2010年7月24日土曜日

インサイド:次代の針路 第2部 中学部活の再建策/3

(毎日 7月15日)

東京都渋谷区の松濤地区。
都知事公館や外国人住宅などが並ぶ高級住宅地。
その中に、昨年、創立60周年を迎えた区立松濤中がある。
放課後、グラウンドで十数人の野球部の練習が始まった。

就任3年目の鈴木富樹校長は、
「グラウンドがにぎやかだと、学校にも活気が出てくる」
松濤中は、70年前後は1学年9クラスの大規模校だったが、
ドーナツ化現象とともに、十数年前には全校生徒が
100人を切るまでに減った。
野球部は一度姿を消し、3年前に復活したばかり。

約22万人の中学生が通う都内の公立中。
地方とは違った難しさがある。
都教育庁の調査によると、06年度に都内の公立中で
休廃部になった部活動は331部。
一方、457部が創設。
その理由の3分の2が、「学校事情」。

都教育庁指導部の鯨岡広隆副参事は、
「中学校は、1校当たりの教員が少ないが、
学校数が多いので人事異動が多い。
異動で顧問ができる人がいなくなるケースがある」

顧問が去った学校では、部が消滅し、
異動先で誕生する好ましくない循環だった。

こうした状況に拍車をかけているのが、都内の大半の区で
採用されている「学校選択制」。
校区外の学校にも、本人の希望で通うことが認められているため、
生徒数が変動しやすい。

この対策について、全日本中学校長会で生徒指導部長を務めた
都教職員研修センターの谷合明雄教授は、
一つの部に複数の教員があたる「複数顧問制」を提唱。

忙しい教員にとって、部活動は負担になるが、
それを2人以上で分散させれば、異動によって
指導者がいなくなることを防ぐことができる。

谷合教授は、新宿区内の二つの中学校で11年間校長を務めた時、
複数顧問制を導入。
部活動の増減はなくなり、学校運営も安定した。
谷合教授は、「顧問を頼む時も、一人で見なくていいと言えば頼みやすい。
部活動をなくさないことは、子どもの心の安定につながる

松濤中野球部の復活は、少年野球をしていた子どもたちの
受け入れ先として、地域からの要望が強かったから。
学校は、6年前に区の英語教育重点校に指定されて、
生徒は増え始めていた。

部の顧問になった浜島浩二教諭(31)に野球の指導経験はなかったが、
甲子園出場経験のある兄の影響などで知識はあった。
9人に満たない部員で、グラウンドの整備から始まった。

今年、野球部では臨時採用にあたる期限付き教員が副顧問、
特別支援学級の男性補助員がコーチになった。
地域の少年野球チームからも協力を受ける。
浜島教諭は、「それまで練習が終わった後に学校の仕事をしていたが、
複数顧問になって負担は軽くなった」

順風満帆に見える野球部の再出発に、心配の種が消えたわけではない。
副顧問やコーチは、採用試験の結果次第では、来年にも学校を変わる。
浜島教諭にも、いずれ異動時期が訪れる。
「外部指導員を含め、いかに人材をつなげていくかが存続のカギ」
と鈴木校長。
部存続に向けた試行錯誤は続いている。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/news/20100715ddm035050180000c.html

スポーツ立国戦略:原案、官主導に戸惑いも…JOC関係者

(毎日 7月21日)

国のスポーツ政策の基本的方向性となる「スポーツ立国戦略」の
原案が20日発表、五輪で過去最多となるメダル獲得などの
具体的目標が掲げられたが、JOC関係者は、
「強化に必要なことが明確になっている」と評価する一方、
「官主導型のスポーツ戦略だ」などと、JOCに一任してきた
選手強化への国の介入を示唆する部分には戸惑い。

戦略案では、国際競技力向上などを評価する外部有識者委員会の
設置が盛り込まれた。
国立スポーツ科学センターの機能を強化し、
ナショナルトレーニングセンターのあり方も検討する。

JOCの市原則之専務理事は、「まだ原案なので、キャッチボールを
していきたい。有識者の考えることも重要だが、現場の意図を
酌んでもらえるように努力する」

普及面では、引退したトップアスリートを地域の総合型クラブの
指導者として配置する施策が出され、日本体育協会の
岡崎助一専務理事は、「総合型クラブを国として支援するなど、
体協の意見も取り入れてくれた」

トップアスリートのクラブへの投入には、「指導者として
どう育成していくのか、具体性が見えない」と不安。

文科省は、スポーツ団体などから意見を聞き、
8月下旬にまとめる予定。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/general/news/20100722k0000m050075000c.html

「豊かな死」1位は英国 日本は23位、医療費高で

(2010年7月15日 共同通信社)

世界で最も「豊かな死」を迎えられるのは英国-。
英調査会社が、終末医療の現状などを基準にした
40カ国・地域の「死の質ランキング」を発表。

日本は、高額な医療費と医療に従事する人員の不足がたたり、
23位と低い評価。

調査したのは、ロンドンが拠点のエコノミスト・インテリジェンス・ユニット。
終末医療や苦痛を和らげる緩和医療について、
各国の医療関係者に聞き取りを行い、
普及状況や質、医療費など複数の観点から評価。

トップは英国で、ホスピス普及率の高さに加え、
専門家養成の環境が整備されていることなどが評価。
2位以下は、オーストラリア、ニュージーランドが続いた。

高齢化が著しい日本について、調査に当たった
トニー・ナッシュ氏は、「医療システムは高度だが、
在宅医療など患者や家族に寄り添うケアが難しいようだ」と分析。

施設の整備度が評価される一方、
医療保険の不備が問題視された米国は9位。
中国(37位)、ブラジル(38位)など、新興国は軒並み評価が低く、
人口増大に医療普及が追いつかないと指摘されたインドは最下位。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/7/15/122852/

記憶めぐる遺伝子発見 精神疾患の解明へ

(2010年7月15日 共同通信社)

岐阜薬科大は、脳の記憶や認知機能にかかわる
新たな遺伝子を発見したと発表。
精神疾患のメカニズム解明や新薬開発の手がかりになる。

同大と神戸大などの研究グループは、
記憶や学習に関係する海馬に多く存在する
「ジアシルグリセロールキナーゼβ」と呼ばれる遺伝子に着目。

この遺伝子を持たないマウスをつくったところ、
脳の神経細胞に異常がみられたり、記憶障害があった。

岐阜薬科大の原英彰教授は、
「この遺伝子は、そううつ病などの精神疾患ともかかわりの深い遺伝子。
今後さらに働きを調べたい」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/7/15/122849/

2010年7月23日金曜日

Gタンパク阻害を解明 がん治療薬開発も

(2010年7月13日 共同通信社)

生命の維持機能を調節する体内の「Gタンパク質」の働きを、
特定の化合物が阻害する仕組みを、
奈良先端科学技術大学院大とアステラス製薬のチームが突き止め、
12日付の米科学アカデミー紀要電子版に発表。

Gタンパクは細胞にあり、光やにおい、ホルモンの感知や、
筋肉、心臓の動作などの機能に関与。

過剰になるなどの異常があると、がんや心筋梗塞につながり、
奈良先端大の伊東広教授は、
「働きを邪魔すれば、治療薬の開発が可能」

細胞では、表面で分子レベルの信号を受け取ると、
Gタンパクが"開いた"構造に変化。
GDPという物質を放出し活発に働きだし、
血管収縮や神経系の興奮も起きる。

チームは、土壌細菌が作り、血液の凝固を防ぐ化合物が
Gタンパクを阻害するのに注目。

大型放射光施設「スプリング8」(兵庫県)で構造を調べた結果、
化合物がGタンパクのくぼみに入り込み、
開いた構造になるのを妨げていた。

Gタンパクは人で約20種あり、くぼみの形が異なる。
各くぼみに合う化合物を作れば、さまざまな病気の薬を
開発できる可能性がある。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/7/13/122774/

インサイド:次代の針路 第2部 中学部活の再建策/2

(毎日 7月14日)

「もう一本」、「サーブはもっと鋭く」。
大分県南西部の山あい、大分市野津原地区にあるテニスコートで、
中学生たちが声を掛け合いながらボールを追う。
週5日の練習に参加するのは、市立野津原中のテニス部員9人。
昨年秋の県新人中学生大会の女子ダブルスで優勝した
3年生と2年生のペアもいる。

全校生徒82人という小規模校の野津原中にとって、
県レベルでの優勝は初。
指導するのは、顧問の教諭ではなく、総合型地域スポーツクラブ
「七瀬の里Nクラブ」の波多野浩さん(48)。
日本体育協会公認テニス指導員の資格も持つ、
競技歴30年超のベテランで、市役所勤務を終えた夕方から
毎日、コートに立つ。
部員は学校ではなく、このクラブで指導を受ける。

総合型地域スポーツクラブとは、年代にとらわれず
各種競技に取り組めるクラブのこと。
00年、策定された国のスポーツ振興基本計画では、
10年間で各市町村に最低一つは創設する目標が盛り込まれたが、
09年度の統計では、準備中のクラブを含め設置市町村は64・9%
(準備中を除くと47・1%)。
地域に浸透するには、学校との連携が大きな課題。

「Nクラブ」の設立は、04年。
現在、小学生から70歳代まで約800人の会員、
57人の指導者のもとで陸上や球技、レクリエーション種目など
20以上の競技が楽しめる。

野津原中の「部活動支援」は、当初からクラブの活動目的の一つに
盛り込まれている。
クラブ設立に携わり、当時同中教諭だった事務局長、
森慎一郎さん(49)が、部活動の存続に危機感を抱いており、
両者の連携を提案した。

「クラブから指導者を派遣したり、部活動をクラブに移管して、
地域で運営すれば、子供たちが安定してスポーツに取り組める」
創設準備期間中に、保護者と学校、クラブ3者の間に立ち、
教師が立ち会わずに部活動として成り立つのか、
事故の場合の責任の所在--などの問題を明確にし、
3者が納得してスタートできるよう説明などに奔走。

現在、同中には六つの運動部がある。
Nクラブに運営を移管しているのはテニス部のみで、
柔道、剣道部にはクラブから指導者が派遣。
部員2人のサッカーや、部がない野球を希望する生徒は、
Nクラブで他校の生徒に交じって活動。

日本体育協会クラブ育成課の金谷英信係長によると、
総合型地域クラブが部活動を支援する例は全国的に見られるが、
Nクラブの場合、現場の教師が主体となり、
相互の連携を作り上げた点が「画期的」だ。

設立から7年目。課題もある。
クラブを活用する場合、月2000~5000円の参加費が必要。
「あいさつなど、教育的な面まで目が届かない」と心配する指導員も。
野津原中の本田雄二校長も、
「部活は教育の一環で、教員が見るのが基本」との
思いがあるだけに、胸中は複雑。

野津原中の卒業生でもある森さんは、当時も野球部がなかったため、
「泣く泣くサッカー部に入った」経験。
小規模校だからという理由で、子供の可能性を奪いたくない。
地域と部活動の連携を深め、ベストな形を追い求めたい」

http://mainichi.jp/enta/sports/general/news/20100714ddm035050046000c.html

C型肝炎治療に朗報 ビタミンAで効果上昇確認 島根大病院

(2010年7月15日 毎日新聞社)

島根大医学部付属病院肝臓内科の佐藤秀一・診療科長らの
グループは、肝がんを引き起こす主な要因であるC型肝炎について、
従来の治療に加え、ビタミンAを多量に投与すると、
治療効果が上がることを確認。

