2010年10月8日金曜日

インサイド:次代の針路 第3部 子どもの体力/5止

(毎日 9月25日)

千葉県佐倉市で、総合型地域スポーツクラブを運営する
NPO法人「ニッポンランナーズ」は毎週土曜日、
小学生向けの「土曜スポーツ探検隊」(土スポ)を開催。

土スポが始まったのは、02年6月。
学習指導要領の改定で、学校が完全週5日制になった時期と重なる。
「隊長」を務める北晃チーフコーチ(29)は、
「絶対的な運動量を確保し、アスリートの基盤作りができればと考えた」
と狙い。

最も重視しているのは、一つの競技に特化させないこと。
現在、参加者は約70人、年間で15を超える運動種目に取り組む。
子どもたちを、プレゴールデンエージ(小学1~3年生)、
ゴールデンエージ(同4~6年生)の年代に分け、
4月にはランニング、一輪車などで体幹部分を鍛える。
それが終わると、器械体操などで姿勢を保つ能力を、
夏ごろにはレスリングやカバディでフットワークを磨く。
最後には野球、ゴルフ、剣道などで、
自分の力を道具に伝えることを学習する。

それぞれの競技の元日本代表などゲストコーチを招くこともあるが、
主眼は技術を磨くことではなく、年間を通していろんな角度から
運動神経を刺激すること。

北チーフコーチは、「もっとも運動神経が発達するこの時期に、
さまざまな体の動かし方やその楽しさを覚えておけば、
後のスポーツ活動にも必ず生きる」と強調。

日本において、子どものスポーツ振興は、約50年前の1962年、
日本体育協会の50周年事業として創設された
日本スポーツ少年団が軸。
昨年度の登録数は、3万6138団体にも及ぶ。

そのほとんどが野球やサッカー、バスケットボール、剣道などの
単一競技を教える団体であり、複数の競技を行う「複合タイプ」は
4487団体と、全体の12%に過ぎない。

山梨大教育人間科学部の中村和彦准教授は、
運動する、しないの二極化と同時に、運動する子どもの中でも、
特定のスポーツしかできない子が増えている。
子どもの体力低下は、日本特有の問題ではないが、
海外はすでに取り組みを始めている」と指摘。

米国では、09年から小学生以下の全国・ブロック大会を禁止、
小学生時代は競技スポーツ、競争主義に偏らないように取り組み、
日本の少年団に当たるクラブは、3種目以上の競技が必須。

オーストラリアでは、政府が子どもたちの放課後の運動プログラムを
提供する取り組みを始めている。
競技の技術力向上を図るのは中学生以降で、
小学生の時は運動機会の増加と、さまざまな運動形態を
体験することに重点を置いている。

競技者としてスポーツを続けるためには、
いつかは一つの競技を選択する。
土スポの第1期生で、女子7人制ラグビー日本代表の
川野杏吏(18)は、「小学生時代に複数の競技を経験したことで、
対応力や柔軟性がついたと思う

時々、土スポや自分が通っていたラグビースクールで
子どもたちを指導しているが、新しい動きを吸収する能力は
土スポの生徒の方がたけている。
「体の動かし方を知っているというアドバンテージは大きい」と川野。
子どもたちが、複数競技に取り組む効果を身をもって実感している様子。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/news/20100925ddm035050003000c.html

0 件のコメント: