2010年10月8日金曜日

途上国との関係模索 日本企業、リスクも重視 「生物多様性会議」「新たな争奪戦―遺伝資源」

(2010年9月28日 共同通信社)

植物や微生物といった、遺伝資源を求める日本企業が、
発展途上国との関係を模索。

医薬品や健康食品などの開発に道を開き、
莫大な利益を生む遺伝資源。
一方、「原産国側からの利益配分の要求が過剰だと、
企業は経営上、大きなリスクを抱える」(製薬大手)側面も。

カルピスは、07年、モンゴルで乳酸菌や酵母の採集を試みた。
遊牧民のテント式住居「ゲル」を研究員が訪ね歩き、
20日間程度で馬乳酒などから約240株を集めた。

現地に派遣された発酵応用研究所の安田源太郎主任は、
「製品化には至らなかったが、日本にはない微生物を入手できた」

海外での遺伝資源の採取に、慎重な日本企業は多い。
「現地で得た利益を、どのように分配するか。
調整は一企業だけでは難しい」(安田氏)ことも一因。

アステラス製薬は、マレーシアの熱帯雨林で微生物を採取。
新薬開発につなげる狙いだが、遺伝資源に絡む知的財産の法律が
整備されている国でのみ、採取活動をするのが同社の方針。
渡辺裕二知的財産部長は、「予想していなかった多額の利益配分を
要求されると、企業はとんでもないリスクを抱えることに。
利益も大切だが、リスク回避はもっと大切」

鳥インフルエンザウイルス(H5N1型)への感染で、
多くの死者が出たインドネシア
ワクチン開発に必要なウイルス検体の「所有権」を主張し、
世界保健機関(WHO)への提供を拒んでいた。
検体からできたワクチンを、先進国が高額で販売することへの
反発が背景にある。

阪大微生物病研究会は、インドネシアの製薬企業に、
ワクチン製造技術の提供を欧米の企業に比べ、低額で始めた。
同研究会の合田英雄常務理事は、
「もしワクチン開発に遅れがでれば、取り返しがつかない」

医療関係者は、「インドネシアが自国でワクチンを製造できれば、
かたくなな態度も軟化するかもしれない」と期待。

産学連携で遺伝資源の問題に取り組むバイオインダストリー協会の
炭田精造生物資源総合研究所長は、
「生物資源を得て、商品開発に至っても、すべて金銭で
(原産国に)還元するのは現実的には厳しい」
「途上国の求める技術提供などを地道に続けて、
双方が得をする仕組みを構築するしかない」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/9/28/126120/

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