投与により副作用が増えることはなく、佐藤診療科長は、
「県内に多い高齢者や副作用の出やすい患者の治療にも
効果が期待できる」

C型肝炎では、インターフェロン注射とリバビリン内服の併用が
最も効果的な治療法とされ、難治型と言われる患者では
半数程度しか完治しない。

研究は、同病院と県立中央病院、松江赤十字病院が、
06~08年に共同で実施。
難治型のC型慢性肝炎患者42人を2組に分け、一方にのみ
ニンジン1250g(約10本分)に含まれるビタミンAを毎日投与しながら、
半年間治療を行った。

その結果、治癒したのは、通常の治療を行ったグループでは9人(43%)、
ビタミンAを投与したグループでは13人(62%)、効果が実証。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/7/15/122890/

紫外線から子どもを守ろう 機能ウエアや防止クリーム 対策求められる学校現場

(2010年7月14日 共同通信社)

日差しがまぶしい夏休みは、子どもたちの外出機会も増える。
肌へのダメージが大きい紫外線(UV)への対策を講じ、
子どもたちをUVから守ってあげよう。

日焼けは、紫外線によるやけどだ。
ダメージを受けた皮膚の細胞は、傷ついたDNAを修復しようとするが、
長年浴び続けると修復機能が狂って、しみや腫瘍の原因。
特に、成長期の子どもは、細胞分裂が盛んで影響を受けやすい。

同志社大の市橋正光教授(皮膚科学)は、
「紫外線のダメージは、目に見えない形で何十年と
長く蓄積されるため厄介だ」と警告。
免疫機能の低下や白内障の原因ともされ、世界保健機関(WHO)も
生涯受ける紫外線量の大半は18歳までに浴びると指摘、
子どものUV対策を推奨。

UV対策ではまず、紫外線量が増える正午前後の外出を避けよう。
やむを得ず外出する際、日陰を通り、つばの長い帽子や長袖シャツを着用。
日焼け止めクリームも活用し、気象庁がネットで提供する
紫外線量予測も参考に。

UV対策専門の衣料ブランド「エポカル」は、
子ども向けを中心に、帽子やウエアなど約200種類を展開。

UVを反射させる、特殊セラミックを含む機能素材を使用。
吸収剤を吹き付けただけの「UVカット加工」製品とは異なり、
何度洗っても防止効果が落ちない。
エポカルを展開する「ピーカブー」は、アトピー性皮膚炎を患う
子の母親たちが8年前に設立。

通気性を保つため、局所にメッシュを配したり、首回りの襟を高くしたり、
育児を経験した母親目線の工夫が特長。
同社の松成紀公子社長は、「暑さを嫌う子どもが、
どれだけ快適性を実感できるかが重要」

育児期間中は、UV対策に親の目が届くが、通園・通学となると、
施設側の管理に委ねるしかなくなる。
日本臨床皮膚科医会は、08、09年度に全国の保育園や
小中学校(336施設)を対象に、UV対策に関するアンケートを実施。

対策が最も必要とされるプールの授業では、日焼け止めクリームの
使用を許可しているのは46%。
紫外線の強い時間帯を避けて授業を実施しているのは21%と低く、
環境省「紫外線環境保健マニュアル」を活用している施設は4%。

同医会の岡村理栄子医師は、「日焼け止めクリームによって、
プールの水が汚染されるとの誤解も多い。
紫外線の危険性を周知させる学校での保健教育も不可欠だ

同医会は、全国の小中学校向けにUV対策のガイドライン(指針)を
策定中で、学校側に意識改革を促していく考え。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/7/14/122827/

2010年7月22日木曜日

循環型で野菜生産へ 大船渡の加工業・ハローワーク

(岩手日報 7月20日)

大船渡市の野菜加工業ハローワーク(資本金5500万円、
錦山恵美子社長、従業員110人)は、野菜の加工残さで堆肥を作り、
野菜を生産する直営農場で使うシステムの運用に乗り出す。

今月、金ケ崎町に堆肥製造と野菜栽培を行う直営農場を開設。
自社だけでなく、協力農家も募りながら、
岩手で作った野菜を有効活用し、循環型農業の構築を目指す。

「循環型原料調達・製品生産システム」は、
同社が大手食品メーカーや居酒屋、回転ずし店などに供給している
加工野菜を中心に構築。
大船渡市や奥州市水沢区の同社工場で、「カット」、「乾燥」、「冷凍」の
加工を行う過程で出る残さを、オリジナル堆肥にする。
堆肥は、金ケ崎町六原の直営農場内で製造。
約1ヘクタールの農地・原野を借りて整備を開始、
今月末には堆肥の加工場が完成予定。
直営農場で生産するジャガイモ、ニンジン、タマネギ栽培に使用。
できた野菜は、地方卸売市場大船渡青果を通して、
ハローワークが購入。
直営農場周辺の協力農家、農協からも野菜を買い取り、
同社で野菜加工を行う予定。
8月から試験的に運用し、合わせて20~30トンの野菜を仕入れる。
生産、加工だけでなく、残さ処理まで県内で行うシステムで、
県が本年度創設した「いわて食のパワーアップ事業」の委託先にも選定。
同社の錦山功専務は、「ハローワークが責任を持って
買い取るということで、直営農場だけでなく周りの農家にも
参加を呼び掛ける。
岩手の地で、いい野菜を調達し、全国に発信したい」

病気の子どもを旅行に招待 家族と一緒に無償で

(2010年7月13日 共同通信社)

小児がんなどの子どもの支援活動を米国で展開する
「ギブ・キッズ・ザ・ワールド」(フロリダ州)の日本法人設立準備室は、
今年秋から国内での活動を開始し、重い病気と闘う家族を
東京ディズニーランドなどへの旅行に無償で招待。

日本法人の大住力代表は、「病気のせいで、旅行した経験がない
子どもや、看病する両親にも楽しんでもらいたい」、
活動開始から1年で70家族を招待するのが目標。

米国のギブ・キッズは、1986年の非営利の団体で、
家族全員が宿泊できる施設を用意。
米ディズニーワールドなどを楽しむ旅行を、年約7千家族に無償で提供。

日本法人は、3泊4日の旅行を計画。
重い病気の子どもとその家族全員の旅費、宿泊代、飲食代、
チケット代などをすべて負担。
エーザイや住友信託銀行などが活動を支援し、費用は寄付のほか、
自前の研修事業の収益で賄う。

顧問に就任する聖路加国際病院の日野原重明理事長は、
「難病の子どもに対する日本の取り組みは遅れている」、
活動を支援していく考えを示した。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/7/13/122765/

脳卒中死亡率、コレステロール値高い方が低い!?

