2008年9月27日土曜日

カルシウム+ビタミンD、大腸がんのリスク低減

(朝日 2008年9月22日)

カルシウムとビタミンDをともに多く摂取すると、大腸がんにかかるリスクを
下げる可能性があることが、九州大などの調査でわかった。
米国のがん予防専門誌で報告。

古野純典・九大教授らのグループが、福岡市とその近郊に住み、
大腸がんと診断された836人と、同じ年代で大腸がんではない861人から
食事や生活習慣を詳しくたずね、関連を調べた。

1日あたりのカルシウム摂取量が平均約700ミリグラムと、
最多の人たちが大腸がんになるリスクは、
同400ミリグラムで最も少ない人たちと比べ、3割ほど低い。

しかし、カルシウムを多くとっても、ビタミンDをあまりとらない人では、
違いははっきりしなかった。

カルシウムを平均約700ミリグラムとり、かつビタミンDを多くとる人
(1日10マイクログラムかそれ以上)で比べると、
大腸がんリスクは、カルシウム摂取が少なく、
ビタミンDをあまりとらない人より、6割低い。

ビタミンDは、サンマやサケといった魚類やキノコ類に多い。
日本人のカルシウム摂取量は、1日あたり平均540ミリグラム余で不足ぎみ。
ビタミンDは、8マイクログラムほど。

大腸がんは、肥満や飲酒でリスクが高まることがわかっている。
牛乳を飲んでカルシウムを多くとると、
大腸がんリスクが2割ほど下がることは、欧米グループが報告。

溝上哲也・国立国際医療センター部長(前・九大助教授)は、
ビタミンDはカルシウムの吸収を助けるので、
大腸がんの予防効果を高めるのかも知れない。
さらに効果を調べたい」

http://www.asahi.com/science/update/0922/TKY200809220168.html

エレベーターで宇宙に行けるかも 東京で今秋国際会議

(朝日 2008年9月19日)

「上に参ります。次の階は宇宙でございます」――
長さ約10万キロのケーブルをよじ登って、ロケットを使わず、
そのまま宇宙へと飛び出す「宇宙エレベーター」の研究団体が日本で結成。
海外の研究者を招き、11月に第1回国際会議を東京で開催。

従来は、SFの世界の乗り物とみなされてきたが、
ナノテク新素材の開発によって実現の可能性が見えてきた。

宇宙エレベーターとは、赤道の上空、高度約3万6千キロに浮かぶ
静止衛星から地上に向けてケーブルを垂らし、それをガイドとして利用、
宇宙との間を昇降するエレベーター型宇宙船のこと。
バランスが取れるように、静止衛星から地球と反対方向の宇宙にも向けて
ケーブルを伸ばすため、その総延長は月までの距離の約4分の1に。

ケーブルは、静止衛星と共に宙に浮いた状態となるので、
よじ登っても落ちてこない。

地球の重力を脱出する燃料がいらないので、宇宙旅行のコストが
約100分の1になると見込み。総建設費は、約1兆円の予定。

SF作家の故アーサー・C・クラークが、小説「楽園の泉」で紹介して
有名になったが、実現は不可能に近いと考えられてきた。
どんな素材でもその重さに耐えきれず、ケーブルが途中で切れてしまうから。
計算上は、鋼鉄の約180倍もの強度が必要。

日本宇宙エレベーター協会会長で、IT会社社長の大野修一さん(40)は、
軽くて強いカーボンナノチューブが開発され、
必要強度の約4分の1の強さの繊維がすでに造られている。
米国では、米航空宇宙局(NASA)が賞金を出すコンテストも開かれている。
大野さんは、「海外旅行感覚で、誰でも宇宙にいけるようになる。
放射性廃棄物の太陽への投棄や、太陽光発電衛星の設置など
いろいろな利用案も出されている」。

約50人の会員の中には、大学教授や宇宙関連産業の技術者も。
来年には、ケーブルを昇る模型の速さを競う国内大会を開催する計画。

森を減らさない(上)生計助け 住民参加型管理

(読売 9月9日)

森林減少を食い止める仕組み作りをテーマに、ガーナ・アクラでの
国連気候変動枠組み条約下の特別作業部会(アクラ会議)で、
活発な議論が交わされた。ガーナ国内の森林地帯から報告。

世界の森林減少に歯止めがかからない。
日本の国土の2割に当たる730万ヘクタールの森が、
農地転換や違法伐採などにより毎年消え、森林破壊により、
世界の全排出量の2割に当たる温室効果ガスが大気中に放出。

ガーナでも、50年前に820万ヘクタールあった森林面積は今、5分の1以下。
ヒョロリと伸びるヤシの木が点在する草原が、
第2の都市・クマシから北西に延びる道路沿いに広がる。

火災に強い種が残って大きくなったヤシは、かつての森の名残。
北のサバンナ地帯と南の熱帯雨林地帯の間のここ「移行帯」でも、
森は急減している。

ブロン・アバフォ州スンヤニから北に60キロ・メートルの小さな村、アフラス。
チーク林から成る森林保全区の前の土地で、
村人たちがオレンジとパイナップルの苗木の手入れをしていた。

水源保護と産業林を兼ねた保全区を管理する森林局の協力で、
その外周の緩衝地帯(幅40メートル)に、村人が苗木を植えて1年余。

「以前は、森林局の職員の姿を見ると、走って逃げた。
森林保全区の近くにいただけで、問答無用で逮捕されかねなかった」。
こう振り返ったノア・アブグリさん(51)は、
「住民と森林局は今や、森林を守り、生活向上を目指すパートナーだ」。

「下草はきれいに刈られているから、火災防止の役目は果たせる。
住民がローテーションを組んで、畑をパトロールするので、
狩猟者の火の不始末や違法伐採などから森を守れる」。
住民担当の森林局スタッフ、プリンス・ヘネさん(33)は説明。

アブバ・カリ・エンバ村長(73)は、
「約400人の村人の99%は、森林がなくなり、
土地がやせた北部からの移民で、食べていくのがやっと」

アブグリさんも8年前、460キロ北の村から移住。
3アールの畑を持ち、年に300セディ(1セディは約1ドル)の現金収入で
妻と5人の子供で暮らす。

緩衝地帯での耕作は、日本の国際協力機構(JICA)が、
森林保全区での違法伐採や農地の“侵入”に頭を痛めるガーナ政府に
協力して、4年前から進めるパイロットプロジェクトの中心。

