2010年8月7日土曜日

アメリカのスポーツ政策

(sfen)

◆充実した大学のスポーツ環境

アメリカ中西部インディアナ州にあるブルーミントンは、
インディアナ大学のある小さな大学町。

キャンパスに、約5万人を収容するアメリカンフットボールスタジアム、
1万8千人が観衆となるバスケットスタジアム、
18ホールの広大なゴルフ場、サッカー場、室内フットボール場、
野球場、ソフトボール場、バレーボール体育館、
8面の室内テニスコート、数十面の屋外テニスコート、
バスケットボールコート10面とラケットボールコート5面ほどの大体育館、
たくさんの多目的芝運動場、レクリエーション総合体育館など、
数えきれない運動施設を持っている。

大学を代表するアスリートが主として利用する施設から、
一般学生が自由に利用できる施設まで、驚くべき数を有している。

学内には、レクリエーションスポーツ部局があり、
学生へのプログラムだけでなく、休み期間には
地域の人々へのプログラムも提供。

大学スポーツの花形であるアメリカンフットボールや
バスケットボールの対抗戦には、大学関係者はもちろん、
老若男女地域の住民がホームチームの応援に大挙して訪れる。

地域には、各レクリエーションスポーツのセンターやYMCAなどの
施設があり、身近な活動を保証。

◆アメリカに根付くスポーツ文化

州都のインディアナポリスには、プロフットボールチームのコルツ、
プロバスケットボールチームのペイサーズが本拠を置き、
チケットはすぐ売り切れになるほどの爆発的な人気。
チケットは手にできなくとも、それらのゲームはすべて放映、
スポーツバーや自宅で、お祭りのようにみんなが楽しんでいる。

「スポーツを抜きにして、アメリカ文化は語れない」という
言葉通りの姿である。

草の根のアマチュア・スポーツから、ショーアップされた
プロ・スポーツまで、ほかの国を寄せつけない多様性と規模をもって、
スポーツがすぐそこにある。
この様子は、全米でもいたるところで見られる光景。

この背景には、それを支える膨大なスペース、施設などのハード面と、
メディアやプログラムなどのソフト面の充実、
大衆のための娯楽として意義の認識やスポーツそのものの価値を
認める国民性など、あらゆる条件が兼ね備えられている。
まさに、スポーツ大国アメリカといわれるゆえん。

◆アマチュア・スポーツを統轄する中央組織

スポーツの政策の基盤となる法律として、最初にあげるべきものは、
「オリンピック・アマチュア・スポーツ法」。

この法は、1978年、アマチュア・スポーツ法として成立、
1998年、クリントン政権時、国際的な動向と合わせ、
あらたにパラリンピックとの関係を規定、
選手や組織の紛争解決のためにアドバイスすることのできる
オンブズマン制度を取り入れ、オリンピック・アマチュア・スポーツ法
(Ted Stevens Olympic and Amateur Sports Act)と改称。

1975年、フォード大統領は、オリンピック大会での成績不振の
原因究明と、一因と思われる各スポーツ組織間の紛争解決を
図るため、「オリンピック・スポーツに関する大統領諮問委員会」設置、
詳細な報告書をもとに、「アマチュア・スポーツ法」が成立。

国際競技力の低下がその背景となって、法制化に向かった。
報告書では、国際競技での不振の主たる原因を、組織上の欠陥と
著しい資金不足の2点と指摘、現役の競技者を競技団体の運営に
一定割合参加させること、役員のアマチュア化を主張した点は
特に注目すべき。

この法の成立によって、アメリカオリンピック委員会(USOC)は、
アマチュア・スポーツを統轄する中央組織として認定、
オリンピック大会などの国際競技会の役員、
選手の選考決定権を全面的に得、
アマチュア・スポーツ活動の推進と競技組織間の調整機関となった。

国内統轄団体の認可権限ももち、USOCを中心とした
アメリカのアマチュア・スポーツ機構が統一、完成した。

(1)オリンピック・アマチュア・スポーツ法
CHAPTER 2205―UNITED STATES OLYMPIC COMMITTEE
オンブズマン制度(国民の代理人として、行政が違法・不当なことを
していないかを監視する制度)を取り入れたスポーツ法

◆スポーツ振興を広く捉えた組織に発展

国際競技力の向上を中心とした制定過程であったが、
最終的には、USOCの目的の条項内にフィジカル・フィットネスと
国民参加の推進・援助、女性スポーツ、障害者スポーツ、
マイノリティスポーツの奨励・援助等を掲げ、
広くスポーツ振興を視野に入れ、その法の成立は後押しされた。

USOCの非政治性、非営利性が強調された点、
オリンピック委員会の名称の独占的使用が規定された点なども
現代的課題として重要。

直接的なスポーツ国家法ではないが、
国民に体育・スポーツの機会均等を保証する連邦法規として、
「市民的権利に関する法律」(Civil Rights Act of 1964)、
「タイトルⅨ」(TitleⅨ of Education Amendments of 1972)、
「障害をもつアメリカ人に関する法」
(The Americans with Disabilities Act of 1990)など。

それぞれ人種、性、障害について、広くその差別的扱いを禁止、
これらの法規は、平等機会を広く保証する重要な後ろ盾。

◆複合的なスポーツ・健康政策

歴史的にみて、1900年初頭の大学スポーツ問題や
一部プロ・スポーツとのかかわり以外には、
合衆国政府は、スポーツに関与するということに消極的。

プロ・スポーツをはじめとするスポーツイベントの巨大ビジネス化、
オリンピックや世界選手権などハイレベルのスポーツ競技の
国際的注目度、莫大な医療費とかかわる国民の健康問題などを
背景に、政府としても積極的な役割を演じる必要性が増してきた。

アメリカのスポーツ政策を検討する場合、
市民のスポーツから学校体育、一般の競技スポーツから
国際競技レベル、大学スポーツ、プロ・スポーツまで、
さまざまに考えられるが、これらはまとめてフィジカル・フィットネス、
健康づくりと競技スポーツに大別できる。
これに、特に盛んな野外レクリエーションの領域も重要。

アメリカ合衆国は、連邦国家の名のとおり、地方分権が建て前で、
その行政的権限は、外交、国防や人種差別などのような
特殊な問題を除いて、州および地方公共団体に委ねられている。

通常は、学校体育などについて、各州や行政区で
体育を規定する法の形式、管轄する機関、時間配分などさまざま。
市民の健康づくりなどに関し、実際の施策をみる場合、
各州および市町村を丹念にあたり、検討していく必要。

◆わが国のスポーツ基本法に向けて

アメリカでは、生活のなかにさまざまなスポーツが根付いている。
スポーツを、多様な機会で享受することによって、
個人、家族、仲間、市民が共通の楽しみを共有。

その点において、スポーツは豊かな社会づくりの一つの
大きな意味をもっている。
それを支えているのがハード面、ソフト面、人的側面などの
条件整備と歴史的に形成されてきたスポーツ観である。

今後、わが国のスポーツの発展を考えるとき、
市民スポーツからプロ・スポーツも含め、平等機会、安全、
選手の権利、適正な紛争処理手続きなどを保証することが大切。
そのことを踏まえ、すべての人が多様なかかわりを持てる
スポーツの基盤を、公共が支えることを示した
新しいスポーツの基本法が、わが国に誕生することを期待。

◆井上洋一

奈良女子大学文学部人間科学科(スポーツ科学)教授。
専門分野は、スポーツ法学。
日本スポーツ法学会理事(事務局長)、
日本体育・スポーツ政策学会理事を兼務。
主な書籍は、『スポーツ政策の現代的課題』編著(日本評論社08年)、
『導入対話によるスポーツ法学』共著(不磨書房2005年)ほか。

http://www.ssf.or.jp/sfen/sports/sports_vol4-1.html

平均寿命、過去最高を更新 女性86・44歳で25年世界一 09年、男性は79・59歳

(2010年7月27日 共同通信社)

日本人の2009年の平均寿命は、
女性が86・44歳、男性が79・59歳で、
4年続けて過去最高を更新したことが、
厚生労働省が公表した「簡易生命表」で分かった。

女性は、08年より0・39歳延び、25年連続世界一。
男性も0・30歳延びたが、08年の4位から5位に。
4位より下になったのは、1973年以来36年ぶり。
男女差は6・85歳、昨年より0・09歳広がった。

厚労省は、「がん、心疾患、脳卒中という日本人の三大死因と
肺炎の治療成績が向上したことが主な要因。
インフルエンザが大流行しなければ、今後も寿命は延びるだろう」

男性が下がった理由は、
「ほかの国も、寿命が延びた相対的なもの」
女性の2位は、香港86・1歳、3位はフランス84・5歳。
男性は、1位がカタール81・0歳、2位が香港79・8歳、
3位はアイスランドとスイスが79・7歳。

09年に生まれた赤ちゃんが75歳まで生きる割合は、
男性71・9%、女性86・5%、
95歳まで生きるのは男性8・2%、女性23・7%と試算。

09年のゼロ歳児が将来、三大死因で死亡する確率は、
男性54・65%、女性51・84%。
がんの比率が、男女とも最も高い。

三大死因が克服されれば、男性の寿命は8・04歳、
女性は6・99歳延びると推定。

※簡易生命表

年齢別の「平均余命」や、がんや心疾患といった死因ごとの
死亡確率について、厚生労働省が毎年公表している指標。
日本人の推計人口や人口動態統計を基に、
その年の死亡状況が今後も変わらないと仮定して計算。
ゼロ歳児の平均余命は、日本人の平均寿命を表す。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/7/27/123307/

増加傾向のがん患者 重要性高まる在宅医療 岩手・ニュースの核心

(2010年7月25日 毎日新聞社)

医師不足による病床削減が見込まれる中、
がん患者の在宅医療の重要性が、県内でも高まっている。
訪問診療や介護の支援態勢に加え、患者・家族を手伝い、
話し相手になるボランティアも含めた複合的な制度構築が求められる。
各機関の連携を主導する組織がないなど、
県内の支援態勢づくりは遅れている。
患者の家族らの団体がボランティア育成を始め、
態勢整備を促す動きも出始めた。

北上市は94年、県内で先駆けて在宅での緩和ケア事業を始めた。
ホスピス建設を予算の都合で断念し、切り替えた。
県立北上病院(現中部病院)と、市内診療所が協力する
「北上方式」を編み出した。
現在、市内の13診療所が病院から終末期の患者を受け入れ、
訪問診療を行う。

03年、ベッドや車いすなど介護用品購入費補助や
ボランティア制度も盛り込み、複合的態勢を強化した。
介護保険制度で届かない用具提供や精神的な支援も求められた。

年間約50人が利用し、ボランティアは03年度以降延べ14人に派遣。
同市の緩和ケアボランティアの会副会長、小原節子さん(56)は3年前、
77歳で他界した父の遠藤誠司さんの希望で在宅医療を選択。
肺がん判明から亡くなるまで、約8カ月利用。

医師やホームヘルパーは、治療や介護に専念し、
ボランティアは話し相手や買い物に付き添った。
ボランティアは、同居の弟夫婦が仕事でいないこともあり、希望した。
当初見知らぬボランティアを自宅に入れることに反対した誠司さんも
打ち解け、訪問は計49回に上った。
小原さんは、「他人だから、話せることもあったみたい」

厚生労働省の人口動態統計によると、県内の対10万人あたりの
がん死亡率は08年が301・3、07年296・4に比べ、増加傾向。

岩手ホスピスの会によると、県内の緩和ケア病棟は
4病院計80床にとどまる。
入院待機者もある。
県は、11年度末までに療養病床を計1060床削減、
県医療局も県立病院など、計396床減らす計画を進め、
在宅医療の重要性が高まる。

がん死亡者のうち、在宅死の割合は、同市は08年21・4%、
県の7・0%や国の7・3%を上回った。
八幡平市など、7市町村が0%。
県は、08年3月策定の「がん対策推進計画」に、
在宅での緩和ケア推進を盛り込んだ。
具体的な数値目標はなく、動きは低調だ。

盛岡市、訪問診療専門の「もりおか往診クリニック」を開く
木村幸博医師は、医療、看護、介護、ボランティアが
チームで取り組む必要がある。

在宅移行後も、患者の容体が急変した際に受け入れる入院施設が
必要なことを挙げ、「病院と診療所間の連携が十分でない地域で
進んでいない。行政が、それぞれを結びつける役割を担わないといけない」

岩手ホスピスの会は5月15日、初めて在宅医療を受ける
がん患者の緩和ケアをテーマに、ボランティア養成講座を開いた。
ボランティアの支援態勢づくりを進めることで、
行政に在宅緩和ケアの態勢整備を促す考え。
同会の川守田裕司代表は、
「患者や家族のニーズは高い。
ボランティアと結びつける仕組みをつくりたい」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/7/26/123228/

乳がん 遺伝子検査で薬選び…再発防止効果に個人差

(2010年7月26日 読売新聞)

乳がん患者の遺伝子を調べることで、再発予防に効果があり、
価格も低い薬を選ぶ手法を、中村祐輔・東京大教授らが開発。

四国がんセンターなど、四国の5医療機関で
実際の治療に応用して、有効性を検証する。

乳がん手術後の再発予防には、
タモキシフェンとアロマターゼ阻害剤という2タイプの薬が使われる。
従来の研究では、タモキシフェンを使う患者の20~30%が、
5年以内に再発し、阻害剤より効果がやや劣る。

研究チームは、タモキシフェンの効果に、患者で差があることに着目。
徳島県で、1986~2007年に乳がん手術を受け、
タモキシフェンだけを投与された282人を調べた。
タモキシフェンは体内で分解され、がんに効く成分ができる。

遺伝子の違いによって、分解酵素の働きが弱い患者は、
働きが「正常」、「やや弱い」患者に比べ、
再発の危険性が2・2~9・5倍高かった。
酵素の働きが弱いのは、患者の2割。

研究チームは、「残りの8割にタモキシフェンを投与すれば、
再発率が10%未満に抑えられ、阻害剤よりも効果が高い」と予測。
タモキシフェンは、後発医薬品が発売され、
価格が阻害剤の10分の1程度のものもあり、
この手法を使えば、年間110億円を節約できると試算。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/7/26/123290/

2010年8月6日金曜日

インサイド:高校スポーツを育てる インターハイを前に/5止

(毎日 7月24日)

今年の全国高校総体の男子テニスで、
開校3年目の新鋭校が注目。
兵庫県の相生学院高。

個人戦では昨年も出場したが、今年は団体でも、
兵庫県総体の決勝で7連覇中だった明石城西高を破り、
初めての出場権をつかんだ。
3月の全国高校選抜大会では、団体でベスト8進出。
シングルスでも、池川浩史(2年)が準決勝まで進んだ実力校。

◇柔軟な教育課程

相生学院高は、株式会社立の広域通信制・単位制高校。
相生市が、07年廃校となった中学校舎の活用を図って、
教育特区の認定を受け、08年春、富士コンピュータ販売株式会社
(本社・加古川市)が開校。

株式会社が創立する学校は、04年から認められ、
カリキュラムを自由に組めるメリットがある。
同校には、相生本校と兵庫、大阪、東京などの分校を
合わせて9校あり、テニス部員は加古川校に在籍。

平日は制服を着て、校舎へ通い、火~木曜は正午、月・金曜は
午後3時まで授業。
その後、近くのテニスクラブへ移動し、砂入り人工芝コートと
ハードコートを備えた好環境で練習する。

部員は、3学年合わせて23人。
少人数で、おのずと練習の質は高くなる。

テニス部監督は、加古川校の荒井貴美人副校長(55)。
07年まで23年間、県立の明石城西高で体育科教諭を務め、
私学優勢の高校テニス界にあって、
全国高校総体で団体準優勝、シングルス優勝を果たした。

相生学院高が練習するテニスクラブは、
親族が経営してきたもので、現在は監督自身が代表を担う。

全日制の高校では、下校時間が決まっていたり、
高体連主催以外の大会に出場する時は、
公認欠席が認められないなど、部活動への制約も少なくない。
通信制は、自由が利く。

相生学院高の土屋和男校長は、
「全日制より、社会の変化に対応して合理的。
子供の希望や能力に柔軟に対応できる」と長所を強調。

通信制・単位制高校は、科目ごとに定められた時間数の
スクーリング(登校しての面接指導)以外は、
リポートや試験でも単位が取得できるため、
スポーツに専念しながら在籍しやすい。
プロの錦織圭(ソニー)も、青森山田高通信制を卒業。

◇学習指導も充実

県立高での教員歴が長い荒井監督は、
テニスだけに専念させる怖さも知る。
「プロを目指すにも、違う道に進むにしても、
基本的な学力や生活習慣を身につけないと、成功しない」

部員には、あえて毎日学校に通い、授業を受けさせる。
香川大教育学部付属の坂出中から、相生学院高に入った
池川が、「勉強時間が多くて、最初は『あれ?』と思った」、
嶋田颯人(3年)は、「授業も少人数だから、
全日制の学校より内容が濃いはず」

学校の目標は、世界最大のマネジメント会社「IMG」が設立し、
錦織やマリア・シャラポワ(ロシア)らを育てた
米フロリダ州のアカデミー。

世界中から集まった選手が、午前中は勉強し、
午後は充実した環境で練習する。
荒井監督は、6年前に視察して以来、
「日本でも、意欲や実力を持つ子を伸ばせる
システム作りができるはず」

全国高校総体に向け、学校の1期生でもある嶋田は、
「入学した時から、僕らが伝統を作るつもりで
妥協せずやってきた。
最大の目標だった団体の全国制覇を果たしたい」

並々ならぬ意気込みを胸に、
本番の舞台、沖縄へ乗り込む。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/general/archive/news/2010/07/24/20100724ddm035050068000c.html

チュニジアと太陽熱発電共同プロジェクト

(サイエンスポータル 2010年7月26日)

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、
チュニジア国内で大規模な太陽熱発電施設を建設する
共同プロジェクトを始める。
チュニジア開発・国際協力省、同国産業技術省などと
同意書を締結した。

太陽光を集めるための凹面鏡を並べたトラフ型より、
効率が高いタワー型を採用する。
ガスタービン発電と組み合わせた複合型の太陽熱発電システムが特徴。
プロジェクトは、チュニジア政府の進める再生可能エネルギー導入計画の
一環として実施、大規模なタワー型太陽熱発電・ガスタービン
コンバインドサイクル複合施設としては世界初。

チュニジアは、日射量が豊富なため、
世界でも太陽熱発電に適した地域。
NEDOは、共同プロジェクトに取り組むことで、
日本の優れた技術の海外展開を後押しし、
世界的なエネルギー問題の解決に貢献することを目指す。
近く、フィージビリティスタディ参加企業を公募する。

http://scienceportal.jp/news/daily/1007/1007262.html

優先度判定に若手研究者の意見取り入れ

(サイエンスポータル 2010年7月26日)

総合科学技術会議は、科学・技術関連の来年度予算概算要求の
優先度判定を行う際、若手研究者から意見を求めることを決めた。

これまでの優先度判定では、
総合科学技術会議の有識者議員だけでなく、
各分野を代表する外部有識者も各省からのヒアリングに参加し、
新規施策のS・A・B・C段階評価を行ってきた。

これらの外部有識者の一部に、若手研究者を登用、
最先端・次世代研究開発支援プログラムの1次選抜者には、
約300件程度と予想される各省庁の対象施策すべてについて意見を聞く。

これまで優先度判定の対象は、規模が新規1億円以上、継続10億円以上、
今回の優先度判定では、継続施策の対象を5億円以上まで広げる。
約250件程度だった対象施策が、約300件程度に増える。

津村啓介・内閣府政務官は、
「質の高い筋肉質の予算をつくることが目的」。

http://scienceportal.jp/news/daily/1007/1007261.html

スポーツ立国戦略案 地域の環境整備に力を

(岩手日報 8月2日)

文部科学省が策定したスポーツ立国戦略案は、
国民の健康増進を示す羅針盤だ。

柱は、総合型地域クラブを活用したスポーツ環境の整備など、
「生涯スポーツ」の充実。
「五輪で過去最多のメダル獲得を目指す」とし、総花的印象が強い。

本年度のスポーツ振興予算は、約227億円。
約163億円が、国際競技力の向上に充てられている。

地域スポーツの環境整備費などは、前年度の約37億7千万円から
約22億2千万円に大幅に減額。
学校体育関係も約10億円減らされ、約41億円。

トップアスリートの強化に、軸足が置かれている。
地域環境を整えてこそ、生涯スポーツの充実が図られる。
予算増額など具体策を示すべきだが、戦略案には明記されていない。
掲げる方針と矛盾してはいないか。

トップアスリートと、それを支える多くのスポーツ愛好家がいての
「スポーツ立国」だ。
ピラミッドの底辺となる地域スポーツを、活性化させることが必要。

生涯スポーツ振興の例として、成人の週1回以上のスポーツ実施率を
現在の45%から65%に、週3回以上のスポーツ実施率を
3倍近い30%に引き上げるとしている。

その活動拠点として挙げているのが、総合型クラブ。
2000年、策定された国のスポーツ振興基本計画では、
10年間で全国の各市町村に最低一つは創設するとの目標。

09年度の設置市町村は準備中を含め、全国で64・9%。
本県の11年度の総合型クラブ数は、38。
設置済みは13市町村、準備中が12市町村、未設置は10市町村。

総合型クラブの設置は、各自治体や体育協会などに任せられているのが
実態で、担当者の人員不足などから設置は思うように進んでいない。

文科省は、戦略案策定に当たり、競技団体などからヒアリングを実施。
「小学校は、教師によって学校間・学級間格差がある。
体育の教科書がないことが大きい」、
「総合型クラブで、アスリートを雇用できる体制を構築すべきだ」
などの意見。

案には、一部が反映された。
「小学校に体育活動コーディネーター(仮称)を配置」、
「12年度から中学校で必修となる武道、ダンスに対応するため、
外部指導者の受け入れを推進する」など。

スポーツ庁の新設は、行財政改革の流れに反するとして
検討課題となった。

幅広い世代に配慮した点は評価できる。
学童らを対象に、運動量の目標となる指針をつくるほか、
若者の交流を促す「スポーツ婚活」も提案。
高齢者向けの体力測定制度も設ける。

問題は、誰が主体となって推進するかだ。
スポーツ庁設置は先送り状態。
自治体は財政難にあえいでいる。
「理念」だけが先行し、掛け声倒れとなるようではならない。

http://www.iwate-np.co.jp/ronsetu/y2010/m08/r0802.htm

2010年8月5日木曜日

インサイド:高校スポーツを育てる インターハイを前に/4

(毎日 7月23日)

柔道の全日本ジュニア体重別選手権の関東予選。
100kg超級の決勝は、東海大相模高3年の王子谷剛志
1学年上の上武大の選手との顔合わせ。
体格でも見劣りしない王子谷は、
内また透かしと寝技の合わせ技で一本勝ち。

東海大相模高の林田和孝総監督は、
「大学生が多い全日本でも、上位を狙える選手」と力を込めた。

◇中高大「10年強化」

五輪でも、日本の「お家芸」と言われてきた柔道。
それを支えているのが、高校生の選手の集積。

過去20年間の全国高校総体の優勝校は、国士舘7回、
東海大相模6回、世田谷学園4回、桐蔭学園2回、天理1回と、
東京、神奈川勢が19回を占める。

国士舘や東海大相模などは、大学の道場に
付属の高校生だけでなく、中学生も集まり、
中高大の「10年強化」を進めてきた。

王子谷も、週に3度、電車を1時間乗り継いで、
東海大の道場に通う。
高校総体での団体3連覇を目指して大学生の胸を借り、
レベルの高いメニューをこなす。

大阪出身で、中学から東海大相模に入った王子谷は、
「高校の練習では、投げられてはいけないと力が入る。
大学では、思い切ってぶつかることができる」と、
大学での練習を好む。

東海大が、高校との連携を図ったのは約40年前。
東の明大、西の天理大という名門に押されていた新興校で、
なかなか選手が集まらなかった。

当時、柔道部監督だった佐藤宣践・東海大スポーツ教育振興
本部長は、全国の付属高校にOBの指導者を送り込んだ。

ほかの大学に先駆けた作戦。
その中でも、直属とも言える相模高に強い選手を集め、
五輪金メダリストの山下泰裕さん(熊本出身)、
井上康生さん(宮崎出身)らが育った。
付属中学にも、指導体制を広げていった。

全日本柔道連盟の吉村和郎強化委員長は、
「強い選手は、小さい時から強い。
早い時期から強化していくことが、将来の全日本にもつながってくる」、
メリットを強調する。

林田総監督も、「10年間指導することで、
選手が強くなる確率は高くなる」、一貫強化の成果には自信。

ただし、「真の力が分からない中学生からの英才教育が、
柔道界全体の強化につながっているか」という
問題意識があるのも確か。

◇「王国」から流出

かつて「柔道王国」と呼ばれた九州地区。
高校総体の第1回を久留米商(福岡)が制したが、
最後の優勝は22年前の東海大五(福岡)。
関東や東京の大学付属の「10年強化」が進み、
最近はベスト4に入ることも難しくなった。

中学生からの強化が進んだことで、
小学生にも目が向けられるようになったが、
九州の柔道関係者は、「小学生のトップレベルが関東に流れ、
高校進学時にまた出ていく。強い選手が九州に残らない」と嘆く。

強い選手がいれば、相乗効果でレベルアップが図られるが、
今は有力選手の首都圏への流出が止まらず、
選手の育成に苦労しているのが実態。

常に、五輪での好成績を期待される日本柔道界。
最近は、国際舞台で苦戦が続く。

低年齢から一貫指導する「集中強化」に力を注ぐのか、
それとも全国的な底上げに着手するか。
伸び盛りにある高校年代の育成は、その岐路にある。
それは、他のスポーツにも共通したテーマといえる。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/news/20100723ddm035050176000c.html

がん化の心配が少ないiPS細胞作製法発見

(サイエンスポータル 2010年7月27日)

iPS細胞(人工多能性幹細胞)を将来、臨床応用する場合に
懸念されている、がん化を抑えるだけでなく、
作製効率も高めることができる方法を、
京都大学の研究チームが発見。

iPS細胞を最初に作製した、山中伸弥・京都大学物質-細胞統合
システム拠点iPS細胞研究所長の方法は、
4つの遺伝子をマウスやヒトの線維芽細胞に導入。

これら4つの遺伝子のうち、c-Mycと呼ばれる遺伝子は、
iPS細胞を効率よく作製する役割を果たす一方、
作製されたiPS細胞の多くが、がん化してしまう原因。

iPS細胞研究所の中川誠人講師と山中所長らは、
c-Mycと遺伝子配列が似ている遺伝子群(Mycファミリー遺伝子)の
働きを詳細に解析した結果、L- Mycと呼ばれる遺伝子が、
c-Mycより効率よくiPS細胞をつくり出すことが分かった。

マウスを用いた実験で、L- Mycを用いて作られたiPS細胞には
腫瘍形成がほとんど起こらないことが確認。

山中所長らは、iPS細胞作製に当初用いた4つの遺伝子のうち、
がん化の原因となるc-Mycを除いた残り3遺伝子の導入によっても、
iPS細胞が作製できることを既に確かめている。

c-Mycを除いた3遺伝子だけでは、
作製効率が大幅に低下することが分かっていた。

http://scienceportal.jp/news/daily/1007/1007271.html

親子が集う広場できた 陸前高田に26日開設

(岩手日報 7月26日)

気仙地域子育て支援ネットワークWa―I(わーい)
=伊藤昌子代表、会員8人=は、陸前高田市に、
「おやこの広場『きらりんきっず』」を開設。
乳幼児と親が集う交流の場として開放し、
互いに支え合う育児を後押しする。

同市の中心商店街の空き店舗を活用した施設は、
プレイルーム(62平方メートル)やトイレなどを備える。
開所日は毎週月、水、木曜の午前10時~午後3時、スタッフが常駐。
市の委託事業として、補助を受けて運営に当たる。

開設に当たって、県立大社会福祉学部の山本克彦准教授らの
支援を受けた。
山本准教授は、「親子が集う場ができれば、おのずと対話が生まれる。
そこで浮かび上がったニーズに柔軟に対応していってほしい」と助言。

同ネットワークは、2006年7月設立。
昨年、同市社会福祉協議会と合同で行ったアンケートでも、
親子の居場所が最も求められていることが分かった。

伊藤代表は、「悩みながら、子育てしている親は多い。
いつでも気軽にほっとできる場として開放したい。
街中に親子の笑い声が響くことを願っている」

今後は、赤ちゃん用のわらじ作りや、父親向けの講座なども企画し、
子育ての輪を広げる。

対象は、0歳から就学前の子どもとその親。
利用料は無料、初回のみ1年間の保険代として600円を支払う。
希望者は、きらりんきっず(0192・47・3908)。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20100726_8

2010年8月4日水曜日

ハンセン病療養所内の保育園を構想する東京都東村山市長の渡部尚さん

(2010年7月22日 共同通信社)

国立ハンセン病療養所・多磨全生園の所在地で、
2007年から市長を務める。

療養所入所者の間で、地域との共存を目指す
ハンセン病問題基本法の制定運動が高まったころ、
全生園の自治会から保育園の誘致を打診。

「子どもを生み育てることが許されなかった
入所者の皆さんと、未来を担う子どもたちとの交流が生まれる。
市内で200人以上に上る待機児童の解消にもつながる」
ぜひ進めたいと思った。

08年6月成立の同法(ハンセン病問題解決促進法)は、
09年4月に施行。

第12条は、療養所の土地を自治体が利用できるとするが、
「地代」が大きな障害。

土地貸与には、国有財産法が適用。
「当初の基準では、地代が1千万円にもなり、
保育園の経営が成り立たない」
市や自治会の働き掛けで、より低い額も提示されたが、
一段の引き下げを国に訴える。

全生園とのかかわりは、1991年、サラリーマンを経て
市議となってから。
「存在は知っていたが、それまで行ったことはなかった」
らい予防法の廃止など、人間の尊厳のために戦う
入所者の力強さに、感銘を受けた。

全国に13カ所ある国立療養所の所在市町がつくる
連絡協議会の会長として、各園と自治体による
将来構想づくりも見守る。

全生園自治会は、園の施設を史跡として残す
「人権の森」を計画。

ハンセン病患者の強制隔離という人権侵害の歴史を伝える
趣旨に賛同する。
東京都中野区生まれの東村山市育ち。48歳。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/7/22/123143/

合衆市構想で意見交換 花巻・大迫

(岩手日報 7月28日)

花巻市は、市内を27コミュニティーの集合体に位置づける
合衆市構想について、コミュニティー役員との意見交換会を始めた。
参加者から、将来的に市職員が地域からいなくなる不安や、
コミュニティーの代表者と行政区長の役割分担など意見。

初日は、同市大迫町の3カ所のコミュニティーで開かれ、
内川目地区では、住民約15人と市から伊藤盛幸地域づくり課長らが出席。

合衆市構想は、市と各コミュニティーの協働による地域づくりの強化が
目的で、2011年度からスタート予定。
構想案で、住民側は、
▽常勤事務局員の配置によるコミュニティー会議(住民組織)の体制充実、
▽振興センター(行政機関)の庁舎の指定管理と証明書取り次ぎ―を担う。

行政は、
▽(仮称)合衆市条例を制定し、コミュニティー会議会長を
市の非常勤特別職の「地区長」に委嘱、
▽振興センターの市職員2人から1人体制への移行―を図る。

参加者から、「市は地域から人を引き揚げ、
(地域づくりを)地域に投げる不安がある」、
「地区長の責任が重くなる。行政区長との関係を明確にすべき」などの意見。

市は、8月5日まで全27コミュニティーで意見交換会を開き、
9月に同条例素案を作成する方針。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20100728_9

インサイド:高校スポーツを育てる インターハイを前に/3

(毎日 7月22日)

「スポーツ立県」を掲げる秋田県は今年度、
県内の高校生アスリートを経済的にサポートする制度を始めた。

公私立に関係なく、県内で下宿や寮生活などを送るトップ選手
(特待生の規定を検討中の野球は除く)を対象、
家賃相当の毎月2万円を援助するスポーツ奨学金の新設で、
返済義務のない給付金。

秋田県教育庁保健体育課の猿橋薫・学校体育班長は、
「貸与型ではなく返済義務がない奨学金は、
都道府県レベルでは全国初でしょう」

◇不況で一層県外へ

事業の背景には、地方の自治体の共通の悩みである
「ジュニア選手の県外流出」への危機感。

過去にも、練習環境に恵まれた私立の強豪校に進学する
選手はいたが、近年の経済情勢の悪化で拍車が掛かり、
学費や寮費の免除で特待生を迎える他県の私立校に
流れる例が目立つ。

秋田県は南北に長く、県内在住者でも通学時間が2時間ほどかかり、
下宿を余儀なくされるケースは珍しくない。

県内で親元を離れて暮らす高校選手は、約260人(野球の特待生を除く)。
全国大会で上位を狙える有望な中学選手のうち、
東北や関東などの他県校に進学した県外流出者は卓球、水泳など
年間十数人おり、増加傾向。

スポーツ奨学金には、こうした流出に歯止めをかける狙い。
支給条件は、全国大会8位以上などの競技実績、
実家を離れて県内で下宿、特待生ではない--など。

各学年30人の募集を上限に、2170万円を予算化し、
当初見込みの約6割にあたる計53人(男子36人、女子17人)が選ばれた。
支給を受けた9競技別では、バスケットボール(17人)と
バレーボール(13人)が多く、陸上(9人)、スキー(4人)など。

支給を受ける高校1年のある選手は、実家からの通学時間が
約1時間半もかかるため、下宿生活を選んだ。
家賃や食費で毎月6万円程度かかり、2万円の支援は大きい。
選手は、「いい環境で競技をできることに感謝している」、
保護者も、「経済的に助かるし、周囲の応援が子どもの励みになる」
指導者からは、「県財政が厳しい中、本当に長続きするのか」と不安の声。

◇ジュニア最重視

秋田県には、男子バスケットの能代工や、男子バレーの雄物川など
全国上位の競技力を誇る高校も。

両校は県立校だが、これまでも県外の有望選手が入学。
日本人初のNBA選手となった田臥勇太(リンク栃木)は横浜市出身、
「バスケ留学」で能代工へ進学した一人。
今回の制度では、県外選手が秋田県内の高校に入りやすくなる
効果もあるが、県内育ちの選手とのバランスをどう保つかも今後の課題。

秋田県は、07年の地元開催国体で天皇杯(総合優勝)と
皇后杯(女子優勝)を獲得。
この時、県外から社会人の即戦力選手を集めたが、
今はジュニアの育成が最重点課題。

深刻な高齢化率(人口に占める65歳以上の割合)の問題も、
ジュニア重視と無関係ではない。

09年10月、島根に次ぐ全国2位の28・9%の高齢化率は、
25年後に全国トップの41%になるとの推計。
スポーツを「活力と発展のシンボル」と位置づける秋田。
来夏には、秋田など北東北でブロック開催する高校総体を控える。
若者に注がれる視線は、いっそう熱を帯びてくる。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/general/archive/news/2010/07/22/20100722ddm035050171000c.html