(2010年7月13日 読売新聞)

コレステロール値が高く、高脂血症と診断された人の方が、
そうでない人よりも脳卒中の死亡率が低く、症状も軽くなるという
調査結果を、東海大の大櫛陽一教授(医療統計学)らがまとめた。

一般には、高脂血症は動脈硬化を引き起こすため、
危険と考えられており、今後、議論が高まりそう。

大櫛教授らは、動脈硬化が一因とされる脳卒中
(脳梗塞、脳内出血、くも膜下出血)で入院した患者計1万6850人を
対象に、高脂血症の有無と死亡率、症状の強さを比較。

その結果、脳梗塞で入院した患者のうち、高脂血症でない
9851人が入院中に死亡した割合は約5・5%、
高脂血症の2311人の死亡率は約2・4%。

脳内出血や、くも膜下出血でも、高脂血症があると、
死亡率は半分から3分の1。

脳卒中で入院した患者と患者でない人を比較した調査では、
患者のほうが高脂血症の割合が低かった。

悪玉とされるLDLコレステロール値が高いほど、
総死亡率が低くなるとのデータもあり、
日本脂質栄養学会は今年9月、「LDLコレステロール値が
高い方が長寿に結びつく」との内容の指針を発表する方針。

日本動脈硬化学会理事の横山信治・名古屋市立大教授は、
「LDLコレステロールの危険性について、
国内外の信頼性の高い研究が多数ある」

国立健康・栄養研究所の宮地元彦プロジェクトリーダー(運動生理学)
は、「健康診断のコレステロール基準値は、現時点である程度の
合意が得られているので目安になる。
一方、基準よりコレステロールが高いほうが、
がんになりにくいとする研究もある。
基準値だけにこだわるのではなく、食事や運動など
生活習慣の改善に取り組むことが大切

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/7/13/122777/

インサイド:次代の針路 第2部 中学部活の再建策/1

(毎日 7月13日)

中学校の部活動が、試行錯誤を繰り返している。
少子化による部員数の減少に加え、教員の高齢化や指導者不足に
有効な解決策は見えてこないまま。
スポーツに真剣に取り組もうとする中学生たちに、
どんな環境を提供できるのか。
「次代の針路」第2部では各地の現場を訪ね、
中学部活の再建を目指す多様な取り組みを追った。

◇越境通学に地域差

校舎玄関に飾る賞状のみが、3年前の男子バレー部の快挙を物語る。
07年、全日本中学校選手権で初出場、初優勝を果たした
名古屋市立守山北中。
歓喜の胴上げから数カ月後、部員7人の「越境通学」が発覚。
市の教育委員会などによると、3年生5人と2年生2人は転居せずに
住民票だけを異動し、実際には校区外の自宅から通っていた。

顧問の教員は、バレー部OBの保護者らに頼んで、勧誘した
校区外の生徒の住民票をそこに移すことに協力。
この事実が明らかになり、顧問は市教委から戒告処分を受けた。
顧問が定年退職となった後、新たな入部希望者はなく、
やがて廃部の道をたどった。
今春赴任した小倉常義校長は、「全国制覇ならば、入部希望者が
殺到してもおかしくなかったのに」と複雑な思い。

「何も話すことはない。子どもには悪いことをした」
元顧問は、動機について口を閉ざすが、生徒や保護者の意向も
強かったに違いない。
名古屋市は、部活動による校区外通学を認めていない。
市の調査では、別の中学のバスケット部などを含め、
同様の越境通学者が48人。

少子化に伴い、各競技とも部員集めに頭を悩ませるが、
男子バレーの状況も深刻。
95年度、5869校だった日本中学校体育連盟の加盟校は、
昨年度3286校と4割以上も減った。
名古屋市でも、15年ほど前に70校以上あったが、
今年は市内109校中22校。
市は、外部顧問派遣制度などの対策を講じるものの、
減少に歯止めは掛かりそうもない。

文部科学省は07年、部活動を理由とした校区外通学を
認める通知を出した。
最終的な判断は、各自治体の教育委員会に委ねている。
名古屋市が認めないのも、「部活動はあくまで教育活動の一部」と
考えるからで、部活動で学校選びが進むと、
強豪校に生徒が集中し、逆に衰退していく学校が出てくる可能性。
通学の安全確保など、課題も多い。

異なる結論を導いた自治体も。
山口県東部の瀬戸内海に面した光市。
人口約5万人の町が沸いたのは、08年。
市立大和中が、全国中学校駅伝女子で優勝。
選手登録した8人中6人が、近隣の周南市など校区外から
通学していたことが判明。
選手は、親類や知人宅に住民票を移していた。

優勝の前年まで校長を務めた山村進さん(62)は、
アテネ五輪マラソン代表の国近友昭(エスビー食品)らを
中学時代に指導した実績を持ち、地元では名指導者として知られるが、
山村さんは、「こちらから勧誘したことは一度もない」
熱心な指導者の下に選手が集まる構図は、どの地域でも変わりはない。

光市は、「子どもたちを傷つけるわけにはいかない」と、
09年から規則を変更。
校区外通学の条件として新たに部活動を加え、すでに在学していた
大和中の部員も、「特例」として認めた。
小学校時代のクラブチームの仲間と同じ中学校に行きたいという声も多く、
そうした要望にも応えた形。
この2年間で、同市内で部活動を理由に越境したのは7人。
今のところ、過熱している気配はない。
光市教委の担当者は、「大規模な都市なら、移動する人数も多いだろうが、
小さな町だから生徒を救える選択ができた」