住民の生計アップを森林局が手助けし、住民が森を守る、
という「住民参加型森林管理」の実現を目指す。

緩衝地帯には、果樹に加え、大豆やナッツも植える予定。
「うまくいけば、年500セディが入り、トウモロコシなどの
改良されたタネが買える」。アブグリさんは目を輝かせた。

http://www.yomiuri.co.jp/eco/kankyo/20080909-OYT8T00471.htm

記憶障害のある成人の認知力が運動で改善される

(Medscape 9月8日)

主観的記憶障害はあるが認知症ではない高齢者を対象にした
ランダム化試験で、6カ月間の身体運動(PA)プログラムで
認知機能が「わずか」だが継続的に改善するという結果。

メルボルン大学とセント・ビンセント病院のNicola T. Lautenschlagerは、
「主観的・客観的な軽度の記憶障害を持つ高齢者の認知機能が
運動で改善することを示したのは、今回の試験が初めて」
「身体運動の便益は、6カ月以降に現われ始め、
介入を中止した後も少なくとも12カ月間は持続」

この結果は、運動を毎週およそ142分間(1日に20分間)と
比較的わずかに増やすだけだった。
『Journal of the American Medical Association』9月3日号に掲載。

高齢化が進むにつれ、アルツハイマー病(AD)とともに生きる人の数は、
現在の2660万人が、2050年には1億600万人以上になると予測。
認知症の発症が12カ月間だけでも遅くできれば、
症例数は世界で920万件少なくなると推計。

ADのリスクを持つ者を対象にした介入としては、
ドネペジルなどのコリンエステラーゼ阻害薬、ビタミンE、ロフェコキシブなどが
行われているが、これらの効果はほとんどない。

PAで認知力低下のリスクが減少することは、多くの研究で示されるが、
ランダム化試験によるエビデンスはまだない。

今回は、24週間の自宅PAプログラムによるランダム化対照試験を実施、
ウォーキング主体と教育および通常治療との比較を行った。
記憶に問題があることを申告しているが、認知症の判定基準には
合致しない者を被験者とした。
ランダム化の対象になったのは総数170例、138例が18カ月間の評価を完了。

主要エンドポイントは、アルツハイマー病尺度・認知力下位尺度(ADAS-cog)
の18カ月間での変化。

intent-to-treat分析によれば、運動群はADAS-cogが0.26ポイント改善、
通常治療群は1.04ポイント悪化、改善の絶対値は1.3。
「この結果は、ドネペジル使用で0.5ポイント改善する報告よりも優れている」。

6カ月間の介入後も、運動群には運動の継続を奨励。
プログラムの基本を再認識させるため、ニュースレターを定期的に送付。
18カ月後において、介入群はADAS-cogが0.73ポイント改善、
通常治療群の改善は0.04ポイント。

軽度の改善は、単語リストの遅延想起と臨床的認知症尺度の
合計点(sum of boxes)検査でよく見られ、
単語リストの即時想起、数字シンボルコーディング、発話流暢性、
ベック抑うつ尺度、医学転帰36項目簡易版による身体と精神の
下位分析では有意な変化がなかった。

今回の「改善のメリット」は、「ほとんど誰にでも可能で簡単な介入」に
便益がある可能性を示す。
運動の便益は、認知機能以外、抑うつ、生活の質、転倒、心血管系機能、
生活機能障害などにも影響。

Group Health Center for Health Studies(シアトル)のEric B. Larsonが、
Lautenschlager博士らの試験は、「堅牢な手法を用い、
少量の習慣的運動がプラセボに比べ、認知力をわずかに改善することを実証、
(ADの)予防に有用であり、『概念の実証』を大きく前進させた」

運動の順守率は、推奨される予防的保健戦略の中で最低のレベル。
Larson博士は、「(ADなどの)壊滅的な脳疾患に対する恐れが広がり、
高齢者や世間がもっと運動するようになる動機付けの一助となる」。

「運動、その他の生活因子も、血管リスクと晩年期の脳の健康に影響がある。
疾患を予防する従来の医学的アプローチに加え、普遍的教育、
全般的な医療、適切な環境、適切な栄養、習慣的運動、社会的交流の機会
といった社会的要因も、晩年期の健康状態の改善に大きく貢献」

JAMA. 2008;300:1027–1037, 1077–1079.

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=SPECIALTY&categoryId=580&articleLang=ja&articleId=79964

2008年9月24日水曜日

賢治精神を受け継ごう 花巻で命日祭

(岩手日報 9月22日)

宮沢賢治の命日の21日夜、花巻市桜町の雨ニモマケズ詩碑前で
「賢治祭」(同実行委主催)が開かれた。
北上川に現在見られなくなっている「イギリス海岸」を出現させる試みも
行われたが、惜しくも川底の泥岩層は見られなかった。

同市の南城小児童が賢治の作った歌を合唱し、
花巻農高3年の市原未美子さんは、「雨ニモマケズ」を朗読。
岩崎鬼剣舞の演舞や賢治がテーマの座談会も開かれ、
賢治の精神に思いをはせた。

イギリス海岸の出現は、国土交通省北上川ダム統合管理事務所が試みた。
上流のダムの放水を減らしたが、ダム以外から流れ込む水量の影響もあってか、
川底の岩が若干見えるにとどまった。

イギリス海岸を管理するドーバーファーム市民の会の佐藤匡男会長(80)は、
同海岸は60年前のアイオン台風で北上川の流れが変わって以来、
徐々に見られなくなった。

東京都渋谷区から訪れたコンピューターグラフィックス(CG)アニメーター
加賀谷穣さん(40)は、「写真で残るイギリス海岸を、いつの日か
この目で見るのが夢。これからも試みを続けてほしい」と継続を期待。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20080922_5

五輪化するパラリンピック 日本は苦戦

(朝日 2008年9月18日)

パラリンピックで、日本は不振だった。
五輪選手が出場するなど、競技性が高まっている大会への対応が遅れた。
障害の種類や、軽重で選手を分けるクラス分けにも苦しんだ。
一方で、車いすには、自動車レースF1の素材を使ったものも登場。

今回は、種目数が前回のアテネから1割も減って、472となった。
日本が得意としていた重度障害者のクラスが削減対象。

背景には、大会が「リハビリの延長」から「スポーツ」へと
大きくかじを切っていることがある。

競技性が低いことと、競技人口が少ないこと。
重度障害者のクラスがなくなったのは、こんな理由から。

アテネ陸上男子5000メートル(車いす)で金だった高田稔浩(福井)の
この種目は、今回なかった。
女子100メートル背泳ぎ(視覚障害)で世界新を出していた
秋山里奈(神奈川)も種目がなくなり、自由形に転向して
決勝に進むのが精いっぱい。