2010年8月3日火曜日

いじめ対策(7)アニメで育む思いやり

(読売 7月28日)

徳島県鳴門市立撫養小学校5年の教室。
前方のスクリーンに、泣いている男の子「とっ平くん」と、
彼を見守る鳥のキャラクター「フレン鳥」の
アニメーションが映し出された。
鳴門教育大学(同市)の予防教育科学教育研究センターが
開発した予防教育の教材。

アニメには、両親とはぐれた女の子が登場し、
この子を助ける方法を、5人の班に分かれて話し合うことに。
「声をかける」、「お母さんとお父さんの所に連れて行ってあげる」など、
できそうな案を考えて発表。

「助け合いのやり方は、いっぱいあることがわかったね」、
授業で講師を務めた同センター研究員の勝間理沙さん(33)。
映像は、フレン鳥がみんなの「仲良しパワー」をアップさせ、
とっ平くんにクラスの女の子が「大丈夫?」と、
声をかける場面で終わった。

同センターは2009年設立、心理学、医学、栄養学、保健学などの
専門家が、いじめや不登校などを防ぐ予防教育科学を研究。
国内外の実証データを現場教育に生かし、子どもを救うのが狙い。

同センター所長の山崎勝之・同大教授(55)は約10年間、
いじめなど問題行動を起こす子どもの心や行動の特徴を研究。
この結果、いじめる側に回る子どもは、
共感性が低いなどのデータを得た。

授業で使う教材は、子どもたちを引きつけるため、
連続ドラマ仕立てにし、とっ平くんなどのキャラクターを登場、
最後にとっ平くんがみんなと仲良くなるという話に。
アニメは、センターの研究員がパソコンで手作りし、
計40分程度のものが完成。

センターは今年度から、これらのアニメ教材を使ったり、
子ども同士で話し合う小集団活動を取り入れたりした
「『いのちと友情』の学校予防教育」を開始。
県内の6小中学校に講師を派遣し、いじめ、うつ病やストレス、
生活習慣病などを予防するための授業を行っている。

撫養小でも、いじめや暴力などの予防を目的に、
6~7月に週1回、計6回の授業を実施。
授業を受けた児童の対人関係力などを調べたところ、
「困っている友人を助けるか」などの評価が事前より上がった。

来年度から、研修を受けた現場教員が、
これらの授業を一部受け持つ。
教員養成大学に蓄積された研究データが、
現場の対策に活用されている。

◆予防教育科学

子どもが、いじめや暴力で学校に適応できなくなったり、
うつ病や肥満などで心身の健康を損なったりする前に、
予防的に子どもの力を維持、向上させていこうという考えの教育。
すべての子どもが、このような問題を持つ可能性があることを前提。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100728-OYT8T00343.htm

メタボ 腹囲、やはり無関係? 新潟の病院、男性でも裏づけ

(2010年7月20日 毎日新聞社)

メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の診断基準となる
血圧などの検査値の多くは、日本人男性の場合、
腹囲(腹部肥満の有無)に関係なく、体重が増えれば、
悪化する傾向が強いことが、
立川メディカルセンター(長岡市)の調査で分かった。

厚生労働省研究班の大規模調査で、
女性の腹囲と循環器疾患発症の関連性が低いとの
傾向も明らかになり、腹囲を必須とする
現在の特定健診のあり方も問われそう。
今月号の米糖尿病学会誌「ダイアベティス・ケア」。

調査は、同センターの人間ドックを08~09年に受診、
風邪などをひいていない男性1271人(平均年齢51・6歳)を対象。

メタボ診断基準の血圧、血糖値、中性脂肪、
HDL(善玉)コレステロールと、体重変化との関係を、
国内でメタボの主因と位置づける腹部肥満が
ある群とない群で、それぞれ分析した。

その結果、血圧と血糖値は、腹部肥満の有無に関係なく、
体重が増加すれば悪化した。
HDLコレステロールは、腹部肥満がない群だけが
体重増加によって悪化し、いずれも腹部肥満との関係は
見いだせなかった。
中性脂肪は、腹部肥満がある群で体重増加との関係があった。

世界では、メタボ診断基準作りの中心になってきた
国際糖尿病連合などが昨年、腹囲を必須とせず、
他の血液検査値などと同列に扱う統一基準を発表。
日本の診断基準は、腹囲が必須条件に。

小田栄司・同センターたちかわ総合健診センター長は、
「腹部肥満がなくても、体重が増えれば、
検査値が悪化することが分かった。
腹部肥満を必須条件に、生活指導を実施する現在の特定健診は
合理的とは言えず、早急に見直すべきだ」
…………………………………………………………………
◇特定健診の再検討必要

日本のメタボ診断基準が腹囲を必須とするのは、
腹部に蓄積する内臓脂肪が心筋梗塞などの循環器疾患を
引き起こす主因との考え方に基づいてきたからだ。

日本人の循環器疾患発症の傾向を調べた解析によると、
内臓脂肪の蓄積だけではなく、血糖値など一部の血液検査値の
悪化や食生活によっても危険性が高まる。
腹囲を必須とする現在の特定健診は、
やせていて循環器疾患の危険性のある人を見落とす
恐れがあると指摘。

男性は、40~50歳代の比較的若い世代で、
腹部肥満が増えており、現在の健診に意味がある。
今回の研究成果では、50歳前後の男性も腹部肥満の有無と
検査値悪化の明確な関係を見いだせなかった。

これらの調査結果は、内臓脂肪の蓄積が
循環器疾患の原因の一つにすぎないことを示し、
それ以外の要因についても等しくチェックする
健診体制の検討が求められることになりそうだ。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/7/20/123025/

医学博士号を取った元タカラジェンヌの桝谷多紀子さん

(2010年7月20日 共同通信社)

かつてタカラジェンヌとして活躍した宝塚市で、歯科医院を営む。
窓から見えるのは、緑の木々の中に赤い屋根が映える宝塚大劇場。
「24時間、舞台に恋していた。ここならほっとできる」と、
この地を選んだ。

体が弱く、いつも母の服の袖に隠れていた少女時代。
運動代わりに始めた日本舞踊だったが、
「舞台に立てばほめてもらえる」と夢中に。

高校卒業後、あこがれだった宝塚音楽学校に入学。
宝塚歌劇団にはトップの成績で入団。
「花園とよみ」の名で娘役を演じ、4年目で新人賞に輝くと、
「精いっぱいやり切った」とすっぱりと退団。

30歳を過ぎ、もうひとつの夢だった大学進学を目指す。
「医学の分野で、高齢者の役に立てる学問を」と考えたとき、
宝塚時代に猛特訓した発声練習を思い出した。
舌の滑らかな動きや歯並びも、大事な要素。
身近に感じた歯学部に入学し、45歳で国家試験に合格。

6年前、もう一つの転機が訪れた。
認知症を患った中学時代の恩師との再会。

生きる気力を失ったような姿にショックを受け、
「記憶を失う孤独と不安に苦しむ人の気持ちをわかりたい」と、
認知症を学ぶ決意。

60歳で、神戸大大学院精神医学分野に入学。
朝は診察、夜は授業の4年間を経て、
今春、医学博士号を取得。

努力を惜しまない姿勢は、宝塚で培った。
「人間の可能性はすばらしい。努力すれば、絶対にかなう」
先生の言葉が今も忘れられない。

大阪市出身の65歳。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/7/20/123040/

インサイド:高校スポーツを育てる インターハイを前に/2

(毎日 7月21日)

全国で約1000人。
小学生から社会人まで、日本体操協会に登録する
男子新体操の競技人口。

国体では、08年大分を最後に、休止種目となるなど、
存続も危ぶまれるマイナースポーツの一つ。

佐賀県神埼市の県立神埼清明高。
今年の全国高校総体に、28年連続で出場する新体操部の
中山智浩監督は、部員たちの練習を見つめながら笑った。
「私が現役のころ、新体操をやっているとは自分からは言わなかった」

理由は分かりやすい。
「必ず『リボン回してるの?』とか聞かれ、説明するのが大変だったから」

◇部員集めに奔走

男子新体操は、日本発祥のスポーツ。
団体徒手体操」として、1947年石川国体から正式採用。

女子との大きな違いは、「タンブリング」と呼ばれる宙返りや
バック転などが許されていること。
団体種目では、6人が音楽に合わせて宙返りや倒立を繰り返す。
迫力ある演技にファンも増えつつあるが、競技人口増加には結びつかない。

最大の要因は、国内だけの競技で、「その先がないこと」(中山監督)。
国際化を目指して海外普及も図ったが、日本体操協会の
千葉末次・新体操副委員長は、「指導者もおらず、根付かない。