全国制覇を遂げた二つの部の、その後の歩みはあまりに対照的。
各学校のバランスを考えて「校区」を重視するのか、
生徒に自由な選択の道を提供するのか。
越境通学の是非は、その地域事情によっても異なってくる。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/news/20100713ddm035050019000c.html

2010年7月21日水曜日

携帯で遠隔診断…迅速治療、医師の負担も減

(2010年7月11日 読売新聞)

休日や夜間などに病院から離れた場所にいる医師が、
携帯電話を使って、CTなどの医療画像を見ながら
遠隔診断できるシステムが実用化。
治療方針の決定や機材の準備が迅速にでき、
医師の呼び出しが減る利点も。

「救急を断らない病院」として知られる洛和会音羽病院(京都市)は、
脳神経外科に1月、新システムを導入。

開発したトライフォー(本社・東京)によると、病院内のコンピューターに
保管されているCT、エックス線などの画像から、必要なものを
パソコンで検索、送信用のコンピューターへ転送する。
医師は、米アップル社の携帯電話「iPhone」で、
この画像を見て診断する。

枚数の多い画像も、連続して見られる。
プライバシー保護のため、画像はすべて匿名化され、
指定された医師しか見られない。

音羽病院は、iPhone3台を導入し、4か月間で三十数件の
画像診断をした。
大脇久敬・脳神経外科副部長は、「脳梗塞の初期段階でも判断でき、
医師が到着する前に機材の手配もできる」と効果を語る。
自宅から、医師が呼び出される回数も大幅に減った。

試験運用も含め、京都大などほかの3病院も導入。
立体画像を見られるシステムも開発中。

ソフトバンクテレコムも、独自の方式で「遠隔医療画像閲覧システム」
研究を行っており、「救急医療施設がある医療機関を中心に、
3年間で300施設への導入を目指す」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/7/12/122734/

夜更かしする子どもたち 教育関係者ら危機感…学校、園で早寝運動

(2010年7月11日 毎日新聞社)

朝、ぼーっとしていて先生の話が聞けない小学生。
「疲れてる」。
外へ遊びに誘っても、断る保育園児。
そんな寝不足気味の子どもたちが、問題に。

夜更かしする子どもたちの実態と、早寝早起き運動を進めている
保育園などでの取り組みを探った。

「きのうはワールドカップ(W杯)見ちゃって疲れ気味です、
よろしくお願いします」
東京都内のある保育園で、幼児を連れて登園してきた母親が、
笑顔で保育士に語りかけた。

この日、サッカーW杯で日本代表が戦いを終えたのは、
未明の午前1時半過ぎ。
あっけらかんと語る母親に、保育士はぎこちない笑みを返す。

夜更かしの原因の一つは、テレビ。
午後10時過ぎのお笑い番組や連続ドラマを、
「親と一緒に、なんとなく見てしまう子は珍しくない。
親御さんも注意しない」(小学校の養護教諭)。

携帯型ゲーム機の普及も大きい。
ある小学校の校医は、「午前中から保健室でぐうぐう寝るのは、
ゲームざんまいの証拠。
床についてもベッドの中で遊んでいて、
就寝時間は午前0時を回る子もいる」

早寝早起きの大切さを各地の保育園で説く、
鈴木みゆき和洋女子大教授は、「ファミコンの普及とコンビニの
登場で、就寝時間が遅くなり始めたのが80年代終わり。
暗くて怖かった夜が明るく楽しくなり、生活時間がずれ込んだ」

外食産業の深夜営業や24時間営業のコンビニエンスストアの
増加などで、午後10時を過ぎても、
街に幼児の姿を見かけることは珍しくない。

日本小児保健協会の調べでは、午後10時以降に寝る
4歳児は80年13%、00年39%と3倍に。

鈴木教授が幼稚園の教諭らに聞き取りしたところ、
遅く寝る子には一定の傾向が。
「無表情で自分の気持ちを表さず、遊びに乗ってくることができない。
夜きちんと眠るかどうかが、その子の昼間を決める」

東京都足立区は08年度から、区内の全幼稚園と保育園で
早寝早起き運動を始めた。
区が同年度から3カ年計画で始めた子ども施策推進事業に、
生活リズム改善も重点目標の一つ。

公立保育園の元園長で、東京都足立区保育指導担当係長の
佐々木恵美子さんは、「大人の生活に振り回されて、
寝不足になった子を何とかしなくてはと思っていた」

区立中島根保育園の水久保結花里園長は、
「早く寝ましょうと呼びかけても、住宅事情で1人だけ早く寝るのが
難しかったりして、保護者から『無理です』といわれることも」

08年調査では、4歳児29人の平均就寝時間は午後10時10分。
園児たちに、目標を達成できればシールを張る早寝早起きカードを
配ったところ、シールを張りたい一心で、「もう寝る」と親に告げ、
さっさと就寝する子が現れた。
その後、平均の就寝時刻は20分早まった。

昨年、バランスのよい朝食をとるため、
毎朝の朝食を、黄色(炭水化物)、赤(たんぱく質)、緑(野菜)に分類、
色付きシールを張らせた。
「赤が足りないから、ウインナー食べさせて」と親にせがむ子も出て、
取り組んだ5歳児は、全員が朝食を食べるようになった。

水久保園長は、「子どもが変われば、親も変わる。
徐々に意識付けすることが大切」

千葉県習志野市の屋敷小でも05年度から、毎月1週間、
生活リズムを記録する「元気っ子カード」をつけさせている。
就寝時間は、「9時より前」が32%(05年度)から37%(09年度)に、
起床時間は「6時~6時29分」が27%(05年度)から41%(09年度)
に増えて、早寝早起きが進んだ。