河合純一・日本パラリンピアンズ協会事務局長は、
「戦いが白熱すれば、見る人も増える」と、
こんな動きにある程度の理解を示した。

「このままではやめられない。これからも、泳ぐことで
何か感じ取ってもらえるように頑張りたい」。
競泳女子の成田真由美(神奈川)は悔しがった。
選手の障害の程度を決めるクラス分けに、泣かされた。

成田は前回7冠。通算20個のメダルを持つ日本のエース。
今回は軽いクラスと判定され、障害の程度が軽い選手たちと戦った。
出場した3種目すべてで5位にとどまった。

あるクラス分け委員によると、障害をわざと重く見せて
有利なクラスに入ろうとする選手も少なくない。
いかに公平さを保つか、という課題は残されたまま。
成田は、「クラス分けが未成熟」と残念がった。

http://www2.asahi.com/olympic2008/news/TKY200809180133.html

学校の情報化(2)手書き入力 「発言」次々

(読売 9月18日)

ICT(情報通信技術)導入が学力向上につながるか、研究が進む。

円卓を囲む児童の前には、ノートパソコンが1台ずつ。
画面が倒れ、その横には入力用のペンが置かれている。

「10月に見学に行く『花王』で質問したいこと、調べたいことを
3人1組でまとめよう」。
岡本友尊教諭(45)の呼びかけで、和歌山市立雑賀小学校5年生の
社会科の授業は始まった。

3人は、それぞれ異なる文字の色を選ぶ。
自分の端末画面に文字を書き込むと、ほかの子の画面にも
その文が映し出され、3人で画面を共有する形。
ある子が、「働いている人数・時間」と書くと、別の子が矢印を書いて
「休憩している時間」と付け加える。
「機械の種類はいくつ」との問いに、「予想100種類」と別の子が書き殴る。

1枚の模造紙に、みんなで意見を書き込むように、
画面をスクロールさせながらどんどん広がっていく意見の輪。
保存すれば、持ち運びにも便利な“1冊の”電子ノートが、
あっという間にできあがった。

自分の考えを瞬時にまとめて手書き入力する「ライブ共有セッション」
と呼ばれる授業。思考力・判断力・表現力を育てるのに有効。

「みんなの前で発表するのは苦手だけど、文字ならどんどん書き込める」と男児(11)。
別の男児(11)は、「自分の意見に、ほかの子がアンダーラインを引いてくれると、
うれしくて自信につながる」。

「恥ずかしがって発言しない子の中にも、いい意見を持っている子はいる。
そうした子が自信をつけ、意欲的に発表できるようになれば」と岡本教諭。

和歌山市がマイクロソフトと協力し、同社が進めるNEXTプロジェクトの一環で、
「ICTを活用した学力向上のための研究プロジェクト(Wプロジェクト)」
に取り組み始めたのは昨年10月。
市内52の全小学校に、手書き入力が可能なタブレット型パソコンを1300台導入、
研究実践協力校4校を中心に、ICTを活用した学習の効果のデータを集めている。

「未来を担う子供たちにとって、ICTは不可欠。
苦手という理由だけで活用しないのは、教師側の勝手な都合に過ぎない」
市立教育研究所の竹内弘純所長。
岡本教諭ら小中5人の教員を研究所員に指定し、ICT推進のリーダーとして
ほかの先生に技術を伝える存在になるよう、研修を重ねている。

タブレット型パソコンには、漢字の筆順の正しさや、はね・とめの有無などの
チェック、計算の仕方を順を追って教えてくれるシステムも備わる。
「漢字テストの結果を比較すると、中・下位の成績の子供の点が底上げされた」

一方で、「ICTを組み入れようと悩みながら授業を見直すことが、
結局スキルアップにつながる」。
機器に使われることなく、あくまでも使いこなすことで、
初めてその効果は発揮されるようだ。

◆NEXTプロジェクト

最先端のICTが未来の学校教育をどう変えるかを探るため、
独立行政法人メディア教育開発センターとマイクロソフトが共同で進めている。
海陽中等教育学校(愛知)、立命館小学校(京都)、
神戸学院大付属高校(兵庫)、東京都港区立青山小学校もモデル校で、
学力の向上、校務の効率化などを研究。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080918-OYT8T00245.htm

食欲増進ホルモン「グレリン」、心筋梗塞を改善

(読売 9月13日)

胃から分泌されるグレリンという食欲増進ホルモンが、
急性心筋梗塞の症状を改善することを、
国立循環器病センターの研究チームがラットの実験で確認。

国内では、年間約4~5万人が急性心筋梗塞で死亡、
治療薬開発への応用が期待される。

研究チームは、ラット26匹に心筋梗塞を起こさせ、
グレリンを注射した群と、しない群とに分けて比較。

その結果、注射したラットは、6時間後に10匹が生存し、
不整脈もほぼゼロだったが、注射しないラットは不整脈が頻繁に起き、
3匹しか生き残らなかった。

グレリンには、不整脈を引き起こす心臓の交感神経を
鎮静化させる働きがあるらしい。
岸本一郎医長は、「グレリンはもともと体内にある物質で、
心筋梗塞の有効な治療薬になる可能性がある」。

http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20080913-OYT1T00366.htm

2008年9月23日火曜日

賢治命名「イギリス海岸」姿見せて 命日にダム放流制限

(朝日 2008年9月21日)

宮沢賢治の作品の舞台として知られ、北上川河畔にある国の名勝
「イギリス海岸」(岩手県花巻市)が、ここ10年来、川底に水没して
ほとんど姿を見せなくなり、訪れる賢治ファンをがっかりさせている。

国土交通省は、観賞できるよう北上川の三つのダムの放流を
一時的に最小限まで絞り込む方針を決めた。
賢治の命日の21日に実施。

イギリス海岸は、賢治ゆかりの場所として、
全国から多くのファンや観光客が訪れている。
最近では、10年ほど前の干ばつの時に姿を見せたぐらい。

洪水調節や発電、灌漑のため、北上川上流に造られた複数のダムにより、
水位が高位で安定するようになったことが、原因の一つ。

関係するダムは四十四田(盛岡市)、御所(同)、田瀬(花巻市)の3ダム。
国交省北上川ダム統合管理事務所では、
賢治関係者や地元花巻市からの要望に、2年がかりで放流調整を検討、
稲刈りの時期で農業用水が多く必要とされず、
賢治の命日で「賢治祭」が開かれる21日を選んで実施。

