2009年5月16日土曜日

さいとう製菓と八木澤商店 農業参入へ協定締結

(東海新報 5月13日)

自社用加工原料の地元調達を目指し、住田町の種山ケ原で
白いんげんや大豆の栽培実証事業に取り組んできた、
大船渡市・さいとう製菓(株)(齊藤俊明社長)と陸前高田市の
みそ、しょう油製造販売、(株)八木澤商店(河野和義社長)は、
農業参入のための協定を同町と締結。

賃貸方式で直営農場を確保することとなり、
本格生産への第一歩を踏み出した。

両社と町が同日締結したのは、農業生産法人以外の企業が
対象農地所在市町村との協定を交わすことで、
リース方式により農地を確保できるようになる「特定法人貸付事業協定」。

担い手不足対策や遊休農地解消を目的に、
平成15年の農業経営基盤強化法改正を機に設けられたもの。

全国規模で商品展開する両社は一昨年、菓子やみそ、しょう油の原料を
地元で調達しようと、大船渡市の建設業、(株)佐々木組(佐藤政夫社長)
との3社で、食品原料契約栽培システム構築研究会
(会長・佐藤社長)を結成。

県の後押しのもと、県肉牛生産公社住田第二牧場跡地で
「種山豆類プロジェクト」と銘打った栽培実証事業に取り組み、
一定の成果を出してきた。

本格スタートを前に開かれた協定締結式では、
各社や県、農業公社、町などの関係者約30人が出席。
さいとう製菓の齊藤賢治専務、八木澤商店の河野社長、
多田欣一住田町の三人が協定書に押印。

さいとう製菓では、主力商品「かもめの玉子」など和菓子あん用の白いんげん、
八木澤商店はみそ、しょう油の材料となる大豆を栽培する計画。
町農業委員会で認定を得られれば、6月にも種まきを行い、
さいとう製菓が6ヘクタール、八木澤商店が4ヘクタールの作付けを予定。
作業は、佐々木組に委託。

齊藤専務は、「白いんげんの多くは北海道産を使ってきたが、
地元調達によって地元や県内が元気になるよう、
『豊かな国いわて』を合言葉に皆さんと研究。
収量を安定させ、将来的には県外にも発信できれば」

河野社長は、「各方面の指導と協力をいただきながら挑戦していきたい。
われわれを例として、ほかにもチャレンジする企業が出てくればうれしい」

県大船渡地方振興局によると、この協定による農業参入は
気仙で2例目、新しい農業生産のモデルとして各方面の関心を集めそう。

http://www.tohkaishimpo.com/

MyMaiTree:あすを植えよう 宮脇さんと識者ら対談 第3回

(毎日 5月10日)

杉、ヒノキなど針葉樹の単層林づくりを推進してきた林野行政は、
2009年度から国有林内において、潜在自然植生を活用した
森林造成事業で新たな一歩を踏み出す。

土地本来の木を中心に、多くの樹種を交ぜて密植する、
宮脇昭・横浜国立大名誉教授の植生生態学の理論に基づいた
森林再生方法を直轄事業として初めて導入。
森林環境への国民の要望が多様化し、多様な森林づくりを
国民が求めていることなどが背景。

「次世代へのメッセージ」第3回は、
「山と森、国土を治める新たな一歩を」
最初の予定地、呉市の国有林現地調査に同行した宮脇さんと
島田泰助同庁次長が、新しい「山づくり」の課題と哲学を語り合った。

--国有林の森林づくりに、宮脇さんの方式を導入する理由は?

島田次長:林野庁の山づくりは戦後、戦争で荒れた森林を復興、
木材不足の対応に、単層林型の杉、ヒノキ等の針葉樹による植林を中心
この方式でなければ、1000万ヘクタール超の広大な人工林はできなかった。
近年、多様な森づくりを、という国民の声が強い。
宮脇先生の潜在自然植生を活用した植林方法は、大変優れた方法で、
何とか活用できないかと考えた。

宮脇さん:杉、ヒノキ、松も大事。
植生生態学の立場から、同時に広葉樹も植えてほしいと思ったが、
これまで機会がなかった。
今回、国有林におけるエコロジカルな森づくりにともに取り組み、
大変感動している。
国有林を守り育ててきたプロの林業技術に、
わずかでもエコロジカルな、植生生態学のノウハウを入れ、
国土保全と、1億2000万人のいのちと遺伝子とこころ、
文化を守る森づくりを進めてもらう試みに期待。

島田次長:杉、ヒノキを中心とした人工林は、
健全に育てれば公益的機能が高く、国土保全の役割も大きい。
住宅用材としても大変重要で、木造住宅用の資材供給に、
健全な人工林を作る政策はしっかりとやっていく。
一方で、若干針葉樹を植え過ぎた部分も。
風倒木地のような自然条件の厳しいところでは、
自然条件に合った多様な森づくりを進める。

広葉樹と針葉樹を混交させ、自然の形に近い森づくりは、
06年度に改定した森林・林業基本計画の中でも大きな柱の一つ。
広葉樹林のつくり方も、下刈りや除伐を行い、目的とする森林の姿に
誘導するなどの取り組みを行ってきた。
宮脇先生との試行は、全く新しいやり方。
条件の厳しい急斜面や風倒木地などでの効果を期待。
森林づくりの経験や技術も生かし、広葉樹を活用した
新しい森林づくりの方策を作り上げる。

宮脇さん:立地条件が合い、管理されて経済的にも対応できるなら、
日本の伝統的な建築材である杉、ヒノキ、カラマツも植える。
尾根筋や急斜面や水際など、風倒木の被害地などは、画一的でなく、
土地本来の深根性、直根性の根が充満した主木群の幼苗を中心に植える。
高木、亜高木、低木をセットに混植・密植すると、
周りには、林縁群落で、野鳥が運んできた花木、低木が帯状にできる。
被害地でも、今ある木は残し、土地本来の木、東北南部から以西の
標高800メートル付近まで、シイ、タブ、カシ類、それ以上の高地や
東北、北海道は、ミズナラやカエデ類、カシワなどの落葉広葉樹を植える。
国土の特性に応じた使い方に。

広葉樹は金にならないといわれるが、ドイツのように80年伐期、
120年伐期で製材すれば、高く売れる。
高木になったら切って、焼かずに建築材や家具に使う。
ヒノキなど、切ると植えなければならないが、
広葉樹は自然に後継樹が待っている。

--宮脇さん指導の方法で評価するところと課題を。

島田次長:評価する点は、内外で先生の実績が1600カ所超。
植栽後の森林管理費用。
植えるときは、従来より経費が相当にかかり増しになるが、
3年くらい管理すれば、下刈りから除伐、間伐という部分が、
将来にわたって軽減。
苗木の成長も極めていい。
広く事業化するには、トータルコスト等を更に検証。
モデル実施して、結果を広く共有していく。

課題は、森林整備として林野庁が事業的に取り組んだ例がない。
森林整備に長年携わってきたプロに、
「この方法は、管理の手間が非常に省けるうえ成長もよく、
山でも活用のできる合理的なシステムだ」ということを、
どうやって知り、納得してもらうか。
国有林の職員も、山づくりには自信を持っている。
プロの人たちを納得させるため、国有林のより厳しい条件の現場で
実験して結果を示す。

国有林で行う取り組みについて、民有林も含めて広く発信し、
多くの林業関係者に、多様な森林づくりの有効な方策として、
宮脇先生ご指導の「山づくり」が受け入れられるように。
個別の課題は地域によって違い、ひとつずつ対応していく。

宮脇さん:現場で議論し、体で理解し、課題を乗り越えてもらいたい。
黒衣になって、お手伝いさせていただく。

--広島を最初の試験場所に選んだ経緯は?

島田次長:モデル候補地として杉、ヒノキの森林づくりではない形での
再生が望ましい3カ所を、宮脇先生に相談。
東北地方の落葉広葉樹エリアの地すべり被災地と
火山噴火のガスで荒廃した三宅島の森林、広島の台風被災地。
立地などから、広島で始めてみる。
国有林は、国土の約2割を占めさまざまな条件の場所がある。
広島の成果を共有し、各地で着実に潜在自然植生を活用した
モデル的な取り組みを広めることができれば。

宮脇さん:クレメンツの遷移説では、自然に任せると、
本来の広葉樹の森になるには150年くらいかかるが、
土地本来の木を中心に根の充満した多種類の苗を植えれば、
十数年から数十年で限りなく自然に近い森に。

--国民とともに進める国有林管理ということで、次世代へのメッセージを。

島田次長:森林の問題は、国土保全、地球温暖化、生物多様性等の
問題とともに、林業という面からは地域の活性化にもつながる
国民の大きな関心事。
国有林では、従来、民有林に先駆けて、新しい技術の導入・定着に
積極的に取り組み、その成果が民有林に普及するよう努めてきた。
国有林の技術を生かしながら、国土の3分の2を占める森林を
活力あるものにするために、針葉樹、広葉樹それぞれの特性を生かし、
調和のとれた多様な山づくりを目指して、林野政に取り組んでいきたい。

宮脇さん:科学技術がどんなに発展しても、地球上に生きている限り、
人間は植物の寄生者の立場でしか生きていけない。
森の番人である林野庁、森林管理局、森林管理署、森林事務所の
皆さんと、現場を通しての協力関係ができることは、
私が今まで58年、今か今かと思ってきたことなので誠に感慨深い。
あなたとあなたの家族のため、日本のため、人類の未来のために、
いのちを守る哲学と現場での科学的な実証成果を基本に、
緑環境の総合科学である植生生態学と、伝統的な日本の森林づくりを
担ってきた林野庁のノウハウを一体にした、
新しい森林づくりのシステムを創造し、発信していただきたい。
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◇あすを植えよう いのちの森・My Mai Tree