そろそろ夏休み。
崩れがちな日々のリズムを整える方法について、
鈴木和洋女子大教授は、「おやすみなさいツアーと称して、
子どもと家じゅうの電気を消す儀式をして、親も寝てしまうのも一案。
寝室のカーテンを閉めないでおけば、光が入って早く目覚められる。
昼間は、水遊びや泥団子づくりで体を動かせば、
夜はすっきり眠れるでしょう」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/7/12/122699/

阪神の城島とマートンが、阪大付属病院小児医療センターを訪問

(2010年7月13日 読売新聞)

阪神の城島とマートンが、大阪府吹田市の
阪大付属病院小児医療センターを訪れ、
白血病や心臓病などで入院生活を送る乳児から16歳までの
約50人を励ました。

ともに昨季まで在籍した米大リーグでは、シーズン中の病院への
訪問も当たり前だったと、城島が申し出て実現。

両選手は、子どもたちと玉入れを楽しみ、
サイン入りのカードやタオルなどをプレゼントした。

訪問は先週、子どもたちに伝えられており、同センターの医師は
「あこがれの選手に会えるという気持ちだけで、
闘病や治療の苦しみを乗り越えられる」

13日からの巨人戦に向けて、城島は「子どもたちに勇気をもらった。
精いっぱいプレーする」と約束。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/7/13/122776/

2010年7月20日火曜日

ウェブサイト「タバコは美容の大敵!」を主宰、禁煙を訴える平賀典子さん

(2010年7月12日 共同通信社)

日本人の喫煙率は、男性が大きく減少してきた一方、
20代や30代の若い女性は、2000年代初めまで
上昇傾向にあった後、ほぼ横ばいが続く。
喫煙がダイエットに効く、と思い込まれているのも理由の一つ。

「喫煙は、美容と健康にとって百害あって一利なしで、損な行為。
若い女性は、メーカー側のイメージ戦略にだまされず、
賢く美しくなってほしい」と訴える。

その思いから、03年ウェブサイト「タバコは美容の大敵!」開設。
最新の情報を盛り込みながら、たばこの美容や健康への
悪影響などを分かりやすく説明。

サイトでは、ピンク色でかわいい日本のたばこのパッケージと、
胎児の遺体の写真を印刷した海外のパッケージの比較や、
通常より早く肌が老化し、しわも多い喫煙者に特有の顔
「スモーカーズ・フェイス」の写真を紹介するなど、
ビジュアル面でも工夫。
「肌の調子が良くなった」など、禁煙の体験談も掲載。

サイトの人気が高いことなどから、5月には厚生労働省などが
「女性と子どもをたばこの害から守ろう」をテーマに開いた
世界禁煙デーの記念シンポジウムで、講演の講師に抜てき。

以前に勤めていた会社を、「煙害と闘った」末に辞めて転職後、
「無煙社会」を目指す市民活動に参加。
禁煙のレストランを紹介する本の企画などにも携わった。

会社の休日を利用して行う活動は、
「ライフワークのようなもの」。
東京都出身。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/7/12/122718/

「日本で看護師」断念の帰国続々…漢字など壁

(2010年7月9日 読売新聞)

EPA(経済連携協定)に基づき、インドネシアとフィリピンから
来日した外国人看護師・介護福祉士候補者の中途帰国が相次ぎ、
受け入れが始まった2008年以降、
計33人(7月1日現在)に上っている。

日本の国家試験突破の難しさなどから、将来の展望が見いだせずに
就労をあきらめた人が少なくないと見られる。

候補者は、これまで998人が来日。
国内の施設で働きながら勉強し、3~4年の在留期間に
国家試験に合格すれば、本格的に日本で就労でき、
そうでなければ帰国するのが条件。

漢字や難解な専門用語が試験突破の壁になり、
合格者は昨年がゼロで、今年は看護師3人のみ。

あっせん機関の国際厚生事業団によると、中途帰国したのは、
今年度来日したばかりの118人を除く880人中、インドネシア15人
(うち看護師12人)とフィリピン18人(同11人)の計33人。
合格率1・2%だった国家試験の合格発表後に当たる
今年4月以降に、中途帰国した看護師が計11人。

こうした問題を受け、厚生労働省は今月、看護師国家試験に使われる
難解な専門用語について、平易な言葉への言い換えなど、
何らかの見直し方法を有識者検討会で集中的に審議。
来月初めにも提言にまとめ、来年行われる
次回の国家試験に反映させる方針。

政府は、「新成長戦略」で、2011年度中に実施すべき事項として、
「看護師・介護福祉士試験の在り方の見直し(コミュニケーション能力、
母国語・英語での試験実施等の検討を含む)」と明記、
外国語による国家試験実施の可能性に言及。

◆看護師国家試験

看護師の免許を取得するための国家試験。
保健師助産師看護師法に基づき、国が年1回実施。
日本の大学看護学科や看護学校を卒業するなどした人のほか、
EPAに基づく看護師候補者も、日本語などの研修を受けたうえで
病院などで就労し、同等の知識、技能があると認められれば
受験資格が得られる。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/7/9/122658/

変異HIVに有効な抗体 ワクチン開発前進か

(2010年7月9日 共同通信社)

さまざまなタイプのエイズウイルス(HIV)の感染や増殖を防ぐ
「中和抗体」を見つけたと、米国立衛生研究所などの研究チーム
米科学誌サイエンス(電子版)に8日、発表。
研究チームは、「(まだ実用化されていない)エイズワクチンの
開発を加速させることになるだろう」

HIVは、遺伝子が非常に変異しやすいため、
患者自身の免疫機能によって、感染を防ぐ中和抗体を作ることが
できても、すぐに効かなくなる問題がある。

チームは、HIVに感染したが発症していない60歳の男性の血液から、
さまざまな変異ウイルスに有効な2種類の中和抗体を発見。
報告されている変異ウイルスのうち、約90%に結合し、
無力化することを確認。

構造を分析した結果、この中和抗体は、どの変異ウイルスにも
共通する部分に結合することが分かった。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/7/9/122646/