発電に関係する岩手県企業局や電源開発にも、了解を得た。
放流調整は、20日午後9時~21日午前9時まで。
3ダムを合わせた最大毎秒150トンの放流量を、最小限の34トンまでに絞る。
管理事務所では過去のデータを分析、
海岸は付近の流量が50トン以下に落ちた場合、姿を現す。

放流水がダムから到達するには12~13時間かかり、
21日午前中には久しぶりに海岸が顔をのぞかせそう。

管理事務所の葛西敏彦所長(55)は、
「イギリス海岸は北上川の宝。成功したら毎年実施したい」。

地元で長年、海岸を撮影し続けている吉田精美さん(79)は、
「もう見えないとあきらめていた。うれしいプレゼントです」

〈イギリス海岸〉

北上川と猿ケ石川の合流点に位置し、日が照るとイギリスのドーバー海峡の
白亜の海岸に似て、岩が乾いて真っ白に見えることから賢治が命名。
太古の地層で、炭化したクルミの実や獣類の足跡の化石が見つかっている。
賢治は、花巻農学校教員時代にしばしば生徒たちと訪れ、
その時の模様を随筆風短編「イギリス海岸」に描いた。
海岸のイメージは、「銀河鉄道の夜」を始め多くの作品に影響を与えた。
06年に国の名勝「イーハトーブの風景地」に指定。

学校の情報化(1)市立小中の全教員 パソコンで授業

(読売 9月17日)

小中学校の全教員が、コンピューターで教科指導できる自治体がある。

パソコンの前に座った児童が、画面に表示される計算問題をノートで解き、
次々と答えをキーボードで入力していく。
身を乗り出すようにして問題に向かう、その集中力に圧倒された。

東京都日野市立平山小学校のパソコンルームで行われていたのは、
5年生の算数の授業。
基礎・基本を習得するために考え出された学習ソフト
「インタラクティブスタディ」。
小数と整数のかけ算・わり算で、一問ずつ答えの正否が判定され、
次の問題が難しくなったり、やさしくなったりしていく。

教員用のパソコンには、児童の進み具合や、問題ごとの正答分布が表示。
1問に5分以上かかっている子にはランプがつき、
つまずいている子もひと目で分かる。

「だれも騒がないし、自分のペースで落ち着いて問題に取り組める」、
「先生に教えてもらうと冷やかされることもあるけど、
間違えるとパソコンが一つ一つアドバイスをくれるのも便利」と子供たち。

担任の佐野敏孝教諭(26)は、「自分のペースで取り組むよう指示。
単元の終わりに、復習を兼ねて取り組むと有効。
得意な子は、ゲーム感覚でどんどん新しい問題に進んでいくので、
苦手な子にじっくりとついてあげられる。
一斉授業では、なかなか難しい個別指導がやりやすくなった」と評価。

日野市は、ICT(情報通信技術)を教育現場に積極的に導入するため、
2006年、庁内にICT活用教育推進室を設け、コンピューターを使って
教科指導ができる教員100%の目標を掲げた。
その目標は、07年3月に18小学校(当時)、
08年2月には8中学校のすべてで達成した。

「教員に方針を示し、学校という組織を動かしていくのは管理職。
まず校長と教務主任の研修から始め、
ICTの重要性に気づくよう意識改革を行った」と五十嵐俊子室長は振り返る。

ネックは、長い教師生活で築き上げた授業方法に誇りを持つベテラン教諭。
パソコンにほとんどふれたことがない者も多く、最初の一歩が踏み出せない。
そんな場面で、大きな役割を果たしたのが、
メディアコーディネーターと呼ばれる4人の助っ人。
教員免許を持ち、教員採用をめざしている若者で、
推進室が小学校に1週間、中学校には3週間派遣。
機器の設置など作業を請け負い、ICTの良さを実感してもらうことに力を注いだ。

「黒板だけでも授業はできるが、映像作品や色鮮やかな画像を示すことで、
勉強嫌いの子の興味も引ける」と、
教員生活27年目に入った平山小の石川育代教諭。
古宮キヨ子校長は、「目を輝かせて、教材に見入る子供たちの姿を見ていると、
自分はそこまでの授業をしていただろうかと悔しく思うこともある。
ICTを取り入れることにより授業を見直し、ひと皮むけた先生も出てきた」。

教科担任制の中学校へのICT導入は、一筋縄ではいかなかった。
「10年、20年かけて、表現力や話術に磨きをかけてきた
先生たちの教える技術は、もはや職人芸だから」と、
市立平山中学校の行冨健一郎教諭(47)は笑う。

教務主任として、校内でICT推進の旗振り役を務めているが、
決してパソコンが得意なわけではなかった。
しかし、理科教諭として頭を悩ませてきた力学的エネルギーの
授業の導入にも使えると気づいた。
車が壁にぶつかった時の壊れ方を、速度で比較する衝突実験などの
映像をパソコンに取り込んで使ったのだ。

「これまでの授業は壊さずに、話術などで補ってきた部分で使えばいい。
ICTに振り回されては、元も子もないから」と行冨教諭。
今の子供たちにとって、ICTの活用は確かに有効だが、
最も大切なのは個々の教員の授業力だ。

◆校内LAN整備率62・5%…米韓に大きく後れ

文部科学省が、8月に発表した2007年度
「学校における教育の情報化の実態等に関する調査(速報値)」によると、
今年3月現在の普通教室の校内LAN整備率は、62・5%。
政府の「IT新改革戦略」(06年発表)で掲げた11年3月までの
「おおむね100%達成」は厳しい。
米国94%(05年秋)、韓国100%(05年12月)などに比べ、
大きく後れを取っている。
都道府県別では、東京の整備率は37・0%で46位。

教員のICT活用指導力については、05年度までの調査が
「コンピューターで教科指導等できる教員数」を答えるだけの設問で、
日野市の100%達成は、この調査を踏襲した数値。
06年度からは、教材研究・指導の準備・評価などにICTを活用する能力、
授業中にICTを活用して指導する能力など、質問が18項目に細分化。
ここでも、07年度の都道府県別順位で、
東京は23~40位と低迷しているだけに、日野市の突出ぶりが際立っている。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080917-OYT8T00255.htm

「地産地消」の学校給食食材 新たにジャガイモ、ニンジン (兵庫)

(読売 9月15日)