土地本来の木(北海道、東北北部、山地ではミズナラ、ブナなど、
東北南部以西の標高800メートル付近まではシイ、タブ、カシ類)を
中心に多種類の苗木を、自治体などと開催する植樹祭で植える。
創刊135年記念事業として開始、06年から3年余で、
15道府県28カ所に約19万3000本を植えた。
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◇潜在自然植生

植生生態学の考え方で、人間が影響を加える直前までの「原植生」、
現在の「現存植生」とは別の第3の植生概念。
人為的干渉を停止した場合、その時点の自然環境が許容し得る
最も安定した群落。
自然保護や地域開発、国土計画で、単に元に戻すのではなく、
新しい緑環境を創造する、科学的な処方として利用できる。

◇荒廃地等における森林再生モデル

モデル事業候補地として、
(1)地滑り被災地、(2)火山性ガス被災地、
(3)台風による風倒被災地、の3タイプ
をリストアップ、
今年度は(3)で実施。
宮脇さんと、広島県呉市の野路山国有林で現地調査を実施。
島田次長はじめ国有林野部、近畿中国森林管理局、広島森林管理署、
広島県所管部の関係者らが参加。
現地は、瀬戸内海国立公園域内の標高約750メートル付近の
水源かん養保安林。
04年、台風でヒノキ林が多く倒木。
事業計画面積約1ヘクタール。
植林作業は、6月に宮脇さんの指導で実施。
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◇島田泰助

1953年神奈川県生まれ。東京大農学部卒。76年農林省入省。
84年から2年間、国連食糧農業機関(FAO)派遣(タイ駐在)。
林野庁国有林野部経営企画課長、九州森林管理局長、
同庁森林整備部長、同庁林政部長を経て08年7月から現職。
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◇宮脇昭

1928年岡山県生まれ。ドイツ国立植生図研究所で
潜在自然植生理論を学ぶ。アジア初の国際生態学会会長などを経て、
(財)地球環境戦略研究機関国際生態学センター長。
70年「植物と人間」で毎日出版文化賞、06年ブループラネット賞。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2009/05/10/20090510ddm010040041000c.html

犬の顔は飼い主に似る?大学教授らが「顔面相似」調査

(読売 5月12日)

犬の顔は、やっぱり飼い主に似る?
関西学院大の研究グループが、ペットと人間の「顔面相似」に
関する調査結果をまとめた。

同様の調査は海外にもあるが、外国人より顔つきの違いが少ないと
される日本人を対象にした実験は初めて。
論文は、英国の国際学術誌「アンスロズーズ」6月号に掲載。

文学部総合心理科学科の中島定彦教授(動物心理学)ら。
愛犬団体の催しで、シバ犬やポメラニアン、パグなど40頭と、
20~60歳代の飼い主40人を無作為に選んで顔写真を撮影し、
犬と飼い主を正しく並べた顔写真20組と、
わざと違えて並べた20組を用意。

学生186人に見せたところ、62%の学生が
「前者が正しい組み合わせ」と回答。
別の学生187人も、66%が前者を選んだ。

長い髪の女性は垂れ耳の犬を選び、短い髪の女性は立ち耳を
選ぶ傾向があったといい、中島教授は
「人は見慣れたものに好感を抱くため、自分の顔とよく似た犬を
飼い犬に選ぶ傾向があるのでは」

http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20090512-OYT1T00887.htm

検証 橋下改革(5)「できる子も伸ばす」指導

(読売 5月13日)

習熟度に応じて、クラスを分ける取り組みは全国で行われている。
大阪の特徴は何か?

「interesting」、「carefully」。
大阪府太子町の町立中学校の多目的教室から、
英単語を繰り返し発音する声が響く。
基礎学力を定着させるための「ベーシックコース」を
受講しているのは2年生12人。
比較級の復習が始まると、奥田裕香教諭(43)は、
前2列に詰めて座る生徒に質問を投げかけた。

同校では2008年の2学期から、2年生の英語の一部で
習熟度別指導を取り入れている。
奥田教諭は、「一斉授業では、時間を持て余す生徒や
理解が遅れる生徒が出てくる。指導を分けたほうが緊張感を保てる

普通教室に残った「チャレンジコース」の生徒20人は、
教科書の精読を終えた後、プリントの問題に取り組んだ。
指導する蟹山まどか・非常勤講師(24)は、
「生徒の弱点を洗い出し、重点的に説明できる」と手応えを語った。

生徒の多くも好意的に受け止めている。
ベーシックで学ぶ男子生徒は、「少人数なので手が挙げやすい。
授業に参加している感じがするし、成績がちょっと上がった」
チャレンジの女子生徒は、「教科書以外の範囲も学ぶことができる」

習熟度別指導は、府内の小学校の94%、中学校の80%で
何らかの形ですでに導入。
府教委は、実施校を100%に引き上げ、小学3~6年の国語と算数、
中学の全学年の国語、数学、英語で導入する方針。

学力向上支援員として非常勤講師を数百人配置し、
11年度までに実施教科の授業時間数に占める比率を、
現行の10%から30%に引き上げる。

新しい指導法に取り組む場合、一部の学校でスタートして
効果を検証するのが一般的だが、府教委は「より成果を出せる」と
100%実施にこだわった。
「できない子を救うだけでなく、できる子を伸ばすことも重要」として、
習熟度別指導の拡充を強く主張してきた橋下徹知事の意向が反映。

100%実施を掲げる大阪方式には、異論も。
府教育委員から、「まずモデル校を指定してみては」という声。
文部科学省の担当者は、「指導法は、学校の裁量に任せるのが通常の方法。
都道府県主導で、習熟度別をこれほど拡大する例はない」

学校現場には戸惑いもある。
ある小学校では、4人ずつ班を作り、児童同士が協力して課題に挑む
「学び合い」の手法を取り入れている。
校長は、「習熟度に違いがあるからこそ成立する方法。
理念が異なる習熟度別指導と、両立できるかどうか」

こうした声に対し、府教委は、「状況に応じ、習熟度別と従来の指導を
使い分ければ、成果は上がる」(小中学校課)と強調。
成績上位層も下位層も、ともに引き上げられるのか。模索は続く。

◆習熟度別指導

教員の定数に上乗せして配置する国の加配教員を活用するなどして
全国に広まっている。
07年度は全国の小学校の85%、中学校の73・9%で実施。
数学や英語など個人差が付きやすい教科を中心に導入、
クラス分けは児童生徒や保護者の希望で決められるケースが多い。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090513-OYT8T00277.htm

2009年5月15日金曜日

検証 橋下改革(4)勉強嫌い DSでなくす

(読売 5月12日)

勉強嫌いをなくそうと、様々な手法を試みている。

「ゲームが好きな人は手を挙げて」
大阪府池田市立細河中学校で行われた1年生の国語の授業。
携帯ゲーム機「ニンテンドーDS」を全員に配った後、
山際博教頭(49)が尋ねると、生徒たちが一斉に手を挙げた。
「漢字の勉強には、使い慣れている物で勉強する方法もある。
10級から1級まである。挑戦してみよう」

生徒たちは5分間、漢字検定ソフトを使い、タッチペンで画面に
漢字や読み仮名を黙々と書き込んだ。
尾玉純一朗君(12)は、「普段はゲームをしているけど、
勉強でもすごく面白かった。どんどん級を上げたい」

橋下徹府知事が昨年10月に打ち出した緊急対策には、
目玉の一つとして、DS学習の調査研究が盛り込まれた。

2009年1月から10年度末まで、府内の小中学校各10校に、
DSを40台ずつ貸し出し、計算力や覚えた漢字数の変化などを
調べようというもの。

細河中は、DS学習の研究校の一つ。
「表現の時間」という独自の国語授業(週1回)の毎回冒頭10分を、
DS学習に充てる。
山際教頭は、「長時間では飽きるだろうし、これだけで国語力が
上がるものではない」とした上で、
「紙と鉛筆で学ぶことが嫌になった生徒も、『DSなら面白い』という
感覚で勉強に入れるのでは」

DSを放課後学習に活用している貝塚市立第二中学校の
山口均教諭(48)も、「参加者が多くても、DSなら生徒に合わせて
問題を出してくれる」と利点。

勉強嫌いをなくすには、その原因を探るのが先決――。
そんな発想で行われているのが、府独自の「つまずき調査」。
教育改革を担う小河勝・府教育委員(64)の
大阪市立中学校の教員時代の実践から生まれた。

中学1、2年生を対象に、小学校の各学年で習う漢字の書き取りと
計算問題を解かせる。
生徒の名前と各問題を縦横に並べた一覧表を作り、
できなかったら塗りつぶし、どこでつまずいたかが一目で分かる。
昨年度は2回行われ、中学校では291校中99校が実施。

岸和田市立春木中学校で調査を担当した南川留美子教諭(50)によると、
3けたのかけ算の正答率が割り算より低く、意外な発見。
「今まではデータがなく、教師の感覚に頼っていた。
つまずきがわかることで、授業に生かせる」

昨年の全国学力テストに合わせて実施されたアンケートによると、
大阪の公立中学生は、国語については19・3%、数学は25・2%が、
好きではないと答えた。共に全国平均より4ポイント前後高い。