2010年7月19日月曜日

脊髄損傷マウスの運動機能、安全なiPS細胞移植で回復 岡野・慶大教授ら成功

(2010年7月7日 毎日新聞社)

腫瘍にならない人工多能性幹細胞(iPS細胞)を選び、
脊髄を損傷したマウスに移植、運動機能を回復させることに、
岡野栄之・慶応大教授と山中伸弥・京都大教授の研究チームが成功。

iPS細胞は、さまざまな組織や臓器の細胞になり、
再生医療への応用が期待、腫瘍を作る危険性があった。
米科学アカデミー紀要(電子版)で発表。

研究チームは、マウスの脳にiPS細胞を移植し、
半年たっても腫瘍を作らなかったiPS細胞を選んだ。
次に、さまざまな神経細胞になる神経幹細胞に変化させ、
脊髄が損傷したマウスに損傷9日目に50万個移植すると、
だめになった後ろ脚を使って、歩いたりできるまでに回復。

腫瘍化の可能性があるiPS細胞で同じように実験すると、
運動機能は一時的に回復したが、約5週間後には
脊髄内で腫瘍が形成され、機能も低下した。

岡野教授は、「安全性を厳密に評価すれば、iPS細胞を将来、
脊髄損傷の治療に使える道が開かれた

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/7/7/122530/

お年寄りたちの"天使" 土着信仰のタブー打破

(2010年7月7日 共同通信社)

「家族と離れて独り暮らしだけど、彼女だけは会いに来てくれる」
診療室代わりの涼み台の上で、血圧を測ってもらった
シャプン・ゴタン(90)は、深いしわを刻んだ笑顔で
感謝の気持ちを語った。
老人介護のボランティアを続けるシ・ヤブスカヌン(38)は、
島のお年寄りたちにとって天使のような存在。

台湾南東部の離島、蘭嶼(らんしょ)は、先住民タオ族約3千人が
住む自然豊かな熱帯の島。
保健所の看護師シ・ヤブスカヌンは、長い髪をなびかせ、
体温計や血圧計を積んだスクーターで島内を巡回。

「老人は不吉で、アニト(悪霊)を引き寄せるから、近づいてはいけない」
老人たちは、一定の年齢に達すると、子供や孫に災難が及ぶのを恐れ、
自ら別居して近くの小屋などに引きこもった。

食事は子供たちが届けるが、十分な世話を受けられないまま、
さびしく亡くなる老人もおり、日本の棄老伝説「うば捨山」にも例えられた。

1997年、シ・ヤブスカヌンは保健所の新たな業務として、
迷信のタブーを破って訪問看護を始め、老人たちの惨状を目の当たりに。

「わたし一人では手が足りない。みんな力を貸して」
彼女は、介護を行うボランティア・グループを創設。
保健所と連携し、今ではキリスト教徒のメンバー約70人が
老人の体をふいたり、洗髪や掃除などの介護を行うようになった。

島民たちは、アニトを恐れないシ・ヤブスカヌンたちを気味悪がり、
「財産狙いか」とささやき合った。
「親の世話は自分でする。余計なことはしないでくれ」と怒る者もいたが、
辛抱強く説得しながら介護を続けた。

神だけが支えだった。
敬虔なキリスト教徒の彼女は、神とともにアニトと闘った。

ある日、長く病床にあったおばあさんを訪ねた。
閉め切った寝室に入ったとたん、腐敗と排せつ物の強烈なにおいが
鼻を突いた。
掛け布団をめくると、ウジが体の至る所に巣くっていた。
寝返りが打てず、ひどい床擦れも起こしていた。

虫がきらいなシ・ヤブスカヌンは鳥肌が立ち、
そこからすぐに逃げ出したいと思った。
震えながら神に祈った。
「不思議なことに、まるで体に充電されたように力がわいてきたわ」
彼女は、ウジをすべて取り除いた。
おばあさんは4日後、「清潔な体で天国へ行った」

4年後、お年寄りの暮らしとボランティア活動を紹介する
ドキュメンタリー映画「悪霊に直面して」を制作、上映して啓蒙に努めた。
地道な努力により、訪問介護は次第に島民の支持を得た。

「とても勇敢な娘だ。
看護の知識とキリスト教信仰によって、迷信を打ち破った。
容易なことではない。心から敬服する」
シ・ヤブスカヌンが通うキリスト教会の牧師
シャマン・ガーライー(55)はたたえた。

蘭嶼で生まれ育ったシ・ヤブスカヌンは、台湾台中市で看護学を学び、
22歳の時に島に戻った。
「大好きな故郷へ帰るのに、何のためらいもなかった。
島ではみんな和気あいあいと暮らしているけど、
都会の人は互いによそよそしい」

3年前、ボランティアの「同志」で、台湾本島出身の漢民族、
楊文彬(45)と結婚。
「第一の条件は、夫が蘭嶼に移り住んでくれること」と、はにかんだ。

▽タオ族式

お年寄りの世話を始めて十数年、迷信や伝統文化についての
考えも少しずつ変わってきた。

「以前は、人命を軽視するような迷信がいやで仕方がなかったけど、
今は迷信や風習とうまくつき合いながら、よりよい医療や介護をしたい

行政当局は、終生型老人ホームの建設を計画、
シ・ヤブスカヌンたちは反対。
老人たちは、「人が亡くなった部屋にはアニトがいる」と考え、
住もうとしない。
一部屋ずつ使えなくなっていく恐れがあるからだ。
「老人たちが住む粗末な小屋に、水道や電気を通すなど
環境の改善に予算を使った方がよい」

将来の夢は、老人の孤独や退屈さを癒やす日帰り施設の設立。
シ・ヤブスカヌンたちは、タオ族式の介護を目指しながら、
アニトと闘い続けている。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/7/7/122545/

地球と暮らす:/112 茨城大バイオ燃料社会プロジェクト 「地産地消」に解答求め

(毎日 7月5日)