学校給食の食材に地元の野菜を使い、「地産地消」を進める
神戸市の「こうべ給食畑」推進事業で、
市は市内産野菜の利用率アップを目指し、
これまでのキャベツや白菜など19品目に加え、
新たにジャガイモやニンジンも食材とする取り組みを始めた。

2010年度までの3年間で、市内の小学校や養護学校など
計174校で利用率30%を目指す。

市は、これまでも無農薬栽培など一定の基準を満たすキャベツや白菜、
大根など「こうべ旬菜」に指定した19品目を、
学校給食に取り入れてきたが、子どもたちの地域農業への理解を
さらに深める狙いで今年4月、同事業をスタート。

07年度に、174校で給食に使われた市内産野菜は、
キャベツ(62トン)、白菜(20トン)など青物野菜を中心に112トンしかなく、
利用率はわずか9・6%。
同事業の目標である30%を達成させるためには、
これまで使っていなかった市内産野菜も取り入れることが必要と判断。

新たに食材となるジャガイモは、西区産。
不耕作地の活用などを農家に推奨し、6~7月の2日間、
計8・9トンを煮物などに使ってきた。
ニンジンの試験栽培も始めており、今後さらに品目を増やしていく。

市農水産課は、「不耕作地の有効活用になるうえ、子どもたちにとっても、
地元で栽培された新鮮で安全な野菜を味わうことで、
食について学ぶ機会が増えるはず」。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news2/05/20080912-OYT1T00943.htm

山中教授のiPS細胞製造法に特許成立

(サイエンスポータル 2008年9月12日)

山中伸弥・京都大学教授が、体細胞から世界で初めて作り出すことに
成功した人工多能性幹細胞(iPS細胞)の製造法について、
特許出願していた京都大学に対し、国内特許が成立。

京都大学は、日本以外の各国にも特許を申請しており、
それらの結果はまだ出ていない。

特許の範囲は、「体細胞から誘導多能性幹細胞を製造する方法で、
4 種の遺伝子:Oct3/4、Klf4、c-Myc、Sox2 を体細胞に
導入する工程を含む方法」。

京都大学iPS細胞研究センターは、
「4つの遺伝子を体細胞(例えば皮膚細胞)に導入する工程により、
iPS 細胞を製造する方法に関するもので、
この方法で製造された細胞にもその権利が及ぶ」。

京都大学は、1昨年12月6日に山中教授の開発したiPS細胞の製造法に
ついての特許を国際出願。
今回認められたのは、日本に移行手続きをした特許出願をもとに、
5月20日に分割して行った特許出願に対して。
分割出願と同時に早期審査請求を行い、
出願審査請求から約3カ月で特許が認められた。
権利期間は、最初の国際出願日である2006年12月6日から20年。

iPS細胞研究は、内外の多くの研究者が山中教授の後を追って、
研究を進めており、山中教授より少ない遺伝子の導入で
iPS細胞の樹立に成功するなど新たな成果が次々に報告。

http://www.scienceportal.jp/news/daily/0809/0809121.html

「武士道」贈呈 高平小五郎がルーズベルト大統領に

(岩手日報 9月9日)

明治外交史研究家平野恵一さん(71)は、
外務省外交史料館の資料から、一関市出身の外交官高平小五郎が、
セオドア・ルーズベルト元米国大統領に、
新渡戸稲造の著書「武士道」を贈呈したことを示す報告文を発見。

これまで武士道は、明治の官僚で政治家の金子堅太郎が
大統領に贈ったとの説が広まっていた。

平野さんは、「大統領の日本理解に、同郷の2人が深くかかわっていた」と
新たな史実発見を喜んでいる。

文書は、「機密第二九号大統領近況一般報告の件」。
1904(明治37)年6月11日付で、在米全権公使だった高平が
小村寿太郎外務大臣にあてた。

同年2月、日露戦争が始まり、翌年9月、ル大統領の仲介により日露講和、
ポーツマス条約が締結。

報告書には、「源氏物語、新渡戸博士の武士道をはじめ、
本邦に関し英文にて記されたる著作中、可能なものを数部選び、
その(大統領の)閲覧に供したるに」と、
高平本人が日本関係の書物数冊を贈った事実を記している。

これまで武士道は、大統領が「何か日本人の精神性を知るための書籍はないか」
と金子に依頼。金子が推薦した本の一つだったと言われてきた。

金子は自著「日米外交秘録」で、「大統領に送った」と記載。
大統領と同じハーバード大に留学し、2人は「学友」だったこと。
大統領の支援を得て、日露講和の実現に奔走したことなどが金子説を補強。

しかし、金子は外務大臣にあてた報告書「日露戦役米国滞留記」で、
「大統領から高平と共に内輪の昼食会に招かれたおり、『武士道』の話となり、
高平公使が都合よく1冊所持しているので、それを進呈したい旨申し出た」。

平野さんは、「金子が大統領に武士道を贈ったという話が流布されているが、
高平が同郷で親交のあった新渡戸の著書を大統領に贈呈したというのが
事実だと思う」。

上智大外国語学部の高橋久志教授は、
「日露講和では、さまざまの日本人が対米外交で活躍した。
高平は、大統領に大きな影響を与えた一人であることは
最近研究者の間で知られてきている。

報告文は、高平が日本理解に尽力したことを示す新たな発見で
大変興味深い」と評価。

◆高平小五郎(たかひら・こごろう、1854-1926年)

一関市出身の外交官。76(明治9)年外務省入り。
79(同12)年在米公使館勤務。オランダ、イタリアなど欧州の公使を歴任。
99(同32)年外務次官。日露戦争当時、特命全権公使として米国に駐在し、
首席全権小村寿太郎を助けてポーツマス条約の早期締結を図った。

◆金子堅太郎(かねこ・けんたろう、1853-1942年)。

福岡市生まれ、明治期の官僚・政治家。司法大臣、農商務大臣、
枢密顧問官などを歴任。伊藤博文を助け大日本帝国憲法制定などにかかわった。
米国留学の経験を生かし、日露講和でも活躍。
日本法律学校(現日本大)初代校長。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20080909_15

2008年9月22日月曜日

ビタミンB12は脳にとって有益である

(WebMD 9月8日)

ビタミンB12が、高齢者の脳体積の縮小を防ぐのに役立つ可能性。
オクスフォード大学(英国)の研究者らは、記憶または思考の障害がない
61 - 87歳の被験者107例を対象。
被験者の平均年齢は73歳、54%が女性。