府教委小中学校課の箸尾谷知也参事(52)は、
「分かる、できる、もっと勉強したい、というサイクルを作りたい」
悪循環を断ち切るために、必死の取り組みが続く。

◆DS学習

タッチペンで手書き入力ができる携帯ゲーム機「ニンテンドーDS」を
使った学習方法。
2007年度、京都府八幡市の市立中学校で試行、
英単語の習得に効果があることが判明し注目。
文部科学省も、同年度から3年間の委託研究を進めるなど
教育界の流行になり、橋下教育改革では、大阪府全体で取り込んだ。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090512-OYT8T00281.htm

ディスプレー:未来のテレビはゴム状? 伸び縮み自在 東大など、有機ELで作製

(毎日 5月11日)

次世代の薄型テレビの素材として注目される有機ELを使い、
ゴムのように伸び縮みするディスプレーを、
東京大と大日本印刷などが作製。

顔形の立体ディスプレー上で表情の変化を映し出したり、
地球儀のような球形の装置で気象情報を表示するなど、
多彩な用途に生かせる。
11日付の英科学誌「ネイチャー・マテリアルズ」電子版で発表。

有機ELは、電圧をかけると発光する有機化合物。
消費電力が少なく、液晶やプラズマより薄いため、テレビで商品化。

研究チームは、単層カーボンナノチューブと呼ばれる
極細の炭素繊維とフッ素ゴムを、ジェット噴射で混ぜる独自製法で、
伸縮率や導電率の高い有機EL素材の開発に成功。
この素材で、縦横各10センチ、256画素の単色ディスプレーを試作。
伸縮を1000回繰り返しても品質が落ちない。

現在は、1画素が5ミリ角あり、
今後は画素の小型化、カラー化の研究を進める。

染谷隆夫・東京大教授(電子工学)は、
「従来は平面状だったディスプレーが、球面や動く部分でもできる。
人体形の装置で医療診断データを表示するなど、いろいろな用途が広がる」

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2009/05/11/20090511ddm012040058000c.html

WADAが抜き打ち検査強化、持久力増強の新薬もチェック

(読売 5月12日)

世界反ドーピング機関(WADA)のジョン・フェイ会長は、
「バンクーバー五輪に向けて抜き打ちの血液検査を強化し、
全検体について、CERA(持続的エリスロポエチン受容体活性化剤)に
関する分析を行う」

国際オリンピック委員会(IOC)が実施した北京五輪出場選手の
血液検体再分析で、持久力を高めるエリスロポエチン(EPO)の
新薬であるCERAに、6選手が異常値を示した。

北京五輪では、IOC、国際競技連盟(IF)と協調して検査を徹底、
五輪までの半年余で40選手近くを摘発。

フェイ会長は、「IOCにならい、保存してある検体の再分析を実施する
IFがあれば歓迎する」、
規定による8年間の検体保存と、検査方法が確立した時点での再分析が、
ドーピングの強い抑止力になるとの見方を示した。

http://www.yomiuri.co.jp/sports/news/20090512-OYT1T00080.htm

再生医療に必要な「工場」とは?

(日経 2009-05-01)

万能細胞研究に関する規制緩和が進み出し、
再生医療への期待が高まっている。
実現には、まだいくつもの壁がある。
例えば、細胞の培養や加工には、医薬品と同等の厳重な品質対策が
求められ、高度な専用「工場」が必要。
東京女子医科大学は民間企業と組み、
そのモデルともいえる新センターを開設。
同大の経験から、臨床応用への課題を探った。

東京女子医大がバイオベンチャー企業、セルシードと共同で完成した
設備は、「細胞プロセッシングセンター(CPC)」
患者の体の健康な部分からとった細胞を培養、患部に移植しやすいよう
薄いシート状に加工して「出荷」。
歯根膜を作って歯周病の治療に使ったり、食道の膜を食道がんの治療に
応用したりする計画。

CPCは、大学の先端生命医科学研究所の一角にあり、
モニター室などを含めると320平方メートルを占める。
汚染を防ぐため、出入り口は研究所本体とは分けている。

白衣に着替えて一歩踏み込むと、まるで半導体工場のクリーンルーム。
生きた細胞を扱い、人間の体に入れる材料を処理するため消毒も万全。
手が髪の毛などに触れた場合、すぐに消毒しなければならない。

出入り口近くの部屋には、医療廃棄物を高圧蒸気で滅菌する
大型の「オートクレーブ」。
材料保管室があり、液体窒素で組織や細胞を冷凍保存できるタンクが並ぶ。
部屋のクリーン度は、「クラス10万」。
約30センチメートル四方にある直径0.5マイクロメートル以上の
ちりや微粒子は、10万個以下という清浄度。

奥へ進み、心臓部の細胞操作室の「前室」に入る。
清浄度は、10倍高いクラス1万。
白衣のうえに、不織布を着てホコリが立たないようにし、
いよいよ操作室へ。
幅19センチメートルの大型無菌キャビネット(カバー付きの作業台)があり、
内部はホコリが舞わないよう下降流を起こして、
クラス100の環境で作業できる。

同様の細胞操作室はもう1室ある。
加工した細胞を、「出荷」する前に余計な菌が存在しないことを
確かめる無菌検査室もある。
病原菌が紛れ込むと、どんどん増えて細胞を移植した患者に
害を及ぼす恐れがあるので、入念にチェックする。

これだけの建物・設備を整えるのに、約4億円かかった。
年間の運営費も、4000万円程度を見込む。
製薬会社などが順守する、薬事法に基づく治験薬GMP
(医薬品の製造・品質管理基準)に耐える中身。

東京女子医大はセルシードと協力し、
様々な助成制度も利用して費用を工面。
「大学だけではとても無理」と、同大の大和雅之教授は指摘。
他大学でも同じような悩みを抱える。

大阪大学のCPCも、クラス100のキャビネットを持ち、
GMP基準に合致した設備。
細胞処理の工程管理システムは、三洋電機とともに構築し、
細胞はバーコード管理。
年間の運営経費は、約3000万円。
同大学大学院医学系研究科の澤芳樹教授は、
「いずれ研究費が切れて倉庫になるのではないか」と不安。

設備を整えて臨床研究でデータを蓄積しても、
承認取得を目的とする治験では、
「改めて一からデータをとり直さなくてはならない」(澤教授)問題。
米国では、食品医薬品局(FDA)が臨床研究の段階から
治験を想定した計画作りを支援するので、研究結果を治験に生かせる。

新型万能細胞(iPS細胞)や胚性幹細胞(ES細胞)など、
万能細胞から作った細胞や組織を移植して病気を治す
再生医療は、国際競争が激化。
CPCの基準や治験の制度が硬直的だと、優れた研究成果があっても、
臨床に進む段階で米欧に大きく後れをとる懸念。

厚生労働省は、再生医療全体の制度的な枠組みや、
臨床研究指針などの検討に着手。
安全性の確保が重要なのは言うまでもないが、臨床応用を阻害しない
合理的な仕組みが求められる。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/techno/tec090428.html

2009年5月14日木曜日

検証 橋下改革(3)「よのなか科」で応用力

(読売 5月9日)

基礎学力は、反復学習や放課後自習で身につける。
では、応用力はどう養うのか?

「理想の家の設計図を書いてみて」。
大阪市内で開かれた教員対象の研修会で、
「よのなか科」と呼ばれる手法の模擬授業が行われた。
生徒役になった教員約50人は、6人1組で机を囲み、図を書いたり、
討論したりしながら間取りを考えていく。

講師は、発案者で府教委特別顧問の藤原和博さん(53)。
リクルート出身の民間人校長として、東京都杉並区立和田中学校で
塾による放課後授業「夜スペシャル」(夜スペ)などに取り組んだ実績を
買われ、橋下徹・大阪府知事に協力を要請された〈改革請負人〉の一人。

「よのなか科」で養う力を、藤原さんは「情報編集力」と呼ぶ。
情報を選別し、自分なりの答えを導くための応用力を意味。

例えば、「理想の家」の授業では、家に何をどう配置するかを考え、
話し合ってもらう。
サッカー場を設けても、地下室を加えてもいい。正解はない。

目的は、作業や議論を通して、発想や表現を引き出すこと。
議論を活発にするため、保護者や大学生に加わってもらったり、
専門家を呼んだりする。

研修に参加した岬町立岬中学校の岡田耕治校長(54)は、
「生徒は面白いと感じるはず。試す価値はある」

以前から、学校単位や先生個人で「よのなか科」に取り組む
ケースはあったが、都道府県で導入するのは府教委が初めて。

きっかけは、反復学習などと同様、全国学力テストでの低迷。
応用力を問うB問題の平均正答率は、基礎を問うA問題より
全国平均との開きが大きい傾向、無回答率も高かった。
「国語の授業で、自分の考えを話したり書いたりする」という質問に、
「当てはまる」とした府内の中学生は26・2%と全国平均(43・1%)を
大幅に下回ったことも、教育関係者にショックを広げた。

こうした結果を受けて、府教委は「考える、話す、書く」の要素を含んだ
「よのなか科」に注目。
藤原さんは2008年度、府内の小中高校55校で研修を実施。
今後も、独自の教材を開発して普及活動を進める。

本格的なスタートはこれからとはいえ、先行して授業に取り入れている教師も。
堺市立美原中学校の佐古田英樹教諭(33)は、
「暗記に偏りがちな社会科を変えたい」と、製菓会社の社員や税理士を招き、
「売れる菓子の条件は」、「税金は必要か」などをテーマに授業で議論。

