2010年8月6日金曜日

スポーツ立国戦略案 地域の環境整備に力を

(岩手日報 8月2日)

文部科学省が策定したスポーツ立国戦略案は、
国民の健康増進を示す羅針盤だ。

柱は、総合型地域クラブを活用したスポーツ環境の整備など、
「生涯スポーツ」の充実。
「五輪で過去最多のメダル獲得を目指す」とし、総花的印象が強い。

本年度のスポーツ振興予算は、約227億円。
約163億円が、国際競技力の向上に充てられている。

地域スポーツの環境整備費などは、前年度の約37億7千万円から
約22億2千万円に大幅に減額。
学校体育関係も約10億円減らされ、約41億円。

トップアスリートの強化に、軸足が置かれている。
地域環境を整えてこそ、生涯スポーツの充実が図られる。
予算増額など具体策を示すべきだが、戦略案には明記されていない。
掲げる方針と矛盾してはいないか。

トップアスリートと、それを支える多くのスポーツ愛好家がいての
「スポーツ立国」だ。
ピラミッドの底辺となる地域スポーツを、活性化させることが必要。

生涯スポーツ振興の例として、成人の週1回以上のスポーツ実施率を
現在の45%から65%に、週3回以上のスポーツ実施率を
3倍近い30%に引き上げるとしている。

その活動拠点として挙げているのが、総合型クラブ。
2000年、策定された国のスポーツ振興基本計画では、
10年間で全国の各市町村に最低一つは創設するとの目標。

09年度の設置市町村は準備中を含め、全国で64・9%。
本県の11年度の総合型クラブ数は、38。
設置済みは13市町村、準備中が12市町村、未設置は10市町村。

総合型クラブの設置は、各自治体や体育協会などに任せられているのが
実態で、担当者の人員不足などから設置は思うように進んでいない。

文科省は、戦略案策定に当たり、競技団体などからヒアリングを実施。
「小学校は、教師によって学校間・学級間格差がある。
体育の教科書がないことが大きい」、
「総合型クラブで、アスリートを雇用できる体制を構築すべきだ」
などの意見。

案には、一部が反映された。
「小学校に体育活動コーディネーター(仮称)を配置」、
「12年度から中学校で必修となる武道、ダンスに対応するため、
外部指導者の受け入れを推進する」など。

スポーツ庁の新設は、行財政改革の流れに反するとして
検討課題となった。

幅広い世代に配慮した点は評価できる。
学童らを対象に、運動量の目標となる指針をつくるほか、
若者の交流を促す「スポーツ婚活」も提案。
高齢者向けの体力測定制度も設ける。

問題は、誰が主体となって推進するかだ。
スポーツ庁設置は先送り状態。
自治体は財政難にあえいでいる。
「理念」だけが先行し、掛け声倒れとなるようではならない。

http://www.iwate-np.co.jp/ronsetu/y2010/m08/r0802.htm

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