肉、魚、牛乳に含まれる栄養素ビタミンB12のレベルを調べるため、
血液検体を採取。被験者らは年1回、磁気共鳴画像法(MRI)による
脳スキャン、記憶力の検査、理学的検査を受けた。
被験者に、ビタミンB12欠乏症は認められなかった。

血液中のビタミンB12レベルが高い人は、低い人々比較し、
脳が縮小する可能性が6分の1。
ビタミンB12レベルが低いことが、脳の大きさに対する作用を介して
認知障害の原因になったかどうかを検討することはできなかった。

オクスフォード大学のAnna Vogiatzoglouは、
「脳の健康に影響する多くの因子は、コントロール不能だと考えられるが、
この研究は、肉、魚、栄養強化シリアル、牛乳を摂取し、
ビタミンB12の摂取量を増やすよう、食事内容を調整することが、
脳の縮小を予防し、記憶力を保つための方法である可能性を示唆する」

ビタミンB12サプリメントの摂取に効果があるどうかは検討していないため、
脳の縮小のリスクのある高齢者に違いをもたらすことができたかは
依然として不明。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=SPECIALTY&categoryId=580&articleLang=ja&articleId=80060

F1マシンが登場 急性リンパ性白血病の啓太君、夢かなう 静岡県立こども病院

(毎日新聞社 2008年9月18日)

「病気が治ったら、F1関係の仕事をしたい」。
難病の急性リンパ性白血病に苦しむ函南東小6年、
手塚啓太君の夢を受け、静岡市葵区漆山の県立こども病院の
ピロティーに、F1マシンが登場。
病院にF1マシンを持ち込むという前例のない取り組みだったが、
ホンダやボランティア関係者の熱意で実現。
全員の願いは、「啓太君、元気になって」だ。

啓太君の病気が発症したのは、3年前の5月13日。
突然夜中に鼻血が止まらなくなり、白血病と診断されて入院。
病状は厳しく、危篤状態と回復を繰り返し、
「僕死んじゃうのかな」と何度もつぶやいた。
父賢一さん(45)は、「覚悟はしたが、まだ早いと思っていた。
ここ数日は本当に危ない状態もあった」。

だが、いくつもの奇跡が重なった。
危篤状態から意識が戻った日、難病の子供の夢をかなえる
ボランティア団体「メイク・ア・ウィッシュ オブ ジャパン(MAWJ)」
静岡支部の水上市子さん(52)が、県立こども病院を訪問。
担当医から両親と啓太君を紹介された。
普段は目を開け続けるのも難しい啓太君は、表情を輝かせて
水上さんにF1の夢を託した。

「啓太君にF1カーを見せたい」。
MAWJから協力を依頼されたホンダは、
「明日にも病院に車を運ぼう」と即決。
企画から2日間で実現したのは、MAWJにとっても初めて。
ホンダは、「今回のような事は初めて。すごいことだが、
各部門が啓太君の夢をかなえたい一心で走り回った」。
MAWJは、「病院に持ち込むなんて、とても無理と思っていたのに奇跡が起きた。
ここから大きな奇跡が起こるのを、私たちはたくさん見てきた」。

東京から運ばれてきたのは、
昨年までF1グランプリで世界を走ってきた「RA108」。
今年のチームカラーの地球をイメージした青と緑の車体を、
ベッドに横たわったまま見た啓太君は、
「(興奮して)すごくビクビクしてる。思ったより大きい」と感激した様子。
時折うれし涙を隠すように顔に手をやりながら、
エンジンの場所や運転席の構造などを質問した。

その様子を見つめていた母真弓さん(45)は、
「病室では少し手を動かすだけでも疲れてしまうのに、
今日は本当にうれしかったみたい。
今度は、自分の力で頑張って良くなってほしい」。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=80010

スポーツの秋到来。思わぬけがに見舞われないためには?

(毎日新聞社 2008年9月17日)

北京五輪でスポーツに魅了された夏が過ぎ、
秋には子どもの運動会や地域のスポーツ大会が催される。
普段は仕事で忙しい大人にも、出番が回る機会が増えそう。
学生時代にスポーツに打ち込んだ体力自慢であっても、過信は禁物。
思わぬけがに注意したい。

福岡県古賀市の会社員、吉田英治さん(56)は、
約15年前の親子サッカー大会で苦い経験をした。
ゴールを守る吉田さんに、相手の子どもが正面からシュート。
手で防ぐか、足でクリアするか?「どう動くか、判断に迷ってしまった」。
迷いは不安定な動きにつながり、地面で足をひねった。
右足首を骨折する3-4カ月の大けが。

学生時代はバスケットボールや柔道に励み、社会人になっても
地元ソフトボールクラブに所属し、自信はあった。
「出張から帰った翌日だったし、サッカーにも慣れていなかった」。

厚生労働省の国民健康・栄養調査(06年)によれば、
「日常生活で習慣的に体を動かしていない」という人は20-50代男性、
20-40代女性で4割超。
働き盛りで運動できる時間が限られる中、久しぶりの運動となれば、
相応の心構えが求められる。

人間の体力・筋力は、35-40歳をピークに、1年に1%ずつ低下。
名古屋市立大大学院の竹島伸生教授(運動生理学)は、
「体力の客観的評価がなく、若い時に動けたという主観的イメージとの
ギャップから、けがをすることが考えられる」。
ジョギングや何らかの運動をしていても、
加齢による体力低下は少なからずあり、過信しない方がいい。

競技当日の心がけは、まず早めに起きること。
朝は、副交感神経の働きで体がリラックスした状態にある。
午前中から動く場合、ウオーキングなどで体を目覚めさせておくと良い。

競技前の運動は、ストレッチだけでは不十分。
「準備運動は筋肉、神経、循環器系の動きを良くするのが目的。
走る種目なら、事前に軽く走り、心臓を動かして」。
運動中の頑張りすぎも禁物。
隣の人と話ができ、「少しきついな」と感じるぐらいの余裕を持っておこう。
こまめな水分補給も心がけたい。
のどが渇いたと感じる前の摂取が肝心で、竹島教授は
「脱水症状の回復には、冷えた飲み物の方が有効」。

力勝負の種目では、息を止めないこと。
「一過性の循環障害を起こし、脳や心臓の重大な事故につながる」
綱引きなら、「いち、に」と意識的にかけ声を出すと、呼吸しやすい。