生徒の評判は良かったが、ゲスト探しなどに準備を要する上、
平日なので保護者になかなか集まってもらえないなどの課題。

府教委小中学校課の角野茂樹課長は、
「自分ならもっと有意義な授業ができる、と思う教師もいるはず。
ぜひ挑戦してほしい」と呼びかけ。
授業内容の自由度が高い分、教師側も試されることになりそう。

◆よのなか科

藤原和博さんが、和田中校長時代に取り組んだ授業手法。
身近な社会事象から、経済や法律などを含めた「世の中」を考える
スタイルが特徴で、「ハンバーガー屋さんの店長になろう」、
「流行る店、流行らない店」などのテーマで実践。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090509-OYT8T00250.htm

食の安全意識に差 岩手経済研究所アンケート

(岩手日報 5月9日)

食品を購入する際、年代が高いほど県産品や国産品を利用する
割合が高く、若い世代は価格やおいしさを重視する傾向が強いことが、
岩手経済研究所が実施した「食の安全・安心に関する考え方」
アンケートで分かった。

県産品については、約9割が積極利用派。
毒物混入や偽装表示問題を受け、「輸入食品の安全性」や
「食品関連事業者の安全意識」への不安は根強く、
多くの県民が輸入食品の検査や事業者への罰則強化が必要。

「食品を購入する際に重視する項目」(三つまで回答)で
最も多かったのは「価格」の71・9%。「鮮度」、「安全性」、「産地」の順。

女性は「鮮度」、「産地」、男性は「おいしさ」を重視する傾向。
低い年代は、「価格」と「おいしさ」にこだわり、
年代が高くなるほど「鮮度」を重視。

「国産食品と輸入食品が並んでいたら、どちらを購入しますか」
との問いに対しては、「原則として国産を購入」が47・8%で最多。
「食品の種類・輸入国などで選択」が24・7%。
年代が高くなるほど、国産品を選ぶ傾向が強く、
理由(三つまで回答)は83・2%が「安全性」。

県産食品の利用状況は、「できるだけ利用」と「大いに利用」と合わせた
積極利用派は86・0%、60代以上では97・4%が積極利用派。

県産食品を利用する理由(三つまで回答)も、「安全性」がトップ、
「鮮度」、「地産地消の推進」、「品質」の順。
29歳以下は、「地産地消の推進」が過半数を超え、
食育などを通して一定の浸透が進んでいる。

「安全・安心な食生活を送るために必要なこと」(三つまで回答)、
全体の70・0%が「輸入食品に対する監視・検査の強化」を求めた。

岩手経済研究所の藤原誠徳主任研究員は、
「年代が高いほど鮮度を重視し、低いほどコストパフォーマンス
(費用対効果)を重視する傾向。
29歳以下の若い層で、地産地消の推進が過半数を超えたことは
明るい材料といえる」

調査は、2008年12月に県内在住者1000人を対象に実施。
岩手銀行の本支店などを通じて調査票を配布、郵送で回答を得た。
回答率は57・6%。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20090509_13

NTC:味の素が命名権 国立施設では初めて導入

(毎日 5月11日)

味の素と日本オリンピック委員会(JOC)は、
ナショナルトレーニングセンター(NTC)のネーミングライツ(命名権)
契約を結ぶことで合意し、調印式を行った。
契約金額は、4年間で3億2000万円。

国立施設の命名権導入は初めてで、
新名称は「味の素ナショナルトレーニングセンター
NTCは、独立行政法人の日本スポーツ振興センターが管理し、
JOCが運営主体。
味の素は今後、同センターなどで栄養分野のサポートも行う。

JOCの最高位の協賛社となるゴールドパートナーとして、
味の素とJOCが契約(金額は非公表)を結んだことも発表。
命名権と合わせ、09~12年の4年間で8億円前後の契約。

味の素の山口範雄社長は、「国の施設に、初めてネーミングをかぶせる
ということで光栄だと思ったし、そこに意義を感じた」

http://mainichi.jp/enta/sports/general/general/news/20090512k0000m050032000c.html

ナノインキがもたらす生産革命

(日経 2009-05-08)

街を歩いていても、公園で日なたぼっこしていても、電気がたまる。
前を歩く人の背中でテレビ中継が見える——。
こんな生活を実現する印刷技術が登場。

製品化するか否かは事業判断によるが、太陽電池や電気をためる
二次電池、動画を映すディスプレー、スピーカーなどを服に印刷できる。
世界最高レベルのものづくり国家、日本だからこそなせる“神業”。

ポリカーボネートなどの樹脂フィルムを手がける帝人は、
シリコン粒子の溶けたインキを開発した米国ベンチャーの
ナノグラム(カリフォルニア州)と共同研究契約を結んだ。
樹脂フィルムに半導体回路を印刷する技術を開発し、
大画面ディスプレーや太陽電池メーカーなどに売り込む考え。

ナノグラムは、NTTの研究者だった神部信幸副社長らが
1996年に米国で設立、レーザーを使う独自技術で
直径数ナノ~数十ナノメートルの様々な素材の粒子と応用技術を開発。
これまでに、半導体回路に必要な電子が流れるn型と電子の穴(ホール)が
流れるp型のシリコン粒子、それらを溶かしたインキを開発。

これに帝人が注目。
「樹脂フィルム事業に新領域が広がる」(新事業開発グループの平坂雅男部長)
と期待し、ナノグラムと共同研究体制に入った。

チッソも、米国ベンチャーの技術に注目。
住友商事が仲介して、カンブリオス・テクノロジーズ(カリフォルニア州)が
開発した透明な導電性ナノ粒子インキの販売と事業開発に乗り出した。
透明な樹脂フィルムを基板とするタッチパネルや
有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)で、今後高い需要があると期待。

印刷を本業とする大日本印刷(DNP)も、2つの新技術を発表。
像情報技術研究所(柏市)は、塗って電圧をかけるとオレンジ色に光る
「ルテニウム錯体」というナノ粒子のインキを開発。
「書店や小売店で使う新製品のPOP(店頭販促)広告用途を狙う。
将来は色数を増やし、表示技術も開発すれば、
新型テレビの実現も夢ではない」と、森陽一エキスパートは意気込む。

ナノサイエンス研究センター(つくば市)は、熱処理装置メーカーの
ミクロ電子(川越市)と電子回路で最も使われる銅配線を
印刷で作る技術を開発、実用化にメドを付けた。
「銅以外にも配線用の銀や金、ニッケルのほか、はんだ付けに使う
スズ・鉛合金のインキの開発も目指し、様々なニーズに応えたい」と
武誠司グループリーダー。

最近、印刷で回路を作る研究に参入するのは、
化学品メーカーや印刷会社だが、1990年代前半にいち早く
スタートしたのは、印刷機メーカーのセイコーエプソン
現在、40インチ以上の有機ELディスプレーをインクジェットで作る
研究に取り組んでいる。

環境に優しいグリーン・テクノロジーの利用を推進する同社は、
得意のインクジェット技術でできるだけ大掛かりで、
真空装置を使わない省スペース・省エネルギー・クリーンな
製造環境の実現を進めてきた。
帝人やチッソ、大日本印刷などが新たに加わり、
この動きが一気に加速するかもしれない。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/techno/tec090507.html

2009年5月13日水曜日

左大きければ学成りやすし 脳の左右差、外国語と関連

(2009年5月7日 共同通信社)

英語などの外国語が得意な人は、脳の前頭葉にある左右の
「下前頭回」のうち、左の方が右に比べて大きいとする研究結果を、
酒井邦嘉・東京大准教授(言語脳科学)らのチームが、
米科学誌ヒューマン・ブレイン・マッピングに発表。

語学の適性にかかわる脳の部位を特定したのは初めて。
酒井准教授は、「この部位が発達しているから語学ができるのか、
一生懸命勉強したから部位が大きくなったのか、
因果関係までは分からない」

中学1年から英語の勉強を始めた日本の中高生78人と、
小学生のころから英語を勉強している英語圏以外の国からの
留学生17人(成人)の、脳の形状を磁気共鳴画像装置(MRI)で精密に計測。

英語の文法などに関連する課題に答えてもらい、
成績と脳の形状を比較。
言語の文法的な処理をつかさどると考えられている左側の下前頭回の
体積が、右側に比べて大きい人ほど成績が良いことを発見。

この傾向は、日本人と留学生の間や、性別による違いはなく、
語学能力などの個人差に関係していると判断。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/5/7/97232/

漢方製剤「麻黄湯」タミフル並み効果、新型には未確認

(2009年5月8日 読売新聞)

インフルエンザの治療に漢方製剤の「麻黄湯」を使うと、
抗ウイルス薬のタミフルと同じ程度の症状軽減効果があるという
研究結果を、福岡大病院の鍋島茂樹・総合診療部長らが明らかに。

新型インフルエンザへの効果は未確認だが、
タミフルの効かない耐性ウイルスも増える中、注目を集めそう。

日本感染症学会で、鍋島部長らの研究は、
昨年1~4月に同病院を受診し、A型インフルエンザウイルスを検出した
18-66歳の男女20人の同意を得て実施。
8人はタミフル、12人は麻黄湯エキスを5日間処方。
ともに発症48時間以内に服用し、高熱が続く時は解熱剤を飲んでもらった。

服用開始から平熱に戻るまでの平均時間は、タミフルが20・0時間、
麻黄湯が21・4時間でほとんど差がなかった。
解熱剤の平均服用回数はタミフルの2・4回に比べ、
麻黄湯は0・6回と少なくて済んだ。