各国の体操協会からも、『五輪、世界大会がないなら、お手伝いできない』
と言われる」と漏らす。
競技人口の半数を占める高校でも、部員集めに苦労する。

中山監督は、92年新体操体験教室から始め、ジュニアクラブを設立。
自作のポスターを手に近隣の小学校を回り、参加者を募った。
現在、神埼清明高の部員19人のうち、半数以上がジュニアクラブ出身。
新体操部があるのは、県内で同校のみ。

「チーム数を増やさないと、すそ野は広がらない」、
他校に異動し、一からチームを作ることも考えている。

◇新たな道も模索

行き詰まりを感じて、新しい道を模索する指導者も。
昨年の全国高校総体で、10回目の団体優勝を達成した
強豪・青森山田高の荒川栄監督は、同校在学時代から国体など
全国大会で3冠を達成、国士大では全日本学生選手権の個人総合3連覇。

新体操界のトップを走り続けたが、
「大学を出て、新体操とかかわるには指導者の道しかなかった」

母校の監督に就任すると、ダンスの要素を強めた演技を取り入れ、
イベントなどにも積極的に出演。
選手たちが、卒業後に新体操を生かして活躍できる道を開拓するため。

その結果、清涼飲料水のCMに出演したり、
歌手・浜崎あゆみさんのバックダンサーなど、
新体操のプロとして活躍する卒業生も現れた。

協会関係者から批判を受けることもあるが、
「子供たちが一生懸命取り組んでも、先がなければ普及しない。
新体操の可能性を広げられれば注目度が上がり、すそ野は広がる

テレビのバラエティー番組でも取り上げられ、
今春にはドラマ「タンブリング」(TBS)も放送。
認知度が高まり、協会内には「チャンス」ととらえる向きもあるが、
それをどう競技普及につなげられるか。

「今注目されているのは、競技の面白さというより、
珍しさの方が大きいだろうが、この機を逃せば、
あと50年たっても発展しないのでは、との危機感もある」と荒川監督。
単なるブームに終わらせないための工夫に、頭を悩ませる。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/news/20100721ddm035050068000c.html

2010年8月2日月曜日

いじめ対策(6)専任教諭 細かく目配り

(読売 7月24日)

横浜市立岡村小学校(同市磯子区)。
休み時間に行われる恒例の縄跳びタイムで、女児が一人、
児童の輪から外れて座り込んだ。
児童支援専任教諭の黒川素子教諭(48)が、すかさず駆け寄り、
女児の脚に、縄が当たってできたアザを認める。
「ひとりじゃ行きにくかったのね」と語りかけ、優しく保健室へと導いた。

「担任一人では、どうしても目が届かない児童が出てくる。
そうした子の変化に素早く気づき、フォローするのが、
専任教諭の役割」と、黒川教諭が説明。

同市教育委員会は今年度から、いじめや暴力行為などに
専門的に対応する児童支援専任教諭を、
市内70小学校に配置した。

各校で、校長がベテラン教師から指名し、
特別支援教育コーディネーターを兼任する。
2007年度から実施したモデル事業で効果が確認され、本格導入。
今後5年間で、全346小学校に広げる計画。

「中学校では、1973年度から専任教諭を導入、
ここ数年は子どもをめぐる問題が低年齢化し、
小学校にも置いてほしいと要望が強まっていた」
同市教委人権教育・児童生徒課の斎藤宗明課長(54)。

市内の20小学校で行われたモデル事業では、
給食当番の配膳を受け取らないなど、様々ないじめが確認。
いじめがいかに卑劣な行為であるかを、専任教諭が指導し、
いじめが深刻化する前に解決した事例も。

専任教諭4年目になる黒川教諭は、登校時は校門に立ち、
掃除の時間は、教室を回って児童に頻繁に声をかける。
「何でも相談できる存在が、専任教諭。
保護者にとっては、成績をつける担任とは違う中立な存在」

市内の別の小学校のPTA役員は、
「学校と保護者との間の垣根が低くなった」と評価。

こうした取り組みに注目する自治体もある。
広島市教委の砂原文男・生徒指導課長(57)は、
「小学校から専任がきっちりと対応すれば、
中学校のいじめ防止などにもつながる」

一方で、「専任教諭の負担軽減のために、雇う教員の人件費が
ネックとなり、簡単には導入できないが」

学級担任制の小学校では、児童の問題を
担任一人で抱え込みがちだ。
専任教諭を置くことで、いじめなどの問題に学校という
チームで立ち向かう体制を作り上げる。
そこに、横浜市教委の狙いがある。

◆児童支援専任教諭

学級担任にはならず、授業は軽減または免除され、
いじめや暴力行為などに専任で対応する小学校教員。
中学校では、配置が義務づけられている生徒指導主事を
専任とする場合が多いが、横浜市のように
小学校に置くのは全国的にも珍しい。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100724-OYT8T00264.htm

インサイド:高校スポーツを育てる インターハイを前に/1

(毎日 7月20日)

高校スポーツの祭典「全国高校総合体育大会」
(全国高校体育連盟、毎日新聞社など主催)が、
28日から沖縄県を舞台に始まる。

大会では29競技が実施、全国の頂点を目指す戦いの陰で、
さまざまな取り組みが進んでいる。
伸び盛りの高校生アスリートたちをどう育てていくか?
インターハイの開幕を前に、各地の現状を探ってみた。

◇的絞った「食育」指導

浜松市の浜松日体高校の陸上部は今年、男子1500mの
木村慎(2年)と5000mの島田直輝(3年)が全国高校総体に出場。
1963年創部の同部で、男子の複数選手が出場するのは初めて。

その背景には、体づくりに欠かせない「食育」への取り組み。
07年。この年は、2年ぶりにインターハイの出場者がゼロ。
陸上部は「強化部」に指定、男子バレー部とともに
重点的に力を入れてきた。

指導歴12年の鈴木博之監督は、「我々指導者に与えられた時間は、
1日のうちわずか2時間くらい。
強くなるためには、家庭にも協力を仰がなければ」と危機感を強めた。

庄内俊司副顧問が探してきたスポーツ栄養士の古旗照美さん
保護者会に招き、「スポーツ栄養セミナー」を開いた。

松村優樹主将(3年)は、1年生の時のセミナーをよく覚えている。
「レース前に食べていいのは、肉まん?あんまん?」
「パワーが付きそう」と肉まんを選んだが、間違い。
古旗さんは、「あんまんは糖分が多く、すぐにエネルギーになるが、
肉は消化に時間がかかる」と説明。
松村主将は、「中学校の時、何も気にせずに食べていたが、
自宅の食事も変わり、メニューも増えた」

古旗さんの指導は、今年で4年目。
陸上部は、冬の全国高校駅伝大会への2年連続出場を目指し、
部員たちに食の「理論」を反復。

◇誤った食生活

「強くなりたいなら丼めし」、「お金の貯金より骨貯金」。
古旗さんが、セミナーで生徒に唱和させる合言葉。

高校時代、バスケットボールの強豪校にいた古旗さん。
「経験を生かしたい」と、スポーツ栄養の世界に飛び込んだ。
そこで見たのは、「強くなりたい」と願う子供たちほど、
テレビなどの断片的な情報で誤った食生活をしている現実。

「プロテインの取り過ぎで痛風になったり、チョコレートの
ポリフェノール効果を信じて、試合前に板チョコを
1人で1~2枚食べていたチームもあった」

食事ごとにご飯、おかず、野菜、汁物、乳製品、果物の6品を取り、
ご飯は丼で量を確保する--。
丼めし以外は「普通の食事」だが、
古旗さんは「ポパイのホウレンソウのように、特定のものを取って
強くなることはない」と王道を説く。

◇成長期こそ重要

古旗さんがメーンの肩書に使っている「スポーツ栄養士」は、
日本栄養士会と日本体育協会の認定資格。
09年10月、第1号の16人が誕生。

養成の中心メンバー、日本女子体育大の田口素子准教授は、
「日本代表選手に、今さらスポーツ栄養を説いても意味は薄い。
(体と心の)成長期の子供たちに行うことが重要」と力説。

05年、食育基本法が成立、「食育」という考え方は急速に普及。
田口さんは、「消費カロリーが多いスポーツ選手には
向いていなかった」と、ターゲットを絞った食育の必要性を感じた。
スポーツ栄養士たちは、大学などの研究者と、
学校給食などを充実させる管理栄養士の間を埋める役割を担う。

「将来のトップアスリート育成のために始まった『スポーツ食育』だが、
意識の高い指導者は、今を勝ち抜く手段でもあることを自覚」
高校部活動の分野でも、その重要性は増すばかりだ。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/news/20100720ddm035050028000c.html

はやぶさに挑戦心を見た 川口淳一郎さんと田中耕一さん対談

(毎日 7月15日)

人類初の小惑星からの岩石採取に挑んだ探査機
「はやぶさ」の地球帰還から1カ月。
回収されたカプセルの内部には、小惑星のものかは不明ながら
多数の微粒子が確認、新たな成果への期待がふくらむ。

はやぶさプロジェクトを率いた川口淳一郎・宇宙航空研究開発機構
(JAXA)教授(54)と、エンジニアの視点からはやぶさに注目してきた
ノーベル化学賞受賞者の田中耕一・島津製作所フェロー(50)が、
「成功を呼び込む挑戦」について語り合った。

--はやぶさ帰還を振り返って、今どう感じるか?