秋のスポーツ経験を、継続的な習慣につなげたいもの。
竹島教授は、「技術や能力が必ずしも高くなくても、
健康維持の筋トレやウオーキングも含め、
生活を楽しむように運動を取り入れてほしい」
……………………………………………………………………………
◇運動する際の注意点
▽ひざや腰を痛めないよう、かかとが厚めでクッション性のある運動靴を選ぶ。
▽運動前後に、5-10分程度の準備・整理運動を。
▽体調急変に備え、水分補給の缶ジュース代120円と携帯電話
(または公衆電話代の10円)は必携。
▽寒い日や悪天候など運動環境が整わない日は、運動を休む勇気を。
▽運動する間は息をこらえず、意識的に息を吐いて呼吸を続ける。
▽安全で適切な運動強度は、「ちょっときついな」と感じる程度。
有酸素運動の場合、運動直後に手首で心拍数を計り、
10秒間に15-20回が目安。
▽犬の散歩を兼ねた運動は、犬のペースに合わせると、
運動強度が高くなることもあるので気を付ける。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=79977

教師力08(15)【読者の声】地域との連携に共感

(読売 9月13日)

教師の在り方について、読者も様々な立場で考える。

「長年、同じ指導をしていると、気づかなくなることが多いが、
何歳になっても変わることはできる。
今回の一連の記事を教育現場に送ってほしい。
同じ職業で輝いている方がたくさんいる、ということが励みになる」

こんな感想を寄せたのは、東京都内の自宅でピアノなどを教える女性(38)。
小学生の母親で、「輝いている教師が、我が子の先生でないことが悲しい。
自らを顧みることで、生徒の目線に立って授業をしている教師は
一体どのくらいいるのでしょうか」

学校の教師と立場は違うものの、教育をするという点では共通する職業。
「子供が能動的に受けられる授業をすることで、
やる気の出る子はたくさんいる。
人を教える職業に就いたのなら、教えた事が出来るようになることより、
やる気を起こさせることを先にするのが大事

大阪府内の元養護教諭の女性(73)は、
「『子供の心をじっくり聞く』、『一緒に考え心を育てる』。
これこそが、学校教育の中で軽視されてきた」。
学び直すことで、教え方を劇的に変えた教師たちの記事に対し、
保健室で子供たちを見続けてきた人の感想。

地域住民とともに授業を作る教師の記事(8月27日付)には、
世代を超えた共感の声が上がった。

京都市内の高校3年生の女子生徒は、
「学校と地域が身近なものだと教えられた。自分の学校でも、
地域の方が来て授業をしてくださったのを思い出し、
学校には地域や保護者の力が必要だと気づいた」。
教育関連の仕事に就くことを希望。

大阪市内の女性(84)は、「いいなあ」と自分の母校の小学校に
思いをはせ、「地域とのきずなが深ければ、良い卒業生が多くなる」。

この記事では、登場した教師にも、知人からメールで反響が相次いだ。
東京都内の高校教師から、「学校が地域の宝物になるようにという発想は、
学校の中だけで働いてる教員、特に高校の教員にはわからないかも。
自分もこの夏休みから、週1回、野球部の生徒を連れて、
通学路のゴミ拾いを始めた。
地域に愛される野球部になれるよう、地道に頑張る」。

小学校教員出身の教育委員会職員は、
「改めて、教師が地域とつながることの大切さを感じた。
学校と地域の連携とは、教師と地域の人が具体的場面を通じてつながること。
仕組みづくりが先行して、中身が薄い連携にならないよう、
管理職は運営に工夫を施す必要がある」

部活動の活性化について、研究しようとしている宮城県の教師の記事
(8月29日付)には、「読んでうれしくなった。生徒たちも、
地震の被災に負けずに頑張ってほしい」という激励のメールが届いた。

教師からは、改めて多忙さを訴えるファクスやメールが複数送られてきた。
研究が身を結ぶことを祈りたい。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080913-OYT8T00191.htm

2008年9月21日日曜日

米ラスカー賞に遠藤章氏 高脂血症薬スタチン発見 ノーベル賞の登竜門

(共同通信社 2008年9月16日)

米国で最も権威がある医学賞で、ノーベル賞の登竜門ともいわれる
「ラスカー賞」の今年の受賞者に、バイオファーム研究所の
遠藤章所長(74)ら5人が選ばれた。
米アルバート・アンド・メアリー・ラスカー財団が発表。

遠藤氏は、血中のコレステロール値を下げる「スタチン」を発見。
高脂血症薬として世界的に使われ、心臓病の治療などに貢献。
日本人のラスカー賞は、ノーベル医学生理学賞を受賞した
利根川進氏らに続き5人目。授賞式は26日にニューヨークで行われる。

遠藤氏は、「山あり谷ありで(研究を)断念しようと思ったことも
2、3回あったが、良い助言のおかげで今日に至った。
私一人の努力では成し得なかった」。

遠藤氏が名誉教授の東京農工大は、同氏に「特別栄誉教授」の称号を授与。
遠藤氏は、秋田県出身で東北大農学部卒。
製薬会社三共(現・第一三共)の研究員時代、
6000種のカビやキノコを調べ、1973年に青カビの培養液中から、
体内でのコレステロール合成を調整する酵素を阻害する物質
「コンパクチン(メバスタチン)」を発見

ニワトリやイヌの実験で、血中のコレステロールを劇的に低下させる
効果があることを突き止めた。

世界の製薬会社が、コンパクチンと同系列の化合物を次々と開発、
高脂血症の治療薬として製品化し、スタチンと総称
世界中で3000万人を超える患者に使われている。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=79907

なお険しい数学復興の道

(サイエンスポータル 2008年9月9日)

日本の数学界が置かれた厳しい状況と打開策をまとめた
日本学術会議の提言が公表。
数学界の窮状に一般の関心が集まるきっかけとなったのは、
2006年に文部科学省科学技術政策研究所が公表した報告書
「忘れられた科学-数学」。

同研究所は、米国の政府関係者などのインタビュー調査に基づき、
米国が近年、数学研究予算を増加していることを明らかにした報告書
「米国の数学振興政策の考え方と数学研究拠点の状況」を公表。
米政府関係者が日本に対して、「明らかに数学に対する投資は十分でない」
と見ていることも紹介。

日本学術会議・数理科学委員会数理科学振興策検討分科会の提言
「数理科学における研究と若手養成の現状と課題」を読むと、
状況は変わっていないことが分かる。

現状を端的に示す指摘として、「博士課程の進学者数を、
5年程度にわたり政策的に抑制する措置」を応急的方策として提言。
国立大学重点化に伴い、数理科学系大学院の定員は、
旧帝大系など大規模大学を中心に博士修士とも急増したものの、
博士課程の定員を完全に充足している大学院は皆無、
という現実に基づいた窮余の策。