麻黄湯のインフルエンザへの効能は、
以前から承認されており、健康保険で使える。

鍋島部長は、「正確な効果の比較には、大規模で厳密な研究が必要だが、
タミフルは異常行動などへの懸念から、10歳代への使用が
原則中止されていることもあり、漢方薬という選択肢の存在は大きい

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/5/8/97350/

郷土愛育成に心一つ 北上青年会議所が勉強会

(岩手日報 5月10日)

北上市の北上青年会議所(八重樫敏理事長)は、
新事業「鬼っこてらこや」を前に講演会を開いた。
鎌倉青年会議所の理事長として、「鎌倉てらこや」を設立した
湯沢大地さん(41)が活動紹介。

体験学習などで、郷土愛をはぐくむ青少年育成事業のスタートに向け、
会員一丸での事業展開を誓った。

湯沢さんは、「てらこやのススメ」と題して講演し、
鎌倉てらこやの設立経緯や具体的な活動内容を紹介。

早稲田大生が主体となり進めた運営について、
「学生の参画で、子どもたちが本心を出してくれた」
「地域の特色を生かし、北上らしい事業を行ってほしい」

北上青年会議所は、6月20日に鬼っこてらこやを開塾。
「きたかみに恋しよう」をテーマに、10月まで国見山を舞台とした
合宿や講演会の開催を予定する。

北上市在住の高校生19人(黒沢尻北、黒沢尻工、西和賀、花巻南高)が
企画を練り、小学生との交流を通じ互いに郷土愛を学んでもらう内容。

同会議所青少年育成委員会の佐藤仁実委員長は、
「子ども、若者、大人の三世代で取り組む事業を、
未来に伝えていくことが大切。
青年会議所一丸で進めていきたい」

高校生グループのリーダーを務める花巻南高三年の千葉琴音さんは、
「小学生が、ずっと北上に住みたいと思えるような体験をさせてあげたい」

北上市、西和賀町内の小学4~6年生(定員45人)を募集。
参加費4000円。問い合わせは同会議所(0197・65・0281)へ。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20090510_9

シンガポール経済開発庁の楊バイオ医科学産業担当局長

(日経 4月30日)

アジアのバイオ医薬産業のハブを目指しているシンガポール。
2003年、バイオ医薬の研究開発拠点「バイオポリス」を開業し、
日本を含む海外の製薬会社や大学、研究機関の誘致を加速。
シンガポール経済開発庁のバイオ医科学産業担当局長である
楊吉全氏に誘致の進ちょく状況を聞いた。

——バイオ医薬産業を振興する狙いは?

人口が少なく資源も乏しいシンガポールには、
知的集約型産業の育成が急務。
我が国の経済を支えている製造業には石油化学産業もあり、
バイオ医薬産業を育てる土台があった。
2000年、バイオ医薬産業の生産額は60億シンガポールドル(約3900億円)、
製造従事者は6000人にすぎなかったが、
電子機器や化学などに並ぶ一大産業に育成する考えで、
2015年に250億シンガポールドル、1万5000人に拡大する目標

「バイオ医薬産業の育成を国策として打ち出した2000年以前は、
英グラクソスミスクラインや米シェリング・プラウなど
製薬会社の工場が存在していたが、
化学合成による低分子化合物の製造拠点がほとんど。
抗体医薬品などのバイオ医薬品を中心とする製造業に
脱皮することが課題

——バイオ医薬産業の誘致策を強化している。

「政府が整備するバイオポリスの拡張は順調。
第1期、第2期の整備が終わり、建物の延べ床面積は24万平方メートル。
今後、10年初めにさらに4万平方メートル増やす。
製薬会社や大学などが、最先端の研究設備を手軽に使える環境を整える」

「2000年、バイオ医薬産業の研究開発(R&D)従事者は
ほとんどいなかったが、世界中の頭脳をヘッドハンティングし、
優秀な人材を呼び込む仕組み作りに取り組んでいる。
がん細胞の増殖を食い止める、代表的ながん抑制遺伝子を発見した
著名なデビッド・レーン氏の招請もその一例。
科学技術庁のチーフサイエンティストに就任。
日本から、胃がんの研究で知名度が高い元京都大学教授の
伊藤嘉明氏を招いている」

——日系企業の進出状況は?

武田薬品工業のほか、早稲田大学とオリンパスが共同で
研究拠点を設けるなど、誘致実績も出てきた。
現状は、欧米からの進出企業が多いのが実情。
具体的な誘致目標はないが、日本の製薬会社の誘致を積極的に進める」

——誘致策の成果は?

欧米のバイオ企業11社や医療技術企業17社が、50件の製造施設に投資。
誘致に成功した医薬品受託大手のロンザ(スイス)は、
生物製剤の工場を建設し、追加投資を計画。
同国は当初、低分子化合物の製造拠点しか持たなかったが、
バイオ医薬品に軸足を移している。
バイオ医薬産業の生産額は、08年190億シンガポールドル、
製造従事者は1万2000人増。
バイオ医薬産業の育成が実ってきた」

——シンガポールはバイオ医薬産業を育てるため、
経済開発庁傘下で国内企業に投資するバイオベンチャーキャピタルを
立ち上げたが、世界的な金融危機を受け、運用に支障は招じていないか?

「ファンドは政府資金を活用しており、長期的な視野に立った
運用ができるのが強み。
金融混乱ではこの強みが生きる。運営にも支障は招じていない」

——研究開発(R&D)投資を担うのはほとんどが外資系企業。
国内企業の振興が課題では?

「地場のバイオベンチャーは、抗がん剤の新薬を開発するなど
成果も出てきているが、バイオ医薬産業の成長のけん引役は外資と位置づけ。
バイオポリスの魅力作りに力を入れ、
日本企業を含めて外資の誘致を加速する」

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/interview/int090427_2.html

2009年5月12日火曜日

教科書に地域医療執筆 藤沢の病院長と看護短大教授

(岩手日報 5月11日)

国内初となる地域医療学の教科書で、
藤沢町民病院の佐藤元美院長と岩手看護短大の鈴木るり子教授が
執筆を担当。

県内の現場で、コツコツと実績を積み重ねてきた二人が、
全国の医学生に地域医療の在り方や人材育成の現状を伝える。
医療現場に携わっていない読者にも、分かりやすい内容。
編集も担当した佐藤院長は、「専門用語を極力使わず、
地域医療の果たす役割や背景を理解してもらえるよう考慮した」

教科書は、「地域医療テキスト」(医学書院)。
B5判で206ページ。3990円。全国の書店などで発売。

佐藤院長が執筆したのは、「地域医療システム論」の中の
「市町村の事例」。
藤沢町で、県立病院が廃止に追い込まれた歴史から始まり、
保健医療福祉が一体となった「藤沢方式」を紹介、
町民病院の一日を時系列で追った。

病院スタッフが町内に出向き、住民と語り合う「地域ナイトスクール」は、
崩壊の危機にある地域医療を考える上で、
医療関係者と住民がどうあるべきかを示唆。

自治体病院の経営についても触れ、
「病院運営は、営利を目的するものではない。
しかし、経営がうまくいかなければ、必要な医療も提供できなくなる」、
高額医療機器導入の際の考え方も記した。

鈴木教授は、「地域医療を支える人材」の「看護職」について執筆。
「地域医療を支えるのは保健師である、という点をもっと厚みを
もたせたかったが、まずは基礎的なポイントを並べた」

地域医療学に関しては、各大学が個別に教材を用意し、
見学や実習などを通して対応しているが、包括的なテキストはなく、
自治医大地域医療学センターが中心となり、約一年がかりでまとめた。

佐藤院長は、「地域医療を守るには、他人に頼ってばかりではだめ。
藤沢町は苦労しながら、今のシステムを築き上げた。
教科書が全国の医療関係者、地域医療を考える住民の方々の
参考になれば何よりです」

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20090511_15

再生医療を支える科学:/下 素材や細胞の品質「標準化」が不可欠

(毎日 5月5日)

◇日本大・堤定美特任教授に聞く

再生医療では、ES細胞やiPS細胞、体性幹細胞などを使い、
損傷した臓器や組織を作り出して治療する。
いずれの方法でも、重要なのは、細胞を移植する時に使う素材や
治療用細胞の「品質」。
狙い通りの細胞に分化するか、がん化などの悪影響を起こさないか--。
再生医療にかかわるすべての技術に、一定の品質が担保されなければ
臨床では使えない。「標準化」の取り組みは不可欠だ。

◆無駄省くためルール

標準化とは、放置すると多様化、無秩序化するものに、
一定のルールを設定して単純化、秩序化すること。
例えば、機械を組み立てるねじが、メーカーごとにねじ山の形が
バラバラだと使いづらく、無駄なコストがかかる。
そこで、形状にルールを作る。
このルールを「規格」「標準」という。

工業製品の標準化が「工業標準化」で、日本工業規格(JIS)、
米国試験材料協会(ASTM)規格など、各国は独自の工業規格を持つ。
「基礎から応用に進んだ研究を、さらに産業にするために必要なのが標準化。
優れた技術も、標準化なしに世界に普及させることはできない」

日本大の堤定美・特任教授(医工学)は、世界157カ国が参加する
国際標準化機構(ISO)で、専門委員会の日本代表委員長を務める。
ISOでの活動は、25年に及ぶ標準化の第一人者。

「国内の再生医療分野では、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)
を中心に、移植用培養皮膚や角膜、心筋のシート、骨、軟骨などの
規格化が進んでいます」

再生医療分野に限らず、標準化に対する日本の取り組みは、
06年ごろから強化。
狙いは二つ。
新技術を国際標準に沿った形で産業化することと、
日本発の新技術を国際標準にすること。