川口 やはり「出来すぎ」だったと感じる。
一方で運用が終わり、仕事がなくなった状況にぼうぜんとしている。
カプセルの中身について、これから少し時間をかけて調べる。

--誤解もあるが、カプセルに何か入っているだけが大事なのではなく、
小惑星イトカワへ行って帰ってくることが重要だった。

川口 その通り。第一目標は往復飛行。
当事者として、「中に入っていても入っていなくてもいい」とは言えないが。

田中 小惑星に着陸し、数多くの苦難を乗り越えて帰ってきた。
それだけでも、とんでもない成果。

--田中さんは、早くからはやぶさに注目していた。

田中 特に関心が強くなったのは、イトカワに着陸したころ(05年)。
日本のチームが、米国も驚くようなことをやってのけたのだとびっくり。
高品質と高い信頼性が、日本のものづくりの神髄、
その分「失敗するかもしれないもの」が認められにくい土壌が。
はやぶさは、従来の日本にはなかったものづくりの成果では。

川口 日本には失敗を恐れる文化、100%過去の成功の蓄積の上に
立った計画でないと進めない、という悪い癖がある。
はやぶさは、ひょんなことから実現したが、
日本的な考え方からすれば、とても通らない計画だった。

--リスクを取らないと、何の成果も出せない。

川口 リスクのない挑戦はありえない。
宇宙開発には、「試作品」という発想がなく、試作品がいきなり本物。
最初に作ったもので、成功しなければならない。大変難しいこと。
石橋をたたいて渡る発想ではなく、失敗するかもしれないけれど
自分がやりたい面白いことをしよう、
次のページを開こうという姿勢が大切。

田中 日本は、欧米に追いつけ追い越せでやってきた努力の結果、
世界の最先端に立つ分野が増えてきた。
これからは、「失敗してもいいから挑戦する」方向に進むべき。

川口 宇宙開発でも、若い人の中に「失敗は許されない」という人が。
日本人には普通の感覚だが、私は「とんでもない」と思う。
新しい発想を評価する方法がない、現在の教育は問題。
「どれだけ完ぺきにできたか」をチェックする試験中心の評価法を
変える必要がある。

--環境も重要か?

川口 そう。私が大学院生として宇宙研(東京大宇宙航空研究所、
現JAXA宇宙科学研究所)に来た時の印象は、「変な人ばかり」
先輩たちには、「こうだからできない」という発想がなく、
「こうすればできる」しか考えていない。
新しいことを考えるのが当たり前、という環境で培われた。

田中 今の日本では、多くの大人が自信を失っている。
その反動から、子どもに夢を押し付け、過保護なまでにかまって
失敗させないようにする。
数十年前に比べ、明らかに良くなった日本を作ったのも大人たち。
大人も夢を追えばいい。
はやぶさ、サッカー・ワールドカップの日本代表もそうだが、
「やればできる」ということをアピールした。
大人が自信を取り戻し、挑戦しようと思う突破口になってほしい。

--はやぶさのトラブル解決のアイデアは、どのように生まれたのか?

田中 開発予算も探査機の重量も限られ、修理にも行けないという
極限の状況で、なぜ多くのトラブルに対処できたのか。私も学びたい。

川口 年齢も所属も関係なく、分野横断的に意見を募り、
いいアイデアがあったら、ためらいなく採用する。
新しい意見を出すことによって、場をぶち壊しても構わない。
そういうことが可能なチームである、ということを
広く見せていくことがポイントかも。

田中 いろいろな分野の人間が参加することは大切。
失敗しても失敗で終わらせない、逆に独創に結びつける
発想の転換が生まれるのではないか。
私のチームでも、化学や医学の専門知識を持たない若い研究者が、
「ここがうまくできない」と、実験での失敗の相談がきっかけで、
開発を目指す分析装置の感度が1万倍向上。

川口 最近の大学院生や若手研究者は、教育を受け過ぎている。
「研究は(本や論文を)読むことから始まる」と思っている。
それらは、すでに過去のもの。
そんなものを読んでも、新しい発想は生まれない。
学生にはまず、「本を読むな」と。
懸命に新しいことを考える力、自分で切り開く力を付けなければ、
どんな仕事もできない。

田中 自分で考える癖をつけることが大切。
今の若手は、学ぶことが多すぎて考える時間がない。
考えなければ、失敗に耐える力も持てないのではないか、心配に。

--はやぶさのイオンエンジンが停止したとき、
2基の故障していない部品を回路でつなげ、
復活させたエピソードは有名、
トラブルを想定した対策で、使わなかった工夫もあるか?

川口 ある。最後に1台残った姿勢制御装置が壊れた場合の
プログラムも、はやぶさに送ってあった。
イオンエンジンの首振りを使って制御する方法で、
すでに地上試験もしていた。

田中 いろいろな工夫がわんさか入っていたということ。

--「運も実力のうち」と言うが、運は大切。

川口 運は転がってくるものなので、自分では制御できないが、
その運を拾えるかどうかが重要。
運は誰にでもやってくる、それに気付くことができるかということ。

田中 「幸運の女神には前髪しかない」という言葉。
通り過ぎようとする女神を見逃さず、見事に前髪をつかまえたのが、
はやぶさチームだった。
私も勇気をもらった。

川口 はやぶさを通じて若手が育ち、自信を持つようになった。
宇宙開発はリスクのかたまりなので、最近は「新しいことをやる」
宇宙開発に不可欠な考え方がなりをひそめ、
「いかに失敗しないか」に傾きがち。
財政状況は厳しいが、はやぶさの後継機についても、
挑戦心を失わないようにしたい。

◇7年がかりで地球と小惑星を往復

はやぶさは、JAXAが開発した小惑星探査機。
03年5月、打ち上げ、地球と火星の間の小惑星イトカワを目指した。
05年秋、イトカワに到着、その表面を詳細に観測。

同年11月、2度の着陸に成功、直後に燃料が漏れて姿勢が乱れ、
太陽電池による発電ができなくなって、地球との通信が途絶。
06年1月下旬、奇跡的に通信が復旧。
地球帰還は、当初計画よりも3年遅れることに。

地球を目前にした09年11月、主エンジンのイオンエンジンが停止。
「不死鳥」と呼ばれたはやぶさは最大のピンチ。
チームは、4基あるエンジンの故障していない部品を
組み合わせることで復旧に成功。

今年6月13日、オーストラリア上空で大気圏に突入、
本体は燃え尽き、イトカワの微粒子が入っている可能性がある
カプセルが無事に回収。

7年がかりの旅の総航行距離は、約60億km。
新型のイオンエンジンによる惑星間航行、自らの判断でイトカワへ
離着陸する自律航行、月より遠い天体へ着陸しての帰還は人類初。
世界の宇宙開発史に残る数多くの成果に加え、
数々の困難を乗り越えて挑戦し続ける様子が、
幅広いファンの注目を浴びた。
==============
◇かわぐち・じゅんいちろう

1955年青森県生まれ。78年京都大工学部機械工学科卒、
83年東京大大学院航空学専攻博士課程修了。工学博士。
同年、文部省宇宙科学研究所(03年、JAXAに改組)。
00年同研究所教授。
96年、やぶさプロジェクトマネジャー。
08年、月・惑星探査プログラムグループ・プログラムディレクター併任。
==============
◇たなか・こういち

1959年富山県生まれ。83年東北大工学部電気工学科卒、
島津製作所入社。
85年、質量分析の新しい方法「高分子のソフトレーザー脱離イオン化法」
を開発、02年にノーベル化学賞を受賞、フェローに就任。
10年3月、国から34億円の支援を受け、最先端研究開発に取り組む
国家プロジェクト「田中最先端研究所」所長。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2010/07/15/20100715ddm010040012000c.html

2010年8月1日日曜日

「柔道の脳しんとうは危険」中1死亡事故で報告書

(朝日 2010年7月20日)

滋賀県愛荘町で昨夏、中学1年の柔道部員が練習中に
意識不明となり、急性硬膜下血腫で死亡した問題を検証している
町の第三者委員会が、「脳振盪に対する正しい知識の啓蒙が
柔道指導者に必要」と提言する報告書をまとめた。