この背景として、博士号取得者が大学の常勤ポストに新規採用される数が
大幅に減少し(博士号取得し、直ちに常勤の職に付けるのは10%未満)、
短期研究職ポストは増加しているものの、任期が終了すると次の就職先がない
という問題が顕在化している、という現状が指摘。

「数理科学分野は、科学分野の横断的基盤領域。
数理的な思考は、現代社会で基本的であり、高い数理的能力を持つ
人材に対する社会のニーズは大きい」と、数値シミュレーション、ゲノム解析、
金融工学、リスク・マネジメント、CAD、コンピュータグラフィックス、
情報セキュリティ、大規模集積回路の設計など、
数理科学が社会に貢献できる数多い潜在的な分野の存在も強調。

ニーズはあるにもかかわらず、博士課程の定員を減らすことを
応急策とはいえ提言せざるを得ないところに、
数学界の置かれた苦しい状況が伺える。
「数理科学を、諸学や社会に開かれた形で発展させることに
積極的だったとは言い難く、応用部門の発展に後れを取っている」。

提言は、日本の数理科学者集団の問題点も指摘、
大学、行政、企業、学術関係者に加え、数理科学研究者コミュニティに対し、
具体的な努力を求めているが、道は険しそう。

http://www.scienceportal.jp/news/review/0809/0809091.html

肥満遺伝子の影響、運動で帳消しと アーミッシュ研究

(CNN 9月14日)

肥満になりやすい遺伝子を持っていても、
1日3─4時間の運動を続ければその影響は現れず、
肥満を避けることができるとの研究結果を、米国の医学者らが発表。

伝統的な生活様式を守り続けるキリスト教プロテスタントの一派、
アーミッシュの人々に注目して、遺伝子と体重の関係を調べた。

メリーランド大のソレン・スニトカー博士らが、内科専門誌
「アーカイブズ・オブ・インターナル・メディシン」に報告。

欧州系白人の約30%が持つFTOと呼ばれる遺伝子の変異形は、
肥満傾向に関係することが分かっている。
ペンシルベニア州ランカスター郡のアーミッシュ居住地域で暮らす
704人を対象に、血液検査でこのタイプの有無を調べ、影響を検証。

アーミッシュは、18~19世紀にかけて北米で暮らし始めたドイツ系移民で、
現在も車や電化製品を使わず、当時の質素な生活を続けている。
アーミッシュの社会では、多くの男性が農業や大工仕事、
女性は家事や育児に、それぞれ1日の大半を費やしてきた。

対象者らは1週間、昼夜を問わず電池式モニターを装着し、
こうした生活の中での運動量を記録した。

その結果、1日に3─4時間、掃除や庭仕事、早歩きなど
運動をしている人は、FTO遺伝子を持っていても、
肥満傾向が増大しないことが分かった。

一方、運動量が最も少なく、平均的米国人並みだったグループは、
運動を続けたグループに比べ、体重が平均7キロ近く多い。

スニトカー博士は、「一般の人々にとって、肥満防止のために
19世紀の生活様式に戻すというのは非現実的な発想。
テレビを見る代わりに散歩をしたり、エレベーターの代わりに階段を使ったり、
車に乗る代わりに徒歩で出かけたりすることは、それほど難しくないはず」、
活動的な生活を呼び掛けている。

http://www.cnn.co.jp/science/CNN200809140017.html

教師力08(14)兵庫教育大学長 梶田叡一さんに聞く

(読売 9月12日)

かじた・えいいち 大阪大教授、京都大教授、京都ノートルダム女子大学長を歴任。67歳。

教職大学院の青写真の描き手は、課題をどう考えるか?
「働き盛りの現職教員が進学するには、大変な覚悟がいる。
もっと制度を整えていかないと」
中央教育審議会の副会長・教員養成部会長として、
教職大学院の設置を進めてきた梶田叡一さんは、
教員を送り出す教育委員会、迎える大学院双方の努力が必要。

第一に、在学中の生活をどう支えるか?
今春開校した教職大学院19校に進んだ現職教員は、364人。
ほとんどは、教育委員会からの派遣命令を受け、
給与をもらって学んでいるが、スタートして実感したのは、
「先生たちを大学院に派遣するお金を、
教育委員会が出せなくなってきている」という現実。

「派遣教員の数が確保できない理由で、設立を断念した大学も少なくはない」
「進学を希望するが、派遣命令を受けられない教員が結構いる」。

現職教員が自主休業、無給で進学した場合の一助となるよう、
授業料免除、奨学金付与などの新たな対策を進める大学も。
4年前から学長を務める兵庫教育大でも、学内アルバイトのあっせんや、
学生寮・家族寮の利用、授業料免除という従来の制度に加え、
奨学金制度も新設。

「経済的な支えがなければ、学びたくても学べない。
再教育の場として作ったはずが、現職教員がほとんど来なくなる可能性が」

教育の質確保のため、大学院同士がチェックし、支える組織が必要。
教職大学院には現職教員と、ストレートマスターと呼ばれる学部を
卒業したばかりの学生が入っている。
双方一緒のカリキュラムで教育してよいのかという点。
別々だと大学院側の負担が増えるが、「授業研究など実践を含む部分は、
基本的に別々に指導した方がいい」。

教職大学院を出ても、給与面などで優遇される保証はなく、
進学の意義を見いだしにくいという声も。
力のある修了生を輩出していけば、自然と責任あるポストを得て、
給与面でも優遇されるはず。職場を1年、2年空けてでも来てよかったと、
思わせる講義をしなければ、意味がない」。

教員養成学部を持つ全国立大と、熱意のある私立大を合わせて、
全国に教職大学院は70~80ぐらいできる。
「でも今は、数よりも中身」を意識。

社会人を教壇に立たせた方がいい授業ができるという意見。
「教え込みはよくない、子供の自主性に任せていればいいと、
教師たちがたるんでいた時代があったのは確か」

だが、「二次方程式を解ける社会人はいっぱいいても、
解けるようになるまで関心を持たせ、背後にある二次関数の考え方を分からせ、
応用問題まで解ける力を付けていこうというのは、プロの教師にしかできない」。
「日本の教師は、授業研究や教材研究で、昔からよく勉強していた。
プロだったんです。もう一度プロになってもらわなきゃいけない」

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080912-OYT8T00234.htm