(読売 5月9日)
基礎学力は、反復学習や放課後自習で身につける。
では、応用力はどう養うのか?
「理想の家の設計図を書いてみて」。
大阪市内で開かれた教員対象の研修会で、
「よのなか科」と呼ばれる手法の模擬授業が行われた。
生徒役になった教員約50人は、6人1組で机を囲み、図を書いたり、
討論したりしながら間取りを考えていく。
講師は、発案者で府教委特別顧問の藤原和博さん(53)。
リクルート出身の民間人校長として、東京都杉並区立和田中学校で
塾による放課後授業「夜スペシャル」(夜スペ)などに取り組んだ実績を
買われ、橋下徹・大阪府知事に協力を要請された〈改革請負人〉の一人。
「よのなか科」で養う力を、藤原さんは「情報編集力」と呼ぶ。
情報を選別し、自分なりの答えを導くための応用力を意味。
例えば、「理想の家」の授業では、家に何をどう配置するかを考え、
話し合ってもらう。
サッカー場を設けても、地下室を加えてもいい。正解はない。
目的は、作業や議論を通して、発想や表現を引き出すこと。
議論を活発にするため、保護者や大学生に加わってもらったり、
専門家を呼んだりする。
研修に参加した岬町立岬中学校の岡田耕治校長(54)は、
「生徒は面白いと感じるはず。試す価値はある」
以前から、学校単位や先生個人で「よのなか科」に取り組む
ケースはあったが、都道府県で導入するのは府教委が初めて。
きっかけは、反復学習などと同様、全国学力テストでの低迷。
応用力を問うB問題の平均正答率は、基礎を問うA問題より
全国平均との開きが大きい傾向、無回答率も高かった。
「国語の授業で、自分の考えを話したり書いたりする」という質問に、
「当てはまる」とした府内の中学生は26・2%と全国平均(43・1%)を
大幅に下回ったことも、教育関係者にショックを広げた。
こうした結果を受けて、府教委は「考える、話す、書く」の要素を含んだ
「よのなか科」に注目。
藤原さんは2008年度、府内の小中高校55校で研修を実施。
今後も、独自の教材を開発して普及活動を進める。
本格的なスタートはこれからとはいえ、先行して授業に取り入れている教師も。
堺市立美原中学校の佐古田英樹教諭(33)は、
「暗記に偏りがちな社会科を変えたい」と、製菓会社の社員や税理士を招き、
「売れる菓子の条件は」、「税金は必要か」などをテーマに授業で議論。
生徒の評判は良かったが、ゲスト探しなどに準備を要する上、
平日なので保護者になかなか集まってもらえないなどの課題。
府教委小中学校課の角野茂樹課長は、
「自分ならもっと有意義な授業ができる、と思う教師もいるはず。
ぜひ挑戦してほしい」と呼びかけ。
授業内容の自由度が高い分、教師側も試されることになりそう。
◆よのなか科
藤原和博さんが、和田中校長時代に取り組んだ授業手法。
身近な社会事象から、経済や法律などを含めた「世の中」を考える
スタイルが特徴で、「ハンバーガー屋さんの店長になろう」、
「流行る店、流行らない店」などのテーマで実践。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090509-OYT8T00250.htm
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