地球温暖化対策として注目されるバイオ燃料。
食料価格高騰を引き起こしたり、輸送で生じる温室効果ガスの
問題をどうするか、負の影響を指摘する声も。

こうした課題を解決しようと、
08年から茨城県阿見町の耕作放棄地1haに、
アフリカ原産のイネ科植物「スイートソルガム」を栽培し、
生成した燃料の消費まで地域内で完結する
社会実験に取り組んでいる。
「地産地消」によって、課題の輸送に伴う温室効果ガスの排出も
大幅に抑制できる。

スイートソルガムは、明治時代に持ち込まれた。
茎に糖分を蓄え、収穫時には5~6mの高さに達する。
低温に強く、国内のほぼ全域で栽培でき、土壌の質も問わない。
飼料用や土壌改良のために生産する農家はあったが、
製糖用としては質が劣り、サトウキビほど普及しなかった。

温暖化問題が深刻化する中、代表の新田洋司・茨城大教授(46)は、
「生態系に悪影響も確認されていない。
活用しないのはもったいない」と注目。
エタノール生産力は、1haあたり3・4~4・4t、サトウキビとほぼ同じで、
生育期間は約3分の1の4~5カ月と短い。

今年3月、スイートソルガムから取り出したエタノールを混合した
ガソリンで、県の公用車を使った初の試験走行を水戸市内で実施。

高さゆえの弱点もある。
昨年10月の台風18号で、栽培した8~9割がなぎ倒された。
それでも生成できたエタノールは、前年とほぼ同じという思わぬ「収穫」も。
趣旨に賛同し、放棄地で栽培に協力したいという農家が現れた。
搾りかすは、家畜の餌に使われている。
食用ではないため、「価格高騰を招く心配もない」と新田さんは強調。
成果は、大学の研究室を飛び出し、地域に浸透し始めた。
==============
事務局:茨城大農学部の新田研究室(電話029・888・8551)。
茨城県や県内自治体、農家などが協力。
http://www.ibos.ibaraki.ac.jp/

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2010/07/05/20100705ddm016040024000c.html

2010年7月18日日曜日

骨形成促進のタンパク特定 粗しょう症治療手掛かりに

(2010年7月9日 共同通信社)

埼玉医大ゲノム医学研究センターの岡崎康司教授(分子遺伝学)
の研究チームは、「Id4」というタンパク質が
骨の形成に重要な役割を果たすことを突き止め、
9日付の米科学誌プロス・ジェネティクス電子版に発表。

岡崎教授は、「Id4を活性化する物質が見つかれば、
骨粗しょう症の治療や新薬につながる大きな手掛かりになる」

骨髄の幹細胞は、骨を作る骨芽細胞と脂肪細胞に分化するが、
骨粗しょう症患者は分化が脂肪細胞に偏るため、骨がもろくなる。

研究チームが、マウスの幹細胞を骨芽細胞、脂肪細胞それぞれに
分化させ遺伝子解析したところ、Id4が骨芽細胞の分化を促進、
脂肪細胞の分化を抑制することが分かった。

この効果は、Id4が「Runx2」という骨形成を促すタンパク質を
間接的に活性化させて起こることも分かった。

遺伝子操作で、Id4を持たないようにしたマウスは、
正常なマウスに比べて骨量が約6割少なく、
骨髄内の脂肪細胞も多かった。

PLoS Genet. 2010 Jul 8;6(7)
Id4, a new candidate gene for senile osteoporosis, acts as a molecular switch promoting osteoblast differentiation.

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/7/9/122627/

新種の違反薬物対策で協力 反ドーピングで製薬会社

(2010年7月7日 共同通信社)

世界反ドーピング機関(WADA)と世界の製薬会社でつくる
国際製薬団体連合会(IFPMA)は、開発段階で
ドーピングに悪用される恐れのある新薬を特定したり、
早期の検査方法確立を進めるなど、
反ドーピング活動で協力する共同宣言に調印。

ドーピングに悪用される薬物は、本来は治療薬として
開発されたものが多い。
これまでは、新型のエリスロポエチン(EPO)の摘発で
ロシュ社が協力するなど個別のケースはあったが、
今回の調印で業界に関係を広げた。

IFPMA会長を務める日本のエーザイの内藤晴夫社長は、
「治療のためにつくられる薬剤が、ドーピングに使われるのは
許容しがたい」、全面的に協力する姿勢を示した。

IFPMAは、研究開発を主体とする25社と46の国や
地域などの団体でつくられている。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/7/7/122524/

ポスドク:博士号取得者の就職難解決へ…産学「計画」で本腰 行動定め始動

(毎日 7月6日)

博士号取得後に安定した就職先がない「ポスドク」問題の解決に、
文部科学省と経済産業省が乗り出す。
今秋にも、産業界と大学の代表を集めて初会合を開く。
政府が6月に閣議決定した新成長戦略では、
「科学・技術立国」の課題として、博士課程修了者の完全雇用を
20年に実現するとの目標。

計画では、採用数の多い大企業を中心に、人事担当役員と
主要大学の学長らを集め、産学連携で人材開発を進める方法を協議。
産学の双方が、雇用増に責任を持つ行動計画を作成し、
両省は奨学制度の充実などの支援策を講じる。

科学技術白書によると、理系の博士課程修了者のうち、
大学教員や企業などへの就職は約半数どまり。
残り3割は、期限付き研究員など「ポスドク」と呼ばれる
不安定な立場にあるほか、2割は進路不明、就職が困難な実態。
博士号取得者は伸び悩み、特に自然科学系では
博士課程の入学者が減る傾向に。

鈴木寛・副文科相は、「大学は、世の中に貢献し得る博士を育てる
改革にやる気を示し、産業界は人的、資金的貢献を行って、
ちゃんと採用することが重要。
産学連携で人材開発を進め、優秀な人材が博士課程に進むことを
加速させたい」

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2010/07/06/20100706dde041040019000c.html