナ・リーグ東地区4位に低迷。
新球場を造るだけで、もうかった時代は完全に終わりを告げた。

http://mainichi.jp/enta/sports/baseball/archive/news/2010/09/18/20100918ddm035050008000c.html

地域主体で高齢社会対応を 新研究開発プログラムスタート

(サイエンスポータル 2010年9月17日)

世界でも例を見ない速さで到来した高齢社会に対応するため、
科学技術振興機構 社会技術研究開発センターが、
新たな研究開発プログラム
「コミュニティで創る新しい高齢社会のデザイン」を立ち上げた。

新プログラムの研究開発課題として、
「在宅医療を推進する地域診断標準ツールの開発」
(研究代表者:太田 秀樹・医療法人 アスムス理事長)、
「新たな高齢者の健康特性に配慮した生活指標の開発」
(同鈴木 隆雄・国立長寿医療研究センター研究所長)、
「ICTを活用した生活支援型コミュニティづくり」
(同小川 晃子・岩手県立大学社会福祉学部・地域連携本部教授)、
「セカンドライフの就労モデル開発研究」
(辻 哲夫・東京大学高齢社会総合研究機構教授)の5つが決まった。

在宅医療に関する研究開発課題では、
在宅医療が普及している自治体と遅れている自治体を比較し、
よりよい普及の仕方を客観・科学的に明らかにし、
全国への在宅医療の普及を図る。

高齢者の生活指標に関する課題では、
新たな社会生活への対応能力、ボランティアらの社会参加など、
今後の団塊の世代を中心とした活力ある高齢社会に向けての
新たな「活動能力指標」の開発と普及を目指す。

高齢社会の対応として、岩手県では、高齢者の安否と見守り情報を
家庭用電話機から発信する先駆的な取り組みが行われている。

「ICTを活用した生活支援型コミュニティづくり」では、
岩手県の取り組みを基盤として、認知レベルに応じた
安否発信方策を検討し、地域特性を生かした多様な
見守りサブセンターや休日・夜間センターの設置など、
地域の互助機能を組織化することにより、
高齢者の異変への対応や生活支援をコミュニティで行う方策を
開発、検証する。

セカンドライフの就労モデルについて、千葉県柏市で、東京大学、
柏市、UR都市機構、地域住民が一体となって、
「農」、「食」、「支援」の3つの側面から、
生きがい就労ビジネスモデルを創造し、今後特に高齢化が急速に進む
都市近郊地域におけるセカンドライフモデルづくりを目指す。

プログラム全体を領域する秋山 弘子・東京大学
高齢社会総合研究機構 特任教授は、
「日本は、世界の最長寿国で、2030年には65歳以上の人口が
総人口の3分の1になる。
世界のどの国も経験したことのない超高齢社会の課題に挑戦し、
世界に先駆けてモデルを創っていくことが急務」

http://www.scienceportal.jp/news/daily/1009/1009171.html

不滅の法灯ともす真心 平泉・中尊寺へ菜種油奉納

(岩手日報 9月24日)

平泉町の「平泉なのはな会」(千葉正吾会長)は、
中尊寺「不滅の法灯」の燃料として、同会が栽培した菜種から
搾った菜種油約70Lを中尊寺に奉納。

菜の花栽培を通じて、中尊寺と町民がきずなを深め、
世界遺産登録の機運を高めようと始まったまちづくりの火は、
平和のともしびとして、未来永劫ともされる。

奉納は、本殿で行われ同会会員や町民有志ら13人が出席。
千葉会長が、「私たちが、心を込めて育てた菜種を搾った油。
不滅の法灯の燃料としてお使いください」と、
会員の関宮治良さんが、菜種油が入ったつぼを山田俊和貫首に手渡した。

山田貫首は、「不滅の法灯は、世に明るいともしびをかかげてきた。
燃料を献納いただきありがたい」と感謝。

「不滅の法灯」は、最澄が京都の天台宗総本山・比叡山延暦寺に
ともして以来、約1200年間ともされている。

1958年、中尊寺が天台宗東北大本山の称号を
与えられた際に分灯された。

同会は昨秋、同町の休耕田約23アールを整備し、種まき。
一関市で、菜種油を製造販売するデクノボンズ
(小野寺伸吾代表取締役)の指導で、完全無農薬栽培の
良質な菜種を収穫し、9月に搾油。

70Lは、法灯の燃料約4カ月分に相当。
菜種栽培は、来年以降も続ける予定。
畑は、JR東北線や主要道路からも見える位置に整備。

千葉会長は、「平泉を訪れた人に、菜の花の景観を楽しんでもらいたい。
それが世界遺産登録の後押しにつながってほしい」と願う。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20100924_9