背景には、市場のグローバル化がある。
世界で同品質の製品が求められ、国際規格に合えば市場は広がり、
規格外だとしぼむ。
自国の規格を国際規格にできれば、メリットはさらに大きい。
政府の知的財産戦略本部が同年まとめた「国際標準総合戦略」には、
「標準を制する者が市場を制する」

◆優れたものが勝者に

「その中で、再生医療の標準化はやや特殊。
従来、多くの国際規格は市場でシェアを取った製品が基に。
ビデオのVHS方式のように。
再生医療は、市場にまだ『勝者』がいない。
純粋に科学的に優れたもの、妥当なものを規格にする方向で
議論が進んでいる」

舞台となるISOは、傘下に200以上の専門委員会(TC)がある。
TC1はねじ、TC2はボルトやナット、TC229はナノテクノロジー。
再生医療にかかわるのは、TC150(外科用インプラント専門委)と
TC194(医療機器の生物学的安全性専門委)。

堤教授が参加するTC150には07年、日本の提案で
再生医療製品専門の分科委員会ができた。
現在、12カ国が参加し日本は、同分科委員会の幹事国を務め、
今年9月、京都でTC150全体の年次総会を開催。

「国際規格を決める際は、当然各国の利益がぶつかる。
その中で議論を主導できる幹事国は、非常に有利。
再生医療分野は、市場のシェアではなく、科学的根拠を積み上げて
議論することになり、幹細胞研究など日本の優れた技術で勝負ができる。
いい形ができている」

◆懸案は国内の連携

堤教授が抱く懸念は、国内の態勢にある。
JISに、再生医療関係の規格がない。
再生医療に使う素材や治療用細胞を薬剤として扱うか、
医療機器として扱うかが決まっていない。

「薬剤か機器か。その違いは非常に大きい。
ISOやJISで標準化できるのは、機器だけ。
薬剤だと、製品化には厚生労働省による医薬品承認の手続きを
経ないといけないが、その手続きは複雑で、ブラックボックス的なので、
情報の共有が進まない。
再生医療では、医療機器扱いで国際規格を作り、
技術をオープンにした方がいい。
ルールを作り、技術をビジネスに乗せてはじめて、
医療は多くの人に行き渡る」

標準化は企業、政府、研究者が連携して取り組む問題。
「企業は、再生医療にかかわる規格案をどんどん出してほしい。
政府には、それを支援する制度を、研究者は特許と同様に
標準化への意識を持ってほしい。
トータルで、日本の潜在力は非常に大きい」
==============
◇つつみ・さだみ

京都大工学部卒業。同大生体医療工学研究センター教授、
再生医科学研究所ナノ再生医工学研究センター長などを経て、
08年から名誉教授。現在、日本大特任教授、金沢工大客員教授。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2009/05/05/20090505ddm016040132000c.html

検証 橋下改革(2)放課後 勉強の習慣づけ

(読売 5月6日)

家庭で勉強する習慣をつけるため、放課後の学校が活用。

3月上旬の午後。大阪府田尻町立小学校の教室では、
1、2年生が一緒に、算数のプリントに取り組んでいた。
若い男性講師が、一人の女子児童の机の前でひざまずく。
「そうそう、できたやん」。
悩みながらも問題を解いた児童のプリントに、講師は笑顔で花丸をつけた。

小中学校で放課後に、子どもたちの自習を教員らがサポートする
府教育委員会の「おおさか・まなび舎」事業
すでに実施されていた自学自習のプログラムを、
橋下知事の就任後に一部修正し、昨年9月に再スタート。
今年度、政令市と中核市を除く小学校の半数以上、
中学校は政令市を除く8割近くで実施を予定。
2010年度には全小中学校への拡大を目指す。

週2日、1回2時間で、参加は自由。参加費は無料。
授業形式ではなく、児童が自分の課題や学力に合わせて
プリントを選んで解く。
教員と一緒に、大学生などの「学習支援アドバイザー」が、
机を回って個別指導する。

熱心にプリントを解く子どもたちの姿に、奥山昌一教諭(54)は、
「理解が進んでいるのがひしひしとわかる。授業でも意欲が出ている」
アドバイザーで小学校教員を目指す関本真実さん(23)は、
「つまずいていた子どもたちが成長していくのがうれしい」

「まなび舎」のそもそもの狙いは、
子どもたちが家庭で勉強する習慣を身に着けるようにすること。

2008年度の全国学力テストの生活習慣調査では、
学力のみならず、家庭での学習時間でも、
大阪府は全国平均より低い実態が明らかに。
平日に家庭で30分以上学習している子どもの割合は、
小学校で76・1%、中学校で78・1%と、全国平均を約6~4ポイント下回った。

府教委では、放課後学習に加え、「家庭学習の手引き」と題した
パンフレットを作製。
小学校の低、中、高学年と中学校に分け、時間の目安や、
漢字練習や百ます計算など取り組む内容を記したもので、
全児童・生徒に配り、各家庭に協力を求めた。

学校でついた習慣を家庭での学習へとつなげるのは、そう簡単ではない。

田尻町立小では、学力に問題のある子どもについて、
保護者に呼びかけたり、友人に誘ってもらったりして
放課後学習に参加するよう促し、
「宿題をきちんとやる子が増えてきた」(同小)。

中には、勉強を見る親が夜間、仕事や友達づきあいなどで
不在がちなため、家に帰るとゲームをしたりテレビを見たりして、
学習が難しい児童もいる。

「放課後学習は、自学自習へのステップ。
最終的には、家で自ら学べる子を育てたい」
放課後学習を自宅での学習につなげるべく、これからも模索は続く。

◆学習支援アドバイザー

「おおさか・まなび舎」事業で、放課後に教室で自習する子どもたちを、
教員と一緒に個別指導する。
教員免許は不要だが、教員を目指す学生や元教員、
塾講師らの登録も多い。
謝礼は交通費を含めて2時間で1500円と少なく、ボランティアに近い。
謝礼は、府と市町村が半分ずつ補助。
謝礼を含めた「まなび舎」事業の09年度の総事業費は、約8700万円。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090506-OYT8T00282.htm

誰も口に出さない“緑経済”の陥穽

(日経 2009-05-04)

いつの時代にも実体は何であれ、
外観を美しくかつ意味あるもののように飾る言葉がある。
「グリーン・ニューディール」がその典型。
米オバマ政権が打ち出した、環境と景気刺激を同時に追求しようという政策。

ブッシュ前政権時代に、地球温暖化対策で大きく出遅れ、
京都議定書からも離脱した米国が地球温暖化など、
環境問題重視に大きくかじを切ることは歓迎すべき。
環境と景気刺激の「二兎を追う」政策に、過剰な期待をかけるのは禁物。

CO2排出を削減しようとすれば、自動車は小型軽量化せざるを得ず、
鋼材、樹脂など材料の使用量は減少に。燃料の消費量も減る。
小型化した車の組み立てラインの人員は、従来よりも少なくて済む。
素材産業や石油産業は、需要減少に見舞われ、
組み立て産業では、雇用が失われる恐れ。
ガソリンがぶ飲みの大型車が幅をきかせていた米国のような
“高炭素社会”では、グリーン・ニューディールは需要減退のリスクが高い。

自動車がハイブリッド車、電気自動車など環境対応車に転換する
プロセスで、新たな自動車需要は生まれるが、
それは通常の自動車の買い替えと同じで、需要拡大とはいえない。
環境対応車購入への優遇策で、買い替えの前倒しが期待できるくらい。

太陽光発電、風力発電などの装置産業や、スマートグリッドなどの
新たな送配電網の構築、断熱性能が高いエコ住宅の建設などでは、
新規需要や雇用が生み出される。
全体としてみれば、環境対応の強化は決してモノの需要の増加に
つながるわけではない。

グリーン・ニューディール政策については、欧州、日本から中国、
インドまで世界各国がオバマ政権に追随。
どんな国でも、政治は国民の幅広い支持が得られそうな政策や
キャッチフレーズに敏感。
政治が、グリーン・ニューディールを強調しすぎれば、
経済は停滞を続ける懸念がある。
景気回復には、グリーン・ニューディール以外の適切な需要創出策が必要。

省エネや様々な環境対応策がすでに具体化されている日本は、話が異なる。
グリーン・ニューディールが、需要を今の水準からさほど減退させない。
自動車は、すでに小型軽量化され、環境対応の進んだ車に乗り換えても、
原料などの需要減退の恐れは小さい。
ハイブリッド車、電気自動車の優遇策が、自動車の買い替え需要を
刺激することもあり得る。

環境省が発表した“日本版グリーン・ニューディール”は、
「緑の経済と社会の変革」と名付けられている。
施策は7分野で構成、環境対応の進んだ家電製品の購入を
支援することで話題となった「エコポイント」制度は、
「新3種の神器」と題された分野に含まれている。

エコポイントで最新鋭の家電に切り替わると、消費電力の減少によって
電力需要にはマイナスの影響が出る。
日本の電力会社は、夏場のピーク需要の抑制が発電設備全体の
年間平均稼働率上昇につながり、収益的にはプラスとなるため、
必ずしも悪い話ではない。
エコポイントによる家電の買い替え促進は、
経営不振の家電大手には強力な追い風に。

日本は省エネ対策が米欧に比べ先行したため、
1990年を基準年とする京都議定書のCO2排出削減は不利とされてきた。
京都議定書だけで言えばそうだが、先行したおかげで、
グリーン・ニューディール政策が景気刺激に大きな効果を持つ。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/tanso/tan090501.html

2009年5月11日月曜日

インタビュー・環境戦略を語る:富士ゼロックス・山本忠人社長

(毎日 5月4日)

カラー複写機・複合機の国内シェアトップを誇る富士ゼロックス
タイと中国を拠点として、東アジアとオセアニアの地域全体で
国境をまたいで機器を回収し、再利用する国際資源循環システム
昨年1月に構築、今年2月には顧客への環境戦略面での提言にも
今後注力する方針を打ち出した。
山本忠人社長に今後の抱負を聞いた。

--どうして国際資源循環システムを構築したか?

