2009年5月10日日曜日

花王が狙う次の一手

(日経 2009-04-27)

容器包装リサイクル法では、市町村が食品トレー、ペットボトルなどの
廃棄物の再商品化をリサイクル事業者に委託し、
メーカーやスーパーなどの企業は、日本容器包装リサイクル協会を通じて
「再商品化委託費用」を支払う。

その費用の負担額が、おそらく1番多いとされるのが
トイレタリー最大手の花王。
2007年度の支払額は、14億円。
洗剤、シャンプー・リンス、化粧品など家庭用品の年間販売個数は20億個、
再商品化委託費は2位以下に大差をつける額。

家庭用品の容器の材料は、プラスチック。
プラスチック容器ができるまで、石油資源の採掘や容器製造工程での
電力消費などで、CO2を排出。
家庭用品の販売が増えれば増えるほど、CO2排出を促し、
花王は、容器材料のプラスチック使用量削減を推進。
対象の商品分野は、シャンプー・リンス、漂白剤、柔軟仕上げ剤、
ボディー用・手洗い用洗浄剤や、衣料用、住居用、台所用の各種洗剤など、
実に広範囲にわたっている。

これまで取り組んできた対策は主に3つ。
第1に、容器の小型化・薄肉化。
第2に、詰め替え製品の開発・販売拡大によるボトル容器の生産量抑制。
第3は、再生材料の活用推進。
例えば、衣料用洗剤「アタック」の計量スプーンはリサイクル材料を使用。

一連の対策によって、プラスチック使用量の削減がどのくらい進んだか?
2007年度プラスチック使用量は、小型化・薄肉化と「詰め替え」推進を
しなかった場合と比べ、61%減と試算。

「詰め替え」による削減率が41%、小型化・薄肉化の効果が20%。
「61%減」は、3万6900トンのプラスチックを使わずに済んだ計算、
CO2換算で6万3000トンの排出抑制。

商品の販売が伸び続けると、減量化努力が追いつかず、
プラスチック使用量の削減に至らない。
05、06、07年度と3年連続で、前年対比で増加。
1995年度の使用量を100とし、04年度は67、05年度は68、
06年度は70、07年度は72。

販売増とともに、容器の使用量が増えざるを得ない構造を改革し、
企業の成長とCO2排出削減を両立する道はないか——。

花王がいま直面している課題。
「やるべきことは、まだたくさんある」
花王環境・安全推進本部の松井貞部長。
技術開発の推進だ。

容器の小型化・薄肉化は、まだ余地がある。
容器材料の強度を今より上げ、薄肉化をさらに追求する。
詰め替え用のパウチ(袋形の容器)の改良も進めている。
袋状のパウチと同等の樹脂量で、ボトル状で変形しにくい「超薄肉」の
製品を昨年開発、秋からシャンプーなどに採用。
プラスチック使用量削減に直結する技術的なテーマはまだ多い。

「企業の社会的責任(CSR)調達」も、取り組むテーマが多い。
容器の調達先は、CO2排出抑制に取り組んでいる企業を選ぶ、
原料の樹脂メーカーについてもCO2排出量をチェックする。
容器の製造元が、花王の工場に近ければ近いほど、
トラックの輸送距離が短くて済むのでCO2排出が抑制でき、
こうした点も調達先選びの判断材料に。

期待が大きいのが、原料に石油を使わない植物由来の「バイオプラスチック」
原料の植物は、成長過程でCO2を吸収するため、
バイオプラスチックはCO2の排出を増やさずに済む
「カーボンニュートラル」な素材として注目。

バイオプラスチックは、家庭用品向けとして、いくつものハードルがある。
OA機器用など実用化が進み、花王も昨年12月、
「ポリ乳酸樹脂」という植物由来プラスチックを改質した
「エコラ」(商品名)の開発を発表。

現在のバイオプラスチックは、家庭用品の容器にした場合、
充てんした洗浄剤など中身の成分が影響を受ける心配があり、
家庭で長く保管した場合などの耐久性もまだ不安がある。
価格も、商業ベースに乗るにはまだ遠い。
現在の容器材料の価格に比べ、バイオプラスチックは何倍もする。

家庭用品向けのバイオプラスチックは、性能や生産技術の開発が
まだ緒に就いたばかり。
以前から問題意識を持ち、打つべき手を打ってきたからこそ、
「脱・炭素社会」への次のテーマが明確に見えてきた。
企業にますます求められるCO2削減の取り組みで、
花王は確実に一段上のステージへ昇った。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/tanso/tan090423.html

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