2010年10月6日水曜日

インサイド:次代の針路 第3部 子どもの体力/3

(毎日 9月23日)

小学校の体育の現場で近年、「ソフト化」が進んでいる。
授業に接触プレーのない競技が導入され、
ハードルやバレーボールなどで軟らかい素材の用具が普及。
文部科学省の掲げる「やさしい体育」が浸透。

新競技の代表例には、タグラグビーがある。
ボールを前に投げずにパスをつなぎ、トライを奪うのは
本家と同じだが、接触プレーは反則。
タックルの代わりに、腰につけたタグ(帯)を奪い合う。
小学校で、来年度に導入される新学習指導要領でも推奨。

秩父宮ラグビー場近くの港区立青山小学校では昨年から、
タグラグビーを授業に取り入れた。
5年生の赤池美穂さんは、「ボールの形が、いつもと違うのが面白い」と
不規則に弾む楕円球の魅力に引かれた。
後藤美咲さんも、「けがが少ない」と、女子でも安心して楽しんでいる様子。

タグラグビーの普及は、競技のすそ野拡大を目指す
競技団体の思いとも合致。
日本ラグビー協会は、19年国内初のW杯開催を控え、
ラグビー文化の醸成が課題。

日本協会で、普及育成を担当する永井康隆さん(34)は、
「タグラグビーが入り口となり、競技人口増加につながれば」と期待。
学校でのタグラグビー教室に加え、先生などを対象とした
指導者養成講座の開催に力を注ぐ。

用具のソフト化も顕著。
東京都港区立三光小学校では、バーがウレタン素材で
軟らかいハードルを購入。

従来は、転倒してけがの多かったハードルの安全性は格段に高まった。
体が触れると、軟らかいバーの中央が左右に割れる
「フレキハードル」を開発したニシ・スポーツによると、
昨年の小学校向け商品の販売数は、07年の6・8倍に急増。

同小では、ソフトバレーボールも取り入れ、
児童からは「突き指が減った」との声も。
スポンジなどで、加工した軟らかい跳び箱を使う学校もある。

文科省が掲げる「やさしい体育」とは、運動が苦手な子どもたちの
用具への恐怖心を取り除き、競技のルールを簡単にするもの。
未経験のスポーツを導入して、経験差による優劣を減らし、
活躍の場を広げる狙いもあり、
タグラグビーは鬼ごっこの延長の感覚で、体を動かす入り口だ。

現在の子どもは、危険を回避する力が育っていないとの指摘。
ドッジボールが、顔に飛んできても避けられず、
まばたきができなくて目を痛めたケースも。

三光小の小鹿原賢校長は、「少子化で、子どもは昔よりも
大事にされる傾向があり、体が弱くなったと実感。
つまずいた時、とっさに手が出ず、柱に額をぶつけた子もいた」

青山小の曽根節子校長は、「高学年では痛さを経験したり、
技術の向上などに挑戦する気持ちを育てることも大切」

国もこうした現状は把握し、文科省企画・体育課の
白旗和也教科調査官は、「体育が甘やかされた状態になる
可能性もあり、失敗を恐れないことが危険にもつながる」、
行き過ぎたソフト化には警鐘を鳴らす。

子どもが運動になじむ入り口としては、有効なソフト化。
それをどう体力向上につなげていくか?
一かゼロかの選択ではないだけに、個々の発達段階に合わせた
バランスが求められる。

http://mainichi.jp/enta/sports/archive/news/2010/09/23/20100923ddm035050148000c.html

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