00年、日本で使用済み複写機の資源を、
ほぼ100%再利用するシステムを構築したのを機に、
海外にも活動を広げようと04年末に始めた。
回収済みの複写機を原料に戻し、再活用する拠点をタイに設け、
東南アジアやオセアニアなど9つの国・地域から国境をまたいで、
1カ所に集めることで機器の量を確保し、効率良く再資源化を行う狙い。
08年1月、中国・蘇州にも拠点を設け、
アジア東部とオセアニア全体での体制が完成。

--これまでの苦労と今後の課題は?

◆国境をまたいで中古機器をやりとりするため、
最初は各国政府からは戸惑う声があるが、狙いと意義を粘り強く説明し、
何とか理解を得てシステムづくりにこぎ着けた。
国際的な枠組みで、リサイクルの効率を高めるという、
従来にない枠組みを示すことができたと自負。
今後は、地域での環境意識を一層高め、回収率を向上させたい。

--日本での取り組みの進展は?

◆日本では、95年から部品自体の再利用に取り組む。
設計、生産からみれば、余計なことをするように映るため、
葛藤もあったが、長期的には顧客のためになるとの思いで実践。
当初は、新品を使うより費用がかかったが、
07年度には部品代を4億7000万円減らすのに貢献。
節約分は、環境面の研究開発投資に回し、良い循環を生み出している。

--2月には温室効果ガスの削減目標を新たに定めた。

◆生産、物流、顧客の使用、回収、再資源化までの全体で発生する
二酸化炭素を、20年度に05年度の7割に抑える。
複写機1台当たりの消費電力を80%、
製造時の二酸化炭素排出量を75%削減。
事務機器の無駄のない配置や、印刷を効率化し紙の使用量を
減らすことなどを提案し、環境負荷を減らすお手伝いをしたい。

--今後の抱負は?

◆今までの取り組みが大変だったのは確かだが、
それでも普通のことをやってきたに過ぎない。
「100年に1度の経済危機」だが、地球環境はもっと大きな危機に直面。
研究開発投資をより一層増やすなど、環境への取り組みをさらに加速。
==============
◇やまもと・ただひと

山梨大工卒、68年富士ゼロックス入社。常務、常務執行役員、
技術開発や生産管理を統括する専務執行役員を経て、
07年6月から現職。神奈川県出身。63歳。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2009/05/04/20090504ddm008020024000c.html

異常たんぱく質:効率よく処理する仕組みを発見

(毎日 5月5日)

細胞内に蓄積した異常たんぱく質が、効率よく処理される仕組みを、
奈良先端科学技術大学院大の河野憲二教授(分子細胞生物学)らが解明。

生命活動を支えるたんぱく質は、細胞内の小胞体で生み出されるが、
熱などの影響を受けると、異常たんぱく質が生まれる。
これが蓄積すると、小胞体表面の酵素が活性化し、
特定のメッセンジャーRNAを変化させ、異常たんぱく質を分解したり
修復したりするたんぱく質ができる。

河野教授らは、細胞を細胞質成分と小胞体成分に分離し、
変化前のメッセンジャーRNAがどちらに多く含まれるかを調べた。

その結果、このメッセンジャーRNAは、自ら生み出したたんぱく質により
小胞体表面につなぎ留められ、そこで変化して異常たんぱく質を
分解・修復するたんぱく質を生成していることを突き止めた。

異常たんぱく質の蓄積は、糖尿病やアルツハイマー病などの原因の一つ、
河野教授は「治療薬開発につながる可能性もある」
4月24日付の米科学誌「モレキュラー・セル」に発表。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2009/05/05/20090505ddm016040139000c.html

検証 橋下改革(1)反復学習徹底、低迷打破狙う

(読売 5月5日)

全国学力テストでの低迷打破を目指す大阪の試みは、
教育改革の試金石になるのだろうか?

「ヨーイ、スタート」
ストップウオッチを持った男性教師が声を掛けると、
5年生の児童約20人が一斉に「百ます計算」に取りかかる。
「はい」。開始から1分を過ぎると、計算を終えた児童が次々と声を上げた。
大阪府の南端、岬町立多奈川小学校
授業前の10分間で、子供たちは百ます計算と、割り算100問の
プリント2枚を素早くこなした。

「応用問題が弱かったのは、基礎基本が徹底していなかったから」
矢萩純子校長(58)。
2007年度から授業前の時間を活用、朝は漢字の音読や読み書き、
午後は計算と、全学年で週4日の反復学習に取り組んでいる。

同小では、児童の生活習慣の改善にも力を入れている。
バランスの良い朝食になるよう、保護者向けの調理実習を年3回開き、
今はほとんどの児童が朝食を食べる。

同小で、年3回実施する算数テストの08年度の平均点は91・2点。
ここ数年は横ばいで、数字上の効果は分からないが、
矢萩校長は「朝から反復学習をすることで脳が活性化し、
1時間目から授業に集中できている。基礎の力は付いてきた」

全国学力テストで、2年連続で全国平均を下回った大阪府。
昨年2月に就任した橋下徹知事が、学力テストの結果を受けて、
10月に打ち出した緊急対策の目玉の一つが、
授業前の10~15分を使った計算や漢字などの反復学習の推進。

府教委は学校への支援策として、小学校は約40種類、
中学校は約90種類の教材や、百ます計算の指導例を盛り込んだ
教員向けのマニュアルを作成、インターネットで取得できる。

政令市の大阪市と堺市を除き、すでに何らかの形で反復学習を
行っている小中学校は約8割。
以前から熱心な学校から消極的な学校まで、取り組み方はまちまち。

府内のある市立小学校の場合、朝は読書や集会、
教員の打ち合わせなどがあるため、継続的にできていない。
別の市立小学校の校長は、
「結果を求めすぎると、表面的な教育に陥る学校も出かねない」
効果は認めながらも、百ます計算に違和感を覚える人も。

反復学習が学力向上への切り札となるのか?
8月末に公表される全国学力テストの結果が、その一つの答えになる。

◆百ます計算

縦10ます、横10ますの百ますで計算を繰り返し練習する学習方法。
早寝、早起き、朝ごはんと共に、陰山英男氏が提唱する教育の中核。

◆橋下知事の主な教育施策
 ・「百ます計算」など反復学習徹底
 ・全小中学校で放課後学習支援
 ・全小中学校で習熟度別授業
 ・大手塾と提携した補習の実施
 ・携帯ゲーム機を活用した学習

◇トップダウンに抵抗感も

橋下知事は、過激な発言を織り交ぜながら、府教委や市町村教委を
批判することで、教育改革を進めてきた。
自ら〈改革請負人〉として招き入れた教育界の著名人たちのアイデアを、
府民に直接アピールする手法も取り入れ、
これまでの教育行政とは一線を画している。

象徴的なのが、昨夏に展開した教育委員会批判。
府教育委員との懇談で、橋下知事は「大阪の公教育は信頼を得ていない」
と切り出し、戸惑う委員らを「ビジョン、具体策がない」と切り捨てた。

3日後、全国学力テストで2年連続の低迷が明らかになると、
「このざまはなんだ」と一喝。
「教育非常事態」を宣言し、任期満了を迎えた委員2人を再任せず、
百ます計算の実践で知られる陰山英男・立命館小学校副校長らを
迎え入れた。

大手塾による放課後授業「夜スペシャル」の実践で知られる
東京都杉並区立和田中の前校長、藤原和博氏を
府教委特別顧問に招くなど、学力向上策を推進。
百ます計算などの反復学習のほか、
「ニンテンドーDSの活用」、「大手塾との連携」を打ち出した。

トップダウンの改革に、「いじめや不登校など、様々な課題を抱える
学校の実情がわかっていない」と、教員の抵抗感は強い。
習熟度別授業や放課後学習支援を全公立小中学校で展開することには、
「各校の実情を考慮してほしい」との声が漏れる。

◆橋下知事の教育を巡る主な発言2008年

2月29日 「最重要課題は教育。大阪の教育を日本一に」
3月5日 「業績評価がないのはあり得ない。頑張らない先生には厳しく対処を」
3月13日 「東大、京大に300人を送り込むような学校を」
8月29日 「教育委員会は最悪。このざまはなんだ」
2009年
1月21日 「学力も低い、体育も低いと何が残るんだ」
4月15日 「あらゆることをやった。(結果が)悪ければ僕の責任」

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090505-OYT8T00283.htm

「笑顔印」は地産地消 一関市がシンボルマーク

(岩手日報 5月5日)

一関市は、地産地消を推進するシンボルマークを決め、
市内の産直施設など地場産品を販売する取扱店に、
マーク入りの店頭掲示用シールとPR用スイングポップなどを配布。
シンボルマークの公募には、市内外から36人、51点の作品が
寄せられ、

審査の結果、宮城県本吉町のグラフィックデザイナーで
室根町のスーパーの印刷物も手がける畠山敬治さん(60)の
作品が最優秀賞に選ばれ採用。
畠山さんは、一関市の「い」をモチーフに、
地産地消に取り組む人の笑顔をイメージ。
「消費者の印象に残りやすいように、かわいらしくシンプルなデザインにした」