軽い脳振盪でも、繰り返すと命にかかわる危険性が医学界で指摘、
全日本柔道連盟によると、柔道界ではほとんど検討されてこなかった。
連盟も対策に乗り出した。

愛荘町立秦荘中1年だった村川康嗣君(当時12)は昨年7月、
上級生を相手に2人1組の実戦形式で技をかけあう1本2分間の
「乱取り」を重ねた。

相手が当時顧問だった男性(27)に代わった直後の26本目で
意識を失い、約1カ月後に死亡。

脳神経外科医や柔道指導者らでつくる検証委がまとめた報告書によると、
柔道初心者の村川君にとって、練習は「限界を超えた内容であった」
合間の水分補給の際、水筒がある場所とは違う方向へ行こうと
していたことから、脳振盪を起こしていた可能性がある。

脳振盪は、頭を直接打たなくても、技で投げられる際の回転力で
引き起こされるといい、直後に練習を再開して脳が再びダメージを
受けると、重篤な状態に陥る可能性がある。

現場の柔道指導者は、「脳振盪に関する知識を持っていないのが現実」、
「『意識を失っても、元に戻るからよい』とする間違った認識がある」と
報告書は指摘。

愛知教育大の内田良講師(教育社会学)の研究によると、
昨年度までの27年間で、中学・高校の柔道の部活動、
授業で109人が死亡。
2007年度まで10年間の死亡率は、野球の5倍。
死因の約7割が、急性硬膜下血腫など頭部の外傷。

相次ぐ事故を受け、全日本柔道連盟は5月、医学的な立場から
安全対策を検討する「医科学委員会」に脳神経外科医を加え、
6月「安全指導プロジェクト」を発足。

坂本健司総務課長は、「脳振盪を起こした後の処置や回転力で
引き起こされる脳外傷について、これまで柔道界では
検討されてこなかった。
報告書を真摯に受け止め、安全対策を講じていきたい」

http://www.asahi.com/sports/spo/OSK201007140092.html

理科教える技能に自信ない小学教員志望学生が過半数

(サイエンスポータル 2010年7月21日)

小学校教員を養成する大学および短期大学で、
理科選修を除く学生の半数以上が、理科を教える技能に
自信がないと考えていることが、科学技術振興機構の調査で明らか。

自信がないという答えが一番少なかったのは、
「児童の興味・経験・理解に応じた授業の内容、工夫」、
「自信がある」9%、「やや自信がある」37%。

自信があるという答えが最も少なかった「廃液処理」
(「自信がある」3%、「やや自信がある」6%)まで、
12の質問項目すべてで「自信がある」という答えは10%未満。

回答者のうち、高校時代に生物と化学を履修した学生は8割、7割、
物理は3割以下、地学も2割以下と、科目によって大きな差がある。

物理の指導が「嫌い」、「大嫌い」と答えた学生は7割以上、
化学は同じく6割、情報通信技術(ICT)は5割以上。

調査は、今年1~3月にアンケート方式で行われ、
小学校教員を養成する大学、短期大学の理科に関するカリキュラムを
担当する教員77人、今年4月から小学校での教職を希望する
学生732人から回答。

教科ごとの専門(選修など)に分かれている課程で、
理科の専門に所属している「理科選修」と、それ以外の学生
それぞれ同数に回答を求めたが、実際の回答数は
「理科選修」以外の学生が3倍以上多い。

教員に対し、「学生実験に対し、何が障害になっているか」を
聞いた答えでは、「学生の理科の基礎的知識が身についていない」、
「学生に基礎的観察・実験技能が身についていない」が最も多く、
それぞれ6割以上。

http://scienceportal.jp/news/daily/1007/1007211.html

いじめ対策(5)携帯世代がネット監視

(読売 7月23日)

「あ、これ、『今の1年のやつ、うざい』って書いてる」
パソコン画面を見ていた学生が、近くの仲間に声をかけた。

青森県の弘前大学。
学生たちは、「弘大ネットパトロール隊」のメンバー。
いわゆる「学校裏サイト」などへの中傷書き込みが社会問題化し、
各地で教育委員会などがネット監視に当たる中、
同市では、全国でも珍しく大学生が監視に取り組んでいる。

パトロール隊は2008年12月、同市教委の依頼を受け、
ネットいじめを研究する学生を中心に発足。
メンバーは現在52人。
学校裏サイトや個人のプロフ(サイト上の自己紹介ページ)を
手分けして監視し、問題ある書き込みを青森県、弘前市、
むつ市の教委に通報。
ネット被害調査、携帯電話のリスクを教える
出前授業なども手がけている。

同隊に参加した動機について、
「携帯で、中学の時から自分でプロフを作っていた。
経験が生かせるのではと思った」、
隊長の同大3年佐藤雄哉さん(21)。
副隊長の同3年大野絵美さん(20)は、
「教員志望なので、勉強にもなる」

これまで、「死にたい」など、自殺予告らしき書き込みを
計9件発見し、市教委などに報告。
深刻そうだった3件は、その日のうちに学校から警察にも
連絡して、子どもの所在を確認し、対応した。

こうした成果もあり、同県は今年度から、同隊の協力を得て、
学校、保護者、地域ボランティアによる
「ネット見守り隊」推進事業を始めた。

同事業モデル校の一つ、県立弘前工業高校のPTA会長、
清野秀美さん(52)は、「ネット上の書き込みは気になるが、
自分では調べ方もわからないし、時間もない。
学生らの協力はありがたい」

指導役の大谷良光・教育学部教授(61)は、
「携帯世代の書き込みは、同じ携帯世代だからこそわかる」

ネットの世界は、動きが速い。
社会の関心を集めた学校裏サイトは、青森ではまだ活動中だが、
全国的にはもはや下火。
子どもたちは、監視されることを嫌い、最近の書き込みの舞台は、
より目が届きにくいプロフやゲームサイト掲示板などに移ってきた。

手口や種類をどんどん変え、ネット上に中傷を書き込む子どもは
残念ながらいる。
そんな子どもの心理を知った生徒指導が求められている。

◆メモ

埼玉県教委が08年に実施した調査では、中学生の6・8%、
高校生の6・6%が、パソコンや携帯電話を使った、
いじめの加害体験があると回答。
理由は、「仕返し」、「気にくわないから」など。
被害体験は、中学生11・4%、高校生15・3%。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100723-OYT8T00222.htm

インタビュー・環境戦略を語る:千趣会・行待裕弘社長

(毎日 7月19日)

通信販売大手の千趣会(大阪市)は、

「人と環境、地球との未来を考える」を憲章に掲げ、
カタログに利用される紙の環境負荷の軽減や、
環境対応商品の販売などに積極的に取り組んでいる。
同社の行待裕弘社長に環境戦略を聞いた。

--環境方針については?

創業以来、「企業植物論」という考え方を基本に。
企業の成長を植物の生育にたとえ、良好な環境を整えることで、
成長するという考え。
無計画な農薬や過剰な肥料の散布で、目先の収穫に走らない
計画が大事だと考えている。

耕す根気と地道な手入れが大切であることを念頭に、
企業努力をしている。
海外植林事業や、環境配慮型商品の販売などを掲げている。

--どんな取り組みを実践しているか?

◆紙のカタログを、年間1億冊以上出している埋め合わせもあり、
93年からオーストラリアで伐採できる紙をつくるための植林を始めた。
現在、消費量に対して45%ぐらいの紙を作れるようになった。
05年から、ラオスでも植林を始めた。
物流拠点の集約により、自社倉庫間の移動を減らす努力も始めた。

--最近、力を入れている環境商品は。

◆約550点の環境商品があるが、オーガニックコットンに力を入れ、
「sumutoco」というインテリア雑貨カタログの夏号から掲載。

オーガニックコットン製品が増えれば、産地のインドに、
環境に優しい無農薬の畑が増えるという好循環も生まれる。
カタログ削減にもつながるインターネット販売を積極的に推進、
iPad向けアプリの実験も始めた。

今後、「クールビズ」のような環境にやさしい生活提案に協力し、
環境に良い暮らしについても考えていく。

--御社の環境関連商品や、取り組みに対する反応は?

◆最近、関心が高い。
呼びかけることで、我々の企業姿勢への理解も徐々に広がっている。
苦しい時でも、「マタニティー」や「ママ&ベビー」のようなカタログは成長。
その中で、オーガニックコットンと同様のものを提案することで、
消費者の賛同を得ているところもある。

--MOTTAINAIキャンペーンにも参加している。

MOTTAINAIキャンペーンとは、06年「ベルメゾンの森キャンペーン」
から付き合っている。

現在も、ペットボトルをたくさん消費する生活を改めようと提案する
マイボトルプロジェクトにも、キャンペーングッズの開発などで
協力させていただいた。

当社の強みは、お客様とコミュニケーションするカタログやネットの
メディアを持ち、商品開発やデザインによって環境に優しい生活を
提案できること。
お客様も時代の流れを察知して、呼びかけると乗ってきて
いただける時代になっている。
==============
◇ゆきまち・やすひろ

京都市立堀川高校卒。55年、千趣会を設立し、取締役に就任。
00年4月から現職。京都府出身。78歳。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2010/07/19/20100719ddm008020034000c.html