市は、「おいしい一関を食べよう」とのキャッチフレーズを付けた
シールとスイングポップ各200個作製。
市内の通年営業産直やスーパーに配布する方針。
「マークのように地元のものを食べて、消費者も笑顔になってもらいたい」

2009年5月10日日曜日

ポスドク:1人採用で5百万円…文科省が企業に「持参金」

(毎日 5月6日)

ポスドクとして、大学や公的研究機関で働く人たちの
民間企業への就職を増やそうと、文部科学省が、
ポスドクを採用した企業へ1人につき500万円を支給。

国策として、ポスドクを増やしながら受け皿不足が指摘される中、
「持参金」で企業側の採用意欲を高める狙い。
文科省が企業対象の事業を実施するのは珍しく、
09年度補正予算案に5億円を計上。

政府は90年代、高度な研究人材を増やそうと、
大学院を重点化し、博士号取得者を増やした。
博士の受け皿となるポスドクは1万6000人超、
企業への就職は進んでいない。
日本経済団体連合会の06年調査で、技術系新卒採用者のうち博士は3%。

文科省の調査によると、ポスドクの6割以上は企業への就職も
視野に入れているが、企業側の技術系採用は修士が中心で、
85%が「過去5年にほとんど採用していない」
企業側が、「食わず嫌い」している状態。

文科省の新施策では、企業からポスドクの活用方針や業務内容、
支援策などの採用計画を募集。
科学技術振興機構で審査した上で、採択された企業に対して
ポスドク1人につき500万円の雇用経費を支払う。
支援期間は1年間だが、「使い捨て」にならないよう、
終了後のキャリア構想も審査。

文科省は、「実際に採用した企業からのポスドクの評価は高い。
何とかよい出会いを増やしたい」

http://mainichi.jp/select/science/news/20090506k0000e040013000c.html

肥満:増加で温暖化加速 10億人あたり、CO2が10億トン--ロンドン大試算

(毎日 5月6日)

肥満の人の割合が全世界で欧米並みに高まると、
10億人当たりの温室効果ガス排出量は、CO2換算で
最大10億トン増えるとの試算を、
英ロンドン大衛生熱帯医学大学院がまとめた。
食料生産に必要なエネルギーや、車の燃料消費の増加が原因。

04年の世界の人為起源による温室効果ガス排出量は、
CO2換算で約490億トン。
肥満の増加は、温暖化を加速するといえそう。
英の疫学専門誌電子版に発表。

体重が増えると体の維持や活動のため、より多く食べねばならず、
食料生産の需要が高まると考えた。
車1台に同じ人数が乗っても、燃費が悪化するほか、
徒歩が体の負担になるため車の利用が増えると想定。

BMI(体格指数)30以上の肥満人口が、3・5%だった英国の
70年代の「適正体重社会」と、2010年に予測されている
肥満人口40%の「太り過ぎ社会」の温室効果ガス排出量の差を試算。

その結果、太り過ぎ社会では適正体重社会より食料生産に必要な
エネルギーが10億人当たり19%増え、
排出量も年2・7億~8・1億トン増加した。

車では、燃費の悪化と利用頻度が上がり、排出量は年1・7億トン増加。
太り過ぎでの増加分は、4・4億~9・8億トンと推計。

06年の日本人男性の平均BMIは23・39、女性は22・47と、
まだスリムだが、米国では3人に1人、南太平洋の島ナウルで6割が
BMI30以上と推定、各国で太り過ぎ社会が到来。

研究チームのフィル・エドワーズ博士は、
健康体でいることが温暖化抑制にもなる。
自転車利用の促進、都市部への自動車乗り入れへの課金、
野菜の摂取など、肥満予防と温暖化対策の両方に効果のある
施策を推進すべきだ」と指摘。

◇栗山進一・東北大准教授(公衆衛生学)の話

BMI30以上の人が4割を占める社会は、世界的には予想。
仮定に基づいた研究だが、健康と温暖化の関係を考える上で意義がある。

http://mainichi.jp/select/science/news/20090506ddm002040006000c.html

恒久平和奏でる音色 奥州の正法寺で尺八

(岩手日報 5月4日)

奥州市の正法寺(伊藤大鑑住職)で、法要と尺八演奏会が開かれ、
境内に平和への祈りを込めた厳かな音色が響いた。
尺八愛好団体、都山流竹心会(千田聡山会長)との共催。
世界平和と人々の幸福を祈る目的で、
午前に法要、午後に演奏会が本堂で行われた。
千田会長は、「平和への祈りを込めて、一生懸命吹きたい」
「平和の山河」、「春の光」など8曲を演奏、
約100人の聴衆は本堂に響く幽玄な音色にじっと耳を傾けていた。
水沢区の浅井陽子さん(17)は、「初めて尺八を聞いた。
お寺で聞くと雰囲気があり、日本の音楽の美しさをあらためて感じた」

演奏会は、同寺が進める「人々に開かれた寺づくり」の一環。
秘仏の本尊、如意輪観世音菩薩も特別に開帳。

花王が狙う次の一手

(日経 2009-04-27)

容器包装リサイクル法では、市町村が食品トレー、ペットボトルなどの
廃棄物の再商品化をリサイクル事業者に委託し、
メーカーやスーパーなどの企業は、日本容器包装リサイクル協会を通じて
「再商品化委託費用」を支払う。

その費用の負担額が、おそらく1番多いとされるのが
トイレタリー最大手の花王。
2007年度の支払額は、14億円。
洗剤、シャンプー・リンス、化粧品など家庭用品の年間販売個数は20億個、
再商品化委託費は2位以下に大差をつける額。

家庭用品の容器の材料は、プラスチック。
プラスチック容器ができるまで、石油資源の採掘や容器製造工程での
電力消費などで、CO2を排出。
家庭用品の販売が増えれば増えるほど、CO2排出を促し、
花王は、容器材料のプラスチック使用量削減を推進。
対象の商品分野は、シャンプー・リンス、漂白剤、柔軟仕上げ剤、
ボディー用・手洗い用洗浄剤や、衣料用、住居用、台所用の各種洗剤など、
実に広範囲にわたっている。

これまで取り組んできた対策は主に3つ。
第1に、容器の小型化・薄肉化。
第2に、詰め替え製品の開発・販売拡大によるボトル容器の生産量抑制。
第3は、再生材料の活用推進。
例えば、衣料用洗剤「アタック」の計量スプーンはリサイクル材料を使用。

一連の対策によって、プラスチック使用量の削減がどのくらい進んだか?
2007年度プラスチック使用量は、小型化・薄肉化と「詰め替え」推進を
しなかった場合と比べ、61%減と試算。

「詰め替え」による削減率が41%、小型化・薄肉化の効果が20%。
「61%減」は、3万6900トンのプラスチックを使わずに済んだ計算、
CO2換算で6万3000トンの排出抑制。

商品の販売が伸び続けると、減量化努力が追いつかず、
プラスチック使用量の削減に至らない。
05、06、07年度と3年連続で、前年対比で増加。
1995年度の使用量を100とし、04年度は67、05年度は68、
06年度は70、07年度は72。

販売増とともに、容器の使用量が増えざるを得ない構造を改革し、
企業の成長とCO2排出削減を両立する道はないか——。

花王がいま直面している課題。
「やるべきことは、まだたくさんある」
花王環境・安全推進本部の松井貞部長。
技術開発の推進だ。

容器の小型化・薄肉化は、まだ余地がある。
容器材料の強度を今より上げ、薄肉化をさらに追求する。
詰め替え用のパウチ(袋形の容器)の改良も進めている。
袋状のパウチと同等の樹脂量で、ボトル状で変形しにくい「超薄肉」の
製品を昨年開発、秋からシャンプーなどに採用。
プラスチック使用量削減に直結する技術的なテーマはまだ多い。

「企業の社会的責任(CSR)調達」も、取り組むテーマが多い。
容器の調達先は、CO2排出抑制に取り組んでいる企業を選ぶ、
原料の樹脂メーカーについてもCO2排出量をチェックする。
容器の製造元が、花王の工場に近ければ近いほど、
トラックの輸送距離が短くて済むのでCO2排出が抑制でき、
こうした点も調達先選びの判断材料に。

期待が大きいのが、原料に石油を使わない植物由来の「バイオプラスチック」
原料の植物は、成長過程でCO2を吸収するため、
バイオプラスチックはCO2の排出を増やさずに済む
「カーボンニュートラル」な素材として注目。

バイオプラスチックは、家庭用品向けとして、いくつものハードルがある。
OA機器用など実用化が進み、花王も昨年12月、
「ポリ乳酸樹脂」という植物由来プラスチックを改質した
「エコラ」(商品名)の開発を発表。

現在のバイオプラスチックは、家庭用品の容器にした場合、
充てんした洗浄剤など中身の成分が影響を受ける心配があり、
家庭で長く保管した場合などの耐久性もまだ不安がある。
価格も、商業ベースに乗るにはまだ遠い。
現在の容器材料の価格に比べ、バイオプラスチックは何倍もする。

家庭用品向けのバイオプラスチックは、性能や生産技術の開発が
まだ緒に就いたばかり。
以前から問題意識を持ち、打つべき手を打ってきたからこそ、
「脱・炭素社会」への次のテーマが明確に見えてきた。
企業にますます求められるCO2削減の取り組みで、
花王は確実に一段上のステージへ昇った。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/tanso/